介護

【院長先生必読】メンタル不調で休職・復職を繰り返すスタッフへの正しい対応と就業規則の防衛策

 

クリニックを経営する中で、院長先生を最も悩ませる問題の一つが「スタッフの健康問題」、特にメンタルヘルス不調による休職です。

「うつ病で休職していた看護師が復職したものの、数週間でまた体調を崩して欠勤し始めた」 「休職と復職を何度も繰り返していて、現場のシフトが回らない」 「本人は『働ける』と言い張るが、明らかに業務ができる状態ではない……」

少人数で運営しているクリニックにとって、1人のスタッフが断続的に休むことのダメージは非常に大きいものです。他のスタッフへの負担が増え、院内の雰囲気も悪化し、最悪の場合は連鎖退職を招くリスクすらあります。

今回は、クリニックの労務管理に精通した「医療社労士」の視点から、休職・復職を繰り返す職員への正しい法的な対応論と、トラブルを未然に防ぐための就業規則のカスタマイズ術を徹底解説します。

1. 意外と知らない「休職」の法的性質と「休職命令」の正しい使い方

そもそも「休職制度」とは何のためにあるのでしょうか? まずは、クリニックの経営者として知っておくべき基本的な法的性質を整理しておきましょう。

休職制度は「法律で義務付けられたもの」ではない

実は、休職制度は年次有給休暇や産前産後休業などとは異なり、労働基準法などの法令で義務付けられた制度ではありません。この事実は、医療業界でも意外と知られていないポイントです。

つまり、「そもそも休職制度を設けるか否か」「休職期間を何ヶ月にするか」「どういった要件で適用するか」は、クリニックが独自に(就業規則で)自由に定めることができるのです。

【休職制度の本来の趣旨】 病気やケガの療養のために一定期間、労働が不可能となった職員に対し、雇用関係は維持しながらも、労務への従事を免除(猶予)する制度です。すぐに退職や解雇とするのではなく、回復までの「猶予期間」を設けることで、職員の雇用の安定を図ることを目的としています。

休職は「本人からの申請」を待つ必要はない

多くの院長先生が「本人が休職届を出してこないから、対応ができない」と誤解されています。しかし、休職扱いにするか否かは、産業医や主治医の診断書を根拠に、雇用主(クリニック側)が客観的に判断して決めるべきことです。

スタッフ本人からの申請がなくても、客観的に見て「これ以上、継続して働くことは難しい」と院長先生が判断すれば、業務命令(人事命令)として「休職命令」を通知することができます。

「休職命令書」の書式できちんと通知する

休職は重大な人事命令です。口頭や曖昧なメールだけで済ませるのではなく、必ず「休職命令書」という書面を用意し、以下の必要事項を記載して本人に交付してください。

  • 休職を命じる理由(病気療養のため等)

  • 休職の期間(◯年◯月◯日 〜 ◯年◯月◯日)

  • 休職中の猶予期間が満了した際、治癒していなければ退職・解雇となる旨

このステップを正しく踏んでおくことが、のちのちの労務トラブルを防ぐ強固な防衛策となります。どういった書式を用意すべきか迷った場合は、医療現場の労務管理に強い「クリニック社労士」に相談し、ひな形を作成してもらうのが安全です。

2. なぜクリニックで「休職と復職の無限ループ」が起きるのか?

特にメンタルヘルス不調(うつ病や適応障害など)の場合、以下のような悪循環に陥るケースが多々あります。

  1. メンタル不調で休職(期間:6ヶ月)

  2. 4ヶ月ほど療養し、本人が「治ったので復職したい」と主張(医師の診断書を持参)

  3. 復職させるが、1ヶ月後に再発して再び欠勤

  4. 「新しい傷病(または別理由)」として、再びゼロから6ヶ月の休職期間がスタートする

このように、復職直後に再発して休職を繰り返されると、クリニック側はいつまで経っても「退職(雇用契約の終了)」の判断ができず、幽霊部員のような形で籍だけが残り続けることになります。この「無限ループ」の原因は、就業規則の不備にあります。

3. 【就業規則での対応策】トラブルを防ぐ「休職期間の通算規定」とは?

休職と復職を繰り返すスタッフに苦慮する事態を避けるためには、就業規則に「休職期間の通算(さん)規定」をあらかじめ設けておくことが絶対に欠かせません。

具体的には、就業規則に以下のような一文(条文)を追加します。

【就業規則の規定例】 「職員が復職後一定期間内に、同一傷病及び類似の傷病により再び欠勤または休職する場合は、新たに取得する休職期間と、従前に取得済みの休職期間を通算する。」

💡 通算規定を作る際の2つの重要ポイント

一般企業向けの就業規則テンプレートをそのまま使っているクリニックでは、この通算規定が抜けているか、あるいは内容が不十分なケースが多いです。「クリニックに詳しい社労士」がアドバイスする、実戦的なポイントは以下の2点です。

①「類似の傷病・症状」も対象に含めること

特にメンタル不調の場合、同じ原因や状態であっても、病院や医師が変わることで「うつ状態」「自律神経失調症」「適応障害」など、しばしば別の疾患名や症状名が付くことがあります。 就業規則に「同一の傷病名の場合のみ通算する」と書いてしまうと、「今回は違う病名だから別カウントです」と主張された際に対抗できません。必ず「類似の傷病・症状」という文言を入れて網羅性を高めましょう。

② 通算対象とする期間は「6ヶ月〜1年」に設定する

一般的には、復職してから「6ヶ月以内」または「1年以内」に再発した場合は、前回の休職期間の「続き(残り時間)」としてカウントする、という設計が多くなっています。

通算規定があると、どう変わるのか?(具体例)

例えば、クリニックの就業規則で「休職期間は最大6ヶ月」と定めており、通算規定(復職後6ヶ月以内)がある場合を考えてみましょう。

  1. 最初の休職: スタッフが5ヶ月間休職し、その後復職した。

  2. 復職後: わずか1ヶ月後に、再び類似のメンタル不調で働けなくなった。

  3. 再休職の扱い: 通算規定があるため、休職期間はゼロからスタートしません。残りの期間である「1ヶ月だけ」が再休職として認められます。

  4. 猶予期間の満了: この1ヶ月を経過しても病気が治癒しておらず、復職の見込みが立たない状況であれば、職員には厳しいようですが、就業規則の定めに従って「自然退職(または解雇)」という扱いになります。

もちろん、その後完全に病気が治癒し、その時点でクリニック側に人員の受け入れ余裕があれば、改めて「再雇用」を検討することは可能です。

こうした厳格かつ合理的な仕組みを整えておくことで、「いつ終わるかわからない休職対応」に院長先生や現場スタッフが疲弊していくのを防ぐことができます。

4. 人事評価制度や日頃のマネジメントとの連動も重要

休職・復職の問題は、就業規則という「守りのルール」だけでなく、日頃の「クリニック人事評価」という「攻めの仕組み」とも連動しています。

例えば、メンタル不調の引き金が「特定のスタッフによるハラスメント」や「過度な業務負担の偏り」である場合、いくらルールを厳しくしても根本的な解決にはなりません。

  • 各スタッフの業務量や役割が適切に評価されているか

  • 職種間のコミュニケーションが円滑に行われているか

  • 「体調に不安がある」段階で相談しやすい1on1(面談)の機会があるか

これらを日頃から「クリニック人事評価」やマネジメントの仕組みに組み込んでおくことで、スタッフが休職に至る手前で変化に気づき、ケアすることが可能になります。

5. まとめ:医療現場の労務トラブルは「医療社労士」へ相談を

スタッフの休職・復職を巡る問題は、一歩間違えると「不当解雇だ」「安全配慮義務違反だ」として、労働基準監督署への駆け込みや民事トラブル(裁判)に発展しやすい極めてデリケートな問題です。

世の中には多くの社会保険労務士がいますが、医療業界は夜勤やシフト制の複雑さ、専門職種のこだわりなど、一般企業とは異なる特殊な環境です。そのため、一般的な社労士ではクリニックの実情に即したアドバイスが難しいケースも少なくありません。

だからこそ、医療現場ならではの空気感やリスクを熟知した「クリニックに詳しい社労士」「医療社労士」のサポートを受けることが、結果として最も迅速かつ安全に問題を解決する近道となります。

就業規則の休職規定を見直したい、現在休職中のスタッフへの対応に困っているという院長先生は、トラブルが大きくなる前に、ぜひ一度専門家へご相談ください。

医療法人の労務管理・就業規則の改定は当事務所にお任せください

当事務所は、クリニック経営に特化した「クリニック社労士」として、数多くの院長先生の悩みを解決してきました。休職トラブルを防ぐ就業規則の整備から、スタッフが定着する人事評価制度の構築まで、トータルでサポートいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

医院クリニックを経営される院長先生へ〜クリニックに最適な社労士の選び方〜 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング

埼玉ケアマネ殺害、厚労省が安全確保の徹底を呼びかけ 全国の自治体へ通知

 

埼玉県川口市でケアマネジャーの女性が刃物で殺害される事件が発生したことを受けて、厚生労働省は3日、全国の自治体へ安全確保に向けた取り組みを徹底するよう呼びかける通知を発出した。

介護保険最新情報Vol.1508で現場の関係者に広く周知している。


厚労省は通知で今回の事件を踏まえ、「介護支援専門員など在宅介護従事者の安全確保を図ることが重要」と強調。都道府県や市町村の担当部局に対し、関係機関と連携して必要な対策を積極的に講じるよう要請した。


あわせて、国としても日本介護支援専門員協会など関係者と連携をとりつつ、安全確保に向けた取り組みを推進していくとした。

厚労省は通知で、ハラスメントから介護従事者を守る「対応マニュアル」などを改めて周知した。

 

とりわけ、

◯ 介護事業者のハラスメント対応は個々の職員に委ねず、組織として必要な体制を構築し、事前にリスク要因を把握して予防・対策の基本方針や具体的な対応を検討すること

◯ 事業所単独での対応が困難なケースに備え、地域ケア会議での情報共有に加えて、他職種、保険者、包括、保健所、事業者団体、法律の専門家、警察といった関係者と日頃から連携し、地域全体で相談・対応できる体制を築いておくこと

などが重要だと説明した。また、利用者宅への複数名での訪問や相談窓口の設置にかかる経費への助成など、国の支援メニューを自治体が活用できることも周知した。

【6月23日開催】介護業界経営改善セミナー 介護業界特化BPO活用術~人手不足時代の業務効率化と現場負担減~

 

 1,セミナー日時  

    6月23日(火)13:30~14:00

 2,セミナーテーマ

 (1)福祉現場の労務ガバナンスと勤怠管理

  事例で解説!現場の労務管理と法令違反リスク回避ポイント

 (2) 処遇改善加算管理の業務効率化

  複雑な計画書・実績報告書作成・届出をプロが完全バックアップ
  適用範囲の拡大が見込まれる加算要件と職員配分の不安を解消

 (3)助成金活用!BPOだから出来る戦略的活用法


  給与データを預かっているからこそ、受給漏れを防げる。受給できる
  助成金の診断や年々複雑になる申請の手続き代行

3,講師

  講師:林正人/三浦裕子
 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング
 介護業界専門社会保険労務士厚生労働省の最新動向を
 熟知し、全国の介護事業所の人事・労務を支える第一人

4.こんな方におすすめ

 ●処遇改善加算の要件確認や書類作成に追われ、残業が常態化している

 ●事務担当者が1〜2名しかおらず自分が休んだら業務が止まるプレッシャーがある

 ●助成金を活用したいが、情報が乏しく、そこまで手が回らない方

 ●毎月の給与計算時期には、他の重要業務(採用や面談)が全てストップしてしまう

5,お申し込みはお電話またはスマホQRコードから

 ⇒   QR

  TEL 03-6435-7075

  https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSd1dHq0wV_H4luYeAaKbtyUK1TArCtJ094tKZJEoMVDwe0tCQ/viewform

 

【日本版DBS】こども性暴力防止法、児発や放デイなど障害福祉の現場も義務・施行に向けて準備を

日本版DBSともいわれるこども性暴力防止法。障害福祉、特に障害児福祉の現場では影響が大きい。このため、こども家庭庁参事官の吉田昌司氏から法律が制定された背景や概要、障害福祉の現場への影響、事業者が準備すべきことなどについて寄稿していただいた。

こども性暴力防止法は今年12月25日に施行


文:こども家庭庁 支援局 参事官 こども性暴力防止担当 吉田昌司


こども性暴力防止法は一昨年6月に国会で成立(全会一致で成立)し、今年12月25日に施行されます。教育や保育の現場で、こどもを性暴力から守るための仕組みが動き出します。


こどもへの性暴力は、心身に対して重大な影響を及ぼし、その影響は長期に及ぶことがあるものです。絶対許されないものですが、報道でもよく取り上げられるように、残念ながら発生している現状があります。このような状況を踏まえて法律が制定されました


こども性暴力防止法について(概要)

こどもを性暴力から守るために日ごろからの取り組みも重要


この法律の内容は、大きく2つにわかれます。1つは、日本版DBSと称して、報道されるように、こどもと接する業務に就く人の性犯罪前科の有無を確認して、前科があると業務に就くことができなくなるようにするものです。再犯防止対策であり、重要な取り組みです。


一方、初犯が9割といったデータもある中で、それを防止する対策も重要となってきます。つまり、「従事者に対して性暴力を防ぐための研修を行う」「こどもが相談しやすい窓口などを設置し、広く周知する」「こどもの心身・行動に変化がないかを日常的に観察し、小さな変化やSOS信号を見逃さないようにする」などといった日ごろからこどもへの性暴力を防ぐための取り組みを、事業者の皆さんに各現場で実施いただくことです。

公立・民間を問わず指定を受けた児童発達支援、放課後等デイサービスなどは義務対象


法律の義務の対象は、障害者支援の関連でいえば、指定を受けた児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援といった障害児通所支援事業、障害児入所施設です。これらは、公立・民間を問わずすべての事業所が義務の対象となります(*)。


義務対象の事業者は上記のような取り組みを実施することが求められます。また、管理者、児童指導員など報酬算定の対象として法令上規定されている職員については、必ず犯罪事実確認などの対象となります。


* 居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所又は重度障害者包括支援といった指定障害福祉サービス事業は、こども家庭庁に申請し、認定を受ければ、法律の対象になります。認定を受ければ「こまもろう」のマークが活用できるなど、ほかの事業者と差別化を図ることができるようになります。

施行に向けて今から準備を


施行に向け、法律の成立後、専門家や関係団体の皆さんと議論を進め、今年1月にはガイドラインを発出しました。


こども性暴力防止法施行ガイドライン


また、事業者には、従事者に対して研修を受講させることが義務付けられています。それに活用できるよう、4月には研修動画などがアップされています。この動画は、理解しておくことが望ましい標準的な内容を整理したものです。是非この機会に一度ご覧いただければ幸いです。


こども性暴力防止法に関する研修動画(標準動画・従事者向け) – YouTube

また、こども家庭庁では施行に向けて事業者が活用できるチェックリストも用意しています。

事業者向けチェックリスト(こども性暴力防止法の施行までに必要な対応)


事業者の皆さんには、これらも活用して、今から、研修計画の策定や相談窓口の設置など準備を是非はじめていただきたいと考えています。次回以降、準備すべき具体的な事項などについてご紹介していきます。

 

LIFEのシステム移行作業、解説動画や操作マニュアル公開 厚労省

厚生労働省は22日、LIFE(科学的介護情報システム)の運営主体が国民健康保険中央会へ移管されたことに伴い、介護保険最新情報Vol.1504を発出した。

事業所・施設で必要な新システムへの移行作業について、新たに解説動画や操作マニュアルを公開。介護現場の関係者に広く周知した。


LIFEは今月11日から国保中央会による運用が始まっており、事業所・施設は旧システムから新システムへの移行作業が必要。LIFE関連加算を引き続き算定するためには、これを7月31日までに完了させなければならない。


厚労省は新たに公開した動画で、必要な移行作業のスケジュールや5月サービス提供分以降の加算の対応、ヘルプデスクに寄せられる主な質問への回答などを解説。あわせて操作マニュアルも公開した

 

【6/10開催】LIFEを「提出」から「活用」へ。現場を変える科学的介護の真髄

LIFEの実践とこれからの介護の質向上セミナー

2026年 6月10日 オンライン開催

第1部

新LIFEへのシステム移行「かんたん案内ガイド」
~介護事業所さんの目線で、準備や手続きをポイント解説〜
株式会社ビーブリッド

第2部
LIFEを「提出」で終わらせない実践術
〜現場を守る「データオーナー制」とフィードバックの活用〜

第3部
現場実践者の視点×行政の視点で語るLIFE活用の課題と展望

詳細はこちら ⇒

_HSC社向け_LIFEセミナー_リーフレット_修正版_軽量版

セミナー案内ページ

 https://www.bibrid.co.jp/service/seminar/list/post_3615/

 

申込フォーム

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【社労士解説】「2日後に有給で旅行に行きます」は拒否できる?介護・保育・クリニックの正しい労務対応とトラブル防止策

 

「2日後に旅行に行くので、有給休暇(年次有給休暇)をください」

もし、現場の職員からこのように急に有給申請されたら、経営者や院長先生はどう対応すべきでしょうか。特に、ただでさえ人手不足な上に、その日が1年で一番忙しい繁忙期や、シフトがカツカツの日だったとしたら、「今回は拒否したい…」と思うのが本音かもしれません。

介護施設、保育園、クリニックといった「人が人をケアする現場」では、1人の欠員がダイレクトに現場の崩壊やサービスの低下につながるため、有給休暇の取得を巡るトラブルが後を絶ちません。

今回は、医療・福祉業界専門の社会保険労務士(社労士)が、「職員からの急な有給申請は拒否できるのか?」「会社が持つ『時季変更権』の正しい使い方」、そして「急な有給申請に振り回されないためのルール作り」までを徹底解説します。

1. 結論:有給休暇の「拒否」は原則不可!ただし「時季の変更」は可能

まず法律上の結論からお伝えすると、会社が職員の有給休暇の取得を「完全に拒否(消滅)」させることは、原則としてできません。

有給休暇は、労働基準法によって労働者に認められた強い権利です。たとえその理由が「プライベートな旅行」であっても、取得理由を理由に会社が拒否することは違法となります。

◆ 会社に認められた唯一の対抗策「時季変更権」とは?

しかし、会社側にも現場を守るための権利が認められています。それが「時季変更権(じきへんこうけん)」です。

労働基準法第39条第5項(要約)

労働者が請求した日に有給休暇を与えることが、**「事業の正常な運営を妨げる場合」**においては、会社は他の日に変更させることができる。

つまり、「有給をあげるな(拒否)」とは言えませんが、「その日はどうしても困るから、別の日にずらしてほしい(変更)」と主張することは法律上可能なのです。

2. 単に「忙しいから」はNG!時季変更権が認められる「4つの判断基準」

ここで最も重要になるのが、「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、具体的にどのような状態を指すのかという点です。

裁判例などを踏まえると、単に「今日は業務が忙しいから」「いつも人手が足りないから」という慢性的な理由だけでは、時季変更権の行使は認められません。会社側が「代替要員を確保するために最善の努力を尽くしたけれど、どうしても無理だった」という客観的な事実が必要です。

特にシフト制で動く介護施設、保育園、クリニックにおいて、時季変更権が認められやすいのは以下のような4つのシチュエーションです。

① シフト変更の調整を尽くしたが、代替要員が確保できないとき

急な申請に対して、管理者が他の職員に「代わりにシフトに入ってもらえないか」と打診したり、出勤日の変更を調整したりしたものの、どうしても代わりの人が見つからなかった場合です。

② 有給の取得希望者が同じ日に重複し、現場が回らなくなるとき

同じ日、同じシフトの時間帯に、複数の職員から同時に有給申請が出てしまったケースです。全員を休ませると配置基準(人員基準)を割り込んでしまう、あるいは著しく診療や保育に支障が出る場合は、時期の変更を打診する正当な理由になります。

③ その職員にしかできない「代替不可能な重要業務」があるとき

他の職員では対応できない、その人独自の専門的な業務や、その日に完了しなければならない重大なタスクがある場合です。ただし、日頃から「属人化(その人にしかできない状態)」を放置している場合は、会社の管理不足とみなされることもあるため注意が必要です。

④ その日に外せない研修・教育訓練、または出張があるとき

以前から予定されていた重要な研修、行政による監査対応、あるいはその職員がメインで参加すべき出張などが重なっている場合です。

3. 【管理者必見】トラブルを防ぐための実務上の留意点

上記の4つの条件に当てはまる場合、法律上は「強制的に有給の日程を変更させること」が可能です。しかし、ここで感情的に「法律で認められているから、2日後の有給はダメ!変更しなさい!」と突っぱねるのは、実務上おすすめできません。

相手は感情を持つ「人間」。まずは話し合いから

特に介護・保育・医療の現場は、職員同士のチームワークとモチベーションが命です。強制的な命令を下してしまうと、職員の不満が溜まり、最悪の場合は「突然の退職」や「SNSへの悪評の書き込み」「労働基準監督署への駆け込み」といった二次トラブルに発展しかねません。

まずは、管理者(院長や施設長)から以下のようにアプローチすることをお勧めします。

  • 現状の共有: 「その日は〇〇さんの予約が詰まっていて、代替のスタッフも見つからないんだ」と、困っている状況を具体的に伝える。

  • 妥協案の提示: 「2日後からの旅行を、来週の〇〇日~〇〇日に変更してもらうことは難しいかな?」と、代替案を一緒に考える姿勢を見せる。

法律を盾に戦うのではなく、「お互いの事情を理解し合うための話し合い」を挟むことが、職場環境を維持するための実務的なテクニックです。

4. 2日前の申請は遅すぎる?就業規則で定めるべき「有給のルールとマナー」

今回の事例のように「2日前に旅行の申請をしてくる」という事態が起こる背景には、「職場内での有給取得のルールやマナーが曖昧になっている」という根本的な原因があります。

職員に気持ちよく、かつ現場に穴をあけずに有休を取得してもらうためには、就業規則で明確なルールを定め、周知徹底することが不可欠です。

◆ 「〇日前までの申請」は有効か?

労働基準法には「有給は何日前までに申請しなければならない」という具体的な期限の定めはありません。しかし、判例では「会社が代替要員を確保するために必要な、合理的な範囲内の期間」であれば、就業規則で申請期限を設けることは有効であるとされています。

あまりに長い期間(例:1ヶ月前までに申請など)は不合理とされる可能性が高いですが、「原則として7日前までに書面(またはシステム)で申請すること」というルールは、実務上も非常に合理的であり、有効です。

まずは、就業規則に以下の項目が正しく記載されているか確認しましょう。

  • 有給休暇の申請方法(書面なのか、LINEなどの連絡は不可なのか)

  • 申請の締め切り(例:前月〇日までのシフト提出時、または取得日の7日前まで)

  • 緊急時の対応(突発的な体調不良などの場合の事後振替ルール)

5. 職員への「マナー指導」が、強い組織を作る

ルール(就業規則)を作るだけでなく、朝礼やミーティングを通じて、職員へ「有給取得におけるマナーと配慮」について定期的に指導することも、社労士として強くお勧めしています。

有給は権利ですが、介護、保育、クリニックは「チームプレイ」で動いています。同僚に極端な負担をかけないよう、以下の4つの意識を職員に持ってもらうようアプローチしましょう。

指導すべき4つのマナー 具体的な内容
① 余裕を持った事前申請 旅行などの予定は、シフトが確定する前、あるいは少なくとも1〜2週間前には相談・申請する。
② 業務の引き継ぎ 自分が休んでいる間に発生する可能性のある業務や、担当している患者様・利用者様・園児の特記事項を事前に周囲へ共有しておく。
③ 代替要員への配慮 「お互い様」の精神を持ち、自分が休む代わりに、他の人が休むときには快くシフトを代わる姿勢を持つ。
④ 周囲への感謝の言葉 休み前や休み明けに「お休みをいただきありがとうございました」「ご協力ありがとうございました」の一言を添える。

こうした「お互い様の文化」が根付いている職場では、急な有給取得による不満やギスギスしたトラブルは自然と減少していきます。

6. まとめ:介護・保育・クリニックの有給トラブルは専門の社労士へ

職員からの急な有給休暇の申請に対し、単に「忙しいから」という理由で拒否することはできません。しかし、事前の調整を尽くしても代替要員が確保できないなど、「事業の正常な運営を妨げる事由」があれば、時季変更権を使って日程をずらしてもらうことは法的に正当な対応です。

大切なのは、以下の3ステップです。

  1. 就業規則で「7日前までの申請」などの合理的ルールを定める

  2. 万が一のときは、感情的に拒否せず「話し合い」で時期の変更を打診する

  3. 普段から「周囲への配慮と引き継ぎ」についてのマナー教育を行う

介護施設、保育園、クリニックは、一般的なオフィスワークとは異なり、現場の配置基準や独自のシフト体制があるため、労務管理が非常に複雑です。

「うちの現場の状況で、時季変更権は認められる?」

「トラブルにならない就業規則の書き方を知りたい」

とお悩みの経営者・院長先生は、ぜひ医療・福祉業界の労務管理に強い、専門の社会保険労務士(社労士)までお気軽にご相談ください。現場の実情に寄り添った、最適な解決策をご提案いたします。

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『産前産後休業と年次有給休暇の関係』

Q)当院には、まもなく産前産後休業(以下、産休)に入る職員がいます。年次有給休暇(以下、年休)が、数日残っているのですが、この年休を産休中に取れ
るのでしょうか?

 

A)産休中は、労務の提供義務が消滅しているため、年休を取得することはできません。ただし、産休前に年休の請求があった場合には、原則として産前休業
期間に限り、請求があった日に年休を取得することができます。

 

詳細解説:
1.産休と年休の関係
産休は、妊娠中・出産後の母体保護を目的とした労働基準法に基づく休業制度です。産前休業は出産予定日前6週間(多胎妊娠の場合には14週間)であり、
産後休業は出産日以後8週間です。産前休業は職員の請求に基づいて与える義務があり、産後休業は請求の有無にかかわらず与える義務があります。ただし、出産後6週間を経過
した職員については、一定の条件のもと、就業が認められています。
年休は、労働日について労務の提供義務を免除するものであることから、労務の提供義務が消滅している産休中に取得することはできません。そのため、産休中の職員から年休
の請求があった場合、医院は年休の取得を認める必要はありません。


一方で、産前休業を請求できる期間に、職員が産前休業を請求せずに年休を請求した場合には、労務の提供義務は消滅していないため、医院は年休の取得を認めることになりま
す。なお、産後休業は請求の有無にかかわらず、原則として就業が禁止されているため、職員から年休の請求があったとしても年休の取得を認める必要はありません。


2.年休付与日到来による消滅と付与
労働基準法では、年休の付与日から2年を経過したときに、時効により年休は消滅すると規定されています。よって、産休中に時効を迎えた年休は消滅します。
次に付与については、産休中に付与日が到来し、年休付与要件を満たしている場合、医院は年休を付与しなければなりません。なお、付与された年休は、産休から復帰した後に取
得することが可能です。
産休中には、一定の要件を満たすことで健康保険から出産手当金が支給されます。出産手当金は、出産のために働くことができず、給与が支払われない場合に支給されるもので
す。産前休業中に年休を取得すると、出産手当金が支給されないことがあるため、対象者には誤解のないように事前の説明が求められます。

スポットワークのカイテクと介護福祉士会が連携協定 人材の確保や質の向上で協力

スポットワークのカイテクと介護福祉士会が連携協定 人材の確保や質の向上で協力

介護職などのスポットワークを仲介するカイテクと日本介護福祉士会は18日、介護人材の確保やサービスの質の向上などを目指す包括連携協定を締結したと発表した

 

15日付で包括連携協定を結んだ。介護福祉士らの活躍促進やキャリア形成、学習機会の拡大などを図る構えだ。


深刻化する人手不足や多様な働き方の浸透などが背景にある。介護現場でスポットワークの活用が広がるなか、専門職が長く安心して働ける環境の整備、継続的な自己研鑽の機会の提供などが急務となっている。


今回の協定では、カイテクが強みとする潜在有資格者の復職の後押し、多様な働き方の創出などと、職能団体である日本介護福祉士会の資質向上・倫理醸成に関するノウハウをかけ合わせる。双方の知見を融合し、介護人材の確保やサービスの質の向上につなげる狙いがある。


今後の取り組みには、カイテクの登録者に対する情報提供や周知・啓発活動なども含まれる。両者は定期的に協議の場を設け、より具体的な連携策を検討していくと説明している。

 

 

 

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