コラム
来年度の介護報酬改定をめぐり、政府は20日に全体の改定率を正式決定した。鈴木俊一財務相や武見敬三厚生労働相らが折衝で合意した。
全体の改定率はプラス1.59%。来年度は432億円の国費を新たに投じる。
このうち、介護職員の処遇改善のために0.98%を充当。残りの0.61%を、各サービスの基本報酬や処遇改善以外の加算などに配分する。
このほか、処遇改善加算の一本化による効果(*)や食費・居住費などの「基準費用額」の引き上げにより、プラス0.45%相当の効果が追加的に生じると想定。「介護現場で働く人の処遇改善を着実に進めつつ、サービスごとの経営状況の違いも踏まえたメリハリある対応を行う」ことを確認した。
* 処遇改善加算の一本化による効果=厚労省は加算の算定率の上昇、上位区分への移行などを想定。
折衝後に会見に臨んだ武見厚労相は、「大変厳しい交渉だった。介護報酬はプラス1.59%で、これに処遇改善加算の一本化による効果などを含めると、およそ2.04%となる。実質的に2%台を確保できた。介護職の賃上げを実現できる水準を確保できた」と成果を強調。「この改定率を前提として、実際に処遇改善につながるようより具体的な議論を進めていく」と述べた。
東洋大学・福祉社会デザイン学部の高野龍昭教授は今回の改定率について、「事業者・職員はプラス5%程度の改定を望んでいたと思うが、厳しい財政状況のなか、診療報酬を上回る改定率となった背景には、政府の介護現場に対する一定の配慮があったことは想像に難くない」と分析。「十分な改定ではないとしても、事業者には経営を好転させ、職員の処遇改善に努める責務が生じることを肝に銘じるべきである」と話した。
介護・福祉人材の確保、育成、定着に注力する「介護人材政策研究会」の天野尊明代表理事は、「介護従事者の処遇改善がテーマとなって、過去有数の改定率(1.59%)が示されたことは非常に意義深い。政府として人材流出を何とか止血したいという思いのあらわれだ」と評価する一方で、「改定率の大半を占める賃上げ部分(0.98%)を除けば、残す0.61%で経営戦略の立て直しが求められるという厳しい現実がある。切っても切れない賃上げと経営基盤の安定化を両輪で舵取りしていくには、むしろこの改定をスタートにした長期戦を覚悟しなければならない」と指摘した。(介護ニュースより)
厚生労働省は18日、来年度の介護報酬改定の施行時期をサービスごとに2つに分ける方針を示した。
医療分野との関わりが特に深い訪問看護、訪問リハ、通所リハ、居宅療養管理指導の4サービスに限り、改定を6月に施行する。それ以外の多くのサービスについては、従来通り4月の施行とする。
18日の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で明らかにした。介護報酬改定の施行時期をめぐっては、医療保険の診療報酬改定が6月に変わるため判断が注目されていた
厚労省で介護保険制度を所管する老健局の間隆一郎局長は会合で、「診療報酬DXなどの動きをしっかりみながら、十分な準備をしながら、将来的には6月施行に合わせることも検討していきたい」と述べた。(介護ニュースより)
政府は子育て支援のために19年10月、3歳から5歳児を対象に公立の幼稚園や保育所の保育料を無料にした。
自治体の認可を受けていない認可外保育施設についても、国が定めた人員配置や設備の安全基準を守れば月3.7万円まで免除することにした。親の仕事や介護などで「保育の必要性がある」と認められる必要がある。
待機児童の多い都市部などで認可外施設を利用せざるを得ない親もいることから、5年間の経過措置として容認した。この特例が24年10月以降なくなり、無料を維持するには施設側が基準を満たさなければいけない。
国の指導監督基準によると、安全面では保育室の一定面積の確保や転落防止設備の設置などを求めている。保育士に関しては3歳児20人につき1人以上、4~5歳児は30人につき1人以上を配置するよう定める。
政府は自治体による施設の巡回や監査などを通じて基準に届かない施設に改善を求めてきたが、改まらない施設はなお多い。
こども家庭庁によると、最新の22年3月時点で条件を満たさない施設は3500カ所と全体の25%を占める。新型コロナウイルス禍の影響で自治体の定期監査などが簡素化された面があり、同庁は足元でも一定数が未達のまま残っているとみる。
施設の運営事業者が資金不足で必要な設備を導入できなかったり、人材を確保できなかったりすることが背景にある。利用者にサービス内容を掲示する義務を怠るといった事例も一定数に上るようだ。
厚生労働省の調査では、23年7月の保育士の有効求人倍率は2.45倍で全職種平均の1.26倍を大きく上回る。
放置されれば、施設に子供を預ける親にとっては負担増を迫られることになる。年換算では最大で40万円超の支出増となるケースも想定され、物価高も続くなかで家計に打撃となる。政府の子育て支援策の効果も弱まりかねない。
全国で認可外保育所に通う児童数は21年度に23万2995人で3年前より6万人ほど増えた。ベビーホテルの一部など無償化の対象外の児童も含む。
こども家庭庁は11月中旬、基準を満たさない施設の利用者に24年4月の転園を促すよう自治体向けに通知した。改善が進まない場合に、利用者の負担増を避けるための対策だ。
ただ保育所を移るのは容易ではない。公立保育所は原則4月入所となっており、年度途中に希望する保育所に空き定員があることはほとんどない。利用者が転園させたくても実現せず、自己負担が発生する可能性が高い。
窓口となる自治体も対応に苦慮している。東京23区内の担当者は「転園を促すのは現実的ではない。基準を満たさない施設が期限までに改善させると言えば、口約束を信じるしかない」と打ち明ける。
そもそも国による自治体への通知が遅いとの指摘もある。4月入所の公立保育所の申し込みは11月から12月上旬に受け付ける自治体が多く、締め切りを過ぎてしまったケースもあるとみられる。(日本経済新聞 朝刊 総合・経済)
A、キャリアパスは個人の能力・適正に応じて、「指導・監督層」になるコースとは別に「専門職」コースを準備し、専門職のキャリアステップと昇給制度で運用しています。
現場では、「優秀な職員ほど役職にはつきたがらない」とか、「知識・技術面でわからないことについて、皆が教えてもらえる職員は決まっており、しかもその職員は役職者ではない」、といった話がよく聞かれます。そこで考えるべきなのが、キャリアパスにおける「複線化」です。つまり、キャリアパスに描かれた昇格ラインによらずに、役職にはつかずに専ら専門性を高め、組織に貢献するキャリアパスを作ることです。この階層を「専門職」として、上級介護職の水準を超える水準をもって処遇します。この場合、当該職員はマネジメント業務を行わず、専ら好きな介護の道を追い続けても、相応の処遇が保障されることになります。専門性の高さを認められてこその処遇なので、職員のプライドも充足することができます。
また、優秀な人材を滞留させては離職につながりかねません。中小企業の中には職員が自らポストの数を読んで、諦めムードが漂っているようなケースも散見されますが、「専任職」を設けて、「当法人は、管理上の役職だけがポストではない。専任職というスキル面のリーダーもあり、相応に処遇する」と周知すれば閉塞感が一気に変わるはずです。
Q 職員の休職に関する相談です。現在の就業規則では「欠勤が1か月以上にわたったとき・・・休職期間は3カ月」とあります。ただ、休職および復職を命ずる判断基準等の詳細の定めはありません。就業規則の規定についてアドバイスをお願いします。
A 休職制度を設けるのであれば、休職と復職を命じるかどうかを判断する上での、公正な客観的な判断基準が必要です。その他にも就業規則に盛り込むべき内容は下記になります。
①休職について
・休職を命じる職員に要件
・休職を命じる判断基準
・休職期間
・休職中の賃金
・休職中の留意点
②復職について
・復職後の働き方
・復職を命じる判断基準
③休職期間完了時の取り扱い
上記の中で、休職を命じる判断基準では、例えば、「診断書の提出」はもちろん、「回復に何年もかかる場合には休職は命じない」または「業務外の同じ傷病が理由で欠勤と出勤を繰り返すようなときには休職は命じない」など、状況を想定しながら規定に落とし込んでいく作業が必要となります。休職期間については、「休職期間中であっても園は社会保険を負担しなければならないので、これまでの貢献度合いを考慮し、勤続年数が長い職員と短い職員では差を設ける」ことも大切です。
復職については、復職を命じる判断基準は、本人の復職願いの提出の他、主治医の診断書、
本人との面談実施や園指定の医療機関の受診なども必要です。また、復職後、もし同じ傷病で欠勤した場合には復職を取消、直ちに休職を命じることとし、休職期間は、前の休職期間と通算すること等の規程も必要です。
休職期間満了後の取り扱いについては、回復を見込んで休職を命じたけれど、回復できない場合には、残念だけど退職とせざるを得ない、ということで、休職期間満了日をもって
退職とします。
まずは、上記の内容を規定に明記しておくことで、いざというときには、冷静に対処できるようになります。
社会保障審議会の医療部会と医療保険部会で、来年度の診療報酬改定の基本方針がまとまりました。中心となる重点課題は医療従事者の人材確保・働き方改革です。
他に地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DX、安心・安全で質の高い医療の推進、効率化・適正化を通じた医療保険制度の安全性・持続可能性の向上などを挙げています。
社会保障審議会の医療部会と医療保険部会は12月8日、2024年度診療報酬改定の基本方針をまとめた。医療従事者の確保と働き方改革の推進を重点課題に位置付けるとともに、物価高騰や賃金上げへの対応、かかりつけ医機能を担う医療機関と介護支援専門員との連携強化などに取り組む方針を明示した。
改定の基本的視点には、(1)現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進、(2)ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進、(3)安心・安全で質の高い医療の推進、(4)効率化・適正化を通じた医療保険制度の安全性・持続可能性の向上―の4項目を掲げ、このうち(1)を重点課題とした。
(1)を実現するための具体的方向性の例では、22年度に実施した看護職員の処遇改善の取り組みや、政府の総合経済対策(23年11月閣議決定)を踏まえつつ、医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組みを推進する。タスク・シェアリング/タスク・シフティングや業務の効率化に資するICTの利活用の推進、医療人材・資源の偏在対策―なども進めるとした。
■生活習慣病患者等への説明に関する評価見直しなど盛り込む
(2)の医療DXの関係では、①マイナ保険証を活用した、質が高く効率的な医療の提供、②電子処方箋の普及、③電子カルテ情報の3文書・6情報の活用を通じた医療連携の取り組み―を推進。医療機能の分化・強化・連携では、④23年4月の医療法改定を踏まえた生活習慣病等の継続的な医療を要する者に対する説明に関する評価の見直し、⑤かかりつけ医機能を担う医療機関が地域の介護支援専門員や介護サービス事業者と「顔と顔の見える関係性」を構築し、有機的な連携を行うことを推進―などに取り組む。
(3)の「質の高い医療の推進」には、①食材料費、光熱費をはじめとする物価高騰を踏まえた対応、②生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理と重症化予防の取り組みの推進―などを盛り込んだ。
(4)の「効率化・適正化」では、後発医薬品やバイオ後続品の使用、長期収載品の保険給付のあり方の見直しのほか、医師と薬剤師の協働による医薬品適正使用の取り組みとして、重複投薬、ポリファーマシー、残薬や適正使用のための長期処方のあり方への対応、リフィル処方箋の活用―などを実施するとした。(出典:医療新報)
子どもがかかりやすい感染症の流行が続いている。季節性インフルエンザによる休校や学級閉鎖が多くなっているほか、プール熱と溶連菌感染症の一種が過去10年で最多の水準。子どもが体調不良で登園・登校ができない場合に、就労中の親に代わって子どもをみる「病児保育」も需要が急増している。 【グラフ】インフルエンザやプール熱の流行状況。報告が増え続けていることがわかる 厚生労働省が発表した11月27~12月3日の季節性インフルの報告数は、1医療機関あたり26・72人。全国で4690施設が休校や学級閉鎖になっている。 国立感染症研究所の集計によると、11月20~26日に定点医療機関を受診した患者数は、プール熱(咽頭(いんとう)結膜熱)が1医療機関あたり3・54人、溶連菌感染症(A群溶血性レンサ球菌咽頭炎)が同3・86人で、いずれもこの10年で最多の水準となった。 首都圏で訪問型病児保育のサービスを行う認定NPO法人「フローレンス」は、予約の殺到により、月額制の新規会員の受け入れを制限している。保育スタッフの派遣は「当日朝8時までの依頼で100%対応可能」としていたが、現在は全ての予約数に対して7~9割の対応となっている。 例年、東京都内の過去の感染症の流行状況などをもとに需要を予測している。だが、「同時に複数の感染症が流行しており、過去のデータが役に立たない。事業を立ち上げて20年近くになるが、異常事態だ」と三枝美穂・病児保育事業マネージャーは話す。
朝日新聞社
厚生労働省は来年度の介護報酬改定で、通所介護と地域密着型通所介護の「認知症加算」の要件を緩和する。
認知症の日常生活自立度III以上の利用者が全体の20%以上、という要件を見直す。算定のハードルを下げ、事業所の対応力強化につなげる狙いがある。
11日に開催した審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で、これまでの議論を整理した「審議報告」の案を提示。その中に「要件を緩和する」と明記した。
デイサービスの「認知症加算」は60単位/日。認知症の高齢者を受け入れる体制の整備などを促すインセンティブだが、その算定率は日数ベースで3%に満たない(*)など低調だ。要件には、
◯ 看護職員、介護職員を人員配置基準の人数に加えて2人以上確保していること
◯ 認知症介護の指導者養成研修、実践リーダー研修、実践者研修の修了者を配置していること
なども含まれる。このうち、自立度III以上の利用者の割合がネックの1つになっていた。
*「認知症加算」の日数ベースの算定率=昨年4月で通所介護が2.6%、地域密着型通所介護が1.1%
このほか、厚労省は要件として、認知症ケアに関する個別事例の検討会や技術指導の会議などを定期的に開くことを、事業所に新たに求めていく考えも示している。こうした方針を近く正式に決める。要件などの詳細は、介護報酬改定の前に通知などで示す。(介護ニュースより)
高齢者のADLや要介護度を維持・改善する介護事業所に報奨金を交付する新たな独自の事業について、東京都は11日までに申請手続きの詳細を公表した。
事業所から交付申請書や実績報告書を提出する必要がある。書類の様式は公式サイトでダウンロードできる。
手続きの流れや日程は以下の通りだ。最初のステップは交付申請書の提出。受け付けは来年1月4日に始まり、同31日の締め切りとされた。報奨金の交付は4月の予定。
は来年1月4日に始まり、同31日の締め切りとされた。報奨金の交付は4月の予定。

この東京都の新事業は、利用者の自立支援・重度化防止に注力する介護現場を後押しすることが目的。頑張って要介護度を下げると介護報酬が減ってしまう、というジレンマを外付けのインセンティブで解消する狙いがある。
対象は通所介護や介護付きホーム、特養など「ADL維持等加算(*)」があるサービス。これを算定している都内の事業所に、まず基礎分として20万円が交付される。加えて、利用者の要介護度などが維持されていれば10万円が、改善されていれば20万円が上乗せされる。
* ADL維持等加算=利用者のADLの維持・改善などが要件に組み込まれている介護報酬のアウトカム評価。
東京都は公式サイトで、「交付申請書などは事業所ごとに作成し、法人単位でとりまとめて提出を」と要請。交付申請書の内容から特に変更がない場合も実績報告書の提出は必要、と呼びかけている。
また問い合わせ先として、今月15日9時から審査事務局を新たに開設すると説明している。交付要件などの詳細は東京都の公式サイトから。(介護ニュースより)
来年度の介護報酬改定に向けた協議を重ねている厚生労働省は11日、通所介護(*)の「入浴介助加算」の算定要件を見直す方針を固めた。
* 地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護を含む
基本の「加算(I)」について、入浴介助に携わる職員が関係する研修を受講することなどを新たに求める。算定要件の厳格化により、入浴介助に必要な技術の向上を現場に促す狙いがある。
こうした考えを11日の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で提示。大筋で了承を得た。
要件の細部はこれから詰め、介護報酬改定の前までに通知などで示す。関係者は会合後、算定要件について「今はまだ今後練っていく段階」と前置きしつつ、「入浴介助に必要な事業所内外の研修」を対象として想定していると話した。
通所介護の入浴介助加算をめぐっては、厚労省が加算(I)の要件の厳格化を10月の審議会で提案していた経緯がある。ただ現場の関係者から、「研修の追加で職員の負担が更に重くなってしまう」といった反対意見も噴出し、施策の行方に注目が集まっていた。
今回の会合では、全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与が、「新たに研修を求めるなら、その取り組みの評価として加算単価の見直しもお願いしたい」と要請。民間介護事業推進委員会の稲葉雅之代表委員は、「研修の内容や考え方について、自治体ごとにばらつきが生じないようにしてほしい」と求めた。
◆ 加算IIは要件緩和へ
一方、厚労省は上位区分の加算(II)の算定要件を緩和する。浴室環境などを把握するために利用者宅を訪問する職種の中に、一定の条件のもとで介護職員も含める。
入浴の自宅での自立を目指す加算(II)を算定しやすくする狙い。こちらも10月の審議会で緩和を提案しており、今回の会合で改めて実施の意思を明らかにした形だ。(介護ニュース)