介護

介護事業者様向け情報(経営❷)12月号

財務省がまとめた「平成31年度予算の編成等に関する建議」の ポイントをおさえておきましょう

次年度予算編成の基礎的考え方となる「平成31年度予算の編成等に関する建議」が公表

2018年11月20日、来年度の予算編成に向けた提言書「平成31年度予算の編成等に関する建議」が、財務省が管轄する“財政制度分科会”より提起されました(以下、「本建議」)。本建議の中では「平成31年度(2019年度)予算編成の課題」として大きく10の領域に対する提言がなされていますが、中でも国の一般歳出予算の相当割合を占める「社会保障」に関しては最大の紙幅を割いており、同予算に対する財務省としての「危機感の強さ」を見て取る事が出来ます。“国の金庫番”とも言える財務省が社会保障、とりわけ介護業界界に対し、どのような視点を持っているのか?今回は特に事業者として注視すべき内容をポイントとして採り上げ、お届けしてまいります。

介護業経営に影響を及ぼす可能性が高い「7つのポイント」とは

それでは、早速、中身に移ってまいりましょう。先ずは「軽度者へのサービスの地域支援事業への移行」についてです。

【ポイント1:軽度者へのサービスの地域支援事業への移行】

要支援者に対する訪問・通所介護は、平成27 年度(2015 年度)から介護予防・日常生活支援総合事業に移行を開始し、平成30 年(2018 年)3 月末までに全市町村が移行を完了した。
今後、利用者の状態像や地域の実情に応じ、国による基準に基づく専門的なサービスだけでなく、基準を緩和したサービスや住民主体のサービスを実施することが可能となったが、まだ多くの地方公共団体が、移行前と同様の国による基準に基づくサービスの実施を中心としている。
軽度者(要支援1・2)へのサービスの地域支援事業への移行については、予定している給付の効率化やサービスの質を確保しつつ、地方公共団体の好事例も踏まえ、円滑な実施が図られるよう更なる制度改善につなげていくべきである。
また、要介護1・2の者に対する生活援助サービス等については、サービスの質を確保しつつ、地域の実情に応じた多様な主体による提供の推進や保険給付の厚みを引き下げる観点から、第8期介護保険事業計画期間中の更なる地域支援事業への移行や利用者負担の在り方について具体的に検討していく必要がある。

ポイント1の中で注視すべき内容としては、後ろの3行「要介護1・2の者に対する生活援助サービス等については、(中略)第8期介護保険事業計画期間中の更なる地域支援事業への移行や利用者負担の在り方について具体的に検討していく必要がある」という部分ではないでしょうか。「第8期」ということは2021年4月から始まる期であることを考えると、2021年4月施行の法改正に於いて何らかの結論、或いは少なくとも方向性が示されると考えるのが自然かと思われます。続いて、ポイントの2点目です。

【ポイント2:保険者機能強化のためのインセンティブ付与の在り方】

保険者による介護費の適正化に向けた取組をより一層促進するため、調整交付金の活用も含めたインセンティブの付与の在り方を検討する必要がある。特に、調整交付金のインセンティブとしての活用については、全地方公共団体の取組のより一層の底上げを図るため、平成31年度(2019 年度)中に結論を得て、第8期介護保険事業計画期間の始期である平成33 年度(2021 年度)からの実施を検討すべきである。

今期は保険者からの大反対に伴い、調整交付金を活用せず、「交付金」として自治体予算に“上乗せ”する形でのインセンティブとなっていますが(=一定の成果を上げた自治体には交付金から上乗せ予算が支払われるが、現状維持の自治体でも予算は削減されない)、財務省としてはより一層、保険者が介護保険マネジメントに対する取り組み意欲を高めることを目的に、「頑張らなければそもそもの予算が削られてしまうかもしれない」という形式に持っていくべく、「調整交付金の活用」にこだわりを持っているようです。
続いて3点目のポイントです。

【ポイント3:介護事務所・施設の経営の効率化】

介護サービス事業全体で見た場合、介護サービスの経営主体は4割弱が1法人1施設・事務所であるなど、小規模な法人が多いことが伺える。また、平成30 年度(2018 年度)予算執行調査(財務省)によると、社会福祉法人においても、1法人当たり複数の事業所を抱える法人の方は、平均収支差が良好なことが明らかになった。こうした背景には、本部機能、給食事業、物品購入等について統合・共同化することなどを通じて、経営の効率化が図られていると考えられる。介護サービス事業所の経営の効率化・安定化の観点に加え、今後も担い手が減少する中、人材の確保・有効活用やキャリアパスの形成によるサービスの質の向上といった観点から、介護サービスの経営主体の統合・再編を促す施策を講ずるべきである。

前月のニュースレターでも触れましたが、2015年法改正前に提唱された「非営利ホールディングカンパニー型法人(≒社会福祉法人やNPO法人、医療法人等の大同団結法人)」、或いは「リガーレグループ」のようなグループ化の促進議論が再燃する可能性が高まるかもしれません。特に社会福祉法人の皆様にとっては要注目のポイントではないでしょうか。続いては4番目のポイントです。

【ポイント4:介護現場の生産性向上】

介護を必要とする高齢者の更なる増加が見込まれる一方、就業者数の大幅な減少が見込まれることから、今後とも介護サービスを安定的に供給していくためには、十分な介護人材の確保に加え、介護現場における生産性向上が課題になっている。生産性向上に向けた各種取組を通じて、質の高いサービスを維持しつ
つ、介護職員の働きやすい職場環境を実現するとともに、効果検証から得られたエビデンスに基づき、人員・設備基準の緩和といった制度改革や介護報酬改定に反映していく必要がある。

「人員基準・設備基準の緩和」は事業者にとってとてもメリットが大きい内容ですが、かといって、それにより事故が起こりやすくなってしまっては本末転倒です。それらを担保する有益な手段として、「ロボット」「ICT」等の積極活用が問われることになるのは自明かと思われます。最後に、5、6,7番目のポイントに移ります(これらのは目を通すだけで十分かと思います)

【ポイント5:ケアマネジメントの質の向上と利用者負担】

介護保険サービスの利用に当たっては、一定の利用者負担を求めているが、居宅介護支援については、制度創設当初より、ケアマネジメントの利用機会を確保するなどの観点から利用者負担が設定されていない。このため、利用者側からケアマネジャーの業務の質へのチェックが働きにくい構造にある。
また、特別養護老人ホームなどの施設サービス計画の策定等に係る費用は基本サービスの一部として利用者負担が存在しており、居宅介護支援への利用者負担はサービスの利用の大きな障害とならないと考えられる。このため、これまでに講じた頻回サービス利用に関する保険者によるケアプランチェックやサービスの標準化の推進と併せ、居宅介護支援におけるケアマネジメントに利用者負担を設け、利用者・ケアマネジャー・保険者が一体となって質の高いケアマネジメントを実現する仕組みとする必要がある。

【ポイント6:在宅と施設の公平性の確保】

(6-1:補足給付)
平成27 年度(2015 年度)改正において、一定以上の預貯金や有価証券等の金融資産を有する世代には補足給付を行わない旨の要件の見直しを行った。しかし、世帯主が65 歳以上の世帯が保有する資産構成をみると、補足給付の要件に勘案される預金や有価証券よりも、宅地等の固定資産の方が大きくなっている。さらに、補足給付の基準は、預貯金等について単身で1,000 万円、夫婦世帯で2,000 万円となっているが、これは、65 歳以上の者の預貯金の保有状況に照らして中央値を超えた水準になっており、負担能力を判断する基準としては低い水準となっている。このため、在宅サービス受給者と施設サービス受給者との負担の権衡や世代間の公平性を確保するため、補足給付対象者の資産状況の実態調査等を通じてその実像を把握し、現行の補足給付の要件等について見直しを行うべきである
(6-1:多床室の室料負担))
平成17 年度(2005 年度)制度改正において、施設サービスにおける食費や個室の居住費(室料と光熱料)を介護保険給付の対象外とする制度見直しを実施したが、多床室については、光熱水費のみが給付対象外とされ、また低所得者には補足給付が創設されている。平成27 年度(2015年度)介護報酬改定において、特養の多床室の室料負担を基本サービス費から除く見直しを行ったが、介護老人保健施設、介護療養病床、介護医療院については、室料相当分が介護保険給付の基本サービス費に含まれたままとなっている。在宅と施設の公平性を確保する観点から、次期介護報酬改定において、これらの施設の多床室の室料相当額についても基本サービス費から除外する見直しを行うべきである。

【ポイント7: 介護保険の利用者負担】

今後、介護費用は経済の伸びを超えて大幅に増加することが見込まれる中で、若年者の保険料率の伸びの抑制や、高齢者内のサービス利用者と非利用者の給付と負担の均衡を図る必要がある。制度の持続可能性や給付と負担のバランスを確保する観点から、介護保険サービスの利用者負担を原則2割とするなど、段階的に引き上げていく必要がある。

国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を

以上、本建議の中の「社会保障」に関する内容より、介護業界に直接関係のある部分のみを抜粋してお伝えさせていただきました。本内容は国全体の方針ではなく、あくまで「財務省」という一省庁の意見である、ということはしっかり認識しておく必要はあろうかと思いますが、それでも「財政健全化」が重要テーマとなっている我が国としては、財務省の挙げる声に一定の重みがあることも否めない事実だと思われます。
事業者としては上記内容を踏まえつつ、「もしこれらの施策が実行された場合にどう対応するか?」について事前に頭を働かせておくことが重要だと言えるでしょう。私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。

※上記内容の参照先URLはこちら

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia301120/index.html

【介護】「更なる処遇改善について」の内容速報・2018年12月②

皆様、ご承知いのとおり2019年10月から処遇改善の新加算がスタートする予定です。安倍政権の方針である「介護職の給与を他の産業と同等水準までに引き上げる」を実現すべく、「更なる処遇改善」がこのほど発表されました。

今回の加算は多くの特徴がありますが、その一つに多職種への分配は認めらるようになった、ということでしょうか。

ともあれ、重要なのは、加算取得要件ですが、先般の発表では下記の内容に

なっておりますのでご確認ください。

●2018年12月12日 介護給付費分科会資料から

○ 加算対象のサービス種類として、現在対象としていないものも評価すべきとの意見もあ一方で、今般の更なる処遇改善は、これまでの数度にわたり取り組んできた介護職員の処遇改善をより一層進めるものであることから、これまでの処遇改善加算と同様のサービス種類としてはどうか。


○ 長く働き続けられる環境を目指す観点から、一定のキャリアパスや研修体制の構築、職場環境等の改善が行われていることを担保し、これらの取組を一層推進するため、
① 現行の処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)を取得している事業所を対象とすることとし、
あわせて、新たに、
② 処遇改善加算の職場環境等要件に関し、職場環境等についての改善の取組を複数行っていること
③ 処遇改善加算に基づく取組について、HPへの掲載などを通じた見える化を行っていること
を求め、①、②、③を加算の対象(取得要件)としてはどうか

以上です。

今回の加算の詳細を解説する緊急セミナーを2月5日(月)と3月12日(火)に行う予定です。セミナーの詳細はまた改めてメルマガなどでお知らせいたします。

 

 

介護事業者様向け情報(経営)12月号③

福祉施設でみられる人事労務Q&A
『突然出勤しなくなり、連絡が取れなくなってしまった
職員への対応』

Q:

毎日きちんと出勤していた職員が、突然連絡もなく急に出勤しなくなり、こち
らから電話をしても連絡が取れなくなってしまいました。出勤しなくなってから
1 ヶ月経過するため解雇として手続きを進めたいのですが、どのようなことに気
をつければよいでしょうか。

A:

職員が出勤せず、また連絡も取れないからといって、施設が当該職員に何も伝
えずに解雇することにはリスクが伴います。このような場合、職員への解雇の通
知方法として、公示送達があります。しかし、時間と手間を要するため、実務面
では就業規則などに一定以上の欠勤をした場合に自然退職となる旨の記載をし、
黙示の退職の意思表示があったとみなして運用する方法が考えられます。

詳細解説:

職員が突然無断で出勤しなくなり、勤務を続ける意思があるのかわからない
というようなことが稀に発生します。このようなとき、まずは電話をした上で、
出勤や連絡することを要請する手紙の郵送、自宅への訪問、身元保証人への
連絡等あらゆる方法で職員に連絡をするように努めることが重要です。しかし、
連絡が取れないまま、ある程度の期間が経過したような場合には、解雇を
検討することが考えられますが、これにはリスクが伴います。解雇は、施設が当該職
員に雇用契約を終了する意思を通知し、到達することが必要とされているためです。
したがって、今回のように連絡が取れなくなってしまった場合には、その通知ができず、
解雇することが難しいと考えられます。
職員と連絡が取れず、解雇の通知を行うことができないとき、法律上の手続きとして
公示送達という方法があります。公示送達は、簡易裁判所に申し立てをし、その内容を
裁判所の掲示板に掲示することによって行われ、この掲示から2 週間を経過した時点で、
相手方に解雇の意思が到達したとみなすという制度です。
しかし公示送達は時間と手間を要します。
したがって、実務としては就業規則等に、一定期間以上の無断欠勤を行った際は(黙示で
の退職意思とみなして)退職とする、という旨の規定を設け、一定期間経過後、自動的に
契約が終了する、自然退職として取り扱う方法がよく行われます。
ただし、実際に雇用契約を終了することについて何も知らせていないと、後日、退職の
取り扱いが不当であるとして争われてしまう可能性があります。そのため、就業規則に自
然退職となる旨の記載をした上で、到達しない可能性はありますが自然退職となることや
退職日等を内容証明などの方法で通知し、連絡を取ろうとしたことの経過や証拠を残して
おき、退職の扱い自体の有効性を高めるようにしましょう。

(次号に続く)

介護事業者様向け情報(経営)12月号②

福祉施設における年末賞与1 人平均支給額の推移

今年も年末賞与の季節を迎えます。ここでは厚生労働省の統計資料※から、福祉関連業種につい
て、直近5 年間(平成25 年~29 年)の年末賞与支給労働者1 人平均支給額(以下、1 人平均支
給額)などをご紹介します。

老人福祉・介護事業が2 年連続の増加に

児童福祉事業、老人福祉・介護事業、障害者福祉事業について、事業所規模別の年末賞与支給
状況は以下のリンク先の通りです。28 年に比べて1 人平均支給額が増加したのは、児童福祉
事業の5~29 人規模、老人福祉・介護事業の5~29 人規模と30~99 人規模、障害者福祉事業の
30~99 人規模となりました。特に老人福祉・介護事業は、両規模とも2 年連続で1 人平均支給
額が増加しました。
きまって支給する給与に対する支給割合では、老人福祉・介護事業の5~29 人規模が1 ヶ月分に
満たない状態が続いています。
支給事業所数割合では、児童福祉事業の30~99 人規模と障害者福祉事業の30~99 人規模が
100%となりました。

今年の支給額は、どのように変化するでしょうか。

※厚生労働省「毎月勤労統計調査」
詳細は次のURL のページからご確認ください。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1.html

介護事業者様向け情報(経営)12月号①

介護が必要になったら誰に依頼したい?

将来身体が虚弱になり、日常生活の中で排せつ等の介護が必要な状態になった時、
誰に介護を頼みますか。今回は、内閣府が実施した調査※から、「介護を依頼したい
相手」の結果をご紹介します。

「配偶者」「子」「介護サービス」で9 割

「介護が必要となった時に依頼したい相手」について、「配偶者」「子」「ヘルパーなど介護
サービスの人」の3 回答で9 割近くを占めました。その構成割合は、男性は「配偶者」、
女性は「ヘルパーなど介護サービスの人」が1 位となりました。

男女別に見る「配偶者」と「子」の割合

男女・年代別の、「配偶者」「子」と回答した方の割合は、右グラフの通りです。
男性は、年代によって差があるものの、基本的には「配偶者」への期待が大きい傾向にあり
ます。一方、女性は男性に比べ、年齢とともに「子」への期待が大きくなっています。

※内閣府「平成29 年 高齢者の健康に関する調査結果(全体版)」
全国55 歳以上の男女3,000 人を対象に、29 年末~30 年1 月実施。
http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h29/zentai/index.html

(次号に続く)

介護事業者様向け情報(労務)12月号④

年次有給休暇取得義務化への対応に活用できる計画的付与制度

働き方改革関連法の成立により2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇(以下、「年休」
という)が付与される従業員について年5日の取得義務化が始まります。
これにあわせて年休の計画的付与制度を導入することを検討している企業もあるかと
思いますので、その手続きについて確認しておきましょう。

1.年休を取得する時季

年休の取得については、従業員が希望する時季に年休を与えることが原則となっています。
ただし、従業員が請求した時季に与えることが、事業の正常な運営を妨げる場合には、
他の時季に変更することができることになっています(年休の時季変更権)。
また、労使協定を結ぶことで、5日を超える分については計画的に会社が与える時季を
決めることができます(年休の計画的付与)。

2.計画的付与の方法

年休の計画的付与の方法としては、以下の3つの方法が挙げられます。

①企業全体等の休業による一斉付与

企業全体で年休を取得する日を決める方法で、製造業など一斉に休みにした方が効率的な
業態に向いている方法です。

②班・グループ別の交替制付与

企業全体で一斉に休みを取ることが難しい業態で、班・グループ別に交替で年休を与える
方法です。流通・サービス業など、定休日を増やすことが難しい企業で用いられることが
多くなっています。

③個人別付与

年次有給休暇付与計画表を作成することにより、与える日を従業員ごとに個人別で定め
る方法です。夏季、年末年始、ゴールデンウィークのほか、誕生日や結婚記念日など、
従業員の個人的な記念日を優先的に与えるケースも多くあるようです。

3.計画的付与を導入する際の手続き

計画的付与を実施するためには、就業規則に計画的付与により年休を与える旨を
記載した上で、労使協定を締結する必要があります。
労使協定で定める項目は以下のとおりです。

①計画的付与の対象となる従業員(あるいは対象から除く従業員)
②対象となる年次有給休暇の日数
③計画的付与の具体的な内容
④年次有給休暇を持たない従業員の取扱い
⑤計画的付与日の変更

なお、労使協定の労働基準監督署への提出は不要ですが、制度を導入するために
就業規則を修正した場合、届出が必要です。

年休の取得義務化により、年10日以上の年休が付与される従業員に対して、企業は何らか
の対応が必要になります。特にこれまで年休の取得率が低い企業や、1日も取得していない
従業員が多い企業では、計画的付与の導入も含め早急な検討が必要になります。就業規則の
見直しや労使協定の締結においてご不明点があれば、当事務所までご連絡ください。

(1月号に続く)

介護事業者様向け情報(労務)12月号③

省略が認められた雇用継続給付
申請時の従業員の署名

社会保険の各種給付を受けるときなどには、申請書に従業員(被保険者)本人の
記名押印または署名(以下、「署名」という)が必要になります。2018年10月より、
雇用保険の雇用継続給付(高年齢雇用継続給付・育児休業給付・介護休業給付)について、
一定の手続きを行うことで、従業員の申請書等への署名が省略できるよう手続きが
簡素化されました。そこで以下では、高年齢雇用継続給付の手続きを例に挙げて、
簡素化された手続きの内容を確認することにします。

1.雇用継続給付の申請手続きの流れ

高年齢雇用継続給付を受給するときには、まず「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金
証明書」および「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続支給申請
書」をハローワークに提出します。これらを提出することにより、対象となる従業員の高
年齢雇用継続給付の受給資格があるかを確認でき、また、給付額の基礎となる賃金月額が
決定します。
その後、原則として2ヶ月に1回、ハローワークから指定された支給申請の時期ごとに
支給申請の手続きを行うことで、従業員に給付金が支給される仕組みとなっています。

2.簡素化された手続き

1.に掲げた手続きでは、それぞれの申請書等に被保険者が署名する欄があり、申請の都
度、署名が求められることから、会社と被保険者間で申請書等のやり取りが頻繁に発生し
ていました。
これを簡素化するために、会社が申請内容等を被保険者に確認し、被保険者の合意のも
と「記載内容に関する確認書・申請等に関する同意書」(以下、「同意書」という)を作
成し保存しておくことで、申請書等への署名を省略することが認められました。

3.署名を省略する場合の申請書

2.に掲げる方法により被保険者の署名を省略して申請書等を提出する際には、通常通り
申請書等を作成した上で、署名する欄に「申請について同意済」と記載することになって
います。なお、この署名の省略については電子申請で申請するときも同様です。

ここでは、高年齢雇用継続給付を例としてとり上げましたが、育児休業給付および介護休
業給付においても同様の取扱いとなります。特に育児休業中の従業員とは、郵送での申請書
等のやり取りが多いかと思いますので、会社・従業員双方の利便性を考慮し、このような仕
組みを積極的に活用したいものです。なお、同意書についてハローワーク等に提出する必要
はありませんが、完結の日から4年間の保存が求められます。同意書を適切に保存していな
い場合は、不正とみなされる場合があるため、注意しましょう。

(次号に続く)

介護事業者様向け情報(労務)12月号②

把握が必要となる管理監督者の労働時間の状況

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長働き方改革関連法の時間外労働の上限規制に対応するため、取組みを進めて
     います。その結果、一部の部門で、部下に一定時間以上の残業をさせること
     ができず、溢れた業務を管理監督者がカバーするという状況が発生しています。
社労士 :そうですか。いまの状態は部下の業務が、管理監督者に移っているだけです
     ので、問題がありますね。管理監督者の過重労働が懸念されます。
総務部長:当社では管理監督者も含めて、原則午後10時以降の残業を禁止し、また法定
     休日についても出勤を禁止するなど、最低限の過重労働対策はできているよ
     うに思いますが、実際、管理監督者が何時に出社し、何時まで残っているの
     かを正確に把握できていない状況にあります。
社労士 :管理監督者であっても、深夜労働(午後10時から翌朝5時まで)に対する割増
     賃金の支払いが必要となります。原則午後10時以降の残業を禁止していると
     いう話でしたが、もし管理監督者が午後10時以降に業務を行っていた場合は、
     どのような手続きを行うことにしているのでしょうか?
総務部長:はい、深夜労働については一般従業員と同様に残業申請を行い、本人の申請
     に基づいて割増賃金を支給しています。当社では一般社員についてはタイム
     カードを利用していますが、今後は管理監督者についても、タイムカードに
     より労働時間を把握した方がよいのでしょうか?
社労士 :はい、そうですね。そもそも労働時間の把握については、「労働時間の適正
     な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(2017年1月20日
     策定)」に基づいて行うことになりますが、管理監督者は対象者から除かれ
     ています。しかし、働き方改革関連法の一つとして労働安全衛生法が改正さ
     れ、2019年4月より、過重労働対策の観点から、タイムカードやパソコンのロ
     グオフの記録など客観的な方法その他適切な方法により、労働時間の状況を
     把握していく必要があるとされました。
総務部長:割増賃金の支払いではなく、過重労働対策から労働時間の状況を把握する必要
     があるのですね。それでは来年4月より、管理監督者についてもタイムカード
     を利用できるように準備を進めたいと思います。

【ワンポイントアドバイス】
1. 労働安全衛生法が改正され、2019年4月より管理監督者についても過重労働対策から労働
時間の状況の把握が必要となる。
2. 管理監督者は、労働基準法の労働時間や休憩、休日等の規定は適用されないが、深夜労働
に対する割増賃金の支払いは必要である。

(次号に続く)

介護事業者様向け情報(労務)12月号①

2019年4月より電子メール等による労働条件の明示が可能に

雇用契約を締結する際、会社は労働基準法の定めに従い、従業員に対して労働条件を明示する
必要があります。明示する労働条件の一部については、書面で行うことが義務付けられて
いますが、労働基準法施行規則が改正され、2019年4月から書面以外で明示する方法が
認められることになりました。

1.書面での明示が必要な労働条件

労働基準法で定められている労働条件の明示事項は全部で14項目あります。そのうち、
以下の①~⑥(⑤のうち、昇給に関する事項を除く)については、従業員への書面の
交付による明示が義務付けられています。

①労働契約の期間に関する事項
②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
③就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
④始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇
 並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
⑤賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの
 方法、賃金の締切り及び支払いの時期並びに昇給に関する事項
⑥退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

2.電子メール等を用いた明示

今回、1.に掲げた項目について、従業員が希望した場合にはファクシミリの送信や
電子メールなど、書面以外により明示することが認められることになりました。
ただし、電子メール等で明示するときには、従業員自身が電子メール等の記録を
出力することにより書面を作成することができるものに限るとされているため、
この条件を満たしているかを確認しておく必要があります。

3.パートタイマーに必要な明示事項

パートタイマーやアルバイトなどのパートタイム労働者については、1.に掲げた
項目に加え、パートタイム労働法により「昇給の有無」、「退職手当の有無」、
「賞与の有無」、「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」の
4つの項目について、文書の交付等による明示が義務付けられています。
上記4つの項目については既にファクシミリの送信、電子メールの送信が
認められています。ただし、電子メール等で明示するときには、2.と同様に
従業員自身が電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することが
できることが条件となっています。

特に有期契約のパートタイム労働者が多い企業では、労働条件通知書を書面で作成し、
交付することに多くの時間を割いているかと思います。また、労働条件の明示が適切に
行われていなかったことでトラブルが発生することもあります。電子メール等での交付も
含め、これを機会に労働条件の明示の徹底を進めておきたいものです。

(次号に続く)

【介護】人材育成・ブログ 2018年12月①

「職員の人財育成は理念から」というテーマで10月から皆様にお伝えしております。
理念を職員に浸透させるために、多くの施設はいろいろな「工夫・仕掛け」をされています。
工夫、仕掛けというと「経営理念を覚えさせる」というケースがあります。よく見かけるのは「クレドを作成して職員に携帯させる」「毎朝の朝礼で唱和する」「きちんと覚えているか確認テストをする」などの取り組みです。「浸透させるために記憶させるという方法論は間違っていないように思えます。しかし、確認テストも記憶させる手段としては悪くないでしょうが、一言一句正確に覚えさえすれば、経営理念は浸透するのでしょうか。浸透とは「水などが、しみとおること」「思想・風潮・雰囲気などが次第に広い範囲にいきわたること」です。したがって経営理念の浸透とは「法人に従事する全職員へ、理念の意味が理解され、日々の行動に落とし込まれていくこと」ですから、唱和や暗記テストによって単に暗記するだけでは、浸透に至らないことは明らかです。
浸透するまでには3つのステップが必要と考えています。それは「認知」(知っている)→「共感」(経営理念に基づく行動が行われ始めている)→「共有」(経営理念が当たり前の行動になっている)の3ステップです。
「経営理念が浸透しない法人の共通課題」
調査の結果、経営理念が浸透しない法人には次のような共通の課題があることがわかりました。①経営理念の策定時に職員がかかわっていないことが多く、理念策定の背景や意図が共有されていない②経営理念の表現が抽象的過ぎて理解しにくい。そのため、自分は何をすべきかわからない③経営理念浸透に向けた取り組みの本来の目的が見失われ、取り組みが形骸化している。
一つ目は、設立年数が長い法人や急成長した法人に特に多くみられる課題です。経営者の交代や職員の入退職によって経営理念を深く理解している人材が少なくなり、理念の背景や意図が伝わらず浸透しないのです。また後者では急激な人員増で経営理念を深く理解している人材の比率が急激に減り、浸透が人員増のスピードに追い付かない状態の陥るためです。

二つ目の課題は、経営理念は法人の目的や存在意義そのものを表すために、表現が抽象的になりがちです。そして抽象的であればあるほど、受け手側の解釈に幅が出るためブレが生じやすくなります。

三つ目の「形骸化」については、浸透の取り組みを行っていても、その取り組み自体が目的になるなどして、経営理念が形骸化している組織が少なくありません。形骸化している法人の典型例としては、経営理念が日々の意思決定や行動と一致していないことです。例えば、経営理念が意味するものが、経営幹部の意思決定や職員の行動規範(業務マニュアルや人事評価制度)に反映されていないケースです。これは決して珍しいケースではありません。

以上三つの共通課題を抱えた組織は・職場では、職員は経営理念の本質を体得することが出来ず、いつまでたっても理念がお飾りのままになってしますのです。
それでは、これらの問題を解決し、経営理念を浸透させるためにはどうすればよいのでしょうか。

次回には、その具体策を紹介させていただきます。お楽しみに。

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