中途採用は13倍 保育士から人気の保育園「一般企業で当たり前のことを」
保育士の人手不足が深刻な課題と言われているなか、東京・杉並区で6つの保育園を運営する社会福祉法人 風の森は、2022年の保育士の中途採用の倍率が13倍にもなったと言います。統括を務める野上美希さんに、“保育士が働きたくなる保育園づくり”について伺いました。(ヤフーニュースより)
保育士の心の余裕が保育に影響
東京・杉並区にある認可保育園「Picoナーサリ新高円寺」で働く保育士の村山真里奈さんは、前職の保育園で6年働いたあと、この園に転職しました。 「転職理由は、人間関係がいちばん大きいです。どこか余裕がなくて保育士同士のやりとりがうまくいかなくて。あとは業務の面でも負担が大きかったこともあります。保育士の仕事は好きだったので、環境を変えたら変わるかなと期待して転職しました」 短期大学を卒業後、新卒で入った前職の保育園では、40~50代の保育士が多い職場環境だったそうです。 「20代は私ひとりでした。ある先生の指示で動いていたら、別の先生から怒られるということも。でも女性が多い職場なので、保育士ってこういうものなのかなと思っていたんです。 それに、休憩が取れないのは当たり前で、お昼ごはんも子どもたちと一緒に食べて、午後のお昼寝中にいかに事務作業を終わらせるかという時間勝負でした。残業して書類を書いたり、制作物を作ったり。それでも終わらないので、家に持ち帰ることも多くありました。 月に一度、子どもの成長記録を書いているのですが、たとえばひとクラス20人分をひとりで書く時間なんて業務時間内にはありませんでした」 転職して3年が経つ村山さんですが、最初はその労働環境の違いに驚いたといいます。 「今は保育士の人数が多いので、いったん保育の場から出て、書類や制作に充てることもできるので、すべてを業務時間内に終わらせることができます。事務作業を持ち帰ってすることも、残業もなくなりました。 幅広い年齢の方がいて、歳が近い方とは感覚も近くて保育もとてもしやすいですし、上の方もしっかり全員を把握して現場を見てくれているのを感じます。悩み事も相談しやすい環境です。 心に余裕があると、ひとりひとりに時間をかけて関わって、子どもたちの気持ちに寄り添うことができるので、子どもや保護者の方との信頼関係も深まったように思います」
他業界からの目線で行う改革
保育の質を向上させるために“保育士の働きやすさ”がもっとも大切だと話すのは、園の運営を統括する野上美希さん。 「国の基準の2倍以上の保育士を配置しています。それによってワークシェアができますので、事務作業を保育以外の時間で行うことができます。 そのほかには、当たり前のことなんですが、休憩が60分取れる、残業がない、年間休日が125日、祝日も含めて完全週休2日制。実は、どれも特別なことをしているわけでなく、一般企業では普通なことをしているだけです。 でも保育業界での常識は違っていたので、それを覆していく必要がありました」 野上さんは、理系の大学を卒業後、シンクタンクに4年、大手人材企業で6年働いたあと、妊娠をきっかけに2009年から夫の実家の幼稚園運営などに携わることになりました。 待機児童問題が声高に叫ばれるなか、社会福祉法人を立ち上げて保育園の運営に着手したそうですが、最初は課題が山積していたと話します。 「開園1年目は、国の基準通りの保育士の人数配置でスタートしたんです。でもそれでは先生たちが残業をしないと業務が終わらない現状を見て、人数を増やしていきました」 保育園の開設には0歳児の子ども3人に対して保育士ひとり、3歳児では子ども20人に対して保育士ひとりなどといった国の基準が定められています。 「先生たちから、常に課題をヒアリングしました。保育業界では休憩が取れず、子どもたちの寝ている時間に事務作業をして、それでは終わらないので残業もするというのが風習になっていて。 国の基準は時代に合っていないというのが他の業界から来た人間として感じたことです。子どもたちの命を保証して成長を見守る仕事が、保育士のつらさや苦しみから生み出されるのは違うのではないかと思います。 保育業界では『当たり前だよね、なんとかがんばろう!』とされていることが多いのですが、働き方改革がどの業界でも行われる時代のなかで、改善が必要だと感じました」 その後、保育士の人数を国の基準の1.5倍に引き上げた結果、働き方は改善したそうですが、保育の質という面では、課題が残ったといいます。
「休憩を60分取ってしまうと、保育士が代わる代わるいなくなってしまうため、保育士同士が子どものことをしっかり話し合う時間までは取れませんでした。これは、担任の先生以外にもフリーの保育士をうまく配置することで解決しまして、現在は国の基準の2倍以上の保育士が働いています」 野上さんは、保育の現場での事務作業が多いことも業界の課題だと話します。 行政の監査に書類のまとめが必要なほか、子どもの成長や活動を月単位、週単位で記録し、子どもたちの個別の記録も毎日行うなど事務書類が多いそうです。 「午後のお昼寝中は、5分おきに呼吸状態をチェックし、うつ伏せになってしまった子は仰向けにして、それを記録しています。書類が山のようにあるのですが、何か事件や事故が起きると必要書類がどんどん増えていき、決して減ることはないです。 もちろん、何かあっては決してならないのですが、もう少し提出書類が減ると助かります」 事務作業の負担を減らすため、現場の保育士以外の職員の配置にも力を入れました。園長などが請け負う園も多いそうですが、エクセルの報告書などの作成は、在宅勤務も可能な事務スタッフを雇ったそうです。 「保育の世界は、福祉の心で成り立っていますので、業界として厳かで声高にいう雰囲気がないのもあります。でもそれでやっていくのは限界だということを、他業界からきた身として伝えていけたらと思っています」(ヤフーニュースより)
⇒
保育業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
社会保険労務士顧問業務 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
報酬基準 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)