保育

保育事業所様向け情報(労務)5月号①

5月から変更された雇用調整助成金の特例措置等

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大により、雇用調整助成金に特例措置が設けられ、これまで多くの申請が行われてきました。現状でも一部地域で緊急事態宣言が発出されるなど、未だ新型コロナの感染拡大が収束する見通しは立ちませんが、5月からは雇用調整助成金の原則的な措置の縮減が行われる一方、感染が拡大している地域、特に業況が厳しい企業等についての特例が設けられました。

1.助成額と助成率の見直し

新型コロナの影響に伴う雇用調整助成金の特例は、2021年5月および6月について、①全国の原則的な措置、②地域特例(まん延防止等重点措置対象地域の知事による基本的対処方針に沿った要請を受けて、一定の営業時間の短縮等に協力する飲食店等の事業所)の措置、③業況特例(生産指標が前年または前々年の同期と比べ、最近3ヶ月の月平均値で30%以上減少した全国の事業所)の措置、の3つに分かれます。②③については2021年4月までの特例が、2021年5月および6月にも適用されることになりますが、①については、雇用調整助成金等の1人1日あたりの助成額の上限が13,500円に、事業主が解雇等を行わず、雇用を維持した場合の中小企業の助成率が9/10に引き下げられました(右表参照)。

なお、緊急事態宣言が発令された地域では、厚生労働省令の改正等が行われ、特例措置が設けられる予定です。

2.対象者と支給上限日数の見直し

1.のほか、支給対象者と支給上限日数について、以下の見直しが行われました。

  • 継続して雇用された期間が6ヶ月未満の雇用保険被保険者についても助成の対象者とすること等について、雇用調整助成金の対象期間の初日が2020年1月24日から2021年6月30日までの間にある場合に変更する。
  • 新型コロナの影響による休業等について、雇用調整助成金に係る支給上限日数に加えて支給を受けることができること等とする期間を、2020年4月1日から2021年6月30日までに変更する。

2021年3月25日の厚生労働省の発表によると、7月以降については雇用情勢が大きく悪化しない限り、1.の措置についても、それぞれさらに縮減される予定です。新型コロナの感染状況とともに、雇用調整助成金の情報についても確認することが求められます。(2021年5月6日現在の情報に基づき作成しています。)

(次号に続く)

【介護・保育】人財定着ブログⅣ6月号~ 「福祉事業所のキャリアパスと㉔」

【介護・保育】人財定着ブログ5月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは㉓」

の続きです。

 面談のポイント

①「評価点」「改善点」の両方をしっかりと部下に伝える

「ここがダメだった、あれも悪かった」などと、悪かった部分の指摘ばかりをすると、

部下・後輩は「失点を少なくすること」を意識し過ぎ、積極性を失います。人事評価の最大のねらいは「部下育成」です。評価においては、「しっかりとほめる」ことを忘れずに、必ず「評価できる点」と「改善点」の両方をしっかりと被評価者にフィードバックしてください。この明確なフィードバックが評価の透明性および納得性につながります。

②改善点の指摘には具体的なアドバイスを添える

評価においてはほめることが重要ですが、やはり改善点に触れておくことが必要です。

改善点を指摘する際には、自身の経験などを交えながら具体的なアドバイスを心がけます。部下の立場に立った適切なアドバイスが評価の信頼性の確保につながります。

 

【アドバイス例】

×: 業務を進めるうえで独断的なところがある。直したほうがいいよ。

○:業務については、○○さんがスペシャリストだから、

○○さんと相談しながら進めたほうが良いと思うよ。私も若いころはすべて自分で

背負い込んでいたが、他の人の力を借りるのも大切な能力だって最近は思うよ。

(4) 下位評価を伝える際のポイント

①面談の流れ

・事前に問題だと感じることを徹底的に調べ、課題点を洗い出しておく(同時に解決策も考えておく)

・相手の気持ちに配慮しながら下位評価を伝える

・事前に用意しておいた課題点を本人と確認しながら、解決策を考える

・一緒に課題を解決しよう、という姿勢を示す

・期待をつげ、フォローする

②面談時のポイント

・何が問題なのかを明確にする

例えば仕事の手順が問題になっているということを伝えたい場合、必ず、「問題は仕事の手順だけ」であることをはっきりと伝えます。特に大切なのは、全てを否定しているわけではないということを明確にすることが必要です。

・自分の考えや意見を理解してもらうために、一度全てを受け入れる

自分の考えや意見を理解してもらうためには、一度相手の意見を受け入れた上で、

双方の問題点を整理していくようにします。

どちらかの意見に間違ったところがあっても、すべての意見を伝え合ったあとに話し合い、

修正していけば良いのです。

 

以上が、評価の結果を伝えるフィードバック面談の留意点となります。

 

2、重要なコミュニケーション手段としての面談

もちろん面談は評価結果を伝えるだけでなく、とても大切なコミュニケーションの手段です。介護職に携わるひとたちは、心に秘めた思いが強いがゆえに感情が先走ってしまい、その思いを言葉にして相手に伝えたり、自分の状態を認識して言葉にしたりするのが苦手な人が多いという特徴があります。そのためか、「うまく言葉にできないのですが・・・」ということをよく言います。また、ご利用者のためを思い、要求にこたえていくうちに際限がなくなり、自ら自己犠牲のモードに入っていき、結局はつらくなって辞めてしまう人もいるということをお伺いします。従って、上司はまずコミュニケーションをとりながら、かれらの気持ちや想いをよく聞くことが大切になります。そのような過程を経ずに、目標を押しつけてもそれは「やらされること」になってしまいストレスの温床になってしまうのではないでしょうか。したがって、まずはできるだけコミュニケーションの「場」を作ることが必要です。そもそも、日本人には求められないから主張しないという人が圧倒的に多いので、「ただコミュニケーションが大切」「部下とのコミュニケーションをとってください」といわれても「場」が無ければコミュニケーションをとることはなかなか難しいものです。ですから、上司やリーダー層の人たちは部下とのコミュニケーションの場をできるだけ多く、積極的に作っていくことが必要です。この「場」作りを、職場の「仕組み」にすることが出来れば

「場」づくりが業務の一つであるという認識が上司やリーダー層にできるようになり、

それによりコミュニケーションの「量」は飛躍的の増えることになります。

つまりここで大切なのは、コミュニケーションの時間は業務として作り出すものであって、「仕事に余裕があったら行う」ものではないという認識が必要であると考えています。

 

話を聞く「場」である面談を「定期的に」行う仕組みづくりを是非行っていただきたいと思います。そのような話をすると、現場管理者から言われるのは「人手不足でそんな時間的余裕がない」とか「上司と部下のシフトを調整するのが大変」もしくは「仕事でちゃんと声掛けでコミュニケーションをとっているからうちの職場は問題ない」といった言葉です。確かに慢性的な人手不足の中で現場を回していかなければならない現場管理者にとって、大きな負担であることはよくわかります。でも本当に部下とともに職場をよくしていきたいと思うなら、ぜひ「面談をやってみるには、どうすればいいのか」という発想で、施設長など経営陣の理解と協力を得ながら、実践のための知恵を絞っていただくことを、是非行っていただきたいと思います。

 

保育事業所様向け情報(労務)5月号④

新型コロナによる休業時の労働者支援の動き

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)については、様々な支援策が設けられているものの、企業が助成金の活用を行わないことにより、本来、労働者が享受できる支援が行き渡らない状況も発生しています。そこで、給付金等を企業を経由せず、直接労働者に給付する仕組みの構築が進んでいます。以下では、大企業のシフト労働者等に対する休業の支援と、小学校等が臨時休業になった際の支援について確認します。

1.大企業にも拡大される休業支援金・給付金

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(以下、「休業支援金」という)は、当初、新型コロナの影響により事業主が労働者を休業させたものの、休業手当が支払われない中小企業の労働者を対象に、労働者の直接申請により給付が行われるものでした。
この対象が大企業で雇用されるシフト労働者等にも拡大されており、労働契約上、労働日が明確でない人としてシフト制、日々雇用、登録型派遣の人についても支給されることになりました。

2.直接申請による小学校休業等対応助成金

小学校休業等対応助成金は、小学校等の臨時休業等に伴い、子どもの世話を行うため仕事を休まざるを得ない保護者に対して有給(賃金全額支給)の休暇を取得させた事業主が、休暇中に支払った賃金相当額を受給できる制度です。今回、この基本的な考え方は崩さずに、2020年2月27日から3月31日までの休みについては小学校休業等対応助成金を労働者が直接申請し、2020年4月1日から2021年3月31日までの休みについては、休業支援金の仕組みにより労働者が直接申請することにより給付する運用が開始されました。

支給対象は、以下を満たす必要があります。

  1. 助成金について労働局に労働者から相談があり、労働局から事業主に助成金活用・有給の休暇付与の働きかけを行ったものの、事業主がそれに応じなかった。
  2. 小学校等の臨時休業等のために仕事を休み、その休んだ日時について、通常通りの賃金等が支払われていない部分がある。
  3. 小学校休業等対応助成金(個人申請分)および休業支援金の申請にあたって、事業主記載欄の記載や証明書類の提供について、事業主の協力が得られる。
  4. 2020年4月1日から2021年3月31日までの期間の休業支援金の申請にあたり、その労働者を休業させたとする扱いに事業主が同意する。

都道府県労働局に「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口」が設けられ、労働者からの相談内容に応じて、企業への特別休暇制度導入・助成金の活用の働きかけ等を行うことになっています。労働者が相談した場合には、労働局から問い合わせが入るため、制度の概要を押さえておきましょう。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)5月号③

出向者の社会保険の取扱い

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:

今後、当社の従業員の能力開発を進めるために、取引先の企業に在籍出向をさせたいと考えています。詳細はこれから検討することになりますが、社会保険の取扱いについて教えてください。

社労士:

わかりました。まず雇用保険については、出向者は出向元企業と出向先企業の双方と雇用関係がありますが、両方で適用されるわけではありません。生計を維持するのに必要な主たる賃金を受けている企業の方で適用します。

総務部長:

いまのところ、本人には当社から賃金を支給し、出向先企業から当社へ賃金の負担金を支払ってもらう予定です。この場合には、雇用保険は当社のまま加入し続けることになりますね。

社労士:

そうですね。次に労災保険ですが、実際に出向者が労務提供を行う先で適用となるため、出向先企業で適用します。出向先で被保険者となる手続きは不要ですが、労災保険料は出向先の被保険者として算入することになるため、出向元で出向者の賃金を支払っている場合には、出向先企業に支払った賃金額を連絡し、出向先で出向者の賃金を含めて労災保険料を算出します。

総務部長:

労災事故は実際に働いている現場で起きるため、労務提供を行う出向先で加入するのですね。

社労士:

その通りです。最後に、健康保険・厚生年金保険は、出向元企業と出向先企業のうち、使用関係があり報酬を支払う企業(一方または双方)で適用を受けます。今回は、自社で賃金を支払う予定ですので、現行のままの適用になります。なお、出向元企業と出向先企業の両者で適用となる場合には、二以上事業所勤務届を提出することになりますので、ご注意ください。

総務部長:

ややこしい手続きになるのですね。

社労士:

賃金の支払い方等で取扱いが異なってくるため、出向規程で社会保険の取扱いを定め、具体的な出向の内容を出向先企業との出向契約書など書面で取り交わすべきでしょう。

総務部長:

なるほど。以前に、出向規程を作成していたと思いますので、中身を確認してみます。また不明点が出てきたら、相談します。

【ワンポイントアドバイス】

  1.  雇用保険、健康保険・厚生年金保険は、出向元企業・出向先企業の賃金の支払い状況によって適用が異なる。労災保険については、賃金の支払い状況に関わらず、出向者が労務提供を行う企業で適用となる。
  2.  出向における社会保険の取扱いを出向規程に定め、実際に出向を行う場合には、出向元企業と出向先企業との出向契約書の中で社会保険の取扱いを明確にする。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)5月号②

次世代法の一般事業主行動計画策定と指針改正

次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境を整備するために、国、地方公共団体、企業、国民が担う責務を明らかにすることを目的として次世代育成支援対策推進法(以下、「次世代法」という)が制定され、2005年4月1日に施行されました。当初は10年間の時限立法でしたが、法改正により2025年3月31日まで10年間延長されています。さらに、2021年2月には次世代法に基づく行動計画策定指針(以下、「指針」という)が改正され、2021年4月1日に適用となることから、ここでは次世代法の内容と改正された指針について確認します。

1.行動計画の策定

次世代法では、常時雇用労働者数101人以上の企業に対し一般事業主行動計画(以下、「行動計画」という)を策定し、一般への公表および従業員への周知を求めており、さらに行動計画を策定した旨を、都道府県労働局に届け出ることを義務としています(100人以下の企業は努力義務)。

行動計画の内容は各企業で検討し、決定することになりますが、従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むにあたって、「計画期間」、「目標」、「目標を達成するための対策の内容と実施時期」を盛り込むことになっています。

2.行動計画策定指針の改正

行動計画の策定においては、指針の「一般事業主行動計画の内容に関する事項」に掲載されている項目を参考にするとよいでしょう。

今回の改正により、「不妊治療を受ける労働者に配慮した措置の実施」として、以下の内容が盛り込まれました。

  1. 不妊治療のために利用することができる休暇制度(多目的休暇を含む)、半日単位・時間単位の年次有給休暇制度、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワーク等の導入や、その他の措置を講ずる。
  2. 1.の場合、以下の取組みを併せて行うことが望ましい。
    ・両立の推進に関する取組体制の整備
    ・従業員に対するニーズ調査と、その結果を踏まえた措置を講ずること
    ・企業の方針や休暇制度等の具体的措置について従業員への周知、社内の理解促進、相談対応の実施
  3. 休暇制度等の運用にあたって、不妊治療に係る個人情報の取扱いに十分留意することが必要。

厚生労働省では、働きながら不妊治療を受けられるように、不妊治療と仕事の両立を支援しています。不妊治療をしている多くの従業員が会社にその旨を伝えられていない現状もあるようです。まずはニーズの調査といった取組みから始めてもよいかもしれません。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)5月号①

今国会で審議が進められる男性育休取得促進等

厚生労働省が行った令和元年度雇用均等基本調査によると、男性の育児休業(以下、「育休」という)の取得者の割合は7.48%となり、平成30年度の6.16%と比較すると上昇はしているものの、その上昇幅はわずかに留まりました。少子高齢化を止めるためにも男性の育休取得促進は最重要の政策となっており、今国会では以下の法改正(主だったもの)が審議されています。

1.男性育休取得促進策

①出生時育休の創設

子どもの出生後8週間以内に、4週間まで取得することができる柔軟な育休の枠組みが創設される予定です(出生時育休)。出生時育休では、より休業を取得しやすいように、休業の申出期限を原則休業の2週間前までとし、2回に分割して取得することができるよう検討されています。

また、労使協定を締結している場合に、従業員と事業主の個別合意により、事前に調整した上で出生時育休中に就業できるようにすることも改正法案に含まれています。

②雇用環境整備と個別の周知・意向確認義務

妊娠・出産をした従業員や、配偶者が妊娠・出産をした従業員が申し出たときに、個別に育休等の制度の周知および育休の取得意向の確認のための措置を講ずることが、事業主に義務づけられる予定です。

③育休の分割取得

現行の育休は、一定の事由がない限り1子につき1回のみの取得です。これを分割して2回まで取得することができるようになる予定です。

④育休取得状況の公表義務付け

常時雇用労働者数が1,000人超の企業に対し、育休取得状況の公表が義務付けられる予定です。

⑤有期雇用労働者の取得要件の緩和

有期雇用労働者の育児休業および介護休業について「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という取得要件が廃止される予定です。ただし、労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することができるように検討されています。

2.社会保険関係の改正

1.の変更に伴い、雇用保険の育児休業給付に関しても必要な変更が行われ、また、出産日のタイミングによって育児休業給付の受給要件を満たさなくなるケースを解消するため、被保険者期間の計算の起算点に関する特例が設けられる予定です。

さらに、短期の育休の取得に対応するため、月内に2週間以上の育休を取得した場合には、その月の社会保険料が免除されるようになり、
賞与に係る社会保険料については1ヶ月を超える育休を取得している場合に限り、免除の対象とすることも検討されています。

4月13日現在、国会で審議が行われている状況ですが、成立後には就業規則(育児・介護休業規程等)の大幅な変更が必要になる内容であるため、事前に概要を確認しておきましょう。なお、改正法が成立すると2022年4月以降、複数回に分けて施行される予定です。
※2021年4月13日現在の情報に基づき作成しています。

(次号に続く)

【介護・保育】人財定着ブログ5月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは㉓」

【介護・保育】人財定着ブログⅣ4月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは㉒ 」

の続きです

今回は、評価を行った後にその結果を伝えるフィードバック面談を中心についてお伝えしたいと思います。すでにお伝えしていますが、人事評価の目的を「人材の育成」とするならば、面談というコミュニケーションの場を通じて、頑張った点を「認め」また、課題とすべき点に関して指導・アドバイスをしていくことは評価者の役割として非常に大切です。

 

1.人事評価のフィードバック面談

評価後の面談を、単に結果のフィードバックを行う場とするのではなく、部下のモチベーションアップのために、是非有効に活用してほしいと思います。具体的には、下記の点に留意をしながら面談を行うことで、部下が出来るだけ話しやすい環境を作ることはとても重要です。

(1) 面談時の環境のポイント

①面談場所の確保

面談の様子が他人から見えないように部屋を確保します。もし用意できない場合でもパーテーションなどで区切った環境を用意します。(特にマイナスの内容があった場合、聴いている姿は誰にも見られたくないし、その内容は聴かれたくないものです。)

②面談場所の広さ

理想的な面談場所は、適度な広さで清潔に整理整頓されている環境です。窓や植物があれば気持ちも和み、なお良い環境となります。

特に、狭過ぎるのは要注意です。お互いの目と目の距離が近く、窮屈で気が抜けず、言いたいことが言えなくなるか、または、反対に、熱が入り過ぎて、険悪になる可能性もあります。

③面談時の距離

物理的な距離により上司と部下の心の距離も決まるといわれ、意外と重要です。部下に近づきすぎずかつ遠すぎず、また、面談資料が見えない距離(1.2m~1.5m)が理想的です。

④座る位置

机の角を使って相手と90度になるように座ると、相手の表情が視野に入り、かつ緊張感を与えずに話しやすいと言われています。

・向かい合って座る場合

正面から目線が合い、部下の緊張度が高まります。場合によっては、部下が緊張しすぎて話

しづらくなることがあります。

・隣に座る場合

部下との距離が大変近くなり、親近感は増します。しかし場合によっては、なれなれしい印象を与え、かえって話しづらくなることがあります。

(2) 面談の進め方

①面談は1対1で行う

面談は真剣な場であり短時間に深い意味合いを伝え理解し、納得してもらわなくてはなりません。複数の面談は他人の視線をストレスに感じてしまい、話を集中して聴くことができません。話すときには、部下の目をみて真剣に話すことが基本です。

②開始時の注意点 ~ 開始時はけじめをつけて、礼儀正しく

面談は忙しい時間の中で受けてもらうという姿勢で臨み、部屋で部下を待ち、上司から椅子を勧めます。温かい姿勢で丁寧に応対することで、謙虚な気持ちになり上司と同じ姿勢が保たれることになります。上司は部下を迎え入れる姿勢が大切です。

③面談の流れ

起承転結のように、面談にも流れがあります。フィードバック面談は下記の流れをイメージしてください。

ステップ1: 何気ない会話からスタートして、ねぎらいの言葉、目標の確認から始めます。

ステップ2: 自己評価した内容を説明し感想を述べてもらいます。そして、下記に留意して目標達成度について部下自身の評価の説明してもらいます。

・達成できた目標について …… 成功要因を明確にする

・達成できなかった目標について …… 問題点を確認・把握する

・上司評価とちがう場合 …… 自己評価の理由を詳しく聞く

ステップ3: 評価内容を伝える

上司の評価を話す。もちろん誉めることはモチベーションアップの最短距離につながる

■ポイント                   

・ステップ2とステップ3の順序を逆にしないこと。最初から上司評価を伝えるのは、絶対にNGです。部下は自分の意見や感想を言いづらくなる為です。

・部下個人をよく理解すること

・ピント外れではない、部下が納得する誉め方をすること

・具体的な誉め方をすること

・心から誉めること

ステップ4: 良い点と改善点の双方を伝える

成功要因と今後の問題点を明確にし,次回への課題とする

ステップ5: 日頃の思い等を聴く。雑談的な時間をもつことも大切です。話を聞くときには「受容」と「共感」を忘れずに、日ごろの思いもしっかりと聞くことが大切です。

ステップ6: お礼を言って終了する。最初と同様に礼儀正しく終了する

 

保育事業所様向け情報(労務)4月号④

新型コロナの影響を受け創設・変更された助成金

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の影響により、従業員の雇用維持に向けて在籍型出向を活用する事業主や、新型コロナにより離職し、就職を希望している求職者を雇用する事業主への支援として、2021年2月5日に助成金の創設・変更がありました。

1.産業雇用安定助成

産業雇用安定助成金は、在籍型出向を行う出向元事業主と出向先事業主の双方に対して支給されるものです。助成金の内容は、対象労働者に係る以下の2種類の経費について、出向元事業主と出向先事業主とが共同事業主として支給申請を行い、その申請に基づきそれぞれの事業主に下表の額が支給されます。
出向運営経費とは、出向元事業主および出向先事業主が負担する賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費等、出向中に要する経費であり、出向初期経費とは、就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業主が出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向先事業主が出向者を受け入れるための機器や備品の整備等、出向の成立に要する措置に必要となるものを指します。

2.その他の助成金

①トライアル雇用助成金

新型コロナウイルス感染症対応(短時間)トライアルコースが創設され、これまで経験のない職業に就くことを希望している求職者を、無期雇用へ移行することを前提に、原則3ヶ月間試行雇用した場合に助成されます。

②キャリアアップ助成金

紹介予定派遣を通じた派遣労働者の正社員化に取り組む派遣先事業主について、2020年1月24日以降に新型コロナの影響により離職し、就労経験のない職業に就くことを希望する人を紹介予定派遣の後、派遣先の事業所に正社員として直接雇用した場合、本来、直接雇用前にその事業所に従事していた期間について6ヶ月以上の期間継続している必要がありましたが、2ヶ月以上6ヶ月未満でも支給対象となります。

③人材開発支援助成金

特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コースにおいて、「業種転換後に従事する職務」に関する訓練も助成対象になりました。

助成金には様々な要件が設けられています。まずは助成金制度の概要を把握し、活用できるものがあれば事前に詳細をご確認ください。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)4月号③

医師とオンラインで面談する際の注意点

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大の中、在宅勤務が増えたことを原因として、従業員のストレスが溜まりやすくなっていると感じています。

社労士:

そうですね。従業員同士のコミュニケーションの低下もあり、不安やストレスを感じる人も多いように思います。従業員数50人以上の事業場では、年1回ストレスチェックを実施することが義務付けられていますが、改めてストレスチェックの重要性が高まっているように思います。

総務部長:

確かにそうですね。ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定され、本人から申し出があった場合、医師の面談を行うことになりますが、在宅勤務などで医師と直接面談できない場合、オンラインで面談しても問題ないのでしょうか?

社労士:

問題ありませんが、従業員の様子を把握し、円滑にやりとりを行うことができる方法により行う必要があります。具体的には、オンラインで面談を行う場合の留意点が通達(※)で示され、面談に用いる情報通信機器については、以下のすべての要件を満たすことが求められています。

  1. 面接指導を行う医師と従業員とが相互に表情、顔色、声、しぐさ等を確認できるものであって、映像と音声の送受信が常時安定しかつ円滑であること。情報セキュリティ(外部への情
  2. 報漏洩の防止や外部からの不正アクセスの防止)が確保されること。
  3. 従業員が面接指導を受ける際の情報通信機器の操作が、複雑、難解なものでなく、容易に利用できること。

※通達「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」(令和2年11月19日基発1119第2号)

総務部長:

なるほど。面談ですから相談内容を伝えるだけでなく、医師が従業員の表情や顔色等を把握できるようにすることも重要なのですね。

社労士:

そのほか、衛生委員会等でオンラインでの面談の実施方法について調査審議を行い事前に従業員に周知することや、オンラインでの面談で医師が緊急に対応すべき徴候等を把握した場合に、近隣の医師と連携して対応する等の緊急時対応体制が整備されていることが留意点として挙げられています。

総務部長:

わかりました。実際にオンラインでの面談を導入する場合には、事前に様々な準備が必要になりますね。

【ワンポイントアドバイス】
1. 高ストレスの従業員に対する医師の面談は、オンラインで実施することができる。
2. オンラインで面談を行う際には、通達で示されている情報通信機器の要件を満たす必要がある。また、衛生委員会等でオンラインでの面談の実施方法について調査審議を行う等、事前に対応しておくべき事項がある。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)4月号②

2021年4月から義務化される中途採用比率の公表

日本的雇用の「三種の神器」の一つと言われた「終身雇用」はすでに崩壊しつつあり、年々、雇用の流動化が進んでいます。雇用の流動化が進むことで離職者が再チャレンジできる環境を整備することが必要という認識の下、2021年4月より、大企業において正規雇用労働者の中途採用比率の公表が義務化されます。

1.中途採用の現状

性別による差別は原則禁止されているものの、企業がどのような人材を採用するかは自由に決めることができます。中途採用は行わず、新卒採用のみとすることも問題はありません。実際、新卒採用を中心に行う大企業も多く、首相官邸で開催された全世代型社会保障検討会議の基礎資料を確認すると、新卒採用者の比率(2017年度)は下図の通り、従業員数が大きくなるにつれて高くなっています。

2.中途採用比率の公表

このような状況もあり2021年4月から常時雇用する労働者が301人以上の企業に対し、中途採用比率の公表が義務化されます。
公表は求職者が容易に閲覧できる形で、「直近の3事業年度の各年度について、採用した正規雇用労働者の中途採用比率」についておおむね1年に1回、公表した日を明らかにして、インターネットの利用やその他の方法で行います。
なお、常時雇用する労働者とは、雇用契約の形態を問わず①期間の定めなく雇用されている者、②過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者または雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者、のいずれかを満たす労働者を指します。

3.「しょくばらぼ」の活用

公表の方法である「インターネットの利用やその他の方法」とは、原則として自社のホームページの利用等を指しますが、厚生労働省がインターネット上に開設する職場情報
総合サイト「しょくばらぼ」も利用できます。義務化対象の企業は公表する数字の取りまとめとともに、公表方法も検討しておきましょう。

近年、雇用に関する情報の公開を義務化する流れは強まっており、2022年4月から女性活躍推進法に基づく情報公表の義務が、常時雇用する労働者数が101人以上の事業主まで拡大されます。この中途採用比率についても同様に企業規模が拡大となる流れも想定されるため、自社の状況をいまのうちから把握しておくのもよいでしょう。

(次号に続く)

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