コラム

医療事業所様向け情報(経営)9月号③

医療機関でみられる人事労務Q&A
『職員が退職する際の業務引継ぎと年次有給休暇の取得』

Q:

先日、職員から1 ヶ月後に退職したいと申し出がありました。その職員には重要な業務を任せていたので、後任への引継ぎを確実に行ってもらう必要がありますが、残りの年次有給休暇(以下、年休)をすべて取得してから退職したいという希望が出ています。年休を取得することによって、後任への引継ぎが終えられない事態となる場合、年休の取得を拒否することはできるでしょうか。

A:

医院には、年休取得時期を変更できる権利がありますが、退職日までまとめて年休を取得し、退職日以降に変更する出勤日がない場合、本人からの年休取得を拒否することはできません。よって、まずは退職日が変更できないか、年休を取得しながら引継ぎに協力してもらえないか、など職員と十分話し合いましょう。また、こうした事態を避けるためにも、重要な業務を分担できる体制を整備する、日頃から年休の取得促進をはかる、などの対策を講じておくことが重要です。

詳細解説:

1.退職日までの年休取得

日常的に年休を取得しない職員のなかには、年休が数十日も残っているというケースが少なくありません。医院には、事業の正常な運営を妨げる場合、年休取得日を変更できる「時季変更権」がありますが、退職時にまとめて年休を取得するケースでは、変更する出勤日がないため、時季変更権を行使することはできません。

そのため、まずは退職日を変更できないか本人と話し合いを行い、可能であれば、引継ぎをしながら、並行して本人の希望する範囲で年休を取得してもらうようにします。

2.退職時に引継ぎを確実に行ってもらうために

就業規則等へ「1 ヶ月前までに退職の申し出をすること」と規定している医院が多いと思いますが、年休の残日数の多い職員の退職や、1 ヶ月に1 回しか実施しない業務の引継ぎがあると、十分な引継ぎが実施できないことがあります。退職の申し出は、自身の業務内容や年休取得の予定を考慮して、場合によっては1 ヶ月前より前に行うよう、あらかじめ職員に周知しておきましょう。

また、特定の人にしかわからない業務を作らない体制や、業務内容や作業手順がわかるようなマニュアルを整備しておくなど、業務の属人化を回避し、急な引継ぎとなった場合であっても、滞りなく進められるよう、日頃から対策を講じておくことが重要です。

 

職員の退職時に引継ぎを確実に行ってもらわないと、後任担当者が困ることになり、ひいては患者様へ悪影響を及ぼすことになりかねません。職員それぞれに事情があるため、やむを得ず急な退職の申し出となる場合もありますが、業務に支障が出ないよう確実に引継ぎを行いながら、本人の希望する年休取得ができるような職場づくりが求められます。

(来月に続く)

介護事業所様向け情報(経営)9月号③

福祉施設でみられる人事労務Q&A
『職員が退職する際の業務引継ぎと年次有給休暇の取得』

Q:

先日、職員から1 ヶ月後に退職したいと申し出がありました。その職員には重要な業務を任せていたので、後任への引継ぎを確実に行ってもらう必要がありますが、残りの年次有給休暇(以下、年休)をすべて取得してから退職したいという希望が出ています。年休を取得することによって、後任への引継ぎが終えられない事態となる場合、年休の取得を拒否することはできるでしょうか。

A:

施設には、年休取得時期を変更できる権利がありますが、退職日までまとめて年休を取得し、退職日以降に変更する出勤日がない場合、本人からの年休取得を拒否することはできません。よって、まずは退職日が変更できないか、年休を取得しながら引継ぎに協力してもらえないか、など職員と十分話し合いましょう。また、こうした事態を避けるためにも、重要な業務を分担できる体制を整備する、日頃から年休の取得促進をはかる、などの対策を講じておくことが重要です。

詳細解説:

1.退職日までの年休取得

日常的に年休を取得しない職員のなかには、年休が数十日も残っているというケースが少なくありません。施設には、事業の正常な運営を妨げる場合、年休取得日を変更できる「時季変更権」がありますが、退職時にまとめて年休を取得するケースでは、変更する出勤日がないため、時季変更権を行使することはできません。

そのため、まずは退職日を変更できないか本人と話し合いを行い、可能であれば、引継ぎをしながら、並行して本人の希望する範囲で年休を取得してもらうようにします。

2.退職時に引継ぎを確実に行ってもらうために

就業規則等へ「1 ヶ月前までに退職の申し出をすること」と規定している施設が多いと思いますが、年休の残日数の多い職員の退職や、1 ヶ月に1 回しか実施しない業務の引継ぎがあると、十分な引継ぎが実施できないことがあります。退職の申し出は、自身の業務内容や年休取得の予定を考慮して、場合によっては1 ヶ月前より前に行うよう、あらかじめ職員に周知しておきましょう。

また、特定の人にしかわからない業務を作らない体制や、業務内容や作業手順がわかるようなマニュアルを整備しておくなど、業務の属人化を回避し、急な引継ぎとなった場合であっても、滞りなく進められるよう、日頃から対策を講じておくことが重要です。

 

職員の退職時に引継ぎを確実に行ってもらわないと、後任担当者が困ることになり、ひいては利用者様へ悪影響を及ぼすことになりかねません。職員それぞれに事情があるため、やむを得ず急な退職の申し出となる場合もありますが、業務に支障が出ないよう確実に引継ぎを行いながら、本人の希望する年休取得ができるような職場づくりが求められます。

(来月に続く)

医療事業所様向け情報(経営)9月号②

医療法人1 法人あたりの交際費等支出額

令和2 年度税制改正で、交際費等の損金不算入制度の適用期限が2 年延長されました。ここでは、今年5 月に発表された国税庁の「会社標本調査※」の最新版などから、直近3 年度分の医療法人1法人あたり年間の交際費等支出額の推移をご紹介します。

利益計上法人の平均は210 万円台に

上記調査結果から、直近3 年度分の医療法人1 法人あたり年間の交際費等支出額を、資本金階級別にまとめると、右表のとおりです。

利益計上法人の資本金階級計は210 万円台で推移しており、3 年間の平均は213.2 万円となりました。

最新版の2018 年度の結果では、資本金階級計が217.3 万円、1 億円以下計が214.1 万円と同様な金額になっています。1 億円超計は451.0 万円で、資本金階級計の2 倍程度です。2016、2017 年度もおおむね同様な傾向がみられます。

欠損法人の平均は160 万円程度に

欠損法人の資本金階級計は、160 万円程度で推移しており、3 年間の平均は161.3 万円になりました。利益計上法人より50 万円ほど少なくなっています。

2018 年度の結果では1 億円以下計が160.3万円で、資本金階級計と同様な金額になっています。1 億円超計は343.3 万円と資本金階級計の2 倍程度になっており、2016 年度、17 年度もおおむね同様です。

自院の交際費等支出額は、同規模の他医院と比べてどうなのか、このデータと比較してみてはいかがでしょうか。

※国税庁「会社標本調査」
内国普通法人(休業、清算中の法人や一般社団・財団法人及び特殊な法人を除く)を対象に、4 月1 日から翌年3 月31 日までの間に終了した調査対象法人の各事業年度について、翌年7 月31 日現在でとりまとめたものです。ここでの交際費等支出額は、資本金階級別に集計された合計金額を法人数で除して求めた数字になります。詳細は次のURL のページから確認いただけます。
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/kaishahyohon/toukei.htm#kekka

(次号に続く)

介護事業所様向け情報(経営)9月号②

福祉施設等の職員が自信のある能力と向上させたい能力

8 月号では、福祉施設等が職員に求める能力やスキル(以下、能力)について、ご紹介しました。ここでは、福祉施設等の職員が自信のある能力や向上させたい能力をみていきます。

チームワークには自信あり

厚生労働省が今年5 月に発表した調査※によると、福祉施設等(以下、医療,福祉)の正社員で自信のある能力があるとした割合は83.7%、正社員以外では、80.3%となりました。また向上させたい能力がある割合は、正社員が95.6%、正社員以外が88.5%となっています。具体的な自信のある能力と向上させたい能力を、正社員と正社員以外の別にまとめると下表のとおりです。

正社員、正社員以外ともに、チームワークに自信があるとする割合が最も高くなりました。また、自信のある能力の上位3 つは正社員、正社員以外ともに同じで、チームワークの他は職種に特有の実践的スキルと、コミュニケーション能力の割合が高くなりました。

正社員はマネジメント能力の向上を望む

向上させたい能力は、正社員ではマネジメント能力の割合が最も高く、次いでIT を使いこなす知識と能力、課題解決スキルが上位3 つになりました。正社員以外ではコミュニケーション能力と職種に特有の実践的スキル、高度な専門的知識・スキルとなりました。

医療,福祉の社員が自信のある能力の上位3つは、回答割合の違いがあるものの、正社員と正社員以外で同じとなりました。医療,福祉の事業所では、これらの能力に関する研修などが多く行われていることがうかがえます。

職員教育について悩まれている施設では、職員に求める能力だけでなく、職員が向上させたい能力に関する研修なども実施してみてはいかがでしょうか。

※厚生労働省「令和元年度能力開発基本調査」
常用労働者30 人以上を雇用している企業・事業所および調査対象事業所に属している労働者を対象にした、2019 年(令和元年)10 月1 日時点の状況についての調査です。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450451&tstat=000001031190&cycle=8&tclass1=000001140208&tclass2=000001140212&tclass3=000001140217&cycle_facet=cycle

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(経営)9月号①

オンライン資格確認の医療機関向け支援

健康保険証の資格確認がオンラインで可能となる「オンライン資格確認」が、来年3 月にスタートします。医療機関ではシステム等の準備が必要となりますが、これについて、無償提供や補助金による支援が始まりました。

まずは専用ポータルサイトで登録を

オンライン資格確認により、受付、診療・調剤・服薬指導、診療報酬請求が効率化でき、特定健診情報や薬剤情報の閲覧も可能となります(薬剤情報は来年10 月~)。医療機関や薬局におけるシステムの準備には、右の①②の支援を受けることができます。

申請は、専用ポータルサイトから行います。まずはアカウント登録をお済ませください。

【医療機関・薬局向けの支援策】

① 顔認証付きカードリーダーの無償提供

オンライン資格確認は、マイナンバーカードのIC チップや健康保険証の記号番号によって行われますが、その際に使用する「顔認証付きカードリーダー」が無償提供されることとなりました(診療所や薬局の場合、1 台が無償提供)

② それ以外の費用も補助の対象に

また、オンライン資格確認の導入に伴うシステムの導入や改修、ネットワーク環境整備についても、補助の対象となります(診療所、薬局(大型チェーン薬局以外)の場合、事業額の3/4
を補助。補助の上限は32.1 万円)。

(次号に続く)

 

介護事業所様向け情報(経営)9月号①

介護施設の労働環境改善のための支援

8 月号では、オンライン面会の環境整備に活用できる地域医療介護総合確保基金のICT 導入支援事業をご紹介しました。今回は、同じく地域医療介護総合確保基金より、今年度拡充された労働環境改善の支援事業をご紹介します。

介護ロボットの導入支援

移乗支援、移動支援、排せつ支援、見守り、入浴支援等で利用する介護ロボットの導入に利用できます。

介護事業所に対する業務改善支援

今年度予算による拡充で、都道府県が開催する介護現場革新会議が必要と認めた経費について助成されることとなりました。

経費の例(都道府県の決定によります)

  • タイムスタディ調査による業務の課題分析等、第三者による取組支援費用
  • 介護ロボットやICT 機器等のハードウェア・ソフトウェアの導入費用(インカム機器、介護記録ソフトウェア、通信環境整備等に係る費用を含む。)

外国人介護人材受入れのための整備

今年度予算により新設された補助事業です。次の3 つの環境整備等にかかる費用の一部が助成されます。

コミュニケーション支援

日本人職員、外国人介護職員、介護サービス利用者等の相互間のコミュニケーション支援に資する取組

資格取得支援・生活支援

外国人介護人材の資格取得支援や生活支援の体制強化に資する取組

教員の質の向上支援

介護福祉士養成施設における留学生への教育・指導の質の向上に資する取組

 

これらの補助事業の窓口は、各都道府県です。詳細は都道府県までお問い合わせください。

参考:厚生労働省「令和2 年度予算の資料」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000579288.pdf

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)9月号④

改めて確認したい休憩時間の基礎知識

労働時間管理では時間外労働に注目が行きがちですが、意外な落とし穴となるのが休憩時間です。休憩時間に業務をしていれば労働時間として扱う必要があり、賃金の不払いの問題につながります。労働基準法の規定を知り、従業員に休憩時間を確実に確保してもらうことも重要となることから、ここでは休憩時間の与え方と確保についてとり上げます。

1.休憩時間の与え方

休憩は、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも60分を与えなければならないと、労働基準法で規定されています。

この休憩時間は、労働時間の途中に与えなければなりませんが、その休憩時間数について、一括して与えなければならないという定めはありません。そのため、例えば60分の休憩を15分と45分に分けたり、午前に10分、お昼に40分、午後に10分といったように3回与えることでも差し支えありません。

一方で、休憩時間は食事の時間や疲労の回復を目的としているため、過度に細かく分断するとその目的を達成することが難しくなります。どのようなタイミングで、どのくらいの時間数を設定するのが良いのか、確実に休憩時間を確保するためにはどのようにするとよいのかについて検討する必要があります。

2.生産性向上のための活用法

所定労働時間が6時間で、時間外労働が発生しないときには、労働基準法で定める休憩時間を与える必要はありませんが、6時間を継続して勤務することで、疲労が蓄積したり、空腹になり生産性が低下したりすることが想像されます。

また、午前9時始業、正午から1時間の休憩を挟んで、午後6時終業という8時間労働の会社が多くあります。

こちらも法的には何の問題もありませんが、午後の勤務時間を見ると、途中休憩もなく、5時間の勤務となっています。一般的に、人の集中力が持続する時間は長くても2時間と言われています。午後の5時間連続勤務の場合には、集中力がとぎれた状態で仕事を続けることにもなりかねません。

こうした場合には例えば昼休憩を45分とし、午後3時から15分間に休憩を設けることで、集中力の低下を防止し、午後の勤務の生産性を向上させることもできます。

製造現場や建設業では、事故等を防止するため午前と午後にそれぞれ10分の休憩が設定されていることがよくありますが、ホワイトカラーなどでも同様の休憩の設定を検討し、生産性の向上を目指すとよいでしょう。

労働基準監督署が事業所の調査を行うときには、労働基準法で定める休憩時間を与えているかの確認が行われ、与えていないときは是正勧告が行われることがあります。この機会に休憩時間が確保されているか点検し、問題があればその改善に向けて取組みを行いましょう。

(来月に続く)

保育事業所様向け情報(労務)9月号④

改めて確認したい休憩時間の基礎知識

労働時間管理では時間外労働に注目が行きがちですが、意外な落とし穴となるのが休憩時間です。休憩時間に業務をしていれば労働時間として扱う必要があり、賃金の不払いの問題につながります。労働基準法の規定を知り、従業員に休憩時間を確実に確保してもらうことも重要となることから、ここでは休憩時間の与え方と確保についてとり上げます。

1.休憩時間の与え方

休憩は、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも60分を与えなければならないと、労働基準法で規定されています。

この休憩時間は、労働時間の途中に与えなければなりませんが、その休憩時間数について、一括して与えなければならないという定めはありません。そのため、例えば60分の休憩を15分と45分に分けたり、午前に10分、お昼に40分、午後に10分といったように3回与えることでも差し支えありません。

一方で、休憩時間は食事の時間や疲労の回復を目的としているため、過度に細かく分断するとその目的を達成することが難しくなります。どのようなタイミングで、どのくらいの時間数を設定するのが良いのか、確実に休憩時間を確保するためにはどのようにするとよいのかについて検討する必要があります。

2.生産性向上のための活用法

所定労働時間が6時間で、時間外労働が発生しないときには、労働基準法で定める休憩時間を与える必要はありませんが、6時間を継続して勤務することで、疲労が蓄積したり、空腹になり生産性が低下したりすることが想像されます。

また、午前9時始業、正午から1時間の休憩を挟んで、午後6時終業という8時間労働の会社が多くあります。

こちらも法的には何の問題もありませんが、午後の勤務時間を見ると、途中休憩もなく、5時間の勤務となっています。一般的に、人の集中力が持続する時間は長くても2時間と言われています。午後の5時間連続勤務の場合には、集中力がとぎれた状態で仕事を続けることにもなりかねません。

こうした場合には例えば昼休憩を45分とし、午後3時から15分間に休憩を設けることで、集中力の低下を防止し、午後の勤務の生産性を向上させることもできます。

製造現場や建設業では、事故等を防止するため午前と午後にそれぞれ10分の休憩が設定されていることがよくありますが、ホワイトカラーなどでも同様の休憩の設定を検討し、生産性の向上を目指すとよいでしょう。

労働基準監督署が事業所の調査を行うときには、労働基準法で定める休憩時間を与えているかの確認が行われ、与えていないときは是正勧告が行われることがあります。この機会に休憩時間が確保されているか点検し、問題があればその改善に向けて取組みを行いましょう。

(来月に続く)

介護事業所様向け情報(労務)9月号④

改めて確認したい休憩時間の基礎知識

労働時間管理では時間外労働に注目が行きがちですが、意外な落とし穴となるのが休憩時間です。休憩時間に業務をしていれば労働時間として扱う必要があり、賃金の不払いの問題につながります。労働基準法の規定を知り、従業員に休憩時間を確実に確保してもらうことも重要となることから、ここでは休憩時間の与え方と確保についてとり上げます。

1.休憩時間の与え方

休憩は、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも60分を与えなければならないと、労働基準法で規定されています。

この休憩時間は、労働時間の途中に与えなければなりませんが、その休憩時間数について、一括して与えなければならないという定めはありません。そのため、例えば60分の休憩を15分と45分に分けたり、午前に10分、お昼に40分、午後に10分といったように3回与えることでも差し支えありません。

一方で、休憩時間は食事の時間や疲労の回復を目的としているため、過度に細かく分断するとその目的を達成することが難しくなります。どのようなタイミングで、どのくらいの時間数を設定するのが良いのか、確実に休憩時間を確保するためにはどのようにするとよいのかについて検討する必要があります。

2.生産性向上のための活用法

所定労働時間が6時間で、時間外労働が発生しないときには、労働基準法で定める休憩時間を与える必要はありませんが、6時間を継続して勤務することで、疲労が蓄積したり、空腹になり生産性が低下したりすることが想像されます。

また、午前9時始業、正午から1時間の休憩を挟んで、午後6時終業という8時間労働の会社が多くあります。

こちらも法的には何の問題もありませんが、午後の勤務時間を見ると、途中休憩もなく、5時間の勤務となっています。一般的に、人の集中力が持続する時間は長くても2時間と言われています。午後の5時間連続勤務の場合には、集中力がとぎれた状態で仕事を続けることにもなりかねません。

こうした場合には例えば昼休憩を45分とし、午後3時から15分間に休憩を設けることで、集中力の低下を防止し、午後の勤務の生産性を向上させることもできます。

製造現場や建設業では、事故等を防止するため午前と午後にそれぞれ10分の休憩が設定されていることがよくありますが、ホワイトカラーなどでも同様の休憩の設定を検討し、生産性の向上を目指すとよいでしょう。

労働基準監督署が事業所の調査を行うときには、労働基準法で定める休憩時間を与えているかの確認が行われ、与えていないときは是正勧告が行われることがあります。この機会に休憩時間が確保されているか点検し、問題があればその改善に向けて取組みを行いましょう。

(来月に続く)

医療事業所様向け情報(労務)9月号③

2020年9月より変わる複数就業者の労災保険給付の取扱い

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

社労士:

働き方改革の一つとして兼業・副業が推進されていますが、それに関連して、9月より複数就業者の労災保険給付の取扱いが変わります。

総務部長:

実は、ある従業員から副業したいという相談があったところです。どのように変わるのでしょうか?

社労士:

労災事故が発生した場合、これまでは発生した勤務先の賃金額のみを基礎に給付額等が決定されていました。これが、9月よりすべての勤務先の賃金額を合算した額を基礎として給付額等が決定されることになります。

総務部長:

当社で25万円、副業先で5万円の賃金が支払われている場合、当社で災害に遭った場合には25万円、副業先の場合には5万円が基礎となり労災給付がなされたものが、9月からはどこで被災したとしても合算した30万円が基礎となるということですね。

社労士:

その通りです。労災事故が発生した場合のセーフティネットを強化するために今回の改正が行われています。脳・心臓疾患や精神障害に関する労災認定についても、勤務先ごとに労働時間やストレス等の負荷を個別に評価して、労災認定の判断をし、それぞれの評価で労災認定されない場合は、すべての勤務先の労働時間やストレス等の負荷を総合的に評価して労災認定の判断が行われます。

総務部長:

なるほど。当社では残業がほとんどなく、労働時間やストレス等の負荷がないと判断されても、副業先での労働時間やストレス等の負荷を加味して、労災認定が判断されるということですね。今後、当社で副業を認めていく方針となった場合、どのようなことに注意が必要でしょうか?

社労士:

やはり過重労働とならないように注意が必要です。例えば副業先で働くことができる時間数を設定し、その範囲で働いてもらうといった対応が考えられます。その他、副業を始めた後には、定期的に面談を行い、本来の業務に支障が出ていないか、過重労働となっていないか、状況を確認した方がよいでしょう。

総務部長:

確かに、継続的に管理していくことは重要ですね。ただ、実際に副業先も含めた労働時間の管理や把握をすることは難しく、副業を認めることに対して慎重になりますね。

社労士:

そうですね。2020年7月に行われた未来投資会議の成長戦略実行計画案の中では、兼業・副業の普及に向けて、労働時間の管理方法が議論されていました。今後の動きに注目しましょう。

【ワンポイントアドバイス】

  1. 2020年9月より、労働災害が発生した場合、すべての勤務先の賃金額を合算した額を基礎に給付額等が決定される。
  2. 労働時間やストレス等の負荷についても、勤務先ごとに評価して労災認定できない場合は、総合的に評価して労災認定の判断が行われる。

(次号に続く)

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