福祉

メンタル疾患スタッフへの対応実務~トラブルを防ぐ「休職制度」運用ポイント~

介護施設、保育園、クリニックの経営者・管理者様に向けて、メンタル疾患を抱えるスタッフの休職・復職における正しい実務対応を専門社労士が分かりやすく解説します。

「休職期間が終わっても復職できそうにないスタッフがいるけれど、解雇してもいいの?」

このようなお悩みを抱えていませんか?

実は、安易な「解雇」は不当解雇として深刻な法的リスクを伴います。

トラブルを防ぎ、円満に解決するための鍵は「就業規則」を活用した「自然退職(自動退職)」の仕組みです。

本動画では、対人サービスを担う現場ならではの特殊性を踏まえ、復職可否を判断する4つのステップや、就業規則で見直すべき重要チェックポイントを徹底解説します!

📌 タイムスタンプ(目次)

0:00 オープニング

0:45 メンタル疾患スタッフへの対応で「解雇」がハイリスクな理由

2:10 トラブルを未然に防ぐ「自然退職(自動退職)」の仕組み

3:40 そもそも「休職制度」とは何か?(経営者の人事命令としての発令)

5:15 復職可能かどうかの判断基準:4つのステップ

7:30 介護・保育・医療現場における「安全配慮義務」の特殊性

9:15 今すぐ確認!就業規則の健全性チェックリスト

10:45 まとめ:スタッフと組織を守る「強い就業規則」の作り方

社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング

当事務所は、介護事業所・保育園・クリニックに特化した人事労務コンサルティングを提供しています。現場の負担や特有の課題に寄り添い、トラブルを未然に防ぐ就業規則の作成から、労務問題の具体的な解決までトータルでサポートいたします。 現場の労務管理でお困りの経営者様、院長・園長先生は、どうぞお気軽にご相談ください。

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【社労士解説】「2日後に有給で旅行に行きます」は拒否できる?介護・保育・クリニックの正しい労務対応とトラブル防止策

 

「2日後に旅行に行くので、有給休暇(年次有給休暇)をください」

もし、現場の職員からこのように急に有給申請されたら、経営者や院長先生はどう対応すべきでしょうか。特に、ただでさえ人手不足な上に、その日が1年で一番忙しい繁忙期や、シフトがカツカツの日だったとしたら、「今回は拒否したい…」と思うのが本音かもしれません。

介護施設、保育園、クリニックといった「人が人をケアする現場」では、1人の欠員がダイレクトに現場の崩壊やサービスの低下につながるため、有給休暇の取得を巡るトラブルが後を絶ちません。

今回は、医療・福祉業界専門の社会保険労務士(社労士)が、「職員からの急な有給申請は拒否できるのか?」「会社が持つ『時季変更権』の正しい使い方」、そして「急な有給申請に振り回されないためのルール作り」までを徹底解説します。

1. 結論:有給休暇の「拒否」は原則不可!ただし「時季の変更」は可能

まず法律上の結論からお伝えすると、会社が職員の有給休暇の取得を「完全に拒否(消滅)」させることは、原則としてできません。

有給休暇は、労働基準法によって労働者に認められた強い権利です。たとえその理由が「プライベートな旅行」であっても、取得理由を理由に会社が拒否することは違法となります。

◆ 会社に認められた唯一の対抗策「時季変更権」とは?

しかし、会社側にも現場を守るための権利が認められています。それが「時季変更権(じきへんこうけん)」です。

労働基準法第39条第5項(要約)

労働者が請求した日に有給休暇を与えることが、**「事業の正常な運営を妨げる場合」**においては、会社は他の日に変更させることができる。

つまり、「有給をあげるな(拒否)」とは言えませんが、「その日はどうしても困るから、別の日にずらしてほしい(変更)」と主張することは法律上可能なのです。

2. 単に「忙しいから」はNG!時季変更権が認められる「4つの判断基準」

ここで最も重要になるのが、「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、具体的にどのような状態を指すのかという点です。

裁判例などを踏まえると、単に「今日は業務が忙しいから」「いつも人手が足りないから」という慢性的な理由だけでは、時季変更権の行使は認められません。会社側が「代替要員を確保するために最善の努力を尽くしたけれど、どうしても無理だった」という客観的な事実が必要です。

特にシフト制で動く介護施設、保育園、クリニックにおいて、時季変更権が認められやすいのは以下のような4つのシチュエーションです。

① シフト変更の調整を尽くしたが、代替要員が確保できないとき

急な申請に対して、管理者が他の職員に「代わりにシフトに入ってもらえないか」と打診したり、出勤日の変更を調整したりしたものの、どうしても代わりの人が見つからなかった場合です。

② 有給の取得希望者が同じ日に重複し、現場が回らなくなるとき

同じ日、同じシフトの時間帯に、複数の職員から同時に有給申請が出てしまったケースです。全員を休ませると配置基準(人員基準)を割り込んでしまう、あるいは著しく診療や保育に支障が出る場合は、時期の変更を打診する正当な理由になります。

③ その職員にしかできない「代替不可能な重要業務」があるとき

他の職員では対応できない、その人独自の専門的な業務や、その日に完了しなければならない重大なタスクがある場合です。ただし、日頃から「属人化(その人にしかできない状態)」を放置している場合は、会社の管理不足とみなされることもあるため注意が必要です。

④ その日に外せない研修・教育訓練、または出張があるとき

以前から予定されていた重要な研修、行政による監査対応、あるいはその職員がメインで参加すべき出張などが重なっている場合です。

3. 【管理者必見】トラブルを防ぐための実務上の留意点

上記の4つの条件に当てはまる場合、法律上は「強制的に有給の日程を変更させること」が可能です。しかし、ここで感情的に「法律で認められているから、2日後の有給はダメ!変更しなさい!」と突っぱねるのは、実務上おすすめできません。

相手は感情を持つ「人間」。まずは話し合いから

特に介護・保育・医療の現場は、職員同士のチームワークとモチベーションが命です。強制的な命令を下してしまうと、職員の不満が溜まり、最悪の場合は「突然の退職」や「SNSへの悪評の書き込み」「労働基準監督署への駆け込み」といった二次トラブルに発展しかねません。

まずは、管理者(院長や施設長)から以下のようにアプローチすることをお勧めします。

  • 現状の共有: 「その日は〇〇さんの予約が詰まっていて、代替のスタッフも見つからないんだ」と、困っている状況を具体的に伝える。

  • 妥協案の提示: 「2日後からの旅行を、来週の〇〇日~〇〇日に変更してもらうことは難しいかな?」と、代替案を一緒に考える姿勢を見せる。

法律を盾に戦うのではなく、「お互いの事情を理解し合うための話し合い」を挟むことが、職場環境を維持するための実務的なテクニックです。

4. 2日前の申請は遅すぎる?就業規則で定めるべき「有給のルールとマナー」

今回の事例のように「2日前に旅行の申請をしてくる」という事態が起こる背景には、「職場内での有給取得のルールやマナーが曖昧になっている」という根本的な原因があります。

職員に気持ちよく、かつ現場に穴をあけずに有休を取得してもらうためには、就業規則で明確なルールを定め、周知徹底することが不可欠です。

◆ 「〇日前までの申請」は有効か?

労働基準法には「有給は何日前までに申請しなければならない」という具体的な期限の定めはありません。しかし、判例では「会社が代替要員を確保するために必要な、合理的な範囲内の期間」であれば、就業規則で申請期限を設けることは有効であるとされています。

あまりに長い期間(例:1ヶ月前までに申請など)は不合理とされる可能性が高いですが、「原則として7日前までに書面(またはシステム)で申請すること」というルールは、実務上も非常に合理的であり、有効です。

まずは、就業規則に以下の項目が正しく記載されているか確認しましょう。

  • 有給休暇の申請方法(書面なのか、LINEなどの連絡は不可なのか)

  • 申請の締め切り(例:前月〇日までのシフト提出時、または取得日の7日前まで)

  • 緊急時の対応(突発的な体調不良などの場合の事後振替ルール)

5. 職員への「マナー指導」が、強い組織を作る

ルール(就業規則)を作るだけでなく、朝礼やミーティングを通じて、職員へ「有給取得におけるマナーと配慮」について定期的に指導することも、社労士として強くお勧めしています。

有給は権利ですが、介護、保育、クリニックは「チームプレイ」で動いています。同僚に極端な負担をかけないよう、以下の4つの意識を職員に持ってもらうようアプローチしましょう。

指導すべき4つのマナー 具体的な内容
① 余裕を持った事前申請 旅行などの予定は、シフトが確定する前、あるいは少なくとも1〜2週間前には相談・申請する。
② 業務の引き継ぎ 自分が休んでいる間に発生する可能性のある業務や、担当している患者様・利用者様・園児の特記事項を事前に周囲へ共有しておく。
③ 代替要員への配慮 「お互い様」の精神を持ち、自分が休む代わりに、他の人が休むときには快くシフトを代わる姿勢を持つ。
④ 周囲への感謝の言葉 休み前や休み明けに「お休みをいただきありがとうございました」「ご協力ありがとうございました」の一言を添える。

こうした「お互い様の文化」が根付いている職場では、急な有給取得による不満やギスギスしたトラブルは自然と減少していきます。

6. まとめ:介護・保育・クリニックの有給トラブルは専門の社労士へ

職員からの急な有給休暇の申請に対し、単に「忙しいから」という理由で拒否することはできません。しかし、事前の調整を尽くしても代替要員が確保できないなど、「事業の正常な運営を妨げる事由」があれば、時季変更権を使って日程をずらしてもらうことは法的に正当な対応です。

大切なのは、以下の3ステップです。

  1. 就業規則で「7日前までの申請」などの合理的ルールを定める

  2. 万が一のときは、感情的に拒否せず「話し合い」で時期の変更を打診する

  3. 普段から「周囲への配慮と引き継ぎ」についてのマナー教育を行う

介護施設、保育園、クリニックは、一般的なオフィスワークとは異なり、現場の配置基準や独自のシフト体制があるため、労務管理が非常に複雑です。

「うちの現場の状況で、時季変更権は認められる?」

「トラブルにならない就業規則の書き方を知りたい」

とお悩みの経営者・院長先生は、ぜひ医療・福祉業界の労務管理に強い、専門の社会保険労務士(社労士)までお気軽にご相談ください。現場の実情に寄り添った、最適な解決策をご提案いたします。

『産前産後休業と年次有給休暇の関係』

Q)当院には、まもなく産前産後休業(以下、産休)に入る職員がいます。年次有給休暇(以下、年休)が、数日残っているのですが、この年休を産休中に取れ
るのでしょうか?

 

A)産休中は、労務の提供義務が消滅しているため、年休を取得することはできません。ただし、産休前に年休の請求があった場合には、原則として産前休業
期間に限り、請求があった日に年休を取得することができます。

 

詳細解説:
1.産休と年休の関係
産休は、妊娠中・出産後の母体保護を目的とした労働基準法に基づく休業制度です。産前休業は出産予定日前6週間(多胎妊娠の場合には14週間)であり、
産後休業は出産日以後8週間です。産前休業は職員の請求に基づいて与える義務があり、産後休業は請求の有無にかかわらず与える義務があります。ただし、出産後6週間を経過
した職員については、一定の条件のもと、就業が認められています。
年休は、労働日について労務の提供義務を免除するものであることから、労務の提供義務が消滅している産休中に取得することはできません。そのため、産休中の職員から年休
の請求があった場合、医院は年休の取得を認める必要はありません。


一方で、産前休業を請求できる期間に、職員が産前休業を請求せずに年休を請求した場合には、労務の提供義務は消滅していないため、医院は年休の取得を認めることになりま
す。なお、産後休業は請求の有無にかかわらず、原則として就業が禁止されているため、職員から年休の請求があったとしても年休の取得を認める必要はありません。


2.年休付与日到来による消滅と付与
労働基準法では、年休の付与日から2年を経過したときに、時効により年休は消滅すると規定されています。よって、産休中に時効を迎えた年休は消滅します。
次に付与については、産休中に付与日が到来し、年休付与要件を満たしている場合、医院は年休を付与しなければなりません。なお、付与された年休は、産休から復帰した後に取
得することが可能です。
産休中には、一定の要件を満たすことで健康保険から出産手当金が支給されます。出産手当金は、出産のために働くことができず、給与が支払われない場合に支給されるもので
す。産前休業中に年休を取得すると、出産手当金が支給されないことがあるため、対象者には誤解のないように事前の説明が求められます。

【社労士監修】クリニック・介護・保育園の正しい労務指導|「厳しい注意」はどこからパワハラになる?ハラスメント訴えへの誠実な対応実務

 

医療・福祉の現場(クリニック、介護施設、保育園)は、人命や安全を預かる特性上、一歩間違えれば重大な事故に繋がりかねない緊張感があります 。そのため、経営者や管理職がスタッフに対して「時に厳しく指導せざるを得ない場面」があるのは当然のことです

しかし、現場のリーダーから「問題行動のある職員を厳しく指導したいが、パワハラと言われるのが怖くて強く言えない」という悩みの声を耳にすることが増えています 。また、職員から「これってハラスメントです」と訴えがあった際、法人としてどこまで対応すべきか苦慮しているケースも少なくありません

本記事では、厚労省の指針に基づき、「業務上の適正な指導」と「パワハラ」の境界線を、クリニック・介護・保育園の具体例を交えて解説します 。また、ハラスメントの訴えがあった際の法人の対応義務についても実務的な視点から紐解きます


1. そもそも「職場のパワーハラスメント(パワハラ)」の定義とは?

客観的な指導を行うための前提として、まずは法律および厚生労働省が定める「パワーハラスメント」の3つの定義を確認しておきましょう 。職場におけるパワハラとは、同じ職場で働く者に対して、以下の3つの要素をすべて満たす行為を指します

パワハラの3要素 概要

① 優越的な関係を背景とした言動

職務上の地位(上司から部下)だけでなく、専門知識や経験の差、人間関係のグループなど、抵抗や拒絶が難しい関係性を背景にしていること 。※部下から上司、同僚間も含みます

② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

社会通念に照らし、明らかに業務上の必要性がない、または指導の手段・態度が不適当であること

③ 労働者の就業環境が害されること

身体的・精神的な苦痛を与えられ、労働者が能力を十分に発揮できないなど、看過できない程度の悪影響が生じること

【重要】「適正な業務指示・指導」はパワハラではない

逆を言えば、「客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導」については、職場のパワハラには該当しません 。指導される側が主観的に「厳しくて不快だった」「傷ついた」と感じたとしても、それが業務上必要な内容であり、かつ社会通念上相当な方法であれば、法律上のパワハラとは認められないのです


2. 明らかな「問題職員」への厳しい指導もパワハラになるのか?

結論から申し上げると、「業務の性質や内容に照らして重大な問題行為を行った従業員に対して、一定程度注意をすること」はパワハラには該当しません

クリニック、介護施設、保育園など、患者様、利用者様、園児の命や安全に直結する職場では、業務の必要性や緊急性が高い場面が多く存在します 。そのため、重大なミスや問題行動に対して「厳しく注意・指導すること」は一定程度許容されます

厚生労働省のいわゆる「パワハラ指針」でも、精神的な攻撃(脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など)には該当しない例として、具体的に以下の2つを挙げています

### 【厚労省指針】パワハラに該当しないと考えられる例 1. 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること。 2. その業務の内容や性質に照らして重大な問題行為を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。

医療・福祉・保育の現場における「パワハラにならない」具体例

  • クリニック

    処方箋の確認ミスや医療機器の誤操作など、患者の健康に直結する重大なミスを繰り返す看護師や医療事務に対し、「命に関わる現場なのだから、二度とこのような不注意を起こさないでください」と、強い口調でその場で注意を促す行為。

  • 介護施設

    移乗介助時の手順を無視し、利用者様を転倒させるリスクのある危険な行動を取ったヘルパーに対し、事故を未然に防ぐためにその場で語気を強めて制止・注意する行為。

  • 保育園園児のアレルギー確認を怠って給食を提供しようとした保育士、あるいは遅刻や無断欠勤を繰り返し、シフトに多大な支障を出しているにもかかわらず改善の兆しがない職員に対し、面談室で一定程度強く叱責・指導する行為

これらはすべて「業務上必要かつ相当な範囲」であり、適正な労務指導といえます


3. 「指導」が「パワハラ(精神的な攻撃)」へ変わる境界線

いくら職員側に問題(遅刻、ミス、規律違反)があったとしても、指導の「やり方」が社会通念を逸脱してしまえば、それはパワハラ(精神的な攻撃)と判断されるリスクがあります 。経営者や管理職が特に注意すべき「境界線」は以下の3点です。

① 人格否定や業務に関係のない暴言(アウト)

「だからお前はダメなんだ」「育ちが悪い」「給料泥棒」「辞めてしまえ」など、問題行為の指摘を超えて、職員個人の人格や存在自体を否定する言動は、いかなる理由があってもパワハラになります 。指導すべきは「行為(ミスや遅刻)」であり、「人格」ではありません

② 他の職員の前で見せしめのように叱責する(原則アウト)

他のスタッフや、クリニックの患者様、保育園の保護者などの前で、大声で長時間にわたり怒鳴り散らす行為は、必要性の範囲を超え、相手に過度な精神的苦痛を与える(名誉毀損や侮辱にあたる)ためパワハラとみなされやすくなります 。強い注意を行う際は、個室(面談室など)に呼んで1対1で行うのが原則です。

③ 過去の終わったミスを執拗に責め立てる(アウト)

今回の問題行為とは直接関係のない、数ヶ月前・数年前のミスまで引っ張り出してきて、「あんたはあの時もそうだった」と長時間ネチネチと責め立てる行為は、業務上の必要性を欠くため不適切です。


4. スタッフからの「ハラスメントの訴え」に法人はすべて対応すべきか?

スタッフから「上司からパワハラを受けました」「同僚からセクハラ(セクシャルハラスメント)をされています」といった訴えがあった際、法人側は「原則としてすべてに対応しなければならない」というのが結論です

「あの職員は被害妄想が激しいから」「ただの好き嫌いの感情論だろう」と経営陣が主観的に判断し、放置することは絶対に避けてください。

厚労省指針における「広く相談に対応する義務」

この点については、厚生労働省の指針にも明確に記載されています 各種ハラスメントに該当するかどうか客観的に見て微妙なケースであっても、雇用側は広く相談に対応する義務があると指摘されています

すべての訴えに対応すべき2つの実務的理由

  1. 相談者本人が気づいていない「別の重大な論点」が浮上するため 当初は「上司から厳しく当たられた(パワハラ)」という相談であっても、丁寧にヒアリングや事実調査を進める過程で、「実はその管理職がシフトを不正に操作していた」「業務上横領の疑惑がある」「他の職員にも隠れてセクハラを行っていた」といった、経営上の重大な不正・リスクが発覚することが実務上よくあります

  2. 放置することでハラスメントが深刻化・泥沼化するため 「大したことではない」と初期対応を怠ると、被害を訴えた職員のメンタルヘルス不調(うつ病など)を招いたり、職場全体の士気が低下して連鎖退職に繋がったりします。さらに、労働基準監督署への駆け込みや、法人を相手取った損害賠償請求訴訟など、法的トラブルへと発展するリスクが跳ね上がります


5. 【経営者向け】ハラスメント訴えがあった初期対応の4ステップ

もし職員からハラスメントの相談があった場合、法人は以下のステップに沿って誠実かつ迅速に対応を進める必要があります。

【ステップ 1】相談窓口でのヒアリング(プライバシーの保護)
       ▼
【ステップ 2】事実関係の調査(加害者側・第三者への確認)
       ▼
【ステップ 3】ハラスメントの有無の判定(客観的・多角的な判断)
       ▼
【ステップ 4】適切な措置と再発防止(処分、配置転換、環境改善)

ステップ 1:相談者からのヒアリング(傾聴と秘密厳守)

まずは相談者の話を丁寧に聞きます。この際、「プライバシーの厳守」「相談したことによって不利益な扱いを受けないこと」を明確に伝え、安心感を与えます。最初から「それはパワハラじゃないよ」と否定せず、事実関係(いつ、どこで、誰に、何を言われたか)をメモに記録します。

ステップ 2:行為者(加害者とされる側)や第三者への事実調査

相談者の同意を得た上で、相手方(上司や同僚)からも話を聴取します。また、言動の目撃者がいる場合は、周囲の職員からも客観的な状況を確認します。双方の意見が食い違うことが多いため、感情論に流されず事実関係を整理することが重要です。

ステップ 3:ハラスメントの有無の客観的判断

集まった証拠や双方の主張を元に、法人の就業規則や厚労省の指針(前述の3要素)に照らし合わせ、ハラスメントに該当するかを判断します。判断が難しい場合は、顧問弁護士や社会保険労務士などの専門家に意見を求めるのが賢明です。

ステップ 4:事後措置と再発防止策の実施

ハラスメントが認められた場合は、行為者に対して就業規則に基づく処分(譴責、減給、出勤停止など)や配置転換を行います。また、ハラスメントとまでは言えない「適正な指導」であった場合でも、相談者の誤解を解き、今後のコミュニケーションの改善を促すなどのフォローが必要です。


6. まとめ:健全な職場環境と適切な指導を守るために

クリニック、介護施設、保育園を安定して経営していくためには、「問題行為への毅然とした指導」「ハラスメントのない安心安全な職場環境」のどちらも欠かすことはできません

  • 問題社員への一定の強い注意は、業務上必要であればパワハラにはなりません。 ただし、感情的な暴言や人格否定に走らないよう、指導する側のスキルアップ(管理職研修など)が必要です

  • 職員からのハラスメントの訴えは、いかなる場合も放置せず、広く相談に対応する義務があります。

当労務管理事務所では、クリニック・介護・保育園に特化した就業規則の整備や、管理職向けのハラスメント防止研修、ハラスメント外部相談窓口の受託を行っております。「これはパワハラになる?」「問題職員への対応に困っている」という経営者・人事担当者様は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

 

採用面接で虚偽回答があった場合に合法的に解雇はできますか? 医療・介護・保育現場の信頼を守る「経歴詐称」への法的対応と防衛策

 

1. はじめに:人手不足の裏に潜む「採用リスク」

医療、介護、保育の現場において、人手不足は深刻な経営課題です。「一人でも多くの職員を確保したい」という切実な思いから、採用基準が緩やかになってしまったり、選考時の確認が不十分になったりするケースは少なくありません。

しかし、こうした状況を背景に、近年増えているのが「経歴詐称」を巡るトラブルです。 「以前の職場をトラブルで辞めたことを隠していた」「持っていると言っていた資格が実は嘘だった」……。発覚した時、経営者や事務局長が抱く憤りは計り知れません。

「嘘をついて入職したのだから、即刻解雇だ!」 そう考えるのは自然な反応ですが、労働法という枠組みの中では、たとえ嘘があったとしても「直ちに解雇」が認められるとは限りません。一歩間違えれば、法人側が「不当解雇」として訴えられるリスクすら孕んでいます。

本記事では、医療・介護・保育専門の社労士の視点から、経歴詐称があった場合の解雇の妥当性と、組織を守るための具体的な実務対応について詳しく解説します。


2. 経歴詐称と解雇の法的判断基準

職員の採否を判断する際、応募者の経歴は極めて重要な判断材料です。法人は「誰を雇うか」を決める「採用の自由」を持っており、その判断のために真実を申告させる権利があります。

履歴書の記載や面談での回答に虚偽があり、「もし真実を知っていたら採用しなかった」と言えるほど重大なものであれば、解雇の理由は「客観的に合理的な理由」があるとみなされやすくなります。

しかし、裁判例では「全ての詐称が解雇有効になるわけではない」という厳しい現実があります。解雇が有効になるためには、その詐称が「採用の判断にどれほど決定的な影響を与えたか」という重要性と、それによって「職場秩序がどれほど乱されたか」という程度が厳格に問われます。

主に対象となる4つのパターンから、具体的なリスクを見ていきましょう。


3. 経歴詐称の4つの類型と解雇の有効性

① 資格・免許の詐称(重要度:高)

医療・福祉業界において最も深刻なのがこれです。 医師、看護師、薬剤師、介護福祉士、保育士などの国家資格が必要な職種において、無資格であるにもかかわらず資格を偽った場合、これは単なる「嘘」に留まりません。

  • リスク: 無資格者による業務提供は法律違反であり、診療報酬や介護報酬の不正受請求、さらには行政処分や実地指導での全額返還へと直結します。

  • 判断: この場合の解雇は、有効とされる可能性が極めて高いといえます。業務遂行の前提条件を欠いているため、雇用の継続は不可能と判断されるからです。

② 職歴の詐称(重要度:中〜高)

「転職回数が多いと不利になるから隠す」「前職を能力不足や素行不良(ハラスメント等)で懲戒解雇されたことを隠す」といったケースです。

  • リスク: 医療・介護現場はチームケアが基本です。前職でのトラブル隠しは、現場の人間関係を崩壊させる火種となります。

  • 判断: 単なる数ヶ月の期間のズレなどは「軽微」とみなされがちですが、懲戒解雇歴の隠匿や、重要な役職経験の捏造(例:施設長経験があると偽る)などは、重大な詐称として解雇が認められる可能性があります。

③ 学歴の詐称(重要度:低〜中)

かつては「高卒を大卒と偽る」ことが重い詐称とされましたが、実務能力重視の昨今では、学歴だけで解雇を有効にするのは難しくなっています。

  • リスク: 学歴によって初任給や手当が細かく規定されている法人の場合、不当に高い賃金を支払わされることになります。

  • 判断: 給与計算の根拠が学歴に依存しており、それによって大きな賃金格差が生じていた場合、秩序を乱したとして懲戒対象になる可能性はありますが、解雇まで認められるかは慎重な判断が必要です。

④ 犯罪歴の隠匿(重要度:ケースバイケース)

意外かもしれませんが、犯罪歴があることだけをもって直ちに解雇できるわけではありません。

  • 判断: 裁判例では、刑の執行から10年以上経過している場合や、業務と無関係な軽微な罰金刑などは、告知義務がない、あるいは解雇理由として不十分とされる傾向があります。

  • 特例: ただし、保育現場での児童性犯罪歴や、高齢者施設での虐待・窃盗歴など、「対象となる利用者への安全確保に直結する職歴・犯罪歴」については、より厳しく判断される傾向にあります。


4. 医療・介護・保育現場だからこそ問われる「管理責任」

一般企業と異なり、私たちの業界には「公費」が投入されています。 もし経歴詐称(特に資格や職歴)を見逃したまま雇用を続け、現場で事故が起きた場合、法人が受けるダメージは「解雇の有効性」というレベルでは済みません。

  • 利用者・家族からの訴訟: 「資格のない人間にケアをさせていたのか」という追及。

  • 行政処分: 指定取り消しや加算の返還。

  • 社会的信用の失墜: 地域での評判が悪化し、採用難に拍車がかかる。

だからこそ、経歴詐称への対応は単なる「不誠実な職員の排除」ではなく、「法人のガバナンス(統治)と利用者の安全を守るための必須業務」なのです。


5. トラブルを未然に防ぐ「3つの防衛策」

発覚してから解雇を争うのは、多大な時間と労力、そして弁護士費用を要します。最初から「嘘をつかせない」「嘘を見抜く」体制を作ることが最善の策です。

防衛策1:エビデンス(証拠)確認の徹底

「原本」の確認を徹底してください。

  • 資格証の確認: コピーではなく原本を持参させ、裏書き(更新履歴)まで確認します。必要に応じて、厚労省のデータベース等で登録番号を照合します。

  • 離職票・年金手帳の確認: 入社手続き時に提出される書類の履歴と、履歴書の職歴が合致しているか、事務担当者が必ずクロスチェックを行います。

防衛策2:採用選考の精度向上

面接だけでは嘘を見抜くのは困難です。

  • リファレンスチェックの検討: 本人の同意を得た上で、前職に勤務状況を確認する。

  • 実技試験の導入: 介護現場なら移動介助、保育現場ならピアノや読み聞かせなど、短時間の「実技」を取り入れるだけで、職歴詐称(未経験なのに経験者と偽る等)は一目で見抜けます。

防衛策3:入職時のリーガル・セットアップ

万が一の時に「解雇の正当性」を主張できるよう、仕組みを整えます。

  • 誓約書の提出: 「提出書類の内容に相違ないこと」「虚偽があった場合は解雇を含む懲戒処分に異議を唱えないこと」を明記した誓約書を入職時に取ります。

  • 就業規則の整備: 懲戒規定の中に「重要な経歴を詐称して採用されたとき」を明確に盛り込み、具体的な懲戒の種類を定めておきます。


6. まとめ:専門家の視点をバックオフィスに

経歴詐称が発覚した際、感情的に「明日から来なくていい」と伝えてしまうのが、最も危険な初動です。たとえ相手に非があっても、手続きを誤れば「解雇権の濫用」となり、多額の解決金を支払う羽目になりかねません。

まずは、その詐称が業務にどのような影響を及ぼすのかを冷静に分析し、就業規則に基づいた正しいステップ(事情聴取、弁明の機会の付与など)を踏むことが重要です。

私たち「社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング」は、医療・介護・保育業界に特化した人事労務のプロフェッショナルとして、数多くの現場トラブルを解決してきました。

私たちのBPOサービスでは、給与計算などの事務代行だけでなく、こうした「入職時のリスク管理」や「就業規則の運用サポート」をセットで提供しています。事務局の負担を減らしつつ、法人のガバナンスを強化したい経営者の皆様、ぜひ一度ご相談ください。

「正しい採用」が「質の高いケア」を生み、それが「健全な経営」へと繋がります。あなたの法人のバックオフィスを、リスクに強い、創造的な組織へと変えていきましょう。


執筆者:社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング 代表 林 正人 (医療・介護・保育専門社会保険労務士)

役職と等級は分ける?分けない?

人事評価制度の構築サポートをしていると、必ずといってよいほど出てくるご質問があります。

「役職と等級って、分けた方がいいんですか?」

これ、本当によくいただきます。ちょっとモヤモヤしている経営者さまや人事担当の方も多いのではないでしょうか。

まず「役職」と「等級」って何が違うの?

「役職」というのは、課長・部長・マネージャーなど、組織上の「ポスト(席)」のことです。
一方「等級」とは、その人の習熟度や役割の大きさを段階的に表したものです。

「部長」「課長」という役職と、「M1」「L2」といった等級が混在している会社はとても多いのですが、これが混在したままだと、どちらかが形骸化しやすくなってしまいます。

なぜ分けた方がよいのか

例えば、役職(ポスト)に等級が連動してしまっていると、こんなことが起きやすくなります。

・ポストが空かないと昇進できない(=優秀な人が昇格できない)
・役職がないと評価や給与が上がりにくい(=専門職の人が報われない)
・役職を外すと給与も一気に下がって本人が傷つく(=必要な人事異動ができない)

これは、役職と等級が「くっついてしまっている」状態から起きることです。

役職はあくまでも「今その会社でどのポストに就いているか」であって、「その人のスキルや役割の大きさ」とは必ずしも一致しないのです。

役割等級制度では「等級」が主役

A4一枚評価制度でおすすめしている役割等級制度では、まず「等級」を中心に設計します。
管理職(M)・指導監督職(L)・一般職(S)といった大きなくくりと、その中の段階(M1・M2・M3など)が「等級」です。

そして「役職」(課長・部長・チームリーダーなど)は、あくまでも「今の組織上のポスト名」として分けて考えていきます。

こうすることで、

・ポストがなくても等級は上がれる
・役職を外れても等級が下がるわけではないので本人のプライドも守れる
・専門職コースなど、管理職にならなくても処遇を上げていける

という柔軟な運用ができるようになります。

ただし「分けない方がよいケース」もある

一方で、社員が5~10名程度の小さな会社では、等級と役職を分けることで「なんだか複雑になりすぎてわかりにくい」という声も出てきます。

そういった場合は、等級と役職をほぼ同義で運用してしまうシンプルな設計の方が現実的に機能することも多いです。

大事なのは「正解の形」を求めることではなく、
「今の自社の規模・組織・課題に合った形にする」こと。

役職と等級を分けることで、複雑さと引き換えに柔軟さが手に入ります。どちらをより重視するか、自社の状況で判断していきましょう。

人事評価制度は、精緻に作ることが目的ではありません。
社員が「自分はどこに向かって成長すればよいか」を理解でき、会社が「誰をどう育て、どう処遇するか」を整理できる。
そのための「道具」として機能してこそ、はじめて意味を持ちます。

役職と等級の設計も、そんな視点で一度ご自身の会社の現状を確認してみてはいかがでしょうか。

育児休業から復職した職員の昇給・賞与はどう扱う?違法リスクを避ける実務ポイントを社労士が解説

育児休業から復職した職員の「昇給」や「賞与」の取り扱いは、多くの企業・施設で悩みやすいテーマです。
特に介護・保育・クリニックなどの現場では、「長期間働いていないのに昇給させるべきか」「賞与はゼロでもいいのか」といった実務判断が求められます。

結論から言えば、育児休業を理由にした過度な不利益な取り扱いは違法となる可能性が高く、適切な“按分(あんぶん)処理”が重要です。
本記事では、法的な考え方と現場で使える具体例を交えて解説します。


育児休業者への「不利益取扱い」は法律で禁止されている

まず前提として、育児・介護休業法では、事業主に対して以下のような規制が設けられています。

  • 育児休業の取得を理由とした解雇の禁止
  • 不利益な配置転換の禁止
  • 昇進・昇格・賞与等における不利益取扱いの禁止

ここで重要なのは、「一切減額してはいけない」という意味ではない点です。

ポイントは“合理的な範囲内かどうか”です。


昇給の考え方|「休業期間分の控除」はOKだが、それ以上はNG

育児休業期間中は実際に勤務していないため、その期間に対応する評価や昇給を反映しないこと自体は問題ありません。

しかし、次のような取り扱いは注意が必要です。

NGとなる可能性が高い例

  • 復職したが昇給自体を行わない
  • 他の社員と比較して過度に低い昇給額にする
  • 評価対象期間を無視してゼロ評価にする

これらは「不利益取扱い」と判断されるリスクがあります。


【具体例】昇給の正しい計算方法

例えば次のケースで考えてみましょう。

  • 昇給基準日:4月1日
  • 育児休業期間:1月1日~10月31日
  • 復職日:11月1日
  • 通常昇給額:4,000円

この場合、

  • 昇給そのものは実施する必要あり
  • ただし評価対象期間のうち勤務していた期間で按分可能

計算式は以下の通りです。

4,000円 ×(勤務月数 ÷ 12カ月)

今回のケースでは、勤務実績は約9カ月と考えるため、

4,000円 × 9/12 = 3,000円

このように、勤務実績に応じた合理的な減額であれば適法と考えられます。


賞与の取り扱い|「支給ゼロ」でもよいケースと注意点

賞与についても基本的な考え方は同じです。

① 支給ゼロが認められるケース

  • 賞与算定期間中に勤務実績が一切ない場合

この場合は、賞与を支給しなくても違法とはなりません。


② 一部支給が必要なケース

一方で、

  • 賞与算定期間中に1カ月でも勤務実績がある場合

この場合は、勤務期間に応じた支給(按分)が必要です。

例えば:

  • 賞与算定期間:6カ月
  • 勤務実績:1カ月

賞与 × 1/6

このように、勤務実態を無視したゼロ支給はリスクが高いといえます。


現場でよくあるトラブルと対応策

よくある誤り

  • 「休んでいたから評価できない」として一律ゼロ評価
  • 復職後もしばらく昇給対象から外す
  • 人事制度に明確なルールがない

これらは、後から労務トラブルに発展しやすい典型例です。


トラブルを防ぐ3つの実務ポイント

① 就業規則・賃金規程に明記する

  • 昇給・賞与の算定方法
  • 按分ルール
  • 評価対象期間の考え方

ルールの明文化が最大の防御策です


② 「勤務実績ベース」で統一する

育児休業者だけ特別扱いするのではなく、

  • 休職者
  • 長期欠勤者

と同様のロジックで処理することが重要です。


③ 評価制度と連動させる

  • 出勤率
  • 業績評価
  • 行動評価

これらを組み合わせ、客観的に説明できる仕組みにすることで、納得性が高まります。


介護・保育・クリニック業界での実務的な注意点

これらの業界では、

  • 人手不足
  • 女性職員比率が高い
  • 育休取得率が高い

という特徴があります。

そのため、昇給・賞与の扱いを誤ると、

  • 職員の不満増大
  • 離職率の上昇
  • 採用力の低下

に直結します。

「法的に問題ない」だけでなく、「職員が納得できる運用か」が極めて重要です。


まとめ|「公平性」と「合理性」が判断基準

育児休業から復職した職員の昇給・賞与の取り扱いは、次の2点に集約されます。

  • 勤務していない期間分の減額はOK
  • それを超える不利益はNG

つまり、

👉 “働いた分だけ評価する”というシンプルな原則が最も安全です。


最後に|制度設計に不安がある場合は専門家へ

育児休業対応は、単なる給与計算の問題ではなく、

  • 人事制度
  • 評価制度
  • 就業規則

すべてに関わる重要テーマです。

特に介護・保育・クリニックでは、制度設計の良し悪しが経営に直結します。

「自社の運用が適法か不安」
「トラブルにならない制度を整備したい」

といった場合は、専門家によるチェックをおすすめします。

「辞める」と言い続ける職員にどう対応する?退職扱いにできるかを社労士が解説

 

「少し気に入らないことがあるとすぐに『辞める』と言い出す職員がいる」
介護施設、保育園、クリニックの現場で、このような相談は非常に多く寄せられます。

周囲の士気を下げ、業務にも支障をきたすため、「いっそ本当に辞めてもらえないか」と考える経営者・管理職も少なくありません。

では実務上、「辞める」と発言した事実だけで退職扱いにすることはできるのでしょうか。
結論から言うと、一定条件を満たせば可能ですが、慎重な判断が必要です。

本記事では、トラブルを防ぎながら適切に対応するためのポイントを、判例と実務の視点から解説します。


退職の成立は「誰に伝えたか」で大きく変わる

まず重要なのは、「辞める」という発言が誰に対して行われたかです。

権限者に伝えた場合

院長、施設長、理事長、事務長など、人事権を持つ者に対して退職の意思を伝えた場合は、口頭であっても退職の申し出と評価される可能性があります。

つまり、この時点で「退職の意思表示」が成立していると判断される余地があります。

同僚や先輩に話しただけの場合

一方で、同僚や先輩職員などに対して「もう辞める」と話しただけでは、
法的な退職意思表示とは認められません。

現場ではよくあるケースですが、この段階で会社側が「辞めると言っていたから退職扱いにした」という対応をすると、後にトラブルになるリスクが高いです。


判例から見る「退職の成立」と「撤回」

退職を巡るトラブルでは、過去の裁判例が重要な判断基準となります。

① 退職が成立し、撤回できないケース

最高裁判例(昭和62年9月18日)では、

人事部長が退職願を受理したことは、会社側の承諾にあたる

とされ、退職は合意解約として成立し、その後の撤回は認められないと判断されています。

つまり、

  • 労働者が退職の意思を示す
  • 使用者側がそれを承認する

この2つが揃えば、退職は確定します。


② 撤回が認められるケース

一方、岡山地裁(平成3年11月10日)では、

人事権のない職員が退職届を預かっただけでは承諾とはいえない

とされ、退職の撤回が認められました。

この判例から分かるのは、

👉「誰が受け取ったか(承認権限の有無)」が極めて重要

という点です。


「辞める発言」で退職扱いにするための実務ポイント

では、問題の職員が会議や面談で「辞めます」と発言した場合、どう対応すべきでしょうか。

結論として、適切な手続きを踏めば自己都合退職として扱うことは可能です。

ただし、以下の対応を怠ると、後で「言っていない」「本気ではなかった」と争われるリスクがあります。


① 退職意思の“念押し”を必ず行う

感情的な発言なのか、本気の意思なのかを明確にする必要があります。

具体的には、以下のように確認します。

  • 「今の発言は退職の意思で間違いありませんか?」
  • 「正式に退職するという理解でよろしいですか?」

この確認を曖昧にすると、後で撤回を認めざるを得ない可能性が高まります。


② 退職日をその場で確定させる

退職意思が確認できたら、退職日を具体的に決めることが極めて重要です。

  • 「いつ付けで退職しますか?」
  • 「最終出勤日はいつにしますか?」

退職日はトラブルの火種になりやすいため、その場で明確に合意しておく必要があります。


③ 必ず書面(退職届)を提出させる

口頭でも退職は成立する可能性がありますが、実務上は非常に危険です。

必ず以下を行いましょう。

  • 退職届の提出
  • 日付・署名の確認
  • コピー保管

これにより、「言った言わない」の争いを防ぐことができます。


よくある誤解:「口頭だから無効」は間違い

現場では、

「書面がないから無効では?」

という誤解が多く見られます。

しかし実際には、口頭でも退職の意思表示は有効です。

重要なのは、

  • 明確な意思表示があったか
  • 会社側が承認したか

という点です。


注意点:安易な“退職扱い”は逆にリスク

「辞めると言ったから辞めさせた」と安易に処理すると、以下のリスクがあります。

  • 不当解雇と主張される
  • 損害賠償請求
  • 労基署・労働局対応

特に、感情的発言をそのまま退職扱いにするのは危険です。


実務対応の結論(現場で使える判断基準)

問題職員への対応としては、次のように整理できます。

  • 同僚への発言 → 無効(様子見)
  • 管理職への発言 → 要確認
  • 明確な意思+承認 → 退職成立

そして最も重要なのは、

👉「記録を残すこと」

です。


まとめ:感情的な「辞める」に振り回されないために

「辞める」と繰り返す職員への対応は、現場のストレス要因になりがちです。

しかし、法的にはシンプルで、

  • 誰に言ったか
  • 本気かどうか
  • 承認されたか

この3点で判断されます。

適切に対応すれば、不要なトラブルを防ぎながら、組織運営を安定させることができます。


「退職トラブル」「問題職員対応」でお悩みの方へ

当事務所では、

  • 退職トラブル対応
  • 問題職員マネジメント
  • 労務リスク対策

に関するご相談を多数お受けしています。

単なる法解釈ではなく、現場で使える実務対応をご提案しています。

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 お問い合わせ | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング

叱ると、すぐパワハラと言われる。それが怖くて、指導出来ない、そんなお悩みにお答えします。

介護・保育・クリニックの現場で増えている「叱るとパワハラと言われる問題」について、専門社労士がわかりやすく解説します。

  • 「注意しただけなのに“それはパワハラです”と言われた」
  • 「叱らないでほしいと言われ、指導ができない」

このようなお悩みは、現場で非常に多く発生しています。
本動画では、

  • 適正な業務指導はパワハラに該当するのか
  • 「本人が嫌と感じたらパワハラ」は本当か
  • 実際にパワハラになるケース/ならないケース
  • 現場で取るべき正しい対応方法

について、実務目線で解説しています。
特に、

  • 「指導を避けた結果、処分や解雇ができなくなるリスク」

についても詳しく触れていますので、管理者の方はぜひ最後までご覧ください。

【この動画はこんな方におすすめ】

  • 介護事業所の管理者、施設長
  • 保育園の園長、主任保育士
  • クリニックの院長、事務長
  • 問題社員対応に悩んでいる方

【ポイントまとめ】

  • 適正な指導はパワハラではない
  • 判断基準は「主観」ではなく「客観」
  • 言い方や伝え方には十分注意が必要
  • 指導をしないこと自体が大きなリスクになる

労務トラブルは、初動対応で結果が大きく変わります。
少しでも不安がある場合は、早めの対策が重要です。

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人事制度があることは大きな武器になる

 

■もはや「選ばれるための必須要件」になっている

 

「人数が増えてきて目が届かなくなってきたから、そろそろ人事評価制度を入れよう」

以前はこのように考えられることが多かったかもしれません。ところが、いまや状況は大きく変わってきています。

 

学校のキャリアセンター(昔は就職課といっていました)では、就職先の企業に人事評価制度があるかどうかが重要確認項目になっています。

 

ハローワークなどでも「地域」「給与」などというような条件とともに人事評価制度の有無も確認事項になってきているのです。

 

つまり、人事評価制度は「あったらいいもの」から「選ばれるための必須要件」になってきているということなのです。

 

 ■「採用」に有利――見えるスペックとしての人事制度

募集をしても人が来ない、採用ができない―――。

未曾有の人材不足の時代、どの企業でも抱えている重要な問題ではないでしょうか。

採用時、求職者はまだ会社の中身を詳しくは知りません。

ですから、給与額、休日日数、労働時間といった「見えるスペック」で判断せざるを得ないのです。

そして、その「見えるスペック」のひとつとして「人事評価制度があるかどうか」が大きな判断材料になってきているのです。

人事制度があるということは、「この会社は自分の成長やキャリアを考えてくれている」「頑張りをちゃんと認めてくれる仕組みがある」というメッセージになります。

■「定着」に効果――動機づけ要因として機能する

実は「採用」と「定着」に影響を与える取り組みは、同じような内容と思われがちですが、実はちょっと違ったりします。

ハーズバーグの2要因理論というものをご存じでしょうか。

人のモチベーションには「衛生要因」と「動機づけ要因」の二つがある、というものです。

 

「衛生要因」とは、給与、労働時間、休日といった条件面のこと。これらは欠けてしまうと一気に不満足になってしまいます。採用時には非常に重要な「見えるスペック」です。

 

しかし、どれだけ良い条件にしても、それは大きな満足にはならず、それがまた基準となって引き下がると不満になってしまう――――そういう性質のものなのです。

一方で「定着」には「動機づけ要因」が重要になります。

頑張ったら上司、会社から承認される。ここにいたら成長できる。目標の達成感がある。責任のある役割を与えられたり、頼りにされる――――。

 これらの「動機づけ要因」は足りなくても不満の声は上がってきませんが、満足度は引きあがらないのです。

 どんなに左の「衛生要因」を整備して人を採用しても、右の「動機づけ要因」がないと、人は辞めていってしまうかもしれません。特に前向きで成長意欲のある人から。

そして、この右の「動機づけ要因」は、ほとんどが「人事評価制度」を適切に運用することで大きな影響を与えることができるのです。

 「人事評価制度」があることが、採用にも定着にも非常に重要なのですね。

■「将来を見せる」ことができる――不安を安心に変える

人事評価制度があるということは、社員に「将来を見せる」ことができるということでもあります。

「この会社で頑張っていったら、自分はどうなれるのか」「どういうキャリアを歩めるのか」――――。

等級制度があれば、どのような役割を担っていけば次のステップに進めるのかが明確になります。

評価制度があれば、何を頑張れば認められるのか、どんなスキルを身につければ成長できるのかが見えてきます。

賃金制度があれば、頑張った結果がどのように給与や賞与に反映されるのかがわかります。

 この「見える化」が、社員の不安を安心に変えるのです。

逆に、人事制度がないとどうなるでしょうか。

 

「頑張っても認められるかどうかわからない」「この会社にいても将来が見えない」――――。

 そう思われてしまったら、優秀な人ほど他の会社に目を向けてしまうかもしれません。

■データが証明する人事制度の効果

実は中小企業庁が興味深いデータを出してくれています。

2015年と2020年を比較した売上増加率を、人事評価制度の有無別に見たもの。

やはり人事評価制度のあるところの方が業績は上がっているという結果が出ているのです

考えてみれば当然でしょうか。

会社目標に向かって個人が目標を立て進んでいく、求める人材像を明確にして、それを伸ばして人材育成を行なっている――――。

当然差が出てくることでしょう。

■いまこそ、人事制度という武器を

 人事評価制度は、もはや「あったらいい」ものではなく、企業規模にかかわらず必須のものになってきています。

 採用においても、定着においても、人材育成においても。

 そして業績向上においても。

人事制度があることは、大きな武器になるのです。

いま、この武器を手にしていますでしょうか。

それとも、これから手にしていくところでしょうか。

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