保育

Q 職員の休職に関する相談です。現在の就業規則では「欠勤が1か月以上にわたったとき・・・休職期間は3カ月」とあります。ただ、休職および復職を命ずる判断基準等の詳細の定めはありません。就業規則の規定についてアドバイスをお願いします。

A 休職制度を設けるのであれば、休職と復職を命じるかどうかを判断する上での、公正な客観的な判断基準が必要です。その他にも就業規則に盛り込むべき内容は下記になります。

①休職について

・休職を命じる職員に要件

・休職を命じる判断基準

・休職期間

・休職中の賃金

・休職中の留意点

②復職について

・復職後の働き方

・復職を命じる判断基準

③休職期間完了時の取り扱い

 

上記の中で、休職を命じる判断基準では、例えば、「診断書の提出」はもちろん、「回復に何年もかかる場合には休職は命じない」または「業務外の同じ傷病が理由で欠勤と出勤を繰り返すようなときには休職は命じない」など、状況を想定しながら規定に落とし込んでいく作業が必要となります。休職期間については、「休職期間中であっても園は社会保険を負担しなければならないので、これまでの貢献度合いを考慮し、勤続年数が長い職員と短い職員では差を設ける」ことも大切です。

 復職については、復職を命じる判断基準は、本人の復職願いの提出の他、主治医の診断書、

本人との面談実施や園指定の医療機関の受診なども必要です。また、復職後、もし同じ傷病で欠勤した場合には復職を取消、直ちに休職を命じることとし、休職期間は、前の休職期間と通算すること等の規程も必要です。

 休職期間満了後の取り扱いについては、回復を見込んで休職を命じたけれど、回復できない場合には、残念だけど退職とせざるを得ない、ということで、休職期間満了日をもって

退職とします。

 まずは、上記の内容を規定に明記しておくことで、いざというときには、冷静に対処できるようになります。

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いちばん近い人を、いちばん大切にする

いちばん近い人を、いちばん大切にする

 

家族の中に、愛や理解、平和があったなら心の病やストーカー、DVなど、多くの問題はうまれてこなかったでしょう。

「夫婦だから」「親子だから」「兄弟だから」なんにもしなくても気持ちは通じ合うはず。イライラしたり、不機嫌でいても、感情をだしても許してもらえるはず。だから外での付き合いをたいせつにしたり、人脈を広げたりすることの方が大切なはず、と。

 でもそれは誤解です。

家族とはもともと形態があるものではなく、自分たちで、こころをかけて作っていくものものです。安定した関係を作るには、それなりの時間とエネルギーが必要です。

近い人との距離感は、近いからこそ難しいものです。近いからこそぶつかったり、面倒だったりします。それでも心を砕いて、相手に寄り添うことが必要なのです。

 自分のことを理解してほしいならば、相手のことをまず理解しましょう。

一緒に食事をとり、一緒に話をしましょう。相手の問題を一緒に解決しましょう。

嬉しいことも共有しましょう。

愛する人たちと笑顔の時間をすごせることほど、幸せなことはないと思います。

いちばん身近にいる人が、自分を理解してくれることほど、幸せなことはないはずです。

自分を大切にしようと思ったら、いちばん近い人を、いちばん大切にすることではないでしょうか。

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Q、何をどうすれば、良い評価が得られるのかが、わからないので、評価自体が評価のための評価になり、マンネリになっている

A、「何をどうすれば、いい評価が得られるのか」。被評価者からすれば当然知りたい内容ですし、それが法人の求めている職員像につながることになるわけです。ところが、評価者側の都合で、もしくは評価者側の裁量の幅をできるだけ大きくできることを目的に、評価項目を抽象的な表現にしたり、評価点のつけ方などがブラックボックスにしているケースがあります。この場合、「求められる職員像」が明確にはならないので、目標自体に具体性が欠けることになります。

弊社が推奨する職能評価や行動評価は、事前に評価される内容が具体的に分かっているだけではなく、点数のつけ方もオープンにしているので、透明性が担保されるだけでなく、各職員においては自己成長の実感が可能になります。評価制度が本当の意味で職員を育てるための制度にするには、次に述べる視点がとても大切になります。

  • 組織全体のレベルアップを図ることを目的とする。

評価によって優秀な職員を発見することも大切ですが、それよりも先に行わなければならないことは、普通の職員の能力を高めることによって組織全体のサービスの質を上げることなのです。一人の優秀な職員のヤル気を高めるよりも、多くを占める普通の職員のヤル気を高めることの方が大切であることを理解してください。

  • 部署別、職種別、そして等級別に「期待される職員の努力」を具体的に明記する。
  • はじめから「どんな努力をすれば良い評価(SまたはA評価)になるか」を明示しておく。この内容が「期待される職員像」となり、全ての職員に、期の初めから「こんな努力をしてほしい」と明示する。

評価は学校で行われるような試験や通信簿ではありません。学校の教育では、教科書に基づいて教えていき、期末または年度末に試験をして結果だけを測定し、評価すればいいのですが、職場ではそうではなく、どんな問題を出すのか(つまりどんな行動を期待しているのか)を初めに明確にしておいて、出来るだけ多くの職員が優秀な成績、つまり5段階評価ならS評価やA評価を取ってもらうようにすることが必要なのです。

その場合、必ず意見として聞こえてくるのが、「良い評価が増えれば、人件費が増加してしまうのでは?」という懸念です。もちろん、評価結果を反映させる処遇の財源(例えば、処遇改善加算)は確保しておきながら、その財源の限度内で分配を行う管理手法は必要になってきます。

①医療分野キャリアパス

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②介護分野キャリアパス

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③保育園のキャリアパス

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『入職してすぐに妊娠が判明した女性職員の産休・育休の取得』

Q

入職して1 ヶ月に満たない正職員が妊娠4 ヶ月と判明しました。本人は産休と育休を取りたいと言っていますが、希望どおり認めなければいけないのでしょうか?

A

職員から産前産後休業(産休)・育児休業(育休)の申し出があれば、施設は、原則として、その取得を認める必要があります。ただし、労使協定を締結することで、勤続1 年未満の職員の育児休業の申し出を拒むことができます。(※以下では、今回の正職員の取扱いをとり上げます。)

詳細解説

1.妊娠・育児に係る休業制度

職員が妊娠した場合、出産予定日前6 週間(多胎妊娠の場合は14週間)、出産後8 週間、産休を取得できます。出産前は職員の請求により休業を与えることになり、出産後は、原則、就業させることはできません。
また、1 歳に達する日までの子どもを養育する職員は、施設に申し出をすることで育休を取得することができ、子どもが保育園に入園できないなど一定要件を満たす場合、最長で子どもが2 歳に達するまで育休を延長することができます。

2.育休を取得できる人の例外

育休は、原則としてすべての正職員が申し出可能ですが、施設は労使協定を締結することにより、次に該当する職員からの申し出を拒むことができます。
① 入職1 年未満の職員
② 申し出の日から1 年以内に雇用期間が終了する職員
③ 1 週間の所定労働日数が2 日以下の職員
今回の職員は、産休が終了する時点では、入職9 ヶ月となるため①に該当し、労使協定を締結している場合には、その育休の申し出を拒むことができます。そのため、産休終了後は育休を取得せずに復帰することとなります。
なお、①の判断は、育休の申し出の時点で行うため、産休から復帰後の入職1 年に達した時点で、改めて育休の申し出をすることができます。育休を取得する際は、育休開始予定日の1 ヶ月前までに申し出ることになっていることから、実際の育休の取得開始は入職後1 年1 ヶ月以降となります。
そもそも、育休は、企業規模に関わらず、法律で定められているため、就業規則等に定めがなくても、職員が申し出た場合には取得できます。今回のケースのように、労使協定を締結することにより申し出を拒む職員を定めることもできるため、この機会に就業規則等の定めが適切にされているか、また、労使協定を締結するかを確認しましょう。

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職場のパワハラ防止、4 月から全面施行

2020 年6 月に改正された労働施策総合推進法が、今年4 月から中小事業主にも適用され、職場のパワーハラスメント(以下、パワハラ)に対処することが義務化されます。今回は、改正内容とパワハラの基礎知識をまとめました。

義務化されるのは、大きく 4 つ

4 月から、主に次の4 つが義務となります。
① 方針等の明確化と、周知・啓発
② 相談・苦情に対応する相談窓口等の設置
③ パワハラ発生時の迅速かつ適切な対応
④ その他、プライバシーの保護や不利益な取扱いの禁止など
①については、パワハラを禁止し、厳正に対処する旨を就業規則や服務規律などに定め、何がパワハラに当たるか、当施設はどのような方針であるのかについて、全スタッフに周知・啓発することが求められています。

どんな行為がパワハラになるの?

法律では、次の3 つをすべて満たした行為を「パワハラ」と定義しています。
① 優越的な関係を背景とした言動
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
③ 労働者の就業環境が害されるもの
客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラになりません。個々の状況により判断が異なりますので、下表も参考になさってください。
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参考:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

 

法人理念から求める職員像を可視化し、的確な言葉で表現する

法人理念から求める職員像を可視化する

 

私は、法人が園を経営していく上で最も大切な価値観表しているものが、法人理念であると捉えています。多くの園では法人理念を、HP、入園のしおり、パンフレットなどの印刷物をはじめ様々な方法で保護者や職員に周知しています。

ただ、周知はしているものの、どこまで「浸透」しているかというと、なかなか難しいところです。ある園では、職員に理念を改めて尋ねたところ、ほとんどの職員が応えられなかったということをお聞きしています。「浸透」している状態とは、職員が理念の意味を理解し

しそれを日々の実践に活かせる状況を言います。そのような状態にもっていくために経営は、経営理念の周知に努力するだけでなく、それを行動に移せる職員をどれだけ育てることができるのかを日々の活動のかなで考えていく必要があります。

 

求める職員像を的確な言葉で表現する

 

保育現場では職員一人一人の自律的な判断、行動が求められます。しかし保育者不足から中途採用の職員やぱーと職員の増加により、法人理念の背景や創立者の思いが継承できていなかったり、これまでの暗黙の前提が成立しなくなっている園もあるでしょう。法人の、園の、保育実践において、拠り所となるものが必要になるのも自然な流れと言えるかもしれません。そこで、私は法人理念を具体的に実現できる「人財」を「求める職員像」として可視化することをご提案しています。法人理念に基づき、どのように行動してほしいのか、どのような人となりであってほしいのかを整理し、的確に表現する言葉で「可視化」し、職員に示すことが重要です。そのための方法はいろいろあると思いますが、当社では、法人理念を

いくつかのキーワードに凝縮し、各キーワードの意味とそれを実現できる行動を職員の発想で具体的にしていきます。例えば、

キーワード:「思いやり」⇒出来ることに手を出すのではなく、見守って、助けが必要な時は、思いやりの気持ちをもち笑顔で、声をかけて手伝っている。

キーワード:「報告・連絡・相談」⇒何を相談したいのか整理し、自分なりの考え方をもって、先輩や同僚に積極的に相談し、アドバイスは素直に受け入れている。

 

求める職員像が育成指針として活用し、また人事評価に組み入れ定期的に振り返る機会をつくりました

 

法人理念から「求める職員像」を可視化し、周知と浸透を図っている園長先生にお伺いしました。

 先日の職員会議で、園児への声掛けやかかわり方が議題に上がったのですが、中途採用の新人職員の一人から「求める職員像」を根拠にその関わり方の提案が出ました。参加していた職員からは賛同と納得を得ただけでなく、この発言は刺激になったようです。

また、年2回の評価の中に、その実践度合いに関する評価項目を入れて、定期的自己を振返る機会を持っています。いい評価がもらえればモチベーションにもつながっているようです。また上司・部下の間で、現状と今後について話し合う良いコミュニケーションの機会にもなっています。

 園としては、引き続き「求める職員像」に基づく職員の働きぶりを承認し、育成に繋げていければと考えています。

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Q、現場での仕事が好きで、管理者にはなりたくない(なれない)職員には、 キャリアアップの仕組みを適用できない?

A3、キャリアパスは個人の能力・適正に応じて、「指導・監督層」になるコースとは別に「専門職」コースを準備し、専門職のキャリアステップと昇給制度で運用しています。

現場では、「優秀な職員ほど役職にはつきたがらない」とか、「知識・技術面でわからないことについて、皆が教えてもらえる職員は決まっており、しかもその職員は役職者ではない」、といった話がよく聞かれます。そこで考えるべきなのが、キャリアパスにおける「複線化」です。つまり、キャリアパスに描かれた昇格ラインによらずに、役職にはつかずに専ら専門性を高め、組織に貢献するキャリアパスを作ることです。この階層を「専門職」として、上級介護職の水準を超える水準をもって処遇します。この場合、当該職員はマネジメント業務を行わず、専ら好きな介護の道を追い続けても、相応の処遇が保障されることになります。専門性の高さを認められてこその処遇なので、職員のプライドも充足することができます。

また、優秀な人材を滞留させては離職につながりかねません。中小企業の中には職員が自らポストの数を読んで、諦めムードが漂っているようなケースも散見されますが、「専任職」を設けて、「当法人は、管理上の役職だけがポストではない。専任職というスキル面のリーダーもあり、相応に処遇する」と周知すれば閉塞感が一気に変わるはずです。

業界別の詳細は下記をご参照ください。

①医療分野キャリアパス

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②介護分野キャリアパス

 処遇改善加算対応キャリアパス構築コンサルティング | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

③保育園のキャリアパス

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試用期間の位置づけと 労働条件の設定

採用後、その従業員の能力や適性を判断する期間として、試用期間を設定する企業が多くあります。試用期間を設定するか否かは企業の判断になりますが、設定する際には、運用上の留意点があるため、その内容を確認しておきましょう。

1. 試用期間の位置づけ

 試用期間は、採用後に自社の従業員として中長期的にふさわしい人材であるかを判断するための位置づけとされています。試用期間を設定すること自体に法令上の問題はありませんが、試用期間であれば自由に解雇や試用期間満了で退職とすることができるわけではなく、契約を終了するときには相応の理由が求められます。
 また、労働基準法では「試みの使用期間中」として入社後14 日以内の従業員について、解雇予告の適用を除外していますが、この場合であっても、自由に解雇ができるわけではありません。
 なお、一般的に試用期間を3 ヶ月から6 ヶ月程度として定める企業が多くありますが、試用期間中の従業員の身分は本採用後と比較して、不安定なものとなるため、極端に長い期間設定することは、裁判で無効とされるリスクがあります。

2. 試用期間中の労働条件

 従業員の労働条件は、法令に違反しない限り自由に設定することができ、試用期間中について、本採用後と異なる労働条件を設定することも可能です。この場合、求人募集の際にその内容を明記しておく必要があります。
 例えば、ハローワークで求人を申込む際には、試用期間中の労働条件について異なるかを確認し、異なる場合には、試用期間中の労働条件をできる限り詳しく記入することになっています。

3. 就業規則へ規定すべき事項

 試用期間を設定する際には、試用期間に関する事項を就業規則に規定しておく必要があります。規定する事項としては以下のようなものが挙げられます。
①試用期間の目的
②試用期間の長さ
③試用期間中の賃金やその他の労働条件
④本採用しない場合の基準
⑤試用期間の延長に関する事項
⑥勤続年数の算定にかかる試用期間の取扱い
 就業規則にこれらの事項が定められていることを確認するとともに、採用時には試用期間があり、従業員としての適格性等を判断している旨を従業員に説明しておくことが重要です。

 

 試用期間を設定している企業においても、その管理ができておらず、知らないうちに試用期間が終了し、自動的に本採用になっていたということがあるようです。試用期間を機能させるためには、試用期間が終了する前に直属の上司から従業員の勤務態度をはじめとした適格性等について確認し、必要に応じた教育を行うといった運用をすることも試用期間を設定する上でのポイン
トとなります。

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学生期間中の納付が猶予される 国民年金保険料

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。

総務部長
4 月に入社した従業員から、大学在学期間中に国民年金保険料の納付の猶予を受けていたが、これはどのようにしたらよいのかという相談がありました。そもそも猶予の制度自体を知らないのですが、何かすべきことがあるのでしょうか。
社労士                                                                                               学生納付特例ですね。この特例は、保険料の納付が申請により免除されますが、老齢基礎年金を受け取るために必要な期間(受給資格期間)に算入され、病気やけがで障害が残ったときに障害基礎年金を受け取ることができます。注意点として、受給資格を判断する期間には算入されますが、年金額には反映されないことがあります。
総務部長                                                                                                                                        年金額に反映されないということは、将来の年金額が減ることがあるということですか?従業員にはどのように回答するとよいのでしょうか?
社労士                                                                                                                                    年金額が減ることについて、特に問題視されないようであれば、手続きを踏む必要はありませんが、学生納付特例は、10 年以内であれば後から納めることができます(追納)。そのため、追納制度があることを伝えるとよいかと思います。なお、学生納付特例の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3 年度目以降に追納する場合、保険料に経過期間に応じた加算額がプラスされます。
総務部長                                                                                                                     簡単にいうと、3 年以内であれば、その当時の保険料の金額を支払えばよく、それ以降になると支払う金額が多くなるということですね。
社労士                                                                                                そうですね。新入社員の場合、給与額がさほど多くないと思いますので、追納するのも大変かもしれませんが、計画的に支払うことがよいのかもしれません。
総務部長                                                                                                                         そうですね。伝えることにします。
社労士                                                                                               今日は学生納付特例のお話でしたが、この学生納付特例を利用しない場合、国民年金保険料は1ヶ月16,590 円であり、まとめて1 年分を前納すると、口座振替の場合に194,910 円(毎月納める場合より4,170 円の割引)、現金納付の場合は195,550 円(毎月納める場合より3,530 円の割引)となります(いずれも2022 年度の額)。
総務部長                                                                                                                                      まとめると割引があるとは驚きました。様々な制度があるのですね。

 

ONE POINT
① 学生納付特例の承認を受けた期間があると、国民保険料を全額納付したときに比べ、将来受け取る老齢基礎年金額が少なくなる。
② 学生納付特例を受けていた場合、10 年以内であれば追納することができるが、承認を受けた期間の翌年度から起算して、3 年度目以降に追納する場合、承認当時の保険料に経過期間に応じた加算額がプラスされる。 

 

 

育児休業を取得しやすい雇用環境整備の義務化

2022 年4 月施行の改正育児・介護休業法では、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(以下、「雇用環境整備」という)および妊娠・出産の申出をした従業員に対する個別の周知・意向確認の措置の実施が企業に義務付けられ、また、有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和が行われました。このうち、雇用環境整備として実施が求められる事項について確認します。

1. 雇用環境整備として実施すべきこと

育児休業と出生時育児休業(産後パパ育休)の申出が円滑に行われるようにするため、企業は以下のいずれかの措置を講じる必要があります。
① 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
② 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休の取得事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
※産後パパ育休は2022 年10 月以降が対象
いずれの措置を選択するかは企業に委ねられていますが、複数の措置を行うことが望ましいとされています。

2. 整備を進める上での留意点

4 つの措置を講じる上では、それぞれ以下のような留意点があります。
①研修
 研修の対象者は、全従業員とすることが望ましいとされていますが、少なくとも管理職は、研修を受けたことがある状態にすることが必要です。
②相談体制の整備
 相談体制の整備として窓口を設置したり、相談対応者を置いた上で、それを周知します。窓口を形式的に設けるだけでなく、実質的な対応ができることが必要であり、また、従業員に対して窓口を周知する等して、従業員が利用しやすい体制を整備しておくことが必要です。
③取得事例の収集・提供
 取得事例を収集・提供する際は、あくまでも自社の事例を対象にする必要があり、収集した事例が掲載された書類を配付したり、イントラネットへ掲載したりすることで、従業員へ周知します。提供する取得事例を特定の性別や職種、雇用形態等に偏らせず、可能な限り様々な従業員の事例を収集・提供することにより、特定の従業員からの育児休業の申出を控えさせることに繋がらないように配慮することが必要です。
④方針の周知
 方針の周知では、育児休業に関する制度と育児休業の取得の促進に関する企業の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットへ掲示することが必要です。

 

2022 年10 月に産後パパ育休の制度が始まることにより、男性の育児休業の取得にフォーカスが当たり、関心が高まることが予想されます。管理職が育児休業に関する制度を理解していないことにより、育児休業等にかかるハラスメントが発生するといったことがないよう、雇用環境の整備を進めることが必要です。

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