コラム

【社労士解説】「2日後に有給で旅行に行きます」は拒否できる?介護・保育・クリニックの正しい労務対応とトラブル防止策

 

「2日後に旅行に行くので、有給休暇(年次有給休暇)をください」

もし、現場の職員からこのように急に有給申請されたら、経営者や院長先生はどう対応すべきでしょうか。特に、ただでさえ人手不足な上に、その日が1年で一番忙しい繁忙期や、シフトがカツカツの日だったとしたら、「今回は拒否したい…」と思うのが本音かもしれません。

介護施設、保育園、クリニックといった「人が人をケアする現場」では、1人の欠員がダイレクトに現場の崩壊やサービスの低下につながるため、有給休暇の取得を巡るトラブルが後を絶ちません。

今回は、医療・福祉業界専門の社会保険労務士(社労士)が、「職員からの急な有給申請は拒否できるのか?」「会社が持つ『時季変更権』の正しい使い方」、そして「急な有給申請に振り回されないためのルール作り」までを徹底解説します。

1. 結論:有給休暇の「拒否」は原則不可!ただし「時季の変更」は可能

まず法律上の結論からお伝えすると、会社が職員の有給休暇の取得を「完全に拒否(消滅)」させることは、原則としてできません。

有給休暇は、労働基準法によって労働者に認められた強い権利です。たとえその理由が「プライベートな旅行」であっても、取得理由を理由に会社が拒否することは違法となります。

◆ 会社に認められた唯一の対抗策「時季変更権」とは?

しかし、会社側にも現場を守るための権利が認められています。それが「時季変更権(じきへんこうけん)」です。

労働基準法第39条第5項(要約)

労働者が請求した日に有給休暇を与えることが、**「事業の正常な運営を妨げる場合」**においては、会社は他の日に変更させることができる。

つまり、「有給をあげるな(拒否)」とは言えませんが、「その日はどうしても困るから、別の日にずらしてほしい(変更)」と主張することは法律上可能なのです。

2. 単に「忙しいから」はNG!時季変更権が認められる「4つの判断基準」

ここで最も重要になるのが、「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、具体的にどのような状態を指すのかという点です。

裁判例などを踏まえると、単に「今日は業務が忙しいから」「いつも人手が足りないから」という慢性的な理由だけでは、時季変更権の行使は認められません。会社側が「代替要員を確保するために最善の努力を尽くしたけれど、どうしても無理だった」という客観的な事実が必要です。

特にシフト制で動く介護施設、保育園、クリニックにおいて、時季変更権が認められやすいのは以下のような4つのシチュエーションです。

① シフト変更の調整を尽くしたが、代替要員が確保できないとき

急な申請に対して、管理者が他の職員に「代わりにシフトに入ってもらえないか」と打診したり、出勤日の変更を調整したりしたものの、どうしても代わりの人が見つからなかった場合です。

② 有給の取得希望者が同じ日に重複し、現場が回らなくなるとき

同じ日、同じシフトの時間帯に、複数の職員から同時に有給申請が出てしまったケースです。全員を休ませると配置基準(人員基準)を割り込んでしまう、あるいは著しく診療や保育に支障が出る場合は、時期の変更を打診する正当な理由になります。

③ その職員にしかできない「代替不可能な重要業務」があるとき

他の職員では対応できない、その人独自の専門的な業務や、その日に完了しなければならない重大なタスクがある場合です。ただし、日頃から「属人化(その人にしかできない状態)」を放置している場合は、会社の管理不足とみなされることもあるため注意が必要です。

④ その日に外せない研修・教育訓練、または出張があるとき

以前から予定されていた重要な研修、行政による監査対応、あるいはその職員がメインで参加すべき出張などが重なっている場合です。

3. 【管理者必見】トラブルを防ぐための実務上の留意点

上記の4つの条件に当てはまる場合、法律上は「強制的に有給の日程を変更させること」が可能です。しかし、ここで感情的に「法律で認められているから、2日後の有給はダメ!変更しなさい!」と突っぱねるのは、実務上おすすめできません。

相手は感情を持つ「人間」。まずは話し合いから

特に介護・保育・医療の現場は、職員同士のチームワークとモチベーションが命です。強制的な命令を下してしまうと、職員の不満が溜まり、最悪の場合は「突然の退職」や「SNSへの悪評の書き込み」「労働基準監督署への駆け込み」といった二次トラブルに発展しかねません。

まずは、管理者(院長や施設長)から以下のようにアプローチすることをお勧めします。

  • 現状の共有: 「その日は〇〇さんの予約が詰まっていて、代替のスタッフも見つからないんだ」と、困っている状況を具体的に伝える。

  • 妥協案の提示: 「2日後からの旅行を、来週の〇〇日~〇〇日に変更してもらうことは難しいかな?」と、代替案を一緒に考える姿勢を見せる。

法律を盾に戦うのではなく、「お互いの事情を理解し合うための話し合い」を挟むことが、職場環境を維持するための実務的なテクニックです。

4. 2日前の申請は遅すぎる?就業規則で定めるべき「有給のルールとマナー」

今回の事例のように「2日前に旅行の申請をしてくる」という事態が起こる背景には、「職場内での有給取得のルールやマナーが曖昧になっている」という根本的な原因があります。

職員に気持ちよく、かつ現場に穴をあけずに有休を取得してもらうためには、就業規則で明確なルールを定め、周知徹底することが不可欠です。

◆ 「〇日前までの申請」は有効か?

労働基準法には「有給は何日前までに申請しなければならない」という具体的な期限の定めはありません。しかし、判例では「会社が代替要員を確保するために必要な、合理的な範囲内の期間」であれば、就業規則で申請期限を設けることは有効であるとされています。

あまりに長い期間(例:1ヶ月前までに申請など)は不合理とされる可能性が高いですが、「原則として7日前までに書面(またはシステム)で申請すること」というルールは、実務上も非常に合理的であり、有効です。

まずは、就業規則に以下の項目が正しく記載されているか確認しましょう。

  • 有給休暇の申請方法(書面なのか、LINEなどの連絡は不可なのか)

  • 申請の締め切り(例:前月〇日までのシフト提出時、または取得日の7日前まで)

  • 緊急時の対応(突発的な体調不良などの場合の事後振替ルール)

5. 職員への「マナー指導」が、強い組織を作る

ルール(就業規則)を作るだけでなく、朝礼やミーティングを通じて、職員へ「有給取得におけるマナーと配慮」について定期的に指導することも、社労士として強くお勧めしています。

有給は権利ですが、介護、保育、クリニックは「チームプレイ」で動いています。同僚に極端な負担をかけないよう、以下の4つの意識を職員に持ってもらうようアプローチしましょう。

指導すべき4つのマナー 具体的な内容
① 余裕を持った事前申請 旅行などの予定は、シフトが確定する前、あるいは少なくとも1〜2週間前には相談・申請する。
② 業務の引き継ぎ 自分が休んでいる間に発生する可能性のある業務や、担当している患者様・利用者様・園児の特記事項を事前に周囲へ共有しておく。
③ 代替要員への配慮 「お互い様」の精神を持ち、自分が休む代わりに、他の人が休むときには快くシフトを代わる姿勢を持つ。
④ 周囲への感謝の言葉 休み前や休み明けに「お休みをいただきありがとうございました」「ご協力ありがとうございました」の一言を添える。

こうした「お互い様の文化」が根付いている職場では、急な有給取得による不満やギスギスしたトラブルは自然と減少していきます。

6. まとめ:介護・保育・クリニックの有給トラブルは専門の社労士へ

職員からの急な有給休暇の申請に対し、単に「忙しいから」という理由で拒否することはできません。しかし、事前の調整を尽くしても代替要員が確保できないなど、「事業の正常な運営を妨げる事由」があれば、時季変更権を使って日程をずらしてもらうことは法的に正当な対応です。

大切なのは、以下の3ステップです。

  1. 就業規則で「7日前までの申請」などの合理的ルールを定める

  2. 万が一のときは、感情的に拒否せず「話し合い」で時期の変更を打診する

  3. 普段から「周囲への配慮と引き継ぎ」についてのマナー教育を行う

介護施設、保育園、クリニックは、一般的なオフィスワークとは異なり、現場の配置基準や独自のシフト体制があるため、労務管理が非常に複雑です。

「うちの現場の状況で、時季変更権は認められる?」

「トラブルにならない就業規則の書き方を知りたい」

とお悩みの経営者・院長先生は、ぜひ医療・福祉業界の労務管理に強い、専門の社会保険労務士(社労士)までお気軽にご相談ください。現場の実情に寄り添った、最適な解決策をご提案いたします。

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ベースアップ評価料 「継続的な賃上げ実施」の判断基準

ベースアップ評価料は6月から、「継続的に賃上げを実施している医療機関かどうか」で評価が分かれる仕組みとなります。まだ届出をしていない医療機関等にも、高い点数を算定できる道が示されました。

「継続的な賃上げ実施」を満たすには?


6 月からは「継続的に賃上げを実施する保険医療機関」が高い点数を算定できます。ここに含まれるのは、まず「2026年3月31日時点でベースアップ評価料を届け出ている保険医
療機関」です。この場合、同日時点でベースアップ評価料を算定している必要があります。

2026 年3月までにベースアップ評価料を届け出ていなかった場合でも、それに相当する賃上げを行った場合には、同様の高い点数を算定することができます。この場合、2026年度改定においてベースアップ評価料で求められる賃上げ水準(①)に、2024年度改定で求められていた賃上げ水準2.3%(②)を加えた水準の賃上げを行うことが条件となります。

■2026年3月までに届け出ていなかった場合の
「継続的に賃上げを実施する保険医療機関」の要件
①2026年度改定
が求める水準    + ②2024年度改定水準 =継続的な賃上げ実施の要件


このとき、算定対象となる職員(医師・歯科医師は含まれません)を、「看護補助者・事務職員」群と「それ以外の職員」群に分け、基本
給等の総額を2024年3月時点と比較し、改善額を算出します。この改善額が、下表に示す割合以上※のとき、「相当する賃上げを行った」
と判断されます。

■2026年度 (2026年6月~2027年5月)
看護補助者・事務職員 ①5.7%+②2.3%=8.0%
それ以外の職員
①3.2%+②2.3%=5.5%

■2027年度 (2027年6月~2028年5月)
看護補助者・事務職員 ①11.4%+②2.3%=13.7%
それ以外の職員
①6.4%+②2.3%=8.7%
※ 両群を合わせた改善額が、両群に求められる額の合計
以上となっていれば、要件を満たすことになります。

なお、2026 年 3 月までにベースアップ評価料を届け出ていない場合は、改善額について、2024 年 3 月時点との比較を算出し、所定の様式に記載して届け出ることが必要となります。
手続きや様式等の詳細は、厚生労働省のホームページでご確認ください。

参考:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html

『産前産後休業と年次有給休暇の関係』

Q)当院には、まもなく産前産後休業(以下、産休)に入る職員がいます。年次有給休暇(以下、年休)が、数日残っているのですが、この年休を産休中に取れ
るのでしょうか?

 

A)産休中は、労務の提供義務が消滅しているため、年休を取得することはできません。ただし、産休前に年休の請求があった場合には、原則として産前休業
期間に限り、請求があった日に年休を取得することができます。

 

詳細解説:
1.産休と年休の関係
産休は、妊娠中・出産後の母体保護を目的とした労働基準法に基づく休業制度です。産前休業は出産予定日前6週間(多胎妊娠の場合には14週間)であり、
産後休業は出産日以後8週間です。産前休業は職員の請求に基づいて与える義務があり、産後休業は請求の有無にかかわらず与える義務があります。ただし、出産後6週間を経過
した職員については、一定の条件のもと、就業が認められています。
年休は、労働日について労務の提供義務を免除するものであることから、労務の提供義務が消滅している産休中に取得することはできません。そのため、産休中の職員から年休
の請求があった場合、医院は年休の取得を認める必要はありません。


一方で、産前休業を請求できる期間に、職員が産前休業を請求せずに年休を請求した場合には、労務の提供義務は消滅していないため、医院は年休の取得を認めることになりま
す。なお、産後休業は請求の有無にかかわらず、原則として就業が禁止されているため、職員から年休の請求があったとしても年休の取得を認める必要はありません。


2.年休付与日到来による消滅と付与
労働基準法では、年休の付与日から2年を経過したときに、時効により年休は消滅すると規定されています。よって、産休中に時効を迎えた年休は消滅します。
次に付与については、産休中に付与日が到来し、年休付与要件を満たしている場合、医院は年休を付与しなければなりません。なお、付与された年休は、産休から復帰した後に取
得することが可能です。
産休中には、一定の要件を満たすことで健康保険から出産手当金が支給されます。出産手当金は、出産のために働くことができず、給与が支払われない場合に支給されるもので
す。産前休業中に年休を取得すると、出産手当金が支給されないことがあるため、対象者には誤解のないように事前の説明が求められます。

保育士・保育関係者63名に聞いた仕事のリアル。残業や睡眠時間は?「働いていてよかった」と思える瞬間は、子どもの成長や親からの感謝【保育合同アンケート2026】

 

保育士・保育関係者63名に聞いた仕事のリアル。残業や睡眠時間は?「働いていてよかった」と思える瞬間は、子どもの成長や親からの感謝【保育合同アンケート2026】

「遊びや学びの環境づくり」や「子どもの成長」は最優先事項

アンケートにお答えいただいた保育士さんが「最も大切にしていること」は「子どもたちの豊かな遊びや学びの環境づくり」「保護者との信頼関係構築」「子どもの成長を間近で見守ること」の3つが上位に。ご自身の人間関係や専門性にも回答は集まりましたが、やはり子どもに関わる項目が最優先であることが分かります。

また、「この仕事を続けていてよかった、と思えた瞬間」について、アンケートでは印象的なエピソードが数多く寄せられました。

「お友達の前で謝ることができなかった子どもが、友達と仲直りし、クラスの人間関係の核になりました」

「他園で紹介された子がその後来園し、クラスの人間関係に対して悩み相談を続けました。クラス内の友達との遊びがうまくできなかった子が、クラス全員で勝ちに行き2位になったとき、みんながほめ称えてくれた」

一人ひとりの変化を間近で見守れること——それが、この仕事の大きな醍醐味のひとつのようです。

長期的な関わりのなかでの成長を喜ぶ声も。

「安心できる関係の中では、子どもは自分から自由に遊び出し、考えを言葉にするようになります。遊びの力は、怒られることで起きるのではなく、関係が保証されることで自然に湧き上がるのに気づきました。こういう経験が積み重なることが、この仕事をしていてよかったと思える瞬間です」

「保護者から感謝の言葉をいただいたとき、子どもの育ちの一端を担えたと感じる」

という回答も。子どもだけでなく保護者との関わりや声かけがやりがいにつながっていることがうかがえます。

残業・給与・人員不足……現場が訴える「変わらない課題」

一方で、「困っていること」「課題だと感じていること」への回答からは、職場環境や待遇面に関する課題が浮き彫りに。回答は率直で切実なものが目立ちました。

残業や業務量に関しては、「課外活動、行事の準備など子ども以外の業務が多い」「シフト作成、保護者への連絡管理など比較の業務や精神的に大変な業務を担っている」といった回答が複数寄せられました。

給与・手当に関しては、「子どものための仕事なので労働時間については自分が納得できる指導のために仕方がないことだと思う。残業手当などではなく、国にとっても大切で、重要な任務を果たしている職業であることを評価・認識して処遇改善加算を増やしてほしい」という直接的な要望が挙がりました。

「多動や発達障害の子どもへの対応」「ICT化への対応・負担」といった専門性に関わるストレス要因も複数回答されていました。

育休・産休の取りやすさについては、「保育士なのに、自分の育休が取れない」「産休、育休、病休、時短勤務等の代わりがいないため、残っている職員の負担が増える。その負担に対しての手当はあっていいのでは」という深刻な声も。人員不足が育休取得の障壁となっている実態が、データからも浮かび上がります。

やりがいの源泉は「子どもの成長」や「保護者との信頼関係」

「保育、幼児教育の仕事でやりがいを感じるのはどのようなときですか」(Q10)という設問に対しては、多くの回答者が「子どもの成長を目の当たりにした瞬間」を真っ先に挙げました。言葉が出なかった子が初めて自分の気持ちを伝えられたとき、泣いてばかりだった子が笑顔で登園するようになったとき——日々の小さな変化の積み重ねが、この仕事を続ける大きな原動力になっていることが、回答全体を通じて強く伝わってきます。

次いで多かったのが「保護者との信頼関係が深まったとき」という回答です。「子育てに悩んでいた保護者が、少しずつ笑顔になっていくのを見たとき、この仕事をしていてよかったと思う」という声に代表されるように、子どもだけでなく家族全体を支えるという役割への誇りが、やりがいの源泉のひとつとなっています。

また、「チームで保育に取り組み、同僚と連携がうまくいったとき」「自分の専門知識や経験が後輩の指導に活かせたとき」といった、職場内での協働や成長実感をやりがいとして挙げる声も目立ちました。個人の達成感にとどまらず、チームとして子どもたちを支えるという集団的な充実感が、保育という仕事の魅力として広く共有されていることがうかがえます。

一方で、「やりがいは感じているが、それが待遇や評価に反映されていない」という複合的な声も少なくありませんでした。やりがいと報酬のギャップは、保育職における慢性的な課題として改めて浮き彫りになっており、現場の熱意を持続可能な形で支える仕組みづくりの必要性を示しています。

「休憩時間も休めない!」過酷な労働環境の実態

業務の過酷さは、休憩時間のあり方にも表れています。「1日の平均休憩時間」(Q13)を尋ねたところ、「規定通りに取れている」という回答は少数派で、「ほとんど取れない」「昼食をとりながら次の活動の準備をする」といった声が目立ちました。

さらに、「休憩時間の過ごし方」(Q14)については、「書類仕事の続き」「午後の保育準備」といった回答が多く、休憩時間が実質的に業務時間に侵食されている実態がうかがえます。心身を休めるべき時間が確保できないこの状況は、保育の質の維持だけでなく、保育士自身の健康にとっても深刻な問題と言えるでしょう。

子どもに関わる仕事への誇りと課題の間で——保育の現場が求めているもの

今回のアンケートで寄せられた保育士さんたちの声からは、「保育という仕事に対する誇り」が感じられました。
同時に、人員不足、給与の低さ、ICT対応の負担感、育休取得の難しさなど、解決されないまま積み重なっている課題も浮き彫りになりました。
子どもたちの笑顔や成長に日々向き合いながら、現場の保育者たちはどんな思いで働いているのか——。そして、その環境を整えていくために、社会はどのようなサポートができるのか、私たち保護者も一緒に考えていく必要があります。

【調査概要】
■調査期間:2026年2月1日〜28日
■調査機関:小学館『新幼児と保育』『ほいくる』と、こどもりびんぐ発行の『園ふぁん』合同で結成した「みんなの保育総研」での自社調査。
■有効回答数:63人

 

スポットワークのカイテクと介護福祉士会が連携協定 人材の確保や質の向上で協力

スポットワークのカイテクと介護福祉士会が連携協定 人材の確保や質の向上で協力

介護職などのスポットワークを仲介するカイテクと日本介護福祉士会は18日、介護人材の確保やサービスの質の向上などを目指す包括連携協定を締結したと発表した

 

15日付で包括連携協定を結んだ。介護福祉士らの活躍促進やキャリア形成、学習機会の拡大などを図る構えだ。


深刻化する人手不足や多様な働き方の浸透などが背景にある。介護現場でスポットワークの活用が広がるなか、専門職が長く安心して働ける環境の整備、継続的な自己研鑽の機会の提供などが急務となっている。


今回の協定では、カイテクが強みとする潜在有資格者の復職の後押し、多様な働き方の創出などと、職能団体である日本介護福祉士会の資質向上・倫理醸成に関するノウハウをかけ合わせる。双方の知見を融合し、介護人材の確保やサービスの質の向上につなげる狙いがある。


今後の取り組みには、カイテクの登録者に対する情報提供や周知・啓発活動なども含まれる。両者は定期的に協議の場を設け、より具体的な連携策を検討していくと説明している。

 

 

 

【社労士監修】クリニック・介護・保育園の正しい労務指導|「厳しい注意」はどこからパワハラになる?ハラスメント訴えへの誠実な対応実務

 

医療・福祉の現場(クリニック、介護施設、保育園)は、人命や安全を預かる特性上、一歩間違えれば重大な事故に繋がりかねない緊張感があります 。そのため、経営者や管理職がスタッフに対して「時に厳しく指導せざるを得ない場面」があるのは当然のことです

しかし、現場のリーダーから「問題行動のある職員を厳しく指導したいが、パワハラと言われるのが怖くて強く言えない」という悩みの声を耳にすることが増えています 。また、職員から「これってハラスメントです」と訴えがあった際、法人としてどこまで対応すべきか苦慮しているケースも少なくありません

本記事では、厚労省の指針に基づき、「業務上の適正な指導」と「パワハラ」の境界線を、クリニック・介護・保育園の具体例を交えて解説します 。また、ハラスメントの訴えがあった際の法人の対応義務についても実務的な視点から紐解きます


1. そもそも「職場のパワーハラスメント(パワハラ)」の定義とは?

客観的な指導を行うための前提として、まずは法律および厚生労働省が定める「パワーハラスメント」の3つの定義を確認しておきましょう 。職場におけるパワハラとは、同じ職場で働く者に対して、以下の3つの要素をすべて満たす行為を指します

パワハラの3要素 概要

① 優越的な関係を背景とした言動

職務上の地位(上司から部下)だけでなく、専門知識や経験の差、人間関係のグループなど、抵抗や拒絶が難しい関係性を背景にしていること 。※部下から上司、同僚間も含みます

② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

社会通念に照らし、明らかに業務上の必要性がない、または指導の手段・態度が不適当であること

③ 労働者の就業環境が害されること

身体的・精神的な苦痛を与えられ、労働者が能力を十分に発揮できないなど、看過できない程度の悪影響が生じること

【重要】「適正な業務指示・指導」はパワハラではない

逆を言えば、「客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導」については、職場のパワハラには該当しません 。指導される側が主観的に「厳しくて不快だった」「傷ついた」と感じたとしても、それが業務上必要な内容であり、かつ社会通念上相当な方法であれば、法律上のパワハラとは認められないのです


2. 明らかな「問題職員」への厳しい指導もパワハラになるのか?

結論から申し上げると、「業務の性質や内容に照らして重大な問題行為を行った従業員に対して、一定程度注意をすること」はパワハラには該当しません

クリニック、介護施設、保育園など、患者様、利用者様、園児の命や安全に直結する職場では、業務の必要性や緊急性が高い場面が多く存在します 。そのため、重大なミスや問題行動に対して「厳しく注意・指導すること」は一定程度許容されます

厚生労働省のいわゆる「パワハラ指針」でも、精神的な攻撃(脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など)には該当しない例として、具体的に以下の2つを挙げています

### 【厚労省指針】パワハラに該当しないと考えられる例 1. 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること。 2. その業務の内容や性質に照らして重大な問題行為を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。

医療・福祉・保育の現場における「パワハラにならない」具体例

  • クリニック

    処方箋の確認ミスや医療機器の誤操作など、患者の健康に直結する重大なミスを繰り返す看護師や医療事務に対し、「命に関わる現場なのだから、二度とこのような不注意を起こさないでください」と、強い口調でその場で注意を促す行為。

  • 介護施設

    移乗介助時の手順を無視し、利用者様を転倒させるリスクのある危険な行動を取ったヘルパーに対し、事故を未然に防ぐためにその場で語気を強めて制止・注意する行為。

  • 保育園園児のアレルギー確認を怠って給食を提供しようとした保育士、あるいは遅刻や無断欠勤を繰り返し、シフトに多大な支障を出しているにもかかわらず改善の兆しがない職員に対し、面談室で一定程度強く叱責・指導する行為

これらはすべて「業務上必要かつ相当な範囲」であり、適正な労務指導といえます


3. 「指導」が「パワハラ(精神的な攻撃)」へ変わる境界線

いくら職員側に問題(遅刻、ミス、規律違反)があったとしても、指導の「やり方」が社会通念を逸脱してしまえば、それはパワハラ(精神的な攻撃)と判断されるリスクがあります 。経営者や管理職が特に注意すべき「境界線」は以下の3点です。

① 人格否定や業務に関係のない暴言(アウト)

「だからお前はダメなんだ」「育ちが悪い」「給料泥棒」「辞めてしまえ」など、問題行為の指摘を超えて、職員個人の人格や存在自体を否定する言動は、いかなる理由があってもパワハラになります 。指導すべきは「行為(ミスや遅刻)」であり、「人格」ではありません

② 他の職員の前で見せしめのように叱責する(原則アウト)

他のスタッフや、クリニックの患者様、保育園の保護者などの前で、大声で長時間にわたり怒鳴り散らす行為は、必要性の範囲を超え、相手に過度な精神的苦痛を与える(名誉毀損や侮辱にあたる)ためパワハラとみなされやすくなります 。強い注意を行う際は、個室(面談室など)に呼んで1対1で行うのが原則です。

③ 過去の終わったミスを執拗に責め立てる(アウト)

今回の問題行為とは直接関係のない、数ヶ月前・数年前のミスまで引っ張り出してきて、「あんたはあの時もそうだった」と長時間ネチネチと責め立てる行為は、業務上の必要性を欠くため不適切です。


4. スタッフからの「ハラスメントの訴え」に法人はすべて対応すべきか?

スタッフから「上司からパワハラを受けました」「同僚からセクハラ(セクシャルハラスメント)をされています」といった訴えがあった際、法人側は「原則としてすべてに対応しなければならない」というのが結論です

「あの職員は被害妄想が激しいから」「ただの好き嫌いの感情論だろう」と経営陣が主観的に判断し、放置することは絶対に避けてください。

厚労省指針における「広く相談に対応する義務」

この点については、厚生労働省の指針にも明確に記載されています 各種ハラスメントに該当するかどうか客観的に見て微妙なケースであっても、雇用側は広く相談に対応する義務があると指摘されています

すべての訴えに対応すべき2つの実務的理由

  1. 相談者本人が気づいていない「別の重大な論点」が浮上するため 当初は「上司から厳しく当たられた(パワハラ)」という相談であっても、丁寧にヒアリングや事実調査を進める過程で、「実はその管理職がシフトを不正に操作していた」「業務上横領の疑惑がある」「他の職員にも隠れてセクハラを行っていた」といった、経営上の重大な不正・リスクが発覚することが実務上よくあります

  2. 放置することでハラスメントが深刻化・泥沼化するため 「大したことではない」と初期対応を怠ると、被害を訴えた職員のメンタルヘルス不調(うつ病など)を招いたり、職場全体の士気が低下して連鎖退職に繋がったりします。さらに、労働基準監督署への駆け込みや、法人を相手取った損害賠償請求訴訟など、法的トラブルへと発展するリスクが跳ね上がります


5. 【経営者向け】ハラスメント訴えがあった初期対応の4ステップ

もし職員からハラスメントの相談があった場合、法人は以下のステップに沿って誠実かつ迅速に対応を進める必要があります。

【ステップ 1】相談窓口でのヒアリング(プライバシーの保護)
       ▼
【ステップ 2】事実関係の調査(加害者側・第三者への確認)
       ▼
【ステップ 3】ハラスメントの有無の判定(客観的・多角的な判断)
       ▼
【ステップ 4】適切な措置と再発防止(処分、配置転換、環境改善)

ステップ 1:相談者からのヒアリング(傾聴と秘密厳守)

まずは相談者の話を丁寧に聞きます。この際、「プライバシーの厳守」「相談したことによって不利益な扱いを受けないこと」を明確に伝え、安心感を与えます。最初から「それはパワハラじゃないよ」と否定せず、事実関係(いつ、どこで、誰に、何を言われたか)をメモに記録します。

ステップ 2:行為者(加害者とされる側)や第三者への事実調査

相談者の同意を得た上で、相手方(上司や同僚)からも話を聴取します。また、言動の目撃者がいる場合は、周囲の職員からも客観的な状況を確認します。双方の意見が食い違うことが多いため、感情論に流されず事実関係を整理することが重要です。

ステップ 3:ハラスメントの有無の客観的判断

集まった証拠や双方の主張を元に、法人の就業規則や厚労省の指針(前述の3要素)に照らし合わせ、ハラスメントに該当するかを判断します。判断が難しい場合は、顧問弁護士や社会保険労務士などの専門家に意見を求めるのが賢明です。

ステップ 4:事後措置と再発防止策の実施

ハラスメントが認められた場合は、行為者に対して就業規則に基づく処分(譴責、減給、出勤停止など)や配置転換を行います。また、ハラスメントとまでは言えない「適正な指導」であった場合でも、相談者の誤解を解き、今後のコミュニケーションの改善を促すなどのフォローが必要です。


6. まとめ:健全な職場環境と適切な指導を守るために

クリニック、介護施設、保育園を安定して経営していくためには、「問題行為への毅然とした指導」「ハラスメントのない安心安全な職場環境」のどちらも欠かすことはできません

  • 問題社員への一定の強い注意は、業務上必要であればパワハラにはなりません。 ただし、感情的な暴言や人格否定に走らないよう、指導する側のスキルアップ(管理職研修など)が必要です

  • 職員からのハラスメントの訴えは、いかなる場合も放置せず、広く相談に対応する義務があります。

当労務管理事務所では、クリニック・介護・保育園に特化した就業規則の整備や、管理職向けのハラスメント防止研修、ハラスメント外部相談窓口の受託を行っております。「これはパワハラになる?」「問題職員への対応に困っている」という経営者・人事担当者様は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

 

子育て中の母親を支援する「モンテッソーリクッキング®」が幼稚園などで導入

記事の要約


モンテッソーリ教育と食育を掛け合わせた「モンテッソーリクッキング®」が、全国の教育現場で導入を進めています。この取り組みで特筆すべきは、講師として働く母親たちが「自分の子どもを連れて働ける」という新しい雇用モデルを創出している点です。子育て中のため働くことを諦めていた女性たちに、スキルを活かして社会参画できる場を提供しています。

人事担当者にとっての学び


保育業界の人手不足解消において、「潜在保育士(資格はあるが働いていない層)」の掘り起こしは急務です。このニュースは、その層が「なぜ働けないのか(子どもの預け先がない、時間が不規則など)」という課題に対し、「子連れ出勤の許容」という直接的な解決策を提示しています。働き方の柔軟性が、強力な採用の武器になることを実証する好事例です。

自分の事業所で検討できること

「子育て中のスタッフが、自分の子どもを自園に預けながら(または傍らで)働ける制度」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。同時に、ここで重要になるのが「周囲のサポート体制」です。例えば、採用したシニア層の職員に、子連れ出勤している若手・中堅スタッフのサポート役(補助業務や子守り)を任せるという配置が考えられます。これにより、世代間交流が生まれ、シニア層の「誰かの役に立ちたい」という意欲を満たしながら、子育て世代の定着率を劇的に高める組織づくりが可能になります。

 

URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000240.000052391.html

厚労省、保険外サービス活用の手引き公表 情報提供のポイントやケアマネの役割など解説

 

 

介護保険外サービスの情報を利用者や家族らへ提供する際の「手引き・ポイント集(保険外サービスを含む多様な地域資源について利用者や家族等に情報提供する際の手引き・ポイント集)」が新たに公表された。

国の昨年度の調査・研究事業(老健事業)で作成されたもの。厚生労働省は今月11日、介護保険最新情報Vol.1503で現場の関係者へ広く周知した。

手引きでは、ケアマネジャーや地域包括支援センターの専門職らに期待される役割を解説している。利用者や家族らがそのニーズに合ったサービスを適切に選択できるよう、主に以下の3点が大切だと促している。

◯ 情報収集・整理:多様な情報源からサービスの内容や料金を比較しやすい形で管理する。

◯ 情報提供と選択支援:保険内外の違いを分かりやすく説明し、複数の選択肢・解決策を示して主体的な判断を支える。

◯ 利用開始後のフォロー:定期的な聞き取りやモニタリングを通じて利用状況や満足度、生活状況の変化を確認し、継続的にフォローするよう努める。

このほか、本人の自立支援や介護予防の観点からサービスの必要性を判断する後押しも重要だと指摘した。

背景にあるのは1人暮らしの高齢者やビジネスケアラーの増加だ。ホームヘルパーなどの深刻な人材不足もあって、地域では保険外サービスのニーズが高まり続けている。一方で、利用者や家族らは保険適用の有無や事業者の違い、サービスの内容・質を判断することが難しいなど、その有効活用に向けてはまだまだ課題が多い。


厚労省は手引きで、多様なサービスの活用が利用者のQOLの向上につながると説明。ケアマネジャーを追い込む無理なシャドウワークを減らし、専門性の高い本来業務に集中できる環境の整備にも結びつくと意義を解説した。


具体的なコンテンツとしては、情報の収集・整理・提供や選択支援の流れ、留意点などを時系列でまとめた。需要の大きい「生活支援」「配食」「移動支援」「訪問理美容」の4分野については、具体的なユースケースや代表的な事業者例、現場で使えるチェックポイントなどを紹介している。

採用面接で虚偽回答があった場合に合法的に解雇はできますか? 医療・介護・保育現場の信頼を守る「経歴詐称」への法的対応と防衛策

 

1. はじめに:人手不足の裏に潜む「採用リスク」

医療、介護、保育の現場において、人手不足は深刻な経営課題です。「一人でも多くの職員を確保したい」という切実な思いから、採用基準が緩やかになってしまったり、選考時の確認が不十分になったりするケースは少なくありません。

しかし、こうした状況を背景に、近年増えているのが「経歴詐称」を巡るトラブルです。 「以前の職場をトラブルで辞めたことを隠していた」「持っていると言っていた資格が実は嘘だった」……。発覚した時、経営者や事務局長が抱く憤りは計り知れません。

「嘘をついて入職したのだから、即刻解雇だ!」 そう考えるのは自然な反応ですが、労働法という枠組みの中では、たとえ嘘があったとしても「直ちに解雇」が認められるとは限りません。一歩間違えれば、法人側が「不当解雇」として訴えられるリスクすら孕んでいます。

本記事では、医療・介護・保育専門の社労士の視点から、経歴詐称があった場合の解雇の妥当性と、組織を守るための具体的な実務対応について詳しく解説します。


2. 経歴詐称と解雇の法的判断基準

職員の採否を判断する際、応募者の経歴は極めて重要な判断材料です。法人は「誰を雇うか」を決める「採用の自由」を持っており、その判断のために真実を申告させる権利があります。

履歴書の記載や面談での回答に虚偽があり、「もし真実を知っていたら採用しなかった」と言えるほど重大なものであれば、解雇の理由は「客観的に合理的な理由」があるとみなされやすくなります。

しかし、裁判例では「全ての詐称が解雇有効になるわけではない」という厳しい現実があります。解雇が有効になるためには、その詐称が「採用の判断にどれほど決定的な影響を与えたか」という重要性と、それによって「職場秩序がどれほど乱されたか」という程度が厳格に問われます。

主に対象となる4つのパターンから、具体的なリスクを見ていきましょう。


3. 経歴詐称の4つの類型と解雇の有効性

① 資格・免許の詐称(重要度:高)

医療・福祉業界において最も深刻なのがこれです。 医師、看護師、薬剤師、介護福祉士、保育士などの国家資格が必要な職種において、無資格であるにもかかわらず資格を偽った場合、これは単なる「嘘」に留まりません。

  • リスク: 無資格者による業務提供は法律違反であり、診療報酬や介護報酬の不正受請求、さらには行政処分や実地指導での全額返還へと直結します。

  • 判断: この場合の解雇は、有効とされる可能性が極めて高いといえます。業務遂行の前提条件を欠いているため、雇用の継続は不可能と判断されるからです。

② 職歴の詐称(重要度:中〜高)

「転職回数が多いと不利になるから隠す」「前職を能力不足や素行不良(ハラスメント等)で懲戒解雇されたことを隠す」といったケースです。

  • リスク: 医療・介護現場はチームケアが基本です。前職でのトラブル隠しは、現場の人間関係を崩壊させる火種となります。

  • 判断: 単なる数ヶ月の期間のズレなどは「軽微」とみなされがちですが、懲戒解雇歴の隠匿や、重要な役職経験の捏造(例:施設長経験があると偽る)などは、重大な詐称として解雇が認められる可能性があります。

③ 学歴の詐称(重要度:低〜中)

かつては「高卒を大卒と偽る」ことが重い詐称とされましたが、実務能力重視の昨今では、学歴だけで解雇を有効にするのは難しくなっています。

  • リスク: 学歴によって初任給や手当が細かく規定されている法人の場合、不当に高い賃金を支払わされることになります。

  • 判断: 給与計算の根拠が学歴に依存しており、それによって大きな賃金格差が生じていた場合、秩序を乱したとして懲戒対象になる可能性はありますが、解雇まで認められるかは慎重な判断が必要です。

④ 犯罪歴の隠匿(重要度:ケースバイケース)

意外かもしれませんが、犯罪歴があることだけをもって直ちに解雇できるわけではありません。

  • 判断: 裁判例では、刑の執行から10年以上経過している場合や、業務と無関係な軽微な罰金刑などは、告知義務がない、あるいは解雇理由として不十分とされる傾向があります。

  • 特例: ただし、保育現場での児童性犯罪歴や、高齢者施設での虐待・窃盗歴など、「対象となる利用者への安全確保に直結する職歴・犯罪歴」については、より厳しく判断される傾向にあります。


4. 医療・介護・保育現場だからこそ問われる「管理責任」

一般企業と異なり、私たちの業界には「公費」が投入されています。 もし経歴詐称(特に資格や職歴)を見逃したまま雇用を続け、現場で事故が起きた場合、法人が受けるダメージは「解雇の有効性」というレベルでは済みません。

  • 利用者・家族からの訴訟: 「資格のない人間にケアをさせていたのか」という追及。

  • 行政処分: 指定取り消しや加算の返還。

  • 社会的信用の失墜: 地域での評判が悪化し、採用難に拍車がかかる。

だからこそ、経歴詐称への対応は単なる「不誠実な職員の排除」ではなく、「法人のガバナンス(統治)と利用者の安全を守るための必須業務」なのです。


5. トラブルを未然に防ぐ「3つの防衛策」

発覚してから解雇を争うのは、多大な時間と労力、そして弁護士費用を要します。最初から「嘘をつかせない」「嘘を見抜く」体制を作ることが最善の策です。

防衛策1:エビデンス(証拠)確認の徹底

「原本」の確認を徹底してください。

  • 資格証の確認: コピーではなく原本を持参させ、裏書き(更新履歴)まで確認します。必要に応じて、厚労省のデータベース等で登録番号を照合します。

  • 離職票・年金手帳の確認: 入社手続き時に提出される書類の履歴と、履歴書の職歴が合致しているか、事務担当者が必ずクロスチェックを行います。

防衛策2:採用選考の精度向上

面接だけでは嘘を見抜くのは困難です。

  • リファレンスチェックの検討: 本人の同意を得た上で、前職に勤務状況を確認する。

  • 実技試験の導入: 介護現場なら移動介助、保育現場ならピアノや読み聞かせなど、短時間の「実技」を取り入れるだけで、職歴詐称(未経験なのに経験者と偽る等)は一目で見抜けます。

防衛策3:入職時のリーガル・セットアップ

万が一の時に「解雇の正当性」を主張できるよう、仕組みを整えます。

  • 誓約書の提出: 「提出書類の内容に相違ないこと」「虚偽があった場合は解雇を含む懲戒処分に異議を唱えないこと」を明記した誓約書を入職時に取ります。

  • 就業規則の整備: 懲戒規定の中に「重要な経歴を詐称して採用されたとき」を明確に盛り込み、具体的な懲戒の種類を定めておきます。


6. まとめ:専門家の視点をバックオフィスに

経歴詐称が発覚した際、感情的に「明日から来なくていい」と伝えてしまうのが、最も危険な初動です。たとえ相手に非があっても、手続きを誤れば「解雇権の濫用」となり、多額の解決金を支払う羽目になりかねません。

まずは、その詐称が業務にどのような影響を及ぼすのかを冷静に分析し、就業規則に基づいた正しいステップ(事情聴取、弁明の機会の付与など)を踏むことが重要です。

私たち「社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング」は、医療・介護・保育業界に特化した人事労務のプロフェッショナルとして、数多くの現場トラブルを解決してきました。

私たちのBPOサービスでは、給与計算などの事務代行だけでなく、こうした「入職時のリスク管理」や「就業規則の運用サポート」をセットで提供しています。事務局の負担を減らしつつ、法人のガバナンスを強化したい経営者の皆様、ぜひ一度ご相談ください。

「正しい採用」が「質の高いケア」を生み、それが「健全な経営」へと繋がります。あなたの法人のバックオフィスを、リスクに強い、創造的な組織へと変えていきましょう。


執筆者:社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング 代表 林 正人 (医療・介護・保育専門社会保険労務士)

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