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【社労士解説】寝坊による遅刻を「時間単位有休」に振り替えるべき?クリニック・介護・保育園の適切な労務管理とは

「スタッフが寝坊して遅刻した際、『時間単位の有給休暇(有休)に振り替えてほしい』と言われたが、認めるべきだろうか……」

クリニックの院長先生や、介護施設・保育園の運営者様から、このようなご相談をいただくケースが増えています。人手不足が深刻な医療・福祉業界において、スタッフのモチベーション維持と職場規律のバランスに悩む経営者の方は少なくありません。

結論から申し上げると、寝坊による遅刻を時間単位有休へ振り替えるかどうかは、クリニックや施設のルール(就業規則)および経営者の判断に委ねられます。しかし、職場の規律を守るためには「原則として認めない」とするのが適切です。

本記事では、近年導入が進む「時間単位有休」の正しいルールや、寝坊・突発的な遅刻に対する適切な労務管理のポイントについて、医療・介護・保育業界に特化した社労士が分かりやすく解説します。

1. そもそも「時間単位有休」とは?導入時の法的ルールと留意点

働き方改革の一環として、仕事と生活の調和(ワークライフバランス)を図るために導入されたのが「時間単位有休」です。 1日単位ではなく時間単位での取得を認めることで、通院や子どもの送迎、役所の手続きなど、スタッフの柔軟な働き方をサポートできるメリットがあります。

しかし、この制度は「法律によってどの職場でも自動的に使えるもの」ではありません。 導入にあたっては、以下の法的要件とルールを厳守する必要があります。

① 労使協定の締結が必須(就業規則への記載も必要)

時間単位有休を有効に機能させるためには、事前に「労使協定」を締結しなければなりません。労使協定が締結されていない状態では、たとえスタッフから要望があっても、時間単位での有休を取得させることは法律上できません。

② 年間の取得上限は「5日以内」

時間単位有休として取得できる上限は、1年で5日以内と法律で定められています。 具体的な時間数は、そのスタッフの1日の所定労働時間によって計算されます。

  • 1日の所定労働時間が8時間の場合: (年間40時間まで)

  • 1日の所定労働時間が7時間の場合: (年間35時間まで)

この上限を超えた場合は、時間単位での取得は認められず、通常の「1日単位」または「半日単位」で取得させる必要があります。

2. 寝坊による遅刻を「時間単位有休」に振り替えるべきか?

では、本題である「スタッフが寝坊して遅刻した時間を、時間単位有休に振り替えたい」と申し出てきた場合の対応について考えてみましょう。

有給休暇は「事前申請」が原則

法律上、有給休暇は労働者が「事前に時期を指定して請求するもの」です。そのため、遅刻が確定した後や、出勤後に行われる「事後申請」を認めるかどうかは、基本的にはクリニックの院長や施設長の裁量(判断)に委ねられます。「事後申請の有休は一切認めない」というルールにすることも、法的には可能です。

現実的な運用と「寝坊」の境界線

実際のクリニックや介護施設・保育園の現場では、突発的な体調不良や、子どもの急な発熱、公共交通機関の遅延といった「やむを得ない理由」による遅刻・欠勤に対しては、事後申請であっても有休への振り替えを認めるケースが一般的です。

しかし、「寝坊」に関しては、有休への振り替えを認めるべきではありません。

理由の緊急性・やむを得なさ 事後申請の対応(推奨) 労務管理上のポイント
突発的な体調不良・家族の看病 認める(有休振り替え可) 予期せぬ事態であり、生活保障の観点からも許容が一般的
公共交通機関の遅延 遅延証明書等で対応 遅延証明書があれば、そもそも遅刻扱い(不就労)にしないケースも多い
本人の不注意(寝坊・勘違い) 認めない(欠勤・遅刻扱い) 自己管理不足。有休にすると職場の規律が乱れる原因に

なぜ寝坊による有休振り替えを認めてはならないのか?

最大の理由は、「職場の規律(モラル)が乱れる原因になるため」です。

「遅刻をしても、有休に振り替えれば給与も減らないし、怒られない」という安易な考え方がスタッフの間に蔓延してしまうと、遅刻に対する罪悪感が薄れ、真面目に出勤している他のスタッフのモチベーション低下を招きます。特にクリニックや介護・保育の現場は、1人の遅刻が現場の回し方(患者対応、シフト、園児の受け入れなど)に直結するため、チーム全体の負担に繋がります。

事後申請であっても「理由によっては有休への振り替えを認めない(欠勤または遅刻控除とする)」という運用を、事前に就業規則などで明確に規定しておくことが重要です。

3. 院長・経営者が必ず知っておくべき「時間単位有休」3つの注意点

時間単位有休を運用・管理するにあたり、クリニックの院長や施設長が勘違いしやすい、法的・実務上の注意点を3点解説します。

① 1日単位への変更を「強制」することはできない

スタッフが「時間単位有休(例:2時間)」を申請してきた場合、経営者側の都合で「中途半端だから1日休んでほしい」と、1日単位への変更を強制することはできません。逆のパターン(1日有休の申請を、時間単位に変更させること)も同様に不可です。有休の単位を変更できるのは、あくまでスタッフ本人の同意・希望がある場合に限られます。

② 「年5日以上の有休取得義務」の5日分にはカウントされない

2019年から、年10日以上の有休が付与される従業員に対して「年5日以上の有休を取得させること」が義務化されました。 ここで非常に重要なのが、時間単位で取得した有休は、この「義務化された5日」には一切カウントされない(含めることができない)という点です。

例えば、あるスタッフが年間で計24時間(日換算で3日分)の時間単位有休を取得したとしても、別途「1日単位」または「半日単位」で5日以上の有休を取得させなければ、法律違反(罰則の対象)となってしまいます。

③ 前年度の繰り越し分があっても、上限は「年間5日以内」

有休には2年間の時効があるため、前年度に使い切れなかった有休は翌年度に繰り越されます。しかし、時間単位有休の取得上限は、前年度の繰り越し分を含めても「年間5日以内」となります。

【間違えやすい具体例】

  • 前年度の使い残し:2日と4時間

  • 今年度新規付与分の枠:5日

この場合、足し算をして「今年は7日と4時間まで時間単位で取れる」ということにはなりません。前年の残りがあろうとなかろうと、その年度に時間単位として消化できるのは「最大5日分まで」となります。

4. 医療・介護・保育の現場に求められる適切な就業規則と労務管理

クリニック、介護施設、保育園は、いずれも「人」がサービスを提供する業界です。スタッフが安心して働ける環境を整えつつ、健全な組織体制を維持するためには、グレーゾーンを作らない明確なルール設計が不可欠です。

  • 遅刻や欠勤時の有休振り替えルールを明確にする(どのような場合に事後申請を認めるか、就業規則やマニュアルに明記する)

  • 時間単位有休の労使協定を正しく締結・運用する

  • 有休管理簿を整備し、義務化された「年5日」の未達を防ぐ

これらの労務管理を誤ると、スタッフ間の不公平感から離職に繋がったり、労働基準監督署からの是正勧告を受けたりするリスクが高まります。

まとめ:業界特化の社労士へお気軽にご相談ください

時間単位有休は、正しく運用すればスタッフの定着や採用力の強化につながる素晴らしい制度です。しかし、通常の有給休暇とは異なる複雑なルールが多いため、トラブルを未然に防ぐためには制度設計を正確に行う必要があります。

「うちのクリニックの就業規則で、寝坊のペナルティは課せる?」 「介護・保育のシフト制現場で、時間単位有休をスムーズに回すには?」

このようなお悩みがございましたら、業界特化の社労士である当事務所へお気軽にご相談ください。それぞれの業界特有の事情に合わせた、最適な労務管理ソリューションをご提案いたします。

💡 関連ページのご案内(あわせてお読みください)

「継続的な賃上げ実施」の判断基準

ベースアップ評価料は6月から、「継続的に賃上げを実施している医療機関かどうか」で評価が分かれる仕組みとなります(2026年5月号参照)。まだ届出をしていない医療機関等にも、高い点数を算定できる道が示されました。

「継続的な賃上げ実施」を満たすには?


6 月からは「継続的に賃上げを実施する保険医療機関」が高い点数を算定できます。ここに含まれるのは、まず「2026年3月31日時点でベースアップ評価料を届け出ている保険医療機関」です。この場合、同日時点でベースアップ評価料を算定している必要があります。

2026 年3月までにベースアップ評価料を届け出ていなかった場合でも、それに相当する賃上げを行った場合には、同様の高い点数を算定することができます。この場合、2026年度改定においてベースアップ評価料で求められる賃上げ水準(①)に、2024年度改定で求められていた賃上げ水準2.3%(②)を加えた水準の賃上げを行うことが条件となります。

■2026年3月までに届け出ていなかった場合の
「継続的に賃上げを実施する保険医療機関」の要件
①2026年度改定
が求める水準


2024年度改定
が求める水準

継続的な
賃上げ実施
の要件


このとき、算定対象となる職員(医師・歯科医師は含まれません)を、「看護補助者・事務職員」群と「それ以外の職員」群に分け、基本給等の総額を2024年3月時点と比較し、改善額を算出します。この改善額が、下表に示す割合以上※のとき、「相当する賃上げを行った」と判断されます。 

■2026年度 (2026年6月~2027年5月)
看護補助者・事務職員 ①5.7%+②2.3%=8.0%
それ以外の職員
①3.2%+②2.3%=5.5%

■2027年度 (2027年6月~2028年5月)
看護補助者・事務職員 ①11.4%+②2.3%=13.7%
それ以外の職員
①6.4%+②2.3%=8.7%

両群を合わせた改善額が、両群に求められる額の合計以上となっていれば、要件を満たすことになります。

なお、2026 年 3 月までにベースアップ評価料を届け出ていない場合は、改善額について、2024 年 3 月時点との比較を算出し、所定の様式に記載して届け出ることが必要となります。手続きや様式等の詳細は、厚生労働省のホームページでご確認ください。
参考:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について

 

 

 

介護業界に対する財務省の見立て(意見)を確認しておきましょう

財務省としての意見を発信する「財政制度分科会」が開催

年度が変わり、いよいよ2027年度法改正に向けての各論議論が展開され始めようとしている20265月。そんな折、「持続可能な社会保障制度の構築」というテーマに基づき、財政制度分科会が428日に開催されました。“国の金庫番”とも呼べる財務省が介護業界に対し、どのような改革案を突き付けているのか?今回は同省が作成した資料の中で特に介護事業者に関連するであろう論点の中から抜粋し、特に注視・認識しておいた方が良いと思われる10個の内容を採り上げ、お届けしてまいります。

 

財政制度分科会で採り上げられた、財務省から見た介護業界に対する見立て(意見)とは

では、早速、中身に移ってまいりましょう。ここでは本分科会で示された資料から抜粋・紹介する形で進めてまいります。先ずは、利用者負担の2割負担の範囲拡大についてです。(財務省の意見として認識しておいた方が宜しい箇所を太字・下線で強調しておりますのでご確認下さい)。

○介護保険制度が2000年に創設されてから四半世紀が経過した。高齢者を社会全体で支え合うという役割を果たしてきた一方で、高齢化の進展により介護費用・保険料は大幅に増加しており、制度の持続可能性が危ぶまれる状況にある。

○今後、現役世代の保険料負担の増加を抑制しつつ、制度の持続可能性を確保するため、令和9年度介護報酬改定に当たり、高齢化・人口減少下での負担の公平化や、給付の効率化・適正化を実施すべき。特に、保険料が増加する一方で、利用者負担がほぼ横ばいで推移していることを踏まえると、負担能力に応じた負担の在り方について検討するべき

○介護保険の利用者負担については、2割・3割負担の導入を進めてきたが、今後も、高齢化による介護費用の増加が見込まれる中で、給付と負担のバランスを確保し、保険料の伸びの抑制を図る観点から、利用者負担の更なる見直しを進めていくことが必要。

○具体的には、負担能力に応じて、増加する介護費用をより公平に支え合う観点から、2割負担の対象者の拡大を図るべき

○利用者負担の2割負担の範囲拡大については、年収基準を引き下げ、配慮措置について、案1:負担増を当分の間、最大月0.7万円に抑える、案2:預貯金が一定額以下の者は、申請により1割負担に戻す、という案で検討を進めてきた。令和8年度予算の大臣折衝において「令和9年度の前までに結論を得る」とされたことに基づき、早急に結論を得て実施すべき。

○今回の範囲拡大の目安とされた年金収入230260万円という層は、介護サービスの利用者に占める割合としては限定的であり、現役時代の給与収入が730870万円だった、大企業の課長~部長級まで昇進した層に相当し、こうした層は相応の金融資産を保有していることが多く、(2号保険料を負担する現役世代と比べても)一定の負担能力があると考えられる

○新たに2割負担になる際の負担増に関して、介護保険には、高額介護サービス費という、利用者負担額が上限(4.4万円/月)を超えた場合、超えた分を払い戻しする制度があるため、相対的に利用者負担が大きい施設介護の利用者(利用者負担は平均3.2万円/月)については、負担額が上限に達し、負担増額が抑えられる(負担増額は平均1.2万円/月)ことに留意が必要。

○医療保険と合わせた負担に関しては、高額医療介護合算サービス費という、医療・介護の利用者負担額が上限(56万円/年。月換算で4.7万円)を超えた場合、超えた分を払い戻しする制度があるため、負担額が高額介護サービス費の上限(4.4万円/月)に達しているような利用者については、追加で負担する医療保険の負担額は限定的であり、外来特例の見直し等の医療保険の給付と負担の見直しと合わせても、過度な負担増にはならないと考えられる。

利用控えに対する懸念に関しては、過去、2割負担・3割負担導入による介護サービス利用への影響は限定的であり、一定以上の所得・資産のある利用者に対して、2割負担の範囲を一定程度拡大したとしても、介護サービスの利用控えに与える影響は限定的と考えられる

続いて、ケアマネジメントの利用者負担と給付の在り方についてです。

○ケアマネジメントについては、利用者負担を求めてこなかったが、登録制の対象となる住宅型有料老人ホームの入居者に係る新たな相談支援の類型を設けた上で、利用者負担を導入することとしている(今国会に提出している「社会福祉法等の一部を改正する法律案」に規定)。住宅型有料老人ホームについては、ケアマネジメントの利用者負担の導入に関する、施設介護と在宅介護との不均衡や、ケアマネジメントの役割軽視が、特に問題となっており、確実に利用者負担を導入すべき

○介護報酬は、利用者の要介護度が進むにつれて報酬が高くなる構造(注)だが、利用者のwell-beingや給付費抑制の観点からは、本来、要介護状態からの自立や、要介護度の改善を促進する構造にすべき。ケアマネジメントの報酬における自立・要介護度改善へのインセンティブ付けを検討すべき

(注)例えば、ケアマネジメントの労働投入時間は、要支援1に対して要介護5は1.4倍だが、基本報酬は3.0倍となっている。

続いて、補足給付の見直しについてです。

○介護施設に入居する低所得者の食費・居住費を軽減する仕組みである「補足給付」については、2005年にそれまで介護給付とされてきた食費・居住費が給付の対象外となったところ、介護施設に低所得者が多くいることを踏まえ、経過的に設けられたもの。その後、預貯金要件の追加や、所得区分の設定の精緻化など、累次の見直しが実施されてきた。令和8・9年度においても、所得区分の設定の精緻化と負担限度額のバランスをとる措置を実施する。

在宅で暮らす介護サービス利用者は、食費・居住費を全額自己負担していることを踏まえると、補足給付は公平性を欠く制度といえる。また、介護給付の対象外となった食費・居住費を軽減するという、低所得者対策としての側面が強い施策を、介護保険財源で実施し続けることは合理性を欠いており、引き続き見直しを実施するべき

続いて、老健施設等の多床室の室料負担の見直しについてです。

○介護施設の費用については、2005年度に、食費と個室の居住費(室料+光熱水費)を介護保険給付の対象外とする見直しを実施(多床室は食費と光熱水費のみ給付対象外)。2015年度に、介護老人福祉施設(特養老人ホーム)の多床室の室料負担を基本サービス費から除く見直しを実施。

○しかし、介護老人保健施設・介護医療院の多床室については、室料相当分が介護保険給付の基本サービス費に含まれたままだった。2024年度介護報酬改定において見直しが行われたが、新たに室料負担が導入された対象施設は一部に限定

 

○介護医療院は、介護老人福祉施設(特養老人ホーム)と同様、家庭への復帰は限定的であり、利用者の「生活の場」となっている。

○介護老人保健施設は、施設の目的が「居宅における生活への復帰を目指すもの」とされ、少なくとも3か月毎に退所の可否を判断することとされているが、一般的な医療機関でも長期入院の基準が180日となっている中、介護老人保健施設の平均在所日数は400日を超えている状況。

○さらに、入所当初の利用目的が「他施設への入所待機」等という利用者が3割となっており、長期入所者の退所困難理由でも「特養の入所待ちをしている」が38%、「家族の希望」が25%となっている。

○こうした利用実態等を踏まえ、居宅と施設の公平性を確保する観点から、介護老人保健施設・介護医療院のうち、2024年度介護報酬改定において室料負担の導入が見送られた類型についても、多床室の室料相当額を基本サービス費等から除外する見直しを実施することが考えられる

続いて、令和9年度介護報酬改定に向けてについてです。

令和9年度介護報酬改定において、賃金・物価動向の変化に的確に対応する必要がある。

○賃金に関しては、令和9年度の定例改定を待たず、令和8年度に期中改定を行い、介護現場の生産性向上を促進しつつ、介護分野の職員の処遇改善を実施する措置を講じた。介護人材の確保と、保険料負担の抑制の両立に向けて、介護報酬による賃上げのみならず、介護現場が生産性向上に取り組み、対応可能な利用者が増え、収益が増加することで、職員の賃上げと、さらなる生産性向上投資につながる、という好循環を実現することが重要

介護サービスの利益率については、足元で、物価上昇の影響がある中でも、過去や他産業と比較して高い水準にあり、かつ、サービス類型ごとに大きな差がある状況。令和9年度改定においては、サービス類型や、サービス提供の実態に応じて、介護報酬を適正化する必要

続いて、介護現場の生産性向上(経営の協働化・大規模化)についてです。

○介護現場の生産性向上に向けては、事業所ごとの介護テクノロジーの導入(前回の財審で詳述)に加えて、事業所間のデータ連携により、ケアプランのやりとりをオンラインで完結する仕組みである「ケアプランデータ連携システム」の導入や、複数の社会福祉法人が参画し、各法人の自主性を保ちながら経営を協働化する「社会福祉連携推進法人」の設立等による経営の協働化・大規模化を推進していくべき。

○こうした観点から、R7補正・R8改定における介護職員の賃上げの上乗せ措置について、訪問・通所系サービスでは、「ケアプランデータ連携システム」の導入か、「社会福祉連携推進法人」への所属が要件とされたところ。(注) このことを受けて、「ケアプランデータ連携システム」の導入割合が足元で顕著に上昇しており、職員の賃金の部分で生産性向上の取組をインセンティブ付けすることが効果的であることが示唆される。R9改定では、こうした取組の効果を踏まえて、さらなる生産性向上につながるよう、例えば、訪問・通所系サービスについて、介護記録ソフトなどの介護テクノロジーの導入も要件に追加するなど、要件の在り方を検討すべき

(注)施設系サービスについては、介護テクノロジーの導入等が要件となっている「生産性向上推進体制加算」の取得か、「社会福祉連携推進法人」への所属が要件とされた。

続いて、住宅型有料老人ホームにおける介護報酬の適正化についてです。

○住宅型有料老人ホームにおいては、併設しているケアマネジメントや訪問介護の事業所によるサービス提供が行われるケースが多く、点在する利用者宅に個別に訪問する場合と比べて、一カ所で集中的にサービス提供ができるため、移動時間をはじめ、利用者1人当たりの労働投入時間が少ない。

○事業所と同一敷地内に居住する利用者にサービス提供する場合、「同一建物減算」が適用されるが、減算率は限定的(注)であり、住宅型有料老人ホームでサービスを提供する事業者は、利用者宅に訪問する事業者に比して、対労働投入時間で多く介護報酬を得ており、収支差率も良い傾向にある。(注)同一建物減算の減算率は、ケアマネジメントは▲5%、訪問介護は▲10~15%。

令和9年度介護報酬改定において、住宅型有料老人ホームにおいて提供されるケアマネジメント(新たな相談類型)・訪問介護について、点在する利用者宅に個別に訪問する場合との、サービス提供の実態の違い等を踏まえて、介護報酬を適正化すべき

続いて、インセンティブ交付金の在り方の見直しについてです。

○インセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金・介護保険保険者努力支援交付金)は、市町村・都道府県の、平均要介護度の変化等のアウトカム指標等に応じて交付する、介護予防等の事業に活用できる交付金である。

○平均要介護度の変化等は、地域ごとの人口構造等の変化による部分も大きく、自治体の取組により改善するかは不透明であり、改善するとしても一定の期間を要すると考えられる。したがって、自治体が、交付額を増やすために介護予防に取り組むというインセンティブ構造が機能していないのではないか

○また、インセンティブ交付金は、毎年交付額が異なるため、自治体にとって安定的な財源と見なすことができず、事業の拡充や新規事業にはほとんど活用されずに、その8割以上が第1号保険料の削減のために活用されており、交付金により介護予防に取り組むという好循環が生まれていない。

○したがって、インセンティブ交付金は縮小の上、自治体独自の取組を促進する役割を果たしている保険者機能強化推進交付金の「成果指向型配分枠」に重点化するなど、効果的な介護予防の推進と、保険者機能の発揮に資する見直しを実施すべき

続いて、軽度者に対する生活援助サービス等の地域支援事業への移行についてです。

○要支援者に対する訪問介護・通所介護については、地域の実情に応じた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を行う観点から、地域支援事業へ移行(2018年3月末に移行完了)。

○今後も介護サービスの需要の大幅な増加が見込まれる中、生活援助型サービスをはじめ、全国一律の基準ではなく、人員配置や運営基準の緩和等を通じて、地域の実情に合わせた多様な人材や資源の活用を図り、必要なサービスを効率的に提供するための枠組みを構築する必要。

介護の人材や財源に限りがある中で、要介護者の中でも専門的なサービスをより必要とする重度の方へ給付を重点化していくとともに、生活援助等は地域の実情に応じて効率的に提供していく必要。このため、軽度者(要介護1・2)に対する訪問介護・通所介護についても地域支援事業への移行を目指し、段階的に、生活援助型サービスをはじめ、地域の実情に合わせた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を可能にすることが考えられる

最後は、保険外サービスの活用についてです。

○今後も増大し続ける多様な介護需要に対して、介護保険事業と介護保険外の民間企業による関連サービスで対応していくことが有益と考えられる。

○介護保険事業者が保険内と保険外のサービスを柔軟に組み合わせてサービス提供することは、高齢者の多様なニーズに応え、国民の利便性向上に資するだけでなく、事業者にとっても効率的なサービス提供や、収益の多様化、経営基盤の強化に資すると考えられ、職員の賃上げにも還元可能。

○現在、利用者保護や保険給付の適正な担保の観点から、サービスの明確な区分や説明責任の徹底といったルールを順守することで、介護事業者は保険内外のサービスを組み合わせて提供可能。しかし、介護事業者による保険外サービスの活用に当たっては、自治体によってルールの解釈が異なり、保険外サービスが認められないところもある(いわゆるローカルルール)、といった声も聞こえる。

○ 自治体のローカルルールの実態把握を行った上で、国民の利便性向上に資するよう、介護保険外サービスの柔軟な運用を認めるべき。

 

国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を

以上、財政制度分科会内の資料「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)」より、介護事業者に直接関係のある部分から抜粋してお伝えさせていただきました。本内容は国全体の方針ではなく、あくまで「財務省」という一省庁の意見である、ということはしっかり認識しておく必要はあろうかと思いますが、それでも財務省の挙げる声には一定の重みがあることも否めない事実だと思われます。

事業者としては上記内容を踏まえつつ、「もしこれらの施策が実行された場合にどう対応するか?」について事前に頭を働かせておくことが重要だと言えるでしょう。私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。

 

※上記内容の参照先URLはこちら

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20260428zaiseia.html

 

メンタル疾患スタッフへの対応実務~トラブルを防ぐ「休職制度」運用ポイント~

介護施設、保育園、クリニックの経営者・管理者様に向けて、メンタル疾患を抱えるスタッフの休職・復職における正しい実務対応を専門社労士が分かりやすく解説します。

「休職期間が終わっても復職できそうにないスタッフがいるけれど、解雇してもいいの?」

このようなお悩みを抱えていませんか?

実は、安易な「解雇」は不当解雇として深刻な法的リスクを伴います。

トラブルを防ぎ、円満に解決するための鍵は「就業規則」を活用した「自然退職(自動退職)」の仕組みです。

本動画では、対人サービスを担う現場ならではの特殊性を踏まえ、復職可否を判断する4つのステップや、就業規則で見直すべき重要チェックポイントを徹底解説します!

📌 タイムスタンプ(目次)

0:00 オープニング

0:45 メンタル疾患スタッフへの対応で「解雇」がハイリスクな理由

2:10 トラブルを未然に防ぐ「自然退職(自動退職)」の仕組み

3:40 そもそも「休職制度」とは何か?(経営者の人事命令としての発令)

5:15 復職可能かどうかの判断基準:4つのステップ

7:30 介護・保育・医療現場における「安全配慮義務」の特殊性

9:15 今すぐ確認!就業規則の健全性チェックリスト

10:45 まとめ:スタッフと組織を守る「強い就業規則」の作り方

社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング

当事務所は、介護事業所・保育園・クリニックに特化した人事労務コンサルティングを提供しています。現場の負担や特有の課題に寄り添い、トラブルを未然に防ぐ就業規則の作成から、労務問題の具体的な解決までトータルでサポートいたします。 現場の労務管理でお困りの経営者様、院長・園長先生は、どうぞお気軽にご相談ください。

無料相談・お問い合わせはこちら

【院長先生必読】メンタル不調で休職・復職を繰り返すスタッフへの正しい対応と就業規則の防衛策

 

クリニックを経営する中で、院長先生を最も悩ませる問題の一つが「スタッフの健康問題」、特にメンタルヘルス不調による休職です。

「うつ病で休職していた看護師が復職したものの、数週間でまた体調を崩して欠勤し始めた」 「休職と復職を何度も繰り返していて、現場のシフトが回らない」 「本人は『働ける』と言い張るが、明らかに業務ができる状態ではない……」

少人数で運営しているクリニックにとって、1人のスタッフが断続的に休むことのダメージは非常に大きいものです。他のスタッフへの負担が増え、院内の雰囲気も悪化し、最悪の場合は連鎖退職を招くリスクすらあります。

今回は、クリニックの労務管理に精通した「医療社労士」の視点から、休職・復職を繰り返す職員への正しい法的な対応論と、トラブルを未然に防ぐための就業規則のカスタマイズ術を徹底解説します。

1. 意外と知らない「休職」の法的性質と「休職命令」の正しい使い方

そもそも「休職制度」とは何のためにあるのでしょうか? まずは、クリニックの経営者として知っておくべき基本的な法的性質を整理しておきましょう。

休職制度は「法律で義務付けられたもの」ではない

実は、休職制度は年次有給休暇や産前産後休業などとは異なり、労働基準法などの法令で義務付けられた制度ではありません。この事実は、医療業界でも意外と知られていないポイントです。

つまり、「そもそも休職制度を設けるか否か」「休職期間を何ヶ月にするか」「どういった要件で適用するか」は、クリニックが独自に(就業規則で)自由に定めることができるのです。

【休職制度の本来の趣旨】 病気やケガの療養のために一定期間、労働が不可能となった職員に対し、雇用関係は維持しながらも、労務への従事を免除(猶予)する制度です。すぐに退職や解雇とするのではなく、回復までの「猶予期間」を設けることで、職員の雇用の安定を図ることを目的としています。

休職は「本人からの申請」を待つ必要はない

多くの院長先生が「本人が休職届を出してこないから、対応ができない」と誤解されています。しかし、休職扱いにするか否かは、産業医や主治医の診断書を根拠に、雇用主(クリニック側)が客観的に判断して決めるべきことです。

スタッフ本人からの申請がなくても、客観的に見て「これ以上、継続して働くことは難しい」と院長先生が判断すれば、業務命令(人事命令)として「休職命令」を通知することができます。

「休職命令書」の書式できちんと通知する

休職は重大な人事命令です。口頭や曖昧なメールだけで済ませるのではなく、必ず「休職命令書」という書面を用意し、以下の必要事項を記載して本人に交付してください。

  • 休職を命じる理由(病気療養のため等)

  • 休職の期間(◯年◯月◯日 〜 ◯年◯月◯日)

  • 休職中の猶予期間が満了した際、治癒していなければ退職・解雇となる旨

このステップを正しく踏んでおくことが、のちのちの労務トラブルを防ぐ強固な防衛策となります。どういった書式を用意すべきか迷った場合は、医療現場の労務管理に強い「クリニック社労士」に相談し、ひな形を作成してもらうのが安全です。

2. なぜクリニックで「休職と復職の無限ループ」が起きるのか?

特にメンタルヘルス不調(うつ病や適応障害など)の場合、以下のような悪循環に陥るケースが多々あります。

  1. メンタル不調で休職(期間:6ヶ月)

  2. 4ヶ月ほど療養し、本人が「治ったので復職したい」と主張(医師の診断書を持参)

  3. 復職させるが、1ヶ月後に再発して再び欠勤

  4. 「新しい傷病(または別理由)」として、再びゼロから6ヶ月の休職期間がスタートする

このように、復職直後に再発して休職を繰り返されると、クリニック側はいつまで経っても「退職(雇用契約の終了)」の判断ができず、幽霊部員のような形で籍だけが残り続けることになります。この「無限ループ」の原因は、就業規則の不備にあります。

3. 【就業規則での対応策】トラブルを防ぐ「休職期間の通算規定」とは?

休職と復職を繰り返すスタッフに苦慮する事態を避けるためには、就業規則に「休職期間の通算(さん)規定」をあらかじめ設けておくことが絶対に欠かせません。

具体的には、就業規則に以下のような一文(条文)を追加します。

【就業規則の規定例】 「職員が復職後一定期間内に、同一傷病及び類似の傷病により再び欠勤または休職する場合は、新たに取得する休職期間と、従前に取得済みの休職期間を通算する。」

💡 通算規定を作る際の2つの重要ポイント

一般企業向けの就業規則テンプレートをそのまま使っているクリニックでは、この通算規定が抜けているか、あるいは内容が不十分なケースが多いです。「クリニックに詳しい社労士」がアドバイスする、実戦的なポイントは以下の2点です。

①「類似の傷病・症状」も対象に含めること

特にメンタル不調の場合、同じ原因や状態であっても、病院や医師が変わることで「うつ状態」「自律神経失調症」「適応障害」など、しばしば別の疾患名や症状名が付くことがあります。 就業規則に「同一の傷病名の場合のみ通算する」と書いてしまうと、「今回は違う病名だから別カウントです」と主張された際に対抗できません。必ず「類似の傷病・症状」という文言を入れて網羅性を高めましょう。

② 通算対象とする期間は「6ヶ月〜1年」に設定する

一般的には、復職してから「6ヶ月以内」または「1年以内」に再発した場合は、前回の休職期間の「続き(残り時間)」としてカウントする、という設計が多くなっています。

通算規定があると、どう変わるのか?(具体例)

例えば、クリニックの就業規則で「休職期間は最大6ヶ月」と定めており、通算規定(復職後6ヶ月以内)がある場合を考えてみましょう。

  1. 最初の休職: スタッフが5ヶ月間休職し、その後復職した。

  2. 復職後: わずか1ヶ月後に、再び類似のメンタル不調で働けなくなった。

  3. 再休職の扱い: 通算規定があるため、休職期間はゼロからスタートしません。残りの期間である「1ヶ月だけ」が再休職として認められます。

  4. 猶予期間の満了: この1ヶ月を経過しても病気が治癒しておらず、復職の見込みが立たない状況であれば、職員には厳しいようですが、就業規則の定めに従って「自然退職(または解雇)」という扱いになります。

もちろん、その後完全に病気が治癒し、その時点でクリニック側に人員の受け入れ余裕があれば、改めて「再雇用」を検討することは可能です。

こうした厳格かつ合理的な仕組みを整えておくことで、「いつ終わるかわからない休職対応」に院長先生や現場スタッフが疲弊していくのを防ぐことができます。

4. 人事評価制度や日頃のマネジメントとの連動も重要

休職・復職の問題は、就業規則という「守りのルール」だけでなく、日頃の「クリニック人事評価」という「攻めの仕組み」とも連動しています。

例えば、メンタル不調の引き金が「特定のスタッフによるハラスメント」や「過度な業務負担の偏り」である場合、いくらルールを厳しくしても根本的な解決にはなりません。

  • 各スタッフの業務量や役割が適切に評価されているか

  • 職種間のコミュニケーションが円滑に行われているか

  • 「体調に不安がある」段階で相談しやすい1on1(面談)の機会があるか

これらを日頃から「クリニック人事評価」やマネジメントの仕組みに組み込んでおくことで、スタッフが休職に至る手前で変化に気づき、ケアすることが可能になります。

5. まとめ:医療現場の労務トラブルは「医療社労士」へ相談を

スタッフの休職・復職を巡る問題は、一歩間違えると「不当解雇だ」「安全配慮義務違反だ」として、労働基準監督署への駆け込みや民事トラブル(裁判)に発展しやすい極めてデリケートな問題です。

世の中には多くの社会保険労務士がいますが、医療業界は夜勤やシフト制の複雑さ、専門職種のこだわりなど、一般企業とは異なる特殊な環境です。そのため、一般的な社労士ではクリニックの実情に即したアドバイスが難しいケースも少なくありません。

だからこそ、医療現場ならではの空気感やリスクを熟知した「クリニックに詳しい社労士」「医療社労士」のサポートを受けることが、結果として最も迅速かつ安全に問題を解決する近道となります。

就業規則の休職規定を見直したい、現在休職中のスタッフへの対応に困っているという院長先生は、トラブルが大きくなる前に、ぜひ一度専門家へご相談ください。

医療法人の労務管理・就業規則の改定は当事務所にお任せください

当事務所は、クリニック経営に特化した「クリニック社労士」として、数多くの院長先生の悩みを解決してきました。休職トラブルを防ぐ就業規則の整備から、スタッフが定着する人事評価制度の構築まで、トータルでサポートいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

医院クリニックを経営される院長先生へ〜クリニックに最適な社労士の選び方〜 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング

埼玉ケアマネ殺害、厚労省が安全確保の徹底を呼びかけ 全国の自治体へ通知

 

埼玉県川口市でケアマネジャーの女性が刃物で殺害される事件が発生したことを受けて、厚生労働省は3日、全国の自治体へ安全確保に向けた取り組みを徹底するよう呼びかける通知を発出した。

介護保険最新情報Vol.1508で現場の関係者に広く周知している。


厚労省は通知で今回の事件を踏まえ、「介護支援専門員など在宅介護従事者の安全確保を図ることが重要」と強調。都道府県や市町村の担当部局に対し、関係機関と連携して必要な対策を積極的に講じるよう要請した。


あわせて、国としても日本介護支援専門員協会など関係者と連携をとりつつ、安全確保に向けた取り組みを推進していくとした。

厚労省は通知で、ハラスメントから介護従事者を守る「対応マニュアル」などを改めて周知した。

 

とりわけ、

◯ 介護事業者のハラスメント対応は個々の職員に委ねず、組織として必要な体制を構築し、事前にリスク要因を把握して予防・対策の基本方針や具体的な対応を検討すること

◯ 事業所単独での対応が困難なケースに備え、地域ケア会議での情報共有に加えて、他職種、保険者、包括、保健所、事業者団体、法律の専門家、警察といった関係者と日頃から連携し、地域全体で相談・対応できる体制を築いておくこと

などが重要だと説明した。また、利用者宅への複数名での訪問や相談窓口の設置にかかる経費への助成など、国の支援メニューを自治体が活用できることも周知した。

【日本版DBS】こども性暴力防止法、児発や放デイなど障害福祉の現場も義務・施行に向けて準備を

日本版DBSともいわれるこども性暴力防止法。障害福祉、特に障害児福祉の現場では影響が大きい。このため、こども家庭庁参事官の吉田昌司氏から法律が制定された背景や概要、障害福祉の現場への影響、事業者が準備すべきことなどについて寄稿していただいた。

こども性暴力防止法は今年12月25日に施行


文:こども家庭庁 支援局 参事官 こども性暴力防止担当 吉田昌司


こども性暴力防止法は一昨年6月に国会で成立(全会一致で成立)し、今年12月25日に施行されます。教育や保育の現場で、こどもを性暴力から守るための仕組みが動き出します。


こどもへの性暴力は、心身に対して重大な影響を及ぼし、その影響は長期に及ぶことがあるものです。絶対許されないものですが、報道でもよく取り上げられるように、残念ながら発生している現状があります。このような状況を踏まえて法律が制定されました


こども性暴力防止法について(概要)

こどもを性暴力から守るために日ごろからの取り組みも重要


この法律の内容は、大きく2つにわかれます。1つは、日本版DBSと称して、報道されるように、こどもと接する業務に就く人の性犯罪前科の有無を確認して、前科があると業務に就くことができなくなるようにするものです。再犯防止対策であり、重要な取り組みです。


一方、初犯が9割といったデータもある中で、それを防止する対策も重要となってきます。つまり、「従事者に対して性暴力を防ぐための研修を行う」「こどもが相談しやすい窓口などを設置し、広く周知する」「こどもの心身・行動に変化がないかを日常的に観察し、小さな変化やSOS信号を見逃さないようにする」などといった日ごろからこどもへの性暴力を防ぐための取り組みを、事業者の皆さんに各現場で実施いただくことです。

公立・民間を問わず指定を受けた児童発達支援、放課後等デイサービスなどは義務対象


法律の義務の対象は、障害者支援の関連でいえば、指定を受けた児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援といった障害児通所支援事業、障害児入所施設です。これらは、公立・民間を問わずすべての事業所が義務の対象となります(*)。


義務対象の事業者は上記のような取り組みを実施することが求められます。また、管理者、児童指導員など報酬算定の対象として法令上規定されている職員については、必ず犯罪事実確認などの対象となります。


* 居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所又は重度障害者包括支援といった指定障害福祉サービス事業は、こども家庭庁に申請し、認定を受ければ、法律の対象になります。認定を受ければ「こまもろう」のマークが活用できるなど、ほかの事業者と差別化を図ることができるようになります。

施行に向けて今から準備を


施行に向け、法律の成立後、専門家や関係団体の皆さんと議論を進め、今年1月にはガイドラインを発出しました。


こども性暴力防止法施行ガイドライン


また、事業者には、従事者に対して研修を受講させることが義務付けられています。それに活用できるよう、4月には研修動画などがアップされています。この動画は、理解しておくことが望ましい標準的な内容を整理したものです。是非この機会に一度ご覧いただければ幸いです。


こども性暴力防止法に関する研修動画(標準動画・従事者向け) – YouTube

また、こども家庭庁では施行に向けて事業者が活用できるチェックリストも用意しています。

事業者向けチェックリスト(こども性暴力防止法の施行までに必要な対応)


事業者の皆さんには、これらも活用して、今から、研修計画の策定や相談窓口の設置など準備を是非はじめていただきたいと考えています。次回以降、準備すべき具体的な事項などについてご紹介していきます。

 

LIFEのシステム移行作業、解説動画や操作マニュアル公開 厚労省

厚生労働省は22日、LIFE(科学的介護情報システム)の運営主体が国民健康保険中央会へ移管されたことに伴い、介護保険最新情報Vol.1504を発出した。

事業所・施設で必要な新システムへの移行作業について、新たに解説動画や操作マニュアルを公開。介護現場の関係者に広く周知した。


LIFEは今月11日から国保中央会による運用が始まっており、事業所・施設は旧システムから新システムへの移行作業が必要。LIFE関連加算を引き続き算定するためには、これを7月31日までに完了させなければならない。


厚労省は新たに公開した動画で、必要な移行作業のスケジュールや5月サービス提供分以降の加算の対応、ヘルプデスクに寄せられる主な質問への回答などを解説。あわせて操作マニュアルも公開した

 

【6/10開催】LIFEを「提出」から「活用」へ。現場を変える科学的介護の真髄

LIFEの実践とこれからの介護の質向上セミナー

2026年 6月10日 オンライン開催

第1部

新LIFEへのシステム移行「かんたん案内ガイド」
~介護事業所さんの目線で、準備や手続きをポイント解説〜
株式会社ビーブリッド

第2部
LIFEを「提出」で終わらせない実践術
〜現場を守る「データオーナー制」とフィードバックの活用〜

第3部
現場実践者の視点×行政の視点で語るLIFE活用の課題と展望

詳細はこちら ⇒

_HSC社向け_LIFEセミナー_リーフレット_修正版_軽量版

セミナー案内ページ

 https://www.bibrid.co.jp/service/seminar/list/post_3615/

 

申込フォーム

 https://x.gd/D1Y0V

【社労士解説】「2日後に有給で旅行に行きます」は拒否できる?介護・保育・クリニックの正しい労務対応とトラブル防止策

 

「2日後に旅行に行くので、有給休暇(年次有給休暇)をください」

もし、現場の職員からこのように急に有給申請されたら、経営者や院長先生はどう対応すべきでしょうか。特に、ただでさえ人手不足な上に、その日が1年で一番忙しい繁忙期や、シフトがカツカツの日だったとしたら、「今回は拒否したい…」と思うのが本音かもしれません。

介護施設、保育園、クリニックといった「人が人をケアする現場」では、1人の欠員がダイレクトに現場の崩壊やサービスの低下につながるため、有給休暇の取得を巡るトラブルが後を絶ちません。

今回は、医療・福祉業界専門の社会保険労務士(社労士)が、「職員からの急な有給申請は拒否できるのか?」「会社が持つ『時季変更権』の正しい使い方」、そして「急な有給申請に振り回されないためのルール作り」までを徹底解説します。

1. 結論:有給休暇の「拒否」は原則不可!ただし「時季の変更」は可能

まず法律上の結論からお伝えすると、会社が職員の有給休暇の取得を「完全に拒否(消滅)」させることは、原則としてできません。

有給休暇は、労働基準法によって労働者に認められた強い権利です。たとえその理由が「プライベートな旅行」であっても、取得理由を理由に会社が拒否することは違法となります。

◆ 会社に認められた唯一の対抗策「時季変更権」とは?

しかし、会社側にも現場を守るための権利が認められています。それが「時季変更権(じきへんこうけん)」です。

労働基準法第39条第5項(要約)

労働者が請求した日に有給休暇を与えることが、**「事業の正常な運営を妨げる場合」**においては、会社は他の日に変更させることができる。

つまり、「有給をあげるな(拒否)」とは言えませんが、「その日はどうしても困るから、別の日にずらしてほしい(変更)」と主張することは法律上可能なのです。

2. 単に「忙しいから」はNG!時季変更権が認められる「4つの判断基準」

ここで最も重要になるのが、「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、具体的にどのような状態を指すのかという点です。

裁判例などを踏まえると、単に「今日は業務が忙しいから」「いつも人手が足りないから」という慢性的な理由だけでは、時季変更権の行使は認められません。会社側が「代替要員を確保するために最善の努力を尽くしたけれど、どうしても無理だった」という客観的な事実が必要です。

特にシフト制で動く介護施設、保育園、クリニックにおいて、時季変更権が認められやすいのは以下のような4つのシチュエーションです。

① シフト変更の調整を尽くしたが、代替要員が確保できないとき

急な申請に対して、管理者が他の職員に「代わりにシフトに入ってもらえないか」と打診したり、出勤日の変更を調整したりしたものの、どうしても代わりの人が見つからなかった場合です。

② 有給の取得希望者が同じ日に重複し、現場が回らなくなるとき

同じ日、同じシフトの時間帯に、複数の職員から同時に有給申請が出てしまったケースです。全員を休ませると配置基準(人員基準)を割り込んでしまう、あるいは著しく診療や保育に支障が出る場合は、時期の変更を打診する正当な理由になります。

③ その職員にしかできない「代替不可能な重要業務」があるとき

他の職員では対応できない、その人独自の専門的な業務や、その日に完了しなければならない重大なタスクがある場合です。ただし、日頃から「属人化(その人にしかできない状態)」を放置している場合は、会社の管理不足とみなされることもあるため注意が必要です。

④ その日に外せない研修・教育訓練、または出張があるとき

以前から予定されていた重要な研修、行政による監査対応、あるいはその職員がメインで参加すべき出張などが重なっている場合です。

3. 【管理者必見】トラブルを防ぐための実務上の留意点

上記の4つの条件に当てはまる場合、法律上は「強制的に有給の日程を変更させること」が可能です。しかし、ここで感情的に「法律で認められているから、2日後の有給はダメ!変更しなさい!」と突っぱねるのは、実務上おすすめできません。

相手は感情を持つ「人間」。まずは話し合いから

特に介護・保育・医療の現場は、職員同士のチームワークとモチベーションが命です。強制的な命令を下してしまうと、職員の不満が溜まり、最悪の場合は「突然の退職」や「SNSへの悪評の書き込み」「労働基準監督署への駆け込み」といった二次トラブルに発展しかねません。

まずは、管理者(院長や施設長)から以下のようにアプローチすることをお勧めします。

  • 現状の共有: 「その日は〇〇さんの予約が詰まっていて、代替のスタッフも見つからないんだ」と、困っている状況を具体的に伝える。

  • 妥協案の提示: 「2日後からの旅行を、来週の〇〇日~〇〇日に変更してもらうことは難しいかな?」と、代替案を一緒に考える姿勢を見せる。

法律を盾に戦うのではなく、「お互いの事情を理解し合うための話し合い」を挟むことが、職場環境を維持するための実務的なテクニックです。

4. 2日前の申請は遅すぎる?就業規則で定めるべき「有給のルールとマナー」

今回の事例のように「2日前に旅行の申請をしてくる」という事態が起こる背景には、「職場内での有給取得のルールやマナーが曖昧になっている」という根本的な原因があります。

職員に気持ちよく、かつ現場に穴をあけずに有休を取得してもらうためには、就業規則で明確なルールを定め、周知徹底することが不可欠です。

◆ 「〇日前までの申請」は有効か?

労働基準法には「有給は何日前までに申請しなければならない」という具体的な期限の定めはありません。しかし、判例では「会社が代替要員を確保するために必要な、合理的な範囲内の期間」であれば、就業規則で申請期限を設けることは有効であるとされています。

あまりに長い期間(例:1ヶ月前までに申請など)は不合理とされる可能性が高いですが、「原則として7日前までに書面(またはシステム)で申請すること」というルールは、実務上も非常に合理的であり、有効です。

まずは、就業規則に以下の項目が正しく記載されているか確認しましょう。

  • 有給休暇の申請方法(書面なのか、LINEなどの連絡は不可なのか)

  • 申請の締め切り(例:前月〇日までのシフト提出時、または取得日の7日前まで)

  • 緊急時の対応(突発的な体調不良などの場合の事後振替ルール)

5. 職員への「マナー指導」が、強い組織を作る

ルール(就業規則)を作るだけでなく、朝礼やミーティングを通じて、職員へ「有給取得におけるマナーと配慮」について定期的に指導することも、社労士として強くお勧めしています。

有給は権利ですが、介護、保育、クリニックは「チームプレイ」で動いています。同僚に極端な負担をかけないよう、以下の4つの意識を職員に持ってもらうようアプローチしましょう。

指導すべき4つのマナー 具体的な内容
① 余裕を持った事前申請 旅行などの予定は、シフトが確定する前、あるいは少なくとも1〜2週間前には相談・申請する。
② 業務の引き継ぎ 自分が休んでいる間に発生する可能性のある業務や、担当している患者様・利用者様・園児の特記事項を事前に周囲へ共有しておく。
③ 代替要員への配慮 「お互い様」の精神を持ち、自分が休む代わりに、他の人が休むときには快くシフトを代わる姿勢を持つ。
④ 周囲への感謝の言葉 休み前や休み明けに「お休みをいただきありがとうございました」「ご協力ありがとうございました」の一言を添える。

こうした「お互い様の文化」が根付いている職場では、急な有給取得による不満やギスギスしたトラブルは自然と減少していきます。

6. まとめ:介護・保育・クリニックの有給トラブルは専門の社労士へ

職員からの急な有給休暇の申請に対し、単に「忙しいから」という理由で拒否することはできません。しかし、事前の調整を尽くしても代替要員が確保できないなど、「事業の正常な運営を妨げる事由」があれば、時季変更権を使って日程をずらしてもらうことは法的に正当な対応です。

大切なのは、以下の3ステップです。

  1. 就業規則で「7日前までの申請」などの合理的ルールを定める

  2. 万が一のときは、感情的に拒否せず「話し合い」で時期の変更を打診する

  3. 普段から「周囲への配慮と引き継ぎ」についてのマナー教育を行う

介護施設、保育園、クリニックは、一般的なオフィスワークとは異なり、現場の配置基準や独自のシフト体制があるため、労務管理が非常に複雑です。

「うちの現場の状況で、時季変更権は認められる?」

「トラブルにならない就業規則の書き方を知りたい」

とお悩みの経営者・院長先生は、ぜひ医療・福祉業界の労務管理に強い、専門の社会保険労務士(社労士)までお気軽にご相談ください。現場の実情に寄り添った、最適な解決策をご提案いたします。

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