医療

医療事業所様向け情報(経営)12月号③

医療機関でみられる人事労務Q&A
『職業紹介事業者を利用する際の留意点』

Q:

当院では、人手不足解消のため継続的に求人を行っていますが、思うように応募者がこないため、民間の職業紹介事業者(以下「事業者」という)の利用を検討しています。このような事業者を利用するのは初めてなので、選ぶ時や利用する際の留意点を教えてください。

A:

職業安定法では、事業者に対する情報提供の義務付けや、適切な業務運営のためのルールの強化が規定されており、医療機関が適切な事業者を選ぶための環境整備が進められています。医院の求める人材像や能力をはっきりさせた上で、その利用目的にあった適切な事業者であるかどうか、事前にしっかり確認するようにしましょう。

詳細解説:

1.選択する際のポイント

事業者を選択する際には、事業者の基本的な事項を確認することが必要です。厚生労働省の運営する「人材サービス総合サイト」では、事業者の以下のような事項を確認することができます。

  • 職業紹介事業の許可を得ているかどうか
  • 職業紹介事業者の紹介により就職した人の数(2016 年度に就職した人数から掲載)
  • 紹介により就職した無期雇用の人の数、およびそのうち6 ヶ月以内に離職した人の数(2018 年度に就職した人数から掲載)
  • 手数料に関する事項
  • 返戻金制度(短期間で離職した場合に手数料を返金する制度)の有無や内容
  • その他、得意とする分野など

なお、返戻金制度を設けていること、お祝い金を支給していないことを宣言した事業者は、人材サービス総合サイト内で「医療・介護・保育分野の適合紹介宣言事業者」として表示されます。

2.利用する際の留意点

医院が事業者に対して、求める人材の要件や労働条件などを具体的に伝えることが、採用後のトラブルやミスマッチを防ぐために有効です。事業者からの聞き取りや求職者からの質問には、わかりやすく丁寧に回答するようにしましょう。

最終的に採用・不採用は医院が決定します。事業者から紹介された人だから大丈夫だという受け身の姿勢ではなく、事前の面接などで、求める能力や技術を身につけているか、職場に順応できそうか、などを確認することが重要です。

なお、実際に事業者と契約する際には、事前に説明を受けた内容と相違はないか、手数料や返戻金などの金銭面は、医院が想定する内容に合っているか等、契約内容について入念に確認した上で締結することが求められます。

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(経営)12月号②

医療機関の年末賞与1 人平均支給額の推移

コロナ禍で年末賞与の支給時期を迎えます。ここでは年末賞与支給の参考資料として、厚生労働省の調査結果※から病院と一般診療所における、直近5 年間(2015~2019 年)の年末賞与支給労働者1 人平均支給額(以下、1 人平均支給額)などを、事業所規模別にご紹介します。

病院の支給労働者数割合は100%に

上記調査結果から、病院と一般診療所の別に1 人平均支給額の推移をまとめると、下表のとおりです。

病院の2019 年の結果をみると、1 人平均支給額は5~29 人が約13 万円で、2017 年に比べて減少しています。30~99 人は約36 万円で直近5 年間では最も高くなりました。きまって支給する給与に対する支給割合は、30~99 人は1.14 ヶ月と2 年連続で1 ヶ月分を超えました。支給労働者数割合と支給事業所数割合は両規模とも100%です。

一般診療所は20 万円台を維持

一般診療所の2019 年の結果をみると、1 人平均支給額は5~29 人が前年より減少したものの、20 万円台が続いています。30~99 人は約24 万円で2 年連続の増加です。きまって支給する給与に対する支給割合は、30~99 人が1 ヶ月分に満たない状況が続いています。支給労働者数割合と支給事業所数割合は、30~99人は90%台になりました。

新型コロナウイルスの影響で経営が悪化している医療機関もあることでしょう。今年の年末賞与はどのようになるでしょうか。

※厚生労働省「毎月勤労統計調査」
日本標準産業分類に基づく16 大産業に属する事業所で常用労働者を雇用するもののうち、常時5 人以上を雇用する事業所を対象にした調査です。きまって支給する給与に対する支給割合とは、賞与を支給した事業所ごとに算出した「きまって支給する給与」に対する「賞与」の割合(支給月数)の1 事業所当たりの平均です。支給労働者数割合は、常用労働者総数に対する賞与を支給した事業所の全常用労働者数(当該事業所で賞与の支給を受けていない労働者も含む)の割合です。支給事業所数割合とは、事業所総数に対する賞与を支給した事業所数の割合です。詳細は次のURL のページから確認いただけます。

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450071&bunya_l=03&tstat=000001011791&cycle=7&tclass1=000001015912

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(経営)12月号①

令和 3 年度予算の概算要求 医療編

今回は、厚生労働省が行った来年度予算の概算要求から、医療に関する内容に注目します。基本的な枠組みは前年度と同額で、別枠にて新型コロナウイルス感染症対応の緊要経費を要望しているところに、今回の特徴があります。

テーマは「ウィズコロナ時代への対応」

2 度にわたる令和2 年度の補正予算では、「まずは国民のいのちや生活を守ることが先決」として、検査体制・医療提供体制の整備や緊急包括支援交付金の支給等に重点が置かれてきました。令和3 年度はこれらに加え、緊急時やパンデミック発生時でも医療提供が安定的に維持できるよう、施設・設備の整備等にも力点が置かれます。「医療体制の確保」の側面では、次の項目が緊要経費として要望されています。

緊急包括支援交付金による体制整備推進

受入病床の確保、応援医師等の派遣、軽症者の療養体制の確保等の取組の包括的支援。

陰圧化等の施設整備

新型コロナウイルス感染症患者受入医療機関等における陰圧化や個室化等の施設整備。

G-MIS の機能拡充

緊急事態における必要物資の配布や病床の円滑確保のため、医療機関等の各種情報を効率的・横断的に把握する調査プラットフォームとして「医療機関等情報支援システム(G-MIS)を改修。

マスク等の医療用物資の備蓄・配布

サージカルマスク、ガウン、フェイスシールド等の医療用物資を感染症拡大局面でも円滑供給するための、国による継続した確保・備蓄の実施。

医薬品の安定確保のための支援

パンデミック発生時や国外製造、輸出停止等による支障が生ずることがないよう、海外依存度の高い必要不可欠な医薬品を国内で製造するための製造所の新設、設備更新や備蓄の積み増し等を支援。

なお、概算要求策定の段階でこの冬以降の感染状況を予測することは難しく、今回の概算要求では、具体的な金額や施策の詳細には触れられていません。今後、予算編成作業が行われる中で、その時々の最新情報から追加・調整が行われていくため、大幅に変更されることも予想されます。引き続きご注目ください。

厚生労働省「令和3 年度厚生労働省所管予算概算要求関係」
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/21syokan/

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)12月号④

新型コロナの影響に伴う休業による社会保険料の随時改定特例の対象期間延長

標準報酬月額は毎年1回定時決定で見直すほか、固定的賃金に変動があったとき等に、変動があった月から3ヶ月間に支払われた給与に基づき、4ヶ月目に見直します(随時改定)。この随時改定について、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)に係る特例が設けられ、その対象となる期間が延長されました。

1. 4月から7月の特例改定

新型コロナの影響で発生した2020年4月から7月の休業により給与額が大幅に下がったときは、下がった月の1ヶ月分の給与により、翌月からの標準報酬月額を見直すことができる特例が設けられています。特例は、以下のすべてを満たす従業員について、会社が届け出たときに対象となります。

  1. 新型コロナの影響による2020年4月から7月の休業(時間単位の休業を含む)により給与が著しく低下した月(急減月)が生じている
  2. 急減月に支払われた給与の総額(1ヶ月分)に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて、2等級以上下がっている
  3. 特例改定について、従業員が書面により同意している

2. 8月から12月の特例改定

1.の特例に加え、2020年8月から12月の休業により給与額が大幅に下がった場合についても特例が設けられました。この8月から12月の特例には2種類があります。

<急減月の翌月の改定>

  1. 新型コロナの影響による2020年8月から12月の休業により給与が著しく下がった月(急減月)が生じている
  2. 急減月に支払われた給与の総額(1ヶ月分)に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がっている
  3. 特例改定について、従業員が書面により同意している

<定時決定に係る特例>

  1. 新型コロナの影響による休業により2020年4月または5月に給与が著しく下がり、5月または6月に1.の特例を受けた
  2. 8月に支払われた給与の総額(1ヶ月分)が、9月の定時決定で決定された標準報酬月額に比べて2等級以上下がっている
  3. 特例改定について、従業員が書面により同意している

なお、8月から12月の特例改定は、2021年3月1日までに管轄の年金事務所へ届け出ることになっています。

1.および2.のいずれの特例も、休業が回復した月(※)に受けた給与の総額を基にした標準報酬月額が、特例改定により決定した標準報酬月額と比較して2等級以上上がった場合には、標準報酬月額を改定することになっています。1.と2.においてこの回復時の取扱いが異なりますので、詳細は日本年金機構のホームページをご覧いただくか、当事務所までお問合せください。
※休業状況に何らか改善が見られ、給与の支払いの基礎となった日が17日以上となった月

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)12月号③

パートタイマーへの賞与支給~最高裁判決の考え方~

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。

総務部長

少し前に、新聞やテレビで「契約社員やアルバイトには賞与や退職金を払わなくてよい」というような報道がされていました。当社では、同一労働同一賃金への対応としてパートさんにも賞与を支給する方向で検討していましたが、支給しなくてもよいのでしょうか?

社労士

2020年10月に言い渡された5つの最高裁判決の中で、大阪医科薬科大学事件とメトロコマース事件についてご覧になったようですね。大阪医科薬科大学事件は主にアルバイトに対する賞与の支払いについて、メトロコマース事件は主に契約社員の退職金について争われた事件です。

総務部長

確か、それら以外にも郵便局に関する事件がありましたね。

社労士

はい、東京、大阪および佐賀の3つの日本郵便事件がありました。こちらは、正社員と契約社員の休暇や手当に関する訴訟でした。大阪医科薬科大学事件では、先ほどもお話したようにアルバイトの賞与が主な争点になり、原告であるアルバイトに賞与を支払わないことは「不合理と認められるものに当たらない」と判断されました。

総務部長

ポイントは、正社員とアルバイトの仕事が異なっていたことなのでしょうか。

社労士

おっしゃるとおり、判決文ではアルバイトの職務内容が「相当に軽易であることがうかがわれる」と表現されており、正社員とは職務内容が異なっていました。ただ、それだけではなく、雇用期間に上限があり、実際に3年2ヶ月の雇用期間であったこと、その間に私傷病で1年強、休職していたことも影響しているかと思います。

総務部長

なるほど、単純に「アルバイトだから」と一括りにしてはいけないように感じますね。

社労士

そうですね。また、アルバイトから契約社員、契約社員から正社員への登用制度が設けられており、実際に登用制度により契約社員や正社員になった人も多数います。つまり、登用されることで賞与が支払われる契約社員や正社員になることができる機会もあったのです。

総務部長

雇用期間もそれほど長くない状況で、正社員とは異なる職務内容であった。さらには努力次第で非正規雇用から、最終的に正規雇用にも移ることができるような職場環境であったということですね。

社労士

まさにそのとおりです。当然、最高裁判決ですので人事労務管理の実務に大きく影響しますが、判決の詳細の内容を確認せずに、結果だけで「アルバイト=賞与の支給不要」と考えてしまうと、拙速な判断となりかねないのでご注意ください。

【ワンポイントアドバイス】

  1.  同一労働同一賃金に関する5つの最高裁判決が言い渡された。
  2.  最高裁判決は人事労務管理に影響を及ぼすが、結果のみでなく個別事案として背景や経緯も見て参考とする必要がある

(次号へ続く)

医療事業所様向け情報(労務)12月号②

2021年3月に引き上げられる障害者の法定雇用率と障害者雇用納付金制度

障害者の雇用は、一般労働者と同じ水準で常用労働者となり得る機会を設けるために、常用労働者の数に対する雇用割合(法定雇用率)が設定されています。そして国や地方公共団体、民間企業はこの法定雇用率に基づき、障害者の雇用義務が課せられます。今回は、2021年3月に引き上げられる法定雇用率と障害者雇用納付金制度の対象企業をとり上げます。

1. 2021年3月からの法定雇用率

法定雇用率は少なくとも5年ごとに見直すことになっており、直近では2018年4月に2.2%に引き上げられています。その際、2021年4月1日までには2.3%へ引き上げられることが決定しており、今回その引上げが2021年3月に行われることになりました。これに伴い、1人以上の障害者を雇用すべき企業の範囲が、労働者数43.5人以上に広がります。

2.障害者雇用納付金制度

障害者の雇用に伴う企業の経済的負担の調整を図り、障害者の雇用水準を引き上げるため、国が法定雇用率の未達成企業から納付金を徴収し、法定雇用率を達成した企業に対して調整金や報奨金を支給する障害者雇用納付金制度が設けられています。

この納付金の制度は、企業による自主申告・納付を基本としており、申告義務のある企業は、常用労働者数が100人超となる企業です。常用労働者としてカウントされるのは次の1.~3.いずれかに該当する労働者です。

  1. 雇用期間の定めがない労働者

  2. 雇用期間の定めがある労働者であって、その雇用が更新され雇入れから1年を超えて引続き雇用されることが見込まれる労働者

  3. 過去1年を超える期間について引続き雇用されている労働者

週の所定労働時間が30時間以上の場合は常用労働者1人としてカウントする一方で、①から③のいずれかに該当し、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の場合には、常用労働者数0.5人としてカウントします。

3. 申告対象の判断基準

労働者数は、原則として毎月1日、または毎月の賃金締切日において確認することになっています。労働者の入退社があるため、1年を通じると労働者数が月ごとに前後することがあり、労働者数100人前後の企業では納付金制度の申告が必要か迷いますが、労働者数が100人を超える月が一年度(4月から翌年3月)に5ヶ月以上あれば、申告の対象となります。

なお、年度途中の事業廃止等の場合には、5ヶ月以上でなくても申告が必要となることがあります。

障害者雇用が進まない企業に対しては、ハローワークにより雇用率達成指導が行われ、それでも雇用状況が改善されない場合には、最終的に厚生労働省のホームページにおいて企業名が公表されることになっています。障害者の雇用には時間を要するケースも多いため、早めに採用活動を行うといった対応が望まれます。

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)12月号①

新型コロナによる雇用への影響と解雇・雇止めの違い

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大が雇用に影響を与えています。厚生労働省ではその影響をタイムリーに把握し、ホームページで情報を発信していますが、今回はその状況と勘違いしやすい解雇と雇止めの違いを確認します。

1.解雇等見込み労働者数

解雇等見込み労働者数は2020年11月6日時点の累計で70,242人となっています。5月以降、8月を除くと毎月1万人を超える人数で推移しており、10月は7,506人でした。

この累積数を上位10業種でみてみると下表のようになります。

この情報は都道府県労働局等で把握できた範囲のものであり、必ずしも網羅性のあるものではありません。また、過去に把握した情報の一部には既に再就職をした人も含まれている可能性があります。そのため実際の雇用環境はさらに悪化していることが考えられ、今後の新型コロナ感染拡大の状況によってはこの人数が増えることが懸念されます。

2.解雇・雇止めの違い

解雇等見込み労働者とは、解雇や雇止め等の予定がある労働者(一部すでに解雇や雇止めされたものも含む)を指しています。解雇と雇止めは混同されやすいですが、解雇や雇止めを行うときの手続きや、雇用保険の基本手当の扱いにおいて異なることもあり、区別して理解しておく必要があります。

①解雇
会社が一方的に労働契約を解消することをいいます。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利の濫用として無効となります(労働契約法16条)。また、有期労働契約は、やむを得ない事由がなければ契約期間中に解雇することができないとされており(同17条)、無期労働契約を締結している場合の解雇よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。

②雇止め
雇止めとは有期労働契約で、その契約を更新せず、労働契約を終了することをいいます。有期労働契約であっても、無期労働契約と実質的に異ならない状態になっている場合や、反復更新の実態、契約締結時の経緯等から雇用継続への合理的期待が認められる場合には、雇止めが認められないことがあります。

有期労働契約の更新時のトラブルを防止するために、労働契約の締結時に書面で更新の基準を示す必要があります。そして、更新に関して「更新する場合がありうる」とした場合には、「契約期間満了時の業務量」「労働者の勤務成績、態度」のように、その判断の基準を具体的に示すことも必要です。

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(経営)11月号③

医療機関でみられる人事労務Q&A
『子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得』

Q:

子の看護休暇・介護休暇について、来年(2021 年)1 月1 日からは、全ての職員が時間単位で取得が可能になると聞きました。その改正の内容と留意点を教えてください。

A:

これまで子の看護休暇・介護休暇は、半日単位での取得が可能でしたが、育児や介護を行う職員が、より柔軟に取得することができるよう育児・介護休業法施行規則が改正され、2021 年1 月1 日から全ての職員が時間単位で取得できるようになります。これにあわせて就業規則などの変更が必要です。

詳細解説:

1.子の看護休暇・介護休暇に関する法改正

そもそも子の看護休暇は、小学校就学までの子を養育する職員、介護休暇は、2 週間以上常時介護を必要とする対象家族の世話をする職員が、年次有給休暇とは別に、1 年間につき5 日、対象者が2 人以上の場合は10 日を限度として取得できる休暇です。これらの休暇に対して賃金を支払う必要はありません。

これまでは1 日単位での取得の他、半日単位での取得も可能でしたが、2021 年1 月1 日から時間単位で取得することが可能になります。「時間」については、1 時間の整数倍の時間をいい、分単位での取得を認める必要はありません。

なお、就業時間の途中から取得し、就業時間の途中に再び戻る、いわゆる「中抜け」による時間単位での取得を認める必要はありませんが、状況により法令を上回る「中抜け」ありの休暇取得を認めてもよいでしょう。

2.必要な手続きと留意点

改正にあわせて、就業規則など子の看護休暇・介護休暇が規定されている部分について、時間単位で取得することができるという変更が必要になります。なお、業務の性質や実施体制に照らし、時間単位で休暇取得することが困難な業務に従事する職員については、労使協定を締結することで除外することができますが、その業務の範囲については、労使で十分に話し合った上で決定します。

また、時間単位での取得となると、これまで以上に取得日数や時間数の管理が煩雑になることが予想されます。勤怠システムが時間単位での取得の運用に対応しているのかなど、管理方法を事前に確認しておく必要があるでしょう。

子の世話や介護などは、1 日や半日よりも短い時間で用件が終わることもあり、複数回に分けて取得できるほうが使いやすいというケースもあります。今回の子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得という改正を通して、育児や介護と仕事の両立支援について改めて考え、職員がより働きやすく長く勤務できる環境を整備することが求められます。

(来月に続く)

医療事業所様向け情報(経営)11月号②

都道府県別の通院者率(2019 年)

高齢化の進展によって、医療機関を受診する人が増える傾向にあります。ここでは今年7 月に発表された厚生労働省の調査結果※などから、都道府県別の通院者率をみていきます。

全国の通院者率は高まる傾向に

上記調査結果などから、2016 年と2019 年の通院者率をまとめると右表のとおりです。

2019 年の全国の通院者率(人口千人に対する通院者数)は、男性が388.1 で2016 年に比べて4.2%増加しました。女性は418.8 で3.0%の増加です。なお、男女とも2016 年も2013 年より増加しています。

ちなみに、通院者率が最も高い傷病は男女ともに高血圧症でした。

北日本で高い通院者率

都道府県別の通院者率について、男性の通院者率が最も高いのは、秋田県の435.3 です。岩手県と北海道も430 を超えています。最も低いのは沖縄県の330.6 で、秋田県とは100以上の差があります。

増減率では山口県が13.5%の増加となった一方、大分県は5.1%減少しました。

女性の通院者率が最も高いのは、岩手県の486.9 です。島根県と秋田県、山形県も460 を超えました。最も低いのは沖縄県の347.7 です。増減率では北海道が9.5%増加しましたが、三重県は6.4%減少しています。

沖縄県は男女ともに通院者率が最も低いという結果になりました。

都道府県別でも通院者率が高くなっているところが多くなっていますが、貴院の所在地の状況はいかがでしょうか。

※厚生労働省「2019 年 国民生活基礎調査の概況」
一定の条件のもと抽出した全国の世帯および世帯員に対する調査です。ここで紹介したデータは3 年ごとに調査が行われるものです。詳細は次のURL のページから確認いただけます。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(経営)11月号①

医療機関における緊急事態への備え

地域住民の生命をつなぐ重要任務を担う医療機関は、その医療活動を安定して継続させることも責務の一つです。一方でこの国は、自然災害のリスクとも常に背中合わせです。今回は緊急事態への備えについて考えます。

計画策定済みは、病院でも3 割を下回る

厚生労働省の資料※より、病院における災害対応の備えの状況を下グラフにまとめました。台風や地震による長期の停電・断水、新型コロナウイルス感染症の院内感染等により、病院が診療を継続できない事態が生じたことを鑑みると、診療所も可能な部分から積極的に備えていくことが期待されます。

災害等緊急事態発生時に損害を最小限にとどめ、事業継続・早期復旧するための計画を「BCP(Business Continuity Plan)」といいます。その策定率は、病院でも28.3%と低い割合です。現在、中小企業庁や厚生労働省が策定の支援をしています。診療所でも検討しましょう。

(次号に続く)

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