介護
介護事業所、保育園、クリニックの経営者から、近年特に増えている労務相談があります。それが「問題社員への対応」です。
例えば次のようなケースです。
-
何度注意しても遅刻や欠勤を繰り返す
-
職場の人間関係を悪化させる
-
利用者や患者への対応が不適切
-
指導しても態度が改善しない
人手不足の業界では「辞められると困る」という理由で、問題社員を放置してしまうケースも少なくありません。しかし実務経験上、問題社員を放置すると職場環境が悪化し、優秀な職員から先に辞めていくという現象が起こります。
労働政策を所管する厚生労働省も、職場環境改善やハラスメント対策を重要な政策課題として掲げています。つまり、問題社員への適切な対応は、これからの組織運営において避けて通れないテーマなのです。
本稿では、介護・保育・クリニックなど医療福祉分野の現場を支援してきた社労士の視点から、問題社員への適切な対応方法を解説します。
問題社員とはどのような職員か
まず整理しておきたいのは、「問題社員」とは必ずしも能力が低い職員だけではないということです。実務上、問題社員と呼ばれるケースにはいくつかのタイプがあります。
第一に、勤務態度に問題があるケースです。遅刻や欠勤を繰り返す、指示に従わないなど、基本的な勤務姿勢に問題がある職員です。
第二に、職場の人間関係を悪化させるケースです。陰口や対立を生み、チームワークを乱すタイプです。介護・保育・医療の現場はチームワークが重要なため、この問題は非常に深刻です。
第三に、業務遂行能力に課題があるケースです。ミスが多い、指導しても改善しないなどのケースです。
このような職員がいる場合、経営者や管理職は早期に対応を検討する必要があります。
問題社員を放置するリスク
問題社員を放置すると、次のようなリスクが発生します。
まず職場のモラルが低下します。「あの人は注意されないのに、なぜ自分だけ」という不公平感が生まれるためです。
次に、優秀な職員の離職につながります。真面目に働いている職員ほど、職場環境の悪化に敏感です。
さらに、利用者・患者・保護者へのサービス品質が低下する可能性があります。介護・保育・医療の分野では、サービス品質の低下はそのまま経営リスクにつながります。
つまり、問題社員への対応は単なる人事問題ではなく、経営問題なのです。
問題社員への対応で重要な3つの原則
問題社員への対応には、感情的な判断ではなく、法的リスクを踏まえた手順が必要です。
① 事実を記録する
最も重要なのは、問題行動を客観的に記録することです。
例えば
-
遅刻の回数
-
業務ミスの内容
-
指導内容
-
面談の記録
などを文書として残しておく必要があります。
記録がない場合、後にトラブルになった際に会社側が不利になる可能性があります。
② 指導と改善機会を与える
いきなり解雇などの厳しい処分を行うことは、労務リスクが高くなります。
まずは
-
口頭指導
-
文書指導
-
改善計画
という段階的対応が重要です。
このプロセスを踏むことで、職員本人にも改善の機会を与えることができます。
③ 就業規則に基づく対応
懲戒処分や退職勧奨などを行う場合は、就業規則の規定に基づく必要があります。
例えば
-
懲戒規定
-
指導規定
-
ハラスメント規定
などです。
就業規則が整備されていない場合、適切な対応が難しくなるため注意が必要です。
【事例】問題社員対応で職場環境が改善したケース
ある介護事業所では、遅刻や勤務態度に問題がある職員がいました。
当初は人手不足のため、注意のみで対応していました。しかし、次第に職場の雰囲気が悪化し、複数の職員が退職を検討する状況になりました。
そこで管理者と社労士が連携し、
-
指導記録の作成
-
改善面談
-
文書による指導
を行いました。
結果として、その職員は改善が見られなかったため退職となりましたが、その後職場環境は大きく改善しました。
小規模事業所ほどルールが重要
介護事業所やクリニック、保育園は比較的小規模な組織であることが多く、経営者と職員の距離が近いという特徴があります。
そのため、感情的な判断や個別対応が増えやすい傾向があります。
しかし、小規模組織ほど
-
ルール
-
記録
-
手続き
が重要になります。
これらが整備されていれば、トラブルを未然に防ぐことができます。
社労士としての実務的アドバイス
問題社員への対応で最も多い失敗は、次の2つです。
一つは「我慢しすぎる」ことです。問題を先送りすると、状況は悪化します。
もう一つは「感情的に対応する」ことです。怒りに任せて発言してしまうと、後で労務トラブルになる可能性があります。
重要なのは、
冷静に、段階的に、記録を残しながら対応すること
です。
まとめ
介護、保育、クリニックなどの医療福祉分野では、人材不足の影響もあり、問題社員への対応に悩む経営者が増えています。
しかし、問題社員を放置すると
-
職場環境の悪化
-
優秀な職員の離職
-
サービス品質の低下
につながる可能性があります。
そのため、
-
問題行動の記録
-
段階的指導
-
就業規則に基づく対応
という基本的な対応を行うことが重要です。
もし問題社員への対応で悩んでいる場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。適切な対応を行うことで、職場環境を守り、組織の安定につなげることができます。
介護事業所の経営者・管理者の方から、次のようなご相談をよくいただきます。
「職員が自主的に始業時間より30分早く出勤しています。本人は“自主的です”と言っていますが、その時間分の時給は支払う必要がありますか?」
結論から申し上げます。
事業所がその勤務を黙認・容認している場合は、原則として賃金支払い義務が生じます。
本コラムでは、介護専門社労士の立場から、介護現場に特有の実務リスクと具体的な対応策を解説します。
1.「自主的出勤」でも労働時間になるケースとは?
労働時間の考え方は、労働基準法に基づき判断されます。
ポイントは、
「使用者の指揮命令下にある時間」かどうか
です。
■ よくある介護現場のケース
例えば次のような行為は要注意です。
-
申し送りノートの確認
-
利用者情報のチェック
-
夜勤者からの引継ぎ対応
-
早朝の排泄・離床介助
-
ナースコール対応
これらは「業務そのもの」です。
たとえ本人が「自主的」と言っていても、
事業所がそれを知っていて止めていない場合、
👉 実質的に労働時間と判断される可能性が高い
のです。
2.介護事業所で未払い賃金が発生しやすい理由
介護業界は特に未払い残業リスクが高い業界です。
理由は以下の通りです。
① シフト制の曖昧運用
-
早番が実質「7:30開始」になっている
-
夜勤明けの申し送りが長引く
-
管理者が暗黙に早出を期待している
② 「善意文化」の存在
介護職員は責任感が強く、
「利用者様のために」
「申し送りをしっかりしたい」
という気持ちで早く来るケースが多いです。
しかし、善意は法的リスクを消してくれません。
3.支払い義務が発生する具体的な判断基準
以下に該当すると、賃金支払い義務が発生する可能性が高いです。
| 状況 | 支払い義務 |
|---|---|
| 業務をしている | ほぼ必要 |
| 管理者が知っている | 必要になる可能性高い |
| 業務指示が暗黙にある | 必要 |
| 完全に私的行為(休憩室で読書) | 不要 |
重要なのは、
「事業所としてコントロールできる状態にあったか」
です。
4.未払い賃金になった場合のリスク
未払い賃金は2年(※将来的には3年)遡って請求される可能性があります。
例えば、
-
毎日30分
-
月20日勤務
-
時給1,200円
の場合、
月12,000円 × 24か月 = 288,000円
これが職員10名なら約288万円。
さらに、
-
遅延損害金
-
付加金(裁判の場合)
-
労基署是正勧告
-
介護事業所の評判低下
という経営リスクも生じます。
5.介護事業所が取るべき実務対応策
① 始業前業務を明確に禁止する
就業規則に
「会社の許可なく始業前に業務を行ってはならない」
と明文化することが重要です。
② タイムカード打刻ルールの徹底
-
打刻=労働開始とする
-
始業5分前まで打刻不可設定
-
ICカード・勤怠システムの活用
③ 業務設計の見直し
そもそも早く来なければ回らない体制なら、
-
早番時間を前倒し
-
申し送り時間を正式労働時間に組み込む
-
人員配置を再設計
といった対応が必要です。
6.「支払わない」選択をする場合の条件
どうしても支払わない運用をしたい場合は、
✔ 明確な業務禁止命令
✔ 周知徹底(書面通知)
✔ 違反時の指導記録
が必要です。
それでも、実態として業務が行われていれば否認は難しいのが実務です。
7.介護専門社労士からの実務アドバイス
私が関与した特別養護老人ホームでは、
「自主的早出」が常態化していました。
調査すると、
-
申し送りが勤務時間内に終わらない
-
日勤者が早く来ないと不安
-
管理者が暗黙に期待
という構造問題がありました。
そこで、
-
申し送り時間をシフト内に組み込み
-
早出手当を制度化
-
勤怠ルールを再設計
した結果、未払いリスクを解消し、職員満足度も向上しました。
8.まとめ|自主的出勤=無料ではない
結論
業務をしている限り、原則として賃金は発生します。
介護事業所経営において重要なのは、
「払う・払わない」の議論ではなく、
👉 そもそも発生させない仕組みづくり
です。
介護事業所の労務リスクは“構造問題”
自主的早出問題は、
-
人員不足
-
シフト設計不備
-
申し送り文化
-
管理職の曖昧指示
という構造課題の表れです。
もし、
-
早出が常態化している
-
勤怠が形骸化している
-
残業申請が機能していない
という場合は、放置しないことを強くお勧めします。
介護事業所の未払い残業対策は専門家へ
介護業界特有の
-
処遇改善加算
-
人員配置基準
-
シフト設計
-
夜勤体制
まで踏まえた労務設計が必要です。
介護専門社労士として、
✔ 未払い残業診断
✔ 勤怠制度再設計
✔ 就業規則整備
✔ 管理者研修
を通じ、経営リスクの見える化を支援しています。
「自主的だから大丈夫」
この思い込みが、数百万円のリスクになる前に。
早めの見直しが、事業所と職員双方を守ります。
ぜひ一度、自事業所の勤怠実態を点検してみてください。
― 介護専門社労士が語る「辞めない組織」の設計図 ―
介護事業所の経営者から、最も多くいただく相談の一つがこれです。
「処遇改善もしている。研修もやっている。それでも人が辞めるのはなぜか?」
この問いに対する私の答えは明確です。
人が辞める本当の理由は、“給与の額”ではなく“将来の不透明さ”にある。
その鍵を握るのが、**人事制度(キャリアパス制度)**です。
介護業界における人材定着の現実
制度設計を行う厚生労働省は、処遇改善加算の要件としてキャリアパスの整備を求めています。
しかし、多くの事業所では「加算取得のために作った制度」がそのまま眠っています。
形式上はある。
しかし、機能していない。
この状態では、人材定着にはつながりません。
なぜキャリアパス制度が人材定着に直結するのか?
人が辞める理由の上位は常に次の3つです。
-
将来が見えない
-
評価が不透明
-
成長実感がない
キャリアパス制度は、この3つを同時に解決できる仕組みです。
① 将来が見える
「3年後にどんな役割になり、どれだけ給与が上がるか」が明示されている。
② 評価が透明
感覚評価ではなく、役割基準で判断される。
③ 成長が実感できる
昇格=責任と報酬の増加が明確。
【具体例】制度が機能していなかった特養のケース
ある特別養護老人ホームでは、離職率が18%。
処遇改善加算は取得済みでしたが、問題はここにありました。
-
主任と一般職の役割が曖昧
-
給与差が月1万円程度
-
昇格基準が不透明
結果、若手はこう感じていました。
「頑張っても変わらない」
そこで実施したのが、
-
役割等級の再設計
-
昇格要件の数値化
-
面談制度の導入
1年後、離職率は11%まで改善。
特に入社3年未満の離職が減少しました。
キャリアパス制度がない組織で起きること
① ベテラン依存が進む
② 中堅が育たない
③ 管理職が疲弊する
これは“人材不足”ではなく、制度不足です。
「賃上げ=定着」ではない理由
厚生労働省の政策により、処遇改善は今後も続きます。
しかし、単純な賃上げは一時的効果しかありません。
なぜなら、
給与は「不満の解消」にはなるが、「動機づけ」にはならない
からです。
動機づけを生むのは、
-
承認
-
成長
-
役割の拡大
つまりキャリア設計です。
定着する事業所のキャリアパス設計3原則
1. 役割基準で等級を作る
年功ではなく「何を担うか」で区分する。
2. 昇格基準を数値化する
例:
-
事故報告書の質
-
後輩指導実績
-
加算取得への貢献度
3. 面談を制度化する
年2回の評価面談を必須化。
制度は“紙”ではなく“運用”で価値が決まります。
離職率1%改善の経営効果
職員80名の法人で、平均採用コスト40万円と仮定。
離職率15% → 14%
削減効果:40万円
さらに教育コスト・残業代を含めると、実質100万円以上の改善になることも。
キャリアパス制度は、コストではなく投資です。
2026年以降の介護経営で求められる視点
制度改正の流れは明確です。
-
加算要件の高度化
-
生産性向上の義務化
-
組織マネジメント重視
つまり、
「制度を整備している事業所だけが評価される時代」
に入っています。
よくある誤解
□ 制度を作ると硬直化する
□ 小規模事業所には不要
□ 管理が大変になる
実際は逆です。
制度がない方が、
属人化し、トラブルが増え、離職が進みます。
介護専門社労士としての本音
人が辞める理由を「本人の問題」にしている限り、改善はしません。
辞めるのは、
未来が描けないからです。
キャリアパス制度は、
-
人材定着
-
生産性向上
-
人件費率適正化
を同時に実現できる経営ツールです。
もし、こんな不安があれば
-
キャリアパスはあるが機能していない
-
若手が3年以内に辞める
-
管理職候補が育たない
一度、制度の設計を見直す時期かもしれません。
介護専門社労士として、
人事制度診断・キャリアパス再設計支援を行っています。
制度は作ることが目的ではありません。
“辞めない組織”を作ることが目的です。
2026年以降も選ばれる介護事業所になるために。
いまこそ、人事制度を経営戦略として見直してみてはいかがでしょうか。
Q 当院は始業8時30分・終業18時30分(休憩2時間)で、1日の所定労働時間が8時間です。先月、私用で1時間遅刻した職員がいます。その日に1時間30分の残業がありましたが、残業代はどのように計算すればよいでしょうか?
A、労働基準法では、法定労働時間を超えて実際に労働した時間(以下、実働時間)に対して、割増賃金の支払いを義務づけています。よって、実働時間が法定労働時間である8時間を超えた30分のみ、25%以上の率で計算した割増賃金の支払いが必要となります。ただし、就業規則等で終業時刻以降の労働に対し割増賃金を支払うと規定している場合には、その規定に従うこととなります。
解説
1.割増賃金の支払い義務労働基準法では、使用者は、原則、1日8時間(以下、法定労働時間)を超えて労働させてはならないと定めています。そして、法定労働時間を超えて労働させた場
合、医院は、法定労働時間を超えた労働に対し割増賃金を支払わなければなりません。この割増賃金の支払い義務は、実働時間で判断します。
今回のケースで考えると、下図のように1時間遅刻した場合、終業時刻である18時30分までの実働時間は7時間となり、19時30分までは実働時間が 8 時間を超えないので、割増賃金は発生しません(法定内残業)。8時間を超える19 時 30 分から 20 時までの労働に対し、割増賃金が発生します(法定外残業)。
2.法令を上回る場合の支払い義務
1.にかかわらず、就業規則等で「終業時刻を超えて労働した場合に割増賃金を支給する」といった労働基準法を上回る定めをしていることがあります。この場合には、実働時間が8時間を超えていなかったとしても、終業時刻以降の労働に対して割増賃金の支払いが必要です。今回のケースでは18時30分が終業時刻であるため、18時30分以降の労働に対し割増賃金を支払うことになります。労働基準法の考え方をおさえた上で、就業規則等の定めを確認し、適切な割増賃金の支払いが必要です。
はじめに|「ハローワークでは人が採れない」は本当か?
介護事業所の採用相談で、私が必ず耳にする言葉があります。
それが
「ハローワークに出しても、どうせ人は来ませんよね?」
というものです。
確かに、民間求人サイトや紹介会社と比べると、
「応募が少ない」「条件が合わない人が来る」といった声が多いのも事実です。
しかし、それはハローワークの問題ではなく、“使い方”の問題であるケースがほとんどです。
実際、私が支援している介護事業所の中には、
・年間採用の半数以上をハローワーク経由で確保
・採用コストを大幅に削減
・定着率の高い職員を採用
といった成果を出している事例も少なくありません。
本コラムでは、介護専門社労士の視点から
**「ハローワークを採用チャネルとして最大限に活かす具体策」**を、事例とともにわかりやすく解説します。
なぜ介護事業所はハローワーク採用で失敗しやすいのか
① 求人票を「事務的に」作っている
ハローワーク求人は、
「最低限の項目を埋めればよい」
という意識で作成されがちです。
その結果、
・仕事内容が抽象的
・職場の雰囲気が伝わらない
・他施設との差別化がない
という**“選ばれない求人票”**になってしまいます。
② 採用ターゲットが曖昧
「介護職員募集(正社員)」
この一文だけで、誰に来てほしいのかが見えない求人は非常に多いです。
・未経験者を育てたいのか
・経験者即戦力がほしいのか
・子育て世代なのか
ターゲットを定めないと、ミスマッチが起こりやすくなります。
③ ハローワーク職員との連携不足
意外と知られていませんが、
ハローワーク職員は“求人の営業担当”でもあるという点です。
相談せずに放置している事業所ほど、成果が出にくい傾向があります。
【ノウハウ①】介護職採用で成果が出る求人票の作り方
ポイントは「仕事内容」を具体的に書くこと
NG例
利用者様の介護業務全般
OK例
食事介助(刻み食・とろみ対応あり)、入浴介助(機械浴あり)、
排泄介助、レクリエーション補助、介護記録の入力(タブレット使用)
**「1日の仕事がイメージできるか」**が応募率を大きく左右します。
「大変なこと」もあえて書く
介護職は決して楽な仕事ではありません。
あえて
・夜勤がある
・身体介助がある
と正直に書くことで、覚悟のある応募者が集まり、定着率が上がります。
【ノウハウ②】ハローワーク求人で差がつく「プラスα情報」
福利厚生・職場環境は“生活目線”で書く
単に
「社会保険完備」
と書くよりも、
・子どもの急な発熱でのシフト調整実績
・夜勤明けは必ず休み
・介護記録は手書きなし
など、現場のリアルを書く方が反応は明らかに良くなります。
処遇改善加算の使い道を明示する
介護業界では
「処遇改善加算=よく分からない」
という不信感を持つ求職者も多いです。
そこで、
・毎月手当として支給
・賞与に反映
など、どう還元されるかを明記することが有効です。
【ノウハウ③】ハローワーク職員を“味方”につける
定期的な求人相談が成果を分ける
成果を出している事業所は、
・求人票提出後も定期的に相談
・応募状況を共有
・条件変更の相談
をこまめに行っています。
ハローワーク職員に
「この事業所は本気だ」
と認識してもらえると、
求職者紹介の質が明らかに変わります。
【ノウハウ④】ハローワーク×他チャネルの併用戦略
ハローワークは
「万能な採用ツール」
ではありません。
おすすめは、
・ハローワーク:安定志向・地元人材
・求人サイト:即戦力
・紹介会社:緊急対応
という役割分担です。
特に、ハローワークは
「時間はかかるが、定着しやすい人材」
を採るのに向いています。
介護専門社労士として伝えたいこと
採用がうまくいかない原因を
「人がいない」「業界が厳しい」
で片付けてしまうのは簡単です。
しかし、
採用は“設計”と“運用”で結果が変わる分野です。
ハローワークは、
・無料
・公的
・地域密着
という、介護事業所にとって非常に相性の良い採用チャネルです。
使い方を変えるだけで、
「採れない媒体」から
「安定採用の柱」
へと変わります。
まとめ|ハローワーク採用成功の5つのポイント
-
求人票は「具体性」と「正直さ」
-
採用ターゲットを明確にする
-
福利厚生・働き方を生活目線で書く
-
ハローワーク職員と連携する
-
他の採用手法と併用する
もし
「求人票をどう直せばいいかわからない」
「ハローワークを活かしきれていない」
と感じているなら、一度プロの視点で見直すだけでも結果は変わります。
介護専門社労士として、
現場実態を踏まえた“採れる採用設計”の重要性を、これからもお伝えしていきます。
はじめに
介護事業所、保育園、クリニックにおいて、「有給休暇の管理が煩雑で困っている」「職員ごとに付与日がバラバラで把握できない」といった相談は非常に多く寄せられます。
その解決策としてよく検討されるのが、有給休暇の付与日を全職員で統一する運用です。
確かに、付与日を統一すれば管理は楽になります。しかし、制度設計を誤ると労働基準法違反になるリスクもあるため注意が必要です。
本コラムでは、介護・保育・クリニックに特化した社労士の視点から、有給休暇の付与日統一のメリットと注意点を、できるだけわかりやすく解説します。
有給休暇の基本ルール(おさらい)
まず前提として、年次有給休暇は労働基準法第39条により、以下の要件を満たす労働者に付与する義務があります。
-
雇入れ日から 6か月継続勤務
-
その期間の 出勤率が8割以上
この要件を満たした時点で、最低10日の年次有給休暇を付与しなければなりません。
重要なのは、「この付与日は原則として個々の職員ごとに発生する」という点です。
有給休暇の付与日を統一するとは?
「付与日を統一する」とは、本来は入社日ごとに異なる有給休暇の付与日を、
例えば以下のように 特定の日にまとめて付与する運用を指します。
-
毎年4月1日に全職員へ一斉付与
-
毎年10月1日に統一付与
-
半期ごとに区切って付与 など
介護・保育・クリニックでは、人員入替が多いため、管理負担軽減を目的に導入されるケースが増えています。
付与日統一のメリット
① 有給管理が圧倒的に楽になる
シフト制が多い介護・保育、非常勤職員が多いクリニックでは、有給付与日がバラバラだと管理が煩雑です。
付与日を統一することで、残日数管理・5日取得義務の管理が一気に楽になります。
② 職員への説明がシンプル
「あなたの有給は〇年〇月〇日からです」という個別説明が不要になり、
職員側も制度を理解しやすいというメリットがあります。
ここが重要!付与日統一の5つの注意点
注意点① 法定基準を下回らないこと
最も重要なのは、法定基準を下回らないことです。
たとえば、
-
本来6か月経過で10日付与される職員に対し
-
統一付与の都合で「まだ付与しない」
これは 明確な労基法違反となります。
➡ 統一付与は「前倒し」はOK、後ろ倒しはNG
これが大原則です。
注意点② 中途入社職員への配慮が必須
介護・保育・クリニックでは中途採用が多いため、特に注意が必要です。
よくある誤りが、
「4月1日一斉付与だから、途中入社の人は次の4月まで有給なし」
これは完全アウトです。
実務では、
-
入社から6か月経過時点で比例付与(前倒し付与)
-
次回の統一付与日に本付与
という 二段階設計が安全です。
注意点③ パート・非常勤も対象になる
「パートだから有給は少しでいい」「付与日は別扱い」という運用も要注意です。
所定労働日数が少ない場合は、比例付与にはなりますが、
付与義務そのものは正社員と同じです。
特に保育園や介護事業所では、
-
短時間職員
-
曜日固定勤務
が多いため、比例付与日数の設計を誤らないよう注意が必要です。
注意点④ 就業規則への明記が必須
有給休暇の付与日を統一する場合、
就業規則に明確なルールとして記載することが必須です。
記載がないまま運用だけ変えてしまうと、
-
職員とのトラブル
-
労基署是正指導
につながるリスクがあります。
特にクリニックでは「昔からの慣習」で運用しているケースが多く、要注意ポイントです。
注意点⑤ 5日取得義務との関係
2019年から義務化された「年5日の有給取得義務」も忘れてはいけません。
付与日を統一すると、
-
付与日
-
取得管理期間
が明確になる一方、管理を怠ると一斉に未取得が発生します。
➡ 統一付与を行う場合は、
計画的付与や取得促進ルールとセットで設計することが重要です。
介護・保育・クリニック特有の実務ポイント
これらの業界では、
-
シフト制
-
人手不足
-
急な欠勤
が日常的に発生します。
有給付与日を統一するだけでなく、
-
時季変更権の適切な使い方
-
有給取得ルールの見える化
まで含めて設計しないと、**「制度はあるが使えない有給」**になってしまいます。
有給休暇の付与日を全職員で統一する場合のQ&A
Q1.有給休暇の付与日を全職員で同じ日にしても、法律上問題ありませんか?
A.一定の条件を満たせば問題ありません。
労働基準法では、有給休暇は「雇入れから6か月後」に発生するのが原則ですが、それより前に付与する(前倒し付与)ことは禁止されていません。
そのため、法定基準を下回らない形であれば、付与日を統一することは可能です。
Q2.「4月1日一斉付与」にしたいのですが、途中入社の職員はどうすればいいですか?
A.途中入社職員への配慮が不可欠です。
「次の4月1日まで有給なし」という運用は違法になります。
実務では、
-
入社6か月経過時点で先行付与
-
次の統一付与日に本付与へ切替
という二段階設計が安全です。
Q3.パート職員や非常勤職員も同じ付与日にしなければなりませんか?
A.はい、基本的には同様に考える必要があります。
所定労働日数が少ない場合は比例付与になりますが、
「パートだから対象外」「付与日は別」という扱いはできません。
特に保育園・介護事業所では短時間勤務者が多いため、注意が必要です。
Q4.付与日を統一すると、有給日数はどう計算すればいいですか?
A.勤続年数に応じた日数を基準にします。
たとえば4月1日一斉付与の場合、
-
勤続6か月以上1年6か月未満:10日
-
1年6か月以上:11日
といったように、勤続年数別に付与日数を整理します。
ここを曖昧にすると、トラブルの元になります。
Q5.有給付与日を統一すると、職員に不利になることはありませんか?
A.設計次第で不利にも有利にもなります。
前倒し付与を行えば、職員にとっては「早く有給がもらえる」メリットになります。
一方で、後ろ倒しになる設計は違法かつ職員不信につながるためNGです。
Q6.就業規則にはどこまで書く必要がありますか?
A.付与日・付与方法・日数は必ず明記してください。
最低限、
-
有給休暇の付与日
-
勤続年数別の付与日数
-
中途入社者の取扱い
は就業規則に記載が必要です。
「慣例でやっている」は通用しません。
Q7.口頭説明だけで運用しても大丈夫ですか?
A.おすすめできません。
労基署調査や職員トラブル時には、就業規則の記載内容が判断基準になります。
特にクリニックでは、院長が善意で運用していても、書面がないことで是正指導を受けるケースがあります。
Q8.有給の「年5日取得義務」との関係はどうなりますか?
A.統一付与とセットで管理が必要です。
付与日を統一すると、全職員の取得期限も同時に管理することになります。
そのため、
-
取得状況の定期確認
-
計画的付与の活用
をしないと、一斉未取得リスクが高まります。
Q9.忙しくて有給を取らせられない場合はどうすればいいですか?
A.「忙しい」は取得拒否の理由になりません。
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には時季変更権の行使が可能です。
介護・保育・医療現場では、
「取得時期を調整する」運用設計が重要になります。
Q10.有給を使わずに退職した職員にはどう対応すればいいですか?
A.原則として買い取り義務はありません。
ただし、退職時に残っている有給を消化させることは可能です。
「統一付与にした結果、有給が残りやすくなった」という相談も多いため、退職時の取扱いも事前にルール化しておきましょう。
Q11.派遣職員や契約社員も対象になりますか?
A.雇用主が誰かで判断します。
自法人と雇用契約がある職員であれば、雇用形態に関わらず有給付与義務があります。
派遣職員の場合は、派遣元が付与主体になります。
Q12.付与日を年度途中で変更しても問題ありませんか?
A.慎重な対応が必要です。
不利益変更にならないこと、職員への十分な説明、就業規則改定が必須です。
特に保育園・介護事業所では、監査時に説明できる状態が求められます。
Q13.労基署から指摘されやすいポイントは何ですか?
A.次の3点が特に多いです。
-
中途入社職員への付与漏れ
-
パート職員の比例付与ミス
-
就業規則と実態の不一致
付与日統一は「管理が楽」になる反面、ミスが一斉に発生する点に注意が必要です。
Q14.小規模なクリニックでも付与日統一はした方がいいですか?
A.人数が少ないほど、ルール明確化の効果は高いです。
院長の頭の中で管理できていた時代は終わっています。
トラブル予防の観点からも、制度として整理する価値は十分にあります。
Q15.専門家に相談するタイミングはいつがベストですか?
A.「問題が起きる前」がベストです。
有給休暇は、退職・労基署調査・職員不満の引き金になりやすいテーマです。
付与日統一を検討する段階で、介護・保育・医療に詳しい社労士に相談することが、結果的にコストとリスクを下げます。
まとめ(社労士コメント)
有給休暇の付与日統一は、
正しく設計すれば、管理効率・職員満足度の両方を高める制度です。
一方で、設計を誤ると一気に法令違反リスクを抱えることになります。
介護・保育・クリニックという人手不足業界だからこそ、
「楽にするための統一」ではなく、
**「安心して働けるための制度設計」**が重要です。
Q) 体調不良で欠勤を繰り返している職員がいます。ここ1ヶ月間に何日も欠勤しており、業務への支障も大きくなっています。施設としては、急な欠勤は人員配
置の面で問題が多く、また職員本人の健康のためにも療養に専念し、場合によっては退職してもらった方がよいのではないかと考えていますが、どのように対応
したらよいでしょうか?
A) 就業規則などで私傷病に係る休職制度を設けている場合は、すぐに退職してもらうことはできません。施設は職員に対して療養のための休職を命じることにな
ります。その後、休職期間を経過しても復職が難しいのであれば、退職となります。まずは体調不良が続くようであれば、医療機関への受診を促しましょう。
詳細解説:
1.欠勤とは
一般的に「欠勤」とは、職員が本来出勤しなければならない日に、個人的な事情で出勤しないことを指します。労働契約では、職員は所定労働日・所定労働時間に労務を提供する義務を負っており、一方で施設は、労務提供に対し職員に賃金を支払う義務を負っています。職員が私傷病によって一定期間、労務を提供できない場合には、労働契約に基づく労務提
供義務を果たせないことになり、施設は、労働契約の債務不履行として、契約解除を検討することになります。
2.私傷病による休職制度
多くの施設では、職員が病気やケガ、またはその他の事由により、労務提供が困難になった場合、すぐには解雇せず、職員との労働契約を維持したまま、一定期間の労務提供義務を
免除し、回復を待つための休職制度を設けています。休職制度は、解雇を留保とする「解雇の猶予措置」に位置付けられており、休職期間を経過しても復職できない場合には、就業規則の定めに則って退職となります。よって、休職制度は、職員の一定期間の雇用を保障しつつ、無用な退職トラブルを防ぐことにもつながります。
3.休職発令の重要性
休職制度は、職員が施設へ取得の申請をするものではなく、あらかじめ定められた一定の休職事由に該当したときに、施設が職員に命じるものです。休職期間が満了すると退職
となることから、休職期間満了時にトラブルが発生しがちです。このようなトラブルを防ぐために、休職を開始するときには、職員へ書面で通知を行うようにしましょう。
休職制度は、法律上義務付けられるものではなく、任意に制度の設計・運用を行うことができます。休職制度の有無の確認と、休職制度がある場合には、休職の期間や復職の取扱い
に問題ないかを見直すとよいでしょう。
2025年12月25日「介護保険制度の見直しに関する意見」が上梓
2025年12月25日の介護保険部会にて提示された、「介護保険制度の見直しに関する意見」(以下、「本資料」という)。本部会では2027年度介護保険法改正・報酬改定に向けた論点整理、及び視点の提示が行われています。今回の本資料の特徴は何と言っても「ページ数が多い」こと。3年前は42ページでしたが今回は何と、67ページと25ページも増えており、1回のニュースレターでは採り上げづらいボリュームになっています。そこで今回は、今年から新たに方針が示された地域3分類(中山間・人口減少地域、大都市部、一般市等)の内容に絞り、特に中山間・人口減少地域に対する論点を中心に採り上げてお伝えしてまいります。
「介護保険制度の見直しに関する意見」地域3分類に関する論点とは
それでは早速、中身に移ってまいりましょう。先ずは中山間・人口減少地域における柔軟な対応等に関し、「特例介護サービスの枠組みの拡張」についてです。
◯地域の実情に応じてサービス提供体制を維持・確保するため、人材確保、ICT機器の活用等の生産性向上の方策など、自治体が必要な施策を講じた上で、それでもなおやむを得ない場合、中山間・人口減少地域に限定した特例的なサービス提供を行う枠組みとして、特例介護サービスに新たな類型を設けることが適当である。
◯この新たな類型においては、
・職員の負担への配慮の観点から、職員の賃金の改善に向けた取組、ICT機器の活用、サービス・事業所間での連携等を前提に、管理者や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件の緩和等を行うこと
・サービスの質の確保の観点から、市町村の適切な関与・確認や、配置職員の専門性への配慮を行うことを前提とすること
が考えられ、今後、詳細な要件について、介護給付費分科会等で議論することが適当である。
なお、これらの要件が自治体で厳しく解釈されると、必要な配置基準の緩和が進まなくなるのではないかとの意見があった。
◯新たな類型の特例介護サービスについては、現行の基準該当サービス・離島等相当サービスの対象となっている居宅サービス等(訪問介護、訪問入浴介護、通所介護、短期入所生活介護、福祉用具貸与、居宅介護支援等)に加え、施設サービスや居宅サービスのうち特定施設入居者生活介護も対象とすることが適当である。また、市町村が指定権者となり実施している地域密着型サービスにおける同様のサービスについても、同様の対応を実施できるようにすることが適当である。
◯なお、新たな類型の特例介護サービスについては、
・サービスの質の担保について、事後の確認を行う仕組みについても検討が必要ではないか
・介護保険制度は全国どこでも必要なサービスを提供すべきものであり、配置基準の緩和は、慎重に対応するものとして、あくまでも緊急的な対応として行うものとすべきではないか
・ICT機器の活用などの業務効率化の取組は、必要人員を代替し得るものであるかどうか精査が必要ではないか
・まずは現行の居宅サービス等に限定し、施設サービス等を対象に含めるかどうかについては、ICT機器等の活用実績を踏まえ慎重に検討すべきではないか
・夜勤要件の緩和については、特に職員の負担感などへの配慮が必要ではないか
との意見があったことにも留意し、今後詳細な要件について、介護給付費分科会等で議論することが適当である。
続いて、「地域の実情に応じた包括的な評価の仕組み」についてです。
◯中山間・人口減少地域においては、利用者の事情による突然のキャンセルや利用者宅間の移動に係る負担が大きく、また、高齢者人口の減少に伴うサービス需要の縮小、季節による繁閑の激しさ等から、年間を通じた安定的な経営が難しく、サービス基盤の維持に当たっての課題となっている。
◯このため、特例介護サービスの新たな類型の枠組みにおいて、安定的な経営を行う仕組みとして、例えば訪問介護について、現行のサービス提供回数に応じた出来高報酬と別途、包括的な評価(月単位の定額払い)を選択可能とすることが適当である。
◯こうした包括的な評価の仕組みについては、
・利用者数に応じて収入の見込みが立つため、特に季節による繁閑が大きい地域や小規模な事業所において、経営の安定につながる
・移動時間など、地域の実情を考慮した報酬設定が可能となるほか、突然のキャンセル等による機会損失を抑制し、予見性のある経営が可能になる
・利用回数や時間の少ない利用者を受け入れた場合でも、収益が確保できる
・安定的かつ予見性のある経営が可能となることで、常勤化が促進されるなど、継続的かつ安定的な人材確保につながる
・利用者の状態変化により利用回数や時間が増えた場合でも、負担が変わらず、安心感がある
等のメリットが期待される。
◯その一方で、
・利用者ごとの利用回数・時間の差にも配慮しながら、利用者間の不公平感を抑制する必要がある
・利用者の費用負担が急激に増えることや、区分支給限度基準額との関係でサービス利用に過度な制約がかからないよう、適切に配慮を行う必要がある
・保険料水準の過度な上昇を抑制する観点や、対象地域の内外での報酬水準の均衡等も踏まえて、サービス提供量と比べて過大な報酬とならないようにする必要がある
・利用回数や時間にかかわらず一律の報酬となることにより、利用者が必要以上にサービスを利用する、事業者が必要なサービス提供を控える、といったモラルハザードを抑制する必要がある
といった点に十分な留意が必要である。
◯このため、具体的な報酬設計については、利用者像ごとに複数段階の報酬区分を設定することや、区分支給限度基準額との関係性にも配慮しつつ包括化の対象範囲を設定するなど、きめ細かな報酬体系とする方向で検討を進める必要がある。こうしたことも踏まえて、報酬水準の設定に当たっては、現状の十分なデータ分析の下、包括的な評価の仕組みを導入する事業者の経営状況や、サービス提供状況等に与える影響を考慮しつつ、今後、介護給付費分科会等で議論することが適当である。
◯また、ニーズを有する地域の事業者が迅速に対応できるよう、希望する自治体においては、第10期介護保険事業計画期間中の実施を可能とすることを目指し、第9期介護保険事業計画期間中に検討を進めることが適当である。
続いて、「介護サービスを事業として実施する仕組み」についてです。
◯今後、2040年を見据えると、サービスを提供する担い手だけでなく、更なる利用者の減少が進む地域も想定される中、上述のような給付における特例の仕組みを活用しても、なおサービス提供体制を維持することが困難なケースが想定される。
◯こうした地域においても、契約に基づき利用者本位でサービスを選択するという介護保険の制度理念を維持するとともに、利用者が住み慣れた地域を離れ、在宅での生活を継続することが困難となる状況を防ぐことが重要である。
◯このため、こうした場合に備えた中山間・人口減少地域における柔軟なサービス基盤の維持・確保の選択肢の一つとして、給付の仕組みに代えて、市町村が関与する事業により、給付と同様に介護保険財源を活用し、事業者がサービス提供を可能とする仕組みを設けることが適当である。
◯この仕組みにおいては、要介護者等に対して、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護等といった給付で実施するサービスを実施できるようにするとともに、こうしたサービスを組み合わせて提供することが考えられる。このようなサービス提供についても、利用者との契約に基づき、適切なケアマネジメントを経て、要介護者に対して介護サービスを提供するという点においては、給付サービスと変わりがない仕組みとすることが適当である。また、本事業は、人口減少社会の中で、被保険者(住民)のために介護サービスを維持・確保することが目的であり、その導入に当たっては、対象地域の特定と併せて、介護保険事業(支援)計画の策定プロセスの一部として、被保険者(住民)等の関係者の意見を聴きながら検討することが想定される。
◯今回の新たな事業の仕組みによる事業費については、例えば、圏域を超えて訪問する際の経費など、中山間・人口減少地域へのサービス提供に係る追加的な費用も勘案することも考えられる。なお、複数のサービスを組み合わせて弾力的に提供するケース等が想定されることを踏まえると、単独の事業所等におけるサービス提供時に要するコストと比べて、一定程度効率的に実施することも可能になることも想定される。
◯その上で、新たな事業は、地域支援事業の一類型として実施することが考えられ、その財源構成は、国、都道府県、市町村、1号保険料、2号保険料ごとに、現行の給付サービスと同様の負担割合とすることが考えられる。
◯中山間・人口減少地域における居宅サービスが継続的に提供されることにより、当該地域における在宅の要介護高齢者が引き続き在宅で生活することが可能となること等を踏まえると、この事業の実施が当該市町村の介護保険財政に与える影響は、施設サービス等の他の給付費を含めて総体的に見ればそれほど大きなものとはならないと考えられるものの、保険財政規律を確保する観点から、当該事業費の総額についても、他の地域支援事業と同様に、高齢者の伸び率等を勘案した上限額を設定することが考えられる。
◯包括的な評価の仕組みと同様、中山間・人口減少地域における事業者の経営やサービス提供の状況等を十分に検証の上、こうした地域において実際に活用可能なものとなるよう、都道府県や市町村の負担軽減の観点も含めて、関係者の意見を丁寧に伺いながら、検討を進めることが必要である。
◯なお、介護サービスを事業として実施する仕組みについては、制度の導入により、市町村に責任が集中することにならないよう、都道府県が一定の関与をする仕組みとするなど、丁寧な検討を行うべきとの意見があった。
最後に、「大都市部・一般市等における対応」に関し、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護の統合」についてです。
◯定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、要介護高齢者の在宅生活を24時間支えるサービスとして、日中・夜間を通じて訪問介護と訪問看護の両方を提供し、「定期巡回」と「通報による随時対応」を行っており、特に今後増加する都市部における居宅要介護者の介護ニーズに対して柔軟に対応することが期待されている。一方で、夜間対応型訪問介護は、夜間における「定期巡回」と「通報による随時対応」を行うもので、これまでの本部会等の議論においても、両サービスは機能が類似・重複しており、将来的な統合・整理に向けた検討の必要性について指摘があったところである。
◯両サービスの機能・役割や、将来的なサービスの統合を見据えて段階的に取り組んできた状況を踏まえ、また、
・夜間対応型訪問介護の多くの利用者は日中の訪問介護を併用しており、日中・夜間を通じて同一の事業所によって24時間の訪問介護(看護)サービスを一体的に受けられることは、夜間対応型訪問介護の利用者にとって効果的と考えられること
・8割以上の夜間対応型訪問介護事業者が定期巡回・随時対応型訪問介護事業所も運営しており、定期巡回・随時対応型訪問介護事業所にとっては、事業所の指定手続や報酬請求事務等が効率化されるなど、限られた地域資源の有効活用にも資すること
・令和6年度介護報酬改定で設けた定期巡回・随時対応型訪問介護看護の新区分について、利用者に不利益は生じていないと考えられることから、夜間対応型訪問介護を廃止し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と統合することが適当である。
◯なお、この際、必要な人員の確保やサービスの認知度向上など、利用者・事業者双方への影響にも十分配慮する必要があることから、一定の経過措置期間を設けた上で、人員配置基準や報酬に関して特例的な類型を設けることが適当である。
タイムリーにキャッチアップしつつも、過度に振り回されないように
以上、今月は「介護保険制度の見直しに関する意見」から一つのテーマに絞り、お伝えしました。今回の資料により、2027年の法改正・報酬改定へ向けての大きな方向性は概ね示されたと思われます。今後の手続きとしては、議論は介護給付費分科会へと引き継がれ、より細かな改正法案・改定報酬案に関する審議が展開されることになります。経営者・幹部の皆様は是非、ご自身でも情報を追いかけていただくと共に、制度の活用は重要である一方、そこにばかり心が奪われ、結果、制度に振り回される、ということがないよう気をつけていただく必要もあるかもしれません。
いずれにせよ2027年の改正・改定へ向け、2026年はさらに具体的な議論が始まります。
我々もしっかりと追いかけ、タイムリーな情報提供を心掛けてまいりますので、引き続きよろしくお願い致します。
※本ニュースレターの引用元資料はこちら
↓
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001622725.pdf
結論:週休3日制は「魔法の制度」ではないが、正しく設計すれば定着率を高める有効策
介護業界では慢性的な人材不足が続く中、「週休3日制」を導入する事業所が徐々に増えています。
結論から言えば、週休3日制は万能ではありません。しかし、勤務時間設計・給与制度・シフト管理を適切に行えば、
-
採用力の向上
-
職員の定着率アップ
-
離職防止・燃え尽き防止
といった効果が期待できる制度です。
一方で、制度設計を誤ると
「職員の不満が増える」「現場が回らない」「人件費が逆に増える」
といったリスクもあります。
本コラムでは、介護事業所における週休3日制の導入時の注意点を社労士視点で解説します。
週休3日制の成否は、就業規則でも給与制度でもなく、シフトと人員配置の再設計が重要
週休3日制で現場が苦しくなる事業所の共通点
これまで多くの介護事業所を支援してきましたが、
週休3日制がうまくいかないケースには、はっきりした共通点があります。
それは、
**「従来の人員配置のまま、休みだけを増やそうとしている」**ことです。
-
1人あたりの勤務時間は長くなった
-
しかし、時間帯ごとの配置は見直していない
-
結果、忙しい時間帯がスカスカになる
この状態では、どれだけ理念が良くても、現場は確実に疲弊します。
介護の仕事は「人数」ではなく「時間帯」で考えるべき
介護保険制度上、人員配置基準は「常勤換算」で語られることが多く、
つい「トータル人数」で考えがちです。
しかし、現場で起きているのは、
時間帯ごとの負荷の偏りです。
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朝の起床・排泄・送迎
-
昼の入浴・記録
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夕方から夜の食事・就寝介助
この“山”の時間に人が足りないと、
事故リスク、職員の苛立ち、利用者満足度の低下が一気に表面化します。
そこで重要になるのが、
**勤務時間が重なる「オーバーラップ時間」**です。
なぜ「重なる時間」がないと、週休3日制は破綻するのか
週休3日制(給与維持型)の多くは、
1日10時間勤務が前提になります。
このとき、
「誰かが来たら、誰かが帰る」
というシフトを組んでしまうと、現場はこうなります。
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申し送りは紙だけ
-
忙しい時間を1人で回す
-
トラブルが起きても応援がない
これは、**制度以前に“無理な現場”**です。
私が支援に入ったある事業所では、
重なる時間を設けていなかったため、
「休みは増えたのに、勤務中は前よりきつい」
という声が続出しました。
重なる時間が生む「3つの余白」
重なる時間を意図的に作ると、現場に余白が生まれます。
① 業務の余白
一番忙しい時間に人がいることで、
介助・対応の質を落とさずに済みます。
② 判断の余白
「これ、どう対応する?」
とその場で相談できる相手がいることは、
職員の心理的負担を大きく下げます。
③ 人間関係の余白
忙しさを分かち合えることで、
「自分だけ大変」という不公平感が生まれにくくなります。
これは、離職防止の観点でも非常に大きい効果です。
社労士として必ず勧める人員配置の考え方
私が週休3日制の支援で必ず提案するのは、
次のような設計です。
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1日10時間勤務を前提に
-
開始・終了時刻をずらす
-
2〜3時間以上の重なりを作る
たとえばデイサービスであれば、
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早番:7:30〜18:30
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遅番:9:00〜20:00
こうすることで、
**9:00〜18:30という“人を厚くする時間帯”**が生まれます。
ここに入浴・記録・家族対応などを集中させることで、
現場は驚くほど安定します。
週休3日制は「人を減らす制度」ではない
誤解されがちですが、
週休3日制は人件費削減の制度ではありません。
むしろ私は、
**「人を守るための配置転換制度」**だと考えています。
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ずっと張り付かなくていい
-
1人で抱え込まなくていい
-
無理な我慢をしなくていい
この環境を作れなければ、
どんなに先進的な制度も、現場には根付きません。
まとめ:週休3日制は“設計図”で決まる
介護事業所の週休3日制は、
「導入するかどうか」よりも、
**「どう設計するか」**がすべてです。
特に人員配置では、
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時間帯別に業務量を見る
-
重なる時間を意図的に作る
-
忙しさを分け合える構造にする
この視点が欠かせません。
週休3日制を、
現場を壊す制度にするか、守る制度にするか。
その分かれ道は、
この「人員配置の再設計」にあります。
2026年6月、介護保険制度における 介護職員等処遇改善加算(以下「処遇改善加算」) が大幅に見直されることが決定しました。この改定は、介護現場が抱える深刻な人材不足と賃金水準の低さという根本課題に対応するため、従来の3年ごとの通常改定とは別に 臨時(期中)改定 として実施される異例の政策です。加算の拡充は介護報酬全体の引き上げと合わせて、介護従事者の待遇改善や人材確保に向けた国の本気度を示すものとなっています。
本コラムでは、2026年6月施行の処遇改善加算のポイントを整理し、介護事業者が押さえるべき要点をわかりやすく解説します。
■1|臨時改定として処遇改善加算が見直される背景
日本は急速な高齢化が進行し、介護現場の人手不足が深刻な社会課題となっています。介護職の離職率が高い原因のひとつは 賃金水準が他産業に比べて低いままであること。このため、厚生労働省は従来の3年ごとの介護報酬改定に先立ち、2026年6月に処遇改善を中心とした 臨時の介護報酬改定 を決定しました。
この改定の狙いは、介護職員の給与改善だけでなく、 介護従事者全体の処遇向上と長期的な人材確保 にあります。国は処遇改善加算の拡充により、現場のモチベーション向上や離職防止を実現し、介護事業全体の安定化を図ろうとしています。
■2|「処遇改善加算」の対象範囲が大幅に拡大
従来の処遇改善加算は主に介護職員を対象としていましたが、2026年6月からはその対象が 介護従事者全体に拡大 されます。ここで言う介護従事者とは、介護職だけでなく 介護支援専門員(ケアマネジャー)や訪問看護、訪問リハビリテーションのスタッフ を含む広い範囲を指します。
特に注目すべきは以下の新対象サービスです:
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訪問看護
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介護予防訪問看護
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訪問リハビリテーション
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居宅介護支援(ケアマネジャー業務)
これらは従来、処遇改善加算の対象外とされてきましたが、改定後は加算の対象となることで、 看護職・リハビリ職・ケアマネジャーの賃金改善が可能となる 点が大きなポイントです。
■3|加算率の引き上げと上位区分の新設
処遇改善加算の体系自体も大きく変わります。従来の加算区分Ⅰ・Ⅱに加えて、 生産性向上や協働化等の取り組みを要件とする「上位区分(例:Ⅰロ・Ⅱロ)」 が新設されます。これにより、同じサービス種別でも 取り組み内容に応じて加算率が大きく変動 するようになります。
例えば、訪問介護や通所介護では ICTを活用した 生産性向上への取り組み を行う事業所に対して、従来より高い加算率を付与することが可能になります。これは単なる賃金原資の確保だけでなく、 効率化・質向上を同時に促すインセンティブ設計 でもあります。
また、現行の加算率そのものも引き上げられるため、介護職員にとっては 月額約1万円〜最大1.9万円程度の処遇改善が見込まれる とされており、賃金ベースアップの直接的な効果が期待されています。
■4|事業所運営への影響と留意点
この制度改定は介護事業者にとって歓迎すべき賃金改善策ですが、一方で 対応すべき実務プロセスや要件が複雑化する という面もあります。
✅ 主な留意点
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新しい区分の取得要件整理
上位区分を取得するためには、生産性向上の具体的な取り組みや協働体制の構築など、事業所ごとの実行計画が必要です。 -
加算対象外だった職種の給与配分ルール
従来の賃上げ原資の配分ルールは介護職中心でしたが、対象拡大に伴い 看護師・リハ職・ケアマネにも賃上げ原資を配分するルールを整備する必要 があります。 -
現場負担の可能性
審議会の段階では、委員から「制度が複雑すぎて小規模事業所が対応困難」という意見も出ており、 事務負担増への懸念 も指摘されています。
■5|処遇改善加算拡充がもたらす効果
この改定が実現すると、日本の介護現場に以下のような ポジティブな影響 が期待できます。
📌 賃金水準の底上げ
従来より高い加算率と対象範囲の拡大により、介護従事者全体の給与改善が進む可能性があります。特に多職種連携が求められる在宅サービスでは、 専門職の定着促進 につながるでしょう。
📌 人材確保力の強化
介護職は深刻な人材不足に直面していますが、待遇改善が進むことで 人材の応募・定着率向上 が期待されます。加えて、上位区分要件を満たす事業所は採用競争力の向上につながります。
📌 サービス品質の向上
生産性向上やICT活用へのインセンティブが設計されたことで、 業務効率の改善と質向上 の両立が促されます。
■まとめ:事業者が今すぐ取り組むべきこと
2026年6月からの処遇改善加算の改定は、介護現場にとって 賃金改善と人材確保の大きなチャンス です。しかし、その恩恵を最大化するためには、事業所独自の取組計画を策定し、 新たな加算区分への対応を戦略的に進めることが不可欠 です。
具体的には以下の点を検討しましょう:
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生産性向上やICT導入計画の策定
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多職種の賃金配分ルール整理
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上位区分の要件を満たす職場環境整備
この制度改定を正しく理解し活用することで、介護事業者は 持続可能な運営と現場職員の満足度向上 を同時に実現できます。






