コラム
深刻化する「看護師不足」…離職率も高止まりで「定着」が課題に
厚生労働省の将来推計(「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ案」)によると、2025年に必要とされる看護師の数は188万~202万人であるのに対し、供給推計は175万~182万人程度にとどまる見込みです。その結果、最大で約27万人の看護師が不足する恐れがあるとされています。
また、日本看護協会の「2024年病院看護実態調査」によると、看護職員の離職率は11.3%で、離職率は依然として2ケタ台で横ばいを続けています。
高い医療需要の一方、慢性的な看護師不足にある昨今、看護師不足は採用の問題だけでなく、いかに長く働き続けてもらうかが大きな課題となっています。
特に、小規模な体制のクリニックでは、1人ひとりの看護師への業務依存度が高く、欠員が出るとすぐに診療体制に支障をきたす恐れがあります。
離職につながりやすい「人間関係」の悩み
看護師の離職理由はさまざまです。労働環境や待遇面への不満、結婚や妊娠・親の介護といったライフステージの変化、職場の人間関係……。
「私の経験や周りの看護師仲間と話す限り、看護師の離職理由として一番大きいのは、職場の人間関係だと感じます。特に、看護師同士の関係性です」
こう語るのは、キャリア30年以上のベテラン看護師、ケイコさん(仮名・50代)です。看護専門学校を卒業後、西日本の総合病院に約20年勤務。主にオペ室(手術室)や外科病棟でキャリアを積んだ後、「肉親の介護のため」退職を決意。その後、病院併設の介護施設などを経て、7年ほど前から現在のクリニックで看護師として働いています。
「急性期医療の現場でキャリアをスタートしたので、どちらかというと自分には急性期が向いていると思っていましたが、いまでは生活に根ざしながら高齢者をケアする在宅医療も好きになりました。うちのクリニックはホワイトなので非常に働きやすく、長く勤める看護師が多いですね」
こう話すケイコさんですが、入職当初は人間関係に悩まされたといいます。
「いまのクリニックは看護師が十数人いますが、入職当時は規模も小さく、組織体制も少しゴタついていました。私はキャリアこそ長いですが、クリニックによって勝手も違うので、教えてもらわないといけないことがたくさんありました。でも、人間関係がよくなかったのでなかなか上手くいかず、苦労した記憶があります」
具体的にはどんなことに苦労されたのでしょうか。
「たとえば私の場合は、水面下で意地悪をされていたといいますか……プリセプター(先輩看護師)が感じの悪い人で、『この前言いましたよね?』とか“『質問するな』オーラ”のようなものをずっと出していました」
しかし、そこはベテラン看護師のケイコさん。うまく下手に出ながら、できる限り自力で仕事を覚える努力を続け、半年ほどでひとり立ちすることができたそうです。
「特にクリニックの場合、看護師はみな育った環境やキャリアが違いますから、それぞれに看護師としての常識みたいなものがあります。それは仕方のないことだと思いますが、その違いを互いに理解し合ったうえでコミュニケーションを取ることが大切だと思います。そこは私自身、常に気をつけたいと思っているところです」
「良好な人間関係」が「良好な医療」を支える
現場の看護師同士の関係性が悪いと、医療の質の低下を招きかねません。それは、クリニック経営にも大きなダメージを与えます。だからこそ、クリニック経営者にはスタッフの人間関係を円満にし、良好なコミュニケーションが取れる職場環境を整える努力が求められるのです。
では、看護師の視点から考えたとき、どのような取り組みが望ましいのでしょうか。
「看護師同士の人間関係が悪いといっても、表面化していない場合も多いと思います。みな大人ですし、医療職として誇りを持っていますから、そこはぐっと我慢して表面的には取り繕います。だけど、我慢できない人は辞めてしまうかもしれません。
院長にお願いしたいのは、1人の看護師の意見だけを鵜呑みにせず、平等に話を聞いてほしいということです。立ち回りや口がうまい人もいますし、情報操作というか、うまく上にとり入って、気に入らない人を悪者に仕立てるようなケースもみてきました。
また、揉めている当事者もそれぞれが自分の正義を持っています。その言い分を公平に聞いて、客観的に判断していただきたいです。そして『常に全員を見守っている』という姿勢を示してもらえれば、看護師も安心して働けると思います」
クリニック経営を強化するうえで、優秀な看護師の確保は大きな課題です。そのための施策として、給与待遇や福利厚生の充実、ライフステージにあわせた育児休業・介護休業制度、キャリアアップ支援など、さまざまな切り口があります。
しかし、こうしたハード面の整備とともに、あるいはそれ以上に、ケイコさんが指摘する「職場の人間関係をいかに良好なものにしていくか」が、クリニック経営者には求められているのかもしれません。
「医療現場はどこも忙しいですし、大変なことや辛いことも少なくありません。でも、医師や看護師、事務スタッフなど、みんなのチームワークがよければ、お互いに協力し合って、困難なことも乗り越えていけると思います。これは、これまでの経験から実感していることです。
看護師は基本的に医療従事者として、患者さんに質の高い医療・看護を提供したいと思っています。しかし、ギスギスとした職場環境ではそれは難しく、結果的に忙しいばかりでやりがいを失い、精神的にすり減っていき、離職することになりかねません」
良好な人間関係を含めて、スタッフが働きやすい環境をつくることで、医療や看護の質が高まり、患者満足度も向上します。それが患者数の増加につながり、その利益はまた、スタッフの待遇や福利厚生などに還元する……。
このような「好循環」を続けることが、優秀なスタッフを定着させる秘訣なのでしょう。そしてそれが、クリニックの安定経営にもつながっていくのではないでしょうか。
参考© Medical LIVES
愛知県名古屋市に本社を置き、全国60園の保育園を運営・運営委託する株式会社はな保育(代表取締役:加藤義人)は、保育士が安心して長く働ける職場づくりを推進しています。
AMH検査などを行う「にしたんARTクリニック」と業務提携を結び、妊活や不妊治療を支援する体制を強化その結果、産休・育休復帰率は85%を超え、最大で5回の育休実績を持つ保育士も在籍。ライフステージに合わせた柔軟な働き方を実現しています。
【保育士有効求人倍率3.78倍、少子化の一方で保育ニーズは拡大】
厚生労働省の統計によると、多くの地域で保育士の有効求人倍率は依然として高い水準にあり、人材不足が続いています。
出生数は2024年には、70万人を下回り68万人台まで減少しており、少子化が一層進行しています。(内閣府『少子化社会対策白書』等)
一方で、共働き世帯の増加に伴い、『小規模保育』や『延長保育』など、多様な保育サービスへの需要は増加傾向にあります。
こうした社会背景の中、保育士が安心して長期的に働ける環境づくりが業界の大きな課題となっています。
【柔軟な働き方の実現で“辞めない保育士”が増加】
株式会社はな保育では、産休・育休復帰率が5年前に比べて42%増加し、過去10年の平均も85%に到達し、産休取得者数は延べ120人になりました。
実際に、4回の産休・育休を取得しながら現場で活躍する職員もおり、「職場の理解度」と「園間ネットワークの柔軟さ」が評価されています。
園職員の声
- 「急な悪阻でも柔軟にシフトを調整してもらえた」
- 「育休後は時短勤務で復帰でき、子どもとの時間も確保できた」
- 「結婚後に転居しても系列園が多く、退職せずに続けられた」
- 「会社が妊活に前向きだから、不安なく治療と仕事を両立できた」
こうした声があがっています。
【制度の詳細】
株式会社はな保育では、保育士一人ひとりが自身のライフステージに合わせて安心して働けるよう、以下のような制度を導入しています。
●不妊治療支援
「にしたんARTクリニック」と提携し、AMH検査費用や相談窓口を会社負担で提供。
●産前産後・育児休業制度
法定期間を超えて独自の柔軟な取得制度を設計。
●復職サポート
時短勤務・担任補助から段階的に復帰できるスムーズな制度を導入。
●園間異動制度
結婚・転居時も本人希望に応じ系列園へ異動可能。こうした制度を整備することで、同業界で課題とされる「離職の多さ」「キャリア中断」の解決を目指しています。
【今後の展開】
当社では、職員が安心して長く働き続けられる環境づくりを最優先事項として推進しています。2026年1月現在、育児休業取得中の職員は26名、取得予定者は9名となっており、直近では2度目の取得を予定している男性保育士もいます。これは、性別を問わず育児に参画できる組織文化が着実に浸透している結果であると捉えています。
今後は、この流れをさらに加速させるべく、「出産祝い金」の増額と、不妊治療の補助を検討しています。これらの新制度と男性保育士の取得促進を両輪で進め、2026年度中には男女平均の育休復帰率90%以上の達成を目指します。保育士が“仕事も家庭もあきらめない”社会の実現に向け、地域とともに歩む保育経営を継続していきたいと考えています。
本件に関するより詳しい内容をご希望でしたら、当社ではマスコミの方の取材お申し込みを随時受け付けておりますので、是非お問い合わせください。
【会社概要】
株式会社はな保育
所在地 : 名古屋市中区丸の内1-5-28 伊藤忠丸の内ビル8F
スポットワークの仲介を手掛けるタイミーは6日、介護分野の事業の最新動向や今後の展望をメディア向けに開示した。
介護に関する資格を持つ登録ワーカー数は、昨年10月時点で約51.3万人と50万人を超えた。
タイミーに掲載された介護分野のスポットワークの募集人数は、同じく昨年10月時点で前年同月比2.3倍。切実な需要の拡大を背景に、求人側と求職側の双方でユーザーが増えている状況が改めて浮き彫りになった。
タイミー全体の募集人数に占める介護分野の割合はまだ5%。それでも物流、飲食、小売、ホテルに次ぐ5番目で、同社は主力分野の1つに成長したと位置付けた。現状、募集人数の伸び幅は介護分野が最も大きいという。
タイミー執行役員の山岡和人氏は今後について、介護分野での活用は「必ず増えていく」との認識を示した。
そのうえで、「業界の関係者や有識者などの意見を参考にしながら、安心・安全の面でより充実した環境づくりを推進したい」と述べた。
《 タイミーが開催した記者説明会|6日 》
タイミーの調査結果によると、介護に関する資格を持ちながら別の分野で働いている「潜在有資格者」のうち、4割以上がスポットワークを機に「介護分野に就業するハードルが下がった」と答えた。また、6割以上が「よい職場に巡り合ったら長期就業したい」と回答している。この日の記者説明会に登壇した淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授は、
「介護に関心を持ってくれる人を増やしたり、長期採用につなげるきっかけにできたりと、スポットワークは人材確保のチャネルの1つとして期待できる」
と指摘。「同時にサービスの質や安全性の確保が欠かせない。スポットワークを受け入れる事業所・施設の姿勢、体制づくりも問われる」と呼びかけた。
満足度の高いクリニックの「7つ」の共通点
1.「ありがとう」が飛び交っている
「良い組織」を作りあげていくうえで、組織内部の「承認欲求を高めること」が非常に重要です。
お互いに「なにかをしてもらって当たり前」ではありません。「当たり前」の反対は「有難し」です。この、「有難い=滅多にない」というのが「ありがとう」の語源ですから、筆者の所属するクリニックでは仕事が終わったら「お疲れ様でした」ではなく「ありがとうございました」と言うようにしよう、と決めています。
離職の多くは「人間関係」に起因するとよくいわれます。その人間関係の基盤は、コミュニケーションです。
「ありがとう」という言葉は、人に対する感謝とともに、自分にもいい影響を与えます。感謝の気持ちは、人の心の豊かさや心身の安定などにいい影響があると考えます。「ありがとう」をはじめとするポジティブな言葉が飛び交う職場にすることで、スムーズなコミュニケーションが可能になるのです。
2.「5S」が揃っている
5Sとは、「S」の頭文字をもつ「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」という5つのキーワードからとった言葉です。医療機関ですから、清潔にしていることで患者さんも働く医師や職員も気持ちよく過ごせます。
アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリング博士が提唱した「割れ窓理論」をご存知でしょうか。かつて、ニューヨークは「犯罪多発都市」といわれ、列車の窓ガラスが割れていることも日常茶飯事でした。しかし、当時の市長が窓ガラスをはめ直したところ、それとは一見関係のない「街中の落書き」が消えたというのです。
1つの綻びから思わぬところにまで悪い影響はどんどん連鎖しますから、「5S」で職場環境を整えることは非常に重要といえます。
3.仕事を「チーム」として行っている
クリニックでの業務は、診察や受付、会計、検査など、複数の人間が絡みチームで連携して行うものがほとんどです。したがって、もし医師が最高の診察を行ったとしても、最後に会計時の職員の対応がよくなかった場合、患者にとって「あまりよくない病院だった」という印象になりかねません。
ですから、それぞれがそれぞれの役割を尊重しあい、連携して働く意識が重要です。
受付時や会計時の対応について、医師は把握しきることができません。「診察するドクターがこういう人だから」などと諦めるのではなく、それぞれのポジションとしてどんな価値を提供できるかということを考えて行動していく必要があります。
4.「短時間で最大の価値を提供する」工夫
これは3つ目の「連携」がキーワードです。クリニックに訪れたすべての患者さんが最大の満足感と安心感を得て、患者さんに納得して帰ってもらうことが、クリニックで働く医師・スタッフ全員の願いでしょう。
とはいえ、限られた時間のなかで、仮に医師だけに業務が集中してしまうと、そこが「ボトルネック」になってしまいます。看護師やスタッフなど、医師以外のメンバーでも業務を分担できるような仕組みをつくることが大切です。たとえば、「医師ではなくスタッフに問診を書いてもらう」「検査や処置、点滴などはスタッフにお願いする」などです。
こうすることで、短時間でも最大の価値を患者さまに提供できるようになるはずです。
5.業務のアップグレード=「DX化」
クリニック業務のなかで、「自動精算機の導入」「キャッシュレス決済の利用開始」「処方箋の電子認証化」など、最新機器や機能の導入で業務がアップグレードしているクリニックも多いのではないでしょうか。これらは、PDCAサイクル(Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善))を回すうえで非常に重要です。
クリニックにとってメリットのあるシステムは積極的に導入し、また利用するスタッフがそれに適応していくことで、業務の効率を上げ、患者の満足度を上げ、双方にとっていい影響をもたらすはずです。
6.アウトプット
職場環境を整えたり、業務をDX化するなど、上記を参考に行動を変えた結果いい効果を生んだら、最終的にそれらをマニュアルにしたり報告書に書くなどしてアウトプットし、周知しておくといいでしょう。
物事は、実はインプットよりもアウトプットのほうが大事です。なにごとも、学習の際は「インプット2:アウトプット8」の割合がいい結果を生みます。アウトプットを重視する組織にしていきましょう。
職場環境を整えたり、業務をDX化するなど、上記を参考に行動を変えた結果いい効果を生んだら、最終的にそれらをマニュアルにしたり報告書に書くなどしてアウトプットし、周知しておくといいでしょう。
物事は、実はインプットよりもアウトプットのほうが大事です。なにごとも、学習の際は「インプット2:アウトプット8」の割合がいい結果を生みます。アウトプットを重視する組織にしていきましょう。
7.「考えて生み出す」人であれ
「言われたことをそのままやる」、「過去と同じことを繰り返す」などは、いまの時代AIでもできることです。過去にはできなかったことやまったく新しい事象に対して行動する組織こそ、AI時代に生き残る組織といえます。
言われてやるだけの人間の集まりではなく、自分の頭で考え、課題にぶつかったときは「なにが根本的な原因になっているか」を考え、ただ問題を「対処」するのではなく「解決」するような組織にしていきたいものです。
-
梅岡 比俊(うめおか ひとし)
医師
医療法人梅華会 理事長
- 提供:
- © Medical LIVES
このたび、「信頼を育む保育と自分を守る心のスキル」と題したオンライン研修を開催いたします。
本研修では、日々子どもたちと向き合う保育者をはじめ、子育てや対人支援に関わるすべての方を対象に、「自分を大切にする力」を育む時間を提供いたします。
現場では、他者を支える役割を担う中で、自身の心身のケアが後回しになりがちです。本研修では、短時間で実践できるセルフケアの方法と、明日からの保育が少し楽しみになるポジティブな習慣づくりについてお伝えします。
■研修内容
・心と体を整えるセルフケア 〜自分を大切にする時間〜
・明日がちょっと楽しみになる、保育のポジティブ習慣
■開催日時
第1回:2026年3月25日(水)14:00~14:45
第2回:2026年5月26日(火)14:00~14:45
※全2回開催
※1回のみの参加、両日参加いずれも可能
■開催方法
Zoomによるオンライン開催
■参加対象
どなたでも参加可能
■参加費
無料
本研修を通して、保育における「信頼」を支える土台としての自己理解とセルフケアの重要性を広く発信してまいります。
【お申し込みURL】
https://forms.gle/4npdBc9e8dF5aQRv9
研修に関してのご相談
社会福祉法人絆友会・一般社団法人絆友会
メール office@kizuna-info.com
TEL 080-5188-5855
https://www.honbu.hanyuukai.biz/
※営業や勧誘などのお問い合わせはご遠慮ください。
厚生労働省は4日、新年度の介護報酬の臨時改定に向けて「処遇改善加算」の新たな運用ルールを定める通知(案)を発出した。介護保険最新情報のVol.1474で現場の関係者に広く周知している。
厚労省は今回の通知で、事業者の違反に対するペナルティにも改めて言及した。
算定要件を満たしていない場合、虚偽・不正の手段で受給した場合などは、「既に支給された処遇改善加算の一部、または全部を不正受給として返還させることができる」と明記。具体例として、処遇改善加算の取得額に相当する賃上げが実際には行われていないケースなどをあげた。
あわせて、事業者が要件を満たしていることを証明するための実務的な対応も解説した。
計画書の記載内容の根拠となる資料、労働基準法に基づく就業規則などを適切に保管しなければならないと説明。自治体から求めがあった場合には、「速やかに提示しなければならない」と規定した。
厚労省はこのほか、介護現場を支える職員に対して事業者が果たすべき責務にも触れた。
事業所・施設内での賃上げの方法について、計画書などを用いて十分に周知するよう要請。職員から賃上げについて質問があった場合には、書面を用いるなど分かりやすく回答するよう求めた。
「看護師や医療事務が診療開始30分前に来て準備をしています。本人は“自主的にやっています”と言っていますが、その分の時給は支払う必要がありますか?」
クリニックの院長先生から、非常に多いご相談です。
結論から申し上げます。
業務をしている以上、“自主的”であっても原則として賃金支払い義務が発生します。
本コラムでは、クリニック専門社労士の立場から、医療現場特有の実務リスクと具体的対策を解説します。
1.労働時間の基本原則|「自主的」でも支払い義務が生じる理由
労働時間の判断は、労働基準法に基づきます。
ポイントは明確です。
「使用者の指揮命令下にある時間」かどうか
たとえ院長が「早く来なくていい」と言っていても、
-
実際に業務を行っている
-
管理者がそれを把握している
-
暗黙に期待している
この場合、労働時間と認定される可能性が高いのです。
2.クリニックでよくある“自主的早出”の実態
医療機関では、次のような行為が典型例です。
■ 看護師の場合
-
診療器具の準備
-
ワクチン管理
-
点滴準備
-
カルテ確認
■ 医療事務の場合
-
レセコン起動
-
予約確認
-
前日の未収金処理
-
保険証確認準備
■ リハビリスタッフ等
これらはすべて「診療業務に直結する行為」です。
「自主的」「善意」「責任感」では、賃金支払い義務は消えません。
3.なぜクリニックは未払い賃金リスクが高いのか?
① 少人数運営による属人化
クリニックは5〜15名規模が多く、
で運営されがちです。
② 院長の“無意識の期待”
「診療開始時にはすぐ診られる状態にしておいてほしい」
この期待が、早出文化を生みます。
しかし、準備時間が勤務時間外なら、法的には残業になり得ます。
4.支払い義務が生じる判断基準
以下に該当すれば、支払い義務が生じる可能性が高いです。
| 状況 |
支払い義務 |
| 診療準備をしている |
高い |
| 院長が知っている |
高い |
| 他職員も慣例的に早出 |
高い |
| 完全私的行為 |
低い |
重要なのは、
「医院として黙認していなかったか」
という視点です。
5.未払い賃金になった場合の経営インパクト
例えば、
の場合、
月16,500円 × 24か月 = 396,000円
10名いれば約396万円。
さらに、
-
遅延損害金
-
付加金(裁判時最大同額)
-
労基署是正勧告
-
求人応募減少
-
院内の信頼関係悪化
といった影響があります。
特に医療機関は地域密着型のため、評判低下は致命的です。
6.クリニックが取るべき具体的対策
① 始業前業務の明確な禁止
就業規則に
「許可なく始業前に業務を行わないこと」
と明文化します。
② 打刻=業務開始の徹底
-
タイムカード打刻前の業務禁止
-
早すぎる打刻を制限
-
クラウド勤怠導入
③ 診療体制の再設計
もし準備に30分必要なら、
-
始業時刻を前倒し
-
準備時間を正式労働時間に組込み
-
早出手当制度化
といった設計変更が必要です。
7.「支払わない」運用のリスク
支払わない場合には、
✔ 明確な禁止命令
✔ 書面周知
✔ 指導履歴
が不可欠です。
しかし実態として業務が行われていれば、否認は困難です。
8.クリニック専門社労士の実務事例
ある内科クリニックでは、
-
看護師が毎日20分早出
-
医療事務が診療前にレセコン準備
-
院長は把握していたが黙認
という状況でした。
改善策として、
-
始業時刻を20分前倒し
-
診療時間を微調整
-
勤怠ルール再設計
-
管理職ミーティングで周知
を実施。
結果として、
につながりました。
9.本質は“文化”と“構造”の問題
自主的早出の背景には、
があります。
問題は「支払うか」ではなく「発生させない設計」です。
まとめ|院長が守るべきは医院の未来
「自主的だから問題ない」
この認識は、将来の労務トラブルの種になります。
クリニック経営において重要なのは、
✔ 勤怠の可視化
✔ 明確なルール
✔ 診療体制設計
✔ 就業規則整備
です。
クリニックの未払い残業対策は専門家へ
医療機関には、
といった特殊性があります。
クリニック専門社労士として、
-
未払い残業診断
-
勤怠制度再設計
-
就業規則整備
-
院長向けマネジメント研修
を通じ、医院経営の安定化を支援しています。
善意に頼る経営から、仕組みで守る経営へ。
今一度、貴院の「始業前の実態」を確認してみてはいかがでしょうか。
1.労働時間の基本ルール|「自主的」でも労働時間になる理由
労働時間の判断基準は、労働基準法に基づきます。
ポイントは次の一点です。
「使用者の指揮命令下に置かれている時間」かどうか
たとえ園長が「早く来なくていいよ」と言っていても、
実際に業務を行い、園としてそれを黙認していれば、
👉 実質的な労働時間と判断される可能性が高い
のです。
2.保育園でよくある“自主的早出”の具体例
保育現場では、次のような行為がよく見られます。
-
保育室の環境整備・清掃
-
連絡帳や登園確認の準備
-
行事準備(壁面制作など)
-
朝のミーティング準備
-
保護者対応の事前確認
-
書類整理や指導計画の作成
これらは明確に「業務」です。
「子どもたちのために」
「クラス運営を円滑にするために」
という善意からの行動であっても、業務であれば賃金は発生します。
3.なぜ保育園は未払い賃金リスクが高いのか?
保育園経営には特有の事情があります。
① 行事文化と制作物の多さ
準備が勤務時間内に収まらず、早出や持ち帰り仕事が発生しやすい構造があります。
② 「チーム保育」の責任感
保育士は責任感が強く、
クラス運営を乱さないために自主的に早く来る傾向があります。
しかし、善意の積み重ねが労務トラブルの火種になることもあります。
4.支払い義務の判断ポイント
次のような場合、賃金支払い義務が生じる可能性が高いです。
| 状況 |
支払い義務の可能性 |
| 保育準備をしている |
高い |
| 園長が把握している |
高い |
| 暗黙に期待されている |
高い |
| 完全な私的行為 |
低い |
重要なのは、
「園としてコントロール可能だったか」
という視点です。
5.未払い賃金になった場合の経営リスク
例えば、
の場合、
月13,000円 × 24か月 = 312,000円
これが保育士15名なら約468万円。
さらに、
-
遅延損害金
-
付加金(裁判時)
-
労基署是正勧告
-
自治体監査時の印象悪化
-
採用への悪影響
という深刻な経営リスクに発展します。
6.保育園が取るべき具体的対策
① 始業前業務の禁止を明文化
就業規則や服務規律に、
「園の許可なく始業前に業務を行ってはならない」
と明確に規定します。
② 打刻=労働開始の原則徹底
-
打刻前の業務禁止
-
始業時刻より大幅に早い打刻を制限
-
勤怠システムの導入
③ 業務量の再設計
根本的には、
-
書類の簡素化
-
行事の見直し
-
制作物の削減
-
保育補助者の活用
など、業務構造を見直すことが不可欠です。
7.「支払わない」場合の注意点
もし支払わない運用をする場合は、
✔ 明確な禁止命令
✔ 書面での周知
✔ 違反時の指導記録
が必要です。
それでも実態として業務が行われていれば、法的には不利になります。
8.保育専門社労士の実務事例
私が支援した認可保育園では、
-
朝30分の制作準備
-
行事前の1時間早出
-
暗黙の「新人は早く来るべき」文化
が常態化していました。
そこで、
-
申し送りを勤務時間内に組込み
-
行事準備日を正式労働時間として設定
-
勤怠ルールを再設計
-
管理職研修を実施
した結果、未払いリスクを解消し、離職率も改善しました。
9.本質は「払うかどうか」ではない
自主的早出問題の本質は、
-
業務過多
-
シフト設計不備
-
曖昧なマネジメント
-
暗黙の期待文化
という組織構造にあります。
問題は“善意”ではなく“仕組み”です。
まとめ|園を守るのは明確なルールと設計
保育園経営において、
「自主的だから払わなくていい」
という判断は極めて危険です。
重要なのは、
✔ 発生させない仕組みづくり
✔ 勤怠の可視化
✔ 管理職教育
✔ 就業規則の整備
です。
保育園の未払い残業対策は専門家へ
保育園には、
-
自治体監査
-
処遇改善等加算
-
人員配置基準
-
キャリアパス制度
など特有の制度背景があります。
保育専門社労士として、
-
未払い残業リスク診断
-
勤怠制度再設計
-
就業規則整備
-
園長・主任研修
を通じ、園の持続可能な経営を支援しています。
善意に依存した運営から、仕組みによる運営へ。
それが、保育士の定着と園の安定経営につながります。
一度、自園の「始業前の実態」を点検してみてはいかがでしょうか。
介護事業所の経営者・管理者の方から、次のようなご相談をよくいただきます。
「職員が自主的に始業時間より30分早く出勤しています。本人は“自主的です”と言っていますが、その時間分の時給は支払う必要がありますか?」
結論から申し上げます。
事業所がその勤務を黙認・容認している場合は、原則として賃金支払い義務が生じます。
本コラムでは、介護専門社労士の立場から、介護現場に特有の実務リスクと具体的な対応策を解説します。
1.「自主的出勤」でも労働時間になるケースとは?
労働時間の考え方は、労働基準法に基づき判断されます。
ポイントは、
「使用者の指揮命令下にある時間」かどうか
です。
■ よくある介護現場のケース
例えば次のような行為は要注意です。
-
申し送りノートの確認
-
利用者情報のチェック
-
夜勤者からの引継ぎ対応
-
早朝の排泄・離床介助
-
ナースコール対応
これらは「業務そのもの」です。
たとえ本人が「自主的」と言っていても、
事業所がそれを知っていて止めていない場合、
👉 実質的に労働時間と判断される可能性が高い
のです。
2.介護事業所で未払い賃金が発生しやすい理由
介護業界は特に未払い残業リスクが高い業界です。
理由は以下の通りです。
① シフト制の曖昧運用
-
早番が実質「7:30開始」になっている
-
夜勤明けの申し送りが長引く
-
管理者が暗黙に早出を期待している
② 「善意文化」の存在
介護職員は責任感が強く、
「利用者様のために」
「申し送りをしっかりしたい」
という気持ちで早く来るケースが多いです。
しかし、善意は法的リスクを消してくれません。
3.支払い義務が発生する具体的な判断基準
以下に該当すると、賃金支払い義務が発生する可能性が高いです。
| 状況 |
支払い義務 |
| 業務をしている |
ほぼ必要 |
| 管理者が知っている |
必要になる可能性高い |
| 業務指示が暗黙にある |
必要 |
| 完全に私的行為(休憩室で読書) |
不要 |
重要なのは、
「事業所としてコントロールできる状態にあったか」
です。
4.未払い賃金になった場合のリスク
未払い賃金は2年(※将来的には3年)遡って請求される可能性があります。
例えば、
の場合、
月12,000円 × 24か月 = 288,000円
これが職員10名なら約288万円。
さらに、
-
遅延損害金
-
付加金(裁判の場合)
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労基署是正勧告
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介護事業所の評判低下
という経営リスクも生じます。
5.介護事業所が取るべき実務対応策
① 始業前業務を明確に禁止する
就業規則に
「会社の許可なく始業前に業務を行ってはならない」
と明文化することが重要です。
② タイムカード打刻ルールの徹底
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打刻=労働開始とする
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始業5分前まで打刻不可設定
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ICカード・勤怠システムの活用
③ 業務設計の見直し
そもそも早く来なければ回らない体制なら、
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早番時間を前倒し
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申し送り時間を正式労働時間に組み込む
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人員配置を再設計
といった対応が必要です。
6.「支払わない」選択をする場合の条件
どうしても支払わない運用をしたい場合は、
✔ 明確な業務禁止命令
✔ 周知徹底(書面通知)
✔ 違反時の指導記録
が必要です。
それでも、実態として業務が行われていれば否認は難しいのが実務です。
7.介護専門社労士からの実務アドバイス
私が関与した特別養護老人ホームでは、
「自主的早出」が常態化していました。
調査すると、
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申し送りが勤務時間内に終わらない
-
日勤者が早く来ないと不安
-
管理者が暗黙に期待
という構造問題がありました。
そこで、
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申し送り時間をシフト内に組み込み
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早出手当を制度化
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勤怠ルールを再設計
した結果、未払いリスクを解消し、職員満足度も向上しました。
8.まとめ|自主的出勤=無料ではない
結論
業務をしている限り、原則として賃金は発生します。
介護事業所経営において重要なのは、
「払う・払わない」の議論ではなく、
👉 そもそも発生させない仕組みづくり
です。
介護事業所の労務リスクは“構造問題”
自主的早出問題は、
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人員不足
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シフト設計不備
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申し送り文化
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管理職の曖昧指示
という構造課題の表れです。
もし、
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早出が常態化している
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勤怠が形骸化している
-
残業申請が機能していない
という場合は、放置しないことを強くお勧めします。
介護事業所の未払い残業対策は専門家へ
介護業界特有の
まで踏まえた労務設計が必要です。
介護専門社労士として、
✔ 未払い残業診断
✔ 勤怠制度再設計
✔ 就業規則整備
✔ 管理者研修
を通じ、経営リスクの見える化を支援しています。
「自主的だから大丈夫」
この思い込みが、数百万円のリスクになる前に。
早めの見直しが、事業所と職員双方を守ります。
ぜひ一度、自事業所の勤怠実態を点検してみてください。
昨年末に成立した令和7年度補正予算は、「医療・介護等支援パッケージ」として1兆3,649億円、うち医療分野には1兆円超が組まれる大型予算となりました。今回は、どのような支援策が実施されるのか、その内容を確認します。
①賃上げ・物価上昇に対する支援 5,341億円
病院・有床診療所は1床あたり、医科無床診療所・歯科診療所・保険薬局・訪問看護ステーションは1施設あたりで支援が行われます。
②施設整備の促進に対する支援 462億円
医療提供体制施設整備交付金等の交付対象となる新築、増改築等を行う医療機関に対し、㎡数に応じた建築資材高騰分等の補助です。
③(独)福祉医療機構による優遇融資等の実施 804億円
医療機関等の資金繰り支援のための無利子・無担保等の優遇融資や、民間病院に対する資本性劣後ローンを行うための財源です。
④医療分野における生産性向上に対する支援 200億円
一定の要件のもと、業務効率化・職場環境改善のためにICT機器等の導入等の取組を行う病院に対し、必要経費が支援されます。
⑤病床数の適正化に対する支援 3,490億円
「病床数適正化緊急支援基金」を創設し、病床数の適正化を進める医療機関に対し、一床あたりの一定交付額の財政支援が行われます。
⑥出生数・患者数の減少等を踏まえた産科・小児科への支援 72億円
分娩数が減少している分娩取扱施設、分娩取扱施設の少ない地域に所在する施設、近隣施設と連携し産前・産後診療を行う施設、小児医療の拠点となる病院に対する補助事業です。
③を除き、窓口は都道府県となります。
また、同補正予算では「重点支援地方交付金」でも、医療等に対するエネルギー・食料品価格の高騰分への対応が盛り込まれました。窓口は、都道府県、市町村です。
詳細は、各自治体の発信情報でご確認ください。