保育

【保育園】人材定着ブログ3月号~ワークライフバランス

「スタッフが働き続けられるワークライフバランス支援の仕組みづくり」


前号に引き続き、テーマは「ワークライフバランス」です。今回は、「導入に向けた取り組みについて」から始めます。


1、導入に向けた取り組み
事業所の経営者の方々と話していると、こんな声をよく聞きます。「大切な取り組みであることはわかっているけども、ただでさえ人手不足なのにそのうえ、残業削減、有給休暇取得促進によって現場が回っていくのか、サービスの低下につながるのではないか」。初めての取り組みゆえに、このような心配はよくわかります。しかし、取り組まないことへのデメリット、取り組むことへのメリットを考えて判断していくことが大切なのではないでしょうか。介護業界を取りまく環境の変化への対応と、人材の確保(採用と定着)、今後の法人イメージなどについて、それぞれに影響を洗い出したうえで考えてみてはいかがでしょうか。まずは、出来ることからスタートすることが大切だと思います。
それでは、その取り組み方について、大まかなステップについて説明させていただきます。

(1) ステップ1
まずは、ワークライフバランスや働き方改革への取り組みについて、その目的を明確にして、それを社員に伝えていくことです。例えば、なぜワークライフバランスや働き方改革が必要なのか、なぜわが社はとり組むのか、どんなメリットがあるのか等をしっかり伝え、理解浸透を深めることが必要です。
例えば、ワークライフバランスを実現するための手段の一つである「ロボット・ICT導入」でも、重要なことは「なぜ導入するのか?」「導入して何を目指すのか?」など目的や目標を含めた「定義づけ」をあらかじめしっかりと行っておくことです。そのうえで導入後の「あるべき姿」を職員間で共有することです。さもないと「面倒だ」「邪魔だ」などの理由で、使用を拒絶されることもあります。ロボット・ICT導入に限らず、「導入の定義づけ」、「あるべき姿」を共有していき、それを実現する為の手段という位置づけで推進することがとても重要です。

(2) ステップ2
意識や風土の醸成から取り組みを始めることです。よく、こんな声を聴きます。育児介護と仕事の両立に向けて制度を整えたが実際には使ってもらえない、または、業務効率化に向けて従業員に「インカム」を持たせてコミュニケーションの円滑化をはかったが、実際にはあまり使用されない。これらは、「制度」から入った失敗例といえるのではないでしょうか。制度を導入して、取り組みを行ったつもりでいるのは上層部だけで、実際にはそのような制度を活用できる「風土」がないと制度は機能しません。言ってみれば、「上」からの指示でスタートしても、「やらされた感」的な印象で取り組む限りそれは長続きしません。社員がその目的と必要性をよく理解し、主体的に取り組めるような状況(組織風土)が必要なのです。
それでは、組織風土の醸成にはどのような取り組みが必要なのでしょうか。例えば、ある法人では「理念」の共通理解を促進するためにセミナーや研修、ワークショップなどを行い、さらに職員満足度調査を行ってアンケート調査やヒアリング、座談会などを行っている組織もあります。それらに共通している取り組みは、「一方通行ではないコミュニケーションの充実化」です。職場におけるコミュニケーションの充実化が最も重要であると言われる経営者や管理者の方々は非常に多いのですが、それを具体的な取り組みとして、どれだけの時間と人的パワーを捻出しているでしょうか?大事だとわかっていても、社員との面談も行えていないという職場も多いのではないかと思います。熱心に取り組む法人のなかには、毎月1回上司との面談を行い、管理者に向けては施設長や理事長とも定期的に面談する機会を設けているところもあります。なんとこの介護施設は延べで年間4000回の面談を設けているそうです。また別の法人では社員の意見に耳を傾け、その中で貴重な意見があれば、経営にも取り込むといった真摯な姿勢、また面談だけではなく、説明会・研修会・小グループでの懇談会などを通じて、社員全員の理解と共有化を推進しているところもあります。そのような取り組みを継続して行っていくことで、徐々に良好な風土が醸成されていき、その結果として、働き方改革やワークラーフバランスなどの「新しい取り組み」に対しても前向きな姿勢で「やってみよう」という雰囲気が生まれ、自主的な取り組みにつながっていくのではないかと思います。


次号に続きます。

保育事業者様向け情報(労務)2月号④

ハラスメントの相談窓口設置と相談があった際に求められる適切な対応

会社には、セクシュアルハラスメントやいわゆるマタニティハラスメント
(以下、「ハラスメント」という)の防止措置を講じることが、法律で義務付けられています。
具体的には、会社の方針を明確にし、相談窓口を設置、相談があったときには迅速で正確な
対応を行うこと等が求められています。ここでは、ハラスメントの相談窓口を設置するときの
ポイントと、相談があった際の対応について確認しておきます。

1.相談窓口設置のポイント

ハラスメント対策としては、まずハラスメントが発生しないように予防に力を入れることが
重要ですが、万が一、問題が発生したときに適切な対応を行い、確実に解決できるように
するために、被害者やその周囲の従業員が相談できる窓口を作ることも重要です。
相談窓口が効果的に利用されるためには、男性および女性担当者を置くこと、電話や
面談のみならず相談をしたことが周囲に気づかれにくいよう、メールによる相談も
受け付けること等の対応を行うことが好ましいとされています。
その他、社内の相談窓口だけでなく、外部機関に相談窓口を作るケースもあります。

2.相談があった際の対応

相談窓口に相談があったときには、ハラスメントの被害が拡大しないように、迅速な対応が
求められます。
被害者の意向を踏まえた上で、解決のためには事実関係を正確に把握することが求められ、
相談を受けた際の流れについてマニュアルを作成し、それに基づき対応します。
相談者および行為者とされた従業員にヒアリングを行う際には、確認すべき事項に漏れが
ないように、あらかじめ、発生日時、場所、状況、他者への相談状況、相談者の希望などの
項目を記載したヒアリングシートを作成しておくことが有効です。
また、相談をした被害者にとって、会社がどのような対応を行ったかは、とても気になる
ものです。確認や対応方法の決定に時間を要することもありますが、時間が経過することで、
相談のあった内容を悪化させたり、被害を拡大させたり、また会社が適切に対応していないと
誤解を生じさせるおそれもあります。相談者には対応の目途等の状況を伝えておき、時間を
要するときには随時、状況を伝えるといった工夫も必要になります。

2018年12月14日に行われた厚生労働省の労働政策審議会では、職場のパワーハラスメント
(以下、「パワハラ」という)の防止対策について今後の制度改正に向けた報告書がまとめ
られ、パワハラの定義や典型的なケース、企業がとるべき対応などについて、今後、指針で
示すことが適当であるとされました。企業
はパワハラも含めた総合的なハラスメント防止対
策が求められることになります。

(来月号に続く)

保育事業者様向け情報(労務)2月号③

新たに策定されたテレワークに関するガイドライン

これまでは、会社に出社し会社で仕事を行うということが当たり前でしたが、近年、
ICT(情報通信技術)の発展に伴い、一部の仕事では、場所や時間を選ばずに働くことが
できるようになりました。このような環境の変化を受け、厚生労働省はこれまで
示していた在宅勤務に関するガイドライン(※1)を改定し、テレワークに関する
ガイドライン(※2)を策定しました。

1.テレワークの分類

新たに策定されたテレワークに関するガイドラインは、テレワークを以下の3種類に
分けてメリットを示しています。テレワークの導入を検討するときには、以下のような
形態があることを押さえ、進めるようにしましょう。

①在宅勤務

通勤の必要がないため、時間を有効に活用することが可能となり、仕事と家庭⽣活との
両⽴に繋がる。

②サテライトオフィス勤務

⾃宅近くや通勤途中の場所などに設けられたサテライトオフィスを利用することで、
通勤時間を短縮しつつ、作業環境の整った場所での就労が可能となる。

③モバイル勤務

労働者が⾃由に働く場所を選択できる、外勤における移動時間を利用できる等、業務の
効率化を図ることが可能となる。

2.労働時間の取り扱い

テレワークを行うときでも労働基準法が適用されるため、労働時間をどのように把握し、
管理するかが課題となります。その際、従業員が事業場外にいることから、事業場外
みなし労働時間制を適用することも考えられますが、適用するためには以下のaおよびbの
要件を満たす必要があります。

a.情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態となっていないこと(=情報通信
機器を通じた使用者の指示に即応する義務がない状態を指す)

b.随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を⾏っていないこと

また、1の③のモバイル勤務においても、通勤時間や出張などの移動時間中にICTを利用して
業務を行うことができ、その業務が会社の明示または黙示の指揮命令下で行われたのであれば、
労働時間に該当することになります。

会社が積極的にテレワークを進めていない場合でも、ネット環境の充実などにより従業員
が自己判断で、テレワークを行っている事例も見られます。柔軟に場所や時間を選びながら
働くことができることは、従業員にとってメリットがありますが、情報漏えいの問題や長時
間労働、持ち帰り残業による未払い残業代の発生リスクもあります。テレワークを行うとき
には、会社は一定のルールのもとで実施させる必要があります。

※1 情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン
※2 情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン

(次号に続く)

保育事業者様向け情報(労務)2月号②

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:2月に中途採用の従業員が入社します。会社では、毎年5月に定期健康診断を実施し
     ているので、この従業員は雇入時の健康診断を実施せずに、定期健康診断を受けさ
     せようと思いますが、問題はありますか?

社労士 :雇入時の健康診断は、雇入後、従業員を配属する際に健康上の配慮が必要であるか
     どうかを確認したり、入社後の健康管理の基礎資料としたりするために行うもので
     す。これに対し、定期健康診断は、従業員の健康状態を定期的に把握し、その結果
     によって就業上の必要な措置を講じることとなります。同じ健康診断ではあります
     が、目的に違いがあるため雇入時の健康診断は実施しなければなりません。

総務部長:なるほど、承知しました。ちなみに、雇入時の健康診断はいつ実施するべきもので
     すか。

社労士 :はい、先ほど説明したような目的があるため、入社の直前または直後に行うと通達
     で示されています。ただし、入社の際に健康診断を受けてから3ヶ月以内の人が、健
     康診断の結果を提出したときには、雇入時の健康診断を省略することができます。

総務部長:転職者が前の職場で3ヶ月以内に定期健康診断を受け、その結果を提出するような
     ケースですね。

社労士 :はい、そのようなケースが想定されます。労働安全衛生法で定められている健康診
     断は、健康診断の種類ごとに実施項目が決められています。定期健康診断は、医師
     が必要でないと認めるときは一定の項目について省略することができますが、雇入
     時の健康診断では省略することが認められていません。前職の定期健康診断の結果
     を提出するようなときには、実施項目を満たしているかどうか確認してください。
     満たしていないときには、少なくともその項目について実施する必要があります。

総務部長:承知しました。雇入時の健康診断に関しては分かりましたが、5月の定期健康診断も
     受けさせる必要があるのでしょうか?

社労士 :雇入時の健康診断を受けた人については、健康診断の実施日から1年間は定期健康診
     断の実施項目に相当するものを省略できることになっています。つまり、2月に雇入
     時の健康診断をしたとすると、少なくとも翌年2月には定期健康診断の実施が必要に
     なります。来年も5月に定期健康診断を実施する予定であれば、問題となりますね。

総務部長:なるほど。来年以降も5月を予定しており、この従業員だけ異なる時期に実施するわ
     けにはいかないので、今年5月の定期健康診断も受けさせることにします。

【ワンポイントアドバイス】
1. 雇入時の健康診断は、雇入後の適正配置や健康管理の基礎資料とするためのものであり、
必ず実施しなければならない。
2. 入社時に健康診断を受けてから3ヶ月以内の人が、健康診断の結果を提出した場合、その
実施項目については省略することができる。

(次号に続く)

保育事業者様向け情報(労務)2月号①

早めの着手が求められる同一労働同一賃金への対応

働き方改革関連法は2019年4月より、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の
取得義務化といった労働時間規制が先行して施行されますが、その後、大企業は
2020年4月から、中小企業は2021年4月から施行される同一労働同一賃金への対応も
重要となります。その同一労働同一賃金の内容について見ていきましょう。

1.同一労働同一賃金の背景

これまでは、正社員が事業の中心となる業務を担当し、一時的な繁忙時の対応や補助的な
業務をパートタイマー等の非正規社員が行うといった役割分担により、日本の雇用制度は
成り立っていました。一方で、優秀な非正規社員が業務の幅を広げ、正社員の職務の一部を
担うようになり、人件費が相対的に低いまま非正規社員に業務を任せる企業が増加したことに
より、正社員と非正規社員の賃金を始めとする待遇の差が生まれてきました。

そこで、同一企業内における正社員と非正規社員との間の不合理な待遇の差をなくし、
どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けられるようにし、多様で柔軟な
働き方を選択できるようにすることを目的に、働き方改革関連法で同一労働同一賃金が
規定されました。

2.同一労働同一賃金への取組手順

正社員や非正規社員の職務内容等は、企業ごとに定められており、その待遇の差も様々です。
そのため、同一労働同一賃金へ向けた対応は企業ごとに異なります。東京労働局が企業向けに
開催した説明会の資料によると、取組手順の全体の流れを下図のように示しています。
まずは自社の状況を分析することから、始めていきましょう。

以前から示されていた「同一労働同一賃金ガイドライン(案)」が、厚生労働省で審議を
経て、2018年12月28日に「同一労働同一賃金ガイドライン」として公開されました。自社を
分析し、取組が必要と判断したときは、このガイドラインに従って企業ごとに対応を進めて
いく必要があります。

(次号に続く)

【保育園】人材定着ブログ2月号~ワークライフバランス

「園のスタッフが働き続けられるワークライフバランス支援の仕組みづくり」


1、 働き方改革とワークライフバランス
みなさん、ご承知のとおり来年以降の法律改正の目玉となるであろう「働き方改革」関連法案。来年から、今まで特に規制がなかった労働法の分野に関して、一段と厳しい規制が法律となり導入されます。従来は当たり前であった「働き方」が、これからは、規制の対象になる時代が訪れようとしています。それでは、国が考えている働き方改革の本質とはいったいどのようなものなのでしょうか?それは「職場で働く従業員全員のワークライフバランスを考えながら、働きやすく、働きがいのある職場作りと生産性の向上を進めること」です。つまり、働きやすい職場や働きがいのある職場で生産性を向上させる為にも「ワークライフバランス」を進めていくことが必要不可欠なのであります。

2、ワークライフバランスの意義
従来、「仕事の成果」と「社員の私生活」とは、全く別物という発想で、どちらかを得るには、どちらかを犠牲にするしかないと考えられていました。しかしながら
これからのワークラーフバランスの考え方には、どちらも大切にすることが両者とって有益に働き、相乗効果を生むことが分ってきました。例えば、10時間の使い方として、バランスをとって「仕事5時間+私生活5時間」で過ごす方法があります。またすこしゆとりをもって「仕事4時間+私生活6時間」といった時間配分が良いように思われがちですが、それは誤解であり間違いです。なぜならこれは単にそれぞれの時間的な使い方のみにかたより、双方の相乗効果という視点では考えていないからです。相乗効果が生まれた状態とは、今まで10時間で100の仕事を行っていたが、同じ仕事を8時間で行った状態のことで、まさにそれは、「生産性向上」の取り組みにつながるのです。
また、私生活の充実は、精神的にもまた肉体的にもゆとりにつながり、それが仕事へのモチベーションにもつながります。さらに、私生活の充実が図れるような福利厚生制度などで会社からの後押しがあれば、それを活用しやすくなりますし、何より、会社に対する感謝の念や忠誠心が高まることで、結果的に職場における定着率も上がるということにつながります。

3、ワークライフバランスのメリット
それではここで、ワークワーフバランスの推進を図ることで、どのようなメリットがあるのか、当事者ごとで具体的に整理してみましょう。
会社
生産性の向上により人材の効率的活用が可能になり、結果として収益面のメリットが実現し、持続的な成長を可能にします。また、働きやすさと働きがいのある職場作りによる優秀な人材確保・定着さらには地域における法人のイメージが向上します。
社員
ワークライフバランスの実現による人生の充実(心身の健康、家族との時間・趣味・自己研鑽・社会活動など)を図ることが出来、結果として、人間力の向上につながります。家族:家族時間確保により幸福度がアップし、社員の家事・育児への参画により配偶者も仕事や趣味などの人生の充実や世帯収入のアップにつながります。
取引先
ワークラーフバランスを配慮した取引をすることにより、働き方改革の風潮の波及効果(取り組みのきっかけ作りなど)が見込まれます。
お客様、ご利用者
  働き方改革により生産性向上や多様な人材の活躍が実現すると、お客様が受給で
  きるサービスの品質が向上します

以上がワークライフバランスの主なメリットなのですが、それがわかっていても、なかなか取り組みが進まないのが現状といった事業所も多いのではないかと思います。


次号に続きます・・・・。

保育事業者様向け情報(経営)1月号

保育施設でみられる人事労務Q&A

『採用選考において不適切とされている質問』

Q:

先日、採用面接をした応募者から内定辞退の電話がありました。理由を考えた
ところ、面接で家族の職業を尋ねた際に、かなり怪訝そうな顔をしていた気がし
ます。面接で尋ねてはいけない質問があるのでしょうか。

A:

業務に直接関係のない質問によって、意図せず応募者が就職差別をされている
ように感じ、それだけを理由に内定を辞退するということがあります。また、公
正な採用が行われるよう、法令でも本人に責任のないことや本来自由であるべき
こと等、禁止されている質問事項があります。

詳細解説:

採用の際には、求職者がどのような人かを施設が見極めるため、面接でさまざまな質
問をしますが、ときに施設が行う質問が応募者に不快な思いをさせ、結果、内定辞退を
招いてしまうということがあります。今回の家族の職業を尋ねる質問は、家族の扶養
義務があるかどうか、育児や介護等で時間の配慮が必要ではないかといった目的で
質問するケースがあり、目的自体には何ら問題がないように思われます。しかし、応
募者によっては答えたくない内容もあり、気分を悪くさせてしまうことが考えられます。
また、国は差別のない採用選考が行われるよう法令で制約を設けており、応募者の適性
や能力のみを基準として選考を行うことを原則としています。法令で具体的に不適切とさ
れている質問事項としては、次の事項が挙げられます。

1.本⼈に責任のない事項
 本籍地や出⽣地に関すること(⼾籍謄本等を提出させることもこれに該当)
 家族に関すること(職業、続柄、病歴、地位、収⼊、家族構成等)
 住宅状況に関すること(住宅の種類、間取り等)
 ⽣活環境・家族環境に関すること 等
2.本来⾃由であるべき事項
 宗教に関すること
 ⽀持政党に関すること
 ⼈⽣観、信条に関すること
 尊敬する⼈物に関すること
 労働組合に関する情報(加⼊状況や活動歴等)
 購読新聞、雑誌などに関すること 等

面接では一緒に働くことになる人をなるべく知ろうとして、さまざまな質問をすること
になりますが、中には就職差別につながってしまう質問が含まれていることがあり、それ
によって内定を辞退されてしまうだけでなく、SNS 等で批判的な書き込みをされてしまう
ことも考えられます。不適切とされる質問事項を押さえ、応募者の気分を悪くさせること
のないよう、注意して選考活動を進めることが重要です。

(来月に続く)

保育事業者様向け情報(労務)1月号④

より適正な選出が求められる従業員の過半数代表者

年度単位(4月から翌年3月)で36協定を締結している企業では、新年度に向けて36協定の準備を
進める頃かと思います。36協定では、従業員の過半数で組織する労働組合がない場合、従業員の
過半数代表者(以下、「過半数代表者」という)を選出する必要がありますが、その適正な
選出の重要性が増しています。

1.過半数代表者の適正な選出

過半数代表者を選出するときは、管理監督者に該当しないこと、どのような労使協定を
締結するかを明確にした上で、投票、挙手、従業員による話し合い等の民主的な手続きが
とられていることといった要件を満たしている必要があります。
現状では、会社側が過半数代表者を指名するといった不適切な取扱いをしていた事例が
見られることから、2019年4月より、「使用者の意向に基づき選出されたものではないこ
と」という要件がさらに追加されます。 

2.過半数代表者を必要とする協定

36協定のほかにも、過半数代表者との書面による協定等を必要とするものがあります。
主なものは次のとおりです。

・賃⾦控除に関する労使協定
・1ヶ月単位の変形労働時間制の労使協定(就業規則で規定しない場合)
・1年単位の変形労働時間制の労使協定
・1週間単位の変形労働時間制の労使協定
・専門業務型裁量労働制の労使協定
・事業場外労働の労使協定(みなし時間が8時間を超える場合のみ)
・一⻫休憩の適⽤除外に関する労使協定
・年次有給休暇の時間単位の取得の労使協定
・年次有給休暇の計画的付与の労使協定
・育児・介護休業等の適⽤除外者に関する労使協定
・就業規則の意⾒聴取

協定の種類によって、毎年、締結が必要なものがあるため、有効期限が到来していない
か点検しておきましょう。また、労働基準監督署への届出の要否についても協定ごとに異
なります。

3.就業規則・36協定の本社一括届

労使協定等の労働基準監督署への届出は、複数の事業場がある企業では、原則として事
業場ごとに行うことになっています。
就業規則や36協定については、本社と各事業場の内容が同一である場合等の要件を満た
した場合、本社において一括して届け出ることが可能です。ただし、36協定については、
各事業場の従業員の過半数で組織された労働組合があることが、一括で届け出る要件と
なっているため、過半数代表者を選出する企業では、36協定を本社において一括して届け
出ることができません。

従業員の過半数代表者の選出母数となる従業員には、管理監督者を含み、その事業場で雇
用される従業員全員が対象になります。管理監督者は過半数代表者にはなれませんが、選出
母数には含める必要があります。選出母数となる人数が正確に把握されていないと、適正な
過半数代表であるかどうかの確認ができないことになります。労働基準監督署による監督指
導などで指摘を受けないようにするためにも、適正な選出を行うようにしましょう。

(来月に続く)

保育事業者様向け情報(労務)1月号③

10月1日からマイナポータルで作成が可能となった就労証明書

子どもを認可保育所に預けて働く従業員は、居住地の市区町村に働いていることの証明である
「就労証明書」を提出することが求められます。会社は従業員の求めに応じて、定期的に
就労証明書を発行しますが、10月1日よりこの作成をマイナポータルで簡単に行うことが
できるようになりました。

1.就労証明書とは

認可保育所は、両親等を始めとした子どもを保育するべき人が、働いている等の理由から
保育ができないときに、代わりに子どもを保育するということが前提になっています。
そのため、会社に勤務している従業員が入所を申込む際には、入所の申請書に会社が
作成した就労証明書を添付します。
また、働いている事実を証明することが定期的に確認され、子どもを保育所に入所させ
た後も、度々、就労証明書の提出が求められます。ちなみに就労証明書には、勤務の実態
を記載するため、勤務先、勤務形態、就労日、就労時間、雇用開始日、収入等、かなり
多くの項目を記入します。

2.利便性が向上した就労証明書の作成

就労証明書は保育所のある市区町村に提出しますが、その様式は市区町村ごとに異なっ
ており、通常、従業員が白紙の様式を会社に提出したり、会社が各市区町村のホームペー
ジにアクセスして、白紙の様式をダウンロードしたりして、その様式に手書きをすること
で証明書の作成を行っています。
2018年10月1日より、マイナポータルに「就労証明書作成コーナー」が設けられ、
このマイナポータル内で市区町村ごとの様式を検索、ダウンロードができるように
なりました。さらにウェブの画面上(マイナポータル上の作成コーナー)で就労証明書に
記載すべき項目を入力することにより、就労証明書が作成できる機能の提供が開始
されました。なお、企業の人事管理ソフトによっては、ソフト操作の一環として
作成することができるようになるとのことです。

3.就労証明書の提出方法

作成が完了した就労証明書は、紙に印刷し社印を押印の上、従業員に交付します。従業
員は交付された証明書をこれまでどおり市区町村に提出するほか、一部の市区町村ではマ
イナポータルを通じ、電子申請を行うことも可能です。

マイナポータルで作成した就労証明書は、電子ファイルとしてダウンロードし、保存する
ことができます。1名の従業員に対し、定期的に発行が必要なことがあるため、従業員の基
本的な情報を入力した上でファイルを保存し、変更のある部分のみ手書きで追記するような
利用法も考えられるでしょう。

(次号に続く)

保育事業者様向け情報(労務)1月号②

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:従業員が引越しをして、通勤手当の額が変更になっていたにも関わらず、会社に届
     出をしていないことが分かりました。この場合、過払いとなった通勤手当を返して
     もらうことは可能でしょうか?

社労士 :過払いですので、通勤手当を減らすべきだったということですね。いつ引越しをさ
     れたのでしょうか?

総務部長:6ヶ月前になります。就業規則には引越し等により通勤経路が変わったときは届け出
     ることを規定してあり、通勤手当はこの届出に基づき変更するとしてあります。た
     だ、従業員自身は、届出が必要であることを知らなかったようです。

社労士 :なるほど。その従業員には届出なかったことに対する悪意はないようですが、今回
     の過払い分については、従業員から返還してもらうことが可能です。民法には不当
     利得返還請求権の定めがあり、本来受け取るべき金額を超えて手当を受け取ってい
     る場合には、その差額の返還請求をすることができます。

総務部長:なるほど。今回は従業員本人の届出漏れですが、届出があったものに対し、会社が
     届出の処理を失念し、過払いとなった場合も返還してもらうことが可能でしょう
     か?

社労士 :この場合も可能です。不当利得は従業員、会社のいずれの過失の有無に関係なく、
     返還してもらうことができます。

総務部長:なるほど。今回は6ヶ月分ですが過去何年分まで、返還してもらうことができるので
     しょうか?

社労士 :賃金の請求権は2年、退職金の請求権は5年で時効により消滅しますが、この不当利
     得返還請求権は原則10年となっています。

総務部長:もし過去3年間にわたって過払いとなっていても、返還してもらうことが可能という
     ことですね。

社労士 :そのとおりです。金額が大きい場合には、分割で返還をするというような配慮は必
     要になろうかと思います。併せて、就業規則や賃金規程を整備しておくことが望ま
     しいでしょう。具体的には、届出をいつまでにするのか、届出が遅れた場合の手当
     の支給はどうなるのか、また返還させることがあることなど、取扱いを定めておく
     とよいですね。

総務部長:確かに就業規則や賃金規程に定めをしておくと、従業員にとって分かりやすく、返還
     を求める際の根拠も明確になりますね。

【ワンポイントアドバイス】
1. 従業員本人の届出漏れや給与計算の誤りにより過払いがあった場合、
 不当利得返還請求権により原則として10年前までさかのぼって返還
 させることが可能である。
2. 就業規則や賃金規程に、届出のルールや返還の義務があることなどを
 規定しておくことが望まれる。

(次号に続く)

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