介護

【介護・保育】人材定着ブログ3月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは㉑」

【介護・保育】人材定着ブログ1月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑳」

の続きです。

 

今回は評価者に是非、知っておいてほしい評価者の心構えと留意点についてお伝えしたいと思います。評価をするにもぜひ知っておかなければならない基本的なルールや、自ら気を付けなくればならない「評価者のクセ(エラー)」などがあります。それらを知識として知ったうえで実際の評価を行うのと、全く知らないで評価を行う場合とでは、結果に大きな差が生じますので、事前に評価者研修などを受講いただいた上で、評価に入っていただきたいと思います。

1、評価者の心構え

 評価スキルを学ぶ前に、大前提として評価者に持っていただきたい「心構え」についてをお伝えいたします。

(1)人事評価の制度内容、仕組を十分に理解していること。

(2)部下の育成が最大の目的であることを理解していること。

  部下の昇給や昇格を念頭に置いた評価をしないこと。

(3)部下と面談(コミュニケーション)の機会を多くもつこと。

  部下に対して期待していることを明示すること。

(4)人物評価でなく、事実に基づいて評価すること。

  部下の行動を観察し、事実を記録すること。

(5)管理者として自らのマネジメント能力を磨くこと。

  部下の能力を的確に把握し、職務(等級)にふさわしい仕事を与え、情報を提供し、

  指示・命令を出し、権限を委譲し、適切な支援を行うこと。

 

 

2、「評価エラー」に関する留意点

 次の項目は評価者がよくやってしまう「評価エラー」と言われるもので、まずはそのパターンをご紹介するととともにその対応策も含めてお伝えいたします。

 (1)「ハロー効果」に注意する(先入観や印象で評価しない)

  ①全体的印象ハロー効果

   部下の人物・行動の全体から受ける印象や、いったん自分の頭の中で作り上げて

   しまった部下の全体評価を先入観として持ってしまい、この全体的印象が強いため、

   無意識の内に、部分部分の特性の評価を歪めてしまうこと。

②部分的印象ハロー効果

   部下の何か一つまたはいくつかの特性に際立って優れた点があり、これに対して

   「優秀である」「高度である」と強い印象を持ってしまうと、他に劣っている特性

があっても、全体として「優秀」「高度」であると歪んだ評価をしてしまう傾向

   (例えば売上成績が良いと販売促進企画も開拓力もクレーム処理もすべて良いと

    判断してしまう場合等)

  ③対応策

   ・考課項目一つ一つの意味を正確に理解し、項目ごとに事実情報・記録を確認しな

    がら評価する

   ・全体的印象や部分的印象にとらわれていないかを絶えず自問自答しつつ、部下を

    分析的に様々な角度から観察し、評価するように努めること。

 (2)「寛大化傾向」に注意する

所謂、評価が相対的に「甘く」なってしまう傾向です。

①このエラーが起こりやすいケース

・日頃一緒に仕事をしている部下に対して、「厳しい評価をして恨まれたくない」

   「次に厳しい仕事の指示がしづらくなる」「評価について、部下から文句をつけ

   られたら煩わしい,説明できない」「部下に良い顔を見せておきたい」などの

   気持ちが働く場合

 ・日頃から公私にわたって親しく付き合っている部下、特に仕事上で頼りにして

  いる部下、自分が理解できない難しそうな仕事をしている部下を評価する場合

 ・部下が昇進・昇格の候補年次に近づいて来た時、上司として「何とかあの人を

  昇進させたい」という思いにとらわれた場合

 ・自分の職場の部下を他の職場の者より「賞与を多くしたい」「早く昇格させたい」

  などの競争意識が働く場合

 ②対応策

 ・部下それぞれに期待されるレベルに相応しい目標・課題を与える

  (職務基準や職能要件等がある場合、期待基準に照らして評価する)

 ・曖昧な印象や思惑を排して、考課項目ごとに、観察・記録した具体的事実に

   基づいて評価する姿勢に徹すること。

 ・人事考課の重要な目的の一つが、部下の問題点を正しく捉え、これを指導・育成

   に結びつけるための情報収集の手段であるという認識を深めること。

 

介護報酬の新加算“LIFE”最新情報

介護報酬の“LIFE加算”、情報提供項目を公表 厚労省 送信は翌月10日まで

新年度の介護報酬改定では、国の新たなデータベース「LIFE」への情報提供などを要件とする加算が新設される。「科学的介護推進体制加算」と名付けたこのインセンティブについて、厚生労働省は既に固まったアウトラインを伝える通知を19日に発出した

 

 

必要な情報提供のメニューを「現状案」として公表。利用者のADL、口腔・栄養、認知症などカテゴリごとの項目を具体的に示した。実際に加算を算定するためには、こうした情報をサービス提供月の翌月10日までにLIFEへ送る必要があると呼びかけている

 

4月から導入される科学的介護推進体制加算は、ミニマムで利用者1人あたり40単位/月。特養や老健、特定施設、グループホーム、通所介護、小規模多機能など多くのサービスが対象だ。LIFEへの情報の蓄積に協力すること、そこからのフィードバックを活かすことなどが要件とされている。

 

政府が以前にも増して重きを置く自立支援・重度化防止の観点から、より効果的なサービスの展開につなげるための仕組み。大規模データベースの構築はエビデンスの確立などに役立てられていく。

 

今回の通知で明かされた情報提供のメニューは概ね、これまで審議会などで説明されてきた概要に沿ったもの。利用者の身長や体重、既往歴、服薬、ADL、口腔・栄養、認知症など項目は多岐にわたる。厚労省は以下の資料に2ページでまとめ、現場の関係者へ広く周知した。

 

 

科学的介護推進に関する評価

 

情報提供の期日はサービス提供月の翌月10日まで。LIFEのサイトでデータを直接入力する方法のほか、請求ソフトからCSV連携で送信する方法もある。請求ソフト側の対応はベンダーによって異なってくる。

 

情報提供に対する事業所へのフィードバックは、その翌月中にLIFEのサイトからPDFで実施される予定。厚労省は「更なる詳細は追って提示する」としている。(情報元:JOINTニュース)

 

介護事業所様向け情報(労務)2月号③

テレワークを導入する際の流れや留意点

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の拡大防止の観点から緊急的にテレワークを導入したのですが、うまく進んでないように感じています。ゼロから考え直したいと思うのですが、どのように進めればよいのでしょうか。

社労士:

御社同様に、テレワークを導入したものの運用で課題が出てとりやめた企業も多いようです。一方で、厚生労働省は感染症対策としてテレワークの実施を推奨しており、その流れとして①実施に向けての検討(業務の切り出し・対象者の選定・費用負担)、②セキュリティのチェック、③ルールの確認(労務管理)、④作業環境のチェックの4つにまとめています。

総務部長:

当社は、社内で行っていた業務が自宅でもできるように、パソコンを自宅に持ち帰り、自宅のインターネット環境に接続することで在宅勤務を進めてきました。確かに、テレワークに適した業務かの確認は行わず、また、インターネット環境も自宅で整っている前提で進めていました。

社労士:

テレワークに適した業務と会社に出社して行った方がよい業務、これに加え、何らかの工夫をすることでテレワークに適した業務に変わる業務があると思います。例えば紙で保存していたものをクラウドに保存したり、Web会議システムを導入すること等、考えるべきポイントがありそうです。

総務部長:

確かにそうですね。全員一律に「週3日はテレワークをすること」と指示を出しましたが、業務内容によってはテレワークが適さない従業員もいます。また、インターネット環境の調査をしませんでしたが、従業員やその家族が契約しているインターネット環境を使うこととしても、ウイルス対策ソフトのアップデート等、セキュリティ面の注意が必要になりますね。

社労士:

そうですね。テレワークでは通常、従業員の働いている状況が見えないため、コミュニケーションの量も質も低下し、また、労働時間の管理もあいまいになりがちです。こちらもクラウドの勤怠管理システムを導入し、自宅でも打刻できるようにするといった工夫が必要になるのでしょう。

総務部長:

ところで、「④作業環境のチェック」ではどのようなことに注意するのでしょうか。

社労士:

自宅の温度や湿度、照明の状況や、机の高さや椅子の座り心地等、多岐にわたります。先ほどのインターネット環境も含め、テレワークを実施することで発生する費用もありますので、これを労使のいずれが、どの程度負担するかということも決めておく必要がありますね。

【ワンポイントアドバイス】
1. テレワークを導入するときには、運用面の検討を行う必要がある。
2. テレワークを実施することにより発生する費用の負担は、事前に取り決めが必要となる。

(次号に続く)

介護事業所様向け情報(労務)2月号②

厚生労働省が公開する新型コロナの拡大防止チェックリスト

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の収束が見えない中、職場等で感染拡大防止策を確実に実践することが求められています。厚生労働省では、以前より「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」(以下、「チェックリスト」という)をホームページで公開していますが、2020年11月には、冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法に係るチェック項目を追加する等の改訂が行われています。以下では、このチェックリストの中から、「換気の悪い密閉空間の改善」と「多くの人が密集する場所の改善」の2点について確認しておきましょう。

1.換気の悪い密閉空間の改善

  • 職場の建物が機械換気(空気調和設備、機械換気設備)の場合、建築物衛生法令の空気環境の基準が満たされている(ただし、温度は18℃以上に維持することが望ましい)。
  • 職場の建物の窓が開く場合、リーフレット「冬場における『換気の悪い密閉空間』を改善するための換気の方法」で推奨する方法により、居室の温度18℃以上かつ相対湿度40%以上を維持しつつ、窓を開けて適切に換気を行っている(HEPAフィルタ付き空気清浄機の適切な活用を含む)。
  • 電車等の公共交通機関の利用に際し、窓開けに協力するよう全員に周知している。

2.多くの人が密集する場所の改善

  • 業態に応じて可能な範囲で出勤を抑制するように努めている。
  • 電車やバス等での他人との密着を防ぐため、時差通勤、自転車通勤、自家用車通勤などの活用を図っている。
  • テレビ会議やWeb会議の活用等により、人が集まる形での会議等をなるべく避けるようにしている。
  • 対面での会議やミーティング等を行う場合は、マスクの着用を原則とし、人と人の間隔をできるだけ2m(最低1m)空け、可能な限り真正を避けるようにしている。
  • 接客業等において、人と人が近距離で対面することが避けられない場所は、労働者にマスクを着用させ、人と人の間にアクリル板、不燃性透明ビニールカーテンなどで遮蔽するようにしている。
  • 職場外(バスの移動等)でもマスクの着用や換気、人との間隔を取る等、三つの密を回避するよう努めることとしている。

このチェックリストは、当初公開されたものから環境の変化等により、内容が更新されています。三密の回避等、当初からの防止策に加え、必要な防止策が加えられていますので、以前確認された場合も含め、最新版を厚生労働省のホームページからダウンロードして確認してみてください。

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)2月号①

在籍型出向による雇用維持支援と産業雇用安定助成金(仮称)

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大は未だ収束の目途も付かず、企業における従業員雇用の維持も厳しい局面を迎えつつあります。そのような中、国は在籍型出向の活用による雇用維持への支援と産業雇用安定助成金(仮称)の創設を予定しており、2020年12月にその概要資料が公表されました。これらは第三次補正予算の成立、厚生労働省令の改正等が必要であり、現時点ではあくまで予定に留まりますが、動きを確認しておきましょう。

1.在籍型出向の活用による雇用維持への支援

在籍型出向の活用としては、出向元と出向先双方の企業を支援する新たな助成制度を創設し、産業雇用安定センターによるマッチング体制を強化する等、新型コロナの影響により一時的に雇用過剰となった企業が従業員の雇用を守るため、人手不足等の企業との間で在籍型出向(雇用シェアリング)により雇用維持する取組みへの支援が行われます。対策のポイントとして、以下の内容が挙げられています。

  1. 全国および都道府県協議会の設置・運営等による雇用シェアリングの情報連携や理解促進
  2. 自治体等が運営するマッチングサイトや労使団体・業界団体等が保有する出向に関する情報と産業雇用安定センターが連携したマッチング支援体制の強化
  3. 在籍型出向を支援するため、出向元・出向先双方に対する助成金の創設による企業へのインセンティブの付与

2.産業雇用安定助成金(仮称)の創設

在籍型出向を支援するため、出向元と出向先双方に対するインセンティブとして、産業雇用安定助成金(仮称)が創設される予定です。助成金の内容は対象労働者に係る以下の2種類の経費について、出向元事業主と出向先事業主とが共同事業主として支給申請を行い、その申請に基づきそれぞれの事業主へ支給されるものです。なお、申請手続きは出向元事業主が行うことになる予定です。

①出向運営経費

出向運営経費は、労働者(雇用保険被保険者)を在籍型出向により送り出す事業主とその労働者を受け入れる事業主に対して、賃金、教育訓練、労務管理に関する調整経費等、出向中に要する経費の一部が助成されるものです(表1参照)。

②出向初期経費

出向初期経費は、労働者(雇用保険被保険者)を在籍型出向により送り出す事業主とその労働者を受け入れる事業主に対して、就業規則や出向契約書の整備費用、出向に際して出向元であらかじめ行う教育訓練、出向先が出向者を受け入れるために用意する機器や備品等、出向に要する初期経費が助成されるものです(表2参照)。

正式な決定はまもなく行われる予定ですので、必要に応じ今回とり上げたような出向での雇用維持や出向での人材確保をご検討ください。

※2021年1月12日時点の情報です。

(次号に続く)

介護の情報公表制度、4月から掲載内容増 厚労省 全サービスが対象

厚生労働省は今年4月の介護報酬改定を機に、施設・事業所が「介護サービス情報公表システム」へ掲載すべき情報の幅を広げる。

職員が研修を受講しているかどうかなど、認知症の高齢者を支える技術を高める取り組みについて新たに公表を求めていく。

今年度内に通知を改正し、来年度からのルール化に踏み切る。施設・事業所を選ぶ利用者の利便性を改善すること、認知症ケアの質の向上につなげることが狙いだ。

そもそも情報公表制度の埒外にある居宅療養管理指導を除き、全てのサービスがこの見直しの対象となる。今回の改定に向けた検討を重ねてきた審議会で方針が決められた。

厚労省は現在、通知改正に向けた事務的な準備を進めている。

例えば、認知症介護指導者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護実践者研修を受けた職員の人数、その他の研修の実施状況などを掲載してもらう考え。「全ての事業者で、行動・心理症状(BPSD)も含め対応力の向上が求められている。各事業所の取り組みを利用者が確認できるようにする」などと説明している。

(介護ニュースサイト掲載記事より)

 

次期法改正で義務付けられる感染対策・災害対策ついて確認しておきましょう

介護保険法改正・報酬改定の全貌が明らかに

昨年の春から始まり、コロナ禍の中でもなんとか継続されてきた介護給付費分科会。20回以上に亘る議論が重ねられ、2021118日(月)にようやく全ての内容が固まってまいりました。大別すると「介護保険法・省令等の変更」と「介護報酬の改定」の2種類に分かれる本情報ですが、報酬改定についてはサービス種類が多岐に亘る中、あまりにも幅広な内容になってしまうため、本ニュースレターで採り上げるのは不適当である、というは判断のもと、本日は多く(内容によっては全て)の事業者にとって関係してくるであろうテーマ「感染症対策」「災害対策」について内容を4点ほど抜粋し、コメントや解説を加えてまいります(報酬改定内容については是非、皆様各自で追いかけていただければと思います。もしご質問等ございましたらいつでも気軽にご度相談下さい)。

「日頃からの備えと業務継続に向けた取り組みの推進」について(抜粋)

では、早速、中身を確認してまいりましょう。

まず1点目は、全てのサービスに関わる「感染症対策の強化」についてです(以下)。

感染症対策の強化【全サービス】

■ 介護サービス事業者に、感染症の発生及びまん延等に関する取組の徹底を求める観点から、以下の取組を義務づける。【省令改正】

・施設系サービスについて、現行の委員会の開催、指針の整備、研修の実施等に加え、訓練(シミュレーション)の実施

・その他のサービスについて、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等

(※3年の経過措置期間を設ける)

施設系サービスにおいては従来より設置が必須となっていた対策委員会ですが、こちらがサービスを問わず、全ての介護事業者にとって「義務」となりました(厚生労働省が敢えて「義務」という言葉を選択していることにも留意が必要です)。3年の猶予期間はあるものの、8期(20214月~20243月)中に本内容を実践しなければ「運営義務違反」に問われることになってしまいます。こちらについては早めに体制整備含め、然るべき準備をされることが求められてくるでしょう。

次に2点目、こちらも全サービスを対象とした内容「業務継続に向けた取組の強化」についてです(以下)。

業務継続に向けた取組の強化【全サービス】

■ 感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける。【省令改正】

(※3年の経過措置期間を設ける)

こちらも上記感染症対策と同様、「業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等」の内容が全ての事業者に「義務」付けられることになります。

「業務継続に向けた計画」とは、一般的にBCPBusiness Continuity Plan)と呼ばれるものです。甚だ私見ではありますが、大企業は別にして、全ての産業・業界を含め、中小企業でBCPを策定されている企業などは一般的に極めて少ない(と、言いますか、殆ど聞いたことがない)のではないかと思われます。そのような状況の中、規模の大小を問わず、全ての介護事業者にBCPの設置が「義務」付けられた、ということは、換言すれば、介護事業はそれだけ社会的な使命を背負っている、ということと同義であり、災害時においても特に、業務継続を担保しなければならない事業である、という位置づけがあらためて社会の中で明確になった、と理解すべきではないでしょうか(実際、コロナ禍の中で利用を控えられた高齢者のADLが一気に低下してしまったり、認知症状の進行が加速されたり、という事態に直面された方も相当数いらっしゃったのではないかと思います)。その意味では前述の感染対策同様、この「義務」という言葉に潜む意図をしっかり読み取り、BCPについては単に「形式上揃えました」という「借り物レベル」で終わらせるべきでないことは自明です(釈迦に説法であれば恐縮です)。また、上記で厚生労働省が提示している「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」も大いに参考にすべきかとは思いますが、災害対策の対象は「感染症」だけではなく、自然災害や火災等も対象に入ってきます。是非、専門家にも相談しながら、実効性が高く、職員の皆様の安心感につながるようなBCPの策定、並びに運用を行っていただきたいと思います(人材の確保・定着にも少なからず影響を及ぼすものと思われますので)。

次に3点目、「通所系サービス」「短期入所系サービス」「特定、施設系サービス」を対象とした「災害への地域と連携した対応の強化について」を確認してまいりましょう。

災害への地域と連携した対応の強化【通所系サービス、短期入所系サービス、特定、施設系サービス】

■ 災害への対応においては、地域との連携が不可欠であることを踏まえ、非常災害対策(計画策定、関係機関との連携体制の確保、避難等訓練の実施等)が求められる介護サービス事業者(通所系、短期入所系、特定、施設系)を対象に、小多機等の例を参考に、訓練の実施に当たって、地域住民の参加が得られるよう連携に努めなければならないこととする。【省令改正】

地域密着サービスなどではそもそも、地域の方々と協働する形での「運営推進会議」の設置が必須となっていること等含め、上記「地域と連携した対応の強化」は比較的実践しやすいのかな、とも思われますが、今まで地域との接点を有してこなかったサービス施設・事業所については実践するにあたり、頭を悩ませる内容かもしれません。そのような施設・事業所様は逆にこの機会をチャンスと捉え、ここより積極的に地域と関わっていく契機としていくことが求められるものと思われます。

最後に、通所介護等の事業所規模別の報酬等に関する対応を確認させていただきます(こちらは下記をお読みいただければ十分だと思われますので、コメント・解説等は割愛させていただきます。いずれかに該当する可能性が高い事業者様は速やかに確認の上、申請を行う段取りを問止めることをおススメする次第です)。

通所介護、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護

○ 通所介護等の報酬について、感染症や災害の影響により利用者数が減少した場合に、状況に即した安定的なサービス提供を可能とする観点から、以下の見直しを行う。

ア より小さい規模区分がある大規模型について、事業所規模別の報酬区分の決定にあたり、前年度の平均延べ利用

者数ではなく、延べ利用者数の減が生じた月の実績を基礎とすることができることとする。【通知改正】

イ 延べ利用者数の減が生じた月の実績が前年度の平均延べ利用者数から5%以上減少している場合、3か月間(※

2)、基本報酬の3%の加算を行う(※3)。【告示改正】

現下の新型コロナウイルス感染症の影響による前年度の平均延べ利用者数等から5%以上の利用者減に対する

適用にあたっては、年度当初から即時的に対応を行う。

※1 ア・イともに、利用者減の翌月に届出、翌々月から適用。利用者数の実績が前年度平均等に戻った場合はその翌月に届出、翌々月まで。

※2 利用者減に対応するための経営改善に時間を要するその他の特別の事情があると認められる場合は一回の延長を認める。

※3 加算分は区分支給限度基準額の算定に含めない。

 

実行に備え、更なる業務効率化の推進を

以上、簡易ながら、今回は各サービス毎の個別の改定内容ではなく、多くのサービスに共通する内容からピックアップし、概要やポイントについてお伝えさせていただきました。上記内容を踏まえる中、「昨今、声高に叫ばれている“業務効率化”と逆行するような改正内容ではないか?」との意見も多く、実際にそのような側面も確かに否めないものと思われます。他方、社会保険を活用する形で事業を行っている介護事業として、その社会的使命から逆算的に考えれば上記内容は何らおかしな話ではなく、むしろ「今まで無かったことの方がおかしい」、という意見も一定程度存在しています。事業者としてはそのような社会的要請を踏まえ、自社の事業継続の可能性向上は勿論、法人によっては災害時における地域のセーフティネットとしても機能することを踏まえ、災害対策について、あらためて価値高い仕組みを法人の中に落とし込んでいく必要があるでしょう(と同時に、職員の業務負荷を軽減させる意味においても、その他業務の効率化にも今まで以上に注力していく必要性もあることも付言させていただきます)。

私たちも今後、上記に関する有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。

※本ニュースレターの引用元資料はこちら

199回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16033.html

【介護・保育】人材定着ブログ2月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑳」

【介護・保育】人材定着ブログ1月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑲」

の続きです。

評価者への教育・指導における3つのポイント

 

1、評価の目的を理解しているか

冒頭でも述べたとおり、管理者の日常は概ね多忙な状況です。そんな状況において、評価が「やらされている」感でやっているだけで、単なる作業になってしまっていては、決して良い評価にはならないはずです。

そうならない為にも、「何のために評価を行っているのか」という意識を明確にもちながら行っていくことはとても重要なことです。評価者や被評価者にそれを聞いてみると、その答えとして、よく聞かれるのが給与や賞与を決めるため、というものです。評価が良い人とそうではない人では、確かに給与には少なからず影響を与えます。しかし、それは結果であって目的ではないはずです。目的を何に置くのか、それによって、評価すべき内容(評価項目)も変わります。目的を社員の処遇や職員の選別に置く場合の評価は、あえて答えられないような質問をしたり、現場ではあまり知らないような奇問のような評価になるかもしれません。一方で、評価の目的を「職員の育成」と考えたなら職員の成長につながるような評価項目が中心になるはずです。そこには業務遂行上のスキルアップだけでなく、一人の人間として成長も期待できような評価制度や面談制度にする必要があるでしょう。そして何より、評価する側も評価される側も前向きにそれを捉えて推進してゆくことが期待できます。このことは、最初は多くの評価者が認識して評価を始めるものの、しばらく時間が経過すると忘れてしまい、目の前のことが業務の中心になってしまいがちなので、施設長などの上位職者は、評価の目的意識を促し目的に沿った行動を指導していく必要があります。

 

2、評価へのパワーバランスがポイント

 評価のパワーバランス、つまり年間の評価スケジュールにおいて「力のかけ方」についてです。評価のステップとして多くの場合、下記のようになっているのではないでしょうか。

1ステップ:目標設定⇒第2ステップ:評価期間の観察⇒第3ステップ:評価する(評点)この3つのステップがある場合、どのステップにどれくらいのパワーをかけているのかがとても重要になります。多くの場合、圧倒的にパワーをかけるのは、第3ステップの評価(評点)ではないでしょうか。決められたスケジュールから、上位職からの指示で〇月●日までに点数をつけて提出しなければならない、ということになって始めて評価(評点)をつけ始め、数日間で評価を終え提出するというパターンです。この場合のパワーのかけ方をイメージ言えば、第1ステップ20%、第2ステップ0%、第3ステップ80%程度でしょうか。問題は、もっとの大切な観察期間に、ほとんど評価のことは忘れている状況で、いきなり第3ステップで必死に日ごろの業務を思い出し、評点にパワーと時間をかけるという状態です。このようなやり方では、被評価者はフィードバックを受けても納得できる説明が

できるでしょうか。普段の業務をしっかり観て、その事実を評価することで、被評価者に納得が生まれるものです。理想のパワーバランスは、ステップごとのイメージでいえば、第1ステップ20%、第2ステップ70%、第3ステップ10%ぐらいだと思います。このことは、わかっていても、なかなか日頃の職場で実践出来できていない状況ではないかと思います。日常は、目の前に迫った業務で目いっぱいという状況の中で、どうすればできるようになるのか。

そこで必要なのは、観察期間を途中でチェックする仕組みではないかと思います。多忙な現場の中では、「日頃の評価をしっかりやりなさい」とか「評価するつもりがあるのか」と上位職が叱咤激励しても、それは精神論で終わってしまうことが多いものと思います。それを補う仕組みとして、行っているか、いないかを、こまめにチェックする仕組みを導入する、つまりやらざるを得ない状況に置く事が必要なのです。どのような仕組みならば定着するのか。これには職場ごとで、いろいろな方法があるものと思いますので、各職場で現実的な方法を考えて頂きたいと思います。今まで見てきた事例の多くは定期面談の実施です。毎月、隔月、3カ月に一度・・いろいろなパターンがありますが、大切なことは、仕組にして内容を提出させることです。もちろん最も大切なことは、面談の中身であることは当然ですが、中身を充実させる前にまずは、「形」を創ること。そしてそれを定期的に行う習慣が出来れば、自然と中身も充実してきます。最初は抵抗感が大きくても、徐々に浸透していっているように多くの施設を見ていて感じます。今まで評価を行っていなかった施設は、従来と比べると管理者に負荷がかかってくることはやもおえません。ただ、同じ負荷をかけるなら、目的にあった方法で貴重な時間とパワーをかけながら行っていくことがとても大切なことなのではなるものと思います。

 

3、評価者スキルを学ぶ

評価者自体は日常的な業務ではないので、スキルといってもなかなか習慣にするのは難しいことです。そこには、評価スキルといった評価のコツを評価者は身につけて置く必要があります。次回には、評価者に必要な評価スキルをご紹介いたします。

                                   以上

介護事業所様向け情報(経営)1月号③

福祉施設でみられる人事労務Q&A
『パワハラ防止措置の法制化と事業主に求められる対応』

Q:

上司に叱られたことがパワーハラスメント(以下、「パワハラ」という)に該当するのではないかと申し出た職員がいます。パワハラとはどのようなもので、どのような対応をしなければならないのでしょうか。

A:

パワハラ防止措置の法制化によりパワハラの定義が明確になり、パワハラに該当すると考えられる例と該当しないと考えられる例が示されました。パワハラ防止措置として、パワハラを行ってはならないこと等に対する職員の関心と理解を高めたり、他の職員に対する言動に注意を払うことができるように研修を行うことが求められます。

詳細解説:

1.パワハラ防止措置の法制化

労働施策総合推進法の改正によりパワハラ防止措置が事業主に義務づけられ、大企業区分に該当する福祉施設等は2020 年6 月1 日より施行されています。中小企業区分に該当する福祉施設等は2022 年4 月1 日より施行されます。

2.パワハラの定義と例示

パワハラの定義は「パワーハラスメント防止のための指針」(以下、「指針」という)の中で明確にされ、次の①〜③までの要素をすべて満たすものとしています。

① 優越的な関係を背景とした言動であって
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③ 労働者の就業環境が害されるもの

また指針では、パワハラに該当すると考えられる例と該当しないと考えられる例が示され、例えば「精神的な攻撃」は次のように示されています。

[該当すると考えられる例]

業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと

[該当しないと考えられる例]

遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること

この事例からわかるように、業務の遂行に関することの注意は問題なくても、必要以上に厳しく注意したり、長時間にわたって厳しく注意したりすることで、パワハラに該当する可能性が高まります。反対に、当然守るべきルールを散々破ったときに、必要に応じた厳しい注意をしたとしても、パワハラには該当しないということになります。この指針で示された例はあくまで事例であり、パワハラに該当するかどうかは個別に判断されます。

パワハラというと上司から部下に対するものをイメージしますが、職場内の仲間外れ、外部の関係者へのパワハラも考えられます。そのため、上司(管理職)だけでなく一般の職員に対する研修の実施も効果的でしょう。

(次号に続く)

介護事業所様向け情報(経営)1月号②

通所等にかけることのできる時間はどのくらいか

福祉・介護施設を利用する際、利用者やその家族が通所等にかけることのできる時間はどのくらいまでか、ご存じですか。ここでは2020 年10 月に厚生労働省より発表された調査結果※から、通所等にかけることのできる時間に関するデータをご紹介します。

福祉サービスは30 分未満が7 割以上

上記調査結果から、片道の通所等にかけることのできる最大時間を本人と家族の別に、通う先ごとにまとめると、下グラフのとおりです。

毎日~週数回利用する福祉サービスでは、30分未満の回答が本人で75.4%、家族で74.2%となりました。30 分~1 時間以内も含めると、本人、家族ともに95%に達します。

入所の場合は1 時間以内が9 割程度

入所する福祉施設の場合も30 分以内の割合が最も高く、本人が49.7%、家族が54.6%でした。また、30 分~1 時間以内も35%以上あり、1 時間以内とする割合が本人、家族ともに90%程度になりました。

相談窓口の場合は30 分未満が5 割に

不定期に利用する福祉関係の相談窓口の場合は、30 分未満の割合は本人が57.0%、家族が58.5%でした。30 分~1 時間以内の割合は本人、家族とも30%台前半であり、1 時間以内の割合は入所の場合と同様に、90%程度という結果になりました。

このように、片道の通所等にかけることのできる最大時間は、30 分未満とする割合がほぼ90%を超えることがわかりました。

なお、30 分未満とする回答割合は、福祉サービスへの通所では本人の方が、入所する福祉施設と不定期に利用する福祉関係の相談窓口では、家族の方が高いことがわかります。貴施設の通所状況と比較してみては、いかがでしょうか。

※厚生労働省「人口減少社会における医療・福祉の利用に関する意識調査」
18 歳以上の男女3,000 人を対象に、2019 年12 月6 日~12 月13 日に行われた調査です。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14222.html

(次号に続く)

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