コラム
1.パート職員が社会保険に加入する基準
パート職員が社会保険に加入する基準は、正職員数※が100人以下の病院・医院と101人以上の病院・医院(特定適用事業所)で違いがあります。具体的には以下のとおりです。 ※ 厳密には厚生年金保険の被保険者数で判断します。
<特定適用事業所以外の事業所>
正職員の1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が4分の3以上のパート職員が加入。
<特定適用事業所>
以下の3つの基準をすべて満たしたパート職員が加入。
① 1週間の所定労働時間が20時間以上である
② 賃金の月額が8.8万円以上である
③ 学生でない
パート職員がいう「年収106万円未満」とは、特定適用事業所の基準の②を年収に換算した額(8.8万円×12ヶ月≒106万円)を指していると思われます。なお、収入の判断は②のとおり賃金の月額で行うため、年収106万円はあくまでも目安の額に過ぎません。
2.106万円の壁と130万円の壁の関係
社会保険には106万円の壁と130万円の壁があるといわれますが、106万円の壁はすでにみたように、特定適用事業所において社会保険に加入すべき基準の1つです。社会保険に加入することで、勤務する病院・医院で保険料を納めることとなります。
一方の130万円の壁とは、年収が130万円以上になることで、配偶者や家族の健康保険の被扶養者や、国民年金の第3号被保険者から外れることを指します。被扶養者や第3号被保険者から外れた場合には、パート職員自身で、国民健康保険や国民年金に加入し、保険料を納める必要が出てきます。
3.変更となる特定適用事業所の範囲
特定適用事業所の範囲は、2024年10月から、正職員数※が51人以上の病院・医院まで拡大されます。また、国としては今後、最低賃金を引き上げることにより、これらの壁を意識せずに働けるような環境づくりを進める予定とされています。手取り収入を確保したいパート職員の関心が高い内容のため、その仕組みを理解しておくとよいでしょう。
日本経済新聞 朝刊 総合3(5ページ)2023/9/24
こども家庭庁は2024年度から、保育士不足の緩和へ保育士資格を持つ人の復職支援を拡大する。業務を手伝う「保育補助者」として保育所などが有資格者を雇う際に支援金を出す。就職希望者の職場見学に同行する専門アドバイザーの新設も検討する。
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>> 保育補助者はクラス担任や保護者への対応はしない。子どもの着替えや食事の世話など保育士の手伝いが中心となる。一般的に保育士より業務負担は少ない。保育士資格もいらない。
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>> 政府は保育士の負担を軽くするため、施設が補助者を雇用する支援金の制度を16年から始めた。21年には331の地方自治体を通じて交付した。支援金は現在、資格のない人だけを対象とする。
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>> 支援金の交付対象に「潜在保育士」と呼ぶ有資格者も加える。現在は有資格者は保育士として働くことを前提とするが、まず補助者として職場復帰したいとの要望があった。
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>> こども家庭庁が24年度の概算要求に支援金の支給要件の緩和を盛り込んだ。国が4分の3、自治体が4分の1を拠出し施設に給付する。定員が121人未満の施設は年に233万円ほど、121人以上だと467万円程度を支援する。
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>> 政府は「こども未来戦略方針」で保育の質の向上を今後3年間の計画に位置づけた。1人の保育士が担当する子どもの数を減らし目を行き届きやすくする。少子化で子どもの数は減るが、保育の質を向上させるため人員は必要となる。
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>> 政府は復職先を円滑に決めるため、保育所の就労環境や処遇の情報を提供する「保育士キャリアアドバイザー」を24年度に新設する。
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>> アドバイザーは就職希望者の職場見学に同行し、本人に代わり事業者に給与や勤務時間などを質問する。本人が直接聞きにくいことを引き出し納得のいく就職にしてもらう。早期の離職を防ぐ目的もある。
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>> こども家庭庁はアドバイザーを配置する自治体への月20万円の補助を概算要求に計上した。
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>> 保育士の資格を持つ登録者数(160万人超)のうち、実際は保育士として働いていない人は20年時点で102万8000人だった。10年間でおよそ1.6倍に増えた。東京都の調査によると、退職理由として職場の人間関係や給与、労働時間が多かった。
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>> 保育士の有効求人倍率は22年度で2.46倍と、全体の平均(1.31倍)に比べて高い。潜在保育士の復帰で現場の人手不足の解消を促す。
日本経済新聞 朝刊 1面(1ページ)2023/9/24
厚生労働省はパートや派遣といった有期雇用の労働者を正社員に転換した企業への助成金の要件を2024年度に緩和する。現在は同じ会社での雇用期間が通算6カ月以上3年以内の人を対象としているのを「6カ月以上」に変える。雇用の安定を後押しする。
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> 現行制度は有期労働者を正社員にした場合、中小企業には1人あたり57万円、大企業には42万7500円を最大20人分まで支給している。有期の雇用期間が3年を上回る場合は対象外となっていた。
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> 非正規の労働者を巡っては雇用の不安定さに加え、将来の低年金などの問題が指摘される。総務省の就業構造基本調査によると、非正規で働く女性は22年10月時点で1447万人に上る。女性の雇用者に占める割合は53.2%と推計され、厚労省は改善の余地があるとみている。
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> 今回あわせて助成金額も見直す。中小向けは60万円に、大企業向けは45万円に増額する。ただ、2人目以降はそれぞれ50万円、37万5千円に減額し、ばらまき色を薄めて財政に配慮する。
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> 労働契約法は雇用期間が通算5年を超えた場合に、労働者は無期雇用への転換を申請できると定める。助成金がなくても有期雇用から脱する手立てがあることを考慮し、5年超の労働者に関しては助成金額を半額に抑える。
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> 助成制度は13年度に導入し、22年度までの10年間で計78万人強の正社員転換を後押ししてきた。各業界で人手確保のため労働者を正社員として登用するなど処遇改善の動きは活発になっている。日本経済新聞 朝刊 1面(1ページ)2023/9/24
A 評価フィードバックを年2回実施し、さらに個別面談(毎月)にて課題解決のフォローを行っている。
解説)人事評価でもっとも大切なキーワードは何でしょうか。それは「透明性」と「納得感」です。透明性とは、人事評価でいえば、どういう評価項目で、だれがどのようなプロセスで評価をしているのかが明確であること。また「納得感」とは、なぜその評価結果になったのか被評価者が理解し、納得することです。しかしながらこの納得感が生まれるのはそう簡単にはいきません。なぜなら多くの職員は、自分は一所懸命仕事をし、それなりに仕事で貢献していると思っているからです。しかしながら、上司の評価がそのようなものでない場合には、だれしも心穏やかでは、いられないはずです。半ばあきらめて、表面的に納得したフリをしている場合も多いのではないでしょうか。それでは納得感を醸成するにはどうすればいいのか。まず、絶対に必要なのが、フィードバック面談です。面談では、自己評価と上司評価が明らかに違っている項目に着目し、その評価にした根拠を具体的に話し合うことで、お互いの視点や期待レベルを知ることができ、初めて「納得感」が醸成されてくるものです。
A 休職制度を設けるのであれば、休職と復職を命じるかどうかを判断する上での、公正な客観的な判断基準が必要です。その他にも就業規則に盛り込むべき内容は下記になります。
①休職について
・休職を命じる職員に要件
・休職を命じる判断基準
・休職期間
・休職中の賃金
・休職中の留意点
②復職について
・復職後の働き方
・復職を命じる判断基準
③休職期間完了時の取り扱い
上記の中で、休職を命じる判断基準では、例えば、「診断書の提出」はもちろん、「回復に何年もかかる場合には休職は命じない」または「業務外の同じ傷病が理由で欠勤と出勤を繰り返すようなときには休職は命じない」など、状況を想定しながら規定に落とし込んでいく作業が必要となります。休職期間については、「休職期間中であっても園は社会保険を負担しなければならないので、これまでの貢献度合いを考慮し、勤続年数が長い職員と短い職員では差を設ける」ことも大切です。
復職については、復職を命じる判断基準は、本人の復職願いの提出の他、主治医の診断書、本人との面談実施や園指定の医療機関の受診なども必要です。また、復職後、もし同じ傷病で欠勤した場合には復職を取消、直ちに休職を命じることとし、休職期間は、前の休職期間と通算すること等の規程も必要です。
休職期間満了後の取り扱いについては、回復を見込んで休職を命じたけれど、回復できない場合には、残念だけど退職とせざるを得ない、ということで、休職期間満了日をもって退職とします。
まずは、上記の内容を規定に明記しておくことで、いざというときには、冷静に対処できるようになります。
A 労働基準法41条の除外規定として、労基法上の管理監督者は深夜業務を除く、労働時間に関する規定は適用されないと定めています。まずは、労基法上の管理監督者とはどのよう方を指すのかを確認しておきたいと思います。ここでいう、「管理監督者」とは下記の要件を全て満たす方を指します。
1,人事権を持ち、事業経営にも参加している(ここでいう人事権とは、いわゆる異動を含む人事権で、人事評価しているだけでは不十分)
2,自分自身の勤務時間について自由裁量が認められている
3、一般社員と比べて、十分な報酬を得ている
これらの3点を、勤務の実態として適用されている必要があります。単に役職名では判断できません。つまり休日、時間外労働の規制をうけない「管理監督者」に該当するかどうかは、具体的な権限や給与、勤務実態で判断が必要ということになります。
例えば、多くの介護事業所ではシフト勤務で勤怠管理を行っていますが、常態として勤務シフトに入っている働き方をしているような管理者がいた場合、勤務時間の自由裁量がないと判断され、管理監督者ではなく、一般社員とみなされる可能性もあります。
先ほど、管理監督者に該当するか否かを判断するときに、単に役職名での判断ではなく、勤務の実態で判断しなければならないとしましたが、多くの介護事業では職責(役職)で、それを判断している場合が多い上に、介護保険制度における「管理者」と労基法における管理監督者を混同してしまうケースもあるので注意が必要です。一般的には、理事長、社長、施設長、事業所長、事務長くらいまでの立場の方がそれに該当するケースが多いと考えられます。もし、それ以下の役職の方(例えば、主任、副主任やリーダー等)を管理監督者の扱いにして残業代などを支給していない場合は、一度、その方の業務や給与の実態を確認してみる必要があると思います。その結果、管理監督職に該当しない方に、残業手当等を支給していない場合には、労基署からは残業代未払いの扱いとして、「3年間分を遡及して」支払うといった是正勧告を受けるリスクがあります。
2,また、管理監督者には残業代は支給されませんが、勤務時間管理自体は必要となります。これは、給与計算上の必要性ではなく、管理監督者の健康管理の問題によるものです。管理監督者はその責任の重さから、過重労働になってしまうケースは相変わらず多く、それが深刻化するとメンタル疾患につながる場合も見られます。従って、経営者や人事担当者は管理監督者の労働時間には常に注意を払い、管理監督者の健康管理に十分注意することが重要です。
3,さて、今回ご質問のあった管理監督者における遅刻・早退・欠勤に関する給与の扱いについてですが、その方が管理監督者に該当することを前提とした場合に、先述の要件の「勤務時間の自由裁量」の点が問題になります。
つまり、管理監督者は勤務時間に裁量が認められていることから、始業時刻から遅れて出社(遅刻)しても給与減額扱いにはなりませんし、また終業時刻より遅くなっても残業手当はつかないことになります。
ただ、欠勤の扱いにつきましては、管理監督者であっても「就業義務」自体はありますので、その義務が果たされない場合に該当すると判断され、給与も欠勤控除として減額することになります。
厚生労働省は21日、介護施設・事業所の業務継続計画(BCP)の策定状況を探った調査の結果を公表した。
結果はグラフの通り。「未着手」としたところは、感染症を想定したBCPで15.6%、自然災害を想定したBCPで17.1%だった。また、双方とも最多は5割強の「策定中」となっている。

この調査は今年7月に実施されたもの。全国のおよそ5000の介護施設・事業所から回答を得ている。結果は21日の専門家会議に報告された。
BCPの策定は、2021年度の介護報酬改定で全ての介護施設・事業所に義務付けられた。現在は3年間の経過措置の期間中。概ね半年後の来年4月から完全施行される予定となっている。
調査結果ではこのほか、規模の小さい介護施設・事業所ほどBCPの策定が遅れていることも明らかになった。
例えば感染症を想定したBCP。「未着手」の割合をみると、職員数が50人以上のところは7.1%にとどまっている一方で、職員数が9人以下のところは19.4%と高かった。これは自然災害を想定したBCPでも同じ傾向となっている。(介護ニュースより)
どんどん複雑になって国民からみて分かりにくい制度になっている − 。委員からはそんな不満の声があがった。
厚生労働省は15日の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で、「介護報酬体系の簡素化」をテーマとして取りあげた。来年4月に控える次の改定に向けて具体策を検討していく方針だ。
厚労省によると、今の介護報酬のサービスコード数は実に2万1884。制度発足当初(1760)の12.4倍に膨らんでいる。
主なサービスの加算数の変化は表の通り。1つのサービスに70以上の加算があることだけでなく、当初は非常にシンプルな構造だったことにも改めて驚くデータだ。

各サービスの加算は、その算定率の格差が非常に大きい。
例えば、2021年度から2022年度の算定率が平均80%を超える加算は12種類(延べ54種類)。特養の「初期加算」や老健の「夜勤職員配置加算」、通所介護の「入浴介助加算I」などがこれに該当する。
一方で、2022年度に全く算定されていない加算は20種類(延べ194種類)。これを除いて、算定率が平均1%未満の加算(*)が更に41種類(延べ175種類)あると報告されている。
* ひと月あたりの算定事業所数が平均9事業所以下のものに限る。
厚労省は今後、多くの介護施設・事業所が算定している加算を基本報酬に包括化したり、ほとんど算定されていない加算を整理したりすることも含め、報酬体系の簡素化をめぐる議論を深めていく考えだ。(介護ニュースより)
ここでは、今年5月に発表された資料※から、社会福祉施設における労働災害の発生状況をみていきます。
死傷者数は12,000人台で推移
上記資料から、社会福祉施設における労働災害(新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除いた労働災害)による休業4日以上の死傷者数(以下、死傷者数)をまとめると、表1のとおりです。
2022年の死傷者数は12,780人で、2021年から0.1%減少しました。死傷年千人率は2.846で、死傷者数と同様に減少しました。ただし2020年以前と比較すると、高い水準が続いています。
腰痛や転倒が4,000人超に
2022年の主な事故の型別死傷者数をみると、動作の反動・無理な動作(腰痛等)が4,475人で最も多くなりました。次いで転倒が4,379人となっています。動作の反動・無理な動作は2021年から減少しましたが、転倒は3年連続の増加です。その他、墜落・転落は増加が続いており、交通事故(道路)と激突は2021年から減少しました。
月別の死傷者数は1月が最多に
2022年の死傷者数を月別にまとめると、表2のとおりです。
2月と12月以外は1,000人を超えています。年間の死傷者数に占める割合では、1月が9.7%で最も高くなりました。なお、2021年も1月の割合が最も高くなっていることから、1月は1年の中で死傷者が多くなる傾向があるのかもしれません。
近年の社会福祉施設における労働災害は、高い水準で発生しています。自施設の傾向を把握し、労働災害を減らしていくための取組が今後も求められます。
※厚生労働省「令和4年労働災害発生状況の分析等」5月23日発表の「令和4年の労働災害発生状況を公表」で参考資料として公開された、2022年(令和4年)の労働災害発生状況を取りまとめた資料です。データの詳細は次のURLのページから確認いただけます。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33256.html
医療機関を利用する高齢者がどのようなことに困っているか、ご存じでしょうか。ここでは、今年4月に発表された調査結果※から、高齢者が医療サービスを利用するにあたって困っていることをみていきます。
実は6割弱は困っていない
上記調査結果から、高齢者が医療サービスを利用するにあたって困っていることをまとめると、下表のとおりです。
男女とも、「特に困っていることはない」が最も高くなりました。男性が56.7%、女性で58.8%です。ただしその割合は、男女ともに、年代が上がるにつれて低下しています。加齢により困ることが増えてくることがわかります。
男性は時間と費用に困る
男性全体の困っていることの中で、割合が最も高いのは、「診察に時間がかかりすぎる」で21.8%となりました。次いで「費用がかかりすぎる」が15.7%、「医療機関が近くにない」が6.7%でした。男性は年代別でみても、これらの割合が高くなりました。
女性は時間と距離に困る
女性全体の困っていることでは、男性と同様に「診察に時間がかかりすぎる」の割合が最も高く、18.1%となりました。次いで「医療機関が近くにない」が9.8%、「費用がかかりすぎる」が9.5%でした。年代別では、75~84歳で「医療機関が近くにない」が 2 番目になりました。
男性と女性の比較では、男性の方が費用に困る割合が高く、女性の方が医療機関までの距離や交通手段に困る方が多い状況です。貴院における高齢患者への対応方法などの参考になりましたら幸いです。
※内閣府「令和4年高齢者の健康に関する調査結果(全体版)」全国の65歳以上の男女4,000人に対して2022年10~11月に行われた調査です。詳細は次のURLのページから確認いただけます。https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/r04/zentai/pdf_index.html