介護

【社労士監修】クリニック・介護・保育園の正しい労務指導|「厳しい注意」はどこからパワハラになる?ハラスメント訴えへの誠実な対応実務

 

医療・福祉の現場(クリニック、介護施設、保育園)は、人命や安全を預かる特性上、一歩間違えれば重大な事故に繋がりかねない緊張感があります 。そのため、経営者や管理職がスタッフに対して「時に厳しく指導せざるを得ない場面」があるのは当然のことです

しかし、現場のリーダーから「問題行動のある職員を厳しく指導したいが、パワハラと言われるのが怖くて強く言えない」という悩みの声を耳にすることが増えています 。また、職員から「これってハラスメントです」と訴えがあった際、法人としてどこまで対応すべきか苦慮しているケースも少なくありません

本記事では、厚労省の指針に基づき、「業務上の適正な指導」と「パワハラ」の境界線を、クリニック・介護・保育園の具体例を交えて解説します 。また、ハラスメントの訴えがあった際の法人の対応義務についても実務的な視点から紐解きます


1. そもそも「職場のパワーハラスメント(パワハラ)」の定義とは?

客観的な指導を行うための前提として、まずは法律および厚生労働省が定める「パワーハラスメント」の3つの定義を確認しておきましょう 。職場におけるパワハラとは、同じ職場で働く者に対して、以下の3つの要素をすべて満たす行為を指します

パワハラの3要素 概要

① 優越的な関係を背景とした言動

職務上の地位(上司から部下)だけでなく、専門知識や経験の差、人間関係のグループなど、抵抗や拒絶が難しい関係性を背景にしていること 。※部下から上司、同僚間も含みます

② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

社会通念に照らし、明らかに業務上の必要性がない、または指導の手段・態度が不適当であること

③ 労働者の就業環境が害されること

身体的・精神的な苦痛を与えられ、労働者が能力を十分に発揮できないなど、看過できない程度の悪影響が生じること

【重要】「適正な業務指示・指導」はパワハラではない

逆を言えば、「客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導」については、職場のパワハラには該当しません 。指導される側が主観的に「厳しくて不快だった」「傷ついた」と感じたとしても、それが業務上必要な内容であり、かつ社会通念上相当な方法であれば、法律上のパワハラとは認められないのです


2. 明らかな「問題職員」への厳しい指導もパワハラになるのか?

結論から申し上げると、「業務の性質や内容に照らして重大な問題行為を行った従業員に対して、一定程度注意をすること」はパワハラには該当しません

クリニック、介護施設、保育園など、患者様、利用者様、園児の命や安全に直結する職場では、業務の必要性や緊急性が高い場面が多く存在します 。そのため、重大なミスや問題行動に対して「厳しく注意・指導すること」は一定程度許容されます

厚生労働省のいわゆる「パワハラ指針」でも、精神的な攻撃(脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など)には該当しない例として、具体的に以下の2つを挙げています

### 【厚労省指針】パワハラに該当しないと考えられる例 1. 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること。 2. その業務の内容や性質に照らして重大な問題行為を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。

医療・福祉・保育の現場における「パワハラにならない」具体例

  • クリニック

    処方箋の確認ミスや医療機器の誤操作など、患者の健康に直結する重大なミスを繰り返す看護師や医療事務に対し、「命に関わる現場なのだから、二度とこのような不注意を起こさないでください」と、強い口調でその場で注意を促す行為。

  • 介護施設

    移乗介助時の手順を無視し、利用者様を転倒させるリスクのある危険な行動を取ったヘルパーに対し、事故を未然に防ぐためにその場で語気を強めて制止・注意する行為。

  • 保育園園児のアレルギー確認を怠って給食を提供しようとした保育士、あるいは遅刻や無断欠勤を繰り返し、シフトに多大な支障を出しているにもかかわらず改善の兆しがない職員に対し、面談室で一定程度強く叱責・指導する行為

これらはすべて「業務上必要かつ相当な範囲」であり、適正な労務指導といえます


3. 「指導」が「パワハラ(精神的な攻撃)」へ変わる境界線

いくら職員側に問題(遅刻、ミス、規律違反)があったとしても、指導の「やり方」が社会通念を逸脱してしまえば、それはパワハラ(精神的な攻撃)と判断されるリスクがあります 。経営者や管理職が特に注意すべき「境界線」は以下の3点です。

① 人格否定や業務に関係のない暴言(アウト)

「だからお前はダメなんだ」「育ちが悪い」「給料泥棒」「辞めてしまえ」など、問題行為の指摘を超えて、職員個人の人格や存在自体を否定する言動は、いかなる理由があってもパワハラになります 。指導すべきは「行為(ミスや遅刻)」であり、「人格」ではありません

② 他の職員の前で見せしめのように叱責する(原則アウト)

他のスタッフや、クリニックの患者様、保育園の保護者などの前で、大声で長時間にわたり怒鳴り散らす行為は、必要性の範囲を超え、相手に過度な精神的苦痛を与える(名誉毀損や侮辱にあたる)ためパワハラとみなされやすくなります 。強い注意を行う際は、個室(面談室など)に呼んで1対1で行うのが原則です。

③ 過去の終わったミスを執拗に責め立てる(アウト)

今回の問題行為とは直接関係のない、数ヶ月前・数年前のミスまで引っ張り出してきて、「あんたはあの時もそうだった」と長時間ネチネチと責め立てる行為は、業務上の必要性を欠くため不適切です。


4. スタッフからの「ハラスメントの訴え」に法人はすべて対応すべきか?

スタッフから「上司からパワハラを受けました」「同僚からセクハラ(セクシャルハラスメント)をされています」といった訴えがあった際、法人側は「原則としてすべてに対応しなければならない」というのが結論です

「あの職員は被害妄想が激しいから」「ただの好き嫌いの感情論だろう」と経営陣が主観的に判断し、放置することは絶対に避けてください。

厚労省指針における「広く相談に対応する義務」

この点については、厚生労働省の指針にも明確に記載されています 各種ハラスメントに該当するかどうか客観的に見て微妙なケースであっても、雇用側は広く相談に対応する義務があると指摘されています

すべての訴えに対応すべき2つの実務的理由

  1. 相談者本人が気づいていない「別の重大な論点」が浮上するため 当初は「上司から厳しく当たられた(パワハラ)」という相談であっても、丁寧にヒアリングや事実調査を進める過程で、「実はその管理職がシフトを不正に操作していた」「業務上横領の疑惑がある」「他の職員にも隠れてセクハラを行っていた」といった、経営上の重大な不正・リスクが発覚することが実務上よくあります

  2. 放置することでハラスメントが深刻化・泥沼化するため 「大したことではない」と初期対応を怠ると、被害を訴えた職員のメンタルヘルス不調(うつ病など)を招いたり、職場全体の士気が低下して連鎖退職に繋がったりします。さらに、労働基準監督署への駆け込みや、法人を相手取った損害賠償請求訴訟など、法的トラブルへと発展するリスクが跳ね上がります


5. 【経営者向け】ハラスメント訴えがあった初期対応の4ステップ

もし職員からハラスメントの相談があった場合、法人は以下のステップに沿って誠実かつ迅速に対応を進める必要があります。

【ステップ 1】相談窓口でのヒアリング(プライバシーの保護)
       ▼
【ステップ 2】事実関係の調査(加害者側・第三者への確認)
       ▼
【ステップ 3】ハラスメントの有無の判定(客観的・多角的な判断)
       ▼
【ステップ 4】適切な措置と再発防止(処分、配置転換、環境改善)

ステップ 1:相談者からのヒアリング(傾聴と秘密厳守)

まずは相談者の話を丁寧に聞きます。この際、「プライバシーの厳守」「相談したことによって不利益な扱いを受けないこと」を明確に伝え、安心感を与えます。最初から「それはパワハラじゃないよ」と否定せず、事実関係(いつ、どこで、誰に、何を言われたか)をメモに記録します。

ステップ 2:行為者(加害者とされる側)や第三者への事実調査

相談者の同意を得た上で、相手方(上司や同僚)からも話を聴取します。また、言動の目撃者がいる場合は、周囲の職員からも客観的な状況を確認します。双方の意見が食い違うことが多いため、感情論に流されず事実関係を整理することが重要です。

ステップ 3:ハラスメントの有無の客観的判断

集まった証拠や双方の主張を元に、法人の就業規則や厚労省の指針(前述の3要素)に照らし合わせ、ハラスメントに該当するかを判断します。判断が難しい場合は、顧問弁護士や社会保険労務士などの専門家に意見を求めるのが賢明です。

ステップ 4:事後措置と再発防止策の実施

ハラスメントが認められた場合は、行為者に対して就業規則に基づく処分(譴責、減給、出勤停止など)や配置転換を行います。また、ハラスメントとまでは言えない「適正な指導」であった場合でも、相談者の誤解を解き、今後のコミュニケーションの改善を促すなどのフォローが必要です。


6. まとめ:健全な職場環境と適切な指導を守るために

クリニック、介護施設、保育園を安定して経営していくためには、「問題行為への毅然とした指導」「ハラスメントのない安心安全な職場環境」のどちらも欠かすことはできません

  • 問題社員への一定の強い注意は、業務上必要であればパワハラにはなりません。 ただし、感情的な暴言や人格否定に走らないよう、指導する側のスキルアップ(管理職研修など)が必要です

  • 職員からのハラスメントの訴えは、いかなる場合も放置せず、広く相談に対応する義務があります。

当労務管理事務所では、クリニック・介護・保育園に特化した就業規則の整備や、管理職向けのハラスメント防止研修、ハラスメント外部相談窓口の受託を行っております。「これはパワハラになる?」「問題職員への対応に困っている」という経営者・人事担当者様は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

 

厚労省、保険外サービス活用の手引き公表 情報提供のポイントやケアマネの役割など解説

 

 

介護保険外サービスの情報を利用者や家族らへ提供する際の「手引き・ポイント集(保険外サービスを含む多様な地域資源について利用者や家族等に情報提供する際の手引き・ポイント集)」が新たに公表された。

国の昨年度の調査・研究事業(老健事業)で作成されたもの。厚生労働省は今月11日、介護保険最新情報Vol.1503で現場の関係者へ広く周知した。

手引きでは、ケアマネジャーや地域包括支援センターの専門職らに期待される役割を解説している。利用者や家族らがそのニーズに合ったサービスを適切に選択できるよう、主に以下の3点が大切だと促している。

◯ 情報収集・整理:多様な情報源からサービスの内容や料金を比較しやすい形で管理する。

◯ 情報提供と選択支援:保険内外の違いを分かりやすく説明し、複数の選択肢・解決策を示して主体的な判断を支える。

◯ 利用開始後のフォロー:定期的な聞き取りやモニタリングを通じて利用状況や満足度、生活状況の変化を確認し、継続的にフォローするよう努める。

このほか、本人の自立支援や介護予防の観点からサービスの必要性を判断する後押しも重要だと指摘した。

背景にあるのは1人暮らしの高齢者やビジネスケアラーの増加だ。ホームヘルパーなどの深刻な人材不足もあって、地域では保険外サービスのニーズが高まり続けている。一方で、利用者や家族らは保険適用の有無や事業者の違い、サービスの内容・質を判断することが難しいなど、その有効活用に向けてはまだまだ課題が多い。


厚労省は手引きで、多様なサービスの活用が利用者のQOLの向上につながると説明。ケアマネジャーを追い込む無理なシャドウワークを減らし、専門性の高い本来業務に集中できる環境の整備にも結びつくと意義を解説した。


具体的なコンテンツとしては、情報の収集・整理・提供や選択支援の流れ、留意点などを時系列でまとめた。需要の大きい「生活支援」「配食」「移動支援」「訪問理美容」の4分野については、具体的なユースケースや代表的な事業者例、現場で使えるチェックポイントなどを紹介している。

採用面接で虚偽回答があった場合に合法的に解雇はできますか? 医療・介護・保育現場の信頼を守る「経歴詐称」への法的対応と防衛策

 

1. はじめに:人手不足の裏に潜む「採用リスク」

医療、介護、保育の現場において、人手不足は深刻な経営課題です。「一人でも多くの職員を確保したい」という切実な思いから、採用基準が緩やかになってしまったり、選考時の確認が不十分になったりするケースは少なくありません。

しかし、こうした状況を背景に、近年増えているのが「経歴詐称」を巡るトラブルです。 「以前の職場をトラブルで辞めたことを隠していた」「持っていると言っていた資格が実は嘘だった」……。発覚した時、経営者や事務局長が抱く憤りは計り知れません。

「嘘をついて入職したのだから、即刻解雇だ!」 そう考えるのは自然な反応ですが、労働法という枠組みの中では、たとえ嘘があったとしても「直ちに解雇」が認められるとは限りません。一歩間違えれば、法人側が「不当解雇」として訴えられるリスクすら孕んでいます。

本記事では、医療・介護・保育専門の社労士の視点から、経歴詐称があった場合の解雇の妥当性と、組織を守るための具体的な実務対応について詳しく解説します。


2. 経歴詐称と解雇の法的判断基準

職員の採否を判断する際、応募者の経歴は極めて重要な判断材料です。法人は「誰を雇うか」を決める「採用の自由」を持っており、その判断のために真実を申告させる権利があります。

履歴書の記載や面談での回答に虚偽があり、「もし真実を知っていたら採用しなかった」と言えるほど重大なものであれば、解雇の理由は「客観的に合理的な理由」があるとみなされやすくなります。

しかし、裁判例では「全ての詐称が解雇有効になるわけではない」という厳しい現実があります。解雇が有効になるためには、その詐称が「採用の判断にどれほど決定的な影響を与えたか」という重要性と、それによって「職場秩序がどれほど乱されたか」という程度が厳格に問われます。

主に対象となる4つのパターンから、具体的なリスクを見ていきましょう。


3. 経歴詐称の4つの類型と解雇の有効性

① 資格・免許の詐称(重要度:高)

医療・福祉業界において最も深刻なのがこれです。 医師、看護師、薬剤師、介護福祉士、保育士などの国家資格が必要な職種において、無資格であるにもかかわらず資格を偽った場合、これは単なる「嘘」に留まりません。

  • リスク: 無資格者による業務提供は法律違反であり、診療報酬や介護報酬の不正受請求、さらには行政処分や実地指導での全額返還へと直結します。

  • 判断: この場合の解雇は、有効とされる可能性が極めて高いといえます。業務遂行の前提条件を欠いているため、雇用の継続は不可能と判断されるからです。

② 職歴の詐称(重要度:中〜高)

「転職回数が多いと不利になるから隠す」「前職を能力不足や素行不良(ハラスメント等)で懲戒解雇されたことを隠す」といったケースです。

  • リスク: 医療・介護現場はチームケアが基本です。前職でのトラブル隠しは、現場の人間関係を崩壊させる火種となります。

  • 判断: 単なる数ヶ月の期間のズレなどは「軽微」とみなされがちですが、懲戒解雇歴の隠匿や、重要な役職経験の捏造(例:施設長経験があると偽る)などは、重大な詐称として解雇が認められる可能性があります。

③ 学歴の詐称(重要度:低〜中)

かつては「高卒を大卒と偽る」ことが重い詐称とされましたが、実務能力重視の昨今では、学歴だけで解雇を有効にするのは難しくなっています。

  • リスク: 学歴によって初任給や手当が細かく規定されている法人の場合、不当に高い賃金を支払わされることになります。

  • 判断: 給与計算の根拠が学歴に依存しており、それによって大きな賃金格差が生じていた場合、秩序を乱したとして懲戒対象になる可能性はありますが、解雇まで認められるかは慎重な判断が必要です。

④ 犯罪歴の隠匿(重要度:ケースバイケース)

意外かもしれませんが、犯罪歴があることだけをもって直ちに解雇できるわけではありません。

  • 判断: 裁判例では、刑の執行から10年以上経過している場合や、業務と無関係な軽微な罰金刑などは、告知義務がない、あるいは解雇理由として不十分とされる傾向があります。

  • 特例: ただし、保育現場での児童性犯罪歴や、高齢者施設での虐待・窃盗歴など、「対象となる利用者への安全確保に直結する職歴・犯罪歴」については、より厳しく判断される傾向にあります。


4. 医療・介護・保育現場だからこそ問われる「管理責任」

一般企業と異なり、私たちの業界には「公費」が投入されています。 もし経歴詐称(特に資格や職歴)を見逃したまま雇用を続け、現場で事故が起きた場合、法人が受けるダメージは「解雇の有効性」というレベルでは済みません。

  • 利用者・家族からの訴訟: 「資格のない人間にケアをさせていたのか」という追及。

  • 行政処分: 指定取り消しや加算の返還。

  • 社会的信用の失墜: 地域での評判が悪化し、採用難に拍車がかかる。

だからこそ、経歴詐称への対応は単なる「不誠実な職員の排除」ではなく、「法人のガバナンス(統治)と利用者の安全を守るための必須業務」なのです。


5. トラブルを未然に防ぐ「3つの防衛策」

発覚してから解雇を争うのは、多大な時間と労力、そして弁護士費用を要します。最初から「嘘をつかせない」「嘘を見抜く」体制を作ることが最善の策です。

防衛策1:エビデンス(証拠)確認の徹底

「原本」の確認を徹底してください。

  • 資格証の確認: コピーではなく原本を持参させ、裏書き(更新履歴)まで確認します。必要に応じて、厚労省のデータベース等で登録番号を照合します。

  • 離職票・年金手帳の確認: 入社手続き時に提出される書類の履歴と、履歴書の職歴が合致しているか、事務担当者が必ずクロスチェックを行います。

防衛策2:採用選考の精度向上

面接だけでは嘘を見抜くのは困難です。

  • リファレンスチェックの検討: 本人の同意を得た上で、前職に勤務状況を確認する。

  • 実技試験の導入: 介護現場なら移動介助、保育現場ならピアノや読み聞かせなど、短時間の「実技」を取り入れるだけで、職歴詐称(未経験なのに経験者と偽る等)は一目で見抜けます。

防衛策3:入職時のリーガル・セットアップ

万が一の時に「解雇の正当性」を主張できるよう、仕組みを整えます。

  • 誓約書の提出: 「提出書類の内容に相違ないこと」「虚偽があった場合は解雇を含む懲戒処分に異議を唱えないこと」を明記した誓約書を入職時に取ります。

  • 就業規則の整備: 懲戒規定の中に「重要な経歴を詐称して採用されたとき」を明確に盛り込み、具体的な懲戒の種類を定めておきます。


6. まとめ:専門家の視点をバックオフィスに

経歴詐称が発覚した際、感情的に「明日から来なくていい」と伝えてしまうのが、最も危険な初動です。たとえ相手に非があっても、手続きを誤れば「解雇権の濫用」となり、多額の解決金を支払う羽目になりかねません。

まずは、その詐称が業務にどのような影響を及ぼすのかを冷静に分析し、就業規則に基づいた正しいステップ(事情聴取、弁明の機会の付与など)を踏むことが重要です。

私たち「社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング」は、医療・介護・保育業界に特化した人事労務のプロフェッショナルとして、数多くの現場トラブルを解決してきました。

私たちのBPOサービスでは、給与計算などの事務代行だけでなく、こうした「入職時のリスク管理」や「就業規則の運用サポート」をセットで提供しています。事務局の負担を減らしつつ、法人のガバナンスを強化したい経営者の皆様、ぜひ一度ご相談ください。

「正しい採用」が「質の高いケア」を生み、それが「健全な経営」へと繋がります。あなたの法人のバックオフィスを、リスクに強い、創造的な組織へと変えていきましょう。


執筆者:社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング 代表 林 正人 (医療・介護・保育専門社会保険労務士)

「介護情報基盤」導入の助成金、申請受付が始まります! 5月7日から カードリーダー購入など補助

厚生労働省は28日、「介護情報基盤(*)」を導入する事業所を後押しする助成金の今年度の支給について、5月7日(木)から申請の受け付けを開始するとアナウンスした。

* 介護情報基盤=介護保険証や要介護認定、主治医意見書、ケアプラン、LIFEデータといった現場で必要な情報を、利用者、事業所、医療機関、市町村などがオンラインで迅速に閲覧・共有できる新たなインフラ。厚労省は今年度から活用を順次スタートし、2028年4月までに全国すべての市町村で運用を始める準備を進めている。

 

介護保険最新情報のVol.1497で現場の関係者へ広く周知している。

昨年度に続いて実施される支援策で、申請期間は5月7日から来年3月12日(金)まで。厚労省は「介護情報基盤ポータル」経由で申請を受け付ける。「予算には限りがあるのでぜひ早めの申請を」と呼びかけている。


対象経費は、カードリーダーの購入費や介護情報基盤との接続サポートに要する費用など。「ケアプランデータ連携システム」の接続サポートを一体的に受ける場合も対象となる。


助成金の上限額(消費税分を含む)はサービス種別ごとに設定されている。以下の通りだ。


▽ 訪問・通所・短期滞在系=最大6.4万円(カードリーダー3台まで)
▽ 居住・入所系=最大5.5万円(同2台まで)
▽ その他=最大4.2万円(同1台まで)


同一の事業所で複数のサービスを提供している場合は、それぞれの限度額を合算することが可能。申請の詳細は「介護情報基盤ポータル」で確認できる。

「2027年度介護保険法改正・報酬改定」議論の焦点を確認しておきましょう

2027年度介護保険法改正・報酬改定に向け、いよいよ議論が開始

20251225日に介護件部会から報告書「介護保険制度の見直しに関する意見」が公表され、いよいよ具体的な各論についての深い議論が行われる「介護給費費分科会」が開始となった2026427日。2027年度の法改正・報酬改定の動向が気になる皆様にとっては今後、要注目の会となる訳ですが、初回の会議では「令和8年度介護従事者処遇状況等調査の実施について(案)」「令和8年度介護従事者処遇状況等調査調査票(案)」「介護分野の最近の動向」そして「令和9年度介護報酬改定に向けた検討の進め方について」計4種類の資料をもとに議論が進みました。今回のニュースレターにおいてはその中から、大枠ながらも今後の議論の全体像がイメージしやすい「令和9年度介護報酬改定に向けた検討の進め方について(以下、「本資料」と表記)」の資料の内容について皆様にお届けしてまいります。

 「令和9年度介護報酬改定に向けた検討の進め方について」に記載された内容とは

では、早速、中身を確認してまいりましょう。以下は本資料に記載されたすべての内容をそのまま反映しています。先ずは、前回の法改正に関する総括・論点整理についてです(重要と思われる部分については下線を引いています。以下、同じ)。

 

○ 令和6年度介護報酬改定においては、いわゆる団塊の世代がすべて 75 歳以上となる 2025 年を見据え、診療報酬との同時改定であること等を踏まえ、以下の4つの項目を柱とし、改定を行った。

1.地域包括ケアシステムの深化・推進

2.自立支援・重度化防止に向けた対応

3.良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり

4.制度の安定性・持続可能性の確保

 

次に、昨年度、2027年度報酬改定を待たずに今年度(2026年度)から先行して開始された処遇改善、及び食材料費の緊急対応に関するあらためての確認についてです。

〇 また、「「強い経済」を実現する総合経済対策」(令和7年 11 21 日閣議決定)において、「介護分野の職員の処遇改善については、累次の取組を講じてきた結果、介護職員の賃金は改善してきたものの、他産業とはまだ差があり、人材不足が厳しい状況にあるため、他職種と遜色のない処遇改善に向けて、令和8年度介護報酬改定において、必要な対応を行う」とされたことを踏まえ、令和9年度介護報酬改定を待たずに期中改定を実施し、介護分野の職員の他職種と遜色のない処遇改善に向けた措置に加え、近年の食材料費の上昇を踏まえた緊急的な対応として、食費の基準費用額の引上げを行うこととした。

 

上記を踏まえ、令和9年度報酬改定に向けた大枠の概念が下記の通り示されています。

○ こうした状況を踏まえれば、令和9年度介護報酬改定においては、介護分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保を図る必要があるとの認識のもと、介護サービス事業者の経営状況等について把握した上で、物価や賃金の上昇等を適切に反映するための対応を実施する必要がある。

 

一方、報酬改定面だけでなく、法改正全体に関する基本的な考え方や方向性、及び議論すべき論点についての記載も為されています。

○ その上で、令和9年度介護報酬改定に向けては、65 歳以上の高齢者数がピークを迎え介護と医療の複合ニーズを抱える 85 歳以上人口も増加する 2040 年を見据えつつ、自治体・地域の規模によって、高齢化や人口減少のスピードには大きな差が生じることが見込まれ、サービス需要の変化が様々となり、地域の実情に応じたサービス提供体制を構築していくことが重要であることや、介護保険制度の持続可能性を確保するために介護給付の効率化・適正化に取り組む必要があることなどを踏まえ、令和6年度及び令和8年度の介護報酬改定に関する審議報告並びに令和7年の社会保障審議会介護保険部会意見書における指摘などに基づき、各サービスの論点とあわせ、例えば以下のような分野横断的なテーマを念頭に置き、議論してはどうか。

・人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築

・地域包括ケアシステムの深化

・介護人材確保に向けた処遇改善等と職場環境改善やケアの質の向上に向けた生産性向上等

・制度の安定性・持続可能性を確保する報酬の在り方

※今後議論を進める中で変更することは想定される。

 

最後に、上記議論を進行していく上での今後のスケジュール感についてです。

【スケジュール案】

令和8年

4月~夏頃 : 主な論点について議論

             事業者団体等からのヒアリング

10~12 月頃 : 具体的な方向性について議論

12 月中 : 報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ

※地方自治体における条例の制定・改正に要する期間を踏まえて、基準に関しては先行してとりまとめを行う。

 

令和9年度政府予算編成

令和9年

1月頃  介護報酬改定案 諮問・答申

 議論のプロセスから関心を持って情報を追いかけておくことが大切

以上、今回は427日の給付費分科会の内容から、1つの資料に絞って内容をお届けしてまいりました。上記の通り、今後は2026年末~2027年初めに向けて様々な議論が展開される訳ですが、介護経営者としてはそれら全体に目を通す中、「こうなるかもしれない」という最終的な結論だけでなく、「何故このような改正が行われる可能性が高いのか?」という、文字の裏に潜む意図や背景、メッセージを温度感も含めて理解する姿勢がますます求められることと思います。その意味においても早め早めに情報をキャッチアップし、頭の中で“PDCA”を回しつつ、「もし上記が実行された場合、自社にはどのような影響が出てくるか?」「それら想定される影響に対し、どのような対応を行う事が最適なのか?」等々、幹部育成の視点も含め、そのような議論を社内で始めていかれる事を是非、おススメする次第です。

私たちも今後、有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。

 

※本ニュースレターの引用元資料はこちら

256回社会保障審議会介護給付費分科会

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72489.html

 

役職と等級は分ける?分けない?

人事評価制度の構築サポートをしていると、必ずといってよいほど出てくるご質問があります。

「役職と等級って、分けた方がいいんですか?」

これ、本当によくいただきます。ちょっとモヤモヤしている経営者さまや人事担当の方も多いのではないでしょうか。

まず「役職」と「等級」って何が違うの?

「役職」というのは、課長・部長・マネージャーなど、組織上の「ポスト(席)」のことです。
一方「等級」とは、その人の習熟度や役割の大きさを段階的に表したものです。

「部長」「課長」という役職と、「M1」「L2」といった等級が混在している会社はとても多いのですが、これが混在したままだと、どちらかが形骸化しやすくなってしまいます。

なぜ分けた方がよいのか

例えば、役職(ポスト)に等級が連動してしまっていると、こんなことが起きやすくなります。

・ポストが空かないと昇進できない(=優秀な人が昇格できない)
・役職がないと評価や給与が上がりにくい(=専門職の人が報われない)
・役職を外すと給与も一気に下がって本人が傷つく(=必要な人事異動ができない)

これは、役職と等級が「くっついてしまっている」状態から起きることです。

役職はあくまでも「今その会社でどのポストに就いているか」であって、「その人のスキルや役割の大きさ」とは必ずしも一致しないのです。

役割等級制度では「等級」が主役

A4一枚評価制度でおすすめしている役割等級制度では、まず「等級」を中心に設計します。
管理職(M)・指導監督職(L)・一般職(S)といった大きなくくりと、その中の段階(M1・M2・M3など)が「等級」です。

そして「役職」(課長・部長・チームリーダーなど)は、あくまでも「今の組織上のポスト名」として分けて考えていきます。

こうすることで、

・ポストがなくても等級は上がれる
・役職を外れても等級が下がるわけではないので本人のプライドも守れる
・専門職コースなど、管理職にならなくても処遇を上げていける

という柔軟な運用ができるようになります。

ただし「分けない方がよいケース」もある

一方で、社員が5~10名程度の小さな会社では、等級と役職を分けることで「なんだか複雑になりすぎてわかりにくい」という声も出てきます。

そういった場合は、等級と役職をほぼ同義で運用してしまうシンプルな設計の方が現実的に機能することも多いです。

大事なのは「正解の形」を求めることではなく、
「今の自社の規模・組織・課題に合った形にする」こと。

役職と等級を分けることで、複雑さと引き換えに柔軟さが手に入ります。どちらをより重視するか、自社の状況で判断していきましょう。

人事評価制度は、精緻に作ることが目的ではありません。
社員が「自分はどこに向かって成長すればよいか」を理解でき、会社が「誰をどう育て、どう処遇するか」を整理できる。
そのための「道具」として機能してこそ、はじめて意味を持ちます。

役職と等級の設計も、そんな視点で一度ご自身の会社の現状を確認してみてはいかがでしょうか。

育児休業から復職した職員の昇給・賞与はどう扱う?違法リスクを避ける実務ポイントを社労士が解説

育児休業から復職した職員の「昇給」や「賞与」の取り扱いは、多くの企業・施設で悩みやすいテーマです。
特に介護・保育・クリニックなどの現場では、「長期間働いていないのに昇給させるべきか」「賞与はゼロでもいいのか」といった実務判断が求められます。

結論から言えば、育児休業を理由にした過度な不利益な取り扱いは違法となる可能性が高く、適切な“按分(あんぶん)処理”が重要です。
本記事では、法的な考え方と現場で使える具体例を交えて解説します。


育児休業者への「不利益取扱い」は法律で禁止されている

まず前提として、育児・介護休業法では、事業主に対して以下のような規制が設けられています。

  • 育児休業の取得を理由とした解雇の禁止
  • 不利益な配置転換の禁止
  • 昇進・昇格・賞与等における不利益取扱いの禁止

ここで重要なのは、「一切減額してはいけない」という意味ではない点です。

ポイントは“合理的な範囲内かどうか”です。


昇給の考え方|「休業期間分の控除」はOKだが、それ以上はNG

育児休業期間中は実際に勤務していないため、その期間に対応する評価や昇給を反映しないこと自体は問題ありません。

しかし、次のような取り扱いは注意が必要です。

NGとなる可能性が高い例

  • 復職したが昇給自体を行わない
  • 他の社員と比較して過度に低い昇給額にする
  • 評価対象期間を無視してゼロ評価にする

これらは「不利益取扱い」と判断されるリスクがあります。


【具体例】昇給の正しい計算方法

例えば次のケースで考えてみましょう。

  • 昇給基準日:4月1日
  • 育児休業期間:1月1日~10月31日
  • 復職日:11月1日
  • 通常昇給額:4,000円

この場合、

  • 昇給そのものは実施する必要あり
  • ただし評価対象期間のうち勤務していた期間で按分可能

計算式は以下の通りです。

4,000円 ×(勤務月数 ÷ 12カ月)

今回のケースでは、勤務実績は約9カ月と考えるため、

4,000円 × 9/12 = 3,000円

このように、勤務実績に応じた合理的な減額であれば適法と考えられます。


賞与の取り扱い|「支給ゼロ」でもよいケースと注意点

賞与についても基本的な考え方は同じです。

① 支給ゼロが認められるケース

  • 賞与算定期間中に勤務実績が一切ない場合

この場合は、賞与を支給しなくても違法とはなりません。


② 一部支給が必要なケース

一方で、

  • 賞与算定期間中に1カ月でも勤務実績がある場合

この場合は、勤務期間に応じた支給(按分)が必要です。

例えば:

  • 賞与算定期間:6カ月
  • 勤務実績:1カ月

賞与 × 1/6

このように、勤務実態を無視したゼロ支給はリスクが高いといえます。


現場でよくあるトラブルと対応策

よくある誤り

  • 「休んでいたから評価できない」として一律ゼロ評価
  • 復職後もしばらく昇給対象から外す
  • 人事制度に明確なルールがない

これらは、後から労務トラブルに発展しやすい典型例です。


トラブルを防ぐ3つの実務ポイント

① 就業規則・賃金規程に明記する

  • 昇給・賞与の算定方法
  • 按分ルール
  • 評価対象期間の考え方

ルールの明文化が最大の防御策です


② 「勤務実績ベース」で統一する

育児休業者だけ特別扱いするのではなく、

  • 休職者
  • 長期欠勤者

と同様のロジックで処理することが重要です。


③ 評価制度と連動させる

  • 出勤率
  • 業績評価
  • 行動評価

これらを組み合わせ、客観的に説明できる仕組みにすることで、納得性が高まります。


介護・保育・クリニック業界での実務的な注意点

これらの業界では、

  • 人手不足
  • 女性職員比率が高い
  • 育休取得率が高い

という特徴があります。

そのため、昇給・賞与の扱いを誤ると、

  • 職員の不満増大
  • 離職率の上昇
  • 採用力の低下

に直結します。

「法的に問題ない」だけでなく、「職員が納得できる運用か」が極めて重要です。


まとめ|「公平性」と「合理性」が判断基準

育児休業から復職した職員の昇給・賞与の取り扱いは、次の2点に集約されます。

  • 勤務していない期間分の減額はOK
  • それを超える不利益はNG

つまり、

👉 “働いた分だけ評価する”というシンプルな原則が最も安全です。


最後に|制度設計に不安がある場合は専門家へ

育児休業対応は、単なる給与計算の問題ではなく、

  • 人事制度
  • 評価制度
  • 就業規則

すべてに関わる重要テーマです。

特に介護・保育・クリニックでは、制度設計の良し悪しが経営に直結します。

「自社の運用が適法か不安」
「トラブルにならない制度を整備したい」

といった場合は、専門家によるチェックをおすすめします。

その行動が「集患」に直結…患者が「通い続ける」/「離れる」クリニックの分岐点

患者が「通い続けたい」と感じるクリニックの共通点と、院長が今日から取り組める改善のヒントについて、一般社団法人日本医療介護人材育成支援機構で理事を務める、開業医の武井智昭ドクターが解説した記事を紹介します。

クリニックから患者が離れる“本当の理由”

「医療技術が高ければ患者は来る」
そう信じて開業したものの、なかなか患者数が伸びない……。こうした悩みを抱える開業医は少なくありません。しかし、実際の患者行動を見ると、クリニック選びの基準は私たち開業医の想像とは大きく異なることがわかります。

日本医療機能評価機構が実施した患者満足度調査によると、もう二度と行きたくないと感じた理由の上位に「受付スタッフの対応」「医師の説明不足や態度」「スタッフのコミュニケーション」が挙がっています。

また、Googleの口コミで「★1」評価を受けているクリニックを分析すると、その約6割が「受付の態度が悪かった」、「医師に話を聞いてもらえなかった、粗雑に扱われた」など、不満の多くが医師やスタッフの「対応」であることが明らかになりました。

筆者自身も診療を続けるなかで、「前のクリニックは先生が優秀だと評判だったけれど、いつも忙しそうで質問しづらかった」、「医師に自分の話を聞いてもらえず、スタッフにもぞんざいに扱われた」といった声を何度も耳にしてきました。

技術や知識が大切であることはいうまでもありません。しかし、患者が最初に、そしてもっとも頻繁に接するのはです。受付での第一声、診察室での視線の合わせ方、会計時の笑顔やジェスチャー……こうしたコミュニケーションの積み重ねが、「このクリニックに通い続けたい」という気持ちを生みます。

実際、ある調査では「かかりつけ医を選ぶ理由」として話をよく聞いてくれる」68%スタッフの感じがいい」54%と、医療技術と効果」32%)を大きく上回っています。
つまり、患者は大切にされていると感じるクリニックを信頼し、反対にないがしろにされたと感じた瞬間、どれほど高度な治療を受けていても心が離れてしまうのです。


患者が「二度と行きたくない」と感じるスタッフのNGマナーTOP5

では具体的に、どんな対応が患者の心を遠ざけてしまうのでしょうか。実際の患者の声とともにみていきましょう。

第5位:服装・清潔感の欠如

「髪がボサボサで、白衣にシミがついているスタッフがいて不安になった」(40代女性)
医療機関である以上、清潔感は信頼の基本です。メラビアンの法則(※)が示すように、第一印象は視覚情報で決まります。
(※)メラビアンの法則とは、感情や態度を伝えるコミュニケーションにおいて、視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%の割合で影響を与えるという心理学の法則

第4位:待合室での私語が多い

「受付で『昨日のドラマ見た?』と大きな声で雑談していて、呼んでも気づいてもらえなかった」(60代男性)
患者は体調不良や不安を抱えて来院しています。スタッフ同士の私語は、その不安を軽視しているように映ります

第3位:早口・専門用語だらけの説明

「『では次回はこれとこれの検査をオーダーしておきますね』と早口で言われ、なんの検査かわからないまま終わった」(50代女性)
医療者にとっての日常用語も、患者にとっては“呪文”のように聞こえることがあります。

第2位:目線を合わせない

「医師だけでなく、受付も看護師もずっとパソコン画面を見たまま。私は人間じゃなくて番号なのかと悲しくなった」(70代男性)
電子カルテの普及で増えた問題ですが、一瞬でも目を合わせるだけで、印象は大きく変わります。

第1位:電話・受付での冷たい言葉遣い

「『はい、なんですか?』と面倒そうに言われた」「症状を説明している途中で『で、いつ来られますか?』と遮られた」
電話や受付はクリニックとの最初の接点です。ここで冷たい対応をされると、その瞬間に「この病院は自分を大切にしてくれない」と判断されてしまいます。

これらに共通するのは、患者に「存在や気持ちが軽んじられている」と感じさせてしまっている点です。技術的なミスではなく、「1人の人として扱われなかった」というネガティブな感情が、「二度と行かない」という決断につながります。


「かかりつけ医にしたい」と思われる好感マナー実践例

一方、患者から絶大な信頼を得ているクリニックには、共通して次のような工夫がみられます。

名前を呼び、目を見て挨拶する

「〇〇さん、おはようございます。今日は調子いかがですか?」たったこれだけで、患者は「自分を認識してくれている」とうれしく感じるものです。
実際、筆者のクリニックでは、小児の患者の誕生日を覚えて声をかけるようにしています。「もうすぐ5歳だね、保育園ではなにして遊んでいるの?」と話しかけると、お子さんも親御さんも自然と笑顔になります。

人生のイベントに寄り添う

思春期の患者には「受験どう?」「部活は?」と声をかける。成人の患者には結婚や転職など生活の変化に触れる。高齢の患者には「お孫さんは元気?」「最近お友達と会っていますか?」と社会的なつながりを尋ねる……。
疾患だけでなく、その人の人生そのものに関心を持つことで、患者は「ただ病気を治すだけではなく、自分という人間を見てくれている」と感じます。

笑顔の練習を全員で行う

あるクリニックでは、朝礼で「笑顔の練習」を30秒行うそうです。「おはようございます!」と鏡を見ながら全員で笑顔を作ると、最初は照れくさそうだったスタッフも、続けるうちに自然な笑顔が身につき、患者満足度が目に見えて向上したといいます。

クレームを宝に変える

「待ち時間が長い」というクレームを受けたあるクリニックは、待合室に「現在の待ち時間」を表示するボードを設置し、さらに「お待たせして申し訳ございません」というメッセージカードを渡すようにしました。
すると、「待つのは仕方ないけど、気遣ってくれる姿勢が嬉しい」とむしろ評価が上がったそうです。


院長が今日からできる「スタッフマナー向上」3ステップ

では、院長としてどのようにスタッフのマナーを高めていけばよいのでしょうか。

 ステップ1.まず院長自身が手本となる

スタッフ教育に取り組む前に、まずは院長自身の振る舞いを見直しましょう。スタッフは院長の写し鏡です。院長が患者と目を合わせず、イライラした様子で診察していれば、スタッフも同じ態度を取るようになります
筆者自身、忙しい日ほど意識的に深呼吸をし、笑顔を作り、患者の目を見て「今日はありがとうございました」と伝えるようにしています。院長のメンタルコントロールが、クリニック全体の空気を作ります

 ステップ2.「見える化」チェックリストの導入

「挨拶は明るくできているか」「電話は3コール以内に取れているか」「患者の名前を呼んでいるか」など、具体的な行動をチェックリストにします。そして週に1度、スタッフ全員で振り返る時間を設けることで、改善点が明確になります。

 ステップ3.感謝と承認の文化を作る

患者から「あのスタッフの対応がよかった」という声があったら、必ず本人に伝えましょう。具体的には、朝礼の場などで「昨日〇〇さんが、受付の△△さんの笑顔に救われたと言ってくれました」と共有することで、スタッフのモチベーションは大きく高まります。認められる経験が、人を自発的な成長へと導くのです。

技術はもちろん重要です。しかし患者が最初に触れるのは「人」であり、その印象が集患の最前線を形づくります
高度な医療機器を揃えるよりも、まずは院長自身が患者1人ひとりと心を通わせ、その姿をスタッフが自然に真似していく。そんな温かい循環を生み出すことが、長く愛されるクリニックへの第一歩です。

著者:
武井 智昭 高座渋谷つばさクリニック 院長
一般社団法人 日本医療介護人材育成支援機構 理事

LIFEのシステム移管でQ&A公表 厚労省 データ提出の留意点など周知

 

生労働省は21日、LIFE(科学的介護情報システム)の運営主体を国保中央会へ移管することに伴う通知を出し、介護保険最新情報Vol.1495で周知した。

 

事業所・施設がLIFE関連加算を詳細な運用ルールを明らかにした。

今回の運営主体の移管は「介護情報基盤」の稼働開始に伴うもの。今回、厚労省はQ&Aで全サービス共通の留意事項を整理している。実務上の主なポイントは以下の通りだ。

◯ 提出する様式情報に変更はなく、情報の提出先が国保中央会へ切り替わる。

◯「少なくとも3ヵ月ごと」という情報の提出頻度は、厚労省が運用していた旧システムへ最後に提出した月から起算して差し支えない。

◯ 既に旧システムを利用している事業所・施設は、移行作業を終えれば改めて新システムで新規の利用申請をする必要はない。

厚労省はあわせて、「旧システムへ既に提出している様式情報は、新システムへ再び提出する必要はない」と説明した。


ただし、システムの移行作業を行った月のサービス提供分のデータを提出する際は注意が必要だ。同月中に旧システムで一部の利用者のデータを提出している場合、移行後の新システムで改めて全員分を提出する必要があるという。

厚労省はこのほか、旧システムでの新規の利用申請を4月22日19時で締め切ることや、運営主体の移管に伴う「ADL維持等加算」の経過措置なども提示した。


今回の運営主体の移管は「介護情報基盤」の稼働開始に伴うもの。事業所・施設には、7月末までの移行期間内に電子証明書の取得や利用者情報の再登録といった対応が求められる

「辞める」と言い続ける職員にどう対応する?退職扱いにできるかを社労士が解説

 

「少し気に入らないことがあるとすぐに『辞める』と言い出す職員がいる」
介護施設、保育園、クリニックの現場で、このような相談は非常に多く寄せられます。

周囲の士気を下げ、業務にも支障をきたすため、「いっそ本当に辞めてもらえないか」と考える経営者・管理職も少なくありません。

では実務上、「辞める」と発言した事実だけで退職扱いにすることはできるのでしょうか。
結論から言うと、一定条件を満たせば可能ですが、慎重な判断が必要です。

本記事では、トラブルを防ぎながら適切に対応するためのポイントを、判例と実務の視点から解説します。


退職の成立は「誰に伝えたか」で大きく変わる

まず重要なのは、「辞める」という発言が誰に対して行われたかです。

権限者に伝えた場合

院長、施設長、理事長、事務長など、人事権を持つ者に対して退職の意思を伝えた場合は、口頭であっても退職の申し出と評価される可能性があります。

つまり、この時点で「退職の意思表示」が成立していると判断される余地があります。

同僚や先輩に話しただけの場合

一方で、同僚や先輩職員などに対して「もう辞める」と話しただけでは、
法的な退職意思表示とは認められません。

現場ではよくあるケースですが、この段階で会社側が「辞めると言っていたから退職扱いにした」という対応をすると、後にトラブルになるリスクが高いです。


判例から見る「退職の成立」と「撤回」

退職を巡るトラブルでは、過去の裁判例が重要な判断基準となります。

① 退職が成立し、撤回できないケース

最高裁判例(昭和62年9月18日)では、

人事部長が退職願を受理したことは、会社側の承諾にあたる

とされ、退職は合意解約として成立し、その後の撤回は認められないと判断されています。

つまり、

  • 労働者が退職の意思を示す
  • 使用者側がそれを承認する

この2つが揃えば、退職は確定します。


② 撤回が認められるケース

一方、岡山地裁(平成3年11月10日)では、

人事権のない職員が退職届を預かっただけでは承諾とはいえない

とされ、退職の撤回が認められました。

この判例から分かるのは、

👉「誰が受け取ったか(承認権限の有無)」が極めて重要

という点です。


「辞める発言」で退職扱いにするための実務ポイント

では、問題の職員が会議や面談で「辞めます」と発言した場合、どう対応すべきでしょうか。

結論として、適切な手続きを踏めば自己都合退職として扱うことは可能です。

ただし、以下の対応を怠ると、後で「言っていない」「本気ではなかった」と争われるリスクがあります。


① 退職意思の“念押し”を必ず行う

感情的な発言なのか、本気の意思なのかを明確にする必要があります。

具体的には、以下のように確認します。

  • 「今の発言は退職の意思で間違いありませんか?」
  • 「正式に退職するという理解でよろしいですか?」

この確認を曖昧にすると、後で撤回を認めざるを得ない可能性が高まります。


② 退職日をその場で確定させる

退職意思が確認できたら、退職日を具体的に決めることが極めて重要です。

  • 「いつ付けで退職しますか?」
  • 「最終出勤日はいつにしますか?」

退職日はトラブルの火種になりやすいため、その場で明確に合意しておく必要があります。


③ 必ず書面(退職届)を提出させる

口頭でも退職は成立する可能性がありますが、実務上は非常に危険です。

必ず以下を行いましょう。

  • 退職届の提出
  • 日付・署名の確認
  • コピー保管

これにより、「言った言わない」の争いを防ぐことができます。


よくある誤解:「口頭だから無効」は間違い

現場では、

「書面がないから無効では?」

という誤解が多く見られます。

しかし実際には、口頭でも退職の意思表示は有効です。

重要なのは、

  • 明確な意思表示があったか
  • 会社側が承認したか

という点です。


注意点:安易な“退職扱い”は逆にリスク

「辞めると言ったから辞めさせた」と安易に処理すると、以下のリスクがあります。

  • 不当解雇と主張される
  • 損害賠償請求
  • 労基署・労働局対応

特に、感情的発言をそのまま退職扱いにするのは危険です。


実務対応の結論(現場で使える判断基準)

問題職員への対応としては、次のように整理できます。

  • 同僚への発言 → 無効(様子見)
  • 管理職への発言 → 要確認
  • 明確な意思+承認 → 退職成立

そして最も重要なのは、

👉「記録を残すこと」

です。


まとめ:感情的な「辞める」に振り回されないために

「辞める」と繰り返す職員への対応は、現場のストレス要因になりがちです。

しかし、法的にはシンプルで、

  • 誰に言ったか
  • 本気かどうか
  • 承認されたか

この3点で判断されます。

適切に対応すれば、不要なトラブルを防ぎながら、組織運営を安定させることができます。


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