コラム
厚生労働省は医師や看護師、薬剤師などが職種を超えて仕事を分担する「タスクシェア」や、医師の仕事の一部を看護師らに任せる「タスクシフト」の推進に乗り出す。医療の仕事は法律で担い手が決まり、例えば看護師は原則、医療行為はできない。少子高齢化に伴う人手不足を前に、一部の仕事を分担して医療の効率を高める。医療の改革に向けた転機となる。
医師や看護師、薬剤師らの仕事は、医師法などそれぞれの職務を定める法律で細かく決められている。医師になるには国家試験に合格する必要があり、看護師の資格では医師のような治療行為はできない。
こうした役割分担は医療の質を保つための仕組みだが、患者のニーズに合わないとの指摘も多い。例えば患者の近くに薬剤師がいても、点滴の交換には看護師を呼ばなければならない。高齢者が増える中で医療は人手不足が深刻になり、仕事を分担しなければ対処できない恐れがある。
ただ、医師や看護師の垣根を崩すことには慎重意見もある。厳しいルールは医療の質の担保につながっている。日本医師会は医師がタスクシェアをする場合、あくまで医師の管理下で進めるべきだと主張している。
厚労省は近くまとめる2022年版の厚生労働白書に、社会保障を支えるための人手確保に向け、医師や薬剤師を含む医療分野のタスクシェアなどの改革が必要であると明記する。
白書では40年に必要な医療・福祉の就業者数は1070万人との想定を示す。これに対し医師などの担い手は974万人にとどまり、96万人が不足すると推計した。
千葉市の人口に匹敵するほどの人手不足に対処するには、医師や看護師が仕事を分担するタスクシェアや、一部の仕事を他の職種に任せるタスクシフトが欠かせない。
ポイントの一つが医師の負担を減らすことだ。白書では看護師や薬剤師などが医師の負担を軽減する計画を策定し、医師からの業務移管を進める案を示す。医師や歯科医師から、別の医療系の職種へ仕事を移す案も打ち出す。
医師は勤務時間が不安定で、長時間労働になりやすい。過去の白書では医師の働き方改革を進める方策にタスクシェアを位置づけたことがある。今回は人材確保の観点で必要であるとする。仕事の見直しで医師が医師にしかできない業務に集中できれば、医療の質が上がるとの指摘もある。
政府は6月に閣議決定した規制改革実施計画に、医療分野のタスクシェアを検討する方針を明記した。政府全体の方針を受け、厚労省は具体策の検討に着手する。
世界では新型コロナウイルス禍で医療分野のタスクシフトが加速した。米国やカナダではコロナのワクチン接種を薬剤師が薬局で実施した。英国やスウェーデンなどでは一定の要件を満たせば、看護師が自らの判断で薬を処方できる。
白書は中央省庁が行政の施策を周知するために作成する。医療分野の効率を高め質も向上するには、古い仕組みは柔軟に見直す必要がある。
日本経済新聞2022/7/27 より
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《 ワークサポートケアマネ養成集合研修の様子 7月23日 》
親などの介護と仕事の両立を支援するスペシャリスト「ワークサポートケアマネジャー」。今年度から認定制度を開始した日本介護支援専門員協会によると、先月に実施された第1回の養成研修を41人がクリアした。この41人が初代のワークサポートケアマネとして活動していく。
いわゆる「介護離職」を未然に防ぐための十分な知識、スキルを有するケアマネ。それがワークサポートケアマネだ。
親などの介護に直面し、本当は続けていきたい仕事を辞めざるを得なくなる人は今なお非常に多く、それも働き盛りの世代に集中している。この社会課題の解決は急務。既に様々な主体がコミットしているが、介護分野の高い専門性を持つケアマネの力に期待する声も少なからずあがっている。
協会は今回、こうした状況を踏まえて認定制度の立ち上げに踏み切った。ケアマネの活躍の場を更に広げ、社会的な評価の向上などにつなげていく狙いもある。厚生労働省や専門家などの協力も得て策定した養成研修カリキュラムは、労働関係法令も含めて必要なノウハウを幅広く学べる内容となっている。
協会のワークサポートケアマネに関する特別委員会の三浦浩史委員長は第1回の養成研修を振り返り、「当事者の立場に立って適切にアドバイスできる人材になって頂ければ。介護支援専門員が新たな職域を掴むことにもなります。ワークサポートケアマネにはこの新たな職域で是非とも翼を広げて頂きたい」と語った。
あわせて全国のケアマネに対し、「介護を支援してきた皆さんのこれまでの経験は、介護離職の問題で厳しい立場に置かれている会社員などにとってはとても貴重な財産です。もっと多くの皆さんにワークサポートケアマネになって頂きたい。そして介護と仕事の両立に悩む会社員なども助けてあげて下さい」と呼びかけた。
今後、協会は今年度中に第2回の養成研修を開催する計画。詳細は決まり次第アナウンスする。来年度以降もワークサポートケアマネの養成を続けていく方針だ。(介護ニュースより)
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《 7月29日の諮問会議(画像出典:首相官邸HP)》
政府は7月29日の経済財政諮問会議で、来年度予算案の編成に向けた基本的な考え方(令和5年度の予算の全体像)をまとめた。
人への投資や子ども・子育て支援、DX、GXといった重要政策にリソースを思い切って振り向ける構えをみせる一方で、厳しい財政も念頭に「歳出改革を徹底強化する」との考えも打ち出した。
焦点の社会保障をめぐっては、次の2024年度の介護保険制度改正にも言及。「利用者負担の見直しを含む持続性の確保」に取り組むと明記した。「給付と負担のバランスの確保」「現役世代の負担上昇の抑制」などを図る意向も示した。
岸田文雄首相は会合で、「歳出を大胆に重点化し、メリハリの効いた予算としていく」と述べた。
「利用者負担の見直し」は、2割負担・3割負担の対象者を更に拡大すること、居宅介護支援にも利用者負担を導入することなどが念頭にあるとみられる。政府はこれから審議会で議論を深め、今年の年末までに具体策を固める方針。(介護ニュースより)
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このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。
総務部長
当社で1日5 時間、週5 日の勤務をしているアルバイトがいます。10 月の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大で社会保険に加入することになる予定ですが、実は他社でも働いていることがわかりました。
社労士 掛け持ちでアルバイトをされているということですね。ちなみに雇用保険は御社で加入されていますか?
総務部長 はい、加入要件を満たしているので当社で加入しています。話を聞いたところ、他社では、1日5 時間、週4 日働いているそうです。アルバイトですので、他社で働くこと(副業・兼業)は禁止していないのですが、社会保険はどのようになるか気になっています。
社労士 雇用保険は、複数で勤務し、加入要件を満たしていたとしても原則として1カ所のみで加入します(※65 才以上のマルチジョブホルダーを除く)。ちなみに加入する事業所は主たる賃金を受ける事業所です。
総務部長 労働時間は当社の方が長く、給与も高いと思います。そのため、雇用保険は当社のみで加入すればよいということですね。となると、社会保険も当社のみで加入となるのでしょうか?
社労士 社会保険は異なり、複数の事業所で加入要件を満たした場合、そのすべての事業所で加入することになります。他社でも週20 時間勤務しているということですので、その他の加入要件を満たせば加入することになります。
総務部長 そうなのですか!?となると、健康保険被保険者証(以下、「健康保険証」という)は2 枚持つことになるのですか?
社労士 いいえ。複数の事業所で加入した場合には、主となる事業所を従業員が選択し、届出することになり、この主となる事業所に係る健康保険証のみが交付されます。ただ、複数の事業所に加入しているため、社会保険料は按分となり、各々の事業所から支払われる給与から控除されることになります。
総務部長 なるほど、かなり複雑ですね。
社労士 負担する社会保険料額の決定方法はさらに複雑です。まずは、10 月以降、他社でも社会保険の加入要件を満たしているかの確認から始める必要がありそうですね。
総務部長 そうですね。まずは、確認してみることにします。
ONE POINT
①複数の事業所で雇用保険の加入要件を満たしても、原則として1 つの事業所のみで被保険者となる(※65 才以上のマルチジョブホルダーを除く)。
②複数の事業所で社会保険の加入要件を満たした場合には、加入要件を満たしたすべての事業所で被保険者となる。
③健康保険証は従業員が選択した1 つの事業所のみで発行される。
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副業・兼業(以下、「副業」という)への関心が、労使ともに高まっています。実際に、従業員から副業することができるか、会社に問合せがあったり、一部の企業では解禁の方針を決めて動き出しているところもあります。以下では、副業に関する国や企業の動きについてみておきます。
1. 国としての副業の考え方
以前は、他社で就業し副業することについて、特に正社員については、企業の情報漏洩につながったり、自社の業務に専念できなくなったりすること等の理由から禁止や消極的な許可制としている企業が多くを占めていました。また、厚生労働省が公開しているモデル就業規則でも、従業員の遵守事項として「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」と規定されていました。
これが現在では、働き方改革実行計画における副業解禁の方針を踏まえ、考え方が見直されています。そして、現在公開されているモデル就業規則では、以下のように原則副業を認め、例外的に制限可能というスタンスの規定に変更されています。
(副業・兼業)
第68 条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。
①労務提供上の支障がある場合
②企業秘密が漏洩する場合
③会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④競業により、企業の利益を害する場合
2. 企業としての対応
企業側の副業のメリット・デメリットを考えてみると、メリットとして、従業員のスキルアップ、優秀な人材の流出防止、副業によって得た情報や人脈による事業機会の拡大等が挙げられます。その一方で、デメリットとして、過重労働や企業の情報漏洩、細かな労務管理、優秀な人材が本業を離れて副業先へ転職する可能性等が挙げられます。
副業に関しては、企業の考え方も従業員の考え方も過渡期であるものの、国の大きな方向性は副業をさらに促進していくことになっています。
今後は、従業員からの副業の問合せについて、禁止される理由や許可されない理由の説明が求められることも出てくるでしょう。企業として、どのように考えるかを改めて検討する時期が来ているのかもしれません。
国は、2022 年7 月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定し、企業に対し、副業の容認の有無、そして条件付きで認めている場合については設けている条件の内容を、自社のホームページ等で公表することが望ましいとしました。これは、就職先を選ぶ人からみて、副業に対する企業の考え方を分かりやすくすることを狙いとしています。
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2022 年10 月1日より改正育児・介護休業法の第二段階目が施行され、産後パパ育休の制度がスタートします。産後パパ育休は、現状の育児休業とは異なり、より取得しやすい仕組みが整えられています。ここでは産後パパ育休の申出期限について確認をしておきます。
1. 産後パパ育休の特徴
産後パパ育休は、原則2 週間前までに申し出ることで、子どもの出生後8 週間以内に4 週間を上限として取得できる育児休業です。
2 回に分割して取得できるほか、労使協定を締結することで、会社と従業員が事前に合意した範囲で産後パパ育休中に働くことができるという特徴があります。
2. 産後パパ育休の申出期限
産後パパ育休の申出期限は原則2 週間前ですが、次の2 点を労使協定で定めることにより、現在の育児休業と同様に1ヶ月前までに申し出ることを要件とすることができます。
・雇用環境の整備等の措置の内容( 法律上の義務である雇用環境整備措置を上回る措置)
・産後パパ育休の申出期限(2 週間を超え、1ヶ月以内に限る)
この2 点のうち「雇用環境の整備等の措置」は、次の①~③のすべてとなります。自社の状況を踏まえた具体的な措置の内容を定める必要があります。
①以下のうち、2 つ以上の措置を講ずること
・育休等※に関する研修の実施
・育休等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
・自社の労働者の育休等の取得事例の収集・提供
・自社の労働者へ育休等の制度と育児休業の取得促進に関する方針の周知
・育児休業の申出をした労働者の育休等の取得が円滑に行われるようにするための業務の配置または人員の配置に係る必要な措置
②育休等の取得に関する定量的な目標を設定し、育休等の取得促進に関する方針を周知すること
③育休等の申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取組みを行うこと
※育休等とは、育児休業および産後パパ育休を指す。
①は1 つ以上の措置を講ずることがすでに義務となっており、ここでは①について2 つ以上の措置を講じることが求められています。また③についても意向確認のための働きかけを行うことが義務となっていますが、ここでは意向を把握するための取組みまで求められていることが特徴です。
産後パパ育休を取得する際に、業務の引継ぎ等が必要な場合には、2 週間前の申出では引継ぎ期間が不足することも想像されます。労使協定の締結を検討するとともに、そもそも急な取得の申出にならないように、従業員の育児休業等に係る意向を事前に確認しておくことなどが重要です。
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ここでは今年 3 月に発表された調査結果※から、2020 年末時点(以下、2020 年)の主たる診療科別の診療所の医師数と平均年齢をみていきます。
医師数と平均年齢は右肩上がり
上記調査結果によると、2020 年における全国の診療所の医師数は 107,226 人で、40
年近く増加を続けています。男女の割合は男性が 8 割、女性が 2 割程度です。
平均年齢は 2010 年時点で 58.3 歳でしたが、2020 年には 60.2 歳と、1982 年以降で
最も高くなっています。年代別の医師数は60 代が最も多く 31,835 人、50 代が 28,495
人、70 歳以上が 23,322 人で続いています。
内科が全体の 4 割弱に
内科が39,564 人で全体の 36.9%を占めました。内科以外では、眼科、整形外科、小児科などが全体の 5%を超えています。医師の男女割合では、皮膚科と婦人科、
臨床検査科で女性が 40%を超えました。最高齢は外科の 67.2 歳
医師の平均年齢では、外科の 67.2 歳が最も高くなりました。病理診断科も 65 歳
を超えています。反対に平均年齢が若いのは、臨床研修医の 33.2 歳を除くと美容外
科の 43.4 歳で、救急科の 44.9 歳が続いています。
診療所医師の平均年齢は 60 歳を超え、高齢化が進んでいることがうかがえる結
果となりました。
※厚生労働省「令和 2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
2022 年 3 月に発表された医師、歯科医師、薬剤師を対象にした調査です。詳細は次の URL のページから確認いただけます。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/20/index.html
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新型コロナウイルス感染症も現在は少し状況が落ち着いていますが、更なる変異種の報道もあり、再び感染拡大となる可能性も否定できません。そんな中、厚生労働省から、令和4年7月以降の小学校休業等対応助成金・支援金の内容等が公表されました。
この内容は、あくまでも政府としての方針であり、施行にあたっては厚生労働省令の改正等が必要となることから、現時点では予定として捉えるようにしてください。
1.「小学校休業等対応助成金・支援金」について
(1)小学校休業等対応助成金(労働者を雇用する事業主の方向け)
休暇中に支払った賃金相当額×10/10を助成する点に変更はありません。また日額上限についても、画像の通り、変更はありません。
(2)小学校休業等対応支援金(委託を受けて個人で仕事をする方向け)
就業できなかった日について、1日あたり定額で支給する点に変更はありません。また、支給額についても、画の通り、変更はありません。
2.「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口」の設置期間の延長
小学校休業対応助成金に関する相談に対応するため、「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口」を、令和4年9月30日までの期間、全国の都道府県労働局に設置していますが、この設置期間も延長される予定です。
3.新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の仕組みによる申請
労働局からの本助成金の活用の働きかけに事業主が応じない場合に、令和4年6月末までに取得した休暇と同様に、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の仕組みにより、労働者が個人で申請できることとする対応も、令和4年9月末までに取得した休暇について行われる予定です。
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厚生労働省は、令和4年5月12日に、新型コロナの罹患後症状の労災補償の取扱いに関する通達を発出しました。これは、「新型コロナウイルス感染症診療の手引き 別冊罹患後症状のマネジメント(第1版)」が取りまとめられたことを踏まえ、新型コロナの罹患後症状の労災補償における取扱いを明確にしましたもので、具体的な取扱いとしては以下のとおりとされています。
(1)療養補償給付
医師により療養が必要と認められる以下の場合については、本感染症の罹患後症状として、療養補償給付の対象となる。
- 診療の手引きに記載されている症状に対する療養(感染後ある程度期間を経過してから出現した症状も含む)
- 上記1の症状以外で本感染症により新たに発症した傷病(精神障害も含む)に対する療養
- 本感染症の合併症と認められる傷病に対する療養
(2)休業補償給付
罹患後症状により、休業の必要性が医師により認められる場合は、休業補償給付の対象となる。なお、症状の程度は変動し、数か月以上続く症状や症状消失後に再度出現することもあり、職場復帰の時期や就労時間等の調整が必要となる場合もあることに留意すること。
(3)障害補償給付
診療の手引きによれば、本感染症の罹患後症状はいまだ不明な点が多いものの、時間の経過とともに一般的には改善が見込まれることから、リハビリテーションを含め、対症療法や経過観察での療養が必要な場合には、上記のとおり療養補償給付等の対象となるが、十分な治療を行ってもなお症状の改善の見込みがなく、症状固定と判断され後遺障害が残存する場合は、療養補償給付等は終了し、障害補償給付の対象となる。
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A, 当該社員は定年迎えるということで、定年後再雇用をしないということが考えられますが、それが出来るかどうかが問題になるところです。
平成25年4月1日より改正高年齢者等の雇用の安定等の関する法律が施行されています。この改正では、定年に達した人を引き続き雇用する「雇用継続制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みが廃止されました。ただ、従来このような仕組みを設けていた場合には、経過措置として、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢(令和4年3月31日までであれば63歳)を超える年齢の者について、なお雇用継続制度の対象者を限定する基準を定めることは可能となります。
逆にいうと、60歳定年で雇用継続制度をとっている場合、本人が希望するときは、解雇事由や退職事由にあたる事由がないかぎり、少なくとも上記支給開始までは再雇用する必要があります。再雇用基準を適用できるのは上記支給開始年齢を超えて再雇用するかどうかを判断するときになります。
従って、御質問にある問題社員が再雇用を希望した場合、その時に再雇用基準を満たしていなかったとしても、少なくとも上記支給開始年齢までは再雇用をする必要があります。
2,解雇することはできるのか
仮に再雇用拒否が出来ない場合でも客観的合理性と社会的相当性の要件を満たしていれば解雇することはできます。ご質問のケースでは、当該社員は仕事も出来ず協調性もないとのことですので、解雇できるかどうかのポイントとしては、その問題事由を裏付ける客観的事実、問題性の程度、そして何度も注意指導しても改善しなかったという「改善可能性」が無いことや、他の部署に配転して解雇を回避する余地がないか、などが焦点になります。
実際のケースでは、十分な注意指導が出来ておらず、直ちに解雇するのは難しいというケースが見受けられます。そのような場合には、一端、再雇用したうえで、当該社員の問題状況や注意指導の履歴を記録化するようにして、契約更新の段階で雇止めを検討するという方法も考えられます。ただ、社内で長年キャリアを積んだ年長社員に対して、どれだけの指導教育ができるかについては、現実的にかなり難しい部分もあるのではないでしょうか。
3,労働条件を変更することはできるか
定年後再雇用とする場合、雇用契約を締結しなおすことになりますので、その際に労働条件(給与、職種、業務内容)を改定し提示することは可能です。ただ、どのような変更をしてもいいかというと、厚労省Q&Aによれば、継続雇用高齢者の安定した雇用を確保するという趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金など雇用に関するルールの範囲内で事業主と労働者の間で決めることが出来るとされています。そして最終的に合意できなかった場合でも、事業主が合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば結果的に継続雇用に至らなかったとしても、法律違反になることはないとしています。
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報酬基準 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
4,事業主側として現実的な対処方法としては。
ご質問のケースのような場合、当該社員との雇用継続が難しいということであれば、実務対応としては、当該社員にこれまでの勤務をねぎらいつつも、会社の評価を伝えて、まずは退職勧奨を試みるのが現実的な対応であると考えます。また、場合によっては割り増し退職金を支払う等の方法も考えられるところです。
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