介護
職員採用において「面接では良い人材だと思ったのに、すぐ辞めてしまった」「現場と合わずトラブルになった」といった悩みは、多くの企業で共通しています。特に介護・保育・クリニックなどの対人サービス業では、人材の定着が経営を大きく左右します。
こうした課題の根本原因の一つが「採用ミスマッチ」です。そして、そのミスマッチを防ぐ有効な手段として注目されているのが「適性診断」です。本記事では、社労士の視点から、適性診断の重要性と導入すべき理由を実務ベースで解説します。
採用ミスマッチが起きる本当の理由
採用ミスマッチが発生する最大の要因は、「見える情報」と「見えない情報」のギャップです。
履歴書や職務経歴書では、資格や経験といったスキルは把握できます。また、面接では人柄やコミュニケーション力をある程度確認できます。しかし、実際の現場で重要となるのは、以下のような“見えにくい要素”です。
- ストレス耐性
- 協調性・対人関係力
- 指示への反応傾向
- 感情コントロール
これらは面接だけでは正確に把握することが難しく、結果として「採用してみないと分からない」という状態に陥ります。特に介護や保育の現場では、対人ストレスが高いため、この見えない部分のズレが早期離職につながるケースが非常に多いのです。
適性診断とは何か?
適性診断とは、応募者の性格特性や行動傾向、職種適性などを客観的に測定するツールです。
例えば、以下のような項目を数値化・可視化します。
- 協調性の高さ
- ストレス耐性
- 主体性・積極性
- ルール遵守傾向
- 対人コミュニケーションタイプ
つまり、適性診断は「面接では見抜けない部分を補完するツール」であり、採用の精度を高めるための重要な判断材料となります。
適性診断を導入すべき5つの理由
① 採用ミスマッチを防止できる
最大のメリットは、やはりミスマッチの防止です。性格や価値観が組織と合っているかを事前に把握することで、「入社後に合わない」というリスクを大幅に低減できます。
② 定着率の向上につながる
適性が合った人材は、職場への適応がスムーズです。その結果、早期離職が減り、定着率の改善につながります。特に人材不足が深刻な業界では、この効果は非常に大きいといえます。
③ 面接の質が向上する
適性診断の結果をもとに面接を行うことで、より深い質問が可能になります。
例えば、「ストレス耐性が低め」という結果が出た場合、その対応方法や過去の経験を具体的に確認できます。これにより、面接の精度が格段に向上します。
④ 配属ミスを防ぐことができる
同じ職種でも、現場によって求められる適性は異なります。例えば、
- 忙しい現場 → スピード・柔軟性重視
- 落ち着いた現場 → 丁寧さ・安定性重視
適性診断を活用すれば、配属先との相性を見極めることができ、配置ミスによる離職を防ぐことが可能です。
⑤ 管理職との相性も把握できる
見落とされがちですが、「上司との相性」は離職理由の大きな要因です。適性診断により、指示の受け方やコミュニケーションスタイルを把握することで、組織内の人間関係リスクを軽減できます。
適性診断を導入しないリスク
適性診断を導入していない場合、企業は大きなリスクを抱えることになります。
例えば、1人の採用にかかるコストは、広告費や教育コストを含めると50万円〜100万円程度になることも珍しくありません。にもかかわらず、ミスマッチによって短期間で離職してしまえば、その投資は無駄になります。
さらに、現場の職員に負担がかかり、既存スタッフの離職を招くという“負の連鎖”も発生します。これは経営にとって非常に大きな損失です。
適性診断の効果的な活用方法
適性診断は導入するだけでは意味がありません。重要なのは「使い方」です。
実務上は以下の流れがおすすめです。
- 書類選考後に適性診断を実施
- 結果をもとに面接質問を設計
- 配属や教育方針の参考にする
- 入社後のフォローにも活用
このように、採用から定着まで一貫して活用することで、初めて最大の効果を発揮します。
よくある誤解「適性診断は当てにならない?」
「適性診断は当てにならない」という声もありますが、これは半分正解で半分誤解です。
確かに、適性診断だけで採否を決めるのは危険です。しかし、面接と組み合わせることで、判断の精度は大きく向上します。
つまり、適性診断は「万能ツール」ではなく、「意思決定を支える材料」として活用することが重要です。
まとめ|採用は“確率”ではなく“精度”の時代へ
これからの採用においては、「なんとなく良さそう」という感覚的な判断ではなく、データに基づいた意思決定が求められます。
適性診断は、採用ミスマッチを防ぎ、定着率を高めるための有効な手段です。特に介護・保育・クリニックといった対人サービス業では、その重要性はますます高まっています。
採用に課題を感じている企業こそ、適性診断の導入を検討すべきタイミングです。
採用の質を高めたい、離職を減らしたいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。適性診断の導入から運用まで、実務に即したサポートを行っています。
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政府は3日、2027年度の制度改正に向けて介護保険法や老人福祉法、社会福祉法などの改正案を閣議決定した。今国会での早期の成立を目指す。
住宅型有料老人ホームの入居者に特化したケアマネジメントの新たなサービス類型の創設を打ち出した。名称は「登録施設介護(予防)支援」とした。
介護付きホーム(特定施設)と同様に、原則1割の定率の利用者負担を徴収する。
政府は今回の制度改正で、中重度の要介護者らを受け入れる住宅型ホームを対象に事前規制の登録制を導入する方針で、これも改正案に盛り込んでいる。既存の住宅型ホームの多くにこの登録制が適用される見通しだ。
新たな「登録施設介護支援」は、この登録制の対象となる住宅型ホームの入居者に特化したサービス類型。
既存の居宅介護支援とは別のスキームで、ケアプランの作成や生活相談を包括的に提供する形態が想定されている。創設時期については、改正案に公布後2年以内に政令で定める日と記載された。
いわゆる「囲い込み」の是正や利用者負担の導入などが狙い。
介護付きホームとの制度的な均衡を確保しつつ、給付費の適正化につなげる狙いがある。報酬単価や運営基準といった制度のディテールは、2027年度の介護報酬改定に向けた議論のプロセスで決められていく。
今年に入り、AIの進化が止まらない、という話をよく耳にします。確かに毎週のように新しいツールが登場し、旅行の下調べや計画立案をAIに任せる人が目に見えて増えてきました。私たちの周りでも、すでに使い始めている人がいるのではないでしょうか。
「介護旅行は準備が8割」。
体の不自由なお客様の移動手段、バリアフリーの宿、食事の配慮、緊急時の医療機関ーーその下調べと段取りに、トラベルヘルパーは誰よりも多くの時間と手間を費やしてきたはずです。その「準備8割」の中身が今、AIによって大きく変わろうとしています。
旅には「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」の三段階があります。
AIが得意とするのは「旅マエ」の情報収集、日程の立案、バリアフリー情報の整理です。「旅アト」の記録や引き継ぎにも力を貸してくれるでしょう。この分野においてAIは、私たちの実務の大きな助けになると思います。
では「旅ナカ」はどうか。
車いすを押す手、段差を越える瞬間の声かけ、お客様が窓の外の景色に目を細める瞬間、久しぶりの潮の香りに表情がほぐれていく様子ーーそうした感情の揺れを感じ取り、ともに喜ぶことは、AIには任せられません。人と人の信頼関係と、その場にいる人間だからこそ生まれる感動が、「旅ナカ」の時間をつくっています。むしろ旅マエの準備にかかる手間が減った分だけ、出発前のお客様やご家族との対話に、より多くの時間とエネルギーを使えるようになるのではないでしょうか。
ただ、AIが示す情報をどこまで信頼し、何を自分の目と足で確かめるかを判断する力は、これまで以上に問われます。情報が増えるほど、それを見極める経験と判断力が必要になります。これはトラベルヘルパーが長年の現場で積み上げてきたものであり、AIには簡単に代えられないものです。
AIはあくまでも道具のひとつです。
それを使いこなしながら、旅の現場でしか感じられないものに全力を注ぐーーそういうトラベルヘルパーが、これからの介護旅行を切り拓いていくのだと思います。( 出典:週刊トラベルヘルパー 篠塚登紀雄より転載)
厚生労働省は3月31日、介護職員初任者研修の運用ルールを改正してオンラインでの受講を正式に認める方針を示した。
介護保険最新情報Vol.1490で現場の関係者に広く周知している。
新たな恒久ルールを2027年4月から施行する。これに伴い、コロナ禍を受けて認めてきた通信学習ですべて実施できるようにする特例を、2027年3月末をもって廃止するとした。
受講者の負担を軽減し、ホームヘルパーなどで働く資格を取得しやすい環境を整えることが狙い。従来の対面を基本とする運用ルールを改め、受講形態の大幅な弾力化に踏み切る。
今後は対面のほか、オンラインを活用する形態、あらかじめ録画された動画を視聴する形態、あるいは従来の通信学習(郵送など)とオンラインを組み合わせた形態などで実施することが可能となる。
※ 通信学習には時間数の上限あり。
厚労省はオンラインなどの導入にあたり、初任者研修の質を担保するための要件を設けた。
講師へ質問できる機会を確保するほか、研修途中での試験や課題、レポートなどで理解度を確認することを求めた。リアルタイムのオンラインの場合について、受講者の画面が常に表示されていることをチェックすべきと要請。あらかじめ録画された動画を利用する場合は、添削や面談などで十分な指導を併せて行うよう念を押した。
一方で、実技を学ぶ演習・実習については引き続き対面での実施を必須とした。
ただし、別会場に講師を配置するサテライト型など同様の効果が認められる形態は、対面に含めるとしている。
自治体から国に対し、初任者研修の運用ルールの弾力化を求める声が上がっていた経緯がある。厚労省はこのほか、生活援助従事者研修についても同様にオンラインなどの受講を認める方針を示した。
「補正予算補助金」Q&A(第2版)が2026年3月13日に公表
介護職員の賃上げに向けて支給される、今年度の補正予算による補助金。1月21日に公表済みの第1版をベースとして、一部の項目を追記・更新する形で第2版のQ&Aが3月13日に公表されました。全部で22問の問いが記載されていた本Q&Aの約半分ほどの13問を抜粋し、内容について確認してまいります。
(問)
介護サービス事業所等からの計画書及び実績報告書の提出受付開始時期・提出期限はいつか。
(答)
各書類の提出受付開始時期・提出期限については、各都道府県において、事業スケジュールを踏まえ、適切に設定することとしている。
(問)
法人本部の人事、事業部等で働く者など、介護に従事していない職員について、補助額に基づく賃金改善や職場環境改善の対象に含めることは可能か。
(答)
法人本部の職員については、補助金の対象である介護サービス事業所等における業務を行っていると判断できる場合には、賃金改善や職場環境改善の対象に含めることができる。補助金の対象となっていない介護サービス事業所等の職員は、本補助金を原資とする賃金改善や職場環境改善の対象に含めることはできない。
(問)
代表取締役等の役員等が、その事業所の職員として介護サービスを提供している介護サービス事業所等(例えば、職員が一人であり、ケアプラン作成業務を代表取締役等の役員等が行っている指定居宅介護支援事業所など)について、当該役員等を補助金による賃金改善の対象に含めることができるか。
(答)
・補助金の申請対象となる介護サービス事業所等における業務を行っていると判断できる場合には、本補助金を原資とする賃金改善の対象に含めることができる。
・そのため、職員が一人であり、ケアプラン作成業務を代表取締役等の役員等が行っている居宅介護支援事業所などについても、補助金を申請し、当該役員等を補助金による賃金改善の対象に含めて差し支えない。
(問)
本事業における補助対象経費は、賃金改善経費と職場環境改善等経費の2種類があるが、国保連が交付事業所等に対し補助額を通知する際は、補助額の総額のみが示される。本事業においては、実績報告書の提出の際に、「賃金改善の所要額」が、「補助金の総額のうち賃金改善経費の総額」以上となっていることを確認する必要があるが、介護サービス事業所等及び都道府県において、どのように「補助金の総額のうち賃金改善経費の総額」の値を確認するのか。
(答)
介護サービス事業所等の事務負担を軽減する観点から、「補助金の総額のうち賃金改善経費の総額」の値は、介護サービス事業所等が交付を受けた補助額に、介護サービス事業所等が交付を受けた補助額の交付率を分母とし、交付率のうち賃金改善経費分の交付率を分子とした割合を乗じて算出した額(1円未満の端数は四捨五入。)をもって確認することとする。
なお、各サービスにおける交付率と、そのうち賃金改善経費分の交付率については、実施要綱別紙1表1から表3までに記載されているとおり。上記方法により算出された「補助金の総額のうち賃金改善経費の総額」の値が、別紙様式3-2の「①+②(賃金改善経費分)」の欄に表示される。
(問)
「厚生労働省がケアプランデータ連携システムと同等の機能とセキュリティを有するシステム」とは、どのシステムのことか。
(答)
「居宅介護支援費に係るシステム評価検討会」において、ケアプランデータ連携システムと同等の機能とセキュリティを有するシステムとして認められたシステムを指す。
令和8年3月13日現在では、
・カナミッククラウドサービス(株式会社カナミックネットワーク)
・ケアプランデータ連携サービス(株式会社富士通四国インフォテック)
・「でん伝虫」データ連携サービス(株式会社コンダクト)
・まめネット ケアプラン交換サービス(特定非営利活動法人 しまね医療情報ネットワーク協会)
が該当しているが最新の認定状況については、ホームページ(※)にてご確認されたい。
※ https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44833.html
(問)
医療・介護サービスどちらも提供している訪問看護ステーションについて、医療分野の賃上げ支援補助金と本補助金の双方を申請することは可能ということか。
(答)
貴見のとおり。
(問)
補助対象経費として「研修費」とあるが、どの範囲までを「研修費」として取り扱って良いのか。
(答)
研修に要する費用として切り分けられるものであれば、対象経費として充当できる。この際、職場環境改善に資する研修であれば幅広に対象とすることができるが、基準上取り組むことが義務づけられているものであって、かつ、職場環境改善とは趣旨が異なる研修に要する費用について、本補助金を充てることは、補助金の趣旨とは異なると考えられる。
(問)
補助対象経費の使途として「介護助手等の募集経費」とあるが、どのような経費が対象となるのか。
(答)
主な使途として、求人広告に係る費用や、求人チラシを印刷する費用等を想定しているが、人材紹介会社の紹介手数料についても、対象経費とすることが可能。ただし、すべて介護助手等の募集に係る経費に限る。
(問)
職場環境改善経費について、介護助手等を募集するための経費や研修費以外に、どういった経費が対象経費として含まれるのか。
(答)
職場環境改善経費については、介護助手等を募集するための経費又は職場環境改善等のための様々な取組を実施するための研修費に充当することを基本とするが、補助金の要件としている「介護職員等の業務の洗い出しや棚卸しなど、現場の 課題の見える化」、「業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち 上げ又は外部の研修会の活動等)」又は「業務内容の明確化と職員間の適切な役割 分担(介護助手の活用等)の取組」に関する取組を実施するために要する費用のうち、介護テクノロジー等の機器購入費用ではないもの(専門家の派遣費用、会議費等)に充当することも可能である。その他の職場環境改善に要する費用全般に充当することは想定していない。
(問)
職場環境改善経費については、通知において、「介護テクノロジー導入・協働化等支援事業の対象経費(介護テクノロジー等の機器購入費用)に充当することはできない。」とされているが、介護テクノロジー導入・協働化等支援事業の対象経費であるか否かに関わらず、介護テクノロジー等の機器購入費用に充当することはできないということか。
(答)
貴見のとおり。
(問)
法人単位での申請は可能か。
(答)
補助金の申請は介護サービス事業所等が所在する都道府県ごとに行う必要がある。同一都道府県内に所在する介護サービス事業所等について、同一の計画書を用いて、法人単位で申請することができる。都道府県ごとに振込先の指定方法等が異なる場合もあることから、補助金の計画書は各都道府県から示されたものを用いること。
(問)
計画書において、③部分の補助金の使途について、「職場環境改善経費への充当」のみ選択していた場合であっても、その後の実施状況において「賃金改善の実施」 を行った場合、実績報告においては「C 職場環境改善の所要額((ア)~(ウ) の合計)」に加えて「B 賃金改善の所要額」に③部分の補助額を記載して報告をすることは可能か。
(答)
貴見のとおり。既に計画書を都道府県に提出しており、計画書提出時点で想定していた使途をやむを得ず変更する必要がある場合であっても、事務負担を鑑み、都道府県への計画書の再提出を一律に求めないこととする。
(問)
本事業に加え、重点支援地方交付金による中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備事業を活用することは可能か。
(答)
同じ経費について、複数の補助金による補助を受けることは認められないが、両方の活用(※)は可能。
※ 例えば、本事業による賃上げ等の金額への上乗せや、本事業の支援対象者や対象経費を広げる横出しとして交付金を活用するといった方法が考えられる。
職員の「感情」を理解しつつ、有益な取り組みの展開を
以上、今月のニュースレターでは公表されたQ&A全22問の中から13問を抜粋し、採り上げさせていただきましたが、お時間がある際に是非、下記URLにアクセスし、必ず全体に目を通していただきたく思います。どこにウェイトを置き、どのような配分のもと、どのような活用を企画するか・・・・?この点については各法人の置かれている状況によって大きく異なるかと思います。その意味でも現状を冷静に分析しつつ、法人にとっての本質的な改善につながることは勿論、現状だけでなく未来を見据えた視座から打ち手を検討いただきたいな、と感じる次第です。
※本ニュースレターの引用元資料はこちら。
https://www.mhlw.go.jp/content/001673832.pdf
■もはや「選ばれるための必須要件」になっている
「人数が増えてきて目が届かなくなってきたから、そろそろ人事評価制度を入れよう」
以前はこのように考えられることが多かったかもしれません。ところが、いまや状況は大きく変わってきています。
学校のキャリアセンター(昔は就職課といっていました)では、就職先の企業に人事評価制度があるかどうかが重要確認項目になっています。
ハローワークなどでも「地域」「給与」などというような条件とともに人事評価制度の有無も確認事項になってきているのです。
つまり、人事評価制度は「あったらいいもの」から「選ばれるための必須要件」になってきているということなのです。
■「採用」に有利――見えるスペックとしての人事制度
募集をしても人が来ない、採用ができない―――。
未曾有の人材不足の時代、どの企業でも抱えている重要な問題ではないでしょうか。
採用時、求職者はまだ会社の中身を詳しくは知りません。
ですから、給与額、休日日数、労働時間といった「見えるスペック」で判断せざるを得ないのです。
そして、その「見えるスペック」のひとつとして「人事評価制度があるかどうか」が大きな判断材料になってきているのです。
人事制度があるということは、「この会社は自分の成長やキャリアを考えてくれている」「頑張りをちゃんと認めてくれる仕組みがある」というメッセージになります。
■「定着」に効果――動機づけ要因として機能する
実は「採用」と「定着」に影響を与える取り組みは、同じような内容と思われがちですが、実はちょっと違ったりします。
ハーズバーグの2要因理論というものをご存じでしょうか。
人のモチベーションには「衛生要因」と「動機づけ要因」の二つがある、というものです。
「衛生要因」とは、給与、労働時間、休日といった条件面のこと。これらは欠けてしまうと一気に不満足になってしまいます。採用時には非常に重要な「見えるスペック」です。
しかし、どれだけ良い条件にしても、それは大きな満足にはならず、それがまた基準となって引き下がると不満になってしまう――――そういう性質のものなのです。
一方で「定着」には「動機づけ要因」が重要になります。
頑張ったら上司、会社から承認される。ここにいたら成長できる。目標の達成感がある。責任のある役割を与えられたり、頼りにされる――――。
これらの「動機づけ要因」は足りなくても不満の声は上がってきませんが、満足度は引きあがらないのです。
どんなに左の「衛生要因」を整備して人を採用しても、右の「動機づけ要因」がないと、人は辞めていってしまうかもしれません。特に前向きで成長意欲のある人から。
そして、この右の「動機づけ要因」は、ほとんどが「人事評価制度」を適切に運用することで大きな影響を与えることができるのです。
「人事評価制度」があることが、採用にも定着にも非常に重要なのですね。
■「将来を見せる」ことができる――不安を安心に変える
人事評価制度があるということは、社員に「将来を見せる」ことができるということでもあります。
「この会社で頑張っていったら、自分はどうなれるのか」「どういうキャリアを歩めるのか」――――。
等級制度があれば、どのような役割を担っていけば次のステップに進めるのかが明確になります。
評価制度があれば、何を頑張れば認められるのか、どんなスキルを身につければ成長できるのかが見えてきます。
賃金制度があれば、頑張った結果がどのように給与や賞与に反映されるのかがわかります。
この「見える化」が、社員の不安を安心に変えるのです。
逆に、人事制度がないとどうなるでしょうか。
「頑張っても認められるかどうかわからない」「この会社にいても将来が見えない」――――。
そう思われてしまったら、優秀な人ほど他の会社に目を向けてしまうかもしれません。
■データが証明する人事制度の効果
実は中小企業庁が興味深いデータを出してくれています。
2015年と2020年を比較した売上増加率を、人事評価制度の有無別に見たもの。
やはり人事評価制度のあるところの方が業績は上がっているという結果が出ているのです
考えてみれば当然でしょうか。
会社目標に向かって個人が目標を立て進んでいく、求める人材像を明確にして、それを伸ばして人材育成を行なっている――――。
当然差が出てくることでしょう。
■いまこそ、人事制度という武器を
人事評価制度は、もはや「あったらいい」ものではなく、企業規模にかかわらず必須のものになってきています。
採用においても、定着においても、人材育成においても。
そして業績向上においても。
人事制度があることは、大きな武器になるのです。
いま、この武器を手にしていますでしょうか。
それとも、これから手にしていくところでしょうか。
はじめに
「管理監督者だから残業代は不要」
このような理解で運用している事業所は、介護・保育・クリニック業界において非常に多く見受けられます。しかし、これは大きなリスクを孕んでいます。
労働基準法における管理監督者は、単なる役職者ではなく、極めて限定的に認められる存在です。誤った運用は未払い残業代請求や労働基準監督署の是正勧告につながるため、正しい理解と実務対応が不可欠です。
本コラムでは、現場で頻発する問題点と、その具体的な対応策を解説します。
管理監督者とは何か(基本整理)
労働基準法第41条における管理監督者は、以下のような特徴を持つ者を指します。
- 経営者と一体的な立場にある
- 労働時間の裁量がある
- 重要な人事・経営判断に関与する
- 賃金面で優遇されている
重要なのは、「肩書きではなく実態」で判断される点です。
現場で多い3つの誤解
①「管理職=管理監督者」という誤解
例えば、以下のようなケースです。
- 介護施設のフロアリーダー
- 保育園の主任保育士
- クリニックの看護師長
これらは一般的に「管理監督者」とは認められないケースが多いです。理由は、経営判断権限が限定的であるためです。
②タイムカード管理をしている
管理監督者であれば、本来「厳密な労働時間管理」は不要です。
しかし実務では
- 出退勤時刻が厳格に管理されている
- 遅刻・早退で給与控除がある
このような状態であれば、労働者性が強く、管理監督者とは認められにくくなります。
③賃金が一般職と大差ない
管理監督者には、以下が求められます。
- 役職手当が十分に高い
- 年収ベースで一般職より明確に上位
例えば、
「月2万円の役職手当のみ」
では、管理監督者性は否定される可能性が高いです。
実務上の典型的トラブル事例
事例①:訪問介護事業所のサービス提供責任者
サービス提供責任者を「管理監督者」として残業代未払いとしていたが、以下の理由で否認。
- シフトに完全拘束
- 採用権限なし
- 利用者対応中心
結果:過去2年分の残業代支払い
事例②:保育園の主任保育士
主任であることを理由に残業代不支給としていたが、
- 園長の指示に従うのみ
- 労働時間の自由なし
結果:労基署是正+職員の不信感増大
事例③:クリニックの事務長
名ばかり事務長で実態はプレイヤー業務中心
- レセプト業務に従事
- 医師の指示に従属
結果:未払い残業代+退職後請求
管理監督者が否認されるリスク
管理監督者として認められなかった場合、以下のリスクがあります。
- 未払い残業代(最大3年分)
- 付加金(同額)
- 労基署の是正勧告
- 採用・定着への悪影響
特に介護・保育業界では「人材不足」が深刻であり、信頼低下は致命的です。
実務対応策(重要ポイント)
①「管理監督者にするか」を再検討する
結論として、以下の職種は原則対象外と考えるべきです。
- サ責(サービス提供責任者)
- 主任保育士
- 看護師長(小規模クリニック)
無理に管理監督者扱いをするよりも、「適切に残業代を支払う」方がリスクは低いです。
②要件を満たす場合の制度設計
本当に管理監督者とする場合は、以下を整備します。
・権限の付与
- 採用・評価への関与
- シフト決定権
- 業務指示権
・労働時間の自由度
- 出退勤の裁量
- 遅刻早退の不問
・待遇の引き上げ
- 年収で明確な差をつける
- 役職手当の増額
③代替制度の活用
現実的には以下の方が有効です。
・固定残業代制度
一定時間分の残業代をあらかじめ支給
・役職手当+残業代支給
管理職としての処遇をしつつ法令順守
・変形労働時間制
介護・保育では特に有効
④就業規則の見直し
重要なチェックポイント
- 管理監督者の定義が曖昧
- 実態と規定が不一致
- 手当の根拠が不明確
これらはトラブルの原因となります。
介護・保育・クリニック特有の注意点
人手不足による「名ばかり管理職」
現場ではプレイヤー業務が中心になりがちです。
これにより、管理監督者性が否定されやすくなります。
感情トラブルへの発展
未払い残業は単なる金銭問題ではなく、
- パワハラ認定
- 退職トラブル
に発展するケースもあります。
まとめ
管理監督者制度は「便利な残業代回避手段」ではありません。
むしろ、誤った運用は大きな経営リスクとなります。
特に重要なポイントは以下の3点です。
- 肩書きではなく実態で判断される
- 権限・裁量・待遇の3要素が必須
- 無理に適用せず代替制度を検討する
最後に(専門社労士からの提言)
介護・保育・クリニック業界では、「現場優先」の文化から制度設計が後回しになりがちです。
しかし、これからの時代は
「労務管理=採用力」
です。
管理監督者の適正運用は、単なるコンプライアンスではなく、
人材定着と経営安定の基盤となります。
一度、自社の管理職の実態を見直してみることを強くお勧めします。
全国の事業所で「ケアプランデータ連携システム」の普及が一気に加速している。
新たな補助金や新年度の介護報酬の臨時改定がトリガーになった。訪問介護や通所介護、居宅介護支援などの「処遇改善加算」の取得要件に、その利用が明確に位置付けられたことで先行きも決まった。今後、在宅領域ではケアプー対応がマストになる。
ただ、実際に導入したものの「従来の業務慣習から脱却できない」「現場の負担が減らない」と戸惑う事業所は少なくない。持てる機能を有効に使い、真の生産性向上につなげるためには何が必要か。
ケアプー活用で内閣総理大臣表彰も受けた株式会社トライドマネジメントの長谷川徹代表に聞いた。
顕在化する生産性の二極化
「幅広い介護従事者を対象とする形で、新年度から処遇改善加算が拡充されるインパクトは非常に大きい」
長谷川代表は新年度の臨時改定をこう評価した。処遇改善加算の取得要件を満たす最適解は、もはや「ケアプー一択」と言っても過言ではない。
しかし、その「導入」は単なる通過点に過ぎない。何より大切なのは、これから全国で本格稼働されていく「介護情報基盤(*)」への対応を含め、ケアプーをうまく「利用」していくことにほかならない。
* 介護情報基盤=介護保険証や要介護認定、主治医意見書、ケアプランといった現場で必要な情報を、利用者、事業所、医療機関、市町村などがオンラインで迅速に閲覧・共有できる新たなインフラ。厚労省は今年4月から活用を順次スタートし、2028年4月までに全国すべての市町村で運用を始める準備を進めている。
注)この記事では配信当初、上記の補足説明中の記載が「来年4月から活用を順次スタート」となっておりましたが、正しくは「今年4月から活用を順次スタート」でした。お詫びして訂正いたします。この記事はすでに訂正を反映済みです(2026年3月23日14時04分)。
「今ここで、ケアプーを導入するにあたって四苦八苦している事業所は、少し取り組みのスピードを上げた方がいいかもしれない」
長谷川代表は警鐘を鳴らす。地域では事業所間のデジタル格差が広がり、生産性の二極化が進行している。この地平の先で、時代の変化を前に立ち止まったままの事業所が淘汰されていく未来を予見し、「あまり猶予はない」という焦燥感を強めているようだった。
「土台がなければ進まない」
ケアプーの有効活用に向けて、長谷川代表は真っ先に必要なことに「対話」をあげた。
「なぜ導入しなければならないのか」「これからどうなりたいのか」
現場と徹底的に話し合う場を持つべきだという。
経営層が現場にタスクを与え、「これやっといて」と指示するだけの手法は通用しない。自ら現場に入り、旗振り役として積極的にコミュニケーションの機会を設けることが不可欠だ。
長谷川代表は「業務フローの転換はデジタル化と捉えられがち。もちろん間違いではないが、実はローカルの準備、環境整備といった土台がなければ進まない」と語る。
業務フローの転換は、とりわけその初期に必ず一定の負担を伴う。新たなシステムの導入などでやり方を変えれば、どうしても一時的に生産性が低下してしまう。
必然的に、職員はこれを「忙しいのに仕事が増えた」と捉える。取り組みを敬遠したり先送りしたりするほか、「無駄だ」「意味がない」などと強調することもある。
生産性を向上させたその先に、自分にどんな見返りがあるのか。もっと仕事をさせられるだけではないか。ここが不明確だと真剣に取り組まない職員もいる。
つまり、現場への丸投げで業務フローをうまく転換させることは難しい。経営層が明確な意思と方向性を示し、事業所内の共通理解を醸成していかなければならない。
ケアプーの場合、相手の事業所の対応状況も大きく影響する。こちらがデータで送っても、先方が紙で返してくることも「あるある」だ。長谷川代表は、「環境が十分に整うまではどうしても一定の時間がかかる。ここを無駄にせず、自社の業務フローをしっかり再構築する備えをしておくといい」と呼びかけた。
新たな仕組みがうまく回り始めれば効果は絶大だ。トライドマネジメントでは、利用者数が増えているにもかかわらず、FAX送信にかかる時間が月5時間弱から2時間弱へと大幅に短縮された。
長谷川代表は、「自社の課題解決にも合っているツールだと思ったし、厚生労働省や国保中央会というキーワードが出てくる以上、このツールが時代を変えることは間違いないと確信した。ケアプーのメリット・デメリットを分析しながらもこのツールを軸に、数ヵ月をかけて、どうすれば効率の良い業務フローが作れるかを、スタッフみんなで考えて実践した結果、次々と成果につながっていった」と笑顔を見せた。
ケアプーでは様々な書類を.pdfや.jpgなどで送受信するため、これを適切に保存することが不可欠となる。全て紙に印刷し、それぞれファイルに綴じるといった方法を抜本的に変えなければならない。
このため、多くの事業所がクラウドストレージを使うようになる。トライドマネジメントでは、事業所番号の記載やタグ付けなどのルールで必要な書類をすぐに引き出せる環境を作っており、これも業務負担の軽減につながっているという。長谷川代表は、ファイル管理の工夫も中長期的には重要な運用ポイントになると指摘した。
あるべき姿のために
まださほど多くはないが、一部の市町村では新年度から介護情報基盤の運用がスタートする。これが全国で始まると、また新たな業務フローへの転換がすべての事業所に求められるようになる。
新年度の処遇改善加算には「誓約」などの経過措置があるが、今なお猶予期間がたっぷりあるかと言うとそうでもない。ケアプーの有効活用を早めに実現しないと、その先の対応がすべて後手後手に回ってしまうリスクが高い。
長谷川代表は、「介護情報基盤の本格運用(2028年度から)を見据えると、さすがにもう時間が少なくなってきた。今のうちから対話を重ね、しっかりとした土台を作っていくことが欠かせない」との認識を示した。その上で「そうした取り組みはやがて事業所の成長につながり、地域の高齢者を支えることに結びつく」と呼びかけた。
2026年6月施行予定の介護報酬改定は、「処遇改善加算の抜本的強化」を中心とした異例の期中改定として位置付けられています。人材不足が深刻化する中で、単なる賃上げではなく「人材確保と定着を両立させる制度」へと大きく進化しています。
1.最大月額1.9万円の賃上げインパクト
今回の改定では、介護従事者全体に対して月額1万円のベースアップを基本とし、生産性向上等の取り組みに応じて最大1.9万円まで引き上げる設計となっています。
これは従来の「一部職種・一部配分」から脱却し、業界全体の底上げを狙ったものです。特に重要なのは、「加算額=賃上げ原資として確実に充当」が原則化された点であり、経営判断の自由度はむしろ制限されています。
2.対象の拡大:介護職員から“介護従事者”へ
最大の制度変更は、対象範囲の拡大です。
従来の「介護職員中心」から、事務職や補助職も含む介護従事者全体へと広がりました。
さらに、これまで対象外だった
・居宅介護支援
・訪問看護
・訪問リハビリ
などにも加算が新設され、サービス横断型の処遇改善制度へと進化しています。
これは、現場のチームケアの実態に即した制度設計と言えます。
3.生産性向上との連動が鍵
今回の改定で最も重要なキーワードが「生産性向上」です。
ICT導入や業務効率化を進めた事業所には、
・訪問介護:最大28.7%
・通所介護:最大12%
といった高い加算率が適用されます。
つまり今後は、
「人件費を上げるために生産性を上げる」構造が制度として明確化されました。
これは裏を返せば、
・ICT未導入
・アナログ運営
・非効率なシフト
のままでは、加算の取りこぼしが発生することを意味します。
4.2027年改定への“布石”としての位置付け
今回の改定は単発ではなく、2027年度の本格改定への準備段階とされています。
したがって、短期的な対応ではなく、
・人事制度
・評価制度
・賃金体系
を含めた「構造改革」が求められます。
5.社労士視点:今後の実務対応のポイント
介護事業所が取るべき実務対応は以下の5点です。
① 配分ルールの明確化
・基本給への反映か
・手当配分か
・賞与対応か
→「見える賃上げ」にしなければ離職防止効果は薄い
② キャリアパス要件の再設計
処遇改善加算は引き続き
・キャリアパス
・研修制度
・昇給ルール
が必須です。
→ 名ばかり制度では監査リスクあり
③ ICT・DX投資の意思決定
・見守り機器
・記録システム
・ケアプラン連携
→ 加算取得の前提条件化
④ 全職種型人事制度への移行
対象拡大により、
「介護職中心の制度」は限界
→ 事務・リハ・看護を含めた統合設計が必要
⑤ 採用戦略との連動
「処遇改善=採用ツール」として活用
→ 求人票・LPでの訴求が重要
6.まとめ:処遇改善は“経営改革ツール”
2026年改定の本質は、単なる賃上げではありません。
✔ 人材確保
✔ 生産性向上
✔ 組織改革
これらを同時に進めるための政策です。
したがって今後は、
「加算を取るかどうか」ではなく
「どう活かして経営を変えるか」
が問われる時代になります。





