クリニック・病院の現場Q&A

Q、何をどうすれば、良い評価が得られるのかが、わからないので、評価自体が評価のための評価になり、マンネリになっている。どのような対応が必要でしょうか?

A5、「何をどうすれば、いい評価が得られるのか」。被評価者からすれば当然知りたい内容ですし、それが法人の求めている職員像につながることになるわけです。ところが、評価者側の都合で、もしくは評価者側の裁量の幅をできるだけ大きくできることを目的に、評価項目を抽象的な表現にしたり、評価点のつけ方などがブラックボックスにしているケースがあります。この場合、「求められる職員像」が明確にはならないので、目標自体に具体性が欠けることになります。

弊社が推奨する職能評価や行動評価は、事前に評価される内容が具体的に分かっているだけではなく、点数のつけ方もオープンにしているので、透明性が担保されるだけでなく、各職員においては自己成長の実感が可能になります。評価制度が本当の意味で職員を育てるための制度にするには、次に述べる視点がとても大切になります。

  • 組織全体のレベルアップを図ることを目的とする。

評価によって優秀な職員を発見することも大切ですが、それよりも先に行わなければならないことは、普通の職員の能力を高めることによって組織全体のサービスの質を上げることなのです。一人の優秀な職員のヤル気を高めるよりも、多くを占める普通の職員のヤル気を高めることの方が大切であることを理解してください。

  • 部署別、職種別、そして等級別に「期待される職員の努力」を具体的に明記する。
  • はじめから「どんな努力をすれば良い評価(SまたはA評価)になるか」を明示しておく。この内容が「期待される職員像」となり、全ての職員に、期の初めから「こんな努力をしてほしい」と明示する。

評価は学校で行われるような試験や通信簿ではありません。学校の教育では、教科書に基づいて教えていき、期末または年度末に試験をして結果だけを測定し、評価すればいいのですが、職場ではそうではなく、どんな問題を出すのか(つまりどんな行動を期待しているのか)を初めに明確にしておいて、出来るだけ多くの職員が優秀な成績、つまり5段階評価ならS評価やA評価を取ってもらうようにすることが必要なのです。

その場合、必ず意見として聞こえてくるのが、「良い評価が増えれば、人件費が増加してしまうのでは?」という懸念です。もちろん、評価結果を反映させる処遇の財源(例えば、処遇改善加算)は確保しておきながら、その財源の限度内で分配を行う管理手法は必要になってきます。

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Q 育児介護をしている職員を複数名抱える病棟では他の看護師の負担が大きくなります。また3交代制でICUが特定入院料の2対1を実施しようとすると、月平均8日以内の夜勤勤務回数の上限が守られない状況ですが、どのような改善と留意点が必湯でしょうか?

A 夜勤回数が減らせなければ、最低限仮眠時間の確保と十分な休日をの確保を行うことです。外来から夜勤への異動、非常勤職員への協力要請、小さな子供がいても夜勤が出来る勤務環境の整備、夜勤専従制度の導入など、「夜勤が出来る人」のすそ野を広げていきましょう。

診療報酬上、「夜勤を行う看護職員の一人当たりの月平均夜勤時間数が72時間以下である事」という要件があります。日本看護協会のガイドラインでも夜勤回数は「月8回以内」という指針があります。看護師の労働時間管理を考える上で、「夜勤72時間ルール」の考え方を外すことはできません。

 一方で、看護師の夜勤勤務の上限について、労基法の規制は特にありません。規制しているのは「一日8時間、一周40時間」と変形労性を使った場合の月間労働時間の総枠です。

 3交代における過剰な夜勤回数や2交代制おける長時間夜勤の問題は、中長期的に見た健康障害と安全医療の面から改善すべき課題です。

 ICUなど超急性期に対する病床では、夜勤の人員配置を手厚くしておく必要があるので、どうしても夜勤回数が多くなります。但し、夜勤回数の考え方はどの看護単位も同じなので配置基準の関係で夜勤回数を減らせない場合には、仮眠時間を確保したり、十分な休日を確保する必要があります。

  ある病院では、夜勤時間の偏りを避けるため、出来るだけ多くの職員が夜勤に入れる体制に整備しました。常勤職員だけでなく、非常勤職員にも夜勤の協力要請をしたり、24時間預けられる院内保育園を整備し、子供のいる職員にも夜勤に入ってもらうようにしました。また夜勤を多く希望する職員には、夜勤回数の上限を10回とした常勤の夜勤専従制度を導入。合わせて看護補助者の増員も図ることで、夜勤が出来る職員のすそ野を徹底して広げることに尽力をされていました。また夜勤手当の増額も可能な限り実施することも重要なことなので実施されていました。

Q最近、医療従事者もワークライフバランスを重視する人が増えてきたように感じます。休日数が多い病院、有給休暇が取りやすい病院は求人効果も高いと聞きます。当院でも年間休日数増やすことを検討中ですが、他の病院ではどのような対応をとっているのでしょうか?

A 年間の総労働時間を維持しつつ、日勤の所定労働時間を延長して休日数を増やすやり方が一般的。但し、「休日を増やす」こととのどちらに職員ニーズがあるのか、十分に検討した上で変更していく必要があります。

 

看護職の確保と人材定着のために、年間休日数を増やしている医療機関は最近増えているように思います。ある病院では、日勤の所定労働時間を7時間30分から7時間45分に延長して、年間の総労働時間を維持しつつ、休日数を五日間増やして年間最大124日に変更しました。この病院は、平均年齢37歳の看護師の6割が育児世代ですが「給与を上げるより休日を増やす方が育児世代の看護師ニーズに適する」と考えたからです。

 また別の病院では、病院全体で、所定労働時間を7時間から7時間15分に延長し、年間休日を4週6休から4週8休に変更して9日間、年間112日に拡充することで、サービス残業も大幅に削減することが出来たといいます。

 たしかに、年間休日数100日の病院と120日の病院では求人効果に差があるかもしれません。しかし例えばこんなケースもあります。日勤の所定労働時間7時間、4週6休年間休日100日の介護型療養病院において、休日増を検討した際、看護職は否定的な意見が多かったと言います。なぜなら、看護職の多くは、日勤7時間(17時終業)の勤務時間の短さや17時に帰れることに惹かれて中途入職した職員が多かったからです。

 やみくもに休日を増やせばいいというものではなく、休日増なのか勤務時間短縮なのか、年齢層や家族の事情などによってもニーズが違うことを考慮したうえで、十分に検討する

必要があると思います。 

 

Q、当施設は職員の中途採用が多く、入職時期もバラバラです。有給休暇の付与に関しては、個人の入社日ごとに付与する方法を採用していますが、事務対応の煩雑さから付与日を統一することを検討しています。その場合、留意すべき点はどのようなことがありますか?

A,

有給休暇の基準日を一律に定めて付与することを「斉一的取り扱い」と言いますが、前提条件となるのが、「前倒しで付与する」ことです。例えば、4月1日を基準日と定める場合、9月1日入職した職員は、6か月継続勤務すれば翌年の3月1日に10日の有給取得の権利が発生します。この場合、基準日を統一し4月1日に繰り下げての付与(入職から7か月目の付与)は認められません。有給休暇の斉一的取り扱いについては、下記の要件を満たす必要があります(平成6.1.4基発1号、平成27.3.31基発0331第14)

  • 斉一的取り扱いや分割付与により、法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすこと。
  • 次年度以降の有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じまたはそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。

しかし、基準日を前倒しで繰り上げるため、入職時期によりどうしても不公平が生じてしまいます。ここをどのように考えるかがポイントになります。それでは、その代表的な対応とその留意点を下記致します。

①基準日を月初などに統一する

入社が月の途中であっても、基準日を月初などに統一します。例えば、同じ月に採用した方の基準日を月初に統一することにより、統一的な管理が可能となります。この場合、

5日取得させる期間も月ごとに統一できることになります。

② 基準日を「年2回」とする緩和策をとるケース

例えば、41日と101日の2回に統一する方法もあります。全職員同一の基準日に統一するよりは、入職時期による不公平感が軽減できます。41日から930日までに入職した職員の基準日は101日に10日付与し、101日から331日までに入職した職員は41日に10日付与します。以後、それぞれ41日と10月1日を基準日としていきます。この場合、71日入職者の8割出勤の考え方は以下のようになります。

6か月継続勤務後の本来の基準日である11日から短縮された3か月(10月~12月)

は全期間出勤したものとみなし、この期間を含めて71日から1231日までの6か月間で、8割以上出勤したかどうかを計算します。

基準日の統一は前倒し付与が原則の為、41日入職者は6か月後に10日付与され、91日入職者は1か月後に付与される不公平感は残りますが、年1回と比較すれば、不公平感は緩和されているのではないでしょうか。

 

③分割して前倒し付与したら次年度基準日も繰り上げる

施設によっては、入職と同時に10日付与するケースや、「入職3か月後(使用期間終了後)に3日付与、6か月後に7日付与」と分割して付与するケースがあります。分割して付与する場合も先の行政解釈(上述(2))にあるように、前倒し付与したら次年度の基準日も繰り上げます。

例えば41日入職者に、使用期間終了後の71日に3日付与し、101日に7日付与した場合、次年度に11日付与する基準日は本来の付与日(101日)から1年経過後ですが、初年度の3日分を3か月繰り上げて付与したため、次年度の基準日も同様に3か月繰り上げ、「7月1日から1年経過後」に11日付与することになるわけです。この点も注意をしながら前倒しのルールを検討していく必要があります。

 

 

Q, 看護職員の強い要望もあり、看護部では時間単位有休を採用しようと事務長に相談したところ「半日単位があるから今は必要ない。管理も煩雑になるので」と拒否されました。そんなに管理が面倒なのでしょうか。

、時間単位年休は残日数、時間の管理が煩雑になりやすいのですが、部署ごとに現場で管理する方法を決めておくといいでしょう。総務担当の負担も軽減されます。全部署一括ではなく、看護部やリハ部門から試験的にどうする方法がいでしょう。

時間単位年休は平成22年4月1日から施行され、半日有休と時間単位有休を併用しているケースもありますが、時間単位有休を導入する際に、半日有休をなくすのが一般的です。

 時間単位有休は、労使協定を締結することで、一年間の有休休暇日数のうち繰り越しも含めて5日を限度に時間単位で付与することが出来るものです。ただ以下4項目について使用者と労働者が協定で合意しなければなりません。

 ①対象労働者の範囲 

 ②時間単位年休日数(5日以内)

 ③時間単位年休の1日の時間数

 ④1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数

また、有給休暇の事後振替を認めるかどうかについて、法律上特に定めはありません。認めることも、認めないことも医院で決めることができます。ただ、欠勤の理由が体調不良を交通事情というならまだしも、寝坊を理由に欠勤遅刻した職員が安易に申請することを避けるため、事後の振り替えを認めない病院もあります。

 また、時間単位年休は1時間単位で採用できますが、遅刻など安易な利用を極力避けるため、30分程度の遅刻には利用しずらい「2時間単位」で認めている病院も実際にあります。

Q 医療機関の原資は診療報酬ですが、入院基本料を算定するうえで勤務時間として算定できないのに、労働基準法では労働時間とされるものがあったり、医療の現場で混乱を招くことがあります。職員に周知するときの伝え方を教えてください。

A、時間外労働、休日労働、出席が強制される研修や委員会、申し送りなど、労働基準浮上の「労働時間」とされるものでも、診療報酬上の「勤務時間」には計上されません。

 

医療行為を行うと点数として算定されますが、例えば医師の診療行為や看護サービスなどを包括する入院基本料の算定上、労働基準法では当然に「労働時間」と扱うものでも、診療報酬上は勤務時間としてはカウントしないものがあります。この点が、医療機関の労働時間管理を複雑にしている一因があります。

例えば、病棟勤務の看護師の勤務時間を算定する際、始業時間から就業時間まで、休憩時間も含めて勤務時間に計上しますが、時間外労働や休日労働に要した時間は計上しません。また「休憩時間以外の病棟で勤務しない時間は除かれる」ことから、一般研修や委員会活動は計上所ません。申し送りの時間についても、申し遅れを受ける側の時間数のみ計上し、送る側の時間は計上しません。医療機関は営利を目的としているわけではありませんが、無駄に残業しても支出が増えるだけだということを改めて考え直す必要があるものと思います。

労働時間に関するご相談は下記

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Q、弊社では各事業所の責任者(所長)である管理者は、労基法上の管理監督者としての扱いで、残業代や休日労働の手当を支給していません。ただ、遅刻、早退、欠勤があった場合には、一般社員と同様に給与を減額しています。管理監督者の扱いに関してこの方法で問題ないでしょうか?

A 労働基準法41条の除外規定として、労基法上の管理監督者は深夜業務を除く、労働時間に関する規定は適用されないと定めています。まずは、労基法上の管理監督者とはどのよう方を指すのかを確認しておきたいと思います。ここでいう、「管理監督者」とは下記の要件を全て満たす方を指します。

 

 

 

 

 

 

 

これらの3点を、勤務の実態として適用されている必要があります。単に役職名では判断できません。つまり休日、時間外労働の規制をうけない「管理監督者」に該当するかどうかは、具体的な権限や給与、勤務実態で判断が必要ということになります。

例えば、多くの介護事業所ではシフト勤務で勤怠管理を行っていますが、常態として勤務シフトに入っている働き方をしているような管理者がいた場合、勤務時間の自由裁量がないと判断され、管理監督者ではなく、一般社員とみなされる可能性もあります。

先ほど、管理監督者に該当するか否かを判断するときに、単に役職名での判断ではなく、勤務の実態で判断しなければならないとしましたが、多くの介護事業では職責(役職)で、それを判断している場合が多い上に、介護保険制度における「管理者」と労基法における管理監督者を混同してしまうケースもあるので注意が必要です。一般的には、理事長、社長、施設長、事業所長、事務長くらいまでの立場の方がそれに該当するケースが多いと考えられます。もし、それ以下の役職の方(例えば、主任、副主任やリーダー等)を管理監督者の扱いにして残業代などを支給していない場合は、一度、その方の業務や給与の実態を確認してみる必要があると思います。その結果、管理監督職に該当しない方に、残業手当等を支給していない場合には、労基署からは残業代未払いの扱いとして、「3年間分を遡及して」支払うといった是正勧告を受けるリスクがあります。

 

 2,また、管理監督者には残業代は支給されませんが、勤務時間管理自体は必要となります。これは、給与計算上の必要性ではなく、管理監督者の健康管理の問題によるものです。管理監督者はその責任の重さから、過重労働になってしまうケースは相変わらず多く、それが深刻化するとメンタル疾患につながる場合も見られます。従って、経営者や人事担当者は

  管理監督者の労働時間には常に注意を払い、管理監督者の健康管理に十分注意することが重要です。

 

 3,さて、今回ご質問のあった管理監督者における遅刻・早退・欠勤に関する給与の扱い

についてですが、その方が管理監督者に該当することを前提とした場合に、先述の要件

の「勤務時間の自由裁量」の点が問題になります。

  つまり、管理監督者は勤務時間に裁量が認められていることから、始業時刻から遅れて

出社(遅刻)しても給与減額扱いにはなりませんし、また終業時刻より遅くなっても残

業手当はつかないことになります。

ただ、欠勤の扱いにつきましては、管理監督者であっても「就業義務」自体はありますので、その義務が果たされない場合に該当すると判断され、給与も欠勤控除として減額することになります。

 

Q、事務処理時間の簡便化のために、特定職員の残業代を定額支給にしていますが、職員から実際の残業にみあった金額が支給されているのか疑問の声が上がっています。医師の給与についても残業代を含めた年俸制で支給していますが、現状に何か問題があるでしょうか。

A, 残業代の定額支給は法令違反を招きやすいだけでなく、長時間労働の温床にもなりやすいものです。医師の年俸制の問題も、労働時間の管理方法とともに見直すべき課題の一つです。

サービス残業が発生してしまう要因の一つに、「固定残業代」の問題があります。例えば、月給30万円、40時間分の残業代を含む、というように、割増残業を毎月定額手当として支給するもので、労働基準法上認められた制度です。

固定残業代は本来、事務処理の簡便化のために認められた制度です。残業時間がゼロの人にも40時間分まるまる支給されるため、仕事のできる人と、できない人の不公平感をなくす意味もありました。しかし、定額40時間分を超えた労働時間分は、割増分を支払うことになるため、定額支給にしたところで労働時間を把握する必要があり、それほどのメリットのある制度ではありません。結果的に50時間残業しても40時間の定額分しか支給されないなどサービス残業の温床になっています。

事務スタッフの少ない医療機関でも導入しているケースがありますが、「ダラダラ残業を招く」といった弊害を招くこともあります。

 例えばある整形外科病院では、理学療法士に対して、残業代を30時間の定額制で支給していました。ところが、残業をした時間分だけ支給額が増える本来のやり方ではないので、

残業時間に関する意識が薄れ、中には「どうせ残業代がでないから」と間違った認識でダラダラと居残る職員が増えてしまいました。そのためこの病院では固定残業代を廃止して、タイムカードと時間外勤務申請を併用して厳格に労働時間を管理する方法に改めました。結果的に、固定残業を廃止したことで、残業時間は15時間ほどに半減したといいます。

 残業代の定額支給の問題は、高額の年俸制で支給される医師の給与でもたびたび問題視されます。最近、医師の年俸に残業代が含まれているかが争われた裁判では、最高裁は「含まれていない」と判示したケースもあります(H2977日)「残業代と基本給を区別できない場合には残業代が支払われたとはいえない」として無効と判断されました。

 この最高裁判決は、残業代の区分が不明確な給与の支払い方法は例外なく認められないとの立場を鮮明にし、労働基準法の立場を遵守するよう管理者に求めたもので、医師の労務管理にも少なからず影響を与えそうです。

Q 仕事のできない1年生(新人看護師)や、私語が多く問題行動が多い職員に対して、管理者の判断で時間外勤務申請を認めなくてもよいでしょうか。また、1年生の時間外勤務については、3カ月の試用期間を経過した後に認める事にしてもよろしいでしょうか。

A, 仕事が遅くても、業務であれば労働時間。試用期間でも残業をすれば時間外労働です。新人は仕事が出来なくて当たり前。「仕事が出来ないから残業と認めない」のではなくそもそも新人には残業させない、新人の指導体制がきちんと確立されているかが問題です。

 一般にこのような旧態依然の管理を行っている病院・クリニックは未だにあるようです。

その原因として、医療機関特有の問題が挙げられます。

①労働時間の管理が難しい

 「患者」を相手に24時間 365日稼働している為、労働時間管理が通用しない場面が多々あります。労働基準法をはじめとした規制だけでなく、医療法、医師法、保健師看護師法、診療報酬制度など、医療機関特有の法律規制を受けるため、医師の労働時間をはじめ労働関係法令の観点だけでは労働時間管理はうまくいきません。

 

②国家資格保有者が多数を占める専門家集団

医師・看護師・コメディカル等の国家資格保有者であり、また限られた地域内での人材確保、職員の定着を意識した労務管理が必要になります。さらに、医療従事者特有の個性も労務管理の難しさに拍車をかけています。労務管理は人の管理と言いますが、クリニックなど規模が小さくなるほど、「人」の管理のウェイトが増してきます。

 

③病院の労務管理の肝は「看護師の管理」

 

医療機関の中でも病院で働く半数以上は看護師です。病院の労務管理は看護師の管理と言っても過言ではありません。しかしながら質問にもあえるような旧態依然の管理を行っているケースがいまだに存在します。

例えば、教える先輩は「残業」で、教わる新人は「自己研鑽」

昔ながらのプリセプターシップの悪い例ですが、一部の病院の話ではありません。新人は残業をつけてはいけないという意識がほかのどの職種よりも強く、これが離職の引き金につながるケースは多いです。多くの場合、労務管理を現場任せにしているなど法令に関する認識不足などがその要因です。

 医療機関は特殊ですが、特殊だから許されるという時代ではありません。長時間労働は修正していかなければなりません。人材確保・定着のためにも働きやすい職場作りが益々、必要になっています。 

Q「70 歳まで働くことができるようにすること」というニュースを少し前に見 ました。当院では60 歳を定年としており、希望者は65 歳まで働き続けることが できます。65 歳以降は、職員が働くことを希望し、当院が必要と認めたときに は70 歳まで働くことができます。この取扱いのままで問題ないのでしょうか?

A,

2021 4 1 日より70 歳までの就業機会確保が努力義務となりました。現状

は努力義務であるため、職員が65 歳以降も働くことを検討した上で、現状のよう

な基準を継続することで問題はありません。将来的には70 歳までの就業機会確保

が義務化されることも考えられますので、労使間で十分に継続協議をしていくこ

とが求められます。

以下に詳細を解説いたします。

160 歳以降の雇用や就業機会の確保現在、65 歳未満の定年を定めている事業所は、原則として希望者全員を65 歳まで働くことができるようにする必要があります。これに加え、20214 1 日より、65 歳から70 歳までの就業機会を確保することが努力義務となりました。具体的には、以下の選択肢の中から措置を講ずるように努めなければなりません。

70 歳までの定年引き上げ

② 定年制の廃止

70 歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

70 歳まで継続的に業務委託契約を締結できる制度の導入

70 歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

  1. 事業主が自ら実施する社会貢献事業
  2. 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

 

2.必要な対応として考えられること

高年齢者雇用安定法では、65 歳以降の雇用等について、希望者全員ではなく、希望者の

うち、一定の基準を満たす職員に限定することも可能とされていますが、「医院が必要と

認めたときには70 歳まで働くことができる」という基準では対象者を医院が恣意的に

決めることができ、高年齢者を排除しようとする等、高年齢者雇用安定法の趣旨や他の労

働関係法令、公序良俗に反する可能性もあります。基準を決めるのであれば、その基準を

労使協議の上、明確にする必要があるものと思います。

 

3.今後の労働局の指導について

厚生労働省は都道府県労働局に対し、70 歳までの就業機会確保は努力義務であることか

ら、制度の趣旨や内容の周知徹底を主眼とする啓発・指導を行うよう方針を示していま

す。今後、70 歳までの就業機会確保について、周知や指導が強化されることも想定さ

れ、また、いずれは努力義務から措置義務になることも考えられます。各事業所におかれましては、現状の取扱いについて、職員の希望を踏まえながら労使協議を進めていかれることをお勧めいたします。

4 65歳超雇用推進助成金

 70歳までの雇用継続制度を奨励するための助成金も創設されました。本助成金制度は、生涯現役社会の実現に向けて、65歳以上への定年引上げ等や高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換した事業主に対して助成し、高年齢者の雇用の推進を図ることを目的としています。

本助成金3コースのうちの代表的な「65歳超継続雇用促進コース」に関して、雇用継続に関する支給要件をご説明いたします。雇用継続方法としては4パターンあり、

. 65歳以上への定年引上げ、B. 定年の定めの廃止、C. 希望者全員を対象とする66歳以

上の継続雇用制度の導入、D. 他社による継続雇用制度の導入 のいずれかを導入した事業

主に対して助成を行うことになっています。また、助成金支給額も25万円から160万円まで施策内容によって支給額が決められています。ご興味ございましたら厚労省のリーフレットをご覧いただくか、またはお近くの社会保険労務士までお問い合わせください。

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