介護

10月に開催された“介護給付費分科会”のポイントを理解しておきましょう

2021年度法改正・報酬改定に向け、各サービスの具体的な論点が明確に
2021年度介護保険法改正・報酬改定の議論が現在進行形で行われている“介護給付費分科会”。2020年10月に入り、いよいよ、各サービスの具体的な改正論点が明確になってきています。現状の情報を早めにインプットし、(心構えも含めた)然るべき準備を行っていくために、今回のニュースレターでは、多くの介護事業者が関わられているであろう「訪問介護」「通所介護」について、代表的な論点をピックアップ・確認していきたいと思います。

2020年10月開催の「介護給付費分科会」で示された論点(抜粋)とは
では、早速、中身を確認してまいりましょう。
まずは、通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護生活機能向上連携加算についてです。

【論点】
■ 通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護の生活機能向上連携加算算定率(※)は、
・通所介護 事業所ベース:1.2%/3.9% 回数ベース:0.4%
・地域密着型通所介護 事業所ベース:0.7%/1.1% 回数ベース:0.2%
・認知症対応型通所介護 事業所ベース:2.3%/2.5% 回数ベース:0.4%
・介護予防認知症対応型通所介護 事業所ベース:1.8%/3.3% 回数ベース:0.0%
と非常に低くなっている。加算創設の目的(外部のリハビリテーション専門職と連携することにより、自立支援・重度化防止に資する介護を推進すること)を達成する観点から、どのような対応が考えられるか。

【検討の方向(案)】
■ 外部のリハビリテーション専門職との連携を促進するため、訪問介護等における算定要件と同様、ICT活用を認めることを検討してはどうか。また、連携先を見つけやすくするための方策を検討してはどうか。
※2020年10月15日 介護給付費分科会資料より抜粋
リハ(=医療職)と介護の連携体制を強化し、より効果的なケアを実行していくためにも「生活機能向上連携加算」の取得促進を進めていきたい、という厚生労働省の意思が明快に反映されたものと思われます。尚、「検討の方向(案)」の文言は、加算を取得していない理由として、「近隣に該当の事業所・施設が存在するのかが分からない」という声が一定程度上がっていることが背景にあるようです。
次に、通所介護・地域密着型通所介護 個別機能訓練加算(Ⅰ)(Ⅱ)についてです。

【論点】
■ 通所介護・地域密着型通所介護においては、利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うこととされている。
■ さらに、より効果的に機能訓練を実施する観点から、個別機能訓練加算(Ⅰ)(Ⅱ)を設け、利用者の居宅を訪問した上で利用者の居宅での生活状況を把握し、
・個別機能訓練加算(Ⅰ):主に身体機能の維持又は向上
・個別機能訓練加算(Ⅱ):主に生活機能の維持又は向上
を目指し機能訓練を実施した場合に、評価を行っている。
■ 個別機能訓練加算については、通常規模型・地域密着型において算定率が低く、算定できている事業所であっても、それぞれの加算の目的に応じた機能訓練項目を設定することが難しい場合もあるが、どのような対応が考えられるか。

【検討の方向(案)】
■ 個別機能訓練加算について、加算を算定できない理由や、算定できている事業所での機能訓練の実施状況に鑑み、人員配置要件や機能訓練項目の見直しを行うことを検討してはどうか。
※2020年10月15日 介護給付費分科会資料より抜粋
人員配置要件について、具体的には、「機能訓練指導員を常勤又は専従により配置することが難しい」という要因が加算不取得理由の多数を占めている状況を受け、この点に見直しが入ってくるものと思われます。また、機能訓練項目の見直しについては、「個別機能訓練加算(Ⅰ)(Ⅱ)を算定している場合において、訓練内容にほとんど差がなく、かつ、個別機能訓練加算(Ⅱ)を算定している場合でも生活機能に関する訓練はほとんど実施されていない」という調査結果を踏まえての見直しになるものと思われます。
次に、通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護入浴介助加算についてです。

【論点】
■ 通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護の入浴介助加算算定率(※)は、
・通所介護 事業所ベース:94.5% 回数ベース:71.5%
・地域密着型通所介護 事業所ベース:77.8% 回数ベース:56.2%
・認知症対応型通所介護 事業所ベース:98.1% 回数ベース:71.3%
・介護予防認知症対応型通所介護 事業所ベース:69.8% 回数ベース:60.7%
と非常に高くなっている。
■ 事業所の中には、単に利用者の心身の状況に応じた入浴介助を行うのみならず、利用者が自立して入浴を行うことができるよう、自宅での入浴回数の把握や、個別機能訓練計画への位置付け等を行っているところもある。
■ これらを踏まえ、入浴介助加算の在り方について、どのように考えるか。

【検討の方向(案)】
■ 入浴介助加算について、現在の算定状況や、入浴介助を通じた利用者の居宅における自立支援・日常生活動作能力の向上に資する取組を行っている事業所の状況をふまえ、見直しを検討してはどうか。
※2020年10月15日 介護給付費分科会資料より抜粋
上記内容及び付随資料の情報だけでは何とも解釈しがたい部分はありますが、可能性として、「入浴介助加算という加算項目が無くなり、個別機能訓練の中の訓練項目の一つとして位置付けられる」という方向性が打ち出されるかもしれない、ということは頭に置いておいた方が宜しいかもしれません(報酬はどうなるの?という点については言及が為されていないので、現時点では方向性が見えづらい状況です)。
次に、地域等との連携についてです。

【論点】
■ 通所介護事業所において、利用者が地域において社会参加活動を実施したり、地域住民との交流を図る場を設けるなど、地域等との連携を行っている場合があるが、これらの取組には、
・利用者にとって、心身機能の維持向上に資するのみでなく、要介護状態となっても社会で役割をもつことができるようになる
・事業所にとって、より地域に開かれた事業を展開することができる
といった効果があると考えられる。
■ 通所介護事業者において、地域等との連携を促進していく観点から、どのような対応が考えられるか。

【検討の方向(案)】
■ 地域密着型通所介護等において運営基準上で設けられている地域等との連携にかかる規定を、通所介護においても設け、通所介護事業所における地域での社会参加活動、地域住民との交流を促進することとしてはどうか。
※2020年10月15日 介護給付費分科会資料より抜粋
「“場”を有している」という観点含め、従来の機能に加え、通所介護事業所に今後、“地域連携”という更なる役割を担ってもらいたい、という厚生労働省の意図が明快に反映されたものと思われます。

次に、訪問介護 特定事業所加算についてです。

【論点】
■ 訪問介護の特定事業所加算(体制要件+人材要件+重度者対応要件で構成。区分支給限度基準額に含まれる)については、質の高いサービスを提供する事業所を評価するものであるが、区分支給限度基準額を超える利用者が出るとの理由から、要件を満たしているにも関わらず、加算を算定できていない事業所が一定数存在する。
■ 一方で、訪問介護以外のサービスにおける類似の加算であるサービス提供体制強化加算(体制要件+人材要件)については、介護職員の処遇改善に資する加算であり、区分支給限度基準額に含まれない加算とされているため、訪問介護の特定事業所加算についても同様の取扱いにすべきではないかとの要望がある。
■ 訪問介護の特定事業所加算について、重度者対応などの質の高いサービスを提供する事業所を評価していくという政策目的や、有効求人倍率が高い・人手不足感が強いことなどの現状を踏まえ、訪問介護員の処遇改善に向けた取組をより一層推進する観点から、どのような対応が考えられるか。

【検討の方向(案)】
■ 訪問介護の特定事業所加算について、
・質の高いサービスを提供する事業所を評価する観点から「定期的な事業所内の会議の開催」や「介護福祉士等の手厚い配置」等の体制や人材を評価しているが、対象となり得る事業所を適切に評価する観点から、訪問介護以外のサービスにおいて同様の項目を評価するサービス提供体制強化加算が区分支給限度基準額の対象外とされていることも踏まえて、見直しを検討してはどうか。
・地域において難易度が高い介護や質の高い介護を提供する事業所を適切に評価する観点から「重度者対応」の評価は維持しつつ、報酬体系の簡素化の観点からも、見直しを検討してはどうか。
※2020年10月22日 介護給付費分科会資料より抜粋
訪問介護における有効求人倍率が「15.03倍(2109年度時点)」となっており、人財確保策の一貫として訪問介護職員の処遇改善の重要性が高まる中、「区分支給限度基準額を超える利用者が出るとの理由から、要件を満たしているにも関わらず、特定事業所加算を算定できていない事業所が一定数存在」していることに対して改善を加え、処遇改善を促進させていこう、というのが本論点の意図となっています。
次に、訪問介護の生活機能向上連携加算についてです。

【論点】
■ 生活機能向上連携加算は、自立支援型のサービスの提供を促進し、利用者の在宅における生活機能向上を図る観点から、訪問・通所リハビリテーション事業所やリハビリテーションを実施する医療提供施設のリハビリ専門職・医師と連携して作成した計画に基づく介護を評価。
■ 当該加算については普及が進んでいないところであるが、外部のリハビリ専門職等と連携した自立支援型サービスの提供を効果的かつ効率的に進める観点から、どのような対応が考えられるか。

【検討の方向(案)】
■ 生活機能向上連携加算(Ⅱ)について、サービス提供責任者とリハビリ専門職等がそれぞれ利用者の自宅を訪問した上で協働してカンファレンスを行う要件に関して、要介護者の生活機能を維持・向上させるためには多職種によるカンファレンスが効果的であること及び業務効率化の観点から、利用者・家族も参加するサービス担当者会議によることを可能とすることを検討してはどうか。
※また、通所介護における生活機能向上連携加算の検討の方向(案)と同様、連携先を見つけやすくするための方策を検討してはどうか。
※定期巡回・随時対応型訪問介護看護、(介護予防)小規模多機能型居宅介護も同様にしてはどうか。
※2020年10月22日 介護給付費分科会資料より抜粋
本論点も通所介護同様の意図だと理解して差し支えないものと思われます。具体的には、サービス担当者会議の場を有効活用していく、という方向になるでしょう。
次に、訪問介護 通院等乗降介助についてです。

【論点】
■ 通院等乗降介助については、居宅要介護者の目的地(病院等)が複数ある場合であって、出発地及び到着地が居宅以外である目的地間の移送(例えば、病院間の移送や通所系・短期入所系サービス事業所から直接病院等に行った場合)については、算定できないこととされている。
■ このような目的地間の移送についても、算定を認めるようにして欲しいとの指摘があるが、通院等乗降介助について、利用者の負担軽減や利便向上の観点から、どのような対応が考えられるか。

【検討の方向(案)】
■ 通院等乗降介助について、利用者の身体的・経済的負担の軽減や利便向上の観点から、以下の①+②又は②+③のように、居宅が始点又は終点になる場合には、病院等から病院等への移送や、通所系・短期入所系サービス事業所から病院等への移送についても、介護報酬の算定を認めることを検討してはどうか。

 

※2020年10月22日 介護給付費分科会資料より抜粋
上記変更は極めて現実的・朗報と考えても差し支えないかもしれません。
最後に、訪問介護 看取り期における対応の充実についてです。

【論点】
■ 訪問介護については、看取り期における医療との連携に着目した介護報酬上の特別な評価はないが、他のサービスにおいて看取り期への対応に係る加算制度が置かれていることに鑑み、評価を求める要望がある。
■ 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年版)においては、本人・家族等と多専門職種からなる医療・ケアチームが十分な話し合いを行うこととされており、これにはケアに関わる介護支援専門員のほか、介護福祉士等の介護従業者が加わることも想定されている。
■ また、介護現場の実態としても、24時間連絡できる体制を確保したり、職員研修を充実させるなど、看取り期の対応力強化を図るための取組を行っている事例があるほか、訪問介護事業所の訪問介護員が、在宅で生活する看取り期の利用者にサービス提供を行う際に、医療・ケアチームの話し合いに参加しており、その参加率は介護支援専門員と同程度となっている。
■ こうしたことを踏まえ、訪問介護における看取り期への対応の充実を図る観点から、どのような対応が考えられるか。

【検討の方向(案)】
■ 訪問介護における看取り期への対応の充実を図る観点から、看取り期における訪問介護の役割や対応の状況等も踏まえながら、その評価について検討してはどうか。※訪問入浴介護も同様に検討してはどうか。
※2020年10月22日 介護給付費分科会資料より抜粋
現時点においても「看取り対応」を行っている訪問介護事業所も一定数存在すること、及び、訪問介護事業所において「看取り」という言葉が今以上に強く意識されるかもしれないことを含め、こちらも「朗報」と捉えて差し支えないものと思われます。

議論のプロセスから関心を持って情報を追いかけておくことが大切
以上、代表的なサービスの、代表的な論点について確認・言及させていただきました。介護経営者としては「こうなるかもしれない」という最終的な結論だけでなく、「何故このような内容に着地する可能性が高いのか?」という、言葉の裏に潜む意図や背景を温度感も含めて理解する姿勢がますます重要となってくるものと思われます(その意味からも是非、介護給付費分科会で提示されている資料も併せてご確認下さい)。また、早め早めに情報をキャッチアップし、頭の中で“PDCA”を回しておく事も必要かと思われます。「もし上記が実行された場合、自社にはどのような影響が出てくるか?」「それら想定される影響に対し、どのような対応を行う事が最適なのか?」幹部育成の視点も含め、そのような議論を社内で始めていかれる事を是非、おススメする次第です。
私たちも今後、有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。

※本ニュースレターの引用元資料はこちら

第188回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14094.html
第189回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14240.html

【介護・保育】人財定着ブログ11月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑰」

【介護・保育】人財定着ブログ10月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑯」

の続きです。

今月号も先月号に引き続き、人事制度(キャリアパス)の運用に関して

Q&A形式にてお伝えします。

 

Q5何をどうすれば、良い評価が得られるのかが、わからないので、評価自体が評価のための評価になり、マンネリになっている

A5、何をどうすれば、いい評価が得られるのか」。被評価者からすれば当然知りたい内容ですし、それが法人の求めている職員像につながることになるわけです。ところが、評価者側の都合で、もしくは評価者側の裁量の幅をできるだけ大きくできることを目的に、評価項目を抽象的な表現にしたり、評価点のつけ方などがブラックボックスにしているケースがあります。この場合、「求められる職員像」が明確にはならないので、目標自体に具体性が欠けることになります。

弊社が推奨する職能評価や行動評価は、事前に評価される内容が具体的に分かっているだけではなく、点数のつけ方もオープンにしているので、透明性が担保されるだけでなく、各職員においては自己成長の実感が可能になります。評価制度が本当の意味で職員を育てるための制度にするには、次に述べる視点がとても大切になります。

  • 組織全体のレベルアップを図ることを目的とする。

評価によって優秀な職員を発見することも大切ですが、それよりも先に行わなければならないことは、普通の職員の能力を高めることによって組織全体のサービスの質を上げることなのです。一人の優秀な職員のヤル気を高めるよりも、多くを占める普通の職員のヤル気を高めることの方が大切であることを理解してください。

  • 部署別、職種別、そして等級別に「期待される職員の努力」を具体的に明記する。
  • はじめから「どんな努力をすれば良い評価(SまたはA評価)になるか」を明示しておく。この内容が「期待される職員像」となり、全ての職員に、期の初めから「こんな努力をしてほしい」と明示する。

評価は学校で行われるような試験や通信簿ではありません。学校の教育では、教科書に基づいて教えていき、期末または年度末に試験をして結果だけを測定し、評価すればいいのですが、職場ではそうではなく、どんな問題を出すのか(つまりどんな行動を期待しているのか)を初めに明確にしておいて、出来るだけ多くの職員が優秀な成績、つまり5段階評価ならS評価やA評価を取ってもらうようにすることが必要なのです。

その場合、必ず意見として聞こえてくるのが、「良い評価が増えれば、人件費が増加してしまうのでは?」という懸念です。もちろん、評価結果を反映させる処遇の財源(例えば、処遇改善加算)は確保しておきながら、その財源の限度内で分配を行う管理手法は必要になってきます。

 

Q6 評価はするも、結果をフィードバックしていないので、職員は何がどう評価されたかわからない

A6、評価フィードバックを年2回実施し、さらに個別面談(毎月)にて課題解決のフォローを行っている。

 

人事評価でもっとも大切なキーワードは何でしょうか。それは「透明性」と「納得感」です。透明性とは、人事評価でいえば、どういう評価項目で、だれがどのようなプロセスで評価をしているのかが明確であること。また「納得感」とは、なぜその評価結果になったのか被評価者が理解し、納得することです。しかしながらこの納得感が生まれるのはそう簡単にはいきません。なぜなら多くの職員は、自分は一所懸命仕事をし、それなりに仕事で貢献していると思っているからです。しかしながら、上司の評価がそのようなものでない場合には、だれしも心穏やかでは、いられないはずです。半ばあきらめて、表面的に納得したフリをしている場合も多いのではないでしょうか。それでは納得感を醸成するにはどうすればいいのか。まず、絶対に必要なのが、フィードバック面談です。面談では、自己評価と上司評価が明らかに違っている項目に着目し、その評価にした根拠を具体的に話し合うことで、お互いの視点や期待レベルを知ることができ、初めて「納得感」が醸成されてくるものです。

 

令和3年報酬改定関連 介護給付費分科会の動向

先週9日(金)に開催された

“介護給付費分科会”で公表された
資料を抜粋し 下記にてお知らせいたします。

ご興味ある方は、是非内容をご確認ください。

1 令和3年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)概要にいて

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000681068.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000681069.pdf

2、個別サービスについて

(1)福祉用具事業 考察
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000681955.pdf

(2)訪問介護事業 考察
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000681065.pdf

介護事業所様向け情報(経営)10月号③

福祉施設でみられる人事労務Q&A
『職員を定年後継続雇用する際の留意点』

Q:

当施設の就業規則は、定年を60 歳とし、定年後は希望者全員を65 歳まで継続雇用すると規定しています。このたび、半年後に60 歳を迎える職員がいるのですが、この職員の定年後の処遇や手続きなど、具体的にどのように進めていけばよいのか教えてください。

A:

定年が近い職員がいる場合、まずは継続雇用の希望について意思確認を行う必要があります。継続雇用を希望する場合には、個別に面談を行った上で、労働条件を提示し、雇用契約を締結します。継続雇用を希望しない場合はそのまま定年退職となり、退職手続きを行います。

詳細説明:

1.60 歳定年と希望者全員の継続雇用制度

2013 年4 月1 日に改正された高年齢者雇用安定法により、定年を65 歳未満に定めている場合、次のいずれかの措置をとる必要があります。

① 65 歳以上への定年引上げ
② 希望者全員の65 歳までの継続雇用制度の導入
③ 定年制の廃止

貴施設は、希望者全員の65 歳までの継続雇用制度を導入しているため、就業規則等において定年を60 歳と規定していたとしても、本人が65 歳までの継続雇用を希望するのであれば、原則として継続雇用することが求められます。よって、近々定年を迎える職員がいる場合、まずは60 歳定年以降も、継続雇用を希望するか否かの意思確認を行う必要があります。

2.継続雇用の手続き

定年を迎える職員が継続雇用を希望する場合は、継続雇用後の労働条件を提示します。労働条件は必ずしも定年前と同等である必要はなく、賃金、労働時間、仕事内容等を見直すことができます。職員本人との面談を通じて、労働条件を決定するとよいでしょう。

なお、賃金を引き下げる場合、社会保険の資格喪失と資格取得を同日にすることで、継続雇用された月から、引き下げ後の賃金に応じた標準報酬月額の適用、雇用保険から高年齢雇用継続給付の受給ができる場合があります。要件に該当する場合は、忘れずに手続きを行いましょう。

2021 年4 月には、更なる高年齢者の就業促進を目指した改正高年齢者雇用安定法が施行され、70 歳までの就業機会確保が努力義務となります。高年齢者を継続雇用する際には、一定の配慮をしつつ、その豊富な経験や知識を活かして職場を活性化できるよう、高年齢者が働き続けやすい環境を整備することが求められます。

(来月に続く)

介護事業所様向け情報(経営)10月号②

福祉施設等におけるOFF-JT の実施状況

職員への教育訓練の実施は、施設の成長に不可欠な要素です。ここでは今年5 月に発表された調査結果※から、福祉施設等(以下、医療,福祉)におけるOFF-JT の実施状況をみていきます。

医療,福祉はOFF-JT の実施割合が高い

上記調査結果から、医療,福祉の事業所におけるOFF-JT の実施状況をまとめると、下グラフのとおりです。

医療,福祉では、正社員と正社員以外の両方にOFF-JT を実施した割合が68.2%となっています。全体の結果である総数は35.1%ですから、30 ポイント以上高い割合です。

一方、OFF-JT を実施していない割合は、医療,福祉が13.0%で総数より10 ポイントほど低い状況です。

コミュニケーション能力を重視

医療,福祉の事業所が実施したOFF-JT の内容をまとめると、下表のとおりです。

医療,福祉では、新規採用者など初任層を対象とする研修の実施割合が62.6%で最も高くなりました。次いで、コミュニケーション能力、新たに中堅社員となった者を対象とする研修、技能の習得、キャリア形成に関する研修が40%以上になっています。

総数と比較すると、医療,福祉では、キャリア形成に関する研修やコミュニケーション能力、技能の習得の実施割合が高い状況です。半面、品質管理や新規採用者など初任層を対象とする研修、ビジネスマナー等のビジネスの基礎知識、マネジメント(管理・監督能力を高める内容など)の実施割合が10 ポイント以上低くなっています。

福祉介護の現場に対して、職員の負担軽減に向けた様々な政策が進められています。今後はそうした政策に関する研修なども増えてくるかもしれません。

※厚生労働省「令和元年度能力開発基本調査」
常用労働者30 人以上を雇用している企業・事業所および調査対象事業所に属している労働者を対象にした、2019 年(令和元年)10 月1 日時点の状況についての調査です。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450451&tstat=000001031190&cycle=8&tclass1=000001140208&tclass2=000001140212&tclass3=000001140218

(次号に続く)

介護事業所様向け情報(経営)10月号①

慰労金、従業員支給時の留意点

7 月より新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金の申請受付が始まり、順次給付も行われています。今回は、申請から支給までの介護サービス事業所・施設等(以下、介護施設等)における処理上の注意点をご案内します。

慰労金の支給は源泉徴収なしで

この慰労金は、介護に直接携わる職員に限らず、事務職員や給食調理員、リネン業務員、運転手等、利用者との接触機会のある職種が幅広く支給対象となります。要件や支給額は、厚生労働省のホームページ等でご確認ください。

厚生労働省ホームページ:「介護サービス事業所・施設等における感染症対策支援事業等及び職員に対する慰労金の支給事業」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00144.html

慰労金を受け取ることができるのは職員本人ですが、その手続きは介護施設等が行います。

  1. 職員の委任状を集め、代理申請(所定の申請書を作成し、各都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)にオンライン等で提出)します。
  2. 交付決定後、国保連より介護施設等に慰労金がまとめて振り込まれます。
  3. 介護施設等から対象となる職員に対し、個々に慰労金を給付します。
  4. 支給に関する書類を介護施設等で保管します。

職員に支給する際、以下の点にご注意ください。

【介護施設等における慰労金の取扱いの留意点】

✓ 受給は1 人につき1 回限り

複数事業所に従事している職員については、重複申請とならないように注意しましょう。医療分と介護分両方の受給も禁止されています。

✓ 「収入」として会計処理をしない

介護報酬の振込口座に振り込まれます。この慰労金は、介護施設等にとって「収入」ではありません。会計処理上、「預り金」や「仮受金」などの通過勘定を用いて、収入として計上しないように注意しましょう。

✓ 支給の際に源泉徴収しない

この慰労金には税金がかかりません(非課税所得)。源泉徴収しないように留意しましょう。

✓ 必ず全額、職員に支給を

慰労金は留保することなく、対象職員に確実に支給します。受給権の譲渡や差押えは禁止されています。この点にもご留意ください。

(次号に続く)

介護事業所様向け情報(労務)10月号④

深夜業に従事する従業員に実施が必要な健康診断

企業が実施すべき主な健康診断には、雇入れ時の健康診断と定期健康診断があります。そのほかに深夜業などの特定の業務に常時従事する従業員(以下、「特定業務従事者」という)に対する健康診断があり、配置替えの際と6ヶ月に1回、実施する必要があります。今回は、この特定業務従事者の健康診断をとり上げます。

1. 深夜業を含む業務とは

特定業務従事者の健康診断の対象となる人は、例えば多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所における業務や、深夜業を含む業務などに従事する人で、労働安全衛生規則に定められています。

このうち深夜業を含む業務は、常態として深夜業(午後10時から午前5時まで)を1週間1回以上または1ヶ月に4回以上行う業務と通達されています。工場で交替制勤務により深夜業を行っているような場合が該当しますが、これ以外にも、所定労働時間の一部が午後10時から午前5時までの時間帯に及ぶ場合も該当します。

2.パートタイマーの健康診断

短時間労働者(いわゆるパートタイマー)についても、以下の①と②の両方を満たす場合は、雇入れ時の健康診断と定期健康診断を実施する必要があります。

  1.  期間の定めのない労働契約により使用される人であること(※)。
  2. 1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

※期間の定めのある労働契約により使用されるパートタイマーの場合は、契約期間が1年以上である場合や契約更新により1年以上使用されることが予定されている場合、および1年以上引き続き使用されている場合(特定業務従事者健診の対象となる人については、1年以上を6ヶ月以上に読み替え)。

3.パートタイマーで特定業務従事者の場合

2.についてはあくまでも雇入れ時の健康診断と定期健康診断について指しているものです。2のa.およびb.に該当しないパートタイマーが特定業務従事者に該当するときには、雇入れ時の健康診断や定期健康診断の実施が不要な場合であっても、特定業務従事者の健康診断を実施しなければなりません。

例えば週3日、午後5時から午後11時まで勤務をする場合、特定業務従事者の健康診断の実施が必要です。

 

法令改正により、健康診断個人票等に対する医師等の押印と、定期健康診断結果報告書等の産業医の押印が不要になりました。この背景には、健康診断に関する情報を活用するために電子化を進める狙いがあるようです。

(来月に続く)

介護事業所様向け情報(労務)10月号③

厚生年金保険の標準報酬月額の上限の改定

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

社労士:

健康保険・厚生年金保険では、会社や被保険者が負担する保険料額の決定や、傷病手当金等の給付額の決定、老齢年金額の計算等に標準報酬月額が用いられますが、2020年9月分から厚生年金保険の標準報酬月額の上限が改定されました。

総務部長:

少し前に日本年金機構から届いた案内で見たような覚えがありますが、どのように変更されたのでしょうか。

社労士:

1等級から31等級まであったものに、新等級である32等級(標準報酬月額650千円)が追加されました。31等級に該当するのは報酬月額が60万5,000円以上63万5,000円未満の場合となり、32等級に該当するのは報酬月額が63万5,000円以上の場合となっています。

総務部長:

なるほど。当社でも取締役クラスで数名の被保険者が該当しそうですね。ところで、なぜ上限が改定されたのでしょうか。

社労士:

標準報酬月額の上限は、厚生年金保険法で年度末(3月31日)の状態により見直すと規定されています。具体的には、年度末における全厚生年金被保険者の平均報酬月額の概ね2倍が上限額を超え、その状態が継続するときには、その年の9月1日から上限を改定することになっています。

総務部長:

そうですか。てっきり厚生年金保険の保険料収入が不足しているので、上限を改定するのかと思ってしまいました。

社労士:

確かにそのように感じられるかもしれませんね。厚生労働省が公表している資料を確認すると、2016年3月末から先ほど説明した平均額の概ね2倍を超えていたようです。

総務部長:

ちなみに今回の上限の改定に伴って、会社で何か手続きすることはあるのでしょうか。

社労士:

改定された上限である32等級に該当する被保険者がいる場合には、日本年金機構で自動的に変更され、9月下旬に会社へ通知が届くようです。そのため、手続きは必要ありません。ただし、厚生年金保険料は当然変更になるため、給与から控除している厚生年金保険料は変更してくださいね。

総務部長:

承知しました。それでは日本年金機構からの通知を待ちたいと思います。

【ワンポイントアドバイス】
1. 2020年9月1日より厚生年金保険の標準報酬月額の上限が改定されて32等級(標準報酬月
額650千円)が追加された。
2. 新等級に該当する被保険者がいた場合でも届け出は不要であり、日本年金機構から通知
が届く。
3. 新等級に該当する被保険者がいた場合には、給与から控除する厚生年金保険料を変更し
なければならない。

(次号に続く)

介護事業所様向け情報(労務)10月号②

短縮される雇用保険の基本手当の給付制限期間

会社を退職し転職活動をするような場合には、雇用保険の基本手当を受給するケースが多いかと思います。基本手当は就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状態にある場合に支給されるものですが、離職理由によっては一定の期間、基本手当を受け取れない期間が設けられています。今回、この取扱いが変更されることとなりました。

1.待期期間と給付制限期間

雇用保険の基本手当は、会社がハローワーク(公共職業安定所)で手続きをした雇用保険被保険者離職票を、従業員が退職後にその住所地のハローワークに持参し、受給手続きをすることにより支給されます。

受給手続きを行った後には7日間の待期期間があり、待期期間後に原則として4週間に1回失業していることの認定を受けて、基本手当が支給されます。

ただし、自己の責に帰すべき重大な理由で退職した場合(以下「懲戒解雇による退職」という)と、正当な理由のない自己都合により退職した場合(以下「自己都合による退職」という)には待期期間後、一定期間基本手当が支給されない給付制限期間が設けられています。

2.短縮される給付制限期間

給付制限期間は3ヶ月間となっていますが、2020年10月1日以降の自己都合による退職の場合、この給付制限期間が2ヶ月間に短縮されます。短縮される退職は5年間のうち2回までであり、3回目の退職以降の給付制限期間は3ヶ月間となります。

なお、懲戒解雇による退職の給付制限期間は、これまでどおり3ヶ月間のままです。

3.正当な理由のある自己都合退職

給付制限期間が設けられるのは、1.で示したとおり正当な理由のない自己都合による退職ですが、退職理由には「正当な理由のある自己都合退職」もあります。例えば結婚に伴う住所の変更や、会社が通勤困難な場所へ移転したこと等がこれに該当します。正当な理由のある自己都合退職の場合には、給付制限期間は設けられていません。

 

給付制限期間は従業員が退職した後のことになるため、会社に直接関係はしませんが、自己都合による退職の場合であっても、給付制限期間なく基本手当を受け取りたいという従業員は多くいるものです。離職理由についてはトラブルになりやすいため、退職時にしっかりと確認するとともに、給付制限期間のルールも押さえておきましょう。

(次号に続く)

(厚労省が雛形を提示)従業員勤務体制と勤務形態一覧

先月末、全サービスの厚労省が発表した

介護サービス別 

 

“従業者勤務体制及び勤務形態一覧表”

 

の参考様式が公表されました。

事業所の勤怠、シフト管理、労働時間管理の雛形

として参考になるものと思いますので共有化させて

頂きます。

https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou/detail?gno=7443&ct=020060090

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