介護
来年度の介護報酬改定をいつ実施すべきか − 。厚生労働省は11日の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)でこれをテーマに取り上げた。従来通りなら4月1日だが、2ヵ月後ろ倒しにして6月1日とすることなどが論点となる。
委員からは反対意見も噴出。厚労省は丁寧に検討を続けていく構えをみせた。介護現場の関係者からは歓迎する声が出ており、今後の判断が注目される。
改定の実施時期を後ろにずらすメリットは、各サービスの新たな運営基準や報酬・加算の単位数が決まってからの期間を長くでき、介護施設・事業所やベンダの負担軽減につなげられること。今は年度末の決定から大急ぎで準備しなければならず、改定直前の3月を“デスマーチ”と呼ぶ人もいる。
医療分野では議論が先行している。厚労省は今年8月の中医協(中央社会保険医療協議会)で、診療報酬改定の実施時期を来年度から6月1日とすることを提案。重要ミッションの「医療DX」で現場の負担が増していることも大きな理由としてあげ、大筋で了承を得た経緯がある。
診療報酬改定に合わせて介護報酬改定も6月1日に変えるか否か − 。これが論点だ。
「LIFEが導入されたこともあり、介護現場の負担は病院などと同様に非常に大きい。6月に遅らせて頂きたい」
全国老人保健施設協会の東憲太郎会長はこう要請。日本医師会の江澤和彦常任理事は、「6月実施以外あり得ない。診療報酬と介護報酬の双方を算定している事業所は二度手間になる。今回は同時改定で、医療と介護の連携を促進するための施策も多くなるはず。改定の時期が異なるとそうした施策の展開にも支障をきたす」と訴えた。
一方で、全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与は、「4月実施を維持して欲しい。介護事業所の多くは診療報酬と介護報酬の双方を算定していない。昨今の物価高騰、人件費の上昇を踏まえると、介護報酬のプラス改定、更なる処遇改善をできるだけ早く実施すべき」と主張。全国知事会の代表として参加した長崎県の担当者(参考人出席)は、「3年ごとに自治体が行っている事業計画の策定、給付費の見込み、保険料額の算定などに大きな影響を及ぼす。地域住民にとって分かりやすい制度を保つことも重要。慎重に検討すべき」と指摘した。
また、全国市長会の代表として参加した大阪府豊中市の担当者(参考人出席)は、「例えば処遇改善加算など、年度単位での計画策定・運用が必要な仕組みは対応が難しくなる。6月実施に変えると、事業者や市町村の窓口などに混乱が生じ、かえって負担が重くなりかねない」と懸念を示した。(介護ニュースより)
来年度の介護報酬改定に向けた協議を重ねている国の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)は2日、関係団体の意見を幅広く聴取するヒアリングを実施した。
前回に続く第2ラウンドとなった今回は、医療機関の経営者で組織する団体なども参加した。
この中で「四病院団体協議会」は、全国的に人材不足が顕在化してきている介護支援専門員について、各サービスでの配置を再考すべきと提言。「様々なサービスで配置が必須となっているが、人材不足でサービスを円滑に提供できない状況もみられる。本当に必要なサービスに集約していくことを検討してはどうか」と要請した。
あわせて、ケアマネジャーの法定研修の受講料にも言及。「都道府県ごとに大きな違いがある。地域ごとに一定の受講料とすることはできないか」と求めた。ケアマネの法定研修の受講料をめぐっては、例えば2021年度の実務研修で最高の都道府県と最低の都道府県とでおよそ6万円の違いがあった。(介護ニュースより)
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介護サービスの運営基準などを見直す際に、国はしばしば一定期間の「経過措置」をセットで設ける。これは言わば移行期間、または準備期間にあたるもので、介護施設・事業所がその見直しに適切に対応できるようにする配慮だ
現在は適用中だが今年度いっぱいで終了する「経過措置」が複数ある − 。厚生労働省は4日、そのことを現場の関係者に改めて伝える通知を発出した。
2021年度の介護報酬改定で決められた運営基準などの見直しとともに導入され、タイムスパンは3年間と定められたものが該当する。10月に入って期限まで残り半年をきった。
厚労省は通知で、「運営基準などを満たすことができているかご確認いただき、必要な対応をお願いします」と呼びかけた。介護保険最新情報のVol.1174で広く周知している。
今年度いっぱいで廃止される「経過措置」は以下の7種類。介護事業者は来年度を迎える前までにしっかり対応しておく必要がある。
= 来年3月31日で終了する「経過措置」=
(1)感染症対策の強化 〜全サービス〜
委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施などを義務化。
(2)業務継続に向けた取り組み 〜全サービス〜
業務継続計画の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション) の実施などを義務化。
(3)認知症介護基礎研修の義務化 〜全サービス〜
無資格の介護職員に認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じること。
(4)高齢者虐待の防止 〜全サービス〜
委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること。
(5)口腔衛生管理の強化 〜施設系サービス〜
口腔衛生の管理体制を整備し、入所者ごとの状態に応じた口腔衛生の管理を行うこと。
(6)栄養ケア・マネジメントの充実 〜施設系サービス〜
入所者の状態に応じた栄養管理を計画的に行うことを運営基準に規定。
(7)事業所医師が診療しない場合の減算 〜訪問リハ〜
事業所外の医師に求められる「適切な研修の修了等」について、適用猶予措置期間を延長。
※ 詳細は厚労省の通知から(介護ニュースより)
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《 株式会社ケア21・依田平代表取締役会長/CCO 》
「企業文化は戦略に勝る」。ピーター・ドラッカーの言葉だ。これを大切にして成長を続けている介護事業者がいる。ケア21。主力は訪問介護、グループホーム、有料老人ホームなどで、他のサービスも合わせた施設・事業所の総数はグループで全国550件超にのぼる。
掲げている企業文化の1つが、「人を大事にし、人を育てる会社」。激化する人材確保の競争とどう向き合うべきか学ぶため、依田平会長を尋ねた。あわせて、今後の業界の変遷をどう予見しているかも伺った。
「これからは人を大事にする会社しか残らない」。そう笑顔で語った依田会長は、100年続く老舗企業を創りたいと意欲をみせた。
◆ 原点は小4の時の作文
−− こんにちは。はじめまして、どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございます! どうぞよろしくお願いいたします。
−− 現在はCCO、最高文化責任者というお立場ですが、主にどのような職責と向き合っておられるのでしょうか?
このCCOという役職を設ける企業は、アメリカはもちろん日本でも増えてきています。我々もやはり、優れた経営戦略を策定・遂行していくことだけでなく、より良い社風を持つことが非常に大切だと考えています。企業として業績を上げ、幅広く社会に認めて頂けるように成長するためには、多くの方に支持される社風づくり、文化づくりが欠かせません。
我々は「人を大事にし、人を育てる」「福祉理念と市場原理の融合」「常に考え、変わり続ける」「最高のサービスの提供」などを掲げ、その具体化を目指してきました。これらを体現することが、弊社で働く職員の皆さんの幸せにつながり、サービスを受ける利用者さんの喜びにつながり、結果として社会全体を良くすることにつながっていく − 。そんな良い循環を生み出すことを主な仕事にしています。
−− 介護・障害福祉の事業をはじめたきっかけを教えてください。
私は商売人の家系に生まれました。会社を経営している身内が多く、食事の時もいつも仕事の話ばかりしているような家族でした。
原点はおそらく、小学4年生の時の作文ですね。将来の夢として「株式投資で大儲けする」と書いて、当時の先生に呼び出されたんです。

「金儲けもいいが、人間はそんなことのためだけに生きるんじゃない。世のため人のために尽くすことが、人間の生きがい、喜びなんだ」。そんな趣旨のことを力説されました。最初は「この人なに言ってんだ」という気持ちだったのですが、やがてよく理解できるようになったんです。
その先生からは本当に多くのことを教わりました。私はこれまで様々な仕事をしてきましたが、先生の言葉がいつも心の奥底にあったんです。
−− 現在、目標としていることがあれば教えて下さい。
これは創業の時からなのですが、長く続いていく老舗企業を作りたいなと思っています。少なくとも100年続く会社にしていくことが目標です。
実はそのために、世にある老舗企業を私なりに真剣に調査・研究したんですよ。なぜ長く続けることができるのか、見つけた共通点は大きく3つでした。

1つは経営理念に重きを置くこと。利益を出すことを目的とせず、理念を達成するために利益を出すと考えることが大切なんですね。
2つ目は、人を大事にするということ。お客さんはもちろん、取り引き先の方々、従業員の方々、広く社会の方々、全てです。
3つ目は常に変わり続けるということ。老舗は不変というイメージがありますが、実は改善すべきところをドラスティックに変えている企業が多いんです。我々の会社では、私なりに見つけたこうした老舗の特徴を取り入れています。
◆ カギは「貢献」と「成長」
−− 今の介護業界の課題をどうみていますか?
そうですね…。かなりたくさんありますが、やはり人材不足が最も深刻ではないでしょうか。介護報酬の水準が十分でない、ということが大きな要因の1つだと捉えています。
国にはぜひ改めて頂きたいですし、業界としても一致団結して訴えていかなければいけません。事業者としては厳しい環境ですが、とにかくできることを精一杯するしかありません。

−− 御社では人材確保にどう向き合っているか、教えて下さい。
給与面も含めて働く条件、環境を良くしていくことがやはり重要です。テクノロジーの有効活用など施策を総合的に講じるわけですが、私は多くの職員が気持ちよく、楽しく働ける職場を作ることが非常に重要だと考えています。
それをどう実現していくのか − 。例えば人生の喜び、または仕事の充実感などは「貢献」と「成長」に起因するという教えがあります。この2つが満たされると幸せを感じる、という話ですが、これは的を得ているのではないでしょうか。
介護の仕事は日頃から、「貢献」を感じやすいという特徴があるんです。利用者さんやご家族から「ありがとう」と言われると嬉しくなる、という職員は少なくないですよね。
−− そうですね。
では「成長」はどうか。資格取得など様々な方法がありますが、重要な要素の1つは他の職員に仕事を教える立場につくことではないでしょうか。それが「成長」を最も感じられる機会だ、と我々は捉えています。
ですから、キャリアアップの仕組みを作って積極的にリーダーになって頂く。最小単位のリーダーから副主任、主任、管理者、施設長など立場が上がるに連れて、もちろん処遇も上がっていく仕組みです。
最近の若い人の中には、できればリーダーになりたくない、管理職になりたくないという人もいますよね。それはきっと、仕事の量と重い責任だけがついて回るイメージがあるからではないでしょうか。
そうではなくて、人生を豊かにするために、仕事を楽しく続けるために「成長」が不可欠で、それを実現する最も良い方法がリーダーになることなんだ、と理解して頂くことに尽力しています。
−− 人材確保の具体策として、他に何か力を入れていることはありますか?
そうですね。大前提として処遇改善、賃上げが重要なのですが、他に1つあげるとすれば定年制の撤廃でしょうか。弊社では基本的に元気なら何歳でも働けます。
今、他の業界で年齢を重ねてきた方、近く定年を迎える方など50代以上の応募が増えています。可能なら早めに定年制のない会社へ移ろう、と考える方が多いんですね。
我々はそうした人材を、本人が希望すれば正社員として採用しています。70歳まで、75歳まで、あるいはもっと先まで、可能な限り働いていこうとやる気のある方も少なくありません。自分の定年って本来、自分で決めるべきことですよね。我々はそういう方々を応援しており、貴重な戦力として活躍して頂いています。
−− 中高年は人口も多いですから、活躍してもらえればありがたいですよね。
はい。例えば年金の受給開始年齢など、彼らには彼らの事情があるわけです。できるだけそれに合った環境を用意することが重要、と言えるでしょう。
いずれにせよ、人を大事にしない限り人は集まってきません。人材確保が難しさ増す中でこれは必須条件。これからは人を大事にする会社しか残れないでしょう。
◆「大規模化の流れには戸惑いも感じる…」
−− それでも人材難は徐々に深刻化していく見通しです。業界の今後をどうみていますか?
将来を見通すことは簡単ではありません。ただ、生き残りをかけた戦いが更に激しくなっていくことは考えられます。規模の小さな事業者は、どうしてもより厳しい戦いを強いられるでしょう。
小規模な事業者は、ICTなどテクノロジーの導入、職場環境の改善に向けた十分な先行投資ができません。職員の教育・研修にかけられるリソースも限定的で、良い待遇を用意してあげる余力がほとんどないんですね。一方で大手は違います。これから選ばれる環境作りに力を入れており、その差は開いていかざるを得ないでしょう。
−− そうかもしれません。
小規模な事業者が淘汰される、吸収されるという傾向は既に顕在化しています。M&Aなどが盛んに行われている現状も、業界の方ならよく知っていることでしょう。国も大規模化を推進する立場で、この流れが大きく変わる可能性は低いと考えられます。
私は戸惑いも感じます。その規模は小さくても、きらりと輝いている事業所、欠かせない活躍をしている方々がいることはご存知でしょう。地域で良質なサービスを提供している志ある方々が軽視され、厳しい立場に追いやられていく状況は好ましくありません。効率化の名のもとに、そうした方々の思いが失われていくような事態になれば、結果として地域共生社会は成り立たなくなると危惧します。
ただ、今の介護報酬の水準が大きく変わるようなことが起きない限り、そうした大規模化の流れは止まらないでしょう。悲しいことではありますが、私が懸念することも現実になりかねません。
−− 今後、大企業の御社はどのように事業を展開していきますか?
我々はいわゆる上場企業ですが、「福祉理念と市場原理の融合」という理念も掲げています。主力事業として介護・福祉サービスを提供しているということもあり、弱肉強食の世界を勝ち抜くということだけでない価値を創造したいと思っています。
「新しい資本主義」という言葉もありますが、社会も徐々にそうした方向を求めるようになってきているのではないでしょうか。競争で相手に勝てばいい、お金を稼げばいいということではない、と感じる方が増えています。我々もそうした信念を持って、皆で支え合う社会を作る前向きな動きにコミットしていきたいと思います。
−− ありがとうございました。(介護ニュースより)
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Q, 現在、正職員を募集しているのですが、当施設が希望しているような人材からの応募がなかなかありません。そのような中、条件は合致するものの、転職
歴が多い人から応募がありました。履歴書や面接で前職の仕事の内容や退職理由を確認する予定ではありますが、できれば直接、以前勤務していた職場に尋
ねることはできないかと考えています.
A、施設から直接、以前勤務していた職場に問い合わせることも考えられますが、個人情報でもあるため提供される可能性は低いものと思います。このような場合は、応募者から以前勤務していた職場に「退職証明書」を発行してもらい、その内容を確認するという方法があります。
2.退職証明書の発行義務
退職証明書は、労働者が退職したときに、その勤務先が必要事項を証明するために交付する書類です。退職者から請求があった場合に、遅滞なく交付することが義務付けられています(労働基準法第 22 条)。退職証明書には、次の事項のうち、退職者が請求した事項のみが記載されます。
使用期間
業務の種類
当該事業における地位
賃金
退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあって
は、その理由を含む)
この退職証明書を応募者に提出してもらうことで、履歴書等の提出書類との齟齬がないか確認できます。採用したい人材かどうかの判断材料ともなります。応募者には、どの記載事項を必要としているのかを具体的に示した上で、提出を求めるとよいでしょう。なお、退職証明書の交付を請求できるのは、退職した本人のみで、退職後 2 年間となっています。つまり、貴施設から直接、前の職場に交付を依頼することはできません。応募者に「前職の勤務先に退職証明書の交付を請求し、当施設に提出してください」と依頼して取り寄せるようにしましょう。
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報酬基準 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
だれかと一緒にいる時間を楽しむためには、一人に時間が必要。
対極にあるようですが、どちらの時間もあってこそ、自分を幸せに生きられると実感するものです。
人間関係とは、人との関係である前に、自分との関係が基本になっているからです。
私たちは、人間関係の中でつねに何かの役割を全うしようとしています。仕事人、母親、妻
子ども、恋人、友人・・・どんなに近しい関係でも、四六時中一緒にいると生きぐるしくなり、疲れてしまうでしょう。
もちろん、人と関わることでの喜びは計り知れません。
人間関係を通して成長できる事。ほとのために何かができる事。認めてもらえること。理解し合えること。支えられていること。愛し愛されること・・・・。そんな人としての幸せをしみじみ味わうためにも、本来の自分に戻るために時間は必要なのです。忙しければ、忙しいほど、わずかでもほっとできるひとりの時間が貴重であることは、誰も感じたことがあるでしょう。様々な人間関係から少し離れると、客観的に見えてくるものがあります。「あんなことを言われてカッとしたけれど、感情的になることでもなかったかも」とか「自分なりに頑張ったのだからあれはあれでよかった」とか・・・。自分の心の声に耳を傾けるかどうかで、人生に深みはまったく違ってきます。
ひとりでいる時間は、何もしていないようでも、無意識に頭を整理して、何かを創り出している時間でもあります。インスピレーションがあったり、いいアイデアを思いついたりするのも、一人でいるときが多いはずです。自由にやりたいことをやったり、没頭するのもいいでしょう。一人の時間がどんな人にも必要であり、自分を生きようとする贅沢な時間です。
なかなか一人になれないという人も、通勤時間やお風呂の時間、寝る前の10分など、テレビやスマホから離れて、自分だけの時間を過ごす時間を作ってみてください。
心の中に自分は、いつもあなたとおしゃべりしたがっています。自分を大切にする人は、人を大切にできるようになります。やさしさの基本になっているのは、こころの余裕なのです。
(「上機嫌にいきる」より)
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来年度の介護報酬改定を議論している国の審議会が関係者の意見を聞くために実施した27日のヒアリング − 。深刻な人材不足に直面している訪問介護の担い手でつくる団体は、思い切った基本報酬の引き上げや処遇改善の実現などとあわせて「魅力発信」を相次いで求めた。
「人材不足の原因の1つに、介護を志す人の訪問介護との接点の少なさがある」
全国社会福祉協議会の全国ホームヘルパー協議会は、介護職の中でも特にヘルパーの不足が際立っていることなどを念頭にこう指摘。「訪問介護の仕事のやりがいや魅力を正しく伝える機会を設けるために、初任者研修などの実習での訪問介護サービス同行訪問の必須化を」と提言した。
また日本ホームヘルパー協会も、「初任者研修は施設・在宅を問わず、基本的な介護業務を担えることを目的としてカリキュラムが組まれているが、訪問介護の魅力に触れる機会がない状況」と問題を提起。「訪問介護には、個々の利用者宅の環境に応じた介護の提供や、緊急時など突発的な事案に個人で的確に対応しなければならない、という特徴もある。ヘルパーの魅力に触れ、人材育成の強化につなげるために、研修講師の要件に在宅サービスの実務経験があることを追加して欲しい」と要請した。
あわせて、「訪問介護の内容を例えば学校教育に組み込むなど、より一層の魅力発信を」と提案した。(介護ニュースより)
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厚生労働省は27日、来年度の障害福祉サービス報酬改定に向けた協議を重ねている有識者会議で生活介護を取り上げた。
基本報酬の算定ルールの見直しを提案した。
現行は事業所の定員規模(*)に応じて、利用者の障害支援区分ごとに設定された単位数を算定する決まり。これがベースとなり、営業時間や平均利用時間が短い事業所などに減算が適用される。
* 生活介護の基本報酬の定員規模=20人以下、21人以上、41人以上など20人ごとに分けられており、規模が大きくなるほど低い単位数が設定されている。
厚労省はこうした基本報酬の仕組みを細分化し、よりきめ細かい柔軟なサービスの提供や費用の適正化などにつなげたいとした。具体的には、
◯ 事業所の定員規模、利用者の障害支援区分に加えて、サービスの提供時間別に基本報酬を設定してはどうか
◯ その場合、4時間未満、4時間以上5時間未満、5時間以上6時間未満、6時間以上7時間未満、7時間以上8時間未満、8時間以上9時間未満のように設定してはどうか
◯ 事業所の定員規模の分け方を、現行の20人ごとから10人ごとに改めてはどうか
と投げかけた。意見交換で強い反対の声が出なかったため、この方向性で細部の検討を進めていく構えをみせた。
きっかけの1つは財務省の審議会。今年5月の提言で、「利用者ごとのサービスの提供時間が基本報酬で十分に考慮されていない。かかるコストが適切に反映されるよう、提供時間の実態に基づいた報酬体系に見直す必要がある」と注文していた。
事業所の定員規模を10人ごとに細かく分けるのは、これとは異なる狙いがある。厚労省は会合で、「利用者数の変動により柔軟に対応できるようにする。小規模な事業所を運営しやすくするとともに、施設からの地域移行を促進する」と説明した。
厚労省はこのほか、8時間以上の営業時間を超えて生活介護を提供した場合の「延長支援加算」について、事業所の人員体制を確保する観点から見直しを検討する意向も示した。(介護ニュースより)
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来年度の介護報酬改定に向けた協議を重ねている国の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)は27日、介護現場の意見・要望を聴取する「関係団体ヒアリング」を実施した。
訪問介護の担い手でつくる団体が相次いでホームヘルパー不足の深刻さを訴えた。
日本ホームヘルパー協会は、「待ったなしの状況。事業所の経営に直接かつ甚大な影響を及ぼしており、事業者は倒産や事業所閉鎖などを余儀なくされている」と指摘。「人材不足は利用者の不利益に直結しており、将来的には地域包括ケアシステムの崩壊につながりかねない大きな社会問題だ」と強調した。
全国社会福祉協議会の全国ホームヘルパー協議会も、「事業所が撤退する地域が全国各地で増加すると危惧している。なくてはならない社会資源である訪問介護の存在が危機的状況にある、ということにご留意頂きたい」と呼びかけた。
両団体が強く求めたのは、やはり訪問介護の基本報酬の大幅な引き上げだ。
日本ホームヘルパー協会は、「採用時の研修に資金がかかるほか、物価上昇に伴う事務員らの給与増、ガソリン代の高騰などもあり、ますます経営が厳しくなっている」と説明。「土日・祝日・年末年始も活動を余儀なくされており、事業所はホームヘルパーに手当をつけて仕事をお願いしている。基本報酬の引き上げを」と要請した。
全国ホームヘルパー協議会も、「基本報酬の抜本的な引き上げを」と注文した。あわせて、既存の「同一建物等減算」を取り上げ、「まだまだ公平性に欠ける。地域に住むひとりひとりの利用者宅を訪問している事業所と、同一建物内の利用者宅を短時間で多数訪問している事業所とでは、サービスに要する時間が全く異なる」と問題を提起。減算の更なる拡大などを提言し、それで得られる財源を主に地域の利用者宅を個別に訪問している事業所へ振り向けるべきと主張した。(介護ニュースより)
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政府は年収が一定額に達すると社会保険料が発生して手取りが減る「年収の壁」の対応策をまとめた。賃上げなどで労働者の収入が減らないよう企業に1人あたり最大50万円を助成するのが柱。今回の対策は3年程度の時限措置で、2025年に予定する制度改正で抜本改革に踏み切れるかが問われる。
足元で賃上げが進むなか、年収の壁に引っかからないよう就業時間を減らすパートや派遣社員が増えている。新たな対策で深刻な人手不足に歯止めをかけるとともに、優遇策を通じて企業にさらなる賃上げを促す。
壁には大きく年収に応じて「103万円」「106万円」「130万円」の3つがあり、額ごとに対策を講じる。保険料負担が大きい106万円の壁向けに、政府は助成制度を設ける。
岸田文雄首相は25日、「まずは106万円の壁を乗り越えるための支援策を強力に講じていく」と強調した。週内に正式に決める。
従業員101人以上の企業に勤める労働者は月額賃金が8.8万円以上などの要件を満たすと配偶者の扶養を外れる。壁を越えると約15万円の負担が発生するため、厚生労働省は年収換算で約106万円の壁の付近で就業時間を調整して手取りが減らないようにする人が最大60万人いると試算する。
新たな対応策では手取りの減少を補うため、従業員が負担すべき保険料の増加分を手当として支給したり、基本給の増額と労働時間の延長に取り組んだりする企業を助成する。
例えば、賃金の15%以上分を従業員に追加で支給すれば1~2年目でそれぞれ20万円、3年目にも一定の要件を満たせば10万円を助成する。扶養から外れた労働者の社会保険料分を、手当の支払いで支援した企業も支援する。
実際の支給は最も早くて24年4月となる見通しだ。大企業の助成額は中小企業の4分の3になる。
年収130万円の壁は、従業員100人以下の企業で年収が同額を超えると扶養から外れ社会保険料を納めなければならなくなることを指す。今回の対策では、急に残業が増えたなど一時的な収入増であれば、連続2年まで健康保険組合などの判断で扶養にとどまれるようにする。
年収103万円の壁では、本人に所得税が発生するほか、企業のルール次第で配偶者手当が支給されなくなる。厚労省はガイドラインなどで企業に廃止や変更を含めて制度の見直しを働きかける。
保険料の負担分を実質的に肩代わりする今回の助成策は、自ら保険料を納める他の労働者との公平性が保てない恐れがある。そもそも106万円の壁は負担が生じる代わりに年金額が増えたり、ケガや出産の際の給付が充実したりするなど、本来は「壁」と呼べないとの声も多い。
支援策は25年の年金制度改正に合わせたつなぎ措置だ。今回の対策は、労働者が納めるべき保険料を国が実質的に補填する内容で、助成金による急場しのぎに過ぎない。
厚労省は9月、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会で年収の壁を解消するための議論を始めた。年収の壁問題の抜本解決には、壁の内側で働いているうちは保険料を支払わずに給付が受けられる第3号被保険者のしくみを変える必要がある。
専業主婦などの第3号被保険者には、夫婦それぞれが保険料を支払う共働き世帯などから「優遇だ」と批判がある。保険料を負担せずに給付を受けるのは社会保険の原則に反する。少額でも働いて収入を得たのなら、それに応じた保険料を納めるのが本来の姿といえる。
とはいえ、年収が106万円に満たない人にも等しく保険料負担を求めるとすれば大きな反発は避けられない。今後3年の間に国民全員により公平で納得感のある形で、持続可能な抜本改革を実現させる必要がある。(日本経済新聞 朝刊 総合2(3ページ)2023/9/26)