保育
A、「キャリアパス規定」もしくは「人事評価規定」として、社内規定として文書化したり、また全職員へのキャリアパスの「見える化」にも工夫をしている。
社内規定の一つとして「人事評価規定」を文書化されることをお勧めしています。「評価制度が、いつの間にか運用しなくなってしまった」などということが無いように、キャリアパスや人事評価の運用は、社内監査等の対象として定期的にその運用が適切になされているかどうかチェックされなければなりません。つまり法人のガバナンス機能として、運用を継続していくためにも、それが文書化されルールに従った運用がなされているかが確認されなくてはなりません。下記の文書化の事例(抜粋)をご紹介いたします。
1,規程趣旨
この規程は、法人職員に対するキャリアパスの実施を通じて職員の資質向上を図り、もって人事管理の適正化、組織の活性化、地域貢献に資することを目的とする。
2 キャリアパスの定義
この規程においてキャリアパスとは、法人が職員に対し職業人として必要な能力と処遇について具体的な内容を職能等級、職位、職層、求められる能力を示すことにより、職員が自らの目標を設定し努力するための道筋を示したものと定義する。
3 キャリアパスの意義
キャリアパスを整備する意義は、法人が人材育成を何よりも重要であると認識し、働く人の成長を願い目標を設定し努力を重ねることができる環境整備の一つとすることにある。運用にあたって、資格等級制度、人事評価制度、研修制度との連動を図ることによりキャリアパスを法人経営の重要なツールとして定着させる。これにより、職員が自らの将来像を描きながら日々の業務に邁進できる環境を実現させる。
4 主管部門・担当部門・監査部門
キャリアパスを実施するにあたり、以下の通り、主管部門・担当部門・監査部門を定める。
主管部門 法人本部に「法人本部キャリアパス運営委員会」を組織する。
担当部門 各事業所に、事業所責任者を中心とした「○○事業所キャリアパス運営委員会」を組織する。
監査部門 「キャリアパス制度運営監査委員会」を第三者委員会として組織する。委員会は、人事考課制度等に専門知識を有した者、被評価者代表、評価者代表、法人本部代表者などから構成する。・・・・・
また、キャリアパスの「見える化」ですが、本来の「見える化」とは「問題点の可視化」という意味ですが、ここでは「理解を深めるためのビジュアル表現」という意味で使用しています。つまり、キャリアパスをよりわかりやすく表現することで、求職者に対してアピールできるほか、在職している職員のモチベーションを高める効果もあります。さらに言うと、「退職したくなったが、少し我慢すれば次のステップに進めるので、もう少しだけ辛抱しよう」という、離職防止効果までを期待できます。
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②介護分野キャリアパス
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③保育園のキャリアパス
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最近、ここ10年ぐらいは、生活費以外のほとんどのお金は「経験」に使ったといっていいかもしれません。もちろんお金をかけなくてもできる経験はありますが、お金を掛けなければできない経験もたくさんあります。旅行をしたり、おいしいものを食べたり、音楽を聴いたり、一流の仕事人の話をきいたり、本を読んだり、映画をみたり・・・。
経験は、それ自体が夢中になる「遊び」であるとともに。「成長」のチャンスでもあります。
人やモノや社会を理解したり、自分で稼いだり、人のために何かできたり、幸せを感じたり、
・・・より豊かな人生を送るベースになっているような気がいたします。
高価なバッグや服を買っても、その価値は下がる一方です。貯金を数百万しても、無職になると、数年でなくなる金額です。
しかし経験を買うと、失敗を含めてその価値はどんどん生きてきます。経験から得たことは自分自身を作る一部にもなります。様々な経験をすることで、行きたい方向も明確になります。いまでも、人生を豊かにするために「経験」に、出し惜しみをしません。
お金をある程度自由に使えるようになったことの喜びは、好奇心を満たしてくれる「経験」にお金を使える事のような気がします。
また、経験することで得られる大きな価値があります。それは人とのつながりが生まれることです。家族や友人とのかけがえのない経験は、思い出として、繰り返し語ることが出来ます。新しい経験をすることで、新しい出会いがあったり、同じ経験をした人と意気投合したり、そこから人生の師を得られたりするかもしれません。経験を買うことで、人とのつながりや愛情が積み重なり、人間関係を広げ、世界を広げることが出来るのです。
幸福度がいちばん上がるお金の使い方は、「モノ」より「経験」を買うことでだと私は確信しています。
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A:
施設には、年休取得時期を変更できる権利がありますが、退職日までまとめて年休を取得し、退職日以降に変更する出勤日がない場合、本人からの年休取得を拒否することはできません。よって、まずは退職日が変更できないか、年休を取得しながら引継ぎに協力してもらえないか、など職員と十分話し合いましょう。また、退職の申し出自体にとてもショックをうけ、さらに追い打ちをかけるように残っている年休をしっかり使ってから辞めたい、という希望に対して法的にはやむを得ないとは理解はしつつも、感情的なわだかまりが残ってしまう辞め方になってしまうこともあります。こうした事態を避けるためにも、重要な業務を分担できる体制を整備する、日頃から年休の取得促進をはかる、などの対策を講じておくことが重要になります。
詳細解説:
1.退職日までの年休取得
日常的に年休を取得しない職員のなかには、年休が数十日も残っているというケースが少なくありません。施設には、事業の正常な運営を妨げる場合、年休取得日を変更できる「時季変更権」がありますが、退職時にまとめて年休を取得するケースでは、変更する出勤日がないため、時季変更権を行使することはできません。
そのため、まずは退職日を変更できないか本人と話し合いを行い、可能であれば、引継ぎをしながら、並行して本人の希望する範囲で年休を取得してもらうようにします。
2.退職時に引継ぎを確実に行ってもらうために
就業規則等へ「1 ヶ月前までに退職の申し出をすること」と規定している施設が多いと思いますが、年休の残日数の多い職員の退職や、1 ヶ月に1 回しか実施しない業務の引継ぎがあると、十分な引継ぎが実施できないことがあります。退職の申し出は、自身の業務内容や年休取得の予定を考慮して、場合によっては1 ヶ月前より前に行うよう、あらかじめ職員に周知しておきましょう。
また、特定の人にしかわからない業務を作らない体制や、業務内容や作業手順がわかるようなマニュアルを整備しておくなど、業務の属人化を回避し、急な引継ぎとなった場合であっても、滞りなく進められるよう、日頃から対策を講じておくことが重要です。
職員の退職時に引継ぎを確実に行ってもらわないと、後任担当者が困ることになり、ひいては利用者様へ悪影響を及ぼすことになりかねません。職員それぞれに事情があるため、やむを得ず急な退職の申し出となる場合もありますが、業務に支障が出ないよう確実に引継ぎを行いながら、本人の希望する年休取得ができるような職場づくりが求められます。
3、年休の「買い上げ」について
最後に年休の「買い上げ」に関してもお伝えしておきます。年休に関する法の趣旨を考えれば、金銭に置き換えることは年休を与えたことにはならず、違法となります。ただ、年休を法の定めのとおり付与した後、職員がこのすべてを取得せずに退職することとなった場合において、在職中の取得を選択しない職員に対し、一定の社内基準に従って金銭の給付をもって年休の取得に替えるという扱いは違法ではありません。しかしながら、法人側がこのような制度を設けていないのに、職員の方から未取得の年休を金銭給付に替えることを請求する権利はありません。年休はそもそも労働者の健康管理と余暇利用に資するために設けられた制度ですから、これを確実に取得させることが法の要請です。安易に金銭給付に替えることとするのは差し控えるべきでしょう。
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Q 保育園の園長です。職員による虐待や送迎時の事故の報道を目にすることが増え、人ごとではないと感じています。どんな点に気を付けておけばよいですか。
A 保育施設で重大事故が起きた場合、一番大事なのは初動対応です。救護措置以外に、事実関係の確認、資料の確保、保護者や職員への説明などがあります。行政機関への報告も必要となります。この初動対応を間違えると、保護者や職員からの不信を招き、今後の園運営に大きな支障が生じかねません。
救護措置や再発防止などは当然大事ですが、それを関係者にタイムリーに説明することも同じように大事なことだと考えてください。園に非がある部分は、率直に謝罪しましょう。謝罪したら全責任を認めたことになるという心配はいりません。法的責任と道義的責任は別問題ですので、道義的に謝罪すべきと考えるならば、きちんと謝罪しましょう。
実際の裁判でも、介護施設の管理者による謝罪の言葉について、「結果として期待された役割を果たせず不幸な事態を招いたことに対する職業上の自責の念から出た言葉」と捉えて、謝罪による法的責任を否定したものがあります。
もし保護者説明会を開催する場合は、保護者は何も分からなくて不安だということを前提に対応しましょう。事実を誠実に説明することが保護者の安心感につながります。説明会の進行次第、想定問答、受付の段取りなど徹底した準備が必要です。
事故はいつ起きるか分かりません。起きてから考えても間に合いません。自然災害と同様にマニュアル作成や事故を想定した訓練など日頃からの備えが重要です。(8月18日西日本新聞記事より)
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A,
評価項目を具体的な「行動表現」にすることで、評価がより客観的になり、また職員の課題を具体的に指導できます。
評価することは非常に難しく、評価者訓練を受けないと評価は出来ないと言われています。しかしそれは、評価項目が抽象的で何を評価すればいいのかわからないという原因が考えられます。
評価を行う難しさには、①人によって評価が変わる ②評価項目が不明確なので評価する人も、される人もわかりにくい、さらに③誤評価の原因(ハロー効果、偏り傾向、寛大化など)評価するということに困難さが付きまとっています。例えば「協調性」という表現で終わってしまう評価項目の場合、何が協調性なのか評価者が判断しなければなりません。抽象的な表現は職員をいろいろな視点から評価できることになり有用ですが、評価の公平性や客観性からみるとかなり深い問題が含まれています。具体的な行動表現にすることで、だれでも同じ理解とすることが大切です。
【具体的行動表現の実例】
評価項目:「感謝の気持ちをもってご利用者、職員に接する」
を具体的な評価項目にした場合に、例えば下記のような例となります。
例1:ご利用者や職場の仲間に感謝の気持ちで接することが出来、「○○さんのおかげです」や「ありがとう」が素直に笑顔で言える。
例2:ご家族様や見学、来訪者の目を見て、笑顔でお名前を添えて「ありがとうございます」と伝えている。
例3:他部署等の協力や理解があって自分が仕事ができる事に感謝して、相手の状態を配慮し、「お手伝いしましょうか」「何か私にできる事はないですか」と声掛けしている。
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A 労働時間管理は「時間外労働の管理」といっても過言ではありません。各部署の所属長が残業の必要性を判断し、適切時間を指示するなど、管理職の役割は重要です。職員、個々に勤務時間内に仕事を終える意識をいかにもたせるかが重要です。
一方、始業時刻=出勤時刻、終業時刻=退勤時刻 という認識で時間管理を行っている事業もいまだ多くあります。このような事業所には、労働時間の定義についてまずは指導教育する必要があります。つまり始業終業時刻と出退勤時刻は違うという認識をまずは持っていただくことです。労働時間に関する意味を理解することで、その時間管理意識を持って業務を遂行していくことは、今後、さらに重要なポイントになります。そのためには、まず指導いただきたいのは、時間外労働の「許可制」です。当然ながら業務は所定時間内に行うのが前提ですが、事情により残業になりそうな場合には、その理由と終業時刻を明記し、許可制とする必要があります。それにより、所定外労働割増をつける時間が明確になりますし、何より大切なことは各職員の時間管理意識を高めることができます。ただし、残業の許可制を規定に定めていても、許可を受けない残業のすべてが無効になるかというとかならずしもそうではありません。通常の業務をこなすうえで,所定時間内終わらないような業務量を要求したならば、残業時間に対して、黙示の承認があったということになり、残業時間に該当するという判断になりますので、適宜の指導が必要になります。
ただ、残業を所属長の許可制にしていても、申請された残業内容をよく理解せずに全部承認していたり、逆に、明らかに残業が必要な業務量にも関わらず許可をしなかったりと、所属長により対処の仕方はまちまちになりがちです。本当に必要な残業かどうか、どの程度の時間が必要かなどを判断して、適切な許可を与える必要があります。
残業許可制運用のポイント
- 残業の理由を明確にさせる
「何のために残業をするのか」「なぜ、その業務が残ってしまったのか」を確認します。例えば、許可申請の残業理由に「介護記録作成の為」とだけ記入させるのではなく、「なぜ
介護記録作成業務が残ってしまったのか」を記入させます。そうすることで、原因を本人と上司が確認しあうことで改善に繋げることができます。残業理由が本人の能力の問題であれば、個別指導や業務の標準化を進める必要があります。
- 残業内容の緊急性・必要性を判断する
その業務が「要当日処理」か「翌日処理で可」なのかをメリハリをつけて確認します。
またその業務は、「あなたがやらなければならない業務」なのか「次の交代勤務者で対応できる業務」なのかを確認します。
- 業務の上限時間(目安)を指示する
「その業務は30分で終えて」と目標時間を指示します。業務内容応じて適切な時間を指示することは必要です。但し、このことは「30分以上の残業は認めない」と上限設定をすることではありません。上限を超えて残業していても、事実上、黙認している状況であれば
それは「黙示の承認」に該当します。
- 職員の健康状態にも配慮する
休憩はきちんととれたか、体調にお問題はないか、などを確認します。こうしたことは、日頃の部下とのコミュニケーションで行っておきたいところです。
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東京都多摩市がサイバーエージェントと組み、「マッチング理論」と呼ばれるアルゴリズムを活用して待機児童問題の改善に取り組んでいる。認可保育園の入園は、保護者の就労や家庭の状況などに応じた点数(係数)で優先順位が決まることが多い。同市はより公平なルールになるように同理論に基づき見直し、保護者が入園確率を上げるため、あえて人気が低い保育園を希望するといった「保活の裏技」に悩む必要がなくなった。
多摩市は保育園の入園希望者の選定にマッチング理論を導入している(多摩保育園)
「素直に入所したい順に記入してください」。同市子育て支援課の窓口では、認可保育園の入園申請に訪れた保護者にこう案内している。
子どもの保育園を探す「保活」では、点数が低い保護者が、駅に近く便利なため競争倍率が高い保育園を第1希望にすると、落選する可能性が大きい。そこで何とか「当選」を勝ち取るため、定員に余裕がありそうな保育園をあえて第1希望にするような裏技が、SNS(交流サイト)などで知られるようになった。
多摩市でも、例えば1歳児がいる保護者3人が同じ点数で並んだ場合、人気の保育園を素直に第1希望にした保護者が「待機」になり、定員に余裕がありそうな保育園をあえて第1希望にした保護者は入園が決まるというケースがあった。
こうなると保護者は入園の可能性を探って、希望する園をどこにするか深読みする必要がでてくる。入園が決まっても、本当の希望ではないため不満が残りやすい。そこで、市はサイバーエージェントが東京大学マーケットデザインセンターの小島武仁教授と研究しているマッチング理論に基づき、点数の配分ルールを一部見直した。具体的には希望順位の高さを点数に加算する「調整ルール」を22年度から廃止した。
すると、第1希望が通らなかった保護者は第2希望の保育園に決まり、あえて希望ではない保育園を第1希望にした保護者の子どもが待機になるようになった。子育て支援課の吉田和正氏は「保護者は素直に希望する保育園を申請すればよく、他の条件などを考える負担が減った。公平感が高まった」と話す。
東京都の2023年4月1日時点の待機児童数は前年比14人減り、286人と過去最少になった。保育園の新設や拡充が進んだためだが「希望する保育園に入れない」「兄弟姉妹で同じ保育園に入れない例がある」など課題は残る。多摩市の鈴木恭智・子ども青少年部長は「保護者と子どもの満足度向上につながっているか、中長期で確認する必要がある」と話す。
同センターは保育園の入園制度と似た事例として、公立高校受験の単願制や都立高校の男女別定員制を挙げる。「競争率が低そう」という基準で受験校を選んだり、男子生徒より高得点だった女子生徒が不合格になったりと、同センターの小田原悠朗特任研究員は「結果の公平性がない」と指摘する。
日本経済新聞 朝刊 首都圏東京
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企業で働く人の有給休暇の取得率が高まっている。2021年は58.3%と3年連続で過去最高を更新した。19年の労働基準法改正で企業に対し、従業員の有給取得に関する義務が加わったことが後押しした。ただ義務内容を正確に理解していない企業も多く、21年の有給関係の法令違反件数は前年の2.8倍となった。25年までに有給取得率70%という政府目標を前に、企業が抱える課題は多い。
高い有給取得率は人材確保につながる(7月、横浜市のSCSKサービスウェア横浜センター)
「このままなら、正社員の今年度末の有給取得率は94.8%になる」。全国に約5500人の従業員を抱え、コールセンターなどを手がけるSCSKサービスウェア(東京・江東)。7月末、同社の幹部社員ら約100人が集まる連絡会で、秋庭洋一郎・労務部長が推定値を報告した。同社は社員の有給取得に力を入れ、毎月の連絡会で細かい数値を共有する。
秋庭部長は「13年度ごろまで取得率は約6割だったが、19年度80%、22年度に84.2%と改善した。社長からは100%取得を目指すよう指示されている」と話す。様々な顧客からの問い合わせに応じなければならないコールセンター業務はストレスを伴う。しっかり有給を取れる環境づくりは、社員のつなぎ留めや採用で効果が大きいという。
労働基準法39条は、企業などの使用者は、6カ月以上勤務した従業員に基本的に10日間の有給休暇を与えなければならないと定める。有給の日数は、勤続年数によって年20日まで増える。正社員だけでなく、パートタイマーにも勤務日数に応じて有給が与えられる。いつ有給を取るかは原則的に労働者の自由だが、「事業の正常な運営を妨げる」場合は、使用者がその時期(時季)を変更できる。
与えられた有給のうち実際に消化した割合を示す有給取得率は2000年から17年間にわたり5割を切っていたが、17年ごろから大幅に改善。21年は16年に比べ8.9ポイント上昇し、6割に迫る水準になった。取得率向上の大きな後押しになったとみられるのが、19年の労基法改正だ。
企業にも義務
働き方改革の一環の法改正で、企業は労働者に有給を与えるだけでなく、実際に取得させる義務も負うようになった。10日以上の有給の権利を持つ労働者に対しては、5日分の時期を指定し取得させねばならない。義務違反には、対象の労働者1人につき30万円以下の罰金が定められている。
当時法改正を担当した厚生労働省幹部は「過労死するほど追い詰められても休まない日本の実態を変えるため、法学者から異論は出たが労使ともこの形の義務化で合意した」と明かす。
「人的資本経営」を重視する動きも、企業が従業員の有給取得を促すことを後押ししている。
エスビー食品は、5月に策定した26年3月期までの中期経営計画で「有給取得率80%」を非財務目標のひとつに入れた。有給が子育て支援や社員の自己研さんなど人的資本充実に効果的とみるためだという。濱畠啓子・人事総務室長は「当社のミッションである『グローバル社会に対応した多様化の推進』に沿った目標設定だ」と話す。 同社は独自の取得促進策を進めてきた。19年には5日間の一斉取得で83%に達したこともある。21、22年度とも取得率は76%台で、80%は目前にある。
違反2.8倍に
取得率が改善する一方、問題も露呈している。厚労省の就労条件総合調査によれば従業員1000人以上の企業の取得率63.2%に対し、30~99人では53.5%にとどまる。企業規模による取得格差は深刻だ。
さらに21年には、全国の労働基準監督署が定期調査で約12万2千カ所の事業所を調べた結果、有給関係の違反を指摘されたのが約9800カ所と、前年の約2.8倍になった。
どの業種もまんべんなく違反が増えている。厚労省担当者は有給について、5日間の時期を指定して取得させる義務を果たしていない例が多いようだと話す。
司法処分に発展する悪質な例も出ている。21年7月には愛知県あま市の給食会社が、従業員6人に年5日以上の有給を取らせなかったことで書類送検された。今年5月にも複数店舗を展開する茨城県内の飲食店が、時期指定をせず従業員に有給を取らせなかったことで書類送検された。
米旅行会社のエクスペディアが23年2~3月に16の国と地域の約1万4000人を対象とした調査で、上司・会社が休暇取得に協力的か聞いたところ、日本から回答した人のうち「はい」と答えたのは58%で、香港の83%や米国の79%、ニュージーランドの76%に劣る。まだ職場風土の改革は進んでいない。国の目標である取得率70%に近づくためにも、労使双方の努力と考え方の変革が必要となる。
日本経済新聞 朝刊 2023/8/7
A 評価者研修やフィードバック面談研修を受講し、方法論を学び実践で活用している。
人事評価を行うことは、上司にとってかなりの負担で、ましてやその結果を部下に説明するフィードバック面談等は大変重荷、などと言うご意見は、評価者の方々からよく伺います。ただ、それは、「評価」という言葉の印象にとらわれている結果であって、実際には評価の仕方を具体的に理解していないがゆえに誤解されているケースがとても多いのです。
評価者として「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を理解し、それを実践すれば、だれでも評価を行うことができます。そのためには、評価者研修等で評価や面談の「ハウツー」をまず学び、それを実践に活かしながら経験を積んでいただく。これ以外に方法はないように思います。
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政府の少子化対策の目玉のひとつが「こども誰でも通園制度(仮称)」だ。親の状況にかかわらず、保育所などを利用できるようにする。地域で安心して子育てするうえで大きな一歩だが、乗り越えるべき課題は多い。
この制度は6月に閣議決定した「こども未来戦略方針」に盛り込まれた。いまは保育所などの利用は原則として共働き家庭や親が病気などの場合に限られる。就労要件を問わず、時間単位で柔軟に使える通園給付を創設する。
在宅で子育てする専業主婦らにとって「孤育て」の負担を軽減する効果は大きいだろう。集団でのさまざまな経験は、子どもの発達にもプラスの効果が期待できる。岸田文雄首相は記者会見で「これまでの保育所のコンセプトを変える」と意欲を示した。
2024年度から本格実施を見据えた形で実施し、26年度にも正式な制度になる。いまも一時的に預かる制度はあるが、自治体ごとの温度差もあり必ずしも身近なものではなかった。
課題は受け入れ体制が確保できるかだ。こども家庭庁は23年度、定員の空きを利用して週1~2回、預かるモデル事業を31自治体で実施している。都市部では利用希望が殺到し、定員の何倍にもなるケースもあった。
全体としてみれば保育所の待機児童数は減っているが、1歳児を中心に入園が容易でないケースは少なくない。また毎日通うのと比べて、新制度では子どもが安定して過ごせるよう保育の仕方にもより工夫が求められる。
鍵となるのは、保育を担う人材だ。仕事の負担の重さから、保育士の資格があっても働いていない人は多い。政府はこども未来戦略方針のなかで、保育所が保育士の配置を増やせるよう後押しすることや、保育士の処遇改善を進める方針を示している。配置改善は長年にわたり放置されてきた課題だ。今度こそ実現を図りたい。
保育は子育てに欠かせない重要なインフラといえる。財源の確保を含め、政府は丁寧に新制度の設計をしてほしい。
一方、子育ての負担が大きい背景には「育児は母親の責任」「預けるなんてかわいそう」といった古い意識がある。著しく女性に偏った家事・育児分担を見直し父親の育児を後押しするとともに、社会みんなで子育てを応援していくことが大切だ。(日本経済新聞 朝刊 社説より)
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