クリニック・病院の現場Q&A

Q 当院では、勤務医の当直の負担軽減は急務と考えています。違法状態のまま当直を行っているとして労働基準監督署の指導を受けた事例も多く聞きますが、どのような対応方法があるのでしょうか?

A,医療法16条では「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」と定めています。病院では必ず医師が交代で夜間や休日の当直をしますが、常勤の医師が交代で行う当直業務について、労基法で言う「宿日直勤務」としての扱いができるかが問題になります。当直を夜勤(通常労働)として扱い、非常勤医師に担当させるのであれば問題ありませんが、常勤医師にたいして、日勤に引き続いて当直にあたらせた場合、労基法上の宿直勤務としていながらも労基署に許可を取っていない、あるいは許可をとっていても実態の勤務が許可基準を満たしていないケースが相変わらず多く見られます。

医師の場合、宿日直勤務とは言え、救急患者や入院患者の急変に対応しなければなりません。そこで宿日直勤務中に救急患者の対応など、通常の労働が行われる場合の取り扱いについては次のように定めています。

①通常の労働が突発的に行われる場合

 救急患者の対応などの通常労働が突発的に行われることがあっても十分な睡眠時間が確保できる場合であれば宿日直として勤務することは可能。但し、突発的に行われた労働に対しては、労基法37条で定める割増賃金を支払うこと。

②通常の労働が頻繁に行われる場合

救急患者の対応などが頻繁に行われ 夜間に十分な睡眠時間が確保できないなど、常勤として昼間の労働と同様の勤務に従事することになるときは宿日直勤務の許可を取り消される場合がある。

要するに、その頻度がまれなものであって睡眠も十分に確保できるような状態であれば許可が取り消されるようなことはありません。但し、時間外割増賃金を支払うことは必要になります。

 注意したいのは、「まれなこと」に関する頻度です。例えば、宿日直勤務毎に毎回30分、1時間の処置当たっていた場合それは「常態」とみなされ、労基署から是正勧告を受けた例が実際にあります。従って、患者対応に時間だけではなく頻度も含めて「まれなこと」であるかどうかを判断されることになります。

 

対応策としては、医師の当直について、アルバイトの非常勤医師に当直を委託している民間病院は相当数あります。非常勤医師に委託する場合は、土日のみ、2次救急の輪番時のみに委託したり、病院に事情により異なります。

当直を非常勤医師に委託する場合に問題になりやすいのが「入院患者の急変に誰が対応するか」です。多くの病院では当直医がそのまま担当するようですが、患者によっては主治医の指示を仰ぐ必要もあり、主治医は実質的にオンコール体制におかれているとも言えます。

そのため常勤医師にタブレット端末を支給して院外でも画像や検査データが観察できるようにし、当直に非常勤医師に必要に応じて指示を出し、救急体制を維持している病院もあります。

その他、勤務交代による「チーム体制」にすることで、当直明けの勤務を非番として

連続当直を禁止している病院や、当直翌日は半日勤務にしたり、手術数を調整したり外来数を制限したりして連続勤務の負担を軽減している病院もあります。ただ、それには十分な人員確保が必要になる等の課題はありますが、勤務医の負担軽減に一定の効果を上げている病院もあります。

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副業の取り扱いについて Q,一日8時間、1週40時間を超えた割増賃金について、副業先での労働時間を考慮して会社は割増賃金を支払わなければならないのですか?考慮しなければならない場合には、どのような方法で副業先の労働時間を把握すればよいのでしょうか?

  • 複数の事業所で就労した場合の労働時間の取り扱いについて、労働基準法38条は「事業を異にする場合であっても労働時間に関する規定の適用にあっては通算する」と定めています。したがって、設問にあるように副業している場合は、他社における労働時間を通算して総労働時間を管理する必要があり、時間外労働の残業代についても、総労働時間を前提に支払う必要があります。

この点について、行政通達は「後に労働契約を締結した事業主は契約に締結に当たっては、その労働者がほかに事業所で働いていることを働いていることを確認したうえで契約を締結すべきであるという観点から、後に労働契約締結した事業主が割増賃金を払う必要があります。

例えば、パートタイマーXはもともとA社で勤務していたところ、B社でも勤務するようになった場合、A社で5時間、B社で4時間の労働契約を締結した場合、合計で9時間になるので、1時間分の時間外割増の支払いは、後に契約をしたB社ということになります。

また、次のようなケースは必ずしも後に契約をした事業主とも限りません。例えば、

もともとC社で5時間働いており、そのあとにD社で3時間働くようになった場合で

C社の業務都合で6時間勤務になった場合には、C社が1時間分の割増賃金を支払うことになります。

ただ、別の会社の労働時間をどのように事業主は把握したらよいのでしょう。これが社員のプライベートに属する事項なので、社員から任意に情報を提供してもらう必要があります。具体的には社員の承諾を得たうえで副業先の労働時間契約書などを提出してもらう、副業先の労働時間数を自己申告してもらう、といった方法が考えられます。もし、

申告を拒否された場合や偽った時間を申告した場合、時間外労働の割増賃金の支払いの問題が生じたような場合には、虚偽申告や給与の不正受給に該当するとして、懲戒処分の対象になります。

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Q 新人看護師が退職を申し出てきました。プリセプターの先輩との関係が原因らしいのですが、業務指導が時間外に及ぶことも多いとのこと。看護部任せにしていたので人事として どの様に対応すべきか困っています。

A、もし、時間外の扱いで、教える先輩は残業で、教わる新人は自己研鑽として時間外扱いはしない、ということになっていたら、それは解消すべきです。

 新人看護師(プリセプティー)が仕事になれるまでの一定期間、先輩看護師(プリセプター)が看護実践能力を指導するのがプリセプター制度です。通常、入職3~4年程度の看護師がマンツーマンで指導に当たりますが、相性がわるいと新人看護師の離職の原因になるといったデメリットがありますが、他にも問題はあります。

 例えば、先述の「残業時間」に関する扱いの問題です。教える側は残業代を申請するのに教わる側は申請しないといった「徒弟制度」のような実態が残念ながら、いまだに看護現場には散見されます。これらの実態にも人事担当者は留意すべきです。

プリセプター業務は、新人が自主的に教えを乞うわけではなく、先輩の指示によるものである限り、労働時間であることは明白です。現場の対応としては所定労働時間内で行うよう指導を徹底すべきです。業務の都合上、どうしても時間になるときは、新人の同意を得たうえで、師長など看護管理者の許可を得るものとします。時間外申請書にその理由を記載して残業として記載します。

人事担当者は、看護管理者と実態を確認しながら、業務と自己研鑽の線引きをしたうえで、取り扱いルールを決めます。そうすることがサービス残業の解消につながるだけでなく、現場を任されている看護師長の負担の軽減にもつながります。

 

人材が定着する具体的プリセプター運用事例

ケース1

A病院では業務指導を行う「プリセプター」と、業務外のことを含めて相談相手になる「メンター」をそれぞれ別の職員を充てて使い分けています。プリセプターは仕事能力で人選し

メンターは指導者としての経験豊富なベテランから選任します。育成にあたってプリセプターと新人育成委員会が連動しながら指導にあたることで、プリセプターの精神的負担の軽減にもつながっています。

ケース2

新規学卒者が毎年30名前後入職するF病院では、プリセプター制度を採用せず、新人の業務指導は「チーム制」で行っています。指導者を固定しないため。指導する先輩によって指導方法や内容にばらつきが出ないようにマニュアル化も徹底しています。複数の先輩でフォローできるため、人間関係のトラブルも起きにくく、新人に定着率も高いと言います。

Q キャリアパス・評価制度を作っても、総務担当が変わったことで、継続性がなくなってしまった。今後、どのようなことに気をつければいいでしょうか?アドバイスをお願いします。

A,

「キャリアパス規定」もしくは「人事評価規定」として、社内規定として文書化したり、また全職員へのキャリアパスの「見える化」にも工夫が必要に思います。

社内規定の一つとして「人事評価規定」を文書化されることをお勧めしています。「評価制度が、いつの間にか運用しなくなってしまった」などということが無いように、キャリアパスや人事評価の運用は、社内監査等の対象として定期的にその運用が適切になされているかどうかチェックされなければなりません。つまり法人のガバナンス機能として、運用を継続していくためにも、それが文書化されルールに従った運用がなされているかが確認されなくてはなりません。下記の文書化の事例(抜粋)をご紹介いたします。

  • 規程趣旨

この規程は、法人職員に対するキャリアパスの実施を通じて職員の資質向上を図り、もって人事管理の適正化、組織の活性化、地域貢献に資することを目的とする。

2 キャリアパスの定義

  この規程においてキャリアパスとは、法人が職員に対し職業人として必要な能力と処遇について具体的な内容を職能等級、職位、職層、求められる能力を示すことにより、職員が自らの目標を設定し努力するための道筋を示したものと定義する。

 

3 キャリアパスの意義

  キャリアパスを整備する意義は、法人が人材育成を何よりも重要であると認識し、働く人の成長を願い目標を設定し努力を重ねることができる環境整備の一つとすることにある。運用にあたって、資格等級制度、人事評価制度、研修制度との連動を図ることによりキャリアパスを法人経営の重要なツールとして定着させる。これにより、職員が自らの将来像を描きながら日々の業務に邁進できる環境を実現させる。

4 主管部門・担当部門・監査部門

  キャリアパスを実施するにあたり、以下の通り、主管部門・担当部門・監査部門を定める。

   主管部門 法人本部に「法人本部キャリアパス運営委員会」を組織する。

   担当部門 各事業所に、事業所責任者を中心とした「○○事業所キャリアパス運営委員会」を組織する。

   監査部門 「キャリアパス制度運営監査委員会」を第三者委員会として組織する。委員会は、人事考課制度等に専門知識を有した者、被評価者代表、評価者代表、法人本部代表者などから構成する。

・・・・・

また、キャリアパスの「見える化」ですが、本来の「見える化」とは「問題点の可視化」という意味ですが、ここでは「理解を深めるためのビジュアル表現」という意味で使用しています。つまり、キャリアパスをよりわかりやすく表現することで、求職者に対してアピールできるほか、在職している職員のモチベーションを高める効果もあります。さらに言うと、「退職したくなったが、少し我慢すれば次のステップに進めるので、もう少しだけ辛抱しよう」という、離職防止効果までを期待できます。

業界別の詳細は下記をご参照ください。

①医療分野キャリアパス

 クリニック人事サポートパック(評価制度、賃金制度の作成) | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

②介護分野キャリアパス

 処遇改善加算対応キャリアパス構築コンサルティング | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

③保育園のキャリアパス

 保育士キャリアアップの仕組みサポートパック | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

 

Q 上司Aが部下Bに対し、Bが作成した文書の誤字脱字が多くミスが多いとして、業務上の注意指導をしたが、それでも改まらなかったので、再度、前回よりきつく注意したところ、Bは「パワハラです」と言って注意指導を受け入れない、注意指導はどのような場合にパワハラになりますか?

A,

パワハラに関し実際に何をすればパワハラになるのか、十分に理解できている方は以外と少ないのではないでしょうか。そのため本来、部下を指導監督する上司が、これはパワハラにあたるのか、などと判断に迷ってしまうこともあると思います。さらに本設問のようにちょっと厳しく注意すると部下から「パワハラだ」などと言われると上司は注意する出来ないのではないかと思ってしまうケースも散見されます。そこで、まずはパワハラに関する基本的な考え方について検討したいと思います。

パワハラにつては、法律上の定義があるわけではありませんが、厚生労働省は「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働くものに対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と定義しています。

つまり注意指導そのものがパワハラにあたるものではなく、注意指導の程度や態様が度を越している場合にはパワハラにあたる可能性があるということになります。裁判上も、注意指導の目的は正当なものであったとしても、感情的になって大きな声を出したり、部下の人間性を否定するかのような表現を用いて叱責した点などは「社会通念上、許容される範囲を超える」としています。

御質問のケースでは、上司は部下の誤字脱字が多いことを、業務を対象にして注意指導を行っていると言えます。しかしながら部下は注意されたにも関わらず改善されないだけでなく、反抗的な態度をとってきたとのことですから、その分厳しく注意するのは当然と言えます。もちろん、先に述べた人格否定を行う、大声で怒鳴るといった注意指導は行き過ぎですが、そうでない限り、上司の注意指導はパワハラとはいえないでしょう。注意指導を行うときには、くれぐれも冷静に行うことが大切です。

Q ハラスメントの問題は医療機関でもよく耳にします。管理職による部下へのパワハラ  先輩の後輩に対する悪質ないじめも問題になっているようなケースもあるようです。実際医療機関としても社会的責任としてはどこまで問われるのでしょうか。

A ハラスメントの問題は、事実の深刻さや結果によっては行為者だけでなく、使用者(医療機関)の責任も問われます。使用者の安全配慮義務、損害賠償責任、結果によっては刑事責任まで問われるケースもあります。

 

詳細

使用者には、従業員が安全で、健康に働くことができるように配慮する義務があります。この義務は「安全配慮義務」といい、労働契約法5条に定めています。

 

労働契約法5条 「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保し、労働することが出来るよう、必要な配慮をするものとする。」

 

労働契約法には罰則はありませんが、使用者が安全配慮義務を怠り、労働者に損害が発生した場合、使用者は労働者に民事上の不法行為として損害賠償義務をおいことになります。

いじめ・いやがらせ行為は不法行為として、損害賠償責任を負う可能性があります。(民法709条)。パワハラを行ったものだけでなく、医療機関がそれを放置していれば、病院は使用者責任(民法715条)を問われることもあります。さらにパワハラ行為の程度によって、パワハラ行為者は、暴行・傷害、脅迫といった刑法上の処罰対象になることもあります。

 

医療機関が安全配慮義務違反に問われないためには、院内でパワハラ行為が問題になった場合、問題を放置せず、当事者や関係者から事情聴取を行うなど迅速に対応し、今後発生しないような対応が必要になります。また関係者に精神的なケアの措置も必要になります。

ハラスメントの問題が発生しないように、定期的に管理者研修を実施するなど、日頃から「予防」の措置を講じることが重要です。

Q 仕事のミスが多くクレームが入った職員に始末書を求めましたが、始末書に「上司が指導してくれない」と書き、反省してくれない職員への対応  

A 始末書というのは、業務などに規律違反をしたり、過失をしたりした場合に、その行為を反省し、謝罪し、同じことを繰り返させないようにする書面です。就業規則の制裁規定にも始末書に提示を求めています。

 

今回は、ミスが多くクレームまで入ってしまったので、その行為を反省してくれることを期待して提出を指示したのでしょう。しかし、反省するどころか施設へ責任転嫁していることがわかります。この場合、施設側が「指導をしたでしょう」と言ったところで「言った、言わない」の押し問答にしかならないのであれば、具体的な行動を振り返らせます。そして、改善することを具体的に指示し、ほかにも案があるならば自分から案を出してもよいように、ある程度「自由度」をいれると本人も書きやすくなります。

戒めるべきことは、「利用者さんのことを考えていなかったこと」ですから、話の途中で「自分はできていると思っても、利用者さんや他の職員はできているとは思っていない」ということを伝えるのです。そのうえで、「始末書」という書面ではなく、「改善提案書」と名称を変えるのもいいかもしれません。始末書というとどうしてもネガティブなイメージが強いからです。しかしここでも大切なのは、自分の行動を戒めて将来につなげることです。ですから書くハードルを下げ「改善提案書」に改めるというわけです。そしてこのフォーマットのなかに書くべき項目を入れ込んで記入してもらいます。ポイントは

  • どんな状況でクレームが発生したのか
  • それはどんな原因があったのか
  • そうすればそれを改善できるのか具体的な例をあげる
  • いつから実施するのか

 

人は埋め込み式の方が、書きやすくペンが進みます。まずは「自分の行動をふりかえり、反省してもらう」ことから始め、具体的な改善行動案を書いてもらいます。それでもできない場合には、「自分で書いたことなのになぜ実行がでいないのか」と面談で深堀していきます。

この書面を提出させるというのは、成長の過程もわかりますし、指導をしている実績もわかりますのでぜひともお勧めします。

Q、頑張っている職員を評価してもポストが少なく、昇進と昇給が思ったようにできていない。対処方法についてアドバイスをお願いします。

例えば、10人規模の通所介護(デイサービス)事業所でも十分にキャリアパスは構築できます。規模が小さい事業所は職責や組織のポジションが少なく、また給与財源が限られているという理由で、キャリアパスを作っても、意味がないとお考えの事業所は多いようです。ただ、社内のポジションで考えてみると、資格等級制度における「昇進」と「昇格」は異なります。「昇進」は確かにポジションが空かなければ上に進むことはできませんが、「昇格」は等級要件がクリアできれば全員昇格するのが、キャリアパスにおける資格等級制度の考え方です。例えば、取得した資格のレベル、勤続年数、人事評価などで、各等級の要件を定め、その昇格要件を決め、給与や時給に連動させれば、立派なキャリアパスです。また、昇給財源ですが、介護業界であれば処遇改善加算金を、財源に充当させることも十分可能ですし、むしろ国もそれを奨励しています。もしかしたら、従業員教育に時間をかけられない小規模事業所だからこそ、その仕組みにより自発的に能力を高めるようになるといった、キャリアパス効果は大きいかもしれません。

 

医療分野キャリアパス

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 介護分野キャリアパス

 処遇改善加算対応キャリアパス構築コンサルティング | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 保育園のキャリアパス

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Q クリニックは指示した研修に対して、職員から「こんな研修には興味ありません。出たくないのですが」と拒否されて困っています。

A、困ることはありません。クリニックにおける業務の一環として義務付けられる研修であれば、業務命令であり、興味がない程度の理由で拒否することはできません。そもそもその研修の目的や趣旨を改めて説明して受講することを促します。同時に、業務命令に従わず拒否した場合は懲戒対象になり得ることもお伝えしておきます。

【解説】

まずは、そのような職員に耳を傾け、なぜ受講したくないのか、また、クリニックとしてのこの研修の必要性をしっかりとお伝えします。クリニックが指示した研修ですので、スキルが身につく、あるいは仕事に関するノウハウや気づきが得られるなど、その職員にとってメリットはあるはずです。今回の研修を受講することで、どのようなメリットがあるかについて、職員が納得いくように話すことがまずは大切だと思います。ただ、どうしても受講しない場合には、先述の通り懲戒処分も選択肢としてはあり得ますが、まずは上記のとおり説明することで主体的に受講して頂きたいものです。

Q 督促されるまで院長に報告しない、また報告のタイミングがとても遅い職員がいます。クリニック全体の仕事に支障がでて困っています。アドバイスをお願いします。

A、報告の必要性と報告を怠った時のリスクを、職員にしっかりと説明してください。また、実際の場面では、報告すべきことが事柄と報告のタイミングや期日について院長から伝え指示をすることも必要です。

 

1,報告の意義と必要性を職員と共有する。

 まずは、院長と職員で「なぜ報告が必要なのか」という、基本的な認識を共有する必要がありと思います。次に報告を怠った場合や報告のタイミングが遅れた場合にどのようなことが起こりうるのか、そのリスクについても共有する必要があります。

①報告の意義

 報告とは、指示命令された仕事の経過や結果について、タイミングよく伝える事

②報告の必要性

 ・院長が仕事の進捗や質を把握できる

 ・不具合や問題を早期に把握し、対処ができる

 ・期限や患者満足度を満たせるかどうかの判断ができる

 

2,報告は院長から求めることが必要なときもある

 仕事の報告をすることは、職員の基本的な義務です。但し、業務上の重要な判断や問題解決をしなければならない時には、院長からあらかじめ報告のタイミングや内容を職員に明確に伝えることが必要な場合もあります。特に重要な案件については、なおさらです。

従って、職員が報告を怠るとか、報告のタイミングが遅いという場合は、全て職員の責任ということではなく、院長からも適宜コミュニケーションをとりながら、報告を求めることは重要になります。

 

3,報告を怠ると大きなトラブルを抱えることになる

 具体的にどのようなリスクやトラブルを抱えることになるのか。例えば下記のようなリスクとなります。

 ①仕事の期限に間に合わなくなるリスク

 ⇒法改正時などに必要な届出が遅れ、レセプトの請求に間に合わなくなる

 ②大切な職員を離職に追い込むことになる

 ⇒院長の目の届かないところで陰湿ないじめや嫌がらせがあったことを報告できず、職員が離職してしまう。

 ③感染リスクの正しい評価が出来ないリスク

 ⇒報告がなされなかったため、その後の感染症阻止のための対策が遅れてしまった

④患者さんや取引業者の信頼を失墜させるリスク

 ⇒クレームを報告せず、対応を誤ったことで患者さんや地域住民からの信頼を失う

 

4,リスクの予防には定期的な報告が重要になる

報告に関するリスクをあらかじめ予防するには、日頃からの職員とのコミュニケーションを密にし、定期的な報告を受けるようにそのタイミングを設定することが有効です。

また定期的な報告を待たずに、例えば「お薬について相談を受けた時」クレームを受けた時」などのように報告すべき場面を約束事として決めておくと、報告の漏れがなくなり、報告に関するリスクを予防することも出来ます。

 

以上

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