保育

保育事業所様向け情報(労務)4月号④

新型コロナの影響を受け創設・変更された助成金

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の影響により、従業員の雇用維持に向けて在籍型出向を活用する事業主や、新型コロナにより離職し、就職を希望している求職者を雇用する事業主への支援として、2021年2月5日に助成金の創設・変更がありました。

1.産業雇用安定助成

産業雇用安定助成金は、在籍型出向を行う出向元事業主と出向先事業主の双方に対して支給されるものです。助成金の内容は、対象労働者に係る以下の2種類の経費について、出向元事業主と出向先事業主とが共同事業主として支給申請を行い、その申請に基づきそれぞれの事業主に下表の額が支給されます。
出向運営経費とは、出向元事業主および出向先事業主が負担する賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費等、出向中に要する経費であり、出向初期経費とは、就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業主が出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向先事業主が出向者を受け入れるための機器や備品の整備等、出向の成立に要する措置に必要となるものを指します。

2.その他の助成金

①トライアル雇用助成金

新型コロナウイルス感染症対応(短時間)トライアルコースが創設され、これまで経験のない職業に就くことを希望している求職者を、無期雇用へ移行することを前提に、原則3ヶ月間試行雇用した場合に助成されます。

②キャリアアップ助成金

紹介予定派遣を通じた派遣労働者の正社員化に取り組む派遣先事業主について、2020年1月24日以降に新型コロナの影響により離職し、就労経験のない職業に就くことを希望する人を紹介予定派遣の後、派遣先の事業所に正社員として直接雇用した場合、本来、直接雇用前にその事業所に従事していた期間について6ヶ月以上の期間継続している必要がありましたが、2ヶ月以上6ヶ月未満でも支給対象となります。

③人材開発支援助成金

特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コースにおいて、「業種転換後に従事する職務」に関する訓練も助成対象になりました。

助成金には様々な要件が設けられています。まずは助成金制度の概要を把握し、活用できるものがあれば事前に詳細をご確認ください。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)4月号③

医師とオンラインで面談する際の注意点

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大の中、在宅勤務が増えたことを原因として、従業員のストレスが溜まりやすくなっていると感じています。

社労士:

そうですね。従業員同士のコミュニケーションの低下もあり、不安やストレスを感じる人も多いように思います。従業員数50人以上の事業場では、年1回ストレスチェックを実施することが義務付けられていますが、改めてストレスチェックの重要性が高まっているように思います。

総務部長:

確かにそうですね。ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定され、本人から申し出があった場合、医師の面談を行うことになりますが、在宅勤務などで医師と直接面談できない場合、オンラインで面談しても問題ないのでしょうか?

社労士:

問題ありませんが、従業員の様子を把握し、円滑にやりとりを行うことができる方法により行う必要があります。具体的には、オンラインで面談を行う場合の留意点が通達(※)で示され、面談に用いる情報通信機器については、以下のすべての要件を満たすことが求められています。

  1. 面接指導を行う医師と従業員とが相互に表情、顔色、声、しぐさ等を確認できるものであって、映像と音声の送受信が常時安定しかつ円滑であること。情報セキュリティ(外部への情
  2. 報漏洩の防止や外部からの不正アクセスの防止)が確保されること。
  3. 従業員が面接指導を受ける際の情報通信機器の操作が、複雑、難解なものでなく、容易に利用できること。

※通達「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」(令和2年11月19日基発1119第2号)

総務部長:

なるほど。面談ですから相談内容を伝えるだけでなく、医師が従業員の表情や顔色等を把握できるようにすることも重要なのですね。

社労士:

そのほか、衛生委員会等でオンラインでの面談の実施方法について調査審議を行い事前に従業員に周知することや、オンラインでの面談で医師が緊急に対応すべき徴候等を把握した場合に、近隣の医師と連携して対応する等の緊急時対応体制が整備されていることが留意点として挙げられています。

総務部長:

わかりました。実際にオンラインでの面談を導入する場合には、事前に様々な準備が必要になりますね。

【ワンポイントアドバイス】
1. 高ストレスの従業員に対する医師の面談は、オンラインで実施することができる。
2. オンラインで面談を行う際には、通達で示されている情報通信機器の要件を満たす必要がある。また、衛生委員会等でオンラインでの面談の実施方法について調査審議を行う等、事前に対応しておくべき事項がある。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)4月号②

2021年4月から義務化される中途採用比率の公表

日本的雇用の「三種の神器」の一つと言われた「終身雇用」はすでに崩壊しつつあり、年々、雇用の流動化が進んでいます。雇用の流動化が進むことで離職者が再チャレンジできる環境を整備することが必要という認識の下、2021年4月より、大企業において正規雇用労働者の中途採用比率の公表が義務化されます。

1.中途採用の現状

性別による差別は原則禁止されているものの、企業がどのような人材を採用するかは自由に決めることができます。中途採用は行わず、新卒採用のみとすることも問題はありません。実際、新卒採用を中心に行う大企業も多く、首相官邸で開催された全世代型社会保障検討会議の基礎資料を確認すると、新卒採用者の比率(2017年度)は下図の通り、従業員数が大きくなるにつれて高くなっています。

2.中途採用比率の公表

このような状況もあり2021年4月から常時雇用する労働者が301人以上の企業に対し、中途採用比率の公表が義務化されます。
公表は求職者が容易に閲覧できる形で、「直近の3事業年度の各年度について、採用した正規雇用労働者の中途採用比率」についておおむね1年に1回、公表した日を明らかにして、インターネットの利用やその他の方法で行います。
なお、常時雇用する労働者とは、雇用契約の形態を問わず①期間の定めなく雇用されている者、②過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者または雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者、のいずれかを満たす労働者を指します。

3.「しょくばらぼ」の活用

公表の方法である「インターネットの利用やその他の方法」とは、原則として自社のホームページの利用等を指しますが、厚生労働省がインターネット上に開設する職場情報
総合サイト「しょくばらぼ」も利用できます。義務化対象の企業は公表する数字の取りまとめとともに、公表方法も検討しておきましょう。

近年、雇用に関する情報の公開を義務化する流れは強まっており、2022年4月から女性活躍推進法に基づく情報公表の義務が、常時雇用する労働者数が101人以上の事業主まで拡大されます。この中途採用比率についても同様に企業規模が拡大となる流れも想定されるため、自社の状況をいまのうちから把握しておくのもよいでしょう。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)4月号①

2021年度の社会保険料率が決定しました

毎年4月は社会保険料率が見直される時期です。社会保険・労働保険ともに2021年度の保険料率が公表されましたので、その内容を確認しておきましょう。

1.社会保険

①健康保険料率・介護保険料率

2021年3月分から適用される協会けんぽの健康保険の保険料率は、下表のとおりとなりました。引上げが20道府県、引下げが26都県、据え置きは富山県の1県のみとなりました。
また、介護保険の保険料率は毎年見直しが行われ、2021年3月分より1.79%から1.80%へ引上げられています。

②厚生年金保険料率

厚生年金の保険料率は、2004年から段階的に引上げられましたが、2017年9月を最後に引上げが終了し、18.3%で固定されています。

2.労働保険

①労災保険率

労災保険率はそれぞれの業種の過去3年間の災害発生状況等により、原則3年ごとに見直されることになっています。前回、2018年度に見直しが行われており、2021年度は変更される年度に該当しますが、据え置きとなりました。

②雇用保険料率

雇用保険料率は毎年度、財政状況に照らして見直しが行われます。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う雇用調整助成金等の特例措置により、財政状況は悪化していますが、2021年度は2020年度から据え置きとなりました。

2021年度は変更のないものも多いですが、現状の保険料率が正しい設定になっているか、厚生労働省から公開されているリーフレット等を参考に確認しておくとよいでしょう。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)3月号④

業務災害にもなりうる新型コロナへの感染と労働者死傷病報告の提出

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大が続く中、業務中に新型コロナに感染する事例が見受けられます。このようなときは、業務災害として労災保険の給付の対象となります。ここでは労災認定の事例を取り上げるとともに、業務災害として休業が発生したときに提出が必要な労働者死傷病報告について確認します。

1.労災請求件

厚生労働省が公表している新型コロナに関する労災請求件数は、2021年1月29日現在で3,836件となり、そのうち1,912件について支給決定が行われています。

これを業種別で確認すると、8割近くが医療従事者等の請求となっているものの、その他の業種でも請求が行われ、支給決定されています。

厚生労働省が挙げている労災認定事例では、飲食店店員について以下のような判断により支給決定がされています。

飲食店店員のAさんは、店内での業務に従事していたが、新型コロナウイルス感染者が店舗に来店していたことが確認されたことから、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。

労働基準監督署における調査の結果、Aさん以外にも同時期に複数の同僚労働者の感染が確認され、クラスターが発生したと認められた。

以上の経過から、Aさんは新型コロナウイルスに感染しており、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断されたことから、支給決定された。

このように、状況によっては医療従事者等以外であっても、業務災害として認められることがあります。

2.労働者死傷病報告の提出

業務災害により休業した場合には、労働者死傷病報告の提出が必要です。業務中に新型コロナに感染・発症して休業した場合でも同様であり、遅滞なく、事業場を所轄する労働基準監督署に提出する必要があります。

この際、労働者死傷病報告(様式第23号)の傷病名には「新型コロナウイルス感染による肺炎」と記入し、「災害の発生状況及び原因」欄には、感染から発症までの経緯を簡潔に記入します。また、発生日時は陽性判定日ではなく、傷病の症状が現れた日付を記入します。

会社で感染対策を十分に行っていても、特に不特定多数の人と関わるような業務では、新型コロナに感染する可能性があります。新型コロナの感染者が発生した際には、会社としても感染原因、感染経路、発症日、症状等を明確に把握するとともに、必要に応じ業務災害としての申請を行う必要があります。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)3月号③

2021年4月より変わる36協定届の様式

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長

当社では36協定を4月1日からの1年間で締結しており、届出を3月中に行う予定です。4月より36協定届(時間外・休日労働に関する協定届)の様式が変更になると聞きましたが、新様式と旧様式のどちらで届け出ればよいのでしょうか?

社労士

3月中に届出を行うのであれば、原則として旧様式を使うことになります。今回、どちらの様式を使うのかは、届出日が改正後の労働基準法施行規則の施行日である2021年4月1日の前であるか、後であるかで判断します。

総務部長

なるほど。届出日がポイントですね。

社労士

ただし、新様式でも届け出ることを妨げるものではないとされています。ここで、今回の新様式で変更になった点をお伝えしましょう。変更点は2点あり、1点目が押印・署名が廃止されたことで、2点目が36協定の協定当事者に関するチェックボックスが新設されたことです。

総務部長

この押印・署名の廃止は、行政手続きにおいて押印廃止が進められていることの一つですね。

社労士

はい。押印・署名が廃止されますが、記名をする必要はあります。一方、36協定の協定当事者に関するチェックボックスについては、労働者の過半数代表者が適切に選任されていない状況が一部でみられることから、適切な選任となっているかを確認するために設けられました。具体的には過半数代表者が、事業場のすべての労働者の過半数を代表する者であること(※)と、管理監督者ではなく使用者の意向に基づき選任された者ではないことについて、2つのチェックボックスが設けられています。
※過半数労働組合の場合には事業場のすべての労働者の過半数で組織する労働組合であること

総務部長

なるほど。

社労士

これら2点の変更があるものの、3月中に新様式を使って届出をする場合は、このチェックボックスにチェックをする必要はありませんが、押印・署名は原則必要となります。よって今回については旧様式を使い、2022年4月からの36協定届では新様式を使う方がよさそうですね。

【ワンポイントアドバイス】
1. 2021年4月より36協定届の様式が変更され、押印・署名が廃止となり、36協定の協定当事者に関するチェックボックスが新設された。
2. 2021年4月1日以降の期間を対象とした36協定届は、原則として届出日が2021年3月31日までは旧様式、2021年4月1日以降は新様式を使う。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)3月号②

66歳以上まで働ける制度のある企業は全体の3分の1に

4月より改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会確保の努力義務がスタートします。この改正法への対応を検討するにあたり、現在の高年齢者の雇用制度の状況について、厚生労働省が公表した令和2年「高年齢者の雇用状況」集計結果(以下、「結果」という)の内容を確認しておきましょう。

1.66歳以上まで働ける制度のある企業

企業には、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況を厚生労働大臣に報告する義務があります。今回の結果は、この雇用状況を報告した従業員31人以上の企業164,151社についてまとめたものです。集計においては、従業員31人~300人規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としています。

まず、66歳以上まで働ける制度のある企業は54,802社で、前年より5,164社増加し、報告したすべての企業の33.4%を占めています。企業規模別にみると、中小企業は49,985社で前年より4,593社増加し、報告した中小企業の34.0%、大企業は4,817社で前年より571社増加し、報告した大企業の28.2%を占めています。実に3分の1の企業で、66歳以上まで働ける制度があるという状況になっています。

この66歳以上まで働ける制度のある企業の状況をより詳しくみると、基準該当者を66歳以上まで継続雇用する制度(基準該当者継続雇用制度)または希望者全員を66歳以上まで継続雇用する制度(希望者全員継続雇用制度)を導入している割合が高くなっています(下図参照)。

2.70歳以上まで働ける制度のある企業の状況

70歳以上まで働ける制度のある企業は51,633社で前年より4,975社増加し、報告したすべての企業の31.5%を占めています。これを企業規模別にみると、中小企業では47,172社で前年より4,427社増加し、報告した中小企業の32.1%、大企業では4,461社で前年より548社増加し、報告した大企業の26.1%を占めています。

このように66歳以降も働ける制度のある企業は増えており、年齢に関わらず人材を活用していこうという動きがみられます。

今回、70歳までの就業機会確保の努力義務がスタートすることに伴い、定年の引上げや65歳以降の雇用について検討される企業もあるでしょう。今後、検討をされる中でお困りごとがございましたら、当事務所までご連絡ください。

(次号に続く)

保育事業者様向け情報(労務)3月号①

マイナンバーカードの2021年3月からの健康保険証利用

全国のマイナンバーカードの交付状況は、2021年1月1日現在、全国で24.2%となっています。まだ交付率は低いものの、2021年3月からはマイナンバーカードが健康保険証として利用できるようになり、マイナンバーカードの活用の場が広がります。そこで、実際にマイナンバーカードを健康保険証として利用する場合のメリット等を確認しておきましょう。

1. 健康保険証利用のメリット

マイナンバーカードを健康保険証として利用できる医療機関や薬局(以下、「医療機関等」という)には、「マイナ受付」に対応しているとしてステッカーやポスターが掲示されます。そのような医療機関等では、顔認証付きカードリーダーが用意され、顔認証で本人確認と保険資格の確認が実施されます(暗証番号の入力でも可能)。これによりスムースな受付になると予想されます。

また、医療費が高額となるときに利用できる高額療養費に関する手続きについて、マイナンバーカードの利用により、オンライン資格確認等システムで情報が取得できることになり、支払い後の高額療養費の請求や、受診前の限度額適用認定証の発行の手続きを行わずとも、医療機関等の窓口での限度額を超える支払いをする必要がなくなります。

その他、マイナポータルからe-Taxに連携することになるため、医療費の領収書を保管することなく確定申告ができることになります。

2. 健康保険証として利用するための手続き

マイナンバーカードを健康保険証として利用するためには、マイナンバーカードの交付を受けた後に、利用者本人がマイナポータルで申し込む必要があります。マイナンバーカードを健康保険証として利用するにあたり、会社が手続きすべきことはありません。

なお、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようになるものの、健康保険証自体がなくなるわけではなく、2021年3月以降も従来通り健康保険証を使った受診が可能です。

また、マイナンバーカードを健康保険証として利用できる手続きを行った後でも、医療機関等にマイナンバーカードを持っていくことを忘れた場合等には、健康保険証を提示することで被保険者等の資格確認が行われます。

2021年3月時点で、すべての医療機関等においてマイナンバーカードを健康保険証として利用できるわけではありませんが、厚生労働省は医療機関等がシステム整備を行う際の支援
をしており、2023年3月末には概ねすべての医療機関等での導入を目指すこととしています。政府は今後、マイナンバーカードの機能を拡大していく予定であり、従業員から問い合わせがあった際にはメリットを説明の上、手続きを勧めてもよいでしょう。

(次号に続く)

【介護・保育】人財定着ブログⅣ4月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは㉒ 」

【介護・保育】人材定着ブログ3月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは㉑」

の続きです。

今回も評価者に是非、知っておいてほしい評価者の心構えと留意点についてお伝えしたいと思います。前号にて評価者エラーの「ハロー効果」と「寛大化傾向」についてお伝えいたしました。今月号は引き続き評価者エラーにおける「中心化傾向」「厳格化傾向」「論理的誤差」「その他留意点」等についてお伝えいたします。

 

1,「中心化傾向」に注意する 

  ①部下全体の評価結果が評価段階の中央部分に偏ったり、部下個人の各考課項目の評価がB評価ばかりになってしまい、優劣の差が少ない評価となることを中心化傾向という。下記のような場合に起こりやすいエラーです。

・考課者が自分の評価に自信がない場合

 ・考課結果に差をつけることをためらう(意識的・無意識的に)

 ・厳しい評価は、部下の反発にあうのではないかと考える

 ・被考課者に直接指示を出しているわけではないので、よくわからない

②対応策

・部下の日常の仕事振り・行動・発言などをなるべく具体的に観察・記録し考課項目の

選択時に迷わないように整理しておくこと。

 ・部下を指導・育成することが管理者の重要な役割であり、そのためには部下の強み・

弱みを公正に把握・評価することが前提となることを認識

・評価に迷いがある場合は考課者間ですり合わせをし基準を共有化すること。

 ・他のメンバーの監督下にある場合は、監督者から逐次報告を受けること。

2,「厳格化傾向」に注意する

 ①被考課者に対する感情がマイナスに作用する傾向であり、日頃の思いが辛い評価と

して表れる。厳格化傾向が働くのは、日頃管理者が特定の部下の態度や素行に否定的な感情を抱いている場合に発生しやすい。

 ② 対応策

 ・被考課者に対する感情や先入観は人事考課の公正さを失わせる事を認識する

 ・被考課者の成果、仕事を具体的に記録し、事実に基づいた評価を行う

 ・全体的な印象評価は行わず、考課要素毎に分析的な評価を行う

 ・辛い評価は、部下のモチベーションを低下させる場合があることを認識する。

3,自己投影型・対比誤差(自分と比較して考える傾向)に注意する。

 ①考課者が部下の中に自分との類似性や非類似性を発見し、自分自身を評価の基準としてしまうこと

人間は、一般的に他人が自分と同じような行動や意見や価値観をもっていると、

  その人に好意を抱く傾向があります。このため、部下が自分に似ている行動や、

  意見を言ったりすると、自分と価値基準が合っていると感じ、その人を優れている

  と高く評価し、反対に行動・意見・価値観が異なっていると低く評価しがちです。

 

   また、自分に自信のある得意分野や高い専門性を有する分野に関しては、自分と比較して、相手を厳しく評価し、逆に自信の無い分野の場合は評価が甘くなる傾向にあります。

 ② 対応策

・部下の現在の等級段階の社員だと、会社は標準的にどの程度の仕事や能力を期待しているのだろうかということを強く意識する。そして、管理者としてそれに相応しいレベルの期待をし、指示した仕事の内容やそのレベル、行動、能力を明確にする。自分のレベルと比較しないで、あくまで標準レベルに対して評価する。

 ・人の考え方や行動パターンは一見同じように見えても、よく観察すると実は1つ1つ

  は異なっていることを十分理解し、事実だけを客観的に評価するように心がける。

4,論理的誤差(項目を関連付ける傾向)に注意する。

 ①考課を行う際、考課基準表にそって各項目を順番に評価していくと、前に評価した項目との相互間に論理的な関係があると思い込んでしまい、関係ある前の項目と同じ評価でないと論理的におかしいと考えてしまう評価傾向

  ○さんの理解力はBで、判断力はSとなっているが、よく考えると理解力が低いのに、判断力が高くなるはずが無いと思い直してさんの判断力の評価をSからBに変えてしまい、同様に他の部下の評価も変更してしまうようなケース

 ② 対応策

 ・考課項目は一つ一つ独立したものだと考え、観察・記録した内容を1つの事実として素直に評価する態度で臨み、理屈を考えすぎない。

 ・人の行動面とその結果は必ずしも一致するとは限らないことを理解する(まじめな勤務態度の部下が高い業績を上げるとは限らない)

 ・評価終了後、改めて部下全員の評価結果を点検し,多くの部下の特定の考課項目の相互間に同じ評価をする傾向が生じていないか自己チェックしてみる。

5,その他の留意点

 ①評価対象期間外に生じた事実は考慮しない

「以前こうだったから、今もこうだ」という見方はしないこと。

②職務外の行動は考慮しない

私生活上の問題や職務行動を離れた個人的なつきあいなどを評価しないこと。

③短絡的な結びつけをしない

評価者の頭の中で、一見論理的に関係ある事柄を短絡的に結びつけがちであるが、事実は個々に見ること。例えば、「勤続が長いから熟練度が高いはずだ」というような見方は避ける。

④属人的な要素は考慮しない

勤続年数、経験年数、年齢、男女、学歴等は一切考慮しない。

⑤逆算化傾向を避ける

予め評価点(結果)を想定して、そうなるように部下を評価しない。人事評価は全て事実に基づいた結果・能力の発揮度を評価する。

⑥時間と心にゆとりを持つ

十分な時間的余裕を持って、心身共にゆとりのある状態のもとで集中的に行う。評価中に別の用事をしたり、他人と話し合ったりすると評価がブレるもととなります。

 

さて、次回は評価結果を被評価者につたえる「フィードバック面談」についてお伝する予定です。

 

【介護・保育】人材定着ブログ3月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは㉑」

【介護・保育】人材定着ブログ1月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑳」

の続きです。

 

今回は評価者に是非、知っておいてほしい評価者の心構えと留意点についてお伝えしたいと思います。評価をするにもぜひ知っておかなければならない基本的なルールや、自ら気を付けなくればならない「評価者のクセ(エラー)」などがあります。それらを知識として知ったうえで実際の評価を行うのと、全く知らないで評価を行う場合とでは、結果に大きな差が生じますので、事前に評価者研修などを受講いただいた上で、評価に入っていただきたいと思います。

1、評価者の心構え

 評価スキルを学ぶ前に、大前提として評価者に持っていただきたい「心構え」についてをお伝えいたします。

(1)人事評価の制度内容、仕組を十分に理解していること。

(2)部下の育成が最大の目的であることを理解していること。

  部下の昇給や昇格を念頭に置いた評価をしないこと。

(3)部下と面談(コミュニケーション)の機会を多くもつこと。

  部下に対して期待していることを明示すること。

(4)人物評価でなく、事実に基づいて評価すること。

  部下の行動を観察し、事実を記録すること。

(5)管理者として自らのマネジメント能力を磨くこと。

  部下の能力を的確に把握し、職務(等級)にふさわしい仕事を与え、情報を提供し、

  指示・命令を出し、権限を委譲し、適切な支援を行うこと。

 

 

2、「評価エラー」に関する留意点

 次の項目は評価者がよくやってしまう「評価エラー」と言われるもので、まずはそのパターンをご紹介するととともにその対応策も含めてお伝えいたします。

 (1)「ハロー効果」に注意する(先入観や印象で評価しない)

  ①全体的印象ハロー効果

   部下の人物・行動の全体から受ける印象や、いったん自分の頭の中で作り上げて

   しまった部下の全体評価を先入観として持ってしまい、この全体的印象が強いため、

   無意識の内に、部分部分の特性の評価を歪めてしまうこと。

②部分的印象ハロー効果

   部下の何か一つまたはいくつかの特性に際立って優れた点があり、これに対して

   「優秀である」「高度である」と強い印象を持ってしまうと、他に劣っている特性

があっても、全体として「優秀」「高度」であると歪んだ評価をしてしまう傾向

   (例えば売上成績が良いと販売促進企画も開拓力もクレーム処理もすべて良いと

    判断してしまう場合等)

  ③対応策

   ・考課項目一つ一つの意味を正確に理解し、項目ごとに事実情報・記録を確認しな

    がら評価する

   ・全体的印象や部分的印象にとらわれていないかを絶えず自問自答しつつ、部下を

    分析的に様々な角度から観察し、評価するように努めること。

 (2)「寛大化傾向」に注意する

所謂、評価が相対的に「甘く」なってしまう傾向です。

①このエラーが起こりやすいケース

・日頃一緒に仕事をしている部下に対して、「厳しい評価をして恨まれたくない」

   「次に厳しい仕事の指示がしづらくなる」「評価について、部下から文句をつけ

   られたら煩わしい,説明できない」「部下に良い顔を見せておきたい」などの

   気持ちが働く場合

 ・日頃から公私にわたって親しく付き合っている部下、特に仕事上で頼りにして

  いる部下、自分が理解できない難しそうな仕事をしている部下を評価する場合

 ・部下が昇進・昇格の候補年次に近づいて来た時、上司として「何とかあの人を

  昇進させたい」という思いにとらわれた場合

 ・自分の職場の部下を他の職場の者より「賞与を多くしたい」「早く昇格させたい」

  などの競争意識が働く場合

 ②対応策

 ・部下それぞれに期待されるレベルに相応しい目標・課題を与える

  (職務基準や職能要件等がある場合、期待基準に照らして評価する)

 ・曖昧な印象や思惑を排して、考課項目ごとに、観察・記録した具体的事実に

   基づいて評価する姿勢に徹すること。

 ・人事考課の重要な目的の一つが、部下の問題点を正しく捉え、これを指導・育成

   に結びつけるための情報収集の手段であるという認識を深めること。

 

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