福祉

『採用を決める前に、もう少し判断材料が欲しい! 前職について情報収集するには』

Q, 現在、正職員を募集しているのですが、当施設が希望しているような人材からの応募がなかなかありません。そのような中、条件は合致するものの、転職
歴が多い人から応募がありました。履歴書や面接で前職の仕事の内容や退職理由を確認する予定ではありますが、できれば直接、以前勤務していた職場に尋
ねることはできないかと考えています.

 

A、施設から直接、以前勤務していた職場に問い合わせることも考えられますが、個人情報でもあるため提供される可能性は低いものと思います。このような場合は、応募者から以前勤務していた職場に「退職証明書」を発行してもらい、その内容を確認するという方法があります。

 

2.退職証明書の発行義務
退職証明書は、労働者が退職したときに、その勤務先が必要事項を証明するために交付する書類です。退職者から請求があった場合に、遅滞なく交付することが義務付けられています(労働基準法第 22 条)。退職証明書には、次の事項のうち、退職者が請求した事項のみが記載されます。
 使用期間
 業務の種類
 当該事業における地位
 賃金
 退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあって
は、その理由を含む)


この退職証明書を応募者に提出してもらうことで、履歴書等の提出書類との齟齬がないか確認できます。採用したい人材かどうかの判断材料ともなります。応募者には、どの記載事項を必要としているのかを具体的に示した上で、提出を求めるとよいでしょう。なお、退職証明書の交付を請求できるのは、退職した本人のみで、退職後 2 年間となっています。つまり、貴施設から直接、前の職場に交付を依頼することはできません。応募者に「前職の勤務先に退職証明書の交付を請求し、当施設に提出してください」と依頼して取り寄せるようにしましょう。

社会保険労務士顧問業務 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

報酬基準 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

ひとりの時間をつくる ~心の中の自分はいつもあなたと話したがっている~

 

だれかと一緒にいる時間を楽しむためには、一人に時間が必要。

対極にあるようですが、どちらの時間もあってこそ、自分を幸せに生きられると実感するものです。

 人間関係とは、人との関係である前に、自分との関係が基本になっているからです。

私たちは、人間関係の中でつねに何かの役割を全うしようとしています。仕事人、母親、妻

子ども、恋人、友人・・・どんなに近しい関係でも、四六時中一緒にいると生きぐるしくなり、疲れてしまうでしょう。

もちろん、人と関わることでの喜びは計り知れません。

人間関係を通して成長できる事。ほとのために何かができる事。認めてもらえること。理解し合えること。支えられていること。愛し愛されること・・・・。そんな人としての幸せをしみじみ味わうためにも、本来の自分に戻るために時間は必要なのです。忙しければ、忙しいほど、わずかでもほっとできるひとりの時間が貴重であることは、誰も感じたことがあるでしょう。様々な人間関係から少し離れると、客観的に見えてくるものがあります。「あんなことを言われてカッとしたけれど、感情的になることでもなかったかも」とか「自分なりに頑張ったのだからあれはあれでよかった」とか・・・。自分の心の声に耳を傾けるかどうかで、人生に深みはまったく違ってきます。

ひとりでいる時間は、何もしていないようでも、無意識に頭を整理して、何かを創り出している時間でもあります。インスピレーションがあったり、いいアイデアを思いついたりするのも、一人でいるときが多いはずです。自由にやりたいことをやったり、没頭するのもいいでしょう。一人の時間がどんな人にも必要であり、自分を生きようとする贅沢な時間です。

なかなか一人になれないという人も、通勤時間やお風呂の時間、寝る前の10分など、テレビやスマホから離れて、自分だけの時間を過ごす時間を作ってみてください。

心の中に自分は、いつもあなたとおしゃべりしたがっています。自分を大切にする人は、人を大切にできるようになります。やさしさの基本になっているのは、こころの余裕なのです。

(「上機嫌にいきる」より)

福祉・医療人材の人間力向上研修 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

【障害福祉報酬改定】生活介護、基本報酬の算定ルールを細分化 サービス提供時間の区分を導入 厚労省提案

厚生労働省は27日、来年度の障害福祉サービス報酬改定に向けた協議を重ねている有識者会議で生活介護を取り上げた

基本報酬の算定ルールの見直しを提案した。


現行は事業所の定員規模(*)に応じて、利用者の障害支援区分ごとに設定された単位数を算定する決まり。これがベースとなり、営業時間や平均利用時間が短い事業所などに減算が適用される。

* 生活介護の基本報酬の定員規模=20人以下、21人以上、41人以上など20人ごとに分けられており、規模が大きくなるほど低い単位数が設定されている。

厚労省はこうした基本報酬の仕組みを細分化し、よりきめ細かい柔軟なサービスの提供や費用の適正化などにつなげたいとした。具体的には、

◯ 事業所の定員規模、利用者の障害支援区分に加えて、サービスの提供時間別に基本報酬を設定してはどうか

◯ その場合、4時間未満、4時間以上5時間未満、5時間以上6時間未満、6時間以上7時間未満、7時間以上8時間未満、8時間以上9時間未満のように設定してはどうか

◯ 事業所の定員規模の分け方を、現行の20人ごとから10人ごとに改めてはどうか

と投げかけた。意見交換で強い反対の声が出なかったため、この方向性で細部の検討を進めていく構えをみせた。


きっかけの1つは財務省の審議会。今年5月の提言で、「利用者ごとのサービスの提供時間が基本報酬で十分に考慮されていない。かかるコストが適切に反映されるよう、提供時間の実態に基づいた報酬体系に見直す必要がある」と注文していた。


事業所の定員規模を10人ごとに細かく分けるのは、これとは異なる狙いがある。厚労省は会合で、「利用者数の変動により柔軟に対応できるようにする。小規模な事業所を運営しやすくするとともに、施設からの地域移行を促進する」と説明した。


厚労省はこのほか、8時間以上の営業時間を超えて生活介護を提供した場合の「延長支援加算」について、事業所の人員体制を確保する観点から見直しを検討する意向も示した。(介護ニュースより)

介護業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

年収の壁、抜本対策先送り 企業助成1人50万円

政府は年収が一定額に達すると社会保険料が発生して手取りが減る「年収の壁」の対応策をまとめた。賃上げなどで労働者の収入が減らないよう企業に1人あたり最大50万円を助成するのが柱。今回の対策は3年程度の時限措置で、2025年に予定する制度改正で抜本改革に踏み切れるかが問われる。

 足元で賃上げが進むなか、年収の壁に引っかからないよう就業時間を減らすパートや派遣社員が増えている。新たな対策で深刻な人手不足に歯止めをかけるとともに、優遇策を通じて企業にさらなる賃上げを促す。

 壁には大きく年収に応じて「103万円」「106万円」「130万円」の3つがあり、額ごとに対策を講じる。保険料負担が大きい106万円の壁向けに、政府は助成制度を設ける。

 岸田文雄首相は25日、「まずは106万円の壁を乗り越えるための支援策を強力に講じていく」と強調した。週内に正式に決める。

 従業員101人以上の企業に勤める労働者は月額賃金が8.8万円以上などの要件を満たすと配偶者の扶養を外れる。壁を越えると約15万円の負担が発生するため、厚生労働省は年収換算で約106万円の壁の付近で就業時間を調整して手取りが減らないようにする人が最大60万人いると試算する。

 新たな対応策では手取りの減少を補うため、従業員が負担すべき保険料の増加分を手当として支給したり、基本給の増額と労働時間の延長に取り組んだりする企業を助成する。

 例えば、賃金の15%以上分を従業員に追加で支給すれば1~2年目でそれぞれ20万円、3年目にも一定の要件を満たせば10万円を助成する。扶養から外れた労働者の社会保険料分を、手当の支払いで支援した企業も支援する。

 実際の支給は最も早くて24年4月となる見通しだ。大企業の助成額は中小企業の4分の3になる。

 年収130万円の壁は、従業員100人以下の企業で年収が同額を超えると扶養から外れ社会保険料を納めなければならなくなることを指す。今回の対策では、急に残業が増えたなど一時的な収入増であれば、連続2年まで健康保険組合などの判断で扶養にとどまれるようにする。

 年収103万円の壁では、本人に所得税が発生するほか、企業のルール次第で配偶者手当が支給されなくなる。厚労省はガイドラインなどで企業に廃止や変更を含めて制度の見直しを働きかける。

 保険料の負担分を実質的に肩代わりする今回の助成策は、自ら保険料を納める他の労働者との公平性が保てない恐れがある。そもそも106万円の壁は負担が生じる代わりに年金額が増えたり、ケガや出産の際の給付が充実したりするなど、本来は「壁」と呼べないとの声も多い。

 支援策は25年の年金制度改正に合わせたつなぎ措置だ。今回の対策は、労働者が納めるべき保険料を国が実質的に補填する内容で、助成金による急場しのぎに過ぎない。

 厚労省は9月、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会で年収の壁を解消するための議論を始めた。年収の壁問題の抜本解決には、壁の内側で働いているうちは保険料を支払わずに給付が受けられる第3号被保険者のしくみを変える必要がある。

 専業主婦などの第3号被保険者には、夫婦それぞれが保険料を支払う共働き世帯などから「優遇だ」と批判がある。保険料を負担せずに給付を受けるのは社会保険の原則に反する。少額でも働いて収入を得たのなら、それに応じた保険料を納めるのが本来の姿といえる。

 とはいえ、年収が106万円に満たない人にも等しく保険料負担を求めるとすれば大きな反発は避けられない。今後3年の間に国民全員により公平で納得感のある形で、持続可能な抜本改革を実現させる必要がある。(日本経済新聞 朝刊 総合23ページ)2023/9/26)

正社員転換、助成を増額 ~厚労省、雇用期間「3年以内」撤廃

日本経済新聞 朝刊 1面(1ページ)2023/9/24

厚生労働省はパートや派遣といった有期雇用の労働者を正社員に転換した企業への助成金の要件を2024年度に緩和する。現在は同じ会社での雇用期間が通算6カ月以上3年以内の人を対象としているのを「6カ月以上」に変える。雇用の安定を後押しする。
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 現行制度は有期労働者を正社員にした場合、中小企業には1人あたり57万円、大企業には427500円を最大20人分まで支給している。有期の雇用期間が3年を上回る場合は対象外となっていた。
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 非正規の労働者を巡っては雇用の不安定さに加え、将来の低年金などの問題が指摘される。総務省の就業構造基本調査によると、非正規で働く女性は2210月時点で1447万人に上る。女性の雇用者に占める割合は53.2%と推計され、厚労省は改善の余地があるとみている。
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 今回あわせて助成金額も見直す。中小向けは60万円に、大企業向けは45万円に増額する。ただ、2人目以降はそれぞれ50万円、375千円に減額し、ばらまき色を薄めて財政に配慮する。
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 労働契約法は雇用期間が通算5年を超えた場合に、労働者は無期雇用への転換を申請できると定める。助成金がなくても有期雇用から脱する手立てがあることを考慮し、5年超の労働者に関しては助成金額を半額に抑える。
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 助成制度は13年度に導入し、22年度までの10年間で計78万人強の正社員転換を後押ししてきた。各業界で人手確保のため労働者を正社員として登用するなど処遇改善の動きは活発になっている。日本経済新聞 朝刊 1面(1ページ)2023/9/24

【介護報酬改定】武見厚労相「賃上げや物価高騰への対応は重要な課題」

《 武見敬三厚生労働相|9月14日撮影 》

武見敬三厚生労働相は14日に初登庁して記者会見を行った。

来年度の診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス報酬の同時改定に言及。他産業で高水準の賃上げが実現していること、光熱費やガソリン価格などが上昇していることを念頭に、「賃上げや物価高騰への対応は重要な課題」と言明した。


ただ具体策については、「経営の状況、人材確保の必要性、患者・利用者の自己負担、保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスを受けられるよう、必要な対応を行っていくべきだ」と述べるにとどめた。


必要な財源の確保策をめぐっては、「年末に向けて検討していくもの。少子高齢化、人口減少時代を迎えるなか、必要な社会保障を確保して、負担能力に応じて全ての世代が公平に支え合う仕組みを構築することが必要だ」と語った。(介護ニュースより)

 

 

 

物価高騰への対応や人材の確保策など焦点 障害福祉の報酬改定、厚労省が論点を提示

来年度の障害福祉サービスの報酬改定に向けた検討を重ねている国の有識者会議は8月31日、「主な論点」をまとめた。

これまでの委員の意見、関係団体ヒアリングで集まった現場の声などを踏まえ、厚労省が今後の議論の方向性を整理したもの。論点は多岐にわたるが、柱の1つに昨今の物価高騰、他産業の賃金上昇などを踏まえた人材の確保策が位置付けられた。


あわせて、ICTなどの活用による業務の効率化、事務負担の軽減も盛り込まれた。会合では委員から、「最も大きな課題は人材の確保」「処遇改善加算は効果があるが、物価高騰などはそれを上回っている」「最低賃金が上がって非常勤職員の給与が上がる一方、正規職員の給与は滞りがち」「事業所は人手不足で困っており、人員基準の緩和を検討する必要がある」などの声があがった。


今後、厚労省は年末にかけて「主な論点」に沿ってサービスごとの具体策を検討していく考え。「主な論点」には、「障害福祉サービスの予算額が年々増加し、利用者数・事業所数が大幅に増加しているサービスが見られるなか、サービス間・制度間の公平性や制度の持続可能性の確保が重要な課題。メリハリのきいた報酬体系とする」との方針も明記した。このほか、


◯ 相談支援と医療との連携の更なる促進


◯ 障害者虐待の防止を図る方策


◯ 情報公表制度のあり方を含むサービスの透明性向上の方策


なども打ち出した。(介護ニュースより)

東京都の補助金を最大限活用して「介護職員の確保」に取組みませんか!

東京都 人材育成促進支援事業 とは

介護サービスを効率的・継続的に提供するために、人材育成の仕組みの構築・ 改善に取り組む事業所を支援

●補助金 対象事業所
 令和5年4月1日時点に都内において開設している介護サービス事業所 ※ただし、居宅介護支援、介護予防支援事業所、今年度キャリアパス導入促進事業補助金を申請される事業所及び令和4年度の人材育成促進支援事業に申請し、交付を受けた事業所は除く。

●補助金の対象経費

  ①人材育成のためのコンサルティング経費

   ⇒人事制度キャリアパスの見直しにかかる費用(コンサル費用)

    等級制度・評価制度・給与制度・研修制度の見直し

    評価制度だけ、給与制度だけなど部分的な見直しも対象

   ⇒就業規則・給与制度の変更で社労士に支払う費用

  ②研修の受講経費

   ⇒人材育成の仕組みに位置づけられている研修の受講費用全額

    リーダー研修、管理者研修、ハラスメント研修、BCP作成研修等

● 補助金額

   1事業所あたり35万円 (補助率10/10)

   1事業所とは、介護保険の事業所番号が付与されている事業所の単位。

   例えば、同じ場所で、訪問介護事業と通所介護事業といった別サービスを

   それぞれの事業所番号で行っている場合には2事業所となり、補助金は70万円となる。

   3事業所:105万円、4事業所:140万円

   但し、居宅支援、介護予防支援事業所は除かれる。

● 当社からご提供できるサービス

   1,処遇改善加算対応型キャリアパス・人事制度の構築・見直し

    ⇒処遇改善加算対応キャリアパス構築コンサルティング | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

   2、職員研修(講師は当社代表 林)

   ⇒人材育成・研修サービス(介護・保育・医療) | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

● 費用

   総額を補助金の範囲でご提供させて頂きます。

   ⇒この機会を利用し

   「費用を掛けずにキャリパス、就業規則、職員研修」を行うことが

    出来ます。

   内容を進め方については個別にご相談をさせて頂きます。

   お申込は早めに!9月15日(金)迄に当社までご連絡

   をお待ちしております。

 

 

障害福祉の処遇改善加算も一本化を 事業者団体が要請 報酬増を求める声も相次ぐ=来年度改定ヒアリング

来年4月の障害福祉サービス報酬の改定に向けた協議を進めている厚生労働省の有識者会議は先月からこれまでに、およそ50の関係団体を招いてヒアリングを実施した。現場の声をできるだけ施策に反映させる狙いがある。

このうち全国介護事業者連盟は、「障害福祉にも介護と同様の課題がある。対策の検討をお願いしたい」と要請。現場の負担軽減などにつなげるため、職員の処遇改善を図る3加算(*)の一本化と関連書類の簡素化を求めた。

* 処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ加算を指す

あわせて、他の様々な書類の作成・提出の負担軽減、過度なローカルルールの是正を注文。事業所の管理者が兼務できる範囲を拡大するなど、人員配置基準の弾力化、人材の有効活用も必要と提言した。


介事連・障害福祉事業部会の中川亮会長は取材に応じ、「障害福祉サービスの運営を持続可能なものとしていくため、将来を見据えた制度設計をしていく必要がある」との認識を示した。


また日本看護協会は、「物価高騰で障害福祉サービスでも様々な必要品の購入、食事提供、入浴、送迎などにかかるコストが増大し、事業所の負担が大きくなっている」と問題を提起。人材の確保・定着にもマイナスの影響が及ぶとして、「各サービスの基本報酬や加算の見直し、必要な財政措置を」と訴えた。

このほか日本ALS協会は、「重度訪問介護を含む福祉・介護職員の処遇改善を求める」と主張した。あわせて、介護支援専門員が相談支援専門員に代わって利用者の支援に入っているケースも多いと指摘。「労働の対価として、制度を横断してケアマネジャーへ(報酬を)支払うべきではないか」と意見した。


厚労省は今秋から次期改定の具体策の議論に入る予定。大枠の方向性は年内に固める考えだ。(介護ニュースより)

休めども 7割の目標遠く 有給休暇の取得率、58%に改善でも 職場改革、世界に遅れ

企業で働く人の有給休暇の取得率が高まっている。2021年は58.3%3年連続で過去最高を更新した。19年の労働基準法改正で企業に対し、従業員の有給取得に関する義務が加わったことが後押しした。ただ義務内容を正確に理解していない企業も多く、21年の有給関係の法令違反件数は前年の2.8倍となった。25年までに有給取得率70%という政府目標を前に、企業が抱える課題は多い。

 高い有給取得率は人材確保につながる(7月、横浜市のSCSKサービスウェア横浜センター)

「このままなら、正社員の今年度末の有給取得率は94.8%になる」。全国に約5500人の従業員を抱え、コールセンターなどを手がけるSCSKサービスウェア(東京・江東)。7月末、同社の幹部社員ら約100人が集まる連絡会で、秋庭洋一郎・労務部長が推定値を報告した。同社は社員の有給取得に力を入れ、毎月の連絡会で細かい数値を共有する。

秋庭部長は「13年度ごろまで取得率は約6割だったが、19年度80%22年度に84.2%と改善した。社長からは100%取得を目指すよう指示されている」と話す。様々な顧客からの問い合わせに応じなければならないコールセンター業務はストレスを伴う。しっかり有給を取れる環境づくりは、社員のつなぎ留めや採用で効果が大きいという。

  労働基準法39条は、企業などの使用者は、6カ月以上勤務した従業員に基本的に10日間の有給休暇を与えなければならないと定める。有給の日数は、勤続年数によって年20日まで増える。正社員だけでなく、パートタイマーにも勤務日数に応じて有給が与えられる。いつ有給を取るかは原則的に労働者の自由だが、「事業の正常な運営を妨げる」場合は、使用者がその時期(時季)を変更できる。

 

 与えられた有給のうち実際に消化した割合を示す有給取得率は2000年から17年間にわたり5割を切っていたが、17年ごろから大幅に改善。21年は16年に比べ8.9ポイント上昇し、6割に迫る水準になった。取得率向上の大きな後押しになったとみられるのが、19年の労基法改正だ。

 企業にも義務

 働き方改革の一環の法改正で、企業は労働者に有給を与えるだけでなく、実際に取得させる義務も負うようになった。10日以上の有給の権利を持つ労働者に対しては、5日分の時期を指定し取得させねばならない。義務違反には、対象の労働者1人につき30万円以下の罰金が定められている。

 当時法改正を担当した厚生労働省幹部は「過労死するほど追い詰められても休まない日本の実態を変えるため、法学者から異論は出たが労使ともこの形の義務化で合意した」と明かす。

 「人的資本経営」を重視する動きも、企業が従業員の有給取得を促すことを後押ししている。

エスビー食品は、5月に策定した263月期までの中期経営計画で「有給取得率80%」を非財務目標のひとつに入れた。有給が子育て支援や社員の自己研さんなど人的資本充実に効果的とみるためだという。濱畠啓子・人事総務室長は「当社のミッションである『グローバル社会に対応した多様化の推進』に沿った目標設定だ」と話す。 同社は独自の取得促進策を進めてきた。19年には5日間の一斉取得で83%に達したこともある。2122年度とも取得率は76%台で、80%は目前にある。

違反2.8倍に

取得率が改善する一方、問題も露呈している。厚労省の就労条件総合調査によれば従業員1000人以上の企業の取得率63.2%に対し、3099人では53.5%にとどまる。企業規模による取得格差は深刻だ。

さらに21年には、全国の労働基準監督署が定期調査で約122千カ所の事業所を調べた結果、有給関係の違反を指摘されたのが約9800カ所と、前年の約2.8倍になった。

 どの業種もまんべんなく違反が増えている。厚労省担当者は有給について、5日間の時期を指定して取得させる義務を果たしていない例が多いようだと話す。

 司法処分に発展する悪質な例も出ている。217月には愛知県あま市の給食会社が、従業員6人に年5日以上の有給を取らせなかったことで書類送検された。今年5月にも複数店舗を展開する茨城県内の飲食店が、時期指定をせず従業員に有給を取らせなかったことで書類送検された。

 米旅行会社のエクスペディアが2323月に16の国と地域の約14000人を対象とした調査で、上司・会社が休暇取得に協力的か聞いたところ、日本から回答した人のうち「はい」と答えたのは58%で、香港の83%や米国の79%、ニュージーランドの76%に劣る。まだ職場風土の改革は進んでいない。国の目標である取得率70%に近づくためにも、労使双方の努力と考え方の変革が必要となる。 

日本経済新聞 朝刊 2023/8/7 

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