コラム
保育士のキャリア感に関する意識調査が実施されました。
その調査で明らかになった事実としては以下の事項があげられます。
① 将来園長の仕事に就きたいと考えている保育士は16.1%
② 園長の仕事に就きたくないと思う理由の第一位は『責任が重く、自分には無理だと思うから』
③ 『理想となる保育士や将来自分がなりたい保育士像を思い描けていますか』という設問には約7割の保育士が『できている』と回答
④ 『キャリアにおける具体的な目標を設定できていますか』という設問には約5割の保育士が『できている』と回答
上記の結果から、保育士は一スタッフとしての将来像はイメージできていますが、一スタッフとして働く以外のキャリアパスについてのイメージはややしづらい職種ということが分かります。
これは保育業界自体がスペシャリスト志向の職員が多いということもあるかもしれませんが、事業所側の方で明確なキャリアパスを職員に示しきれていないという原因があることも推察できます。
もちろん展開している事業所数によっては役職軸によるキャリアパスは提示しづらい部分もあるかもしれませんが、その場合でもスペシャリスト軸によるキャリアパスの提示をすることは可能だと思われます。
キャリアパスを明確に描ける保育士が増えると対外的な保育業界のイメージも変わっていくかもしれません。
保育業界の人事担当者の皆様は、ぜひ自事業者のスタッフが自身のキャリアパスをどこまで描けているか一度確認をいただければと思います。
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次の介護保険制度の改正が実施される2024年度から、全ての介護事業者に財務諸表の公表が義務付けられる可能性が高い。11月14日の審議会で厚生労働省が提案した。委員からの反対意見は特に出ていないと聞く。【小濱道博】
国は現在、社会福祉法人や障害福祉事業者には既に財務諸表の公表を課している。介護事業者にも財務諸表を公表させる方向は、以前から「骨太の方針2022」や財務省の審議会でも示されていた。今後は社会福祉法人と同様に、情報提供のための全国的な財務諸表開示システムが整備され、データベースが構築されていくだろう。
これまで厚労省は、介護事業所の決算データの収集を、3年ごとに実施される「経営実態調査」などを通じて行ってきた。
しかし、これは一部の事業所のみを対象とするサンプル調査。介護業界全体の財務状況を的確に把握しているとは言い難い。介護職員の「処遇改善加算」などの検証も同様だ。介護事業者の財務状況を網羅的にデータベース化することで、介護報酬改定や処遇改善などをめぐる議論のエビデンスの精度が高まり、より的確な政策をとれるようになるだろう。
問題は介護現場の事務負担だ。提出すべき決算データは、単に税務署に提出している決算書そのものではない。複数の拠点や併設サービスがある場合、その拠点ごと、サービスごとの損益計算書を、「会計の区分」に従って個別に作成して提出しなければならない。
「会計の区分」とは、国のルール(厚生省令37号などの解釈通知)に規定された運営基準の1つである。同一法人で複数のサービス拠点を運営している場合は、その拠点ごとに会計を分けなければならない。これを会計用語では「本支店会計」と言う。また、同一の拠点で複数のサービスを営んでいる場合は、それぞれを分けて会計処理を行う。これを「部門別会計」と言う。
会計を分けるとは、少なくとも決算書を作成する時点で、損益計算書をそれぞれ別々に作成するということである。収入だけでなく、給与や電気代、ガソリン代など全ての経費を拠点ごと、部門ごとに分けなければならない。これは、税務署に提出する決算書では求められていない作業である。
とはいえ、こうした作業は国のルールに規定された運営基準であるため、介護事業者は既に実施している必要がある。厚労省から見ると当初からの義務であり、介護現場の新たな負担増にはならないのだ。しかし、現実には実施している事業者は少なく、特に小規模法人での事務負担の増加が懸念される。
「会計の区分」は、先に記したとおり、新たに求められる作業ではなく、従来からの運営基準の1つである。ただ中小の事業者は、事務員を独自に雇用することは少なく、経営者自らが会計業務を担当していたり、会計事務所に記帳代行で丸投げしていたりするケースも少なくない。
しかし、会計事務所が行っているのは「税務会計」と言って、税金の計算のための会計である。「会計の区分」とは全く別物であり、この運営基準があることを多くの会計事務所はまだ知らない。
そのため「会計の区分」に対応できない可能性もあり、別に処理料金が発生するケースも想定される。介護事業者は、介護事業に精通している会計事務所を選ぶべきだろう。今回の財務諸表の公表義務化を機に、こうした点をしっかりと見極める必要がある。(介護ニュースより)
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2024年度に控える次の介護保険制度改正をめぐる議論が佳境に入った。
要介護1と2の高齢者に対する訪問介護、通所介護を市町村ごとの「総合事業」へ移管する構想について、今回は見送られるとの観測が強まっている。居宅介護支援のケアマネジメントで利用者負担を新たに徴収する案も、同様に見送られるという見方が広がっている。政府は年内に大枠の方針を決定する予定。
現場の関係者の抵抗が極めて強く、与党議員からも反対意見が噴出している。新型コロナウイルスの感染拡大や物価高騰などで利用者、事業者がともに苦しむなか、介護現場にとって厳しい制度改正は避けるべきという主張が多い。内閣支持率の低迷が影響を与えている、との指摘も少なくない。
厚生労働省もこれらを踏まえ、慎重に検討を進める姿勢をみせている。関係者の1人は、「(改正断行は)かなり難しい」と漏らす。28日の審議会でも、利用者、事業者の立場を代表する委員から強い反発の声が続出した。
自民党は29日朝の会合でこのテーマを俎上に載せた。幹部の1人は、「そろそろ党としての方針を決めなければいけない」と挨拶。調整にあたっている関係者は、「財務省はまだ諦めていない。最期まで油断できない」と話した。(介護ニュースより)
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介護保険制度改正知っておきたい8つのポイント①
介護保険制度改正知っておきたい8つのポイント②
A まず検討したいのは付与要件です。ある園では、お悔やみ休暇を付与する期間は、一番多い付与日数が5日であり、従来の規定では、「連続5日」としているだけだったので、それを死亡日の翌日から5日以内などで設定します。例えば、配偶者が9月3日(金)に亡くなった場合の連続5日のお悔やみ休暇は9月8日(水)までの期間で、付与することにしました。
結婚休暇の従来規定は、これも連続5日と規定していただけでした。ただ、実際には入籍後、落ち着いてからお披露目や旅行に行くケースが増えていることから、入籍後6か月以内に取得すること、としました。
また、特別休暇の申請時には、きちんと確認してから付与したいので、証明書も提出してもらうことにしました。公的なものでなくても、お悔やみ休暇なら葬儀案内などでも可としました。以上のような変更を行い、就業規則もその内容で改定しました。
このルール変更を導入後、お悔やみ休暇については、付与要件が明確になり、証明書の提出をしてもらうようになったからか、申請件数が減りました。職員からも「わかりやすいし
納得できる内容になった」という声も聞かれたようです。
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仕事のミスが多くクレームが入った職員に対して「始末書」の提出を求めたところ、その内容が「施設の指導が出来ていない為自分もミスをした」とまったく反省していない様子の始末書を提出してくる職員がいます。反省の色が見えず、始末書の意味がなくなっているような気がします。どうように対応したらいいでしょうか?
A 始末書というのは、業務などに規律違反をしたり、過失をしたりした場合に、その行為を反省し、謝罪し、同じことを繰り返させないようにする書面です。就業規則の制裁規定にも始末書に提示を求めています。
今回は、ミスが多くクレームまで入ってしまったので、その行為を反省してくれることを期待して提出を指示したのでしょう。しかし、反省するどころか施設へ責任転嫁していることがわかります。この場合、施設側が「指導をしたでしょう」と言ったところで「言った、言わない」の押し問答にしかならないのであれば、具体的な行動を振り返らせます。そして、改善することを具体的に指示し、ほかにも案があるならば自分から案を出してもよいように、ある程度「自由度」をいれると本人も書きやすくなります。
戒めるべきことは、「利用者さんのことを考えていなかったこと」ですから、話の途中で「自分はできていると思っても、利用者さんや他の職員はできているとは思っていない」ということを伝えるのです。そのうえで、「始末書」という書面ではなく、「改善提案書」と名称を変えるのもいいかもしれません。始末書というとどうしてもネガティブなイメージが強いからです。しかしここでも大切なのは、自分の行動を戒めて将来につなげることです。ですから書くハードルを下げ「改善提案書」に改めるというわけです。そしてこのフォーマットのなかに書くべき項目を入れ込んで記入してもらいます。ポイントは
- どんな状況でクレームが発生したのか
- それはどんな原因があったのか
- そうすればそれを改善できるのか具体的な例をあげる
- いつから実施するのか
人は埋め込み式の方が、書きやすくペンが進みます。まずは「自分の行動をふりかえり、反省してもらう」ことから始め、具体的な改善行動案を書いてもらいます。それでもできない場合には、「自分で書いたことなのになぜ実行がでいないのか」と面談で深堀していきます。
この書面を提出させるというのは、成長の過程もわかりますし、指導をしている実績もわかりますのでぜひともお勧めします。
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A 通常は出来ませんが、あらかじめ労働条件の変更を視野に入れた労働契約を締結していれば可能です。
労働契約の途中で事業主側が一方的に条件を変更することは原則としてできません。労働条件を変更するときは労働者との合意が必要になります。
一方、雇用期間を定めた契約であれば、契約の更新時に契約が変更になることを説明し、「新たな契約を締結しなおす」ということになります。いわゆる契約職員としての雇用形態です。
クリニックで多いのは、試用期間相当期間を「機関の定め有り」で契約し、その後に「契約期間の定めなし」の契約に転換する流れになります。つまり試用期間を3カ月に設定しているクリニックでは、採用時に通常であれば期間の定めなしで契約するところを、あえて3カ月の有期契約を結ぶということになります。そうして3カ月後に想定していた働きぶりが悪かった場合には、それに見合った新たな契約条件を提示し、本人が合意した場合には契約を更新するということになります。
但し、期間を定めた契約は、採用したものの、入職辞退につながる可能性もあることを認識しておかなければなりません。なぜなら、この3カ月の雇用期間は不安定と感じる職員もいます。優秀な人材は他のクリニックでも内定が出ている可能性があるので、別のクリニックに流れる可能性は否定できません。そのため通常であれば、「期間の定めなし」の契約として、面接などで人柄やスキルに不安が残る場合のみ「期間の定め有り」の契約にするといった運用にされるところが多いように思います。
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A 法的な規制はないため、支給基準や額などはどのように決めても問題はありません
通勤手当の支給について留意すべき点
通勤手当は、片道の通勤距離と手当の額によって所得税法上の非課税限度額が定められています。この限度額を超えて支給される通勤手当は課税の対象になります。また「通勤距離にかかわらず一律に支給される通勤手当」(例えば、マイカー通勤者全員に一律2万円支給など)も課税対象になるケースもありますので、ご注意ください。
マイカー通勤中、交通事故の加害者になった場合のクリニックの責任
マイカーを通勤だけでなく業務にも利用していた場合、事故の相手に対して運行供用者責任、または使用者責任(民法715条)が認められる可能性があります。
現実に事故を起こした本人が保険加入を行っている場合や、経済的に補償能力がない場合には、被害者がクリニックの責任を問題にする可能性も考えられます。
一定以上の任意保険加入を義務づけ、従わない場合には手当を支給しない
このような事態に備えて、マイカー通勤をするスタッフに一定補償額以上の保険に加入することを義務づけ、毎年許可申請をさせて確認するようにしましょう。万が一、事故を起こした場合には、クリニックに迷惑をかけないと誓約書を取っておくことも考えられます。
マイカー通勤のルールを整備し、事故を起こせば自分たちの責任では済まされないことを説明し、何らかの安全を確保するための措置を講じる必要もあります。
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保育士を養成する学校法人 三幸学園が保育現場でICTを活用できる人材の育成やキャリア職支援のために保育業界向けにICTツールを提供する(株)コドモンと提携することが発表されました。
いま保育の現場では、人材不足によって保育士の業務負荷が増え、その結果保育士が疲弊し、退職するという事象が多数起きています。
この問題を解決するためには2つの手段が考えられます。
それは、”人を採用する”か、”業務を効率化させて保育士の負担を減らす”かです。
実はこの2つの手段の両方にICTツールは関わってきます。
特に採用面でICTツールを導入するメリットは以下にあるといえるでしょう。
① 保育施設がICTツールを積極的に導入することで保育士の業務負担を減らして働き方改革を行なっていることは、採用活動においてポジティブなメッセージとして打ち出せる
② 人材を新規に採用する際に保育施設の人件費が増えるという問題が考えられますが、ICTツールを導入することで業務を効率化させ、その浮いた分の経費を人件費にまわすことができる
また、保育士の業務負荷を減らすのにICTツールが有効であることについては説明するまでもないでしょう。
ただ、いくら保育施設でITCツールを導入しようと思っても、肝心の保育事業所の経営者、人事担当者、現場職員がICTツールに詳しくないケースも保育業界ではよく見られます。
そういった時にあらかじめICTについての知見を持った人材や養成校でICT関連のノウハウを学んだ人材が保育施設にいると、様々なシーンで活躍できることでしょう。
既に保育施設で働かれている方々はICTに詳しい人材を積極登用し、時には意見を聞くという受け入れ体制についても必要となります。
今後は保育×ICTに関わる人材が増えることで、保育施設の業務が効率化され、保育施設での働き方が変わっていくことが業界全体で期待されています。
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政府は24日、今後の社会保障改革の方向性を定める「全世代型社会保障構築本部」を官邸で開いた。岸田文雄首相は加藤勝信厚生労働相に対し、介護人材の確保に向けた総合的な政策パッケージを年内にまとめるよう指示した。
「介護分野の人材確保、これは重要な課題」と改めて強調。「事業者の生産性向上と働きやすい職場環境作りのため、優良事業者の表彰、経営の見える化、介護ロボット・ICT機器の導入促進を含めた総合的な政策パッケージを、年末までに取りまとめて頂きたい」と要請した。介護職員の更なる賃上げには言及しなかった。
政府はこの日、各分野の改革の方向性を示す「論点整理」も提示した。介護については、「地域の拠点となる在宅サービス基盤の整備や地域包括支援センターの体制整備などを推進する」と明記。経営の協働化・大規模化による人材や資源の有効活用にも取り組むとした。ここでも介護職員の更なる賃上げには触れていない。(介護ニュースより)
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厚生労働省は今月14日、次の2024年度の介護保険制度改正に向けた協議を進めている審議会で、訪問介護と通所介護を組み合わせた複合型のサービス類型の新設を検討していく方針を示しました。この新サービスのゆくえと業界への影響について、論考したいと思います。
◆ 事業者からは前向きな声も
唐突な方針発表だと感じた人も多いかもしれませんが、私はかねてより、この組み合わせが検討されていると繰返し発信してきました。もともと、コロナ禍に伴う臨時的な特例措置として、通所介護事業所による訪問サービスの提供が認められていた経緯もあり、国は調査研究事業で実情を探るなど動きをみせていました。
この新サービス創設に懐疑的な目を向ける人も多いでしょう。特に、訪問サービスの担い手の確保が大きな課題になると指摘されています。
しかしながら、昨年度の国の調査結果では、通所介護と訪問介護の組み合わせに対する事業者の意向について、半数近くの事業者が「参入を前向きに検討したい」と答えたと報告されています。
厚労省が新サービス創設を検討する方針を示した背景には、こうした前向きな調査結果もあります。審議会で委員から否定的な意見があまり聞かれなかったことからも、実現可能性は高いと言えるでしょう。
ただし、課題や今後詰めるべき論点は多数あります。2024年度改正で本当に実現するか否かは、これから注意深くみていく必要があるでしょう。国は今年度も実態把握(*)に取り組んでおり、私もこうした動向から目を離さないようにしていきます。
* 今年度の実態把握=老健事業「地域の特性に応じた訪問介護サービスの提供体制のあり方に関する調査研究事業」
◆ 影響が大きいサービスは…
ここで、新サービスが創設された場合の業界への影響を考えてみたいと思います。相応の影響が及ぶとみられるのは、競合する小規模多機能型居宅介護、訪問介護、通所介護ではないでしょうか。
中でもインパクトが大きいのは、小多機だと思います。理想的なサービスモデルであり、事業所の拡大が長く期待されながら、運営難易度の高さから思うように増加していない、というのが小多機の現状です。人材確保の困難さや、内部ケアマネジャーの体制による利用者獲得への影響などが、普及を阻む課題だと指摘されています。
小多機から宿泊を除いた新サービスでは、夜勤職員の確保が不要なことからも運営難易度が下がるので、事業所数が増加し、競争激化も想定されます。他方で運営難易度が上がる小多機は、宿泊設備の活用方法などの課題はありますが、新サービスへ転換する動きが出る可能性もあり得ると思います。
また、訪問介護に大きな影響が生じる可能性もあります。ヘルパーの人材不足が深刻化している中で、新サービスが創設されれば、職員・利用者の確保に向けた競争が更に厳しくなると予想されます。また、訪問介護は施設設備を有していないので、新サービスへの転換も困難と言わざるを得ません。
それに対して通所介護については、もちろん競合としての影響は生じますが、新サービスへの転換を選択する余地が最も大きいと言えるでしょう。事業者は新サービスの中身をしっかりと吟味し、転換のメリットとデメリットを精査していくことのできる立場にあります。いずれにせよ、新サービスの中身がどうなるかによって各サービスへの影響の度合いも異なりますので、今後の議論のゆくえがポイントとなります。
◆ ヘルパー資格なども論点に
最後になりますが、この新サービス創設の狙いと今後の論点について考察したいと思います。
先の審議会資料では、「都市部における居宅要介護者の様々な介護ニーズに柔軟に対応できるよう」との記載があります。ここからは、都市部でヘルパーの確保が困難なことから生じている、訪問介護や小多機の事業所不足への“代替としての役割”が期待されていると読み取れます。また厚労省は、複合型サービス・包括報酬を給付費管理の観点からも推進していきたい立場であり、そのような背景から今回の新サービス創設が検討されたのだと推察されます。
その上で、新サービスが創設されることになった際の今後の議論のポイントを、改めていくつか確認していきます。例えば、
○ 報酬体系をどうするか、包括払いとするのか
○ 人員配置基準をどうするか、訪問サービスのヘルパー資格をどう扱うか
○ ケアマネジメントをどうするか、内部ケアマネの配置を義務付けるのか、居宅のケアマネが担うのか
などが注目ポイントとなるでしょう。
もっとも、まだまだこれらの論点については、厚労省内にも明確な答えや方針があるわけでは無いようです。今後の議論で決められることになるため、介護現場が団体などを通じてしっかりと意見していくことが重要であり、事業者はその議論のゆくえに注目していかなければなりません。(介護ニュースより)
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