コラム

【障害福祉報酬改定】生活介護、基本報酬の算定ルールを細分化 サービス提供時間の区分を導入 厚労省提案

厚生労働省は27日、来年度の障害福祉サービス報酬改定に向けた協議を重ねている有識者会議で生活介護を取り上げた

基本報酬の算定ルールの見直しを提案した。


現行は事業所の定員規模(*)に応じて、利用者の障害支援区分ごとに設定された単位数を算定する決まり。これがベースとなり、営業時間や平均利用時間が短い事業所などに減算が適用される。

* 生活介護の基本報酬の定員規模=20人以下、21人以上、41人以上など20人ごとに分けられており、規模が大きくなるほど低い単位数が設定されている。

厚労省はこうした基本報酬の仕組みを細分化し、よりきめ細かい柔軟なサービスの提供や費用の適正化などにつなげたいとした。具体的には、

◯ 事業所の定員規模、利用者の障害支援区分に加えて、サービスの提供時間別に基本報酬を設定してはどうか

◯ その場合、4時間未満、4時間以上5時間未満、5時間以上6時間未満、6時間以上7時間未満、7時間以上8時間未満、8時間以上9時間未満のように設定してはどうか

◯ 事業所の定員規模の分け方を、現行の20人ごとから10人ごとに改めてはどうか

と投げかけた。意見交換で強い反対の声が出なかったため、この方向性で細部の検討を進めていく構えをみせた。


きっかけの1つは財務省の審議会。今年5月の提言で、「利用者ごとのサービスの提供時間が基本報酬で十分に考慮されていない。かかるコストが適切に反映されるよう、提供時間の実態に基づいた報酬体系に見直す必要がある」と注文していた。


事業所の定員規模を10人ごとに細かく分けるのは、これとは異なる狙いがある。厚労省は会合で、「利用者数の変動により柔軟に対応できるようにする。小規模な事業所を運営しやすくするとともに、施設からの地域移行を促進する」と説明した。


厚労省はこのほか、8時間以上の営業時間を超えて生活介護を提供した場合の「延長支援加算」について、事業所の人員体制を確保する観点から見直しを検討する意向も示した。(介護ニュースより)

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【介護報酬改定】「ヘルパー不足は大きな社会問題」 訪問介護の事業者ら、基本報酬の大幅増を強く要請

来年度の介護報酬改定に向けた協議を重ねている国の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)は27日、介護現場の意見・要望を聴取する「関係団体ヒアリング」を実施した。

訪問介護の担い手でつくる団体が相次いでホームヘルパー不足の深刻さを訴えた。


日本ホームヘルパー協会は、「待ったなしの状況。事業所の経営に直接かつ甚大な影響を及ぼしており、事業者は倒産や事業所閉鎖などを余儀なくされている」と指摘。「人材不足は利用者の不利益に直結しており、将来的には地域包括ケアシステムの崩壊につながりかねない大きな社会問題だ」と強調した


全国社会福祉協議会の全国ホームヘルパー協議会も、「事業所が撤退する地域が全国各地で増加すると危惧している。なくてはならない社会資源である訪問介護の存在が危機的状況にある、ということにご留意頂きたい」と呼びかけた


両団体が強く求めたのは、やはり訪問介護の基本報酬の大幅な引き上げだ。


日本ホームヘルパー協会は、「採用時の研修に資金がかかるほか、物価上昇に伴う事務員らの給与増、ガソリン代の高騰などもあり、ますます経営が厳しくなっている」と説明。「土日・祝日・年末年始も活動を余儀なくされており、事業所はホームヘルパーに手当をつけて仕事をお願いしている。基本報酬の引き上げを」と要請した


全国ホームヘルパー協議会も、「基本報酬の抜本的な引き上げを」と注文した。あわせて、既存の「同一建物等減算」を取り上げ、「まだまだ公平性に欠ける。地域に住むひとりひとりの利用者宅を訪問している事業所と、同一建物内の利用者宅を短時間で多数訪問している事業所とでは、サービスに要する時間が全く異なる」と問題を提起。減算の更なる拡大などを提言し、それで得られる財源を主に地域の利用者宅を個別に訪問している事業所へ振り向けるべきと主張した。(介護ニュースより)

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少子化と向き合う 惑う現場(下)熟練保育士は手当7.8万円

子供を産み育てやすい町。少子化対策は人口減を止めたい自治体にとって最大のPR材料だ。

 「東京都に対抗して独自の手当を用意した。ようやく保育士の流出に歯止めをかけられた」

 こども家庭庁が21日に開いた会議で、千葉県松戸市の山内将課長が保育士の確保策を説明した。東京都に隣接するベッドタウンの同市は若手保育士に月4.5万円、ベテランに最大で月7.8万円の手当を出している。月4.4万円を補助する都を上回る。

 隣にある千葉県流山市も月4.3万円の手当を用意している。地方ほど生活費が安いことなどを考えると、より魅力的と言えるかもしれない。埼玉県戸田市は18年度から、市内で働く保育士に1人あたり年1回20万円の給付を始めた。

 自治体が処遇を競うのは、保育士不足に悩んでいるためだ。厚生労働省によると保育士の有効求人倍率は23年7月時点で2.45倍と、全職種平均の1.29倍を大きく上回る。他の自治体に流れると新規採用は難しい。待機児童が増えれば「子育て世代に冷たい町」となり、若い世代が流出してしまう。

 自治体の競い合いは子育て世帯の支援につながってきた。しかし、国が掲げる「異次元の少子化対策」には戸惑いが広がる。

 保育は質を確保するため、必要な保育士の数についてのルールがある。今は4歳児と5歳児の場合、1人の保育士がみられるのは30人まで。政府は6月、基準を75年ぶりに見直し、25人に1人の保育士とすれば増える運営費を補助するとした。

 親にとっては安心につながるが、運営は簡単ではない。「基準の見直しは大切だが、国が処遇改善をどう考えているのか曖昧だ」。埼玉県戸田市の担当者は処遇への支援がなければ、保育士の希望者は増えないと見る。

 保育士はそもそもなり手が足りない。22年の東京都の調査では、6割以上の保育士が「給料が安い」ことを離職理由にあげた。政府は12年度から21年度までに人事院勧告や経済対策などで給料を月平均で4万円以上改善させたが、厚労省による21年調査で平均賃金は月額25万6000円と、全体平均の33万4800円を大きく下回る。

 新たな保育への対応もある。最近は発達障害児の利用が増え、三重県津市では市内のどの保育所でもこうした子どもが在籍する。市の担当者は「要支援の保育士増員にかかる国の補助をもっと増やしてもらえれば」と漏らす。

 「異次元と言うが、実際に現場で働く保育士は同次元の人間だ」。あるこども家庭庁幹部は現場の事情に即した対策の難しさを痛感する。

 松野博一官房長官は少子化の進展を「静かなる有事」と表現した。対策の「自治体任せ」には限界がきている。(日本経済新聞 朝刊 経済・政策(5ページ)2023/9/29)

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少子化と向き合う 惑う現場(上) 「誰でも通園」足りぬ保育士

「誰でも通園制度」に向けたモデル事業が始まった

 

 「異次元の少子化対策」で現場に困惑が広がっている。誰でも子どもを預けられる保育事業はテスト段階から保育士が足りない。児童手当の増額は25年からと、あと1年半も待たねばならない。17月の出生数は再び過去最少ペースだ。現場の体制を整えなければ、少子化に歯止めはかけられない。

 

 誰でも子どもを預けられる保育所に、順番待ちの列ができている。

 

 有田焼で知られる佐賀県有田町は人口19000人の小さな町だ。あかさかルンビニー園は両親の働き方を問わず子どもを受け入れる「こども誰でも通園制度」(仮称)のモデル事業を始めた。週あたり10人の定員はすべて埋まり、これ以上の受け入れは難しい。

 

 高齢化が進む町で子どもは少ない。そして子ども以上に、保育士が足りない。

 

 「若い人は給料が高い都市の保育所に行ってしまう」。同町の川原聡美課長はこう漏らす。すでに保育士の3割は65歳以上の高齢者だ。離職した高齢の保育士に再び働いてもらうよう頼むケースも多い。子どもは誰でも受け入れたいが、保育士のなり手は見つからない。

 

 こども家庭庁は23年度、保育所の定員の空きを利用して週12回、未就園の子どもを預かるモデル事業を31自治体で始めた。いわゆる「ワンオペ育児」でふさぐ親も少なくなく、希望する人数の子どもを持てる環境作りは急務と言える。

 

 都市部では希望者があふれた。東京都文京区では61日の募集開始直後から応募が殺到し、今は150人程度がキャンセル待ちだ。

 

 現行のモデル事業では利用する曜日と時間を固定しているが、それでも希望者を受け入れきれない。「誰でも通園制度」は親が希望する日時に自由に預けられる仕組みを目指している。文京区の担当者は「日によって利用者数に偏りが出れば保育所の運営は難しい。人員確保も課題になる」と話す。

 

 異次元の少子化対策は誰もとりこぼさないことを意味する。しかし、現時点ではお金も人材も足りない。

 

 誰でも通園制度のモデル事業は国が費用の9割を負担しており、あかさかルンビニー園は月2000円前後で利用できる。全国展開になると国の負担が下がる可能性がある。財政規模の小さい町は多くの負担はできず「利用料が上がるかもしれない」(有田町の川原氏)。

 

 お金に余裕がある都市部でも人材確保は難題となる。品川区は子どもの安全確保のために職員の増員が必要になると気づいた。担当者は「園児1人分の空きがあるから1人受け入れられるという単純な話ではない」とため息をつく。(日本経済新聞 朝刊 経済・政策(5ページ)2023/9/27)

 

 あかさかルンビニー園の王寺直子園長は「保育士資格を持つ人だけでなく、保健師や栄養士などの専門職の保育も認めてほしい」と話す。毎日預かる子どもたちと違い、家庭で育つ子どもの面倒を見るのは専門的な知識のある人のほうが良いこともあるという。

 

 こども家庭庁は21日、「誰でも通園」の制度化に向けた検討会を立ち上げた。制度の概要案では生後6カ月~2歳の未就園の子どもを対象とする。事業者は自治体が選び、親が施設に直接予約する。

 

 病児保育などを手掛ける認定NPO法人フローレンス(東京・千代田)の赤坂緑代表理事は「円滑な導入に向けては、補助金のあり方や自治体の介入度合いなど、事業者の声を聞いた上での細やかな制度設計が重要になる」と語る。(日本経済新聞 朝刊 経済・政策(5ページ)2023/9/27)

 

 

「2024年問題」の行方 医師確保へ働き方改革急げ

日本経済新聞 朝刊 経済教室(26ページ)2023/9/26 

医療提供の視点からみた2024年度は、まず団塊世代が全員75歳を超え、サービス需要が急増するタイミングだ。一方、ワークライフバランスを重視する医師が近年急増し、命に関わる状況に対処する医療の供給能力が急速に先細りしていく。さらに244月には新たな働き方改革が始まる。

 

 地域差は大きいが、救急のたらい回しや手術の待ち期間の長期化など大きな副作用が予測される。しかしこの機を逃して働き方改革を先送りすると、数年後には日本の医療提供体制は悲惨な状況に陥り、それがどんどん悪化する可能性が高い。働き方改革を進めると同時に、診療報酬改定でも救急、外科系診療科、産科など医師が不足する診療科に医師が集まるような内容の改定を進めるべきだ。

 

 日本の医療提供体制が危機的な状況にある最大の要因は、04年に始まった新しい臨床研修制度だと筆者は考えている。それ以前の新人医師の多くは、診療科間の仕事内容の違いもわからないまま、いきなり大学の医局に入り研修を行った。大学医局で滅私奉公的な初期教育を510年程度受けた現在の50歳以上の医師の多くは「医療の王道は内科や外科。常に週80時間ほど病院にいる。請われれば過疎地でも働く」といった労働観を持つ人が多い。

 

 04年以降の初期臨床研修では、研修医は色々な診療科を回るようになり、「どこの診療科が大変か」を見極められるようになった。さらに午前9時~午後5時の研修時間を厳格に守ることが義務付けられ、現在40代前半以下の医師は、その前の世代の滅私奉公的な研修を経験せずに、最初の2年間の医師としての生活をスタートしている。その結果、価値観の変化も相まって、ワークライフバランスを重視する労働観を持つ若い医師が増えた。

 

 「お産や術後管理などで長時間労働を強いられる手術や救急は避けたい」という若い医師の声に象徴されるように、ワークライフバランスを重視する世代の医師の多くが夜勤のない定時勤務の診療を望むようになった。日本の医療は大都市の軽症向けのクリニックなどの受診は便利になった。一方で、がんになったときに手術をしてくれる外科医や、心筋梗塞や脳卒中が発症した時に対応してくれる救急部門で働く医師が減少し、「生命に関わる肝心な時に診てもらえない」方向に確実に向かっている。

 

 新臨床研修制度が始まるころから「医学部卒業生のうち、外科系診療科の入局を希望するのは12人あるいはゼロ」という話を聞くようになった。特に消化器の手術やケガへの対処をする一般外科への入局者は急速に減少した。198090年代には一般外科を希望する学生が多く、1学年10人以上が外科に入局することも珍しくなかった。

 

 98年から08年にかけて医師総数は249千人から287千人へと15%増え、さらに18年にかけては327千人へと14%増えている。一方、一般外科医に整形外科医・脳外科医・胸部外科医などを加えた外科系医師総数は同時期にそれぞれ5%10%の伸びにとどまった。一般外科を除くすべての診療科では98年から18年にかけて医師数が伸びているのに対し、一般外科ではいずれの期間も減少している。

 

 一般外科医の人数の推移を年齢階級別にみると、2039歳の減少率が突出して大きい。若い世代の一般外科医離れが影響しているとみられる。

 

 こうした環境でも、一般外科医不足がこれまで顕在化しなかったのは、一般外科医の多い現在55歳以上の世代が現役で働いているからだ。だが間もなくこの世代が引退を始める年齢に達し、手術提供能力が急低下することも予想される。

 

 そこへ追い打ちをかけるのが医師の働き方改革だ。244月から実施される医師の働き方改革では、時間外労働時間の上限は原則として年960時間、特例措置として年1860時間という2つの基準が設けられる。所定労働時間が週40時間とすると、年960時間の場合は週にならせば約58時間勤務、年1860時間の場合は約75時間勤務が上限となる。週58時間以上働く医師の大半は大学病院や救急患者を多数受け入れている病院で勤務し、診療科別では救急、外科系診療科、産科などに集中している。

 

 働き方改革とは、救急、外科系診療科、産科など人手不足を現在長時間労働で何とか成り立たせている診療科の労働時間を、強制的に週58時間もしくは75時間に短くする改革といえる。

 

 その結果、第1に夜間にこれまでのように医師を働かせることが困難になり、特に夜間救急患者を受け入れてくれる病院が非常に少なくなる。第2に手術提供能力の低下により手術の待ち期間が長くなり、がんになってもすぐに手術を受けられなくなる。こうした患者自身の命に関わる大きな副作用が伴う改革であることを国民は認識すべきだ。

 

 「子供が熱を出したときに診てくれていた病院が夜間の救急を中止する」「がんの手術を受けるまでの期間が1カ月から4カ月に伸びた」「地元の病院でお産ができなくなる」といった問題が今後生じかねない。

 

 ならば医師の働き方改革を中止すべきだろうか。筆者は問題発生を予想しつつも、医師の働き方改革は予定通り進めるべきだと考える。働き方改革を実施しなければ、救急医、外科系医師、産科医などのなり手がさらに減り、早晩大変な状況になり、年を経るごとにその状況は悪化の一途をたどることが予想される。

 

 こうした事態を回避するには、上記の診療科に進もうとする医師を増やすことが必要だ。増やすために最も大切なことは、これらの診療科に進んでも週58時間以上働くことはなく、ワークライフバランスが可能な生活が送れることを保証してあげることだ。働くのを苦にしない50歳以上の医師が現役で働くいま、働き方改革を進める必要がある。時期が遅くなるほど改革の実施が難しくなるだろう。

 

 働き方改革を乗り切るためにデジタルトランスフォーメーション(DX)により医療の生産性を上げることや、医師から他職種へのタスク(業務)シフトを進めることの重要性が指摘されている。筆者が提案するのは、手術やお産や救急に関わる医師の仕事は大変だが、その代わりに給与が他の診療科より高くなることを明示し、その診療科を目指す医師を増やすことだ。

 

 その具体策は、手術やお産や救急に関する診療報酬の一部を、病院を介してではなく医師に直接支払うドクターフィーを導入することだ。医師が一人前になるには卒後10年以上の年限が必要だ。今から大変な診療科で働く医師に対する金銭的インセンティブ(誘因)導入や働き方改革を契機に医療の生産性を高める取り組みを早急に進める必要がある。そうしないと、心筋梗塞や脳梗塞患者のたらい回しや、胃がん手術を早期に受けるために海外で手術をすることが常態化する国になっていく可能性は決して低くないだろう。

 

<ポイント>

○ワークライフバランス重視する医師急増

○激務の救急、外科系、産科の人手不足深刻

○医師に直接診療報酬支払う仕組み検討を

年収の壁、抜本対策先送り 企業助成1人50万円

政府は年収が一定額に達すると社会保険料が発生して手取りが減る「年収の壁」の対応策をまとめた。賃上げなどで労働者の収入が減らないよう企業に1人あたり最大50万円を助成するのが柱。今回の対策は3年程度の時限措置で、2025年に予定する制度改正で抜本改革に踏み切れるかが問われる。

 足元で賃上げが進むなか、年収の壁に引っかからないよう就業時間を減らすパートや派遣社員が増えている。新たな対策で深刻な人手不足に歯止めをかけるとともに、優遇策を通じて企業にさらなる賃上げを促す。

 壁には大きく年収に応じて「103万円」「106万円」「130万円」の3つがあり、額ごとに対策を講じる。保険料負担が大きい106万円の壁向けに、政府は助成制度を設ける。

 岸田文雄首相は25日、「まずは106万円の壁を乗り越えるための支援策を強力に講じていく」と強調した。週内に正式に決める。

 従業員101人以上の企業に勤める労働者は月額賃金が8.8万円以上などの要件を満たすと配偶者の扶養を外れる。壁を越えると約15万円の負担が発生するため、厚生労働省は年収換算で約106万円の壁の付近で就業時間を調整して手取りが減らないようにする人が最大60万人いると試算する。

 新たな対応策では手取りの減少を補うため、従業員が負担すべき保険料の増加分を手当として支給したり、基本給の増額と労働時間の延長に取り組んだりする企業を助成する。

 例えば、賃金の15%以上分を従業員に追加で支給すれば1~2年目でそれぞれ20万円、3年目にも一定の要件を満たせば10万円を助成する。扶養から外れた労働者の社会保険料分を、手当の支払いで支援した企業も支援する。

 実際の支給は最も早くて24年4月となる見通しだ。大企業の助成額は中小企業の4分の3になる。

 年収130万円の壁は、従業員100人以下の企業で年収が同額を超えると扶養から外れ社会保険料を納めなければならなくなることを指す。今回の対策では、急に残業が増えたなど一時的な収入増であれば、連続2年まで健康保険組合などの判断で扶養にとどまれるようにする。

 年収103万円の壁では、本人に所得税が発生するほか、企業のルール次第で配偶者手当が支給されなくなる。厚労省はガイドラインなどで企業に廃止や変更を含めて制度の見直しを働きかける。

 保険料の負担分を実質的に肩代わりする今回の助成策は、自ら保険料を納める他の労働者との公平性が保てない恐れがある。そもそも106万円の壁は負担が生じる代わりに年金額が増えたり、ケガや出産の際の給付が充実したりするなど、本来は「壁」と呼べないとの声も多い。

 支援策は25年の年金制度改正に合わせたつなぎ措置だ。今回の対策は、労働者が納めるべき保険料を国が実質的に補填する内容で、助成金による急場しのぎに過ぎない。

 厚労省は9月、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会で年収の壁を解消するための議論を始めた。年収の壁問題の抜本解決には、壁の内側で働いているうちは保険料を支払わずに給付が受けられる第3号被保険者のしくみを変える必要がある。

 専業主婦などの第3号被保険者には、夫婦それぞれが保険料を支払う共働き世帯などから「優遇だ」と批判がある。保険料を負担せずに給付を受けるのは社会保険の原則に反する。少額でも働いて収入を得たのなら、それに応じた保険料を納めるのが本来の姿といえる。

 とはいえ、年収が106万円に満たない人にも等しく保険料負担を求めるとすれば大きな反発は避けられない。今後3年の間に国民全員により公平で納得感のある形で、持続可能な抜本改革を実現させる必要がある。(日本経済新聞 朝刊 総合23ページ)2023/9/26)

保育士不足、復職で補う こども家庭庁~「補助者」支援金、有資格者も対象 就労アドバイザー新設

日本経済新聞 朝刊 総合35ページ)2023/9/24

こども家庭庁は2024年度から、保育士不足の緩和へ保育士資格を持つ人の復職支援を拡大する。業務を手伝う「保育補助者」として保育所などが有資格者を雇う際に支援金を出す。就職希望者の職場見学に同行する専門アドバイザーの新設も検討する。
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 保育補助者はクラス担任や保護者への対応はしない。子どもの着替えや食事の世話など保育士の手伝いが中心となる。一般的に保育士より業務負担は少ない。保育士資格もいらない。
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 政府は保育士の負担を軽くするため、施設が補助者を雇用する支援金の制度を16年から始めた。21年には331の地方自治体を通じて交付した。支援金は現在、資格のない人だけを対象とする。
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 支援金の交付対象に「潜在保育士」と呼ぶ有資格者も加える。現在は有資格者は保育士として働くことを前提とするが、まず補助者として職場復帰したいとの要望があった。
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 こども家庭庁が24年度の概算要求に支援金の支給要件の緩和を盛り込んだ。国が4分の3、自治体が4分の1を拠出し施設に給付する。定員が121人未満の施設は年に233万円ほど、121人以上だと467万円程度を支援する。
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 政府は「こども未来戦略方針」で保育の質の向上を今後3年間の計画に位置づけた。1人の保育士が担当する子どもの数を減らし目を行き届きやすくする。少子化で子どもの数は減るが、保育の質を向上させるため人員は必要となる。
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 政府は復職先を円滑に決めるため、保育所の就労環境や処遇の情報を提供する「保育士キャリアアドバイザー」を24年度に新設する。
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 アドバイザーは就職希望者の職場見学に同行し、本人に代わり事業者に給与や勤務時間などを質問する。本人が直接聞きにくいことを引き出し納得のいく就職にしてもらう。早期の離職を防ぐ目的もある。
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 こども家庭庁はアドバイザーを配置する自治体への月20万円の補助を概算要求に計上した。
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 保育士の資格を持つ登録者数(160万人超)のうち、実際は保育士として働いていない人は20年時点で1028000人だった。10年間でおよそ1.6倍に増えた。東京都の調査によると、退職理由として職場の人間関係や給与、労働時間が多かった。
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 保育士の有効求人倍率は22年度で2.46倍と、全体の平均(1.31倍)に比べて高い。潜在保育士の復帰で現場の人手不足の解消を促す。

正社員転換、助成を増額 ~厚労省、雇用期間「3年以内」撤廃

日本経済新聞 朝刊 1面(1ページ)2023/9/24

厚生労働省はパートや派遣といった有期雇用の労働者を正社員に転換した企業への助成金の要件を2024年度に緩和する。現在は同じ会社での雇用期間が通算6カ月以上3年以内の人を対象としているのを「6カ月以上」に変える。雇用の安定を後押しする。
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 現行制度は有期労働者を正社員にした場合、中小企業には1人あたり57万円、大企業には427500円を最大20人分まで支給している。有期の雇用期間が3年を上回る場合は対象外となっていた。
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 非正規の労働者を巡っては雇用の不安定さに加え、将来の低年金などの問題が指摘される。総務省の就業構造基本調査によると、非正規で働く女性は2210月時点で1447万人に上る。女性の雇用者に占める割合は53.2%と推計され、厚労省は改善の余地があるとみている。
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 今回あわせて助成金額も見直す。中小向けは60万円に、大企業向けは45万円に増額する。ただ、2人目以降はそれぞれ50万円、375千円に減額し、ばらまき色を薄めて財政に配慮する。
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 労働契約法は雇用期間が通算5年を超えた場合に、労働者は無期雇用への転換を申請できると定める。助成金がなくても有期雇用から脱する手立てがあることを考慮し、5年超の労働者に関しては助成金額を半額に抑える。
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 助成制度は13年度に導入し、22年度までの10年間で計78万人強の正社員転換を後押ししてきた。各業界で人手確保のため労働者を正社員として登用するなど処遇改善の動きは活発になっている。日本経済新聞 朝刊 1面(1ページ)2023/9/24

Q 評価はするも、結果をフィードバックしていないので、職員は何がどう評価されたかわからない

A 評価フィードバックを年2回実施し、さらに個別面談(毎月)にて課題解決のフォローを行っている。

解説)人事評価でもっとも大切なキーワードは何でしょうか。それは「透明性」と「納得感」です。透明性とは、人事評価でいえば、どういう評価項目で、だれがどのようなプロセスで評価をしているのかが明確であること。また「納得感」とは、なぜその評価結果になったのか被評価者が理解し、納得することです。しかしながらこの納得感が生まれるのはそう簡単にはいきません。なぜなら多くの職員は、自分は一所懸命仕事をし、それなりに仕事で貢献していると思っているからです。しかしながら、上司の評価がそのようなものでない場合には、だれしも心穏やかでは、いられないはずです。半ばあきらめて、表面的に納得したフリをしている場合も多いのではないでしょうか。それでは納得感を醸成するにはどうすればいいのか。まず、絶対に必要なのが、フィードバック面談です。面談では、自己評価と上司評価が明らかに違っている項目に着目し、その評価にした根拠を具体的に話し合うことで、お互いの視点や期待レベルを知ることができ、初めて「納得感」が醸成されてくるものです。

 

Q 職員の休職に関する相談です。現在の就業規則では「欠勤が1か月以上にわたったとき・・・休職期間は3カ月」とあります。ただ、休職および復職を命ずる判断基準等の詳細の定めはありません。就業規則の規定についてアドバイスをお願いします。

 

A 休職制度を設けるのであれば、休職と復職を命じるかどうかを判断する上での、公正な客観的な判断基準が必要です。その他にも就業規則に盛り込むべき内容は下記になります。

①休職について

・休職を命じる職員に要件

・休職を命じる判断基準

・休職期間

・休職中の賃金

・休職中の留意点

②復職について

・復職後の働き方

・復職を命じる判断基準

③休職期間完了時の取り扱い

上記の中で、休職を命じる判断基準では、例えば、「診断書の提出」はもちろん、「回復に何年もかかる場合には休職は命じない」または「業務外の同じ傷病が理由で欠勤と出勤を繰り返すようなときには休職は命じない」など、状況を想定しながら規定に落とし込んでいく作業が必要となります。休職期間については、「休職期間中であっても園は社会保険を負担しなければならないので、これまでの貢献度合いを考慮し、勤続年数が長い職員と短い職員では差を設ける」ことも大切です。

 復職については、復職を命じる判断基準は、本人の復職願いの提出の他、主治医の診断書、本人との面談実施や園指定の医療機関の受診なども必要です。また、復職後、もし同じ傷病で欠勤した場合には復職を取消、直ちに休職を命じることとし、休職期間は、前の休職期間と通算すること等の規程も必要です。

休職期間満了後の取り扱いについては、回復を見込んで休職を命じたけれど、回復できない場合には、残念だけど退職とせざるを得ない、ということで、休職期間満了日をもって退職とします。

 まずは、上記の内容を規定に明記しておくことで、いざというときには、冷静に対処できるようになります。

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