介護

特養の3割が人材紹介会社を利用 手数料は1人あたり平均60万円

福祉医療機構(WAM)が11日に新たな調査レポートを公表しました。特別養護老人ホームの現状を報告するものです。

それによると、昨年度に人材紹介会社を経由して介護職員を雇った施設は29.2%でした。1人にかかった紹介手数料は全国平均で59.7万円です。この金額は、ユニット型特養の職員1人あたり人件費の14.9%に相当します。
 
この調査は今年10に行われたものです。WAMが融資している特養3568施設が対象で、32.5%の1160施設から有効な回答を得ています。 
昨年度に人材紹介会社を通じて雇用した常勤の介護職員の人数をみると、最も多いのは「2人未満」の37.5%。次いで「2人以上3人未満」の18.9%が多く、この2つで全体の56.4%を占めていました。平均は3.3人です。「10人以上」と答えた施設も6.4%ありました。

人材紹介会社への1人あたりの紹介手数料では、「60万円以上80万円未満」が32.4%で最多でした。それに「40万円以上60万円未満(21.8%)」、「80万円以上100万円未満(16.3%)」が続きます。料金の相場には地域差がみられ、都市部(*)では平均62.4万円、地方では平均55.7万円となっています。
 
* ここでいう「都市部」は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県、福岡県を指す。「地方」はそれ以外の道県。

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

【介護・保育】人材定着ブログ12月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑤」

【介護・保育】人材定着ブログ11月号~介護・保育 「福祉事業に必要なキャリアパスとは④」の続きです。

8、福祉業界における人事評価制度とは

 筆者は社会保険労務士として、福祉事業所における人事労務関係業務の支援を専門に、全国多数の事業所支援をさせて頂いております。特に介護業界からは、最近の支援内容を見ると、処遇改善加算取得にキャリアパス要件が規定されたことから、人事評価に関する相談が増えており、評価に関する制度面、運用面に課題を抱えている事業所が、非常に多いことを実感しております。尚、世間では「人事評価」という表現と「人事考課」という表現の双方がよく使われますが、ここでは、より広い概念を表す「人事評価」という表現を使わせていただきます。

それでは、ご参考までに人事評価に関する相談内容の一例を下記に紹介いたします。

【経営者・管理者の方から】

  • 外部コンサルタントにお願いし、人事評価は作ったけれど・・・一般企業と同じ評価内容になっているので、介護の職場にはなんとなくしっくりこない。
  • 人事評価自体に信頼感がない。
  • 評価者自身の評価スキルが未熟。
  • 評価結果を面談でフィードバックしても、被評価者の納得感が得られない。
  • 人事評価が「給与を決める為の手段」という認識で評価のための評価になっている。社員のヤル気やモチベーションを促進するものにはなっていない。
  • マイナス評価に該当する職員が本当はいた筈なのに、ほとんどマイナス評価は出ず、プラス評価の職員と現状維持職員ばかりになり、「横一線」から抜け出せない、等。

 

一方で、下記は職員側から見て現行実施している人事評価に対し、どのように思っているかをヒアリングしたものです。(社会福祉法人の職員に実施)

【職員からの意見】

  • 頑張っても怠けていても同じ評価はおかしいのではないか。
  • 自分の仕事が公平・公正に評価され、給与に反映されていないのではないか。
  • 評価の中身をおしえてほしい。
  • いくら頑張っても認めてもらえないのでは。
  • 人を育成する仕組みになっていない
  • 評価のための評価になっていて意味がない、時間の無駄。
  • 評価者がだれかによって結果が大きく異なる、等。

 

ところで、人事評価制度を導入する目的とは、いったい何でしょうか?
経営者からは、「処遇(給与)を決める為の物差し」、「処遇改善加算のキャリアパス要件を満たすため」、または、「達成感と働きがいのある職場を作る為」などの御意見をよく伺います。もちろん、それらは大切な要素ではありますが、その先にある最終的な目的は何でしょうか。それは「人材の確保と育成」にあると筆者は考えます。福祉の業界においては、人材の「質」と「量」で、事業運営の全てが決まってしまう、といっても過言ではないほど重要な課題です。また、採用についても、キャリアパス制度が整備された法人で、きちっと仕事が評価され、それが給与に反映されている、という状況を作り出すことで、それが法人の信頼性につながり、採用活動にも大きな波及効果があるといわれています。

法人幹部の方々には、まず、人事評価制度導入の目的を法人内で共有していただきたいと思います。なぜなら、それにより評価内容、方法、ツールのあり方など、評価制度の中身が大きく変わってくるからです。例えば「職員の優秀層の選抜」を目的に行う人事評価制度と、「人材育成」を目的に行う人事評価では、その評価内容や評価基準は大きく変わってくるはずです。経営陣、管理者層の方々は、今一度、この視点で現状の評価制度を振り返っていただき、本当の意味で人材育成型の評価制度になっているか否かを確認頂きたいと思います。

一方で、職員の目線から見てみると、自分の仕事に良し悪しの判定基準が存在するのであれば、具体的に提示してほしいと思うでしょう。少なくとも行っている職務は正しく認めてほしいし、仮にそれが「未達」と判断される場合においても、客観的な根拠に基づく指摘を受けたいものです。さらに、今後どのような仕事の仕方や、技術、知識を身につければ良いのかを知り、習得の機会(研修)を得てそれが出来るようになりたい。そして職務能力が向上し、期待される役割が上がっていくに伴い、処遇も上がっていってほしい。こうした職員の思いに応え、モチベーションを形成する制度が、人事評価制度なのです。

 

次回以降で、人事制度を整備することのメリットや人事評価の作り方についてお伝えいたします。

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人 

介護事業所様向け情報(経営)12月号③

福祉施設でみられる人事労務Q&A
『育児休業中に出勤した場合の育児休業給付金の取扱い』

Q:

シフトに入っていた職員から「急用ができたので休みたい」と突然連絡がありました。他の職員も手配できず困っていたところ、育児休業中の職員が、子どもを実家に預けて出勤できることがわかりました。現在育児休業中ですが、この職員に出勤してもらうことは可能でしょうか。また、その場合、育児休業給付金の取扱いはどうなるのでしょうか?

A:

育児休業中であっても、労使の話し合いにより、子どもの養育をする必要がない期間に、一時的・臨時的に働かせることは可能です。また、それが1 ヶ月に10日(10 日を超える場合は就業時間が80 時間)以下であれば、引き続き育児休業給付金が支給されます。

詳細解説:

1.育児休業中に働かせることができるか

育児休業とは、子どもの養育をするために一定の期間休業する制度であるため、あらかじめ決められた日に働いたり、毎週特定の曜日や時間に働くといった、恒常的・定期的な労働を行うと、育児休業をしていない、もしく復職したとみなされてしまう可能性があります。
しかし、災害等で出勤できない職員が発生したり、突発的に発生した事態に対応するため、育児休業をしている職員が臨時の業務を行う場合など、一時的・臨時的であって、その後も育児休業が途切れないということが明らかであれば、労使の話し合いにより、子どもの養育をする必要がないときに働かせることは可能です。

2.育児休業給付金の取扱い

雇用保険の被保険者である職員が育児休業を取得する場合、一定の要件に該当すると、育児休業給付金が支給されます。育児休業給付金は、育児休業を開始した日から起算した1 ヶ月ごとの期間(以下「支給単位期間」という)ごとに支給申請しますが、このとき働いた日数や時間数が、支給単位期間中に10 日以下、10 日を超える場合でも就業時間が80 時間以下であれば、調整されずに支給されます。ただし、支給単位期間に支払われた賃金額によっては、減額されたり、不支給となる場合があります。

育児休業中の職員は、子育てに対する考え方や家族のサポート状況など、個人によって大きく事情が異なります。今回のように、急な出勤要請に応じてくれると、事業所としては助かりますが、それが恒常的・定期的になると、そもそも育児休業中ということにならず、育児休業給付金が不支給になったり、支給終了となってしまう可能性があります。育児休業中の職員を働かせる際には、一時的・臨時的な業務に限定し、労働日数や時間数にも留意するようにしましょう。

(来月に続く)

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

介護事業所様向け情報(経営)12月号②

福祉関連業種における年末賞与の支給状況

ここでは年末賞与支給の参考資料として、厚生労働省の調査結果※から直近5 年間(2014~2018年)における、福祉関連業種の年末賞与支給労働者1 人平均支給額(以下、1 人平均支給額)などを事業所規模別にご紹介します。

児童福祉事業の30~99 人のみ増加に

上記調査結果から、業種別に1 人平均支給額などをまとめると、下表のとおりです。2018 年の1 人平均支給額をみると、児童福祉事業の30~99 人だけが、2017 年より増加しました。きまって支給する給与に対する支給割合では、老人福祉・介護事業の5~29 人が1 ヶ月未満の状態が続いています。支給労働者数割合と支給事業所数割合は、児童福祉事業と障害者福祉事業の30~99 人で100%の状態が続いています。

今年の年末賞与は、どうなるでしょうか。

※厚生労働省「毎月勤労統計調査」
日本標準産業分類に基づく16 大産業に属する、常用労働者5 人以上の約190 万事業所から抽出した約33,000 事業所を対象にした調査です。今回のデータは2019 年10 月に発表された再集計後のものです。きまって支給する給与に対する支給割合とは、賞与を支給した事業所ごとに算出した「きまって支給する給与」に対する「賞与」の割合(支給月数)の1 事業所当たりの平均です。支給労働者数割合は、常用労働者総数に対する賞与を支給した事業所の全常用労働者数(当該事業所で賞与の支給を受けていない労働者も含む)の割合です。支給事業所数割合とは、事業所総数に対する賞与を支給した事業所数の割合です。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450071&tstat=000001011791&cycle=7&tclass1=000001015912&tclass2=000001041575

(次号に続く)

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ヒューマンスキルコンサルティング
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介護事業所様向け情報(経営)12月号①

令和2 年度税制改正要望 ~福祉編

令和2 年度の税制改正大綱は、例年通りに進めば年末頃に発表される見通しです。どのような内容になるのかを占うべく、8 月末に厚生労働省が提出した税制改正要望※より、福祉に関連する主要な項目をご紹介します。

障害者雇用に係る割増償却制度の延長

障害者を多数雇用する事業所は、取得した機械、設備等について、普通償却限度額の24%を上限とする割増償却制度が適用できます。今回の要望では、障害者の雇用の機会の拡大と維持の観点から、この割増償却制度の適用期限を2 年延長することが盛り込まれました。

認可外保育利用料の消費税措置の拡充

認可保育施設の利用料に消費税はかかりません(非課税)。これは、認可外保育施設のうち指導監督基準を満たしている1 日に保育する乳幼児の数が6 人以上の施設についても、同様です(下表)。

今回、幼児教育・保育の無償化を機に、1 日に保育する乳幼児の数が5 人以下の認可外の家庭的保育事業、及び認可外の居宅訪問型保育事業も、都道府県等の指導監督の対象となる新たな指導基準が創設されました。これに伴い、この“1 日に保育する乳幼児の数が5 人以下の認可外保育施設”の利用料についても、非課税とする要望が出されました。

介護保険制度の改正に伴う措置

厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会等で、介護保険制度の見直しが検討されています。その検討結果を踏まえ、必要な税制上の措置を講じる要望が出されました。

国民健康保険税の見直し

国民健康保険税の基礎課税額、後期高齢者支援金等課税額及び介護納付金課税額の限度額の見直しが要望として盛り込まれています。また、低所得者に対する国民健康保険税の軽減措置についても、その対象となる世帯の軽減判定所得について、経済動向等を踏まえ、必要な見直しを行う要望が出されました。

(※)厚生労働省「令和2 年度厚生労働省税制改正要望について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000175981_00005.html

(次号に続く)

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ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

 

介護事業所様向け情報(労務)12月号④

障害者雇用納付金制度の対象事業主を判断する際の労働者数のカウント方法

障害者雇用の重要性が増しています。現在、障害者雇用納付金制度では、常時雇用労働者数(以下、「労働者数」という)が101人以上の事業主が対象になっており、納付金の申告が求められていますが、月ごとに労働者数が101人を前後して変動するような場合、障害者雇用納付金の納付対象となるのか判断に迷います。そこで、労働者数のカウント方法と労働者数が変動するケースの取扱いを確認しておきます。

1.労働者の定義

対象となる常時雇用労働者とは、以下の①~③のいずれかに該当する人になります。

  1. 雇用期間の定めがなく雇用している労働者
  2. 一定の雇用期間を定めて雇用している労働者であって、その雇用期間が反復更新され雇入れのときから1年を超えて引き続き雇用すると見込まれる労働者
  3. 過去1年を超える期間について引き続き雇用している労働者

2.算定基礎日の設定

申告するときには、各月の労働者数を把握する必要がありますが、その把握する日を算定基礎日といい、各月の算定基礎日に雇用(在職)していた労働者数および雇用障害者数が、各月のそれぞれの数となります。算定基礎日は、原則として各月の初日ですが、賃金締切日とすることも可能です。例えば、算定基礎日が1日の場合、4月1日に採用した人は4月の労働者数に含みますが、4月2日に採用した人は4月の労働者数に含みません(図参照)。

そして、1.の①~③のいずれかに該当し、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満である労働者は、0.5人としてカウントします。

3.労働者数が変動する場合の考え方

月ごとに労働者数が101人を前後して変動するような場合は、労働者数が101人以上の月が一年度(4月から翌年3月)に5ヶ月以上(※)あれば、障害者雇用納付金の申告義務が発生します。
※年度途中の事業廃止等の場合、5ヶ月以上でなくても、申告が必要となることがあります。

2018年4月に法定雇用率(民間企業)が2.2%に引上げられ、2021年4月までには2.3%に引上げられることが決まっています。また、2020年4月より改正障害者雇用促進法が施行され、短時間労働者のうち週の所定労働時間が一定の範囲内にある人(特定短時間労働者)を雇用する事業主に対して、障害者雇用納付金制度に基づく特例給付金を支給する仕組みが創設されることになっています。これらの動きもあることから、企業規模に関わらず障害者雇用を進めていきたいものです。

(来月に続く)

社会保険労務法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

介護事業所様向け情報(労務)12月号③

来年より充実するハローワークの求人サービス

公共職業安定所(ハローワーク)は、求職者と求人募集をする企業を結びつけることを役割のひとつとして担う公的な機関です。これまで求人募集をする企業は、求人票に求人内容を記載し、ハローワークに届け出ていましたが、来年(2020年1月6日)からは、この求人に係る手続きの利便性が向上し、また、求人票に掲載できる情報量が増えることになりました。

1.「求人者マイページ」の新設

現在、求職者が求人情報を検索したり、事業主がハローワークの提供するサービス内容を確認したりするためのホームページ「ハローワークインターネットサービス」が運営されています。

来年からこのホームページ上に企業ごとの「求人者マイページ」を開設することができるようになり、会社等のパソコンから次のサービスを利用することができるようになります。

  • 求人申込み
  • 申込んだ求人内容の変更、求人の募集停止、事業所情報の変更など
  • 事業所の外観、職場風景、取扱商品等の画像情報の登録・公開
  • ハローワークから紹介された求職者(応募者)の紹介状の確認、選考結果(採用・不採用)の登録(ハローワークへの連絡)
  • メッセージ機能(ハローワークから紹介された求職者(応募者)とのやりとり)
  • 求職情報検索

求人者マイページを開設するには、ログインアカウントとして使用するメールアドレスが必要となり、最初に利用するときはハローワークの窓口での手続きが必要になります。

2.求人情報の提供内容の変更

来年から求人票の様式が変わり、掲載する内容が見直されることによって、求人票に掲載する情報量が増え、求職者に対してより詳細な求人情報を提供できるようになります。

例えば、「就業場所における屋内の受動喫煙対策」、「時間外労働-36協定における特別条項の有無、特別な事情・期間等」、「昇給制度の有無」等について、すべての企業・求人について登録が必要になり、求人票に記載されます。

また、これまで一部に限定されて公開されていたハローワークインターネットサービスでの求人情報について、ハローワーク内のパソコン(検索・登録用端末)と同じ情報が公開されるようになり、求職者がハローワークに出向かなくても、詳細な求人情報を、インターネットを通じて確認できるようになります。

これまでハローワークでは、紙で提出された求人票を入力することなどにより処理が進められていましたが、求人者マイページを利用することで、入力作業が減少し、速やかに求人情報が公開となることが期待できそうです。なお、求人者マイページから申込まれた求人はハローワークが、申込み内容を確認した後に受理・公開されることになっています。

(次号に続く)

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

介護事業所様向け情報(労務)12月号②

任意継続被保険者の保険証の発行が早くなります

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とそ顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:今月末に退職する従業員から、健康保険(協会けんぽ)の任意継続制度(以下、「任意継続」という)を利用したいという申出がありました。任意継続を利用すると退職前と同様に、保険料を会社が負担することになるのでしょうか。

社労士 :健康保険の任意継続とは、会社に勤務していたときに加入していた健康保険に、資格喪失後も引き続き加入する制度のことです。資格喪失後、最長2年間加入できますが、健康保険料は会社負担分も含め、従業員本人が負担することになり、会社に負担がかかることはありません。

総務部長:承知しました。ちなみに手続きは会社がするのでしょうか。

社労士 :会社が従業員に代わって手続きをすることもありますが、任意継続は要件を満たした従業員が任意に加入する制度であり、資格取得申出書に会社が証明する欄もなく、従業員自身で手続きを行うものです。原則として資格喪失日から20日以内に申出書を提出する必要があり、資格喪失日以降に提出しなければなりません。

総務部長:期限を厳守した提出が求められるのですね。

社労士 :そうです。任意継続では、新しい保険証が発行されますが、発行は原則として資格喪失後に会社が資格喪失届を提出し、処理がされた後となっています。

総務部長:なるほど、一旦、これまで使っていた保険証を退職時に回収して早めに手続きする必要がありますね。

社労士 :はい。ただし、資格喪失の手続きに時間がかかるケースもあることから、協会けんぽでは2019年10月より、任意継続の資格取得申出時に退職日の確認ができる書類を添付することで、会社からの資格喪失の手続きを待たずに、任意継続の保険証の作成ができるようになりました。

総務部長:これは便利ですね。

社労士 :添付書類には退職証明書の写しや雇用保険の離職票の写し等が挙げられています。もし、これらに基づいて判断できる資格喪失日と、会社の資格喪失の手続きによる資格喪失日に相違があった場合、任意継続の資格取得日等が変更となるため、保険証の差替えが必要となります。

総務部長:任意継続の手続きは従業員が行うものとのことでしたが、退職者にはこれらのアドバイスはしたほうがよさそうですね。ありがとうございました。

【ワンポイントアドバイス】
1. 任意継続の手続きは資格喪失日以降20日以内に行う必要がある。
2. 申出書に必要書類を添付することで任意継続の保険証発行手続きが早くなる。
3. 任意継続を希望する従業員には仕組みや手続きの方法を伝えておくことが望ましい。

(次号に続く)

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介護事業所様向け情報(労務)12月号①

確認しておきたい研修・教育訓練時の労働時間の取扱い

2019年4月より働き方改革関連法の一つとして、改正労働基準法が施行され、大企業に時間外労働の上限規制が適用となりました。いよいよ2020年4月には中小企業にも適用となります。ますます厳格な労働時間管理が求められる中、労働時間の考え方を理解しておくことの重要性が増しています。先日、厚生労働省よりリーフレット「労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い」が発行されたことから、今回はこの内容をみておきます。

1.労働時間とは

そもそも労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、労働時間に該当します。

2.研修・教育訓練の取扱い

研修・教育訓練については、業務上義務づけられていない自由参加のものであれば、その研修・教育訓練の時間は、労働時間には該当しないとされています。なお、研修・教育訓練への不参加について、就業規則で減給処分の対象とされていたり、不参加によって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されているような場合には、労働時間に該当します。
以下では、実際に労働基準監督署に問い合わせのあった事例の中から、労働時間に該当しない例、該当する例を挙げます。

[労働時間に該当しない例]

  1. 終業後の夜間に行うため、弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない勉強会。
  2. 労働者が、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、自ら申し出て、一人でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練。
  3. 会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務とは関連性がない。

[労働時間に該当する例]

  1. 使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修。
  2. 自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学。

労働時間に該当しないとする場合には、上司がその「研修・教育訓練」を行うよう指示しておらず、かつ、その「研修・教育訓練」を開始する時点において本来業務や本来業務に不可欠な準備・後処理は終了しており、労働者はそれらの業務から離れてよい状況にあることを確認しておきましょう。

出社時に交通混雑の回避等のために、労働者が自発的に始業時刻よりも前に会社に到着しているようなケースがあります。この始業時刻までの間、業務に従事しておらず、業務の指示を受けていないような場合は、労働時間に該当しません。この機会に、適正な取扱いができているか確認しましょう。

(次号に続く)

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ヒューマンスキルコンサルティング
林正人 

介護事業所様向け情報(経営❷)11月号

ケアマネ事業所における「管理者要件厳格化」の決定内容、及び議論の流れを確認しておきましょう。

「居宅介護支援事業所の管理者要件の見直し」実効期限が明らかに

2019年 12 月上旬~中旬頃に 上梓される 「 介護保険制度の見直しに関する意見 」 の最終とりまとめに向け 、一気に 議論が加速し た感を覚えた 2019 年 11 月。 そんな中、 前回の法改正時に「 人材確保の状況について検証するべき 」という名目で積み残された課題「居宅介護支援事業所の管理者要件の見直し(=居宅介護支援事業所における人材育成の取組を推進するため、主任 介護支援専門員 であることを管理者の要件とする)」について、当初予定されていた実効開始タイミング(当初の予定では 2021 年 4 月~) の 延長 案 が 示されました(恐らく 年内中に 正式決定 となる見通し 。本ニュースレターではその 案の中身について あらためて確認すると共に、その理由・背景についても解説してまいります。

「居宅介護支援事業所の管理者要件厳格化のタイムリミット」決定内容とその理由・背景とは

では、早速、案の 中身 を確認してまいりましょう。 2019 年 11 月 15 日開催 に開催刺された「 第 172 回介護給付費分科会 」の中では 同テーマについて、 以下のような整理が為されておりました。

【居宅介護支援の管理者要件に係る経過措置に 関する対応 案 】

  • 令和元年度の「居宅介護支援及び介護予防支援における平成 30 年度介護報酬改定の影響に関する調査「管理者要件に関する調査」」の結果を踏まえ、 令和3年 2021 年) 3月 31 日時点で主任ケアマネジャーでない者が管理者の事業所は、当該管理者が管理者である限り 、管理者が主任ケアマネジャーとする要件の適用を令和9年 2027 年) 3月 31 日まで猶予することとしてはどうか 。結果として、令和3年4月1日以降に新たに管理者となる者は、いずれの事業所であっても主任ケアマネジャーであることが求められることとなる。
  • ただし、特別地域居宅介護支援加算又は中山間地域等における小規模事業所加算を取得している事業所については、管理者を主任ケアマネジャーとしない 取扱いも可能としてはどうか。
  • また、令和3年(=2021 年)4月1日以降、 不測の事態により、主任ケアマネジャーを管理者とできなくなってしまった事業所については、当該事業所がその理由と「改善計画書」(仮称)を保険者に届出た場合は、管理者が主任ケアマネジャーとする要件の適用を1年間猶予する こととしてはどうか。

「令和3年(= 2021 年)3月 31 日時点で主任ケアマネジャーでない者が管理者 を担っている 事業所 に限る」という条件 は 付 いているものの 、 これは即ち、現時点において居宅介護支援事業所を運営している事業者全員が当てはまる訳ですから、単純に「 当初の設定(=令和 3 年(= 2021 年) 3 月 31 日まで) が 6 年間、後ろ倒し されることになる 」と理解して差し支えない ものと思われます 。
加えて、その背景・理由についても見ておきたいと思います。大きくは2 点のポイントに絞られるのではないでしょうか。

【延長理由その1 】

そもそも、主任介護支援専門員研修の資格取得要件を満たすことが難しいケアマネ事業所が相当数存在しているため。

平成30 年度に行われた「 居宅介護支援及び介護予防支援における平成 30 年度介護報酬改定の影響に関する調査研究事業 」によると、 令和元年 7 月末日現時点において 主任介護支援専門員ではない管理者 のうち、 「経歴4年未満」の管理者は 10.1% 、加えて「経歴1年未満」の管理者も 1.6% 存在することが分かっています( 下表参照 )。

※第 172 回介護給付費分科会 資料より抜粋

そもそも主任介護支援専門員の資格取得要件の1つとして「専任の介護支援専門員として従事した期間が通算して 5 年( 60 ヶ月)以上 」が 定め られている以上、 その要件を満たすことが「 物理的に不可能」な 事業所が存在する中で管理者要件の厳格化を行 われるとするならば、それは確かに 「横暴」「非現実的」 な判断だ、 と言う批判が起こるのも尤もな話 です 無理矢理 でも ケアマネ事業所数を淘汰させたい、という のなら話は別かもしれませんが) 。また、 前述の状況を勘案したか らこそ「 6 年の延長(=ケアマネ実務経験5 年+研修受講のための 1 年 」という判断 に は 納得感を覚える次第です 。
他方、 主任介護支援専門員研修 の資格取得要件 を 満たしているにも関わらず、 「経過措置期間中に修了できる見込みがない」 という方の 割合 が 13.4% も存在している、というデータも前述の調査事業報告書には掲げられています (下表 。「見込みがない」理由が本人の意欲というのであれば 考慮 の余地はありませんが、 仮に 業務過多等が その 理由 として 挙げられるのであれば、その点も同時に改善 を進める必要があるのではないでしょうか 。

続いて、2 つ目の理由を見てまいりましょう。

【延長理由その2 】

主任介護支援専門員研修について、資格 取得のための 研修受講費 、及び更新のための研修受講費 のバラつきが都道府県で大きいため 。

2017年度の実績をみると、主任ケアマネ研修で最も高かったのは広島県の 6 万 2000 円。次は大阪府と和歌山県で 6 万円、岐阜県が 5 万 8000 円と続く一方、逆に安い順でみると、秋田県が 2 万 996 円、福島県が 2 万 3000 円、島根県が 2 万 4320 円 、という状況にあります(厚生労働省老健局振興課調べ)。同時に、主任ケアマネの更新研修受講費のバラつきも問題となっており、 最高は愛知県の 5 万 2000 円で、 続いて 山口県の 5 万円、青森県、埼玉県、愛媛県の 4 万 6000 円 。一方、 最安は栃木県の 1 万円 、続いて 岩手県の 1 万 5900 円、 3 位は福島県の 2 万円 、となっています 。地域医療介護総合確保基金の活用の有無等が背景にあると思われますが、いずれにせよ、上記状況の中で「管理者を主任ケアマネに限る」と厳格化 を実効させる のは不適切、と言わざるを得ないの ではないでしょうか。

早め早めの時間調整・スケジューリングを

以上、介護給付費分科会資料より抜粋しながら「ケアマネ事業所の管理者要件の厳格化」の状況について確認してまいりました。猶予期間が延びた、ということでホッと胸を撫で下ろしている方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、とはいえ、日常業務に奔走しているとあっという間に時間が過ぎ去ってしまい、「気が付けば研修申込期限が過ぎてしまった(或いは定員に達してしまった)」などと言うケースが発生することも十分に考えられます。該当の皆様としては自身の研修受講要件が満 たされるのはいつなのかを しっかり 確認しつつ、早め早めに 時間調整・ スケジューリングを 行って おくことをお勧めする次第です。
私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。

※上記内容の参照先
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https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07850.html

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人 

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