介護
行政舵取りの「羅針盤」とも言える方針書類が公表
2019年6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019~「令和」新時代:「Society 5.0」への挑戦~」、通称「骨太方針2019」。
この1年間は本書面に記載された内容を大方針として、様々な議論や施策が展開されていくことになります。中でも医療・介護を始めとする
社会保障分野は「財政健全化」の一丁目一番地。その意味において、我々介護業界としても是非、踏まえておくべき内容が数多く含まれています。
表題の通り“行政舵取りの羅針盤”と言っても過言ではない本書面の中で、介護業界に対してはどのような言及が為されているのか?
今回は特に事業者として注視すべき5つのポイントをトピックスとして採り上げ、お届けしてまいります。
「骨太方針2019」で採り上げられている介護業界に関連するトピックスとは
では、早速、中身に移ってまいりましょう。今回は上述の通り、5つのポイントをお伝えさせていただきたく思いますが、
相互に内容がリンクする箇所等もあるため、全てを列挙させていただきたく思います。先ずは一気に下記をご確認くださいませ
【その1】
先進自治体の介護予防モデルの横展開を進めるために保険者と都道府県のインセンティブを高めることが必要であり、公的保険制度に
おける介護予防の位置付けを高めるため、介護インセンティブ交付金の抜本的な強化を図る。同時に、介護予防等に資する取組を評価し、
(a)介護予防について、運動など高齢者の心身の活性化につながる民間サービスも活用し、地域の高齢者が集まり交流する通いの場の拡大
・充実、ポイントの活用といった点について、(b)高齢者就労・活躍促進について、高齢者の介護助手への参 加人数、ボランティアや
介護助手へのポイント付与といった点について、交付金の配分 基準のメリハリを強化する
【その2】
認知症予防に関し、「認知症施策推進大綱」に基づき「共生」を基盤として、予防に関するエビデンスの収集・普及、研究開発などを進める。
高齢者一人一人に対し、フレイルなどの心身の多様な課題に対応したきめ細やかな保健事業を行うため、市町村における保健事業と介護予防
の一体的な実施を推進する。高 齢者の通いの場の活用など、介護予防の取組の更なる推進に向け、介護保険制度の保険者機能強化推進交付金
の抜本的強化を図る。
【その3】
持続可能な社会保障制度の実現に向け、医療・介護サービスの生産性向上を図るため、 医療・福祉サービス改革プラン(=下記【その4】が
本プランの概要)を推進するとともに、地域包括ケアシステムの構築と併せ、医療・介護提供体制の効率化を推進し、一人当たり医療費の
地域差半減、介護費の 地域差縮減を目指す。診療報酬や介護報酬においては、適正化・効率化を推進しつつ、 安定的に質の高いサービスが
提供されるよう、ADLの改善などアウトカムに基づく支払いの導入等を引き続き進めていく。
【その4】
医療・福祉サービス改革プランにより、ロボット・AI・ICT等、データヘルス改革、タスク・シフティング、シニア人材の活用推進、
組織マネジメント改革、経営の大規模化・協働化を通じて、医療・福祉サービス改革による生産性の向上を図ることにより、2040 年に
おける医療・福祉分野の単位時間サービス提供量について5%以上向上、 医師については7%以上向上させる。
【その5】
介護の保険者機能強化推進交付金についても、アウトカム指標の割合の計画的引上げ等とともに、介護予防などの取組を重点的に評価するなど
配分基準のメリハリの強化や更なる見える化を通じて、保険者へのインセンティブを強化する。また、第8期介護保険事業計画期間における
調整交付金の活用方策について、地方自治体関係者の意見も踏まえつつ、関係審議会等において検討し、所要の措置を講ずる。
住所地特例制度の適用 実態を把握するとともに、高齢者の移住促進の観点も踏まえ、必要な措置を検討する。
上記5つのポイントをお読みいただければお分かりのように、今回の「骨太方針2019」に於いては何より「保険者機能強化の推進」が
我々介護業界に関連する項目として最重要テーマに位置付けられており、その機能強化を具体的に実現するための方策として
「アウトカム指標の割合の計画的引上げ」や「介護予防などの取組を重点的に評価するなど配分基準のメリハリの強化や更なる見える化」が
掲げられています。また、「地方自治体関係者の意見も踏まえつつ」という前提があるものの、「調整交付金の活用方策」を検討する、
ということは即ち、「成果を上げる自治体には予算を上積みするが、成果を上げない(or上げられない)保険者には予算の削減も辞さない」
仕組みの導入を検討していく、ということと同義であり(=ディスインセンティブ制度)、今後、国と保険者との議論は相当ヒートアップ
していくとみて間違いないでしょう。他方、「保険者機能の強化」が実現されるという事は、換言すれば、各自治体の介護保険マネジメント
に大きな影響が出てくる、ということでもあります。「国は保険者に対し、どのような観点に基づき、何を求めてくるのか?」自社の経営に
影響を及ぼしかねない要素として、介護経営者としても早めに把握しておく必要があるのではないでしょうか。(現状の評価指標をお知りに
なりたい方は、「介護保険最新情報Vol.622(平成30年2月28日発布)をご確認ください」
最後に、今回の「骨太方針2019」のもう一つの特徴としては、「利用者の自己負担の引き上げや給付費の抑制など、痛みを伴う施策に対する
言及がほぼない」という点が挙げられます。「参院選を睨み、選挙にとってマイナスに働きかねない情報の盛り込みを意識的に避けたのではないか」
という見立てが大半な状況ですが、当然ながら「2021年法改正において、“給付費抑制”策は実行されない」という訳では決してありません。
本範囲の議論については恐らく秋以降に活発化すると思われ、今後、そちらの情報に注意を払っていく必要もありそうです。
国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を
以上、「骨太方針2019」より、介護業界に直接関係のある部分のみを抜粋してお伝えさせていただきました。繰り返しになりますが、
本内容は国全体の舵取りの羅針盤方針的な位置づけであり、それ故、相応の重みを伴なった情報であることを強く認識しておく必要があろうかと思います。
事業者としては上記内容を踏まえつつ、「これらの施策に対し、自社としてどう適応していくか?」について事前に頭を働かせておくことは勿論、
内容によっては打ち手や対策を早急に検討・開始していくことが重要だと思われます。是非、本情報を有効に活用していただければ幸いです。
私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。
※「骨太方針2019」URLはこちら
↓
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2019/decision0621.html
職場リーダーに必要な「人間力」
今日から「部下をどう動かすか」を考えるのは、やめにしましょう。
たくさんの職員を部下に持つリーダーの苦労は私にもわかります。しかし、「うちの職員は
どうもやる気がなくて・・・」とグチを言っているうちは、あなたが置かれている状況は
なにも改善しないことは断言できます。
「うちの部下は、上司に報連相が無いんだよね」とこぼすリーダーに限って、ご自身は部下に
対し指示をしているだけで、部下への報連相はしていないものです。
逆に、「うちの部下の笑顔は素晴らしいよ」とおっしゃるリーダーは、ご自身もいつもニコニコしています。笑顔のリーダーのもとでは、笑顔の部下が育ち、しかめ面のリーダーのもとではしかめ面の部下が育つ。
「子は親の映し鏡」といいますが、「部下はリーダーの映し鏡」なのです。このようにリーダーの働く姿は必ず部下にも影響を与えていきます。
従って、部下にワクワク仕事をしてもらいたいと思ったら、リーダー自身がワクワク仕事をすることです。
部下が変わることがあるとしたら、部下自身の意志で「変わりたい」と願ったとき、
「変わらなければならない」と気づいた時だけです。リーダーの役目は、そのために機会を
提供する事。そして、それは、「まずリーダーが変わって見せる」という事なのです。
「部下を笑顔にしたければ、まず自分から笑顔になる事」
「仕事に誇りを持ってほしかったら、まずは自分が仕事に誇りをもつこと」
この研修で達成されること
1. リーダーシップ発揮や管理者としての適性に悩んでいる管理者には、実務的アドバイスが受けられる
2. 部下から信頼されるリーダーになる為の「人間力」に気づき、職場で実践するために必要な「シンプル」な習慣を身につけることができます。
3. コミュニケーションの基本スキルやコーチングの実践的なスキルの習得
4. 出来るリーダーが行っている、部下に「任せる」スキル、部下を「叱る」スキルの習得
受講者の感想
1、社会福祉法人 介護職主任・リーダー25名受講
内容:大変理解できた・理解できた
100%
講師:大変良かった・良かった
100%
参加者の声
• たくさんの気づきがありました。上司として必要な「人間力」や部下とのコミュニケーションの取り方、
目標達成までのプロセス、管理者が行う業務などを今後の職場で実践していきたいと思います
• 褒める、叱る等、対人コミュニケーションは感覚でやりがちですが、しっかりとおさえるべき項目、ふむべき手順があることを改めて実感しました。それをふまえて部下と接していきたいと思います。
2、社会福祉法人 保育主任、副主任、専門リーダー 15名
内容:大変理解できた・理解できた
100%
講師:大変良かった・良かった
100%
参加者の声
• まずは職員のことを今まで以上に理解することを心がけていきたいです。それとともに、今の自分には目標設定があいまいな事が問題だと感じました。この研修を活かして、法人の考え方、目標の理解を再度し、職員へ落とし込むことをしていきたいと思っております。
• 自分なりに「ほめる」ことは少なからずできていたと思うが、「叱る」ことは全くできていなかったことに気づかされた。愛情をもって「叱れる」上司になるよう、努力していきたい。
• 育成マネジメントをこの研修で学ぶことができてよかった。私は自分ですべての仕事をこなすのがすごいと思うふしがありましたが、仕事を「任せる」ことの大切さを学び、活かしていきたいと思いました。
⇒詳細はこちら
https://www.hayashi-consul-sr.com/service2/menu2-2/
福祉施設でみられる人事労務Q&A
『飲み会でのセクハラは業務外でも対応の必要があるか』
Q:
ある職員から、先日開催した施設の親睦を図るための飲み会で、同僚からセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)被害を受けたという相談がありました。このようなセクハラの問題にも、施設として対応が必要でしょうか。また、どのような対応が必要となるのでしょうか。
A:
「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(以下、「指針」という。)(平成28 年8 月2 日 厚生労働省告示第314 号)には、セクハラが問題とされる職場は必ずしも通常業務を行う場所だけではないことが示されています。また、裁判例では当事者だけではなく事業主に対して損害賠償命令がされるケースもあるため、施設として対応することは不可欠と考えられます。
詳細解説:
国は、男女雇用機会均等法等によって職員が性的な言動により不利益を受けたり、就業環境が害されることを禁止しており、さらに指針において事業主が行うべき具体的な措置を示しています。
1. 職場以外でも対応が必要か
この指針において「職場」とは、職員が業務を遂行する場所としつつ、業務を遂行している場所であれば通常業務をしている場所以外、例えば打合せをするための飲食店、利用者の自宅も職場に含まれるとしています。裁判例の大半が業務をしていない飲み会についても職場として判断しているため、職場として取り扱うことが現実的です。
また、セクハラが起きてしまうと職員間の関係を悪化させ、業務に支障をきたしてしまうことは想像に難くないことからも、職場内で起きたセクハラ事案と同様の対応が求められると考えられます。
2. セクハラ問題が起きた際の対応方法
職員から被害の相談があったにも関わらず施設が適切な対応を行わないと、職場環境配慮義務違反として損害賠償が求められる可能性があります。それを防ぐためにはまず、被害を受けた職員からその内容や状況を聞く必要があります。被害を受けた職員への状況確認の後には、加害者の職員にも事情を聞くようにします。また、その場を目撃した他の職員がいれば、状況をヒアリングすることも考えられます。
事実確認が済んだら、必要に応じて加害者の職員に懲戒処分を行うことを検討することとなります。
セクハラ問題は当事者同士の問題と考えられがちですが、施設が損害賠償を迫られたり、都道府県労働局の専門部署から是正指導を受けることがあります。セクハラが起きないよう、施設全体で日頃の言動から注意するように心がけるとともに、いざ問題が発生してしまった場合に速やかに適切な対応ができるようにしておきましょう。
(来月に続く)
福祉施設等における人材育成に関する問題点
企業が人材育成を行う上では、さまざまな問題があります。ここでは、2019 年3 月に公表された調査結果※などから、福祉施設等における人材育成に関する問題点について、みていきます。
人材育成に問題がある割合は88.4%
上記の最新調査結果と同調査の10 年前の結果から、福祉施設等(以下、医療,福祉)の事業所における、人材育成に関する問題の有無についての割合をまとめると、表1 のとおりです。
人材育成に関する問題がある割合は、2017 年度では88.4%となりました。2007 年度も86.3%と高水準ですが、2017 年はさらに2.1 ポイント高くなりました。
なお、調査対象全体の結果では、人材育成に関する問題がある割合は2007 年度が72.1%、2017 年度で76.8%であり、医療,福祉はいずれも10 ポイント以上も高くなっています。医療,福祉での人材育成は、全体よりも難しい状況になっているようです。
最大の問題は育成しても辞めてしまうこと
次に、医療,福祉の事業所における、人材育成に関する問題の内訳をまとめると表2 のとおりです。
2017 年度は、「人材を育成しても辞めてしまう」割合が64.1%で最も高くなりました。2007年度も同様に、この問題の割合が71.4%で最も高くなっており、人材を育成しても辞めてしまうことが、医療,福祉の人材育成における最大の問題点であることがわかります。
それ以外の問題点で割合が高いものをみると、2017 年度は「指導する人材が不足している」が56.0%、「人材育成を行う時間がない」が47.5%でした。2007 年度も同じ問題の割合が高くなっており、10 年前も現在も、人材育成に関する問題点に、大きな違いはないようです。
2007 年度と2017 年度の各問題点の割合の増減をみると、「指導する人材が不足している」以外は、2007 年度よりも割合が低くなっていることがわかります。それぞれの問題点について、医療,福祉の事業所で、解決するための取組が行われていることがうかがえます。
医療,福祉では、人材育成を実施していく上で、人材の定着率を高める取組も実施していく必要があります。
貴施設の状況はいかがでしょうか。
※厚生労働省「能力開発基本調査」
一定の基準に基づいて抽出した企業および事業所と、抽出した事業所に属する常用労働者を対象とした調査です。2019(平成31)年3 月に
発表された平成30(2018)年度調査と平成20(2008)年度調査の結果を比較しています。データはそれぞれ29(2017)年度と19(2007)年
度になります。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450451&tstat=000001031190
(次号に続く)
どうなる? 「更なる処遇改善」
今年10 月から創設される「特定処遇改善加算」。介護人材の確保のため、経験・技能のある介護職員の処遇向上を重点としています。今回は、その加算率や取得要件等の概要をご紹介します。
新加算の取得要件
「特定処遇改善加算」(以下、「新加算」という)は、現行の処遇改善加算とは別の加算として設定されます(下図)。
なお、現行の処遇改善加算(Ⅳ)(Ⅴ)は廃止が予定されています。
加算率は2 本立て
新加算の加算率は、下表のようにサービスごとに設定されます。それぞれ「新加算(Ⅰ)」「新加算(Ⅱ)」の二本立てとなっています。いずれの率が適用されるかは、サービス提供体制加算、特定事業所加算、日常生活継続支援加算、入居継続支援加算の取得状況を加味して決定されます。
(次号に続く)
働き方改革の一環として注目すべきフレックスタイム制
4月に施行された働き方改革関連法のうち、フレックスタイム制は導入が進んでいませんが、比較的大きな効果が見込まれることから、その改正のポイントと総労働時間に関する例外について確認しておきます。
1.フレックスタイム制とは
フレックスタイム制とは、あらかじめ定められた総労働時間の中で、従業員が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めて働くことができる制度です。通常の労働時間制度であれば、始業が午前9時、終業が午後6時(途中1時間の休憩)の1日8時間労働というように、始業および終業時刻が固定的に決定されていますが、フレックスタイム制の場合、忙しい日については午前8時から午後8時まで11時間勤務し、比較的余裕がある日には午前11時から午後5時まで5時間勤務とすることなどにより、従業員が柔軟な働き方をすることができます。
2.清算期間を3ヶ月に延長
今回の大きな変更が清算期間の延長です。これまでフレックスタイム制は清算期間の上限が1ヶ月とされていましたが、これが3ヶ月に延長され、より柔軟に労働時間を調整することが可能になりました。例えば7月が繁忙期で9月が閑散期の場合、7月は法定労働時間の総枠を超えて働く一方、9月は7月の法定労働時間の総枠を超えた分だけ減らして働くことができます。ただし、時間外労働となる割増賃金の取扱いは複雑なため、厚生労働省のリーフレットなどを参考にあらかじめシミュレーションしておくことが求められます。
3.新設された完全週休2日制の例外
これまで完全週休2日制であっても、曜日の巡りによって、清算期間における総労働時間が法定労働時間の総枠を超えてしまい、総労働時間のみの勤務であっても、時間外労働が発生することがありました。
例えば清算期間の暦の日数が30日の月で所定労働時間が8時間、所定労働日数が22日(完全週休2日で当月8日の所定休日)であった場合、総労働時間は176時間となりますが、法定労働時間の総枠は171.4時間であり、4.6時間については時間外労働として割増賃金を支払う必要がありました。
この取扱いが改正され、週の所定労働日数が5日(完全週休2日制)の従業員を対象に、労使協定を締結することで、法定労働時間の総枠を清算期間内の所定労働日数に8時間を乗じた時間数を労働時間の限度とすることが可能となりました。これにより、上記の例では、所定労働時間を176時間とし、その時間を勤務したとしても、時間外労働は発生せず割増賃金の支払いも不要となります。
フレックスタイム制の活用は、育児や介護、病気の治療等と仕事との両立だけでなく、従業員のより効率的な働き方のひとつとして考えることができます。フレックスタイム制など、柔軟な労働時間制度の導入に関するご相談などがございましたら、当事務所までお問い合わせください。
(来月に続く)
社会保険の添付書類の廃止や署名・押印の省略の動き
現在、行政手続きのコスト削減のための様々な取組みが進められています。資本金1億円超等のいわゆる大企業では、2020年4月1日以後に開始する事業年度から電子申請が義務化されるなど、電子化による効率化、生産性の向上は注目のポイントとなっています。一方、電子化以外にも手続き自体の省略や、添付書類の省略が認められるようになっていることから、ここではそうした動きについて確認しておきましょう。
1.添付書類の廃止
社会保険の手続きでは添付書類が求められるものがありますが、今回、以下に該当する手続きについて添付書類が廃止されることとなりました。
①資格喪失届および被保険者報酬月額変更届
の届出の受付年月日より60日以上遡る場合
②既に届出済である標準報酬月額を大幅に引き下げる場合
なお、添付書類の廃止に伴い、事業所が適正な届出処理を行っているかを確認するため、年金事務所が適用事業所の調査を重点的に行うことにしています。添付書類を用意すること自体は不要ですが、該当するような手続きの場合には、必ず確認の記録を残しておきましょう。
2.署名・押印等の省略
社会保険の届出は、事業主が提出者となるものと、被保険者等の申請者が事業主を通じて提出するものがあり、後者については申請者の署名または押印が必要になります。
次の届出の署名または押印は、事業主が申請者本人が届出を提出する意思を確認し、各届書の備考欄に「届出意思確認済み」と記載することにより、省略することができるようになりました。
①被保険者生年月日訂正届
②被扶養者(異動)届・第3号被保険者関係届
③年金手帳再交付申請書
④養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(申出の場合)
⑤養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(終了の場合)
なお、電子申請および電子媒体による申請では、署名または押印ではなく委任状を添付することになっていますが、この委任状が省略できることになりました。
3.適用開始時期と留意点
1および2の内容は2019年3月29日に、厚生労働省から日本年金機構へ通達されています。
通達の内容を確認すると、通達された日から適用されるように判断できますが、一方で2019年9月1日までは従前の例によることができるという記載もあり、年金事務所や事務センターによっては当面の間、添付書類や署名・押印が求められることもあるようです。
実務上は、管轄の年金事務所や事務センターに省略が認められるかを必ず確認の上、手続きを行うようにしましょう。
現状、届出書に被保険者等の署名または押印をもらうために、事業主と従業員の間で書類のやり取りが行われ、手続きが煩雑になったり、手続きに時間を要することになっています。
2のような取扱いにより、自社での書類の流れを整理し、業務効率化を目指したいものです。
(次号に続く)
年次有給休暇と子の看護休暇の違いの整理
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社会保険労務士とその顧問先の 総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:4歳の子どもを育てる従業員から、子どもが体調不良で病院に連れて行きたいので、
子の看護休暇を取りたいという申し出がありました。当社の子の看護休暇は無給の
ため、年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得を勧めようと思いますが、問
題ありませんか。
社労士 :年休と子の看護休暇の内容について整理をしておきましょう。年休は入社してから
6ヶ月経過し、その期間の全労働日の8割以上を出勤した場合に付与される有給の休
暇のことです。ストレス解消やリフレッシュの目的で付与される休暇ですが、取得
目的は特に問われません。
総務部長:当社でも取得目的は様々で、旅行や銀行・役所に行く必要のある用事、自分の体調
不良等があります。
社労士 :そうですね。一方、子の看護休暇は小学校に入学する前の子どもを育てている従業
員が、子どもが病気になったりケガをしたりしたときに、看護のために取得できる
休暇です。取得目的には子どもに予防接種や健康診断を受けさせることも含まれて
いますが、これらの内容に限られています。なお、取得した日については無給でも
構いません。
総務部長:そうですね。確か取得できる日数は、対象となる子どもが1人のときは1年に5日、2
人以上のときは年に10日でしたよね。
社労士 :はい、その通りです。他にも細かな違いがありますが、年休は取得目的が問われな
いのに対し、子の看護休暇は取得目的が限定される点が従業員にとっては大きな違
いになります。例えば、子の看護休暇は今回のように子どもが体調不良のときに取
得できますが、自分が体調不良のときには取得できません。
総務部長:そうか、なるほど!申し出をしてきた従業員は、確かに年休があと1日しか残ってい
ないと言っていました。
社労士 :そうでしたか。もしかしたら年休は、子どもの体調不良以外の理由で休みを取得し
たいときに残しておきたいと考えているのかも知れませんね。
総務部長:そうですね。良かれと思って年休の取得を勧めようと考えていましたが、従業員な
りに考えて申し出たことだと思いますので、このまま子の看護休暇で処理します。
社労士 :それが良いでしょう。ちなみに、子の看護休暇は無給で構いませんが、欠勤とは違
い従業員の権利として取得できます。また、取得したことで会社が不利益な取扱い
をすることは禁じられていますので、賞与の査定で勤務成績をマイナス評価にする
ようなことがないようにご注意ください。
総務部長:無給であると欠勤と変わらないと思われがちですが、大きな違いがありますね。あ
りがとうございました。
【ワンポイントアドバイス】
1. 年休は取得目的が制限されないのに対し、子の看護休暇は取得目的が限定的である。
2. 年休は有給の休暇であるが、子の看護休暇は無給でも構わない。
3. 子の看護休暇を取得したことに対し、不利益な取扱いをしてはならない。
(次号に続く)
働き方改革に取り組む中小企業が人材を確保する際に活用できる助成金
新年度となり、さまざまな助成金制度が新設・変更されていますが、中小企業対象の注目の助成金として、「人材確保等助成金(働き方改革支援
コース)」が新設されました。これは人材の雇入れに対する助成金制度で、活用する場面も比較的多いと思われますので、以下ではこの制度の概要をとり上げましょう。
1.助成金の概要
この助成金は、働き方改革を進める上で、人材を確保することが必要な中小企業が、新しく労働者を雇入れ、人材の配置の変更、労働者の負担軽減に取り組む場合に助成されるものです。
助成金の対象となる事業主は時間外労働等改善助成金の支給を受けた中小企業です。具体的には平成29年度であれば旧職場意識改善助成金の指定されたコース、平成30年度以降であれば時間外労働等改善助成金の指定されたコースの支給を受けていることが必要です。
なお、平成31年度以降に指定されたコースの支給を受けた事業主も対象になります。
2.助成額
助成金を受給するためには、労働者を初めて雇入れる予定日の属する月の初日の6ヶ月前の日から1ヶ月前の日の前日までに、雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要があります。
その後、認定された雇用管理改善計画に基づき、新たな労働者を雇入れた上で、雇用管理改善を実施し、1年間取り組んだ後に申請することで、各種要件を満たした場合に「計画達成助成」、計画開始から3年経過後に生産性要件等を満たした場合に「目標達成助成」が支給されます。支給額は以下のとおりです。
[計画達成助成]
雇入れた労働者1人当たり60万円
短時間労働者※1人当たり40万円
支給対象となる労働者は10人を上限とし、
雇用管理改善計画認定通知書に記載された認
定金額を上限に支給されます。
[目標達成助成]
労働者1人当たり15万円
短時間労働者※1人当たり10万円
ただし、支給の算定人数の上限があります。
※週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者
3.活用にあたっての注意点
新たに労働者を雇入れても、計画開始前後の労働者数を比較し、人員増とならない場合には助成金が支給されないなど、細かな要件が設けられています。そのため、活用を検討している場合は、事前に要件を確認しておきましょう。
この助成金を受給するための前提となる時間外労働等改善助成金の指定されたコースには、時間外労働上限設定、勤務間インターバル導入、職場意識改善の3つがあります。働きやすい環境づくりに向けて、労務管理担当者に対する研修、タイムカードなどの労務管理用機器や労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新などの取組みを予定している企業については、時間外労働等改善助成金への取組みをした上で、更に人材確保が必要なときには本助成金の活用を検討することになります。
(次号へ続く)
リーダー職・管理者層の育成に関して、幹部の方から御相談をお受けすることがあります。「うちの現場のリーダーは、仕事は素晴らしいけど、部下からあまり信頼されていない」「部下に仕事を任せられなくて、自分で抱え込んでしまい部下が育たない」など・・・
職場の風土を創り出すためには、リーダーはとても大きな存在です。リーダーの振る舞い一つで、職場の雰囲気がガラッと変わることもよくあります。
介護業界に長年携わっている社労士として、今、介護現場に求められるリーダー像とはどんなリーダーなのかを、現場の多くの職員と話しながら一緒に考えてきました。それを形にした研修が「リーダーの職場実戦力&人間力向上研修」なのです。
職員の定着率を安定させるには、職場のリーダーはとても大きな存在です。ただ、そこには管理者のマネジメントスキルだけではなく、リーダーとして必要な「人間力」もまた求められます。
この研修では、リーダーが職場で抱える問題に対処出来る「マネジメント力」を身に付けて頂くと共に、リーダーシップを発揮するために必要な「人間力」も事例を通じて学んで頂きます。また、ワークを通じて、受講者の「気づき」を促し、各職場での実践力も養います。
介護リーダーに必要なマネジメント力(職場実践力)とは
例えば、介護現場では、いつも何かに追われているのが介護リーダーではないでしょうか?とにかく忙しい、介護リーダーの方々に、その役割を聞いてみると、様々なご意見を聞くことできます。
「スタッフの不安や不満を聞く役割」
「全体をまとめて引っ張る役割」
「介護職のまとめ役」
「上からも下からも不満をぶつけられる役目(板挟み)」
「休んだ現場スタッフの代わりに現場に入る役割」
「看護師(他職種)との連携係。連携というより調整業務」 など等。
主任やリーダーは、業務量が多く、一方では仕事に対する充足感や満足感を得ている人は少ないように思われます。また、自分がリーダーに向いていると、自信を持って言える人もなかなかいません。多くのリーダーが現状の課題に向き合う中で、日々悩み葛藤し、ご利用者の方々と接しているのが現状ではないでしょうか?
では、そもそも、リーダーに期待される本当の役割とは何なのでしょうか?
チームを引っ張る? スタッフをまとめる? 上司と部下のパイプ役?
では、これらは具体的にどのような行動を言うのでしょうか?
多くのリーダーや主任が、そんなイメージに縛られて見えない虚像と戦っているように思えてなりません。
一方、例えば、介護の現場では、求められる介護もユニットケアや小規模ケアが主流になるなか、ケアシステム自体も大きく変化してきています。その変化に対応するためには、期待される介護スタッフのあり方も、また変化しています。ご利用者の為に、今自分ができる事、すべき事は何なのかを、自分の頭で考え、行動ができるスタッフが求められているのです。そのために必要なものは、スタッフ一人一人の「自律」です。
まさにこれからのリーダーに期待される本当の役割は、「スタッフ一人一人が自律を目指すチーム作り」なのです。
それは例えば、リーダーからの「責任と権限の移譲」や「目標設定と実践に向けた取り組みと評価制度」であり、また職場内で、それぞれのスタッフの意見が尊重される風土作り、といった「職場環境づくり」です。
そのような職場作りのために必要な職場で必要な「具体的な行動」ついて研修では学び
ます。
研修の内容はこちらから
⇒https://www.hayashi-consul-sr.com/service2/menu2-2/