保育

保育事業所様向け情報(労務)1月号①

就業規則を変更した際の届出に係る適切な手続き

改正育児・介護休業法が2022 年4 月より施行されることに伴い、今後、就業規則(育児・介護休業規程)を見直し、労働基準監督署へ届け出ることになるでしょう。そこで今回は、就業規則を変更した際の手続きに関するよくある質問をとり上げます。

1. 就業規則を変更した際の意見聴取

 従業員数10 名以上の事業所で、就業規則を変更した際には、パートタイマー等の非正規従業員を含む全従業員の過半数の代表者(以下、「過半数代表者」という)の意見を聴き、所轄の労働基準監督署へ届出を行う必要があります。
 過半数代表者には、あくまでも意見を聴くことが求められており、届出する就業規則の内容に同意をとる必要まではありません。書面(意見書)に「異議なし」や「〇〇の変更について改善を望みます」というように意見を書くことを求め、就業規則に添付して届け出ます。
 また、意見書に改正内容等について異議がある意見が書いてあったとしても届出においては問題なく、就業規則の変更の手続きにおいて、意見を聴くというプロセスが法令で定められています。
 なお、賃金を引き下げるといった従業員にとって不利益な労働条件の取扱いに変更する際は、従業員と会社の個別の合意等の適切な手続きが必要であり、その実務については社会保険労務士等の専門家にご相談いただくとよいでしょう。

2. パートタイム就業規則の意見聴取

 正社員とパートタイマーの就業規則を別に作成しており、パートタイム就業規則を変更し届出を行う際には、正社員の就業規則と同様に、過半数代表者の意見を聴くことになっています。過半数代表者はパートタイマーである必要はなく、また、パートタイマーの中から過半数代表者を選ぶ必要もありません。ただし、パートタイマーの過半数代表者の意見を聴くことが望ましいとされています。

3. 過半数代表者の選出

 過半数代表者は、以下のいずれにも該当する必要があります。
① 労働基準法第41 条第2 号に規定する監督または管理の地位にある者でないこと
② 就業規則の変更の際に、会社から意見を聴取される者を選出することを明らかにして実施する投票、挙手等の方法によって選出された者であること
 過半数代表者を選ぶ際の母数となる従業員数には、管理監督者やパートタイマー等の非正規従業員も含まれます。正社員の過半数ではないことに留意しましょう。

 

管理監督者が過半数代表者になっているなど、代表者の選出が適切に行われていないケースもあるようです。過半数代表者の選出が適正に行われておらず、変更した就業規則が無効であるといったトラブルにつながることも考えられます。適正な選出方法により過半数代表者を選出しましょう。

 

プラスの言葉だけで表現する

■プラスの言葉だけで表現する

「幸せか、不幸かは自分で決められる」


デイケアに行っている80代の母が、こんなことを言っていました。


「老人たちの話題は、ここが痛い、どこどこの具合が悪いって、

 病気の話ばかり。こっちまで気が滅入ってくるわ。

 でも、ひとりだけ、いつもおもしろいことを言うご婦人がいるの。

 この前、だれかが『膝が痛い』って言ったら、

 『あら、それは、まだ生きているってことね。

 お互い、生きててよかったね』だって。

 みんな、大笑いよ」


なるほど、そんな愉快な言い方があるんだと感心したのでした。

一見、マイナスの事象のなかにも、かならずプラスのことが隠れています。

マイナスとプラスは裏表で、どちらを見ようとするかで、

その意味は、まったく変わってくるのです。


たとえば、仕事が忙しかったとき、

「働きすぎて、今日もぐったり」というのと、

「今日は仕事がはかどってよかった」と言うのでは、

どちらが元気になれるでしょう?


職場に厳しい先輩がいるとき、

「あの人がいると、職場の空気がピリピリして緊張する」と言うのと、

「あの人がいるから、空気が引き締まる」と言うのでは、

どちらが、いい気分で過ごせるでしょう?

現実が変わらないなら、プラスの言葉を使うことで、

その現実に対する”意味づけ”を変えるのです。

すると、ものごとは、いい方向に進んでいくもの。

愚痴や不満ばかり言っていても、嫌な気持ちになって、

さらによくない方向に進んでいきます。

幸せか、不幸せかは、自分で決めることです。


あなたが毎日の生活をご機嫌なものにしたいと思うなら、

プラスの言葉だけを使うようにこころがけてください。

言葉を変えれば、人生は変わりますから。


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『上機嫌で生きる なぜかうまくいく人の幸せになるクセ』
有川真由美・著

Q 当法人では残業は、所属長による許可制としていますが、課長や主任により対応がまちまちでルールが形骸化しています。運用面でどのように改善していけば良いでしょうか。

A 労働時間管理は「時間外労働の管理」といっても過言ではありません。各部署の所属長が残業の必要性を判断し、適切時間を指示するなど、管理職の役割は重要です。職員、個々に勤務時間内に仕事を終える意識をいかにもたせるかが重要です。

一方、始業時刻=出勤時刻、終業時刻=退勤時刻 という認識で時間管理を行っている事業もいまだ多くあります。このような事業所には、労働時間の定義についてまずは指導教育する必要があります。つまり始業終業時刻と出退勤時刻は違うという認識をまずは持っていただくことです。労働時間に関する意味を理解することで、その時間管理意識を持って業務を遂行していくことは、今後、さらに重要なポイントになります。そのためには、まず指導いただきたいのは、時間外労働の「許可制」です。当然ながら業務は所定時間内に行うのが前提ですが、事情により残業になりそうな場合には、その理由と終業時刻を明記し、許可制とする必要があります。それにより、所定外労働割増をつける時間が明確になりますし、何より大切なことは各職員の時間管理意識を高めることができます。ただし、残業の許可制を規定に定めていても、許可を受けない残業のすべてが無効になるかというとかならずしもそうではありません。通常の業務をこなすうえで,所定時間内終わらないような業務量を要求したならば、残業時間に対して、黙示の承認があったということになり、残業時間に該当するという判断になりますので、適宜の指導が必要になります。

 

ただ、残業を所属長の許可制にしていても、申請された残業内容をよく理解せずに全部承認していたり、逆に、明らかに残業が必要な業務量にも関わらず許可をしなかったりと、所属長により対処の仕方はまちまちになりがちです。本当に必要な残業かどうか、どの程度の時間が必要かなどを判断して、適切な許可を与える必要があります。

 

残業許可制運用のポイント

  • 残業の理由を明確にさせる

 「何のために残業をするのか」「なぜ、その業務が残ってしまったのか」を確認します。例えば、許可申請の残業理由に「介護記録作成の為」とだけ記入させるのではなく、「なぜ

介護記録作成業務が残ってしまったのか」を記入させます。そうすることで、原因を本人と上司が確認しあうことで改善に繋げることができます。残業理由が本人の能力の問題であれば、個別指導や業務の標準化を進める必要があります。

  • 残業内容の緊急性・必要性を判断する

その業務が「要当日処理」か「翌日処理で可」なのかをメリハリをつけて確認します。

またその業務は、「あなたがやらなければならない業務」なのか「次の交代勤務者で対応できる業務」なのかを確認します。

  • 業務の上限時間(目安)を指示する

「その業務は30分で終えて」と目標時間を指示します。業務内容応じて適切な時間を指示することは必要です。但し、このことは「30分以上の残業は認めない」と上限設定をすることではありません。上限を超えて残業していても、事実上、黙認している状況であれば

それは「黙示の承認」に該当します。

 ・職員の健康状態にも配慮する

休憩はきちんととれたか、体調にお問題はないか、などを確認します。こうしたことは、日頃の部下とのコミュニケーションで行っておきたいところです。

Q,当法人では新卒採用・中途採用ともの計画的に行っていますが、せっかく採用しても  なかなか定着せず、早いと3か月未満で退職する人もいます。何とか定着をしていただくように取り組みを行っていますが、採用面接ではどのような点に気をつけたら良いでしょうか。

A 「採用での失敗は、育成でカバーすることは難しい」とも言われます。

どのような人を採用するか、これは言うまでもなく、事業運営の中で最も重要な事項といっても過言ではないでしょう。社員の定着のためには「定着するような人材を採用する」といった方が現実的かもしれません。しかし、実際には人手不足の際には、「応募してくれた方は、多少気になる点があってもほとんど採用する」という状況は、決してめずらしいことではありません。このようなことを繰り替えしていると「すぐに辞めるような人」を採用していることになりかねません。

それでは「辞めない人材」とはいったいどんな人材なのでしょうか。それは法人理念に共感できる職員を選ぶことです。理念に共感できるとは、法人として「大切にしたい価値観」の共有ができる方と言ってもいいかもしれません。

 現場が人手不足の状況なので、ついつい早く人を「補充」したいという考えから、候補者の過去の経験、職務のスキル、資格などを重視した基準で採用を決定する場合も多いと思います。ただ、結果として、このような情報は、意外とあてにならないという経験をされた経営者も多いのではないかと思います。そこで、重要なのは「その方の価値感が法人の価値観や考え方に合うかどうか」ということになるのですが、問題はそれをどのように見極めるか、ということになります。もちろん、価値観が垣間見れるような質問内容を、事前にしっかり準備しておく必要がありますし、その結果を面接官複数の目で見て、客観的な指標にまで落とし込んでいくことをお勧めしています。

 

一方、候補者もそれなりに準備をして面接に臨みますので、なかなかホンネの部分までは見極めるのは難しいものです。ある法人の理事長は、法人創設の経緯や経営理念をできる限りわかりやすく、そして何度も何度もしつこいぐらいに伝え(これが重要ということです)、それを聞いている表情や反応で、十分判断できるということをおっしゃいます。また、ある施設長は、事前に施設見学(かなり細部にわたる現場見学)を行っていただき、そこで感じた内容を、どれだけ自分の言葉で伝えられるかをみている、と言います。このような方法ですと、事前の準備ではなく、過去の経験が本人の言葉で出てくることが多く、その方の現在の感じ方や価値観が、よりリアルに伝わってくるといいます。

下記に面接のときの質問の留意点をお伝えいたしますのでご参考にしてください。

 

  • 具体的な内容を質問する

 漠然とした回答ではなく、具体的な回答を聞くことで本音を見出します。

 ・「なぜこの仕事を選んだのか、人の役に立つとはということは、どういうことなのか

  具体的に言ってください」

 ・「採用された場合、あなたの能力をどういった仕事に活かしたいですか。具体的にこたえてください」

  • 人間関係についてどう考えているか確認する。

 人間関係の関する質問は、入職後のトラブル回避にためにも非常に重要です。

 ・「入職後、法人とあなたの方向性や想いが異なる時、あなたはどのようにしますか?」

 ・「同僚との意見が食い違う場合、あなたは意見を通しますか、黙りますか、また通すとしたらどんな方法で?」

  • 求職者からの質問を引き出す

 面接試験で一通り質問が終わったら、必ず求職者に対して質問がないか確認します。面接が終わったという安心感から本音が見え隠れすることがあり、人間性を確認できることもあるようです。求職者が質問する内容は、採用された場合のことを想定していることが多いため、「どの部分に興味を示しているか=本当の志望動機」がわかることも多いように思います。

保育事業所様向け情報(労務)12月号④

12 月以降の雇用調整助成金の特例措置

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大により、雇用調整助成金に特例措置が設けられ、これまで特例措置の延長が繰り返し行われてきました。この特例措置が2022 年3月まで延長され、11月30 日までとなっている現在の助成内容も12 月末まで継続される予定であることが公表されました。

1. 延長される助成内容

 特例措置として設けられている内容のうち、11 月30 日までの助成率と上限額は下表のとおりです。

 助成内容は、① 全国の原則的な措置、②地域特例(緊急事態措置を実施すべき区域、まん延防止等重点措置を実施すべき区域で、知事による基本的対処方針に沿った要請を受けて、一定の営業時間の短縮等に協力する飲食店等の事業所)の措置、③ 業況特例( 生産指標が最近3 ヶ月の月平均で前年または前々年同期比30%以上減少の全国の事業所)の措置、の3 つに分かれています。
 2021 年12 月31 日までは、この助成率と上限額等の特例措置が延長される予定です。

2.2022 年1 月以降の助成内容

 2022 年1月以降も特例措置が継続となる予定ですが、その内容は、「経済財政運営と改革の基本方針2021(2021 年6 月18 日閣議決定)」に沿って、具体的な内容が検討された上で、11 月中に発表される予定です。現段階では12 月以降の内容も含め、政府方針が表明されたものであり、厚生労働省令の改正等が行われることで正式に決定されます。

3. 歩合給がある場合の 助成額の算定

 9 月1日以降の休業から、給与に歩合給制が含まれている従業員を休業等させた場合の助成額の算定方法が変更となりました。これは、助成額が実際に支払われた休業手当額に応じた額になるように行われた変更です。また、休業手当額は月ごとに変動する可能性があることから、このような変動をできるだけ助成額に反映するため、休業手当等の支払率が6 ヶ月経過ごとに見直しされます。
 歩合給制がある企業は多くないと思われますが、雇用調整助成金の制度はこのように変更になることがあるため、申請にあたっては最新情報や最新の申請様式を確認しましょう。

 

雇用調整助成金は、新型コロナ禍における雇用維持のため大幅な要件緩和、迅速な支給が行われてきた一方で、最近は不正受給の指摘による助成金の返還等にかかるメディア報道も増えて
きています。特例措置の延長の予定が発表されていますが、助成金の支給要件に沿った適正な申請が欠かせません。

※この情報は2021 年11 月10 日現在の情報に基づき作成しています。

 

保育事業所様向け情報(労務)12月号③

3 歳未満の子どもを養育するときの年金の特例と添付書類の省略

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。

 

総務部長
先日、男性の従業員が、育児参加として、子育てに携わる時間を確保するため、仕事の時間を制限すると、収入面で心配になると言っていました。公的な支援として何かあるのでしょうか。
社労士                                                                                                                                                                                                 生産性を上げることにより、勤務時間が短くなっても給与の絶対額が下がらないようにするということが理想ですが、なかなか難しいですよね。公的な支援としては、出産手当金や育児休業給付金といった給付が中心になりますが、産前産後休業期間中や、育児休業期間中には社会保険料の免除、育児(養育)期間中の将来の年金額に関する特例が設けられています。
総務部長                                                                                                                                              将来の年金額の特例もあるのですね。
社労士                                                                                                                                      将来受給する厚生年金は、被保険者であったときの標準報酬月額を基にして受給額が決まります。そのため、一般的には給与額が下がると年金の受給額も下がります。養育期間(子どもが3 歳になるまでの期間)で標準報酬月額が下がったときであっても、将来の年金額の計算では下がらないようにするものが「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」です。様式の名称から「養育特例」と呼ばれています。
総務部長                                                                                                                                               どのような制度ですか。
社労士                                                                                                                           厚生年金保険料は実際の給与額に基づく標準報酬月額から計算する一方で、将来の年金は養育前の標準報酬月額で計算するというものです。養育特例の申出には、養育する子どもが、従業員の3 歳未満の子どもであることの証明となる「戸籍謄(抄)本、または戸籍記載事項証明書(以下、「戸籍謄本等」という)」と、養育の前提である同居していることを確認する証明として「住民票の写し」の2 つの原本が必要になります。ただし、10 月から従業員の個人番号(マイナンバー)と子どものマイナンバーの両方を様式に記載することで、住民票の写しの原本は添付不要となりました。
総務部長                                                                                                                                             そうでしたか。でも、なぜ戸籍謄本等は添付を続ける必要があるのですか。
社労士                                                                                                                           住民票の情報はマイナンバーに紐づけられていますが、戸籍の情報は今のところ紐づけられていないので、マイナンバーを記載しても確認できないということなのでしょう。今後、紐づけられる可能性もあるので、情報を確認していくことになりますね。
総務部長                                                                                                                                                    ありがとうございます。従業員に周知するとともに、今後の情報をしっかり確認するようにします。

 

ONE POINT                                                                                               ① 3歳未満の子どもを養育する従業員は、申出をすることで養育期間前の標準報酬月額で計算した年金を受給できる特例が設けられている(養育特例)。
② 養育特例の申出に従業員とその子どものマイナンバーを記載することで、住民票の写しの原本の添付が不要となった。

 

保育事業所様向け情報(労務)12月号②

65 歳以上複数就業者の雇用保険マルチジョブホルダー制度

雇用保険では、主たる事業所で1 週間の所定労働時間が20 時間以上、かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たした場合に被保険者となります。兼業・副業が普及する中、複数の事業所で働く労働者が増加している状況に対応するため、2022 年1月から「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設され、まずは65 歳以上の労働者に対し適用されることになりました。

1.マルチジョブホルダー制度

 雇用保険マルチジョブホルダー制度は、1 つの事業所では雇用保険の適用要件は満たさないものの、2 つの事業所での勤務を合計して次の要件をすべて満たす場合に、特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
■適用要件
• 複数の事業所に雇用される65 歳以上の労働者であること
• 2 つの事業所(1 つの事業所における1 週間の所定労働時間が5 時間以上20 時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20 時間以上であること
• 2 つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
 なお、申出の日に被保険者資格を取得し、要件を満たさなくなった日に資格を喪失します。さらに、いったん被保険者となった後は、任意脱退はできません。

2. 取得手続き等の流れ

 通常の雇用保険資格の取得・喪失手続きは、事業主が行いますが、マルチジョブホルダー制度は、マルチ高年齢被保険者としての適用を希望する労働者本人が手続きを行います。
 事業主は、労働者本人から手続きに必要な雇用の事実や所定労働時間等の証明を求められたときに、その証明を行います。この証明に基づき、労働者本人が適用を受ける2 つの事業所の必要書類を揃えてハローワークに申し出ます。
 ハローワークでは申出の内容を確認し、取得手続きを行ったうえで、労働者本人および適用となった2 つ事業所に通知します。事業主はこの通知に基づき、給与から雇用保険料の控除をし、年度更新において雇用保険料を納付します。
 ちなみに、マルチ高年齢被保険者が失業した場合で一定の要件を満たしたときは、被保険者であった期間に応じ、基本手当日額の30 日分または50 日分の一時金として高年齢求職者給付金を受給することができます。

 

 マルチ高年齢被保険者は労働者の希望に基づき適用するためのものであり、また、現状では65 歳以上の労働者に限られているため、被保険者となる対象者は限定的であると思われます。
しかし、適用要件を満たした従業員が手続きを行うことで、ハローワークから会社に対して資格取得の通知が来るため、制度の概要は押さえておきましょう。

 

保育事業所様向け情報(労務)12月号①

2022 年4 月より中小企業で義務化となるパワハラ防止措置

職場におけるパワーハラスメント(以下、「パワハラ」という)の防止措置が2022 年4 月より、中小企業についても義務化されます。そこで、厚生労働省が職場におけるパワハラの実態を調査した結果と、実施すべき防止措置の内容をとり上げます。

1. パワハラの実態調査の内容

 2020 年10 月に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3 年間にパワハラを受けたことがあると回答した労働者は31. 4%でした。また、受けたパワハラの内容としては、以下のとおりです。
• 精神的な攻撃 49.4%
• 過大な要求 33.3%
• 個の侵害 24.0%
• 過小な要求 21.2%
• 人間関係からの切り離し 20.5%
• 身体的な攻撃 5.8%
• その他 3.9%
 男女別でみてみると、「過大な要求」の割合は男性の方が女性より高く、「人間関係からの切り離し」や「個の侵害」の割合は女性の方が男性より高くなっています。

2. 実施が義務付けられる 防止措置

 今回の法改正により、企業がパワハラを防止するために講ずべき措置として次の4 つが義務付けられています。
① 事業主の方針の明確化とその周知・啓発
 パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、パワハラの行為者には懲戒処分等の対象になることを就業規則等に定め、従業員に周知する。
② 相談に応じて適切に対応するために必要な体制の整備
 相談窓口を定め、従業員に周知し、相談窓口担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにする。
③ パワハラへの事後の迅速かつ適切な対応
 事実関係を迅速かつ正確に把握するとともに、事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置および行為者に対する措置を適正に行う。また、再発防止に向けた措置を講ずる。
④ 併せて講ずべき措置
 プライバシーを保護し、不利益な取扱いがされないこと等を定め、従業員に周知する。
 これらの防止措置は中小企業でもすでに努力義務になっていますが、2022 年4 月からは措置義務となります。措置を講じていないものがあれば早めに準備を進めましょう。

 

今回の法改正で、従業員の責務として、ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の従業員( 取引先等の他社の従業員や、求職者も含む) に対する言動に注意を払うことや、会社が講じる雇用管理上の措置に協力することが法律上明確化されました。今後、パワハラ防止研修を行うこと等により、パワハラの予防に向けた取組みが求められます。

 

【まとめ】全世代型社会保障と公的価格の新会議、初会合でどんな意見が出たのか

 

《 9日に開催された合同会議)》

9日、岸田文雄首相が新たに立ち上げた2つの会議が合同で初会合を開いた。「全世代型社会保障構築会議」と「公的価格評価検討委員会」だ。

この日は年内にまとめる"中間整理"などを念頭に、委員が順番にそれぞれの持論を語った。どんな意見が出たのか、介護職の賃上げ以外のテーマも含め発言のポイントをまとめた。

会議当日の資料はこちらから

全世代型社会保障構築会議、公的価格評価検討委員会の合同初会合の構成員発言要旨

○ 社会保障改革の目的は持続可能な形で将来に伝え残すこと。その中で、経済の支え手を増やす方向で社会保障を構築すべきだ。1つの手法が就労対策。厚生年金の適用拡大が重要となる。

○ 経済の支え手を増やすという観点では、女性や高齢者の就労促進が重要。そのために、保育や介護のサービス充実が求められている。働く人の労働条件を改善するような形。これまでの社会保障改革の議論で残されてきた課題に、この構築会議で取り組んで欲しい。

○ 年金については被用者保険の適用拡大が非常に重要。"勤労者皆保険"は1丁目1番地。

○ コロナ禍の教訓を踏まえ、地域医療構想の推進、かかりつけ医の役割、都道府県の役割を強化する形での医療制度改革が必要。

○ 今後の人口構造の変化を見据え、引き続き持続可能な社会保障の構築に向けた検討が必要。日本社会の不安の1位は、10年連続で社会保障による財政の悪化。「国民の不安解消」という観点と「成長と分配の好循環」という観点からの改革が重要。

○ 子どもたちが良質な保育と幼児教育を受けられるようにすることが重要。親自体もワークライフバランスが確保され、安心して働ける状態であることが大切。

○ 全てのエッセンシャルワーカーの処遇について検討が必要。

○ 人口減少社会は「人口収れん社会」。実験的な考え方も含めて検討することが大事。人口が減った後でも、効率的な経済の仕組みを作ることで社会の安定性が高まる。

○ 労働の自動化を進めていくことも大事。そうした観点からの規制緩和も検討してはどうか。ライフスタイルをいかに変えていくのか、というテーマもこの議論の基本にある。

○ 社会保障の改革は将来の働き方や生活に大きく影響する。働き方、ライフスタイルに中立的な制度を構築することが大事ではないか。

○ 社会保障改革を経済財政と一体的に考える必要がある。経済財政の課題が社会保障に大きく影響する。分配や格差の問題が放置されたままでは、社会保障の課題が大きくなってしまう。社会保障の改革を通じて解決される問題もある一方で、経済財政の課題の解決が社会保障の改革につながることもある。

○ 国民生活に直結する社会保障は政治的にも争点化しやすい。党派を超えた議論の枠組みも必要ではないか。

○ 社会保障の給付と負担の関係が議論されるが、年金や医療などそれぞれ個別に行われているのではないか。横串を差した大局的な議論をして欲しい。

○ 介護職の処遇改善は、「処遇改善加算」の取り組みの効果など、制度改正の結果もみていく必要がある。

○ 医療のIT化が遅れているという指摘もある。医療データの有効活用という視点も非常に重要。

○ 働きやすく、住みやすい地域作りには社会保障が大切。課題は財源があってもサービスの担い手がいないこと。困っていて支援が必要であっても、そこにアクセスする方法が分からない人がいること。情報をしっかり届けるための体制整備も必要ではないか。

○ 雇用形態の違いから格差が生じないようにすることに賛成したい。近頃の働き方をみると、雇用された労働によらずに収入を得られる可能性が増えてきている。そうした中で"勤労者皆保険"の実現は重要。雇用を軸としない制度も検討したらどうか。

○ 賃上げを行っても社会保険料の増加などで相殺されてしまう。可処分所得が伸びなければ消費に回らない。現役世代の保険料負担も重くなっている。

○ 負担能力がある高齢者に支えて頂き、現役世代の負担増を抑えたり、少子化対策を充実させたりする発想も必要。こうした全世代型社会保障の改革を、分配戦略の柱とすることも検討して欲しい。

○ 2024年は診療報酬、介護報酬の同時改定の時期。年金の財政再検証も予定されている。その時になって慌てるのではなく、今の段階からこの会議でしっかりと内容を検討していって欲しい。

○ 給付と負担の予見可能性を高めることで、将来に対する不安を軽減させられる。社会保障と財政の持続可能性を高めることが重要。

○ 納得感のある改革が必要。賃上げの議論もあるが、財源を負担する側にとって納得感のある制度にしていって欲しい。

○ 男性の育児休業やフリーランスの支援なども重要。子育て環境や共働き世帯への支援を強化することで労働力供給を増やすべき。就業を妨げている制度の見直しも検討してはどうか。

(介護ニュースより)

保育事業所様向け情報(労務)11月号④

充実するインターネットを通じたハローワークの求人サービス

ハローワークでは求人情報を無料で登録することができ、基本手当を受給するときに求職の登録を行った人等を中心に、全国の求職者に求人情報が提供されます。この求人情報は、求人者が希望することにより「ハローワークインターネットサービス」上でも公開されます。今回、このハローワークインターネットサービスの機能が強化されました。強化された内容を確認しましょう。

1.オンラインハローワーク紹介

 ハローワークで求人を募集する際、企業はオンライン上でハローワークのサービスを受けられる専用のページ「求人者マイページ」を開設することができます。
 この求人者マイページを通じて、ハローワークからオンラインで職業紹介を受けることができ、求職者とのやりとりも完結できるようになりました。また、応募者の情報を一元的にデータで管理できるため、個人情報の管理における利便性が高まりました。

2. 応募書類の管理や採否入力の効率化

 求職者がオンラインで応募した場合、求人者マイページ上で応募者の志望動機や応募書類等を確認することができます。求人者マイページには、求職者にメッセージを送る機能(メッセージ機能)があり、応募者と面接日時等の調整ができます。また、これまで求職者のメールアドレスを個別に確認し行っていたやり取りを求人者マイページ上で運用できます。なお、求職者やハローワークへの選考結果の通知や管理もできます。

3.オンライン自主応募

 ハローワークでの職業紹介は、求職者がハローワークを通じて(ハローワークの職員を介して)行うものでした。この仕組みについて、求人情報を確認した求職者からの応募を直接受けることができるようになりました(オンライン自主応募)。
 この自主応募はハローワークに求職登録をしている求職者に加え、ハローワークインターネットサービスのみに登録している求職者も利用できます。より広くの求職者からの応募が期待されます。
 ただし、このオンライン自主応募は、ハローワークによる職業紹介に該当しません。そのため、求職者を採用したときに受給できるいくつかの助成金について、ハローワーク等の職業紹介を要件とする助成金は要件を満たすことができず、受給対象外となります。助成金の活用を念頭においた求人を行う場合には、留意しましょう。

 

ハローワークでの求人は無料で行うことができる点が企業にとって求人活動を続ける中での大きなメリットです。民間企業による多くのサービス提供もされていますが、オンラインサービスが強化され、利便性が高まったハローワークでの求人を検討してもよいかもしれません。

 

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