医療

医療事業所様向け情報(経営)7月号②

医療機関における夏季賞与の支給状況

ここでは夏季賞与支給の参考資料として、病院と一般診療所における、直近5 年間(2014~2018年)の夏季賞与支給労働者1 人平均支給額(以下、1 人平均支給額)などを、事業所規模別にご紹介します。

5~29 人は1 人平均支給額が減少

厚生労働省の調査結果※から、事業所規模別に1 人平均支給額などをまとめると、下表のとおりです。

病院

2018 年の1 人平均支給額は5 ~ 29 人が121,203 円、30~99 人が324,561 円です。5~29 人では2015 年以降、10~12 万円台で推移し、30~99 人では2018 年に前年より20%以上増加しました。きまって支給する給与に対する支給割合は、どちらも1 ヶ月未満です。支給労働者数割合と支給事業所数割合は、5~29 人では2015 年以降は100%で推移し、30~99 人では2017 年以降は増加傾向にあります。

一般診療所

2018 年の1 人平均支給額は5~29 人が174,913 円、30~99 人が186,066 円でした。5~29 人は2017 年に20 万円を超えましたが、2018 年には14.0%の減少となりました。30~99 人では、2017 年以降は20 万円台を割り込んでいます。きまって支給する給与に対する支給
割合は病院と同様、1 ヶ月未満が続いています。支給労働者数割合と支給事業所数割合は、5~29 人が70%台後半~80%台前半で推移してい
ますが、30~99 人は100%を続けています。今年の夏季賞与は、どのような結果になるでしょうか。

※厚生労働省「毎月勤労統計調査」
日本標準産業分類に基づく16 大産業に属する、常用労働者5 人以上の約190 万事業所から抽出した約33,000 事業所を対象にした調査です。今回のデータは 2019 年 4 月に発表されたものです。きまって支給する給与に対する支給割合とは、賞与を支給した事業所ごとに算出した「きまって支給する給与」に対する「賞与」の割合(支給月数)の1 事業所当たりの平均です。支給労働者数割合は、常用労働者総数に対する賞与を支給した事業所の全常用労働者数(当該事業所で賞与の支給を受けていない労働者も含む)の割合です。支給事業所数割合とは、事業所総数に対する賞与を支給した事業所数の割合です。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/statsearch/filespage
=1&layout=datalist&toukei=00450071&tstat=000001011791&cycle=7&tclass1=000001015911&tclass2=000001040061&second2=1

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)7月号④

いよいよ9月に発効となる日・中社会保障協定

諸外国の中で、日本と人的交流がもっとも多い中国との社会保障協定ですが、2018年5月9日に署名が行われ、今年9月に発効となることが正式に決定しました。
そこで、この社会保障協定の概要と、現在締結されている各国との社会保障協定についてとり上げます。

1.社会保障協定の前提にある課題

①年金制度への二重加入の課題

従業員を海外勤務させ、勤務している相手国の年金制度の加入要件を満たした場合には、海外で勤務している期間について日本と相手国の年金制度に二重で加入することが必要となります。
その結果、両方の制度で二重に保険料を負担することになります。これは、外国人労働者を雇入れた場合にも同様のことがいえます。

②年金受給資格と保険料負担の課題

老齢年金を受給するためには、通常、日本においても海外の年金制度においても一定期間、該当する年金制度に加入する必要があり
ます。
しかし、短期間海外勤務をさせた場合や外国人労働者を短期間雇用した場合には、その期間だけ年金制度に加入することになり、老齢年金を受給するためには加入期間が不足します。その結果、支払った保険料が掛け捨てになるという問題が生じます。

2.現在締結されている社会保障協定

これらの課題を解決するため、日本と相手国との間で社会保障協定を締結し、いずれかの国の年金制度の加入を免除したり、年金の加入期間を通算して、将来年金を受給できるようにするなどの対応が行われています。この社会保障協定の内容は、国ごとに内容が異なり、年金のみの場合と、年金と医療保険の両方の場合があるため、個別に内容を確認す
る必要があります。
2019年6月1日時点における、日本の社会保障協定の締結状況は下表のとおりとなります。

すでに社会保障協定が締結されている国は現在18ヶ国あり、中国についてもこの9月1日に発効予定となりました。

今回の中国との社会保障協定の実施にあたり、事務手続きの詳細や注意事項等について、6月下旬に日本年金機構のホームページに掲載されることになっています。また日本年金機構(年金事務所および事務センター)では、中国の年金制度への加入が免除されるために必要な書類である「適用証明書」の交付申請を、協定発効日の1ヶ月前(2019年8月1日)より受け付ける予定です。

(来月に続く)

医療事業所様向け情報(労務)7月号③

育児休業中に一時的に勤務した場合の育児休業給付金の取扱い

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:現在、経理部門が決算業務で、とても忙しくしています。経理部門の従業員が昨年
     12月から育児休業を取っているので、短期間でもいいので一時的に出勤してもらお
     うと考えています。特に問題はないのですよね?

社労士 :繁忙期を乗り切るための一つの対策ですね。育児休業中のご本人はどのように考え
     ているのでしょうか。

総務部長:育児にも慣れてきて、短時間の勤務であれば問題ないとのことでした。ただし、雇
     用保険の育児休業給付金がもらえなくなってしまうのではないかと心配しています。

社労士 :確かに支給単位期間(※)に10日を超えて働き、かつ、80時間を超えて働いている
     ときは、育児休業給付金が支給されなくなるというルールがあります。

総務部長:ということは、引続き育児休業給付金が支給されるようにするためには、この基準
     を下回るような出勤日数や出勤時間にする必要があるということですね。

社労士 :育児休業給付金の受給ができるかという観点では、おっしゃるとおりです。もう一
     つは、勤務したときに支給される給与の額が関係してきます。

総務部長:一時的に出勤してもらうので、給与については休む前の月給を時給換算し、その時
     給額に勤務した時間数を掛けた額を支払う予定です。

社労士 :承知しました。育児休業給付金は、支給単位期間に、育児休業を開始したときに算
     出する賃金月額の13%を超える給与が支給されると調整の対象となり、80%以上の
     給与が支給されると支給されなくなります。

総務部長:休業している従業員が、休業する前にどの程度の給与の額をもらっていたかという
     ことが関係してくるのですね。今のところ、決算が終わるまでの2ヶ月弱の間、週2
     ~3回で1日当たり4時間程度の勤務を考えていましたが、育児休業給付金の支給額と
     の調整も含めて、どの程度、働いてもらうかを考えることにします。ありがとうご
     ざいました。

※育児休業を開始した日から1ヶ月ごとの期間(育児休業終了日を含む場合は、その育児休
業終了日までの期間)。

【ワンポイントアドバイス】
1. 会社の業務の繁忙等のため、育児休業中の従業員について、休業者本人の同意を得て一時的に労務の提供を受けることは可能である。
2. 育児休業中に、一定の出勤日数・出勤時間を超えて働くと育児休業給付金は支給されなくなる。
3. 育児休業中に一定額以上の給与が支給されたときは、育児休業給付金の一部が減額されたり、支給されなくなったりする。

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)7月号②

年次有給休暇の時季指定に関する実務上の注意点

4月より年10日以上の年次有給休暇(以下、「年休」という)が付与される従業員に対し、年休日数のうち少なくとも5日を取得させることが義務となりました。確実な取得に向けて、使用者(会社)が取得時季を指定して運用するケースもあることから、今回は、この使用者による時季指定に関する実務上の注意点をとり上げます。

1.就業規則の記載

今回の法改正では、従業員自らが年休を取得するなどして、5日の年休を取得すれば、改めて時季指定を行う必要はありません。しかし、取得日数が5日に満たない場合には、最終的には使用者が時季指定を行うことにより、確実に5日の年休を取得させる必要があります。
そもそも使用者による時季指定とは、会社が従業員の希望を聞いた上で、年休を取得する日をあらかじめ決めることをいいますが、これを行う際には、就業規則に時季指定を行う旨の規定が必要とされています。必ず記載しなければならない項目は、時季指定の対象となる労働者の範囲、時季指定の方法等です。

2.指定日までに退職した場合の対応

時季指定をしたものの、その指定した日までに従業員が退職するというケースが考えられます。このような場合には、従業員の希望を再度聞いた上で、退職日までに5日の年休を取得させることが原則的な取扱いになります。現実的には退職日までの期間が短いケースもありますが、このような場合も同様の取扱いとなります。
なお、実際に突然の退職により5日の年休を取得させることができなかったときは、労働基準監督署から個別の事情を踏まえた上で、会社に対して助言等が行われることになっています。

3.望ましくないとされる取扱い

この年休取得義務化の取扱いに関し、厚生労働省のリーフレット「年次有給休暇の時季指定を正しく取扱いましょう」において、以下のような取扱いは望ましくないとされています。

①法定休⽇ではない所定休⽇を労働⽇に変更し、その労働⽇について、使⽤者が年休として時季指定すること。
②会社が独自に設けている有給の特別休暇を労働⽇に変更し、その労働⽇について、使⽤者が年休として時季指定すること。

①は、実質的に年休の取得につながっていないことから、望ましくないとされています。
②は、今回の法改正をきっかけに特別休暇を廃止し、年休に振り替えることは、法改正の趣旨に沿わないとされています。特別休暇などの労働条件の変更は、従業員と会社が合意して行うことが原則になります。

年休の取得単位としては1日、半日、時間単位がありますが、この時季指定を行う際、従業員の意見を聴いた際に半日単位の年休の取得の希望があった場合、半日単位で行うことは差し支えないとされています。時間単位については時季指定を行うことはできず、また取得義務対象の5日の年休のカウントにも入れることはできないことから、誤った取扱いをしないようにしましょう。

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)7月号①

今国会で成立した人事労務に関連する改正法のポイント

2019年1月28日から開会されている通常国会も、まもなく会期が終了となります。今国会は働き方改革関連法のような大きな法案は提出されていないものの、実務で影響のある内容がいくつか成立しています。そこで今国会で成立した改正法のうち、人事労務管理に関連するものの概要を確認しておきましょう。

1.女性活躍の推進

2016年4月に女性活躍推進法が施行され、301人以上の従業員を雇用する事業主には、女性活躍推進法にかかる一般事業主行動計画を策定することなどが義務付けられました。今回の法改正により、義務となる事業主の範囲が、101人以上の事業主に拡大します。また、情報公表の強化のため、公表すべき項目が増えることになりました。

2.パワハラ防止対策の法制化

セクシュアルハラスメントと妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント(以下、「セクハラ等」という)は、既に法制化され、防止対策を取ることが事業主の義務となっています。今回、労働施策総合推進法が改正され、事業主に対して、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務が新設され、セクハラ等と同様に相談体制の整備等が求められることになりました。

3.健康保険の被扶養者の範囲変更

配偶者や父母を始めとした直系尊属等の一定の家族は、健康保険の被保険者と別居していても、その他の要件を満たせば被扶養者となることができます。そのため、国外に住む家族も被扶養者となることができました。これについて、医療費の抑制や不正受給の
防止の観点から、一定の例外を設けつつ、原則として、国内に居住していること等の要件が追加されました。

4.マイナンバーカードの取扱いの変更

①マイナンバーカードの健康保険証利用

現在、健康保険証とマイナンバーカードは別のカードとなっています。今回、健康保険法等が改正されたことにより、マイナンバーカードに健康保険の被保険者や被扶養者の資格に関する情報を記録させることができるようになりました。これにより、医療機関で診察を受けるとき等に、マイナンバーカードを提示し、医療機関等がオンラインで被保険者や被扶養者の資格を確認できることになります。

②マイナンバー通知カードの廃止

これまでマイナンバーは、マイナンバー通知カードにより通知され、マイナンバー通知カードとその他の証明書類を用いることで、マイナンバーの証明書として利用することができました。今後は、マイナンバーカードを普及させる目的等から、マイナンバー通知カードが廃止され、マイナンバーカードへの移行促進が行われます。

今のところ(2019年6月10日現在)、いずれの内容も国会で改正法が成立し、公布されたところであり、具体的な施行期日を含め、その詳細は明確になっていません。今後、政省令や指針が定められ、具体的に実務として対応が必要となる項目が出てきます。まずは概要としてこれらの内容を確認しましょう。

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(経営)6月号③

医療機関でみられる人事労務Q&A
『飲み会でのセクハラは業務外でも対応の必要があるか』

Q:

ある職員から、先日開催した医院の親睦を図るための飲み会で、同僚からセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)被害を受けたという相談がありました。このようなセクハラの問題にも、医院として対応が必要でしょうか。また、どのような対応が必要となるのでしょうか。

A:

「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(以下、「指針」という。)(平成28 年8 月2 日 厚生労働省告示第314 号)には、セクハラが問題とされる職場は必ずしも通常業務を行う場所だけではないことが示されています。また、裁判例では当事者だけではなく事業主に対して損害賠償命令がされるケースもあるため、医院として対応することは不可欠と考えられます。

詳細解説:

国は、男女雇用機会均等法等によって職員が性的な言動により不利益を受けたり、就業環境が害されることを禁止しており、さらに指針において事業主が行うべき具体的な措置を示しています。

1. 職場以外でも対応が必要か

この指針において「職場」とは、職員が業務を遂行する場所としつつ、業務を遂行している場所であれば通常業務をしている場所以外、例えば打合せをするための飲食店、患者の自宅も職場に含まれるとしています。裁判例の大半が業務をしていない飲み会についても職場として判断しているため、職場として取り扱うことが現実的です。また、セクハラが起きてしまうと職員間の関係を悪化させ、業務に支障をきたしてしまうことは想像に難くないことからも、職場内で起きたセクハラ事案と同様の対応が求められると考えられます。

2. セクハラ問題が起きた際の対応方法

職員から被害の相談があったにも関わらず医院が適切な対応を行わないと、職場環境配慮義務違反として損害賠償が求められる可能性があります。それを防ぐためにはまず、被害を受けた職員からその内容や状況を聞く必要があります。被害を受けた職員への状況確認の後には、加害者の職員にも事情を聞くようにします。また、その場を目撃した他の職員がいれば、状況をヒアリングすることも考えられます。
事実確認が済んだら、必要に応じて加害者の職員に懲戒処分を行うことを検討することとなります。

セクハラ問題は当事者同士の問題と考えられがちですが、医院が損害賠償を迫られたり、都道府県労働局の専門部署から是正指導を受けることがあります。セクハラが起きないよう、医院全体で日頃の言動から注意するように心がけるとともに、いざ問題が発生してしまった場合に速やかに適切な対応ができるようにしておきましょう。

(来月に続く)

医療事業所様向け情報(経営)6月号②

診療科目別の一般診療所数の増減

厚生労働省の発表によると、全国の一般診療所数は10 万施設を超えて推移しています。では診療科目別ではどうでしょうか。ここでは昨年12 月に発表された調査結果※から診療科目別の一般診療所の数などをみていきます。

1 万施設を超える診療科目は8 つ

上記調査結果から、2017 年と2008 年の診療科目別の一般診療所数をまとめると、下表のとおりです。

2017 年の施設数では内科が63,994 施設で最も多く、施設数全体に占める割合は63.1%となっています。次いで小児科が19,647 施設、消化器内科(胃腸内科)が18,256 施設になりました。また、外科、循環器内科、整形外科、皮膚科、リハビリテーション科も1 万施設を超えています。

10 年間の増減は

次に2008 年と2017 年の間の増減をみると、下表の一般診療所を除く39 診療科目のうち、増加が20、減少が19 となりました。

増加の中でも増減率が100%以上となったのが、腎臓内科、乳腺外科、病理診断科、糖尿病内科(代謝内科)の4 つでした。減少では、気管食道外科、放射線科、感染症内科、消化器外科(胃腸外科)が20%以上の減少となりました。

貴院の診療科目の状況はいかがでしょうか。

※厚生労働省「平成29 年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」
全国の医療施設を対象にした調査です。ここで紹介した数値は、重複計上されていますので、診療科目別の一般診療所数を合計しても一般診療所数とは合致しません。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/17/

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(経営)6月号①

外国人旅行者への医療提供の課題

国が目指す観光立国、来年の東京オリンピック・パラリンピック、2025 年の大阪万博と、外国人旅行者の増加が予想されますが、医療現場ではその受入れが課題です。今回は厚生労働省の調査結果※1 より、費用請求の実態に注目します。

1 点あたりいくらを請求するか

自由診療である外国人旅行者の診療価格設定は悩ましい問題。調査では「訪日外国人旅行客の医療費をどう設定しているか」の問いに対し、90%が「1 点あたり10 円」と回答しました。
外国人患者受入れの多い病院(観光庁訪日外国人旅行者受入医療機関等)では、「1 点あたり10 円」との回答は61%に留まり、27%が「1 点あたり20 円以上」で請求しています。

外国人旅行者の受入れには、言語対応や文化・風習への配慮等にも費用と時間を要します。しかし同調査によると、通訳料を別途請求している病院はわずか1%にすぎず、大半の病院において通訳料を請求していません。医療通訳の費用は自由診療だけでなく、社会保険診療においても請求可能です。

また、外国人旅行者の診療に伴い発生する旅行者保険に関する事務費用や、診療・治療に必要な患者情報について、外国と連絡を取る際に生じる事務費用についても、患者へ請求をすることができます。
今回の調査結果を受け、厚生労働省は通知※2を発し、この件の周知に取組んでいます。

18.9%が未収を経験

回収についても課題が浮き彫りとなりました。昨年10 月の1 ヶ月間に外国人患者を受け入れた病院のうち、18.9%が外国人患者による未収を経験しています。
病院あたりの未収金の発生は平均8.5 件、総額の平均は42.3 万円ですが、中には総額が100万円を超す病院もみられました。

(※1)厚生労働省「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果(概要版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000173230_00001.html
(※2)厚生労働省「社会医療法人等における訪日外国人診療に際しての経費の請求について(通知)医政総発0328 第1 号」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000497174.pdf

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)6月号④

働き方改革の一環として注目すべきフレックスタイム制

4月に施行された働き方改革関連法のうち、フレックスタイム制は導入が進んでいませんが、比較的大きな効果が見込まれることから、その改正のポイントと総労働時間に関する例外について確認しておきます。

1.フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、あらかじめ定められた総労働時間の中で、従業員が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めて働くことができる制度です。通常の労働時間制度であれば、始業が午前9時、終業が午後6時(途中1時間の休憩)の1日8時間労働というように、始業および終業時刻が固定的に決定されていますが、フレックスタイム制の場合、忙しい日については午前8時から午後8時まで11時間勤務し、比較的余裕がある日には午前11時から午後5時まで5時間勤務とすることなどにより、従業員が柔軟な働き方をすることができます。

2.清算期間を3ヶ月に延長

今回の大きな変更が清算期間の延長です。これまでフレックスタイム制は清算期間の上限が1ヶ月とされていましたが、これが3ヶ月に延長され、より柔軟に労働時間を調整することが可能になりました。例えば7月が繁忙期で9月が閑散期の場合、7月は法定労働時間の総枠を超えて働く一方、9月は7月の法定労働時間の総枠を超えた分だけ減らして働くことができます。ただし、時間外労働となる割増賃金の取扱いは複雑なため、厚生労働省のリーフレットなどを参考にあらかじめシミュレーションしておくことが求められます。

3.新設された完全週休2日制の例外

これまで完全週休2日制であっても、曜日の巡りによって、清算期間における総労働時間が法定労働時間の総枠を超えてしまい、総労働時間のみの勤務であっても、時間外労働が発生することがありました。
例えば清算期間の暦の日数が30日の月で所定労働時間が8時間、所定労働日数が22日(完全週休2日で当月8日の所定休日)であった場合、総労働時間は176時間となりますが、法定労働時間の総枠は171.4時間であり、4.6時間については時間外労働として割増賃金を支払う必要がありました。
この取扱いが改正され、週の所定労働日数が5日(完全週休2日制)の従業員を対象に、労使協定を締結することで、法定労働時間の総枠を清算期間内の所定労働日数に8時間を乗じた時間数を労働時間の限度とすることが可能となりました。これにより、上記の例では、所定労働時間を176時間とし、その時間を勤務したとしても、時間外労働は発生せず割増賃金の支払いも不要となります。

フレックスタイム制の活用は、育児や介護、病気の治療等と仕事との両立だけでなく、従業員のより効率的な働き方のひとつとして考えることができます。フレックスタイム制など、柔軟な労働時間制度の導入に関するご相談などがございましたら、当事務所までお問い合わせください。

(来月に続く)

医療事業所様向け情報(労務)6月号③

社会保険の添付書類の廃止や署名・押印の省略の動き

現在、行政手続きのコスト削減のための様々な取組みが進められています。資本金1億円超等のいわゆる大企業では、2020年4月1日以後に開始する事業年度から電子申請が義務化されるなど、電子化による効率化、生産性の向上は注目のポイントとなっています。一方、電子化以外にも手続き自体の省略や、添付書類の省略が認められるようになっていることから、ここではそうした動きについて確認しておきましょう。

1.添付書類の廃止

社会保険の手続きでは添付書類が求められるものがありますが、今回、以下に該当する手続きについて添付書類が廃止されることとなりました。

①資格喪失届および被保険者報酬月額変更届
の届出の受付年月日より60日以上遡る場合
②既に届出済である標準報酬月額を大幅に引き下げる場合

なお、添付書類の廃止に伴い、事業所が適正な届出処理を行っているかを確認するため、年金事務所が適用事業所の調査を重点的に行うことにしています。添付書類を用意すること自体は不要ですが、該当するような手続きの場合には、必ず確認の記録を残しておきましょう。

2.署名・押印等の省略

社会保険の届出は、事業主が提出者となるものと、被保険者等の申請者が事業主を通じて提出するものがあり、後者については申請者の署名または押印が必要になります。
次の届出の署名または押印は、事業主が申請者本人が届出を提出する意思を確認し、各届書の備考欄に「届出意思確認済み」と記載することにより、省略することができるようになりました。

①被保険者生年月日訂正届
②被扶養者(異動)届・第3号被保険者関係届
③年金手帳再交付申請書
④養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(申出の場合)
⑤養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(終了の場合)

なお、電子申請および電子媒体による申請では、署名または押印ではなく委任状を添付することになっていますが、この委任状が省略できることになりました。

3.適用開始時期と留意点

1および2の内容は2019年3月29日に、厚生労働省から日本年金機構へ通達されています。
通達の内容を確認すると、通達された日から適用されるように判断できますが、一方で2019年9月1日までは従前の例によることができるという記載もあり、年金事務所や事務センターによっては当面の間、添付書類や署名・押印が求められることもあるようです。
実務上は、管轄の年金事務所や事務センターに省略が認められるかを必ず確認の上、手続きを行うようにしましょう。

現状、届出書に被保険者等の署名または押印をもらうために、事業主と従業員の間で書類のやり取りが行われ、手続きが煩雑になったり、手続きに時間を要することになっています。
2のような取扱いにより、自社での書類の流れを整理し、業務効率化を目指したいものです。

(次号に続く)

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