医療

Q 看護職をはじめ職員の定着と確保のために、夜勤免除や短時間勤務等多様な勤務形態  の導入を検討しています。ただ、個別の要望がおおくなるほど職員間の不公平感が生じると思いますが、そのあたりのコンセンサスをどうとるか。アドバイスをお願いします。

A, 正職員の雇用形態をそのまま短時間で働く「短時間正社員」は、厚労省でも推奨している働き方ですが、なかなか普及していません。「短時間=パート」の概念を打破るには、それなりの経営戦略が必要になります。

 そもそも短時間勤務を希望する職員は、旧来型の働き方であれば就業の継続を断念していた層です。家庭を重視しながらも正社員として働くことに踏みとどまろうとすることを前向きに捉えて、短時間勤務者がモチベーションをたもち、活躍しやすいものにすることが、制度導入の大前提です。育児、介護休業法に定める育児短時間勤務を選択した場合、業務内容などがパートの看護師と同じ扱いでは、将来的に常勤に戻ろうとするモチベーションは上がらないでしょう。

 一方、短時間勤務制度を導入し、多様な勤務形態がふえるほどフルタイム勤務者の負担が大きくなる場合があります。短時間勤務制度の導入は、就業継続の切り札にもなり得る半面、

職員間の不公平感が生まれやすいのも事実です。

 従って、導入を検討するには、①ルール化して不公平感を緩和する②金銭的なインセンティブを与える(処遇で差をつける)という視点が欠かせません。

 また、ある病院では、短時間正社員二つのパターンに分け①勤務時間短縮型⇒1日6時間以上×5日 ②休日拡充型⇒所定労働時間×4日(週休3日)で運用されています。個人の事情によってどちらのニーズもあるということで選択できるようにしていますが、どちらも給与は勤務時間に応じて減らすようにされています(賞与はあり)。

更には正職員でも①夜勤免除A(平日日勤のみ)②夜勤免除B(土日祝の日勤もあり)③夜勤回数制限(月4回以内)④夜勤曜日制限(夜勤の曜日制限あり)⑤勤務制限なし、というようにきめ細かく職員ニーズに対応されています。処遇(給与・賞与)については⑤の制限なしの働き方を100%として、一定の比率で減額していくような仕組みにしています。

 この病院では「働く人を大切にしてくれる病院」という印象が広まり、応募者が増え、

また離職者も大幅に低下したとのことです。

 

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福祉施設等の職員が自信のある能力・スキル

ここでは今年6 月に発表された調査結果※から、福祉施設等(以下、医療,福祉)の職員が自信のある能力・スキル(以下、能力等)と向上させたい能力等をみていきます。

チームワーク、協調性に自信あり

 上記調査結果によると、医療,福祉の職員で自信のある能力等がある割合は85.3%でした。また、向上させたい能力等がある割合は92.8%に達しました。能力等ごとに自信のある割合と向上させたい割合をまとめると、下表のとおりです。
 医療,福祉の職員が自信のある能力等をみると、チームワーク、協調性・周囲との協働力が50%を超えました。コミュニケーション能力・説得力や職種に特有の実践的スキル、定型的な事務・業務を効率的にこなすスキルも30%を超えています。
 調査結果全体(総数)と比較すると、医療,福祉は職種に特有の実践的スキルやコミュニケーション能力・説得力に自信のある割合が高くなりました。

 

IT 関連の知識や能力を向上させたい

 医療,福祉の職員が向上させたい能力等では、IT を使いこなす一般的な知識・能力の割合が最も高く、コミュニケーション能力・説得力とともに30%を超えました。その他、課題解決スキルやマネジメント能力・リーダーシップ、高度な専門的知識・スキル、職種に特有の実践的スキルが25%を超えています。
 総数と比較すると、職種に特有の実践的スキルや高度な専門的知識・スキルを向上させたい割合が高い傾向にあります。
 なお、向上させたい能力等で最も割合の高かった、IT を使いこなす一般的な知識や能力は、前年の調査結果では、5 番目に高い能力等でした。福祉施設等でも業務効率化等のためのIT 化が進展し、こうした能力等を向上させたい人が増えていることがうかがえます。

 

※厚生労働省「令和3 年度能力開発基本調査」
2021 年(令和3 年)10 月1 日時点の状況について、全国7,064 事業所とそこに属している労働者19,728 人などを対象にした調査です。ここでの割合は、自信のある能力等がある割合および向上させたい能力がある割合を100 とした時の割合になります。データの詳細は次のURLのページから確認いただけます。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450451&tstat=000001031190&cycle=8&tclass1=000001166666&tclass2=000001166670&tclass3=000001166671&tclass4val=0

 

衛生委員会をより効果的な場にする ためのポイント

常時50 人以上の労働者を使用する事業場では、毎月1 回以上、衛生委員会を開催することが義務付けられていますが、衛生委員会を継続的に開催する中で、テーマに迷ったり、活性化させたいと感じることがあるかと思います。そこで、衛生委員会を活性化するためのポイントをとり上げます。

1. 年間計画の作成

 衛生委員会のテーマを効果的なものにするためには、事前に年間計画を作成することが考えられます。独立行政法人労働者健康安全機構のWEB サイトに紹介されている「衛生委員会活性化テキスト」の中では、月ごとのテーマ例として以下が紹介されています。 

  

 テーマは事業場ごとに適切なものにする必要がありますが、これを参考にして決めることが考えられます。

2. 衛生委員会の進め方

 衛生委員会を活性化するために、衛生委員会の進め方についても様々な工夫が必要になります。例えば、衛生委員会当日には、先月からの持ち越し事案を確認するとともに、毎月の定例報告事項として、労働災害等の発生状況、労働時間の状況、産業医による長時間労働者に対する面接指導の結果報告と巡視報告、衛生管理者からの報告をしてもらうこと等が挙げられます。
 その際、長時間労働者がいなかった場合は、「従業員全体に対する業務配分が適切にできている」ということを確認するきっかけとするとよいでしょう。
 衛生委員会のメンバーの役割は、それぞれの職場で発生している問題は何か、現場の状況を確認し、また職場の意見を集めることです。そのため、衛生委員会のメンバーへの委員会に対する参画の意識付けが重要になり、職場で意見を集めてから出席してもらうことで、衛生委員会の
メンバーからの発言も出やすくなるかもしれません。

 

テーマがマンネリ化している場合、難しく捉えすぎている可能性があります。職場がもっと快適になることを幅広くとらえ、例えば「昼の休憩時間にBGMを流して欲しい」「常備薬として用意して欲しいもの」等、身近な話題にすることで、従業員の職場満足度向上に繋がる効果的な場にしていきましょう。

 

 

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「能力の差は五倍、意識の差は百倍」

今日は、人材の育成で有名な

日本電産の社長永守重信氏の言葉

を紹介させて頂きたいと思います。

業界を問わず、人材育成の大切さ

を具体的に書かれたインタビューです。

ご覧ください。



■■□―――――――――――――――――――□■■

    「意識は能力を遙かに超える」

     永守重信(日本電産社長)

    ※『致知』1999年7月号
  特集「切に思うことは必ずとぐるなり」より

□□■―――――――――――――――――――■□□


――年中無休ということですが、
  一日のサイクルはどういうふうな日課ですか。

だいたい朝は5時50分に起きます。
そしてすぐにシャワーを浴びて、
6時から15分間ビジネスニュースを見ます。

それから食事をして、服を着て、
6時40分に迎えの車が来ます。
朝早いですからラッシュアワーにかからないので
6時55分には会社に着きます。
もう20分遅いと会社まで4、50分かかりますよ。

世の中、何故ラッシュアワーが起こるかというと、
9割の人が普通のことをしているからです。

わずか10分か15分普通より早く行動することで、
全然違う世界があるんです。
ところが人間ほとんどが一緒のことをするんですね。


――それがわかるか、わからないかの差であると。


そうです。

だからうちの社員にはよそよりも
10分早く来いと言います。
その10分を早く来られる人間は
世の中の10パーセントなんですね。


それが意識の差なんです。


人間の能力の差なんていうのは、
最大五倍くらいしかないですよ。


知能とか知識とか経験とかはね。


しかし意識の差は百倍あると私は言うんです。
それさえ頭に入れておけば、
どんな人間でも成功できる。


――ああ、能力の差は五倍だが、
  意識の差は百倍だと。


ええ。東京に出張したときのことです。

取引先の担当者に、繁盛しているという
ラーメン屋に連れていってもらったことがあります。

外観はごく普通のラーメン屋でしたが、
私たちが店の前に立った途端、
中にいた若い店員がぱーっと
入り口まで走ってきてドアを開け、
「いらっしゃいませ」と大きな声で挨拶をするんです。

そして席まで誘導してくれて、
私たちがラーメンを注文すると、
大きな声で調理場にオーダーを伝えてから、
人なつっこい顔で
「お客さんは関西から来られたのですか」
なんて話しかけてくる。

私たちと話している間も入り口に気を配って、
客が店の前に立つと飛んでいく。

ラーメンはごく普通で、
味で繁盛しているというわけではないんですね。


つまり、他店と同程度の料金で
五倍おいしいラーメンを作ったり、
五分の一のスピードでラーメンを
出すことはまず不可能です。

しかし店員の意識を変えることによって、
お客の気分を百倍よくすることは
それほど難しいことではない。


この店が繁盛しているのは、
ズバリ店員の意識の高さなんです。

おそらくこのラーメン屋の経営者は、
ラーメンの味にこだわる以上に
店員の意識改革にこだわっているのだと思います。


私の人材に対する考え方もこれとまったく同じです。

能力の高い人を採用するというよりも、
人並みの能力を持つ人材を採用して、
彼らの意識を高めることに全力を傾注します。


■■□―――――――――――――――――――□■■

いかがでしょうか?

人間力向上研修でもよく申し上げるのですが

人間の能力の差は、たいしたものでない、

それよりも、常に意識を磨き、高め

それを行動にしてゆくこと。

このちょっとしたものの積み重ねが

最終的には、人の心を打つ大きな

違いとなって「形」になってゆく

ような気がしています。


皆様のご参考になれば幸いです。

 

福祉・医療人材の人間力向上研修 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

Q、人事評価の項目は「一般的」「抽象的」な評価項目が多いため、評価が難しく、どうしても評価者の主観で評価してしまい、職員の納得が得られない。アドバイスをお願いします。

A、評価項目を具体的な「行動表現」にすることで、評価がより客観的になり、また職員の課題を具体的に指導できる。

評価することは非常に難しく、評価者訓練を受けないと評価は出来ないと言われています。しかしそれは、評価項目が抽象的で何を評価すればいいのかわからないという原因が考えられます。

評価を行う難しさには、①人によって評価が変わる ②評価項目が不明確なので評価する人も、される人もわかりにくい、さらに③誤評価の原因(ハロー効果、偏り傾向、寛大化など)評価するということに困難さが付きまとっています。例えば「協調性」という表現で終わってしまう評価項目の場合、何が協調性なのか評価者が判断しなければなりません。抽象的な表現は職員をいろいろな視点から評価できることになり有用ですが、評価の公平性や客観性からみるとかなり深い問題が含まれています。具体的な行動表現にすることで、だれでも同じ理解とすることが大切です。

 

【具体的行動表現の実例】

評価項目:「感謝の気持ちをもってご利用者、職員に接する」

を具体的な評価項目にした場合に、例えば下記のような例となります。

例1:ご利用者や職場の仲間に感謝の気持ちで接することが出来、「○○さんのおかげです」や「ありがとう」が素直に笑顔で言える。

例2:ご家族様や見学、来訪者の目を見て、笑顔でお名前を添えて「ありがとうございます」と伝えている。

例3:他部署等の協力や理解があって自分が仕事ができる事に感謝して、相手の状態を配慮し、「お手伝いしましょうか」「何か私にできる事はないですか」と声掛けしている。

①医療分野キャリアパス

 クリニック人事サポートパック(評価制度、賃金制度の作成) | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

②介護分野キャリアパス

 処遇改善加算対応キャリアパス構築コンサルティング | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

③保育園のキャリアパス

 保育士キャリアアップの仕組みサポートパック | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

福祉・医療向け人事評価コンサルティング | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

Q、事務処理時間の簡便化のために、特定職員の残業代を定額支給にしていますが、職員から実際の残業にみあった金額が支給されているのか疑問の声が上がっています。医師の給与についても残業代を含めた年俸制で支給していますが、現状に何か問題があるでしょうか。

A, 残業代の定額支給は法令違反を招きやすいだけでなく、長時間労働の温床にもなりやすいものです。医師の年俸制の問題も、労働時間の管理方法とともに見直すべき課題の一つです。

サービス残業が発生してしまう要因の一つに、「固定残業代」の問題があります。例えば、月給30万円、40時間分の残業代を含む、というように、割増残業を毎月定額手当として支給するもので、労働基準法上認められた制度です。

固定残業代は本来、事務処理の簡便化のために認められた制度です。残業時間がゼロの人にも40時間分まるまる支給されるため、仕事のできる人と、できない人の不公平感をなくす意味もありました。しかし、定額40時間分を超えた労働時間分は、割増分を支払うことになるため、定額支給にしたところで労働時間を把握する必要があり、それほどのメリットのある制度ではありません。結果的に50時間残業しても40時間の定額分しか支給されないなどサービス残業の温床になっています。

事務スタッフの少ない医療機関でも導入しているケースがありますが、「ダラダラ残業を招く」といった弊害を招くこともあります。

 例えばある整形外科病院では、理学療法士に対して、残業代を30時間の定額制で支給していました。ところが、残業をした時間分だけ支給額が増える本来のやり方ではないので、

残業時間に関する意識が薄れ、中には「どうせ残業代がでないから」と間違った認識でダラダラと居残る職員が増えてしまいました。そのためこの病院では固定残業代を廃止して、タイムカードと時間外勤務申請を併用して厳格に労働時間を管理する方法に改めました。結果的に、固定残業を廃止したことで、残業時間は15時間ほどに半減したといいます。

 残業代の定額支給の問題は、高額の年俸制で支給される医師の給与でもたびたび問題視されます。最近、医師の年俸に残業代が含まれているかが争われた裁判では、最高裁は「含まれていない」と判示したケースもあります(H2977日)「残業代と基本給を区別できない場合には残業代が支払われたとはいえない」として無効と判断されました。

 この最高裁判決は、残業代の区分が不明確な給与の支払い方法は例外なく認められないとの立場を鮮明にし、労働基準法の立場を遵守するよう管理者に求めたもので、医師の労務管理にも少なからず影響を与えそうです。

 

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医療現場の接遇ワンポイント講座 「〇〇様(患者様) だけではなく・・」

医療事務のアイさんは、取引先である A 製薬会社の担当者様に
対して、とてもフレンドリーな口調で電話応対をしていました。


患者様である真井様との会話とは、随分違うようです。


接遇とは、患者様だけが相手であると思い込んでしまってい
るならば、真に接遇を理解しているとはいえません。職場におい
て、患者様以外への接遇を考えてみましょう。

取引先に対して
 丁寧な言葉で、迅速に対応をしていますか?
…頻繁に顔を合わせる業者さんだからといって、アイさんのような会話を
していると、気持ちの上でも友達感覚になります。また、業者さんだか
ら待たせて当然ではいけません。気を引き締めて対応しましょう。

仲間に対して
 共に仕事をする仲間に、笑顔で気持ちのよい対応をしていますか?
…スタッフ同士の人間関係がよくない場合、なんとなく雰囲気や仕事の効
率という視点で患者様にも影響がでてしまうのです。仕事ですから、互
いに気持ちよく効率的な仕事ができるようにコミュニケーションを図り
ましょう。


 好き嫌いで仕事をしていませんか?
…仕事中は、プライベートな感情で仕事をしていてはいけません。苦手な
人や苦手な仕事に自ら飛び込んでいき、上手くいくように努めることが
必要です。

経営者(院長先生等)に対して
 ここで働く機会をいただけたことに感謝していますか?
…自分が今ここにあることを感謝し、仕事を通して期待に精一杯応える姿
勢を持ちましょう。

自分に対して
 自分を思いやり、日々ベストを尽くし、今日より明日、さらに成長でき
るように日々努めていますか?

 


…“自分を思いやる”ということは、自分を甘やかすことではありません。
自分を信じて、持てる力のすべてを発揮しましょう。

いつどんなときも“自分の持てる力のすべてを発揮する”、こ
れが取引先への接遇、仲間への接遇、経営者への接遇、自分への
接遇、何より患者様への接遇にも繋がるのです。皆様の力を周り
の人のために発揮しましょう。

 

 

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休職で退職した場合の基本手当の受給と延長申請

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。

総務部長
以前から病気で休職している従業員がいます。このまま病気が治らないと、1ヶ月後には休職期間が満了し退職になる予定ですが、復職は難しいのではないかと考えています。
社労士                                                                                                                        そうですか。休職期間満了に関する説明はされましたか?
総務部長                                                                                                                                                はい、少し前に体調を確認するとともに、就業規則の内容を伝えました。優秀な従業員なので復職を期待しましたが、残念な結果となりそうです。その際、退職後の社会保険について尋ねられました。特に収入がなくなるので、雇用保険の失業手当(基本手当)を受給したいと考えているようです。
社労士                                                                                                                        確かに退職後の収入に関する不安は尽きませんね。雇用保険の基本手当が受けられる加入状況であることを前提にお話しさせていただくと、離職票(離職証明書)を発行し、基本手当を受給する権利があります。
総務部長                                                                                                                                             通常通り手続きを進めればよいということですね。
社労士                                                                                                                      はい、離職理由は「休職期間の満了」となりますのでご注意ください。退職後の給付についてですが、まず、基本手当が一定の期間受給できないという「給付制限」は設けられません。ただし、退職後もしばらくは働くことができないと推測されますので、受給期間の延長の申請をされた方がよいと思います。
総務部長                                                                                                                                                                  受給期間の延長ですか?
社労士                                                                                                                       はい。通常の基本手当の受給期間は退職日の翌日から1 年間です。つまり、1 年間で基本手当の全日数を受給し終わらないと、受給する権利がなくなります。基本手当は働く意思と能力があることが前提になっているので、病気で働けない状態が続くのであれば手続きをしておくことをお勧めします。
総務部長                                                                                                                                              なるほど。離職票を渡すときに、ハローワークですぐに延長の手続きをした方がよいということを伝えればよいですか?
社労士                                                                                                                          延長の手続きができるのは退職日の翌日から30 日経過した後になります。延長することで、本来の1 年に加え、最長3 年の期間が追加されます。手続きはなるべく早くすることをお勧めしますが、延長された期間の最後の日までであれば可能です。
総務部長                                                                                                                                              なるほど。本人はすぐに基本手当をもらわないと受給できなくなると思っているようですので、例えばいま受給している傷病手当金を受け取りつつ、基本手当は延長するという選択ができそうですね。
社労士                                                                                                                      そうですね。働くことができない状況であれば、いずれにしても基本手当は受給できないので、おっしゃるような方法で治療に専念されるのがよいのではないかと思います。

 

ONE POINT
 ①雇用保険の基本手当は、原則として1 年以内に受給しなければ、受給する権利がなくなる。
 ②受給期間の延長の手続きは退職日の翌日から30 日経過後に行う。

 

アルコールチェックの義務化と直行・ 直帰時等の取扱い

2022 年4 月より、業務上、自動車を使用する一定の企業に、運転前後のアルコールチェックの実施が義務付けられました。10 月からは、このアルコールチェックをアルコール検知器(以下、「検知器」という)により行うことになっていましたが、検知器の供給状況等から、この10 月の施行は当分の間、見送られる予定です。

1. 義務化されたアルコールチェック

乗車定員が11 名以上の自動車を1 台以上使用している事業所、その他の自動車を5 台以上(自動二輪車は、原動機付自転車は除き1台を0. 5 台で計算)使用する事業所では、安全運転管理者を選任することが義務付けられています。この安全運転管理者の業務は、交通安全教育や運行計画の作成、運転日誌の備付け等、多岐にわたりますが、2022 年4 月からは、酒気帯びの有無の確認と記録の保存が追加されました。追加された内容は以下のとおりです。
①運転前後の運転者に対し、その運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること
②酒気帯びの有無を記録し、記録を1年間保存すること
なお、10 月からは、上記の①の確認を、国家公安委員会が定める検知器を用いて行うことになっていましたが、検知器の供給状況等を踏まえ、当分の間、その義務化に係る規定を適用しないこととする内閣府令案が示されています(2022 年8 月10 日現在未公布)。

2. 直行・直帰等の取扱い

4月より始まったアルコールチェックを運用するにあたって、直行・直帰する場合や、出張で社有車を使用する場合のチェック方法が問題になります。これに関して、対面による酒気帯び確認が困難な場合は、これに準ずる方法で実施することになっており、例えば以下のように、対面による確認と同視できるような方法が挙げられています。
①カメラ、モニター等によって安全運転管理者が運転者の顔色、応答の声の調子等とともに、検知器による測定結果を確認する
②携帯電話等により運転者と直接対話により、安全運転管理者が運転者の応答の声の調子等を確認するとともに、検知器による測定結果を報告させる
※検知器による測定結果の報告は検知器を用いることが義務化された後に実施が義務となる
直行・直帰等のある場合には事前にその方法を定めておくとともに、検知器でのチェックが義務化された際には、個別に手配も必要になることがあります。

 

安全運転管理者が不在の場合は、副安全運転管理者や安全運転管理者の業務を補助する者が酒気帯び確認を行うことになっています。検知器でのアルコールチェックは見送られる予定ですが、酒気帯びの有無の確認とその記録の保管は必要です。この機会に運用上の問題があれば改善しましょう。

 

産後パパ育休と育児休業との違いと産後パパ育休に係る労使協定

2022 年10 月1日に改正育児・介護休業法が施行され、出生時育児休業(産後パパ育休)制度が始まります。産後パパ育休と子どもが1歳に達するまでの育児休業には違いがあることから、以下ではその違いを対比した上で、産後パパ育休に関連して締結の検討が必要な労使協定について確認します。

1. 産後パパ育休と育児休業の違い

産後パパ育休と育児休業の主な違いは下表のとおりです。多くの項目で違いがありますが、最大の違いは、労使協定を締結することで休業中に就業できることでしょう。その他、申出期限は原則2 週間前までですが、労使協定を締結することで最長1ヶ月前とすることができます。

 

2. 労使協定の締結

産後パパ育休に係る労使協定の協定事項については、1. で確認した2 つの項目以外にも、産後パパ育休を取得できる従業員の範囲があります。労使協定を締結することにより、以下の従業員からの申出を拒むことができます。
①入社1 年未満の従業員
②申出の日から8 週間以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
③週の所定労働日数が2 日以下の従業員

今後、子どもの出生後8 週以内の男性の育児休業は、産後パパ育休としても、育児休業としても取得でき、その選択は従業員の自由とされています。よって、どちらとするか不明確な申出があった場合には、会社から従業員に確認することになります。今回の改正で従業員の育児休業の取得方法の選択肢は増えることになりますので、わかりやすく説明するようにしましょう。

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