保育
A, 当該社員は定年迎えるということで、定年後再雇用をしないということが考えられますが、それが出来るかどうかが問題になるところです。
平成25年4月1日より改正高年齢者等の雇用の安定等の関する法律が施行されています。この改正では、定年に達した人を引き続き雇用する「雇用継続制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みが廃止されました。ただ、従来このような仕組みを設けていた場合には、経過措置として、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢(令和4年3月31日までであれば63歳)を超える年齢の者について、なお雇用継続制度の対象者を限定する基準を定めることは可能となります。
逆にいうと、60歳定年で雇用継続制度をとっている場合、本人が希望するときは、解雇事由や退職事由にあたる事由がないかぎり、少なくとも上記支給開始までは再雇用する必要があります。再雇用基準を適用できるのは上記支給開始年齢を超えて再雇用するかどうかを判断するときになります。
従って、御質問にある問題社員が再雇用を希望した場合、その時に再雇用基準を満たしていなかったとしても、少なくとも上記支給開始年齢までは再雇用をする必要があります。
2,解雇することはできるのか
仮に再雇用拒否が出来ない場合でも客観的合理性と社会的相当性の要件を満たしていれば解雇することはできます。ご質問のケースでは、当該社員は仕事も出来ず協調性もないとのことですので、解雇できるかどうかのポイントとしては、その問題事由を裏付ける客観的事実、問題性の程度、そして何度も注意指導しても改善しなかったという「改善可能性」が無いことや、他の部署に配転して解雇を回避する余地がないか、などが焦点になります。
実際のケースでは、十分な注意指導が出来ておらず、直ちに解雇するのは難しいというケースが見受けられます。そのような場合には、一端、再雇用したうえで、当該社員の問題状況や注意指導の履歴を記録化するようにして、契約更新の段階で雇止めを検討するという方法も考えられます。ただ、社内で長年キャリアを積んだ年長社員に対して、どれだけの指導教育ができるかについては、現実的にかなり難しい部分もあるのではないでしょうか。
3,労働条件を変更することはできるか
定年後再雇用とする場合、雇用契約を締結しなおすことになりますので、その際に労働条件(給与、職種、業務内容)を改定し提示することは可能です。ただ、どのような変更をしてもいいかというと、厚労省Q&Aによれば、継続雇用高齢者の安定した雇用を確保するという趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金など雇用に関するルールの範囲内で事業主と労働者の間で決めることが出来るとされています。そして最終的に合意できなかった場合でも、事業主が合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば結果的に継続雇用に至らなかったとしても、法律違反になることはないとしています。
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4,事業主側として現実的な対処方法としては。
ご質問のケースのような場合、当該社員との雇用継続が難しいということであれば、実務対応としては、当該社員にこれまでの勤務をねぎらいつつも、会社の評価を伝えて、まずは退職勧奨を試みるのが現実的な対応であると考えます。また、場合によっては割り増し退職金を支払う等の方法も考えられるところです。
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東京都は、今年4月1日時点の待機児童数が300人で昨年より669人減ったと発表した。5年前(2017年)は8586人だったが、近年急速に減り、統計を取り始めた1970年以降で最少を更新した。都の担当者は「受け皿の整備が進んだ」としたほか、新型コロナウイルスの感染拡大による預け控えや育児休業の定着も要因に挙げた。
最多は町田市の75人
発表は27日。都によると、認可保育所の施設数は3569(前年比92増)で、5年前から1000余り増えた。定員は31万9510人(前年比6146増)で5年前から約7万2400人増えた。認証保育所の施設数は前年比36減の464、定員は1189人減の15529人。認可保育所への移行が進んだという。
待機児童がいる自治体は28。多い順に町田市の75人、国分寺市の25人、狛江市の18人。前年比で待機児童の減少が大きかったのは中央区の85人、小平市の83人、三鷹市の70人。待機児童がいない自治体は前年の26から34に増えた。
保育所などの利用を申し込んだ人は32万362人。就学前児童全体に占める割合は年々増え、53.8%。
23区内は園庭のない施設が増加 受け皿整備の予算を「保育の質」に振り向けるべき
保育所急増で保育士の取り合いも
「保育園を考える親の会」が毎年、東京都内や政令市など主要な100自治体に実施している調査では、認可保育所の園庭保有率は80.3%(2015年度)から、70.6%(2021年度)に減少。中でも東京23区では園庭がない保育所が増えている。また、保育所の急増で保育士が取り合いになっている状況もあるという。
同会顧問の普光院亜紀さんは「急な整備により保育環境が犠牲になっている施設もある。都は今後、受け皿整備の予算を保育士配置など『質』に振り分けていくべきだ」と話す。
親の会には、特に育休明けの1歳児で認可保育所に入れず、やむを得ず認可外施設に預けたり、育休を延長したりしたという声も寄せられているという。
また、今年に入り、大手保育事業者による補助金の不正受給が都の指導検査などで明らかになった。だが、都の指導検査実施率は認可外施設も含めて全体の5.2%(2020年度)と低い。普光院さんは「ほとんど入れていない。監査を強化しなければならない」と指摘した。(7月29日東京新聞)
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1年単位の変形労働制とは
1年変形を採用するには、就業規則に定め、労使協定に年間カレンダー
を添付して、毎年、労基署に提出します。年間カレンダーでは、ひとりひとりの
職員について、一日ごとに労働日か休日かに加え、労働日における労働時間を決めます。
ただ、職員毎の次年度の労働日を3月末には決められなくなったといったご相談がある園長からいただきました。以前は労働日と休日が全職員同じだったので年間カレンダーは簡単に決められましたが、最近は、土曜日も夏、冬、春休みも開園しているので、以前のように「開園日=全職員の労働日」とはなりません。年間カレンダーを作成する際にも3月末の時点では職員毎に、〇月〇日が労働日か、休日かを決められまくなっています。
各月の労働日数と総労働時間を定めた一覧表を作成する
このようなケースでは、下記の方法で対応することが可能です。
①4月の勤務表と、5月以降の各月の労働日数と総労働時間を定めた一覧表を作成する
②5月以降の勤務表は、一覧表通りに作成する。
まず、年間の労働時間の上限から年間で確保できる1日8時間労働の労働日数の上限を算出します。
年間の歴日数 |
労働時間上限 |
労働日数上限 |
平年365日 |
40時間×365日÷7日≒2085時間 |
2085時間÷8時間≒260日 |
うるう年 366日 |
40時間×366日÷7日≒2091時間 |
2091時間÷8時間≒261日 |
1年変形では、年間の労働日数の上限260日を各月に割り振ることが出来ます。そこで学期中にはできるだけ出勤してもらい、8月と1月にはお休みを多く・・・」と各月の労働日数を定め、一覧表を作成しまみました。
|
年間 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
1月 |
2月 |
3月 |
労働日数 |
260 |
23 |
22 |
25 |
22 |
15 |
23 |
25 |
23 |
23 |
15 |
20 |
24 |
総労働時間 |
2080 |
184 |
176 |
200 |
176 |
120 |
184 |
200 |
184 |
184 |
120 |
160 |
192 |
但し、注意しなければならない法律があり、1週52時間まで、連続6日までという制約がります。加えて勤務表は各月の初日の30日前までには職員に提示しなければなりません。
運用をスタートした園長に伺いました。
職員は、夏休み、冬休みにはしっかり休み、リフレッシュできたようです。しかし、課題があります。年度の途中で採用や退職場あった場合の法律上の賃金計算をいざやってみると難しくて・・・。賃金精算を行う時期は年度途中の退職者の場合退職した時点になります。
年度途中の採用者の場合には対象期間が終了する3月末時点で清算します。
この清算方法や時期をうっかり忘れたりすることがあるので、1年変形を採用する場合には十分に留意する必要があります。
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「園長を困らせる労務問題とその解決策」 ~保育の現場から頂く質問をもとにしたQ&Aを中心に~ | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
A パート職員であっても、年休が 10 日以上付与される場合、付与した日から
1 年間で 5 日取得させる義務(以下、取得義務)が発生します。週 4 日勤務のパー
ト職員が、勤続 6 ヶ月となる 10 月に付与される年休日数は 7 日となるため、勤
続 6 ヶ月の時点において年 5 日の年休の取得義務は発生しません。
解説
1.パート職員への年休の比例付与労働基準法では、入職日から6 ヶ月継続勤務し、かつ全労働日の 8 割以上を出勤した職員に、正職員、パート職員など雇用形態に関わらず年休を付与することを定めています。週の所定労働時間が 30 時間未満のパート職員などは、所定労働日数に応じて年休の付与日数が決定します(比例付与)。
2.年休の 5 日取得義務
取得義務は、パート職員を含む 1 年間に 10日以上の年休が付与される職員に発生します。今回の質問の週 4 日勤務のパート職員は、入職して 6 ヶ月の時点では年休の付与日数が
7 日(下表参照)のため、取得義務は発生しませんが、3 年 6 ヶ月勤務した場合、付与日数は10 日となるため、この時点から取得義務が発生します。取得義務は、下表の網掛けに該当する職員に発生します。なお、前年度から繰り越した年休と新たに付与される年休を合算して10 日以上になったとしても、取得義務は発生しません。
勤続年数によって取得義務が発生することもあるため、年休の付与日、付与日数、取得義
務の有無、残日数等の管理は、正職員・パート職員を問わず、しっかり行いましょう。
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東京都の小池知事は22日、新型コロナウイルス感染者との濃厚接触者について、今後「保育所、幼稚園、小学校などでは特定は行わない」とする新たな方針を示しました。千葉県では20日から「保育所や幼稚園などで濃厚接触者の特定はしない」ことが始まっています。現場からは不安の声も。 ◇ ■都の新方針 保育所などで濃厚接触者“特定せず” なぜ? 有働由美子キャスター 「濃厚接触者について東京では今後、『保育所、幼稚園、小学校などでは特定は行わない』。小池知事がこうした方針を示しました。子どもが濃厚接触者になって自宅待機になると保護者は仕事を休まないといけないケースも多いわけですが、これからは休む必要がなくなるということです」 「ただ、東京の10歳未満の新型コロナウイルスの感染者は1か月前の10倍以上に増えていて『大丈夫かな?』という気持ちも出てきます」 日本テレビ・岩本乃蒼アナウンサー 「実際、千葉県では今週から『保育所や幼稚園などで濃厚接触者の特定はしない』ことが始まっています。これにより保健所も、重症化リスクの高い高齢者施設などの調査に力を入れることができるということです。一方、保育所などでクラスターが発生した場合には、『濃厚接触者を特定して自宅待機を求める』としています」 ■すでに“実施”の千葉県 現場の声は… 有働 「この対応について保育の現場はどう感じているのでしょうか?」 岩本 「千葉県内の認可保育園に話を聞くと『濃厚接触者が感染していて、そこから広がると、子どもだけでなく保育士にも感染者が出る。結局、園を閉めることになり、保育を維持することができなくなってしまう。そこが怖い』という不安も聞かれました」 ◇ 有働 「本当に難しい、ギリギリのところですが、つまり、社会や経済を回すために『強制的にお休みにはしません。そのかわり、体調が不安ならちゃんと自分で判断して休んでください』ということなんですよね。今まで以上に自己管理が大事になります」 (『news zero』より)
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「園長を困らせる労務問題とその解決策」 ~保育の現場から頂く質問をもとにしたQ&Aを中心に~ | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
A 評価者研修やフィードバック面談研修を受講し、方法論を学び実践で活用している。
人事評価を行うことは、上司にとってかなりの負担で、ましてやその結果を部下に説明するフィードバック面談等は大変重荷、などと言うご意見は、評価者の方々からよく伺います。ただ、それは、「評価」という言葉の印象にとらわれている結果であって、実際には評価の仕方を具体的に理解していないがゆえに誤解されているケースがとても多いのです。
評価者として「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を理解し、それを実践すれば、だれでも評価を行うことができます。
評価者研修
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評価者研修&フィードバック面談研修 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
東京・葛飾区が保育所への補助金を、誤って5億円余り多く支給していた問題で区は、各保育所で補助金が適切に使われていたかを確認する調査を今月下旬から始める方針を区議会に示しました。
東京・葛飾区は、パートタイムの保育士などを雇用した私立の認可保育所に対して支払う補助金を4年間にわたって実際に支払うべき金額よりも多く支給し、その総額は5億円余りにのぼるとしています。
14日開かれた区議会の保健福祉委員会で区側は、誤支給があった72の保育所で補助金が適切に使われていたかを確認する調査を今月下旬から始め4年間分の雇用契約書や賃金台帳などをチェックする方針を示しました。
調査期間はおよそ1か月を予定していて、区側は人件費などとして適切に使われたのであれば、返還を求めずに対応することができないか検討する一方、不適切な使い方が確認された場合の対応は、今後検討していく方針を説明しました。
植竹貴副区長は「調査結果についてことし秋の段階で公表する場を設けるなどの作業は必ず必要だと思っている。中間状況も含めて何か決まった段階でしっかりと公表していきたい」と述べました。(NHKニュース)
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A 労働基準法41条の除外規定として、労基法上の管理監督者は深夜業務を除く、労働時間に関する規定は適用されないと定めています。まずは、労基法上の管理監督者とはどのよう方を指すのかを確認しておきたいと思います。ここでいう、「管理監督者」とは下記の要件を全て満たす方を指します。
1,人事権を持ち、事業経営にも参加している(ここでいう人事権とは、いわゆる異動を含む人事権で、人事評価しているだけでは不十分)
2,自分自身の勤務時間について自由裁量が認められている
3、一般社員と比べて、十分な報酬を得ている
これらの3点を、勤務の実態として適用されている必要があります。単に役職名では判断できません。つまり休日、時間外労働の規制をうけない「管理監督者」に該当するかどうかは、具体的な権限や給与、勤務実態で判断が必要ということになります。
例えば、多くの介護事業所ではシフト勤務で勤怠管理を行っていますが、常態として勤務シフトに入っている働き方をしているような管理者がいた場合、勤務時間の自由裁量がないと判断され、管理監督者ではなく、一般社員とみなされる可能性もあります。
先ほど、管理監督者に該当するか否かを判断するときに、単に役職名での判断ではなく、勤務の実態で判断しなければならないとしましたが、多くの介護事業では職責(役職)で、それを判断している場合が多い上に、介護保険制度における「管理者」と労基法における管理監督者を混同してしまうケースもあるので注意が必要です。一般的には、理事長、社長、施設長、事業所長、事務長くらいまでの立場の方がそれに該当するケースが多いと考えられます。もし、それ以下の役職の方(例えば、主任、副主任やリーダー等)を管理監督者の扱いにして残業代などを支給していない場合は、一度、その方の業務や給与の実態を確認してみる必要があると思います。その結果、管理監督職に該当しない方に、残業手当等を支給していない場合には、労基署からは残業代未払いの扱いとして、「3年間分を遡及して」支払うといった是正勧告を受けるリスクがあります。
2,また、管理監督者には残業代は支給されませんが、勤務時間管理自体は必要となります。これは、給与計算上の必要性ではなく、管理監督者の健康管理の問題によるものです。管理監督者はその責任の重さから、過重労働になってしまうケースは相変わらず多く、それが深刻化するとメンタル疾患につながる場合も見られます。従って、経営者や人事担当者は
管理監督者の労働時間には常に注意を払い、管理監督者の健康管理に十分注意することが重要です。
3,さて、今回ご質問のあった管理監督者における遅刻・早退・欠勤に関する給与の扱い
についてですが、その方が管理監督者に該当することを前提とした場合に、先述の要件
の「勤務時間の自由裁量」の点が問題になります。
つまり、管理監督者は勤務時間に裁量が認められていることから、始業時刻から遅れて
出社(遅刻)しても給与減額扱いにはなりませんし、また終業時刻より遅くなっても残
業手当はつかないことになります。
ただ、欠勤の扱いにつきましては、管理監督者であっても「就業義務」自体はありますので、その義務が果たされない場合に該当すると判断され、給与も欠勤控除として減額することになります(介護ニュースより)。
Q
当施設では、業務に必要とする資格以外にも一定の資格を保有している場合、資格手当に5,000 円を上乗せして支払っています。2021 年4 月に本人から手当の対象となる資格を取得したと聞いていたのですが、手当に上乗せして支払うのを忘れていました。今回、本人の申告によって発覚したのですが、いつまで遡さかのぼって支払えばよいでしょうか?
A
本人から未払い賃金支払いの請求があったのであれば、本来支払うべきだった日に遡って支払うことが必要です。現在、職員が未払い賃金を請求できる権利(以下、賃金請求権)は3 年であり、今回のケースは本来払うべき2021 年4 月まで遡って支払う必要があります。
詳細解説
1.賃金請求権について
未払い賃金があったときには、遡って支払う必要があります。賃金請求権の消滅時効期間は2020 年4 月1 日に2 年から5 年に延長され、その上で、当面の間は3 年とする猶予期間が設けられました。今回のケースは、この消滅時効にかからない期間での請求ですので、2021 年4 月まで遡って支払う必要があります。
なお、延長された賃金請求権の消滅時効期間である3 年は、2020 年4 月1 日以降に支払われる賃金に関するものについて適用されます。
2.給与計算上の注意点
給与計算の誤りによって、賃金の支払い漏れが発覚した場合、実務上は職員の合意を得て、次の給与で漏れていた分を上乗せして支払うことが多くありますが、本来、支払わなければならない賃金が支払われていなかったことを考えると、できるだけ早く支払うことが求められます。
また、給与計算の誤りによって賃金を遡って支払うことになったとき、その賃金が割増賃金の基礎となる賃金だった場合は、時間外労働等の単価も変わってくることになり、結果として未払い残業代が発生することもありえます。遡って支払うだけでなく、割増賃金の基礎となる賃金として算入しなければならない賃金か否かの確認も必要です。
そもそも、職員の賃金にかかる変更があった場合は、支払い漏れや支払い過ぎといった給与計算の誤りが発生しやすくなります。今回のように、本人からの申告がなければ、施設が把握することのできない状況であれば、書面で申請してもらい、確認した上で支払いの対象とするといったルールを定めておくことで支払い漏れを防止しましょう。
2018年から2022年にかけて、5年連続で「幸福度ランキング世界一」を達成したフィンランド。その背景にあるのは、“人こそが最大の資源で宝”という哲学。立場を問わずすべての国民が平等に、そして幸福に暮らすことを可能にする、「仕組み」とは――? そして、日本はそこから何を学べるのでしょうか? 『フィンランド 幸せのメソッド』より一部抜粋し再構成のうえお届けします。本稿では、子育て世帯を支える保育制度を中心に紹介します。
■親を支える保育所 フィンランドの保育には、日本の保育園のような「集団保育」と、保育士が自宅で自分の子どもを含めて4人までを預かる小規模な「家庭的保育」の2種類がある。 全体の約8割が集団保育所を利用しており、家庭的保育は7%ほどだ。家庭的保育は最近では減りつつあるが、家庭的な雰囲気の中で保育をするため、3歳未満の子どもを持つ親や、短期間だけ保育が必要な場合に人気がある。 一方の集団保育所も、国の基準で3歳未満は子ども4人につき最低1人の保育専門職、3歳以上は7人につき1人以上の保育専門職が必要だと定められており、少人数制だ。他にベビーシッターや家族、親戚に頼るという選択肢もあるが、その割合はそれほど多くはない。
1996年に改正された保育園法に従って、自治体には全ての子どものニーズに応えられるよう保育所を確保する責任があり、夜勤やシフトワークによって昼間以外の時間に働く人のためにも保育所が用意されなければならない。 保育の申し込みは通常4カ月前までに行わなければならないが、急な仕事や就学、資格取得等のために保育が必要となった場合には、2週間以内に自治体はサービスを確保する義務があると定められている。 ただ、希望の保育所に必ず入れるわけではなく、エリアによってはギリギリの数しかないため、仕事の内容によっては優先順位がつけられて待たされることもある。
教育は大学院まで無料のフィンランドだが、保育は無料ではない。日本と同じく、料金は所得に応じた金額となっている。それでも、子どもの年齢にかかわらず、利用料の上限は月288ユーロ(2021年)と比較的手ごろな価格となっていて、逆に所得が低い場合は無料となる。 また、多くの保育所では朝食と昼食が無料で提供されている。朝食はおかゆのようなオートミールなどシンプルなものだが、ただ子どもを起こして連れていけばいいだけなのは楽だ。
ただし、朝食サービスを利用するには早くに行かなければならないため、私の友人の多くは家で食べさせた方がいいと、サービスを利用していない。さらに、保育所に預けられる時間は最長で10時間と決められているため、残業をしている余裕はなく、親は定時で仕事を切り上げて迎えに行くことが求められている。 ■インクルーシブの方針 保育所は、毎日フルタイムで利用する人もいれば、週に何回か、あるいは半日だけの利用の人もいて比較的多様だ。また、フィンランドでは障がいがある子どもも、そうでない子どもも、同じように共に学ぶことを目指すインクルーシブの方針を採っている。障がいがあっても地域の保育所に通えるし、健康上の理由で通うのが難しい場合は、自宅に保育士が来て幼児教育が受けられる。
しかし、全てがうまくいっているわけではない。緊縮財政による保育士不足は深刻で、2016年には3歳以上の子どもに対する保育士の割合を、従来の子ども7人あたり1人から、8人あたり1人へと一旦引き上げたり、親の就業状況によっては保育所に預けられる時間を制限したりした。 しかし、2019年に社会福祉の充実を目標としている社会民主党が政権に返り咲き、人数や時間の制限は以前の状況に戻った。そうした動きの一方で、現在では保育の無償化や5歳からの幼児教育の義務化の議論も行われ、実際、全国規模の実証実験も行われている。
保育所と同じぐらい大切な親への支援制度が、「在宅保育の休業制度」だ。子どもが3歳になるまでは仕事を休んでも職場が確保され、復帰後に必ず同じポジションに戻ることが保障されるというものだ。 休業補償が出る育休は子どもが1歳になる頃に終わるため、通常はこれが仕事に復帰するきっかけとなる。しかし、この在宅保育の制度があるので、もっと子どもと過ごしたいと望めば、最長3年間、父親でも母親でも安心して休むことが可能だ。
私の友人も、この育児休暇取得中に所属先の会社で大掛かりなリストラがあったが、「私が元に戻る権利は法的に保障されているから、絶対にリストラにあわない」と断言し、子育てに専念していた。 在宅で保育をしたら、その間には保育所を利用しないことになる。そこで、在宅保育をしている親に国からお金を給付する「在宅保育手当」も1985年に誕生した。 この制度が生まれた背景には、施設での保育のニーズがそれほどなかった農村部から、保育施設を利用している都会の人たちにばかり税金が費やされ、自分たちには何のメリットもなく不平等だという訴えがあったことが影響している。都市部の自治体にとっても、手当を出すことで在宅保育が増えれば、保育所の利用が減るというメリットもあった。
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「園長を困らせる労務問題とその解決策」 ~保育の現場から頂く質問をもとにしたQ&Aを中心に~ | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
保育は自治体にとってかなりのコストがかかるので、在宅保育をする親には国からの在宅保育手当に加え、多くの自治体が独自に手当を支給してきた。 ■自宅での保育に手当はいくら出るのか? 具体的には、国からの手当は3歳以下の子ども1人に対して毎月350.27ユーロ(2021年現在)。私の友人の場合は上の子も同時に在宅で育てていたため、自治体独自の保育手当などが加わると月あたり約6~7万円ほどを受給していた。
こういった手当は保育者が祖父母の場合でも受給可能だ。自宅での保育はお金をもらうのに値する立派な仕事であり、それは「自宅で保育という大変な仕事をしてくれてありがとう」という国による感謝のメッセージにも見える。 この在宅保育手当は給与よりは少ないが、無給になるよりはよっぽどいい。実際、2018年には82%の家庭が一定期間、在宅保育手当を利用している。 一番多かったのは子どもが1歳半になるまで受給したというもので、最長期間の子どもが3歳になるまで利用する人は、年々減少していて約10%。利用者は決して多くはないのだが、休暇が切れるから、仕事がなくなるから、新学期が始まるから……と慌てて保育所に入れるのではなく、親と子どもの心と体の準備ができたところで預けることが可能になる制度だ。
実際、保育利用の割合を見ても、子どもが1歳未満で預けている家庭はわずか0.9%、2歳未満で36.8%だ。女性の就業率も、子どもの年齢が3歳未満の場合には48.2%と一時的に低くなる。これは他の北欧諸国と比べても、かなり低い。 年々、在宅保育の割合は減少し、女性の就業率は上がっているが、こういった制度が女性のキャリアの妨げになっているのではないか、という議論は常にある。在宅保育手当撤廃に関する提言は、国内外から聞こえてくる。この手当の利用者はまだまだ母親であることが多い。
フィンランドの子ども家族を支える制度は、幼児の親に柔軟で幅広い選択肢を与えている一方で、現実には母親が自宅で保育をする方に向かわせているのではないかという批判は、ある面から見れば事実だ。 そこで、ここ最近は自治体の保育手当は撤廃、もしくは支給期間を短縮する傾向にある。例えばトゥルク市では既に撤廃されているし、ヘルシンキ市は1歳まで、その隣のヴァンター市も1.5歳までとなっている。 ■社会も企業も2、3年の休職に寛容
それでも、在宅保育制度の満足度は高い。しかもフィンランド統計局の調査によると、子どもが3歳以上になると女性の就業率が80%を超え、小学校に通う年齢になれば、89.4%(2019年)にまで上がることから、利用者は元の職場に復帰しやすく、社会も企業も2、3年の休職に対して寛容なことがうかがえる。 実際、私の友人は育休と夫の海外赴任への同行で合計6年間休職していたが、その間に会社が合併し、元いた部署がなくなってしまった。復職時にはどこかの部署に仕事復帰することもできたのだが、彼女は思いきって社内公募されていたポジションに応募して見事選ばれた。元の仕事よりも昇進した形で復帰したわけだ。
同じように他の友人も、3人目の育児休暇を終えて、他社の部長職に応募して仕事復帰と転職、より責任のある仕事へのステップアップを同時に叶えていた。 産休・育休で欠員が出た場合、雇用主は代わりの人材を雇い、周りにしわ寄せがいかないようにするのが通常だ。しかもそれが半年や1年ではなく2~3年となれば、経験の浅い若者にとっては経験や実力をつけ、能力をアピールする好機になるし、企業にとっても新たな人材発掘のいい期間となり、うまくいけば正社員として採用する道も拓ける。
このように賛否両論ある在宅保育の制度だが、今のところは大きく変化する様子は見られない。ただ、今後は徐々に利用は減るのではないかと推測されている。いずれにしても、どの保育形態でも公的支援が得られ、親の選択肢が広いことはフィンランドの特長である。 ■共働きを前提とし、配偶者控除はなし 保育所の確保や在宅保育手当以外にも多種多様な支援制度がある。例えば、子どもが17歳になるまで一定額を支給する児童手当があるし、産休・育休も1960年代以降に充実し、父親も休暇が取れるように時代と共に変わっていった。
税制にも変化があった。1976年には扶養控除や配偶者控除を撤廃し、夫婦であっても1人ひとりに課税をする「個人単位課税」が導入された。 これは配偶者の収入状況が自分の所得税に影響しないことを意味していて、日本のようにパートで働いて年収を抑えた方が世帯としては節税になるといった状況が成り立たないことを示す。それよりも男女にかかわらずフルタイムで仕事をし、納税することが求められるようになったのだ。 北欧諸国の社会に詳しい東洋大学の藪長千乃教授も私の取材に対し、「福祉国家と女性の社会参加の関係には、税制が影響している」「個人課税方式の導入で、専業主婦やパートで働くことへのインセンティブがなくなりました。実は、夫婦単位での税制は、いまだにヨーロッパでは多くの国で選択的に使用されています。日本は個人単位の税制となっていますが、扶養控除制度や社会保険制度での非課税配偶者の優遇など、実質的には夫婦単位課税に近くなっており、女性が補助的な労働者となることを固定化させています」と語ってくれた。
さらに、1970年代、職場での男女差別を禁止する法律ができたことで、女性は牧師や軍隊の幹部以外であればどんな仕事にも就けるようになった。現在は、全ての職業で性別による制限はない。 政治の世界でも、かつては社会保健大臣や教育大臣が女性議員のためのポストで、財政大臣や国防大臣は男性という暗黙の了解があったが、1990年代からは女性も財政や国防の大臣職に就くようになり、男女間での暗黙の壁が壊れ始めた。また、大統領選にも女性が出馬して、男性候補者とほぼ変わらない投票数を獲得するようになっていった。(東洋経済オンラインより)