コラム
《 山際大志郎担当相(2021年11月撮影)》
政府は3日、介護職員らの賃上げの具体的な方策を話し合う公的価格評価検討委員会を開催した。
今後の論点として、既存の施策の重要な柱となっている「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」に言及。「賃上げの実行性の担保、経験・技能のある介護職員への重点化など、現行の制度をどう評価するか。見直すべき点はないか」と投げかけ、今の仕組みを再考する構えをみせた。今後の介護報酬改定をめぐる議論では、この加算のあり方が再び大きな焦点となる見通しだ。
政府は来年2月からの月額9000円ほどの賃上げを、全額公費の交付金によって実現する方針。ただこれは来年9月までとしており、10月以降の代替措置のスキームはこれから決定する。介護報酬に織り込む案が有力視されているが、交付金のまま継続すべきと主張する関係者もいる。
内閣府の担当者はこの日の会合後、「年末に向けた予算編成過程で大枠の方向性を固める」と説明。後藤茂之厚生労働相は閣議後会見で、「仮に介護報酬改定で対応することになった場合、具体的な内容は年明け以降の社会保障審議会・介護給付費分科会で議論してもらうことになる」と述べた。
政府は今回の検討委で、介護職らの賃上げをめぐって処遇改善加算の他に以下の論点を提示した。
○ 今後の賃上げの目標をどう考えるか。
○ 賃上げの目標を議論するにあたり、職種間の均衡をどのように考慮するか。労働時間や勤続年数などの要素も考慮すべきか。
○ 労働分配率の引き上げについてどう考えるか。
○ 介護報酬を引き上げる場合、利用者負担や保険料負担も同時に上がることをどう考えるか。
○ 賃上げにつながる他の政策手法(社会福祉法人の社会福祉充実財産の活用、経験・技能に応じた処遇ルールの明確化など)は考えられないか。
○ 賃上げに必要な財源をどう確保するのか。
政府は今後も引き続き関係者との調整を重ねていく。年内にこれらの結論を盛り込んだ中間報告をまとめる考えだ。(出典介護ニュース)
介護職らの賃上げの具体的な方策を話し合う「公的価格評価検討委員会」の3日の会合 − 。日本介護支援専門員協会は意見書を提出し、居宅介護支援のケアマネジャーなどを対象に含めるよう政府に改めて強く求めた。
協会は意見書で、居宅のケアマネが地域で幅広い役割を担って高齢者やその家族らを支えている実情を伝えつつ、「業務が拡大している中で人材確保は深刻な状況」と問題を提起。「その一因として業務量と賃金の不均衡は言われてきている。一部の年齢階層では、無資格者を含む介護職員との賃金の逆転現象も既に起きている」と指摘した。
そのうえで、「居宅介護支援や地域包括支援センターをはじめ、各種の事業所・施設に勤務する介護支援専門員、主任介護支援専門員が、社会的な役割に見合った評価を得られる環境作りが必要」と主張。賃上げの対象に含めるよう重ねて要請した。
政府は来年2月から9月まで、全額国費の交付金によって介護職の給与を月額9000円ほど引き上げる方針。現在、この対象から居宅のケアマネなどを除外する方向で調整を進めている。来年10月以降については、介護報酬改定など代替措置の実施によって賃上げの効果を維持する計画だが、そのスキームはまだ決定していない。日本介護支援専門員協会のほか、全国老人福祉施設協議会や全国介護事業者連盟など多くの団体が、ケアマネらを除外しないよう働きかけている。(出典介護ニュース)
《 後藤茂之厚労相(2021年10月撮影)》
後藤茂之厚生労働相は3日の閣議後会見で、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染者が国内で発見されたことを受けて、基本的な感染防止策への協力を改めて要請した。後藤厚労相は会見で、「オミクロン株の性質を見極める十分な情報はまだない。感染力や重症化リスク、ワクチン・治療薬の効果などを注視していく」と説明。「国内の発生動向を観察し、適切に感染防止策を行っていくことが重要」とした。そのうえで広く国民に対し、「変異株であっても従来と同様に3密の回避、マスクの着用、手洗いなどの徹底が推奨される。引き続き基本的な感染防止策への協力をお願いしたい」と呼びかけた。(出典 介護ニュース)
3 歳未満の子どもを養育するときの年金の特例と添付書類の省略
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。
総務部長
先日、男性の従業員が、育児参加として、子育てに携わる時間を確保するため、仕事の時間を制限すると、収入面で心配になると言っていました。公的な支援として何かあるのでしょうか。
社労士 生産性を上げることにより、勤務時間が短くなっても給与の絶対額が下がらないようにするということが理想ですが、なかなか難しいですよね。公的な支援としては、出産手当金や育児休業給付金といった給付が中心になりますが、産前産後休業期間中や、育児休業期間中には社会保険料の免除、育児(養育)期間中の将来の年金額に関する特例が設けられています。
総務部長 将来の年金額の特例もあるのですね。
社労士 将来受給する厚生年金は、被保険者であったときの標準報酬月額を基にして受給額が決まります。そのため、一般的には給与額が下がると年金の受給額も下がります。養育期間(子どもが3 歳になるまでの期間)で標準報酬月額が下がったときであっても、将来の年金額の計算では下がらないようにするものが「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」です。様式の名称から「養育特例」と呼ばれています。
総務部長 どのような制度ですか。
社労士 厚生年金保険料は実際の給与額に基づく標準報酬月額から計算する一方で、将来の年金は養育前の標準報酬月額で計算するというものです。養育特例の申出には、養育する子どもが、従業員の3 歳未満の子どもであることの証明となる「戸籍謄(抄)本、または戸籍記載事項証明書(以下、「戸籍謄本等」という)」と、養育の前提である同居していることを確認する証明として「住民票の写し」の2 つの原本が必要になります。ただし、10 月から従業員の個人番号(マイナンバー)と子どものマイナンバーの両方を様式に記載することで、住民票の写しの原本は添付不要となりました。
総務部長 そうでしたか。でも、なぜ戸籍謄本等は添付を続ける必要があるのですか。
社労士 住民票の情報はマイナンバーに紐づけられていますが、戸籍の情報は今のところ紐づけられていないので、マイナンバーを記載しても確認できないということなのでしょう。今後、紐づけられる可能性もあるので、情報を確認していくことになりますね。
総務部長 ありがとうございます。従業員に周知するとともに、今後の情報をしっかり確認するようにします。
ONE POINT ① 3歳未満の子どもを養育する従業員は、申出をすることで養育期間前の標準報酬月額で計算した年金を受給できる特例が設けられている(養育特例)。
② 養育特例の申出に従業員とその子どものマイナンバーを記載することで、住民票の写しの原本の添付が不要となった。
3 歳未満の子どもを養育するときの年金の特例と添付書類の省略
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。
総務部長
先日、男性の従業員が、育児参加として、子育てに携わる時間を確保するため、仕事の時間を制限すると、収入面で心配になると言っていました。公的な支援として何かあるのでしょうか。
社労士 生産性を上げることにより、勤務時間が短くなっても給与の絶対額が下がらないようにするということが理想ですが、なかなか難しいですよね。公的な支援としては、出産手当金や育児休業給付金といった給付が中心になりますが、産前産後休業期間中や、育児休業期間中には社会保険料の免除、育児(養育)期間中の将来の年金額に関する特例が設けられています。
総務部長 将来の年金額の特例もあるのですね。
社労士 将来受給する厚生年金は、被保険者であったときの標準報酬月額を基にして受給額が決まります。そのため、一般的には給与額が下がると年金の受給額も下がります。養育期間(子どもが3 歳になるまでの期間)で標準報酬月額が下がったときであっても、将来の年金額の計算では下がらないようにするものが「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」です。様式の名称から「養育特例」と呼ばれています。
総務部長 どのような制度ですか。
社労士 厚生年金保険料は実際の給与額に基づく標準報酬月額から計算する一方で、将来の年金は養育前の標準報酬月額で計算するというものです。養育特例の申出には、養育する子どもが、従業員の3 歳未満の子どもであることの証明となる「戸籍謄(抄)本、または戸籍記載事項証明書(以下、「戸籍謄本等」という)」と、養育の前提である同居していることを確認する証明として「住民票の写し」の2 つの原本が必要になります。ただし、10 月から従業員の個人番号(マイナンバー)と子どものマイナンバーの両方を様式に記載することで、住民票の写しの原本は添付不要となりました。
総務部長 そうでしたか。でも、なぜ戸籍謄本等は添付を続ける必要があるのですか。
社労士 住民票の情報はマイナンバーに紐づけられていますが、戸籍の情報は今のところ紐づけられていないので、マイナンバーを記載しても確認できないということなのでしょう。今後、紐づけられる可能性もあるので、情報を確認していくことになりますね。
総務部長 ありがとうございます。従業員に周知するとともに、今後の情報をしっかり確認するようにします。
ONE POINT ① 3歳未満の子どもを養育する従業員は、申出をすることで養育期間前の標準報酬月額で計算した年金を受給できる特例が設けられている(養育特例)。
② 養育特例の申出に従業員とその子どものマイナンバーを記載することで、住民票の写しの原本の添付が不要となった。
3 歳未満の子どもを養育するときの年金の特例と添付書類の省略
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。
総務部長
先日、男性の従業員が、育児参加として、子育てに携わる時間を確保するため、仕事の時間を制限すると、収入面で心配になると言っていました。公的な支援として何かあるのでしょうか。
社労士 生産性を上げることにより、勤務時間が短くなっても給与の絶対額が下がらないようにするということが理想ですが、なかなか難しいですよね。公的な支援としては、出産手当金や育児休業給付金といった給付が中心になりますが、産前産後休業期間中や、育児休業期間中には社会保険料の免除、育児(養育)期間中の将来の年金額に関する特例が設けられています。
総務部長 将来の年金額の特例もあるのですね。
社労士 将来受給する厚生年金は、被保険者であったときの標準報酬月額を基にして受給額が決まります。そのため、一般的には給与額が下がると年金の受給額も下がります。養育期間(子どもが3 歳になるまでの期間)で標準報酬月額が下がったときであっても、将来の年金額の計算では下がらないようにするものが「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」です。様式の名称から「養育特例」と呼ばれています。
総務部長 どのような制度ですか。
社労士 厚生年金保険料は実際の給与額に基づく標準報酬月額から計算する一方で、将来の年金は養育前の標準報酬月額で計算するというものです。養育特例の申出には、養育する子どもが、従業員の3 歳未満の子どもであることの証明となる「戸籍謄(抄)本、または戸籍記載事項証明書(以下、「戸籍謄本等」という)」と、養育の前提である同居していることを確認する証明として「住民票の写し」の2 つの原本が必要になります。ただし、10 月から従業員の個人番号(マイナンバー)と子どものマイナンバーの両方を様式に記載することで、住民票の写しの原本は添付不要となりました。
総務部長 そうでしたか。でも、なぜ戸籍謄本等は添付を続ける必要があるのですか。
社労士 住民票の情報はマイナンバーに紐づけられていますが、戸籍の情報は今のところ紐づけられていないので、マイナンバーを記載しても確認できないということなのでしょう。今後、紐づけられる可能性もあるので、情報を確認していくことになりますね。
総務部長 ありがとうございます。従業員に周知するとともに、今後の情報をしっかり確認するようにします。
ONE POINT ① 3歳未満の子どもを養育する従業員は、申出をすることで養育期間前の標準報酬月額で計算した年金を受給できる特例が設けられている(養育特例)。
② 養育特例の申出に従業員とその子どものマイナンバーを記載することで、住民票の写しの原本の添付が不要となった。
65 歳以上複数就業者の雇用保険マルチジョブホルダー制度
雇用保険では、主たる事業所で1 週間の所定労働時間が20 時間以上、かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たした場合に被保険者となります。兼業・副業が普及する中、複数の事業所で働く労働者が増加している状況に対応するため、2022 年1月から「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設され、まずは65 歳以上の労働者に対し適用されることになりました。
1.マルチジョブホルダー制度
雇用保険マルチジョブホルダー制度は、1 つの事業所では雇用保険の適用要件は満たさないものの、2 つの事業所での勤務を合計して次の要件をすべて満たす場合に、特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
■適用要件
• 複数の事業所に雇用される65 歳以上の労働者であること
• 2 つの事業所(1 つの事業所における1 週間の所定労働時間が5 時間以上20 時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20 時間以上であること
• 2 つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
なお、申出の日に被保険者資格を取得し、要件を満たさなくなった日に資格を喪失します。さらに、いったん被保険者となった後は、任意脱退はできません。
2. 取得手続き等の流れ
通常の雇用保険資格の取得・喪失手続きは、事業主が行いますが、マルチジョブホルダー制度は、マルチ高年齢被保険者としての適用を希望する労働者本人が手続きを行います。
事業主は、労働者本人から手続きに必要な雇用の事実や所定労働時間等の証明を求められたときに、その証明を行います。この証明に基づき、労働者本人が適用を受ける2 つの事業所の必要書類を揃えてハローワークに申し出ます。
ハローワークでは申出の内容を確認し、取得手続きを行ったうえで、労働者本人および適用となった2 つ事業所に通知します。事業主はこの通知に基づき、給与から雇用保険料の控除をし、年度更新において雇用保険料を納付します。
ちなみに、マルチ高年齢被保険者が失業した場合で一定の要件を満たしたときは、被保険者であった期間に応じ、基本手当日額の30 日分または50 日分の一時金として高年齢求職者給付金を受給することができます。
マルチ高年齢被保険者は労働者の希望に基づき適用するためのものであり、また、現状では65 歳以上の労働者に限られているため、被保険者となる対象者は限定的であると思われます。
しかし、適用要件を満たした従業員が手続きを行うことで、ハローワークから会社に対して資格取得の通知が来るため、制度の概要は押さえておきましょう。
65 歳以上複数就業者の雇用保険マルチジョブホルダー制度
雇用保険では、主たる事業所で1 週間の所定労働時間が20 時間以上、かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たした場合に被保険者となります。兼業・副業が普及する中、複数の事業所で働く労働者が増加している状況に対応するため、2022 年1月から「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設され、まずは65 歳以上の労働者に対し適用されることになりました。
1.マルチジョブホルダー制度
雇用保険マルチジョブホルダー制度は、1 つの事業所では雇用保険の適用要件は満たさないものの、2 つの事業所での勤務を合計して次の要件をすべて満たす場合に、特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
■適用要件
• 複数の事業所に雇用される65 歳以上の労働者であること
• 2 つの事業所(1 つの事業所における1 週間の所定労働時間が5 時間以上20 時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20 時間以上であること
• 2 つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
なお、申出の日に被保険者資格を取得し、要件を満たさなくなった日に資格を喪失します。さらに、いったん被保険者となった後は、任意脱退はできません。
2. 取得手続き等の流れ
通常の雇用保険資格の取得・喪失手続きは、事業主が行いますが、マルチジョブホルダー制度は、マルチ高年齢被保険者としての適用を希望する労働者本人が手続きを行います。
事業主は、労働者本人から手続きに必要な雇用の事実や所定労働時間等の証明を求められたときに、その証明を行います。この証明に基づき、労働者本人が適用を受ける2 つの事業所の必要書類を揃えてハローワークに申し出ます。
ハローワークでは申出の内容を確認し、取得手続きを行ったうえで、労働者本人および適用となった2 つ事業所に通知します。事業主はこの通知に基づき、給与から雇用保険料の控除をし、年度更新において雇用保険料を納付します。
ちなみに、マルチ高年齢被保険者が失業した場合で一定の要件を満たしたときは、被保険者であった期間に応じ、基本手当日額の30 日分または50 日分の一時金として高年齢求職者給付金を受給することができます。
マルチ高年齢被保険者は労働者の希望に基づき適用するためのものであり、また、現状では65 歳以上の労働者に限られているため、被保険者となる対象者は限定的であると思われます。
しかし、適用要件を満たした従業員が手続きを行うことで、ハローワークから会社に対して資格取得の通知が来るため、制度の概要は押さえておきましょう。
65 歳以上複数就業者の雇用保険マルチジョブホルダー制度
雇用保険では、主たる事業所で1 週間の所定労働時間が20 時間以上、かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たした場合に被保険者となります。兼業・副業が普及する中、複数の事業所で働く労働者が増加している状況に対応するため、2022 年1月から「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設され、まずは65 歳以上の労働者に対し適用されることになりました。
1.マルチジョブホルダー制度
雇用保険マルチジョブホルダー制度は、1 つの事業所では雇用保険の適用要件は満たさないものの、2 つの事業所での勤務を合計して次の要件をすべて満たす場合に、特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
■適用要件
• 複数の事業所に雇用される65 歳以上の労働者であること
• 2 つの事業所(1 つの事業所における1 週間の所定労働時間が5 時間以上20 時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20 時間以上であること
• 2 つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
なお、申出の日に被保険者資格を取得し、要件を満たさなくなった日に資格を喪失します。さらに、いったん被保険者となった後は、任意脱退はできません。
2. 取得手続き等の流れ
通常の雇用保険資格の取得・喪失手続きは、事業主が行いますが、マルチジョブホルダー制度は、マルチ高年齢被保険者としての適用を希望する労働者本人が手続きを行います。
事業主は、労働者本人から手続きに必要な雇用の事実や所定労働時間等の証明を求められたときに、その証明を行います。この証明に基づき、労働者本人が適用を受ける2 つの事業所の必要書類を揃えてハローワークに申し出ます。
ハローワークでは申出の内容を確認し、取得手続きを行ったうえで、労働者本人および適用となった2 つ事業所に通知します。事業主はこの通知に基づき、給与から雇用保険料の控除をし、年度更新において雇用保険料を納付します。
ちなみに、マルチ高年齢被保険者が失業した場合で一定の要件を満たしたときは、被保険者であった期間に応じ、基本手当日額の30 日分または50 日分の一時金として高年齢求職者給付金を受給することができます。
マルチ高年齢被保険者は労働者の希望に基づき適用するためのものであり、また、現状では65 歳以上の労働者に限られているため、被保険者となる対象者は限定的であると思われます。
しかし、適用要件を満たした従業員が手続きを行うことで、ハローワークから会社に対して資格取得の通知が来るため、制度の概要は押さえておきましょう。
2022 年4 月より中小企業で義務化となるパワハラ防止措置
職場におけるパワーハラスメント(以下、「パワハラ」という)の防止措置が2022 年4 月より、中小企業についても義務化されます。そこで、厚生労働省が職場におけるパワハラの実態を調査した結果と、実施すべき防止措置の内容をとり上げます。
1. パワハラの実態調査の内容
2020 年10 月に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3 年間にパワハラを受けたことがあると回答した労働者は31. 4%でした。また、受けたパワハラの内容としては、以下のとおりです。
• 精神的な攻撃 49.4%
• 過大な要求 33.3%
• 個の侵害 24.0%
• 過小な要求 21.2%
• 人間関係からの切り離し 20.5%
• 身体的な攻撃 5.8%
• その他 3.9%
男女別でみてみると、「過大な要求」の割合は男性の方が女性より高く、「人間関係からの切り離し」や「個の侵害」の割合は女性の方が男性より高くなっています。
2. 実施が義務付けられる 防止措置
今回の法改正により、企業がパワハラを防止するために講ずべき措置として次の4 つが義務付けられています。
① 事業主の方針の明確化とその周知・啓発
パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、パワハラの行為者には懲戒処分等の対象になることを就業規則等に定め、従業員に周知する。
② 相談に応じて適切に対応するために必要な体制の整備
相談窓口を定め、従業員に周知し、相談窓口担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにする。
③ パワハラへの事後の迅速かつ適切な対応
事実関係を迅速かつ正確に把握するとともに、事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置および行為者に対する措置を適正に行う。また、再発防止に向けた措置を講ずる。
④ 併せて講ずべき措置
プライバシーを保護し、不利益な取扱いがされないこと等を定め、従業員に周知する。
これらの防止措置は中小企業でもすでに努力義務になっていますが、2022 年4 月からは措置義務となります。措置を講じていないものがあれば早めに準備を進めましょう。
今回の法改正で、従業員の責務として、ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の従業員( 取引先等の他社の従業員や、求職者も含む) に対する言動に注意を払うことや、会社が講じる雇用管理上の措置に協力することが法律上明確化されました。今後、パワハラ防止研修を行うこと等により、パワハラの予防に向けた取組みが求められます。