医療業界

病院・クリニックの経営

聖域視されなくなってきた医師職

労務問題が多発していると言われる医療業界ですが、ひごろ業務に携わっていると、顕在化していないだけで労務問題の発生を抱えているケースはまだまだ多いと実感しています。一方で、労務問題が病院経営に与えるダメージの大きさを認識している病院経営者の方々は決して多くはないのが現実ではないでしょうか。

また、医師の労働時間管理は、時代の趨勢として不可欠となってきています。ただし、タイムカードは非現実的で、ICカード等の非接触型によるものかクラークによる管理等が現実的になってきているようです。残業代の問題を含めて、一般職員と同様に考えて労務管理をする必要性が生じてきているのが現状です。

そこで、社労士の専門分野と言える「就業規則の作成・見直し」という点で共通する問題点をいくつか見ていきたいと思います。

労働時間管理

基本的には、診療科で繁忙閑散があれば1年単位の変形労働時間制、無ければ1か月単位の変形労働時間制を導入し、定額残業制を整備するという方法になろうかと思います。

また定額残業制を導入している医療機関では医師・看護師の労働時間を把握できていないケースもありますが、このような場合にも当然ながら労働時間の把握は必要で注意を要します。

宿直オンコール、仮眠時間

放射線技師や臨床検査技師などについては、夜間や休日の救急患者にすぐに対応できるよう、担当制で宿直オンコール(自宅待機)を行っているケースがあります。自宅待機などは原則として労働時間ではありませんが、回数や頻度などへの配慮や、オンコール手当の支給など、負担に対する対応が必要になります。

仮眠時間については、やはり医師が問題になるケースが多いです。仮眠時間とは、現実に業務に従事してはいないものの、緊急事態の際に必要な措置をとれるように待機することを使用者から命じられている時間であり、労働から解放され就労しないことが保証されている時間とは言えないことから「休憩時間」として取り扱うことができないとされています。

この点も現場での注意が必要です。

管理監督者

一般の医療機関では、理事長、院長、事務長、看護部長、医局長までが、管理監督職になります(薬局長、放射線技師長等の各部門長は実態により判断)。看護師長、主任、医事課長などの中間離職については、権限や処遇、勤務状況に即して判断する必要がありますが、非該当になるケースが多いように思います。この問題については、看護師長などの現場職員の不満が強く出てくるところでもありますので、表面化すれば、大きな経営リスクにもなりかねません。

賃金

医療機関の賃金体系には、多くの手当が設定されているケースが多いですが、この諸手当についても、時間外単価の基礎額に含める必要があるにも関わらず含めていないというケースが見受けられます。このあたりも違法な給与計算がなされていることになるので、要注意です。

医師の雇用契約

医師の就業規則を作成している医療機関は、中小の医療機関ではほぼ無いように思います。むしろ中小では医師の数が少なく、待遇面も医師によって大きく異なる為、就業規則を作るよりは、個々の雇用契約をしっかりと整備をする方が現実的です。ただ、雇用契約書に大きな問題を抱えているところは少なくありません。一例をあげれば、一般の職員と同様のフォーマットを使用したり、あるいはまったく雇用契約書を発行していなかったり・・・

医師との雇用契約は、しっかりと内容を吟味し、労働コンプライアンスを遵守したもので、労働条件の合意を取り付けることが重要になります。

医療制度改革、診療報酬の改定など医療を取り巻く経営環境が厳しくなる中、労使間の無駄なトラブルを防止し、労使の強固な信頼関係の下で一体となって医療サービスの向上、経営の改善に取り組むことが求められています。また、今後は、医療分野においても「働き方改革」の波が押し寄せてくることは、ほぼ間違いなく、労働時間などのコンプライアンスが、今までになかったレベルで厳しく求められる時代になってきます。このような時代だからこそ、原点に戻り、労働関係法令を遵守する事、従業員に対して権利と義務を明確にし、開かれた雇用契約の下で、前向きに責任ある業務を行う職場環境を作っていくことが今後の医療経営に大変重要になるものと考えております。

⇒社労士顧問

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