介護

介護事業所様向け情報(経営)8月号①

常勤介護職員の平均月給が30 万円超に

10 月から介護職員の処遇向上ため、「特定処遇改善加算」が始まります。今回は、厚生労働省が発表した「平成30 年度介護従事者処遇状況等調査結果」※の内容から、現時点での介護職員の処遇についてみていきましょう。

平均給与額は10,850 円UP

常勤の介護従事者等の9 月時点の平均給与額(月給)は次のとおりです。

介護職員の平均給与額は10,850 円増加し、平成30 年は30 万円を超えました。その他の全ての職種においても、5,000 円~10,000 円弱の改善がみられます。

昨年度は処遇改善に関する改定は実施されていません。つまり、上記の結果にみられる給与額の増加は、改定の影響ではなく、各施設の努力によるものといえます。

介護職員の増加額10,850 円の内訳は、基本給が3,230 円、手当が3,610 円、賞与等の一時金が4,010 円となっています。

勤続年数に従い、増額幅は逓減

介護職員の平均給与額を勤続年数別にみると、増加額に大きなばらつきがあります。

全体として、勤続年数が増えるにつれ、増額幅は逓減していることが分かります。

なお、「1 年」は28,590 円と最も大きな増額幅を示していますが、これは賞与の算定期間が他に比較して短く、平均給与額も低く算定されている等の事情に起因しています。

10 月から始まる「特定処遇改善加算」は、「勤続10 年以上」が一つの基準となります。今後の給与額にどのように影響するか、次年度以降の調査結果にもご注目ください。

(※)厚生労働省「平成30 年度介護従事者処遇状況等調査結果」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/19/index.html

(次号に続く)

介護事業所様向け情報(労務)8月号④

同一労働同一賃金への対応でいま行うべきこと

働き方改革の本命である同一労働同一賃金は、大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月に改正法が施行されます。実際にこの対応に着手すると、最終的には人事制度の見直しまで必要となることもあり、早めに取り掛かることが重要です。そこで今回は同一労働同一賃金の基礎知識と、当面求められる実務対応についてとり上げます。

1.同一労働同一賃金とは何か

同一労働同一賃金について、一般的には「正社員と同じ仕事をしている非正規社員に同じ額の賃金を支給しなければならない」と考えられていますが、この理解は正確ではありません。パートタイム・有期雇用労働法では、この「同じ仕事」であるかどうかを判断する要素として、以下の3つが挙げられています。

①職務の内容(担当する業務の内容と業務に伴う責任の程度)
②職務の内容・配置の変更の範囲(職種転換・転勤の有無および範囲)
③その他の事情(定年後の雇⽤であること、労働組合等との交渉の状況など)

正社員と非正規社員の仕事を比較して、①と②がまったく同じ場合には「均等待遇」として、非正規社員であることを理由とした差別的取扱いが禁止されます。しかし、現実的には、非正規社員は正社員と比べ、担当する仕事の内容が定型的である、責任の程度が低いといった状況も多く存在し、①と②がまったく同じというケースはさほど多くないと思われます。
その際に求められるのが「均衡待遇」です。①または②が異なる場合の非正規社員の待遇は、①と②の違いに加えて③を考慮して、正社員との間に不合理な待遇差のない、バランスが取れた待遇であることが求められます。
つまり、①または②が異なるという理由で、非正規社員の待遇を不合理に低く抑えることは認められません。

2.当面求められる対応

実務上、当面求められる対応は、各雇用区分における待遇の差異をまとめることです。具体的には、正社員、パートタイマー、契約社員、嘱託社員など自社の雇用区分を横軸に、基本給、諸手当、賞与、退職金、福利厚生、安全衛生などの待遇を縦軸にした労働条件比較表を作成し、その差異を把握します。そして、雇用区分によって待遇に差異のある項目は、その差異が不合理ではないと説明できるか検証します。その差異が不合理であると考えられる場合には、次のステップとして、その待遇の見直しを検討することになります。

昨年6月に同一労働同一賃金に関する初めての最高裁判決が言い渡され、その後も様々な裁判が継続しています。そうした判例により、諸手当や福利厚生については概ね求められる対応法がわかりつつありますが、基本給、賞与、退職金、扶養手当など、最も重要な論点については未だ不明確な状態にあります。それらも今後、裁判を通じて対応すべき水準が明らかになっていくと予想されます。まずは労働条件比較表の作成を通じ、自社の課題抽出を優先して行っておきましょう。

(来月に続く)

介護事業所様向け情報(労務)8月号③

パートタイマーの所定労働時間を見直した際の随時改定の取扱い

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:先月より1日の所定労働時間を6時間から7時間に延ばしたパートタイマーがいます。これにより給与の総支給額が増え、所定労働時間を変更した月から3ヶ月間の給与から判断すると、現在の標準報酬月額との差が2等級以上になりそうです。

社労士 :なるほど。社会保険の随時改定(月額変更)に該当するかということを、気にされ ているのですね。

総務部長:はい。給与は基本給と通勤手当で構成されており、基本給は時給、通勤手当は実際の出勤日数に応じて支給しています。今回、1日の所定労働時間は見直したものの、基本給・通勤手当ともに単価の変更はしていません。随時改定は、固定的賃金の変動があったときに該当すると認識しているのですが、このパートタイマーを対象にしなくてよいか、判断に迷いました。

社労士 :随時改定の要件の1つに「昇給または降給等により固定的賃金に変動があった」というものがあります。ここでの固定的賃金の変動とは、支給額や支給率が決まっているものをいい、日本年金機構は次のようなものが考えられるとしています。

①昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
②給与体系の変更(⽇給から⽉給への変更等)
③⽇給や時間給の基礎単価(⽇当、単価)の変更
④請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
⑤住宅⼿当、役付⼿当等の固定的な⼿当の追加、⽀給額の変更

総務部長:今回のパートタイマーはいずれにも該当しないように感じます。

社労士 :確かにそう感じられるかもしれませんが、日本年金機構は「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」を出しており、「時給単価の変動はないが、契約時間が変わった場合、固定的賃金の変動に該当するため、随時改定の対象となる」としています。

総務部長:ということは、今回のパートタイマーも随時改定の対象となるということですね。

社労士 :はい。随時改定となるかはすべての要件から判断することになりますが、少なくとも随時改定の対象になるかを確認すべきパートタイマーになります。

総務部長:承知しました。確認するようにします。ありがとうございました。

【ワンポイントアドバイス】
1. 随時改定における固定的賃金の変動とは、昇給や降給のほか、給与体系の変更なども含まれる。
2. 所定労働時間の変更も随時改定における固定的賃金の変動に含まれる。
3. 日本年金機構から定時決定と随時改定に関する事例集が出されており、実務の参考にするとよい。

(次号に続く)

介護事業所様向け情報(労務)8月号②

押さえておきたいマタハラの基礎知識

マタニティハラスメント(以下、「マタハラ」という)に関連するような労働トラブルを目にする機会が出てきています。そこで今回は、改めてマタハラとは何か、マタハラに該当しない業務上の必要性に基づく言動とはどのようなものかを確認し、効果的な防止対策を行いましょう。

1.マタハラとは

マタハラとは、職場において行われる上司・同僚からの妊娠・出産、育休等の利用に関する言動により、妊娠・出産した女性労働者や育休などを申出・取得した男女労働者等の就業環境が害されることを言います。このマタハラには「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」の2種類があります。

①制度等の利⽤への嫌がらせ型

育休などの制度の利⽤を阻害したり、利⽤したことにより嫌がらせなどをするものをいう。
[典型的な例]
上司・同僚が「⾃分だけ短時間勤務をしているなんて周りを考えていない。迷惑だ。」と繰り返し発言し、就業する上で看過できない程度の⽀障が⽣じている。

②状態への嫌がらせ型

妊娠などをしたことにより、嫌がらせなどをするものをいう。
[典型的な例]
上司に妊娠を報告したところ、「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」と言われた。

2.マタハラに該当しない業務上の
必要性に基づく言動とは

1.でマタハラについてとり上げましたが、業務分担や安全配慮の観点から客観的に見て、業務上の必要性に基づく言動によるものについては、マタハラには該当しないとされています。このように業務上の必要性の判断については、状況に応じて慎重に判断し、対応することが求められます。例えば、妊娠中に医師から休業指示が出た場合など、従業員の体調を考慮してすぐに対応しなければならない休業についてまで、「業務が回らないから」といった理由で休業をさせない場合はマタハラに該当します。しかし、ある程度調整が可能な休業等(例えば、定期的な妊婦健診の日時)について、その時期をずらすことが可能なのか従業員の意向を確認する行為は、マタハラには該当しないとされています。

なお、従業員の意を汲まない一方的な通告はマタハラとなる可能性があるため、注意が必要です。

日ごろの労務管理を行う管理職にとっては、部下から妊娠や出産、育児に関する相談があったときに、マタハラを意識するあまりに、どのように対応したらよいのか困るケースも出てくるでしょう。そのため、管理職を対象に具体例を交えながら社内研修を実施するなどして、マタハラとなるような言動を防ぎ、適切な配慮がされるようにしていきたいものです。

(次号に続く)

介護事業所様向け情報(労務)8月号①

介護離職の防止に活用できる助成金

介護離職者数は1年間で10万人いるとされ、国は介護離職ゼロを目指し、介護離職を防止するための助成金(両立支援等助成金(介護離職防止支援コース))を設けています。この助成金は以前からありましたが、今年度、支給対象の変更、要件の一部緩和が行われています。そこで今回は、この助成金の概要をとり上げます。

1.介護離職防止支援コースとは

両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)は、中小企業を対象としたもので、介護支援プラン(以下、「プラン」という)を策定し、このプランに基づいて従業員の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組んだ、または介護両立支援制度を導入し利用する従業員が生じた場合に、助成されるものです。

①介護休業

介護休業に対する助成は、休業取得時と職場復帰時の2つに分かれます。主な要件は以下のとおりです。


<休業取得時>

・介護休業の取得、職場復帰についてプランにより支援する措置を実施する旨を、就業規則等に規定し従業員へ周知すること。
・介護に直面した従業員との面談を実施し、面談結果を記録した上で介護の状況や今後の働き方についての希望などを確認の上、プランを作成すること。
・作成したプランに基づき、業務の引き継ぎを実施し、対象となる従業員に合計14日以上の介護休業を取得させること。

<職場復帰時>

※休業取得時と同一の対象従業員であるとともに、休業取得時の要件かつ次を満たすことが必要です。
・休業取得時にかかる同一の対象従業員に対し、その上司または人事労務担当者が面談を実施し、面談結果を記録すること。
・上記面談結果を踏まえ、対象従業員を原則として原職等に復帰させ、原職等復帰後も引き続き雇用保険の被保険者として3ヶ月以上雇用し、支給申請日においても雇用していること。

②介護両立支援制度

介護両立支援制度についても、①の介護休業の主な要件と同様に、就業規則等に規定・周知し、作成したプランに基づき業務体制の検討を行うことが必要です。さらに、以下のいずれか1つ以上の介護両立支援制度を導入し、対象従業員に利用させ、制度利用終了後も引き続き雇用保険の被保険者として1ヶ月以上雇用し、支給申請日においても雇用していることが必要になります。

・所定外労働の制限制度・介護のための在宅勤務制度
・時差出勤制度・法を上回る介護休暇制度
・深夜業の制限制度・介護のためのフレックスタイム制度
・短時間勤務制度・介護サービス費⽤補助制度

2.助成額

①介護休業
<休業取得時>1人につき28.5万円(36万円)
<職場復帰時>1人につき28.5万円(36万円)
②介護両立支援制度1人につき28.5万円(36万円)
※①②とも1企業1年度5人まで助成
()内は生産性要件を満たした場合

上記のほか、助成金には様々な要件が設けられていますので、活用を検討される場合は事前にその内容を確認しておきましょう。

(次号に続く)

【介護・保育】人材定着ブログ8月号 「人が集まる介護事業所」とは・・・

「社員の紹介制度」を浸透させるコツ

スタッフに協力を要請し、新たな人員として友人を紹介してもらうシステムを「紹介制度」と言います。この制度と合わせて是非入れて頂きたいのが、入社が決まった場合に、紹介したスタッフとその友人に数万円づつ支給する「お祝い金」制度です。最近では導入する事業所も増えてきました。スタッフと求職者にとってはよい臨時収入ですし施設側もある程度信頼のおける人が採用でき、求人広告を掲載するよりも大幅にコストが改善されるので双方ともにメリットがあります。さらに、この制度は「口コミ」ならでは魅力があります。
 この紹介制度は、友人紹介の為、事業所のリアルなだけでなく、非常に信頼度の高い情報が得られます。そのため、入社後にギャップを感じることもなく、結果的に定着率も高くなります。この制度で大人数を採用することは難しいと思いますが、うまく制度が定着すれば大きなメリットがあります。


とはいっても、紹介制度が定着するまでには、ある程度時間を要します。「お金が欲しくて友達を紹介すると思われたくない」と抵抗を感じるスタッフも少なくないようです。では、実際に制度を浸透させるには、どのようなポイントを押さえておく必要が有るのでしょうか。


ポイント1
「職場にとってのメリットを説明する」
「紹介制度を導入するから、皆さん協力してください」と言ったアナウンスだけでは、スタッフは積極的に動きません。ポイントは、紹介者個人ではなく、職場全体にとってのメリットをきちんと説明することです。信頼できる人材の採用は「スタッフの働きやすさ」にもつながるはずです。その点をしっかり説明しましょう。

 


ポイント2
「紹介実績はオープンに」
いざ、紹介制度を通じて入社に至った場合は、全体のミーティングなどで公表することをお勧めします。運営側が公表しなければ、「あの人、○○さん紹介してお祝い金をもらったらしいよ」といった噂のような形で情報が広まる可能性があります。そうなると、紹介して「お祝い金」を受け取ることが、後ろめたいことに感じられてしまいます。ある事業所ではミーティングの際に、「今回は〇〇さんが新しいスタッフを紹介してくれました!」と発表し、みんなで拍手して讃える、という風土を作って成功しています。気持ちよく紹介と入社をしてもらえる素地を作ることが大切です。


ポイント3
「根気よく発信し続ける」
制度が浸透するまでは、申し送りやミーティングなど定期的にスタッフが集まる場で繰り返し発信し続けることが大切です。ある事業所では、一か月毎日申し送りで伝え続け、やっとスタッフに認知されてきたといいます。根気よく、浸透するまで紹介制度の協力してもらえるよう、発信し続けてみましょう。

今年10月開始「特定処遇改善加算」の第二弾Q&Aの内容を確認しておきましょう

2019年8月末の届出期限が近づく中、一層の関心が高まりつつある「介護職員等特定処遇改善加算(以降、本加算と表記)」。そんな中、4月12日に公表された介護保険最新情報Vol.719 Q&A(第一弾)に引き続き、今月7月23日には第二弾Q&Aが示されました。第二弾で示されたQ&Aの数は全部で21項目。中には「当初より柔軟性が増したな」と感じられるような内容も含まれています。今回のニュースレターでは、その各々の項目の内容について確認・解説してまいります。

問1】
介護福祉士の配置等要件(サービス提供体制強化加算等の最も上位の区分を算定していることとする要件。以下同じ。)について、年度途中で、喀痰吸引を必要とする利用者の割合に関する要件等を満たせないことにより、入居継続支援加算等を算定できない状況が常態化し、3ヶ月以上継続した場合に、変更の届出を行うとされているが、特定加算(介護職員等特定処遇改善加算をいう。以下同じ。)の算定はいつからできなくなるのか。
⇒上記問いの中にも記載がある通り、「喀痰吸引を必要とする利用者の割合についての要件等を満たせないことにより、入居継続支援加算等が算定できなくなった場合については、直ちに変更することを求めるものではなく、当該状況が常態化し、3か月間を超えて継続した場合に変更の届出を行えばよい」というルールが存在しています。そのルールを前提に、本加算についてもその届出と合致させたタイミングでの届出が必要となることを意識しておく必要があるでしょう(=変更届を出した翌月、即ち4か月目より本加算の算定が出来なくなる)。続いて2つ目のQ&Aについてです。
【問2】
問1のような特定加算の区分の変更の届出に関する3か月間の経過措置について、訪問介護における特定事業所加算も同様の特例が認められるのか。
⇒考え方としては同様です。が、訪問介護については、「特定事業所加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)の算定により介護福祉士の配置等要件を満たすことができる」となっており、喀痰吸引を必要とする利用者の割合についての要件等を満たせず特定事業所加算(Ⅰ)が仮に算定できなくなったとしても、特定事業所加算(Ⅱ)の要件を満たしていれば3ヶ月の経過措置の対象とはなりません。更に付言すると、特定事業所加算(Ⅱ)を算定できない場合には本加算(Ⅱ)を 算定することとなるため、変更の届出が必要であることを認識しておきましょう。続いて3つ目のQ&Aについてです
【問3】
特定加算(Ⅰ)について、計画届出時点において、介護福祉士の配置等要件を満たしてなければ算定できないのか。
⇒原則的には計画書策定時点においてサービス提供体制強化加算等を算定している等、介護福祉士の配置等要件を満たしていることが必要ですが、それらは絶対条件ではなく、「計画書策定時点では算定していないものの、特定加算(Ⅰ)の算定に向け、介護福祉士の配置等要件を満たすための準備を進め、特定加算の算定開始時点で、介護福祉士の配置等要件を満たして」いれば算定することが可能であることも理解しておきましょう。続いて4つ目のQ&Aについてです。
【問4】
介護予防・日常生活支援総合事業における訪問介護従前相当サービスについては、 特定事業所加算がないところ、特定加算(Ⅰ)を算定するにはどうすれば良いか。
⇒「地域支援事業実施要綱」では「対象事業所が、併設の指定訪問介護事業所において特定事業所加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定していることを要件とする」と定められています。届出の際には、併設の訪問介護事業所の特定事業所加算の取得有無を確認する必要があることを踏まえておきましょう。続いて、5番目のQ&Aについてです。
【問5】
事業所において、介護プロフェッショナルキャリア段位制度を導入し、人事考課と連動している場合、職場環境等要件の「資質の向上」の取組を行っている事業所として取り扱って良いか。また、現行加算のキャリアパス要件を満たしたことになるのか。
⇒結論として、「現行加算のキ ャリアパス要件(Ⅱ)は満たされる」「職場環境等要件の「資質の向上」の項目の一つである「研 修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動」の取組を行っているものとして取り扱われる」ことになります。続いて6番目のQ&Aについてです。
【問6】
見える化要件(特定加算に基づく取組についてホームページへの掲載等により公表することを求める要件。以下同じ。)について、通知に「2020年度より算定要件とすること」とあるが、2019年度においては特定加算に基づく取組を公表する必要はないのか。
⇒当該要件については、特定加算も含めた処遇改善加算の算定状況や、賃金以外の処遇 改善に関する具体的な取組内容に関する公表を想定しているため、2019年度においては要件としては求めず、2020年度からの要件となっています。続いて7番目のQ&Aについてです。
【問7】
情報公表制度の報告対象外でかつ事業所独自のホームページを有しない場合、見える化要件を満たすことができず、特定加算を算定できないのか。
⇒本要件はあくまで「外部の者が閲覧可能な形で公表」することが求められているものであり、公表方法はホームページに限った訳ではなく、事業所・施設の建物内の入口付近など外部の者が閲覧可能な場所への掲示等の方法により公表することでも要件として充足されることを認識しておきましょう。続いて、8番目のQ&Aについてです。
【問8】
特定加算(Ⅱ)の算定に当たっては、介護福祉士の配置等要件を満たす必要がないが、この場合であっても、経験・技能のある介護職員のグループを設定する必要があるのか。
⇒介護福祉士の配置等要件はあくまで特定加算(Ⅰ)の算定要件である一方、経験・技能のある介護職員のグループの設定等は事業所内における配分ルールとなっており、根本的に質が異なる要素となっています。このため、特定加算(Ⅱ)を算定する場合であっても、経験・技能のある介護職員のグループの設定が必要となります(なお、事業所の事情に鑑み経験・技能のある介護職員に該当する介護職員がいない場合の取扱いについては、(Vol.1)問5を参照下さい)。続いて、9番目のQ&Aについてです。
【問9】
2019 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(平成 31 年4月 12 日)問6に「月額8万円の処遇改善を計算するに当たっては、現行の介護職員処遇改善加算による賃金改善分と分けて判断することが必要」とされているが、「役職者を除く全産業平均賃金(440 万円)以上か」を判断するに当たっては、現行の介護職員処遇改善加算による改善を含めて計算することは可能か。
⇒年収 440 万円を判断するに当たっては、現行の介護職員処遇改善加算による改善を含めて計算することが可能です。続いて、10番目のQ&Aについてです。
【問10】
経験・技能のある介護職員のグループにおいて、月額8万円の改善又は年収 440 万円となる者を設定することについて、「現に賃金が年額 440 万円以上の者がいる場合には この限りでない」とは、具体的にどのような趣旨か。
⇒「特定加算による改善を行わなくとも、経験・技能のある介護職員のグループ内に既に賃金が年額 440 万円以上である者がいる場合には、当該者が特定加算による賃金改善の対象となるかに関わらず、新たに月額8万円の改善又は年収 440 万円となる者を設定しなくても特定加算の算定が可能」という趣旨となっています。 続いて11番目のQ&Aについてです。
【問11】
事業所における配分方法における「ただし、その他の職種の平均賃金額が他の介護職員の平均賃金額を上回らない場合はこの限りでないこと。」とはどのような意味か。
⇒その他の職種の平均賃金額が他の介護職員の平均賃金額を上回らない場合においては柔軟な取扱いを認め、両グループの平均賃金改善額が等しくなる(1:1)までの改善が可能となります。続いて、12番目のQ&Aを見てまいりましょう。
【問12】
介護給付のサービスと介護予防・日常生活支援総合事業を一体的に運営している場合であっても、月額8万円の改善又は年収 440万円となる者を2人設定する必要があるの か。また、その場合の配分ルール(グループ間の平均賃金改善額 2:1:0.5)はどのような 取扱いとなるのか。
⇒介護給付のサービスと介護予防・日常生活支援総合事業を一体的に行っており、同一の就業規則等が適用される等労務管理が同一と考えられる場合は、法人単位の取扱いを適用するのではなく同一事業所とみなし、「月額8万円の改善又は年収440 万円となる者を1人以上設定すること」「配分ルールを適用すること」により、特定加算の算定が可能となります。なお、介護給付のサービスと予防給付のサービス(通所リハビリテーションと予防通所リハビリテーションなど)、特別養護老人ホームと併設されている短期入所生活介護、介護老人保健施設と短期入所療養介護等についても、同様の考え方を踏襲することも認識しておきましょう。続いて、13番目のQ&Aについてです。
【問13】
本部の人事、事業部等で働く者など、法人内で介護に従事していない職員について、 「その他職種」に区分し、特定加算による処遇改善の対象とすることは可能か。
⇒特定加算の算定対象サービス事業所における業務を行っていると判断できる場合には、その他の職種に含めることができます。 続いて、14番目のQ&Aについてです。
【問14】
事業所内での配分方法を決めるにあたり、「他の介護職員」を設定せず、「経験・技能のある介護職員」と「その他の職種」のみの設定となることは想定されるのか。
⇒事業所毎に「経験・技能のある介護職員」のグループを設定することが必要となりますが、介護職員の定着が進み、勤続年数が長くなったこと等により、当該事業所で働く介護職員全てが、「経験・技能のある介護職員」であると認められる場合には、「経験・技能のある介護職員」と「その他の職種」のみの設定となることも想定することができます。なお、その場合における配分ルールについては、当該事業所における「経験・技能のある介護職員」の平均賃金改善額が、「その他の職種」の平均賃金改善額の4倍以上となることが必要です。続いて、15番目のQ&Aについてです。
問15】
特定加算によって得られた加算額を配分ルール(グループ間の平均賃金改善額が 2:1:0.5)を満たし配分した上で、更に事業所の持ち出しで改善することは可能か。
⇒各事業所において特定加算による処遇改善に加え、事業所の持ち出しで処遇改善を行うことは可能です。尚、この場合においては、特定加算による賃金改善分について配分ルールを満たしていることを確認するため、実績報告書における賃金改善所要額、グループごとの平均賃金改善額等においては、特定加算による賃金改善額を記載のうえ、持ち出しにより更なる賃金改善を行った旨を付記する必要があることに注意が必要です(改善金額の記載までは不要)。続いて、16番目のQ&Aについてです。
【問16】
看護と介護の仕事を 0.5 ずつ勤務している職員がいる場合に、「経験・技能のある介護職員」と「その他の職種」それぞれに区分しなければならないのか。
⇒勤務時間の全てでなく部分的であっても介護業務を行っている場合は、介護職員として「経験・技能のある介護職員」もしくは「他の介護職員」に区分することは可能です。なお、兼務職員をどのグループに区分するか、どのような賃金改善を行うかについては、労働実態等を勘案し、事業所内でよく検討し、合理的な判断を下すことが求められます。続いて、17番目のQ&Aについてです。
【問17】
介護サービスや総合事業、障害福祉サービス等において兼務している場合、配分ルールにおける年収はどのように計算するのか。
⇒どのサービスからの収入かに関わらず、実際にその介護職員が収入として得ている額で判断して問題ありません。続いて、18番目のQ&Aについてです。
【問18】
その他の職種に配分しない場合、計画書は空欄のままでよいか。
⇒その他の職種に配分しない場合等においては、人数部分について「0(ゼロ)」等と記載する等、記入漏れと判断されることがないように対応しておくことが必要です。続いて、19番目のQ&Aについてです。
【問19】
「役職者を除く全産業平均賃金(440 万円)」とはどのような意味か。440 万円を判断するにあたり、役職者は抜いて判断する必要があるのか。
⇒年額 440 万円の基準を満たしているか判断するに当たっては役職者であるかどうかではなく、事業所毎で設定された、経験・技能のある介護職員の基準に該当するか否かで判断することが可能です。
【問20】
本来は 10月から特定加算を算定し、これによる賃金改善を行うことになるが、法人・ 事業所の賃金制度が年度単位であることに合わせるため、年度当初から特定加算を織り込んで賃金改善を行いたいと考えた場合、4~10 月分の賃金改善に特定加算を充てることは可能か。(例:10 月から月2万円の賃金改善を行うのではなく、4月から月1万円の賃金改善を行う場合)
⇒今般の特定加算については年度途中から開始するものであり、給与体系等の見直しの時期が、年に1回である事業所等において、既に年度当初に今回の特定加算の配分ルールを満たすような賃金改善を行っている場合も十分に想定されます。
こうした場合にはその年度当初から 10 月より前に行っていた賃金改善分について、介護 職員等特定処遇改善加算を充てることも可能です。 なお、当該取扱いを行う場合にあっても介護職員の賃金低下につながらないようするとともに、事業所内でよく検討し、計画等を用いて職員に対し周知することが必要です。
【問21】
法人単位で複数事業所について一括申請しており、そのうち一部事業所において加算区分の変更が生じた場合、変更届出は必要か
⇒計画書における賃金改善計画、介護福祉士の配置等要件に変更が生じた場合は、必要な届出を行うことが必要となります。

以上、第二弾のQ&Aについて雑駁ながら内容の確認及び解説をさせていただきました。筆者個人の見解としては、「問13」「問19」「問20」のQ&Aに注目した次第です。本ニュースレターに目を通していただいているのは恐らく、届出締切まであと約1か月を切り始めている頃かと思われますが、事業者としては(Q&A第一弾含め)あらためて現時点の全情報を網羅しつつ、経営目線、職員目線(=新たな仕組みが職員から見て魅力的に映っているか?定着促進のインセンティブとして機能出来そうか?etc)」、そして地域内競合目線(=同地域内の法人はどのような手を打ってくるか?etc)」という3つの目線に気配り・目配りを行いながら、「これがベストだ」と思うことができる水準に達するまで想定額の算出や職員の区分割りなどに対して頭を働かせること(=心構えを含めた事前準備)が重要だと言えるでしょう。私たちも今後、引き続きの情報収集を含め、新たな視点が得られ次第、皆様に向けて発信してまいります。

【介護】人材定着ブログ7月号 「人が集まる介護事業所」とは・・・

今回は職員採用についてです。

多くの事業主様とお話していて、人手が足りない、募集しても集まらない・・・などの
声はよく聞かれます。また、一方では、人手不足でも全く悩みがほとんどない、といった
事業所もあります。つまり事業所単位で状況は大分異なるというのが実情のようです。

つまり「世間でいう人手不足と個別の事業所の人手不足は全然違うこと」という事なのではないかと思います。


 例えば、業界は違いますが、コンビニ業界も人手不足は深刻といった話は聞きますが、
なぜか人が集まるお店の店長からは、「この店ならいろいろ学べて、店長もしっかり叱ってくれ、自分が成長できる」という趣旨の内容の口コミ(SNS)で人が集まってくる、といった話をお聞きしました。


 また、介護事業所でも同様なことはよくお聞きします。つまり人材不足に悩んでいない事業所の共通点は・・・「今いるスタッフの口コミで人が集まる」事業所といっても良いのではないかと思います。

考えてみますと、求人広告の出し方、媒体の選び方、派遣、人材紹介など・・・いろいろ手段を尽くすことも大切なのですが、せっかく来てくれてもいい人は辞めてしまう、といった状況を変えていかなければ結局同じことです。

「今いるスタッフの口コミで人が集まる」事業所とは、結局は「ひとに紹介したような職場になっているか」ということだと思います。

やはり、大切なことは「人に紹介したくなうような職場の「雰囲気」「組織風土」であること」なのだろうと、現場を見ていてつくづく感じます。

 そんな事業所のエピソードを一つご紹介いたします。この内容は、ある事業所の社内報から抜粋させて頂いております。


「働きたくなる職場づくり」へ
 居心地の良い事務所作りから、活きたコミュニケーションを通じて
 「信頼関係」づくりへ


社内報からのエピソードを抜粋
「ヘルパーさんは入り口で用を済ませるとすぐに帰ってしまいます。なので、事務所の移転の際に事務所の奥にヘルパーさんがゆっくり作業できる場所を作りました。ヘルパーさんが中に入ってくることで、利用者の方の様子を伺えたり、仕事の悩みを聴く機会が増えました。会話が増えることで、新規の依頼もお願いしやすくなってきました。4月以降は稼働時間を増やしたいと言ってくれるヘルパーさんが増えてきています。
又、二人の優秀なサ責の力がとても大きいです。今後私の目標は常勤の二人が有給をしっかり消化できる環境を作りたいと考えています。良い介護を提供するには心も体も元気でなくてはなりません。しっかり休みをとり自分の楽しむ時間を確保してあげたいです。収支も改善し、さらに一名増やしたいと思っています」。

この事業所も、従来は、人が集まらず、来てもやめてしまうような職場であったと聞いています。ただ、いまは「社員の紹介」で来られる社員、パート、ヘルパーが最も多いと言われていました。

次回は、「社員の紹介制度」に関し、事例をもとにご紹介したいと思います。

介護事業所様向け情報(経営)7月号③

福祉施設でみられる人事労務Q&A
『就業規則を改定した際の職員への周知』

Q:

服務規律に違反する行為があった職員に就業規則を示して注意を行ったところ、「見せてもらったことがないので、そんなルールには従えない」と言われてしまいました。数年前に就業規則の改定をした際、職員代表から意見書を提出してもらいましたが、それ以降は施設長室に保管されたまま、職員が閲覧することができない状態です。今回、就業規則を適用するのは問題ないのでしょうか。

A:

労働基準法には、就業規則の作成や改定にあたって、職員代表からの意見聴取、及び労働基準監督署への届出が必要とされていますが、あわせて職員にその内容を周知することが必要であると定められています。周知を怠ったときには、その就業規則の有効性が否定される場合があるため、就業規則が周知できている状態を整えることが必要です。

詳細解説:

就業規則は、そもそも必ず記載しなければならない項目(絶対的必要記載事項)が網羅されていることが必要不可欠となりますが、記載内容だ
けではなく、労働基準監督署への届出など、以下の事項の実施が求められています。

① 就業規則を適⽤する事業所の職員のうち過半数を代表する者の意⾒を聴くこと(労働基準法第90 条)
② 管轄する労働基準監督署への届け出を⾏うこと(労働基準法第89 条)
③ 作成した就業規則を職員に周知していること(労働基準法第106 条)

このうち③の周知とは、職員が見やすい場所に掲示したり、職員が閲覧できるパソコンに保存、印刷した就業規則を交付するといった方法が挙げられます。
就業規則を作成・改定した際に①、②まで行っても、施設長や人事担当者等の限られた者のみが開閉できる書庫に保管しているなど、事実上、周知がなされていない場合があります。このとき、職員に周知していなかったことを理由に、就業規則に定めた施設内のルールに従わせることができない場合があります。そのため、就業規則を周知できていない場合には、違反行為に苦慮していることを説明し、今後の行動を改めてもらうように話すとともに、今後、就業規則が施設内のルールとして有効となるよう、閲覧できるようにするなどの対応を行うことが必要です。

この周知に関しては、就業規則だけでなく時間外・休日労働に関する協定書、年次有給休暇の計画的付与に関する協定書など、職員への周知が必要とされる労使協定もあります。周知が十分にできていないと考えられる場合は、すぐに対策を行うようにしましょう。

(来月に続く)

介護事業所様向け情報(経営)7月号②

福祉関連業種における夏季賞与の支給状況

ここでは夏季賞与支給の参考資料として、厚生労働省の調査結果※から直近5 年間(2014~2018年)における、福祉関連業種の夏季賞与支給労働者1 人平均支給額(以下、1 人平均支給額)などを事業所規模別にご紹介します。

児童福祉事業の30~99 人以外は減少に

上記調査結果から業種別に1 人平均支給額などをまとめると、下表のとおりです。
2018 年の1 人平均支給額をみると、児童福祉事業の30~99 人以外は前年より減少しました。きまって支給する給与に対する支給割合では、老人福祉・介護事業が5~29 人、30~99 人ともに1 ヶ月分未満が続いています。支給労働者数割合と支給事業所数割合は、児童福祉事業と障
害者福祉事業の30~99 人で直近5 年中4 年が100%ですが、5~29 人ではどの業種も100%になった年はありません。
今年の夏季賞与は、どうなるでしょうか。

※厚生労働省「毎月勤労統計調査」
日本標準産業分類に基づく16 大産業に属する、常用労働者5 人以上の約190 万事業所から抽出した約33,000 事業所を対象にした調査です。今回のデータは 2019 年 4 月に発表されたものです。きまって支給する給与に対する支給割合とは、賞与を支給した事業所ごとに算出した「きまって支給する給与」に対する「賞与」の割合(支給月数)の 1 事業所当たりの平均です。支給労働者数割合は、常用労働者総数に対する賞与を支給した事業所の全常用労働者数(当該事業所で賞与の支給を受けていない労働者も含む)の割合です。支給事業所数割合とは、事業所総数に対する賞与を支給した事業所数の割合です。詳細は次の URL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450071&tstat=000001011791&cycle=7&tclass1=000001015911&tclass2=000001040061&second2=1

(次号に続く)

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