介護
介護労働安定センターは29日、最新の「2025年度介護労働実態調査」の結果を公表した。
職員が「不足している」と答えた事業所の割合は65.8%(*)。前年度から0.6ポイント上昇し、現場の厳しさがさらに増していることが分かった。
* 不足=「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計。
職種別で最も不足感が強いのはホームヘルパーだ。
「不足」とする事業所は82.9%に上り、他の職種と比べても突出して高い水準となった。「大いに不足」「不足」を合わせたより切実な状況も58.6%を占めており、訪問介護の供給体制が極めて切迫していることが改めて浮き彫りになった。
施設などの介護職員も「不足」が69.8%となり、前年度から上昇した。このほか、ケアマネジャーや看護職員、リハビリ専門職などでも前年度より不足感が悪化。幅広い職種で人材難が深刻化している現実が報告されている。
この調査は、介護労働安定センターが昨年10月に実施したもの。全国の1万8000事業所・施設が対象で、53.1%の8955事業所・施設から有効な回答を得た。
遂に令和8年度地域別最低賃金額改定の目安が発表されました。
今後は、各地方最低賃金審議会で、この答申を参考にしつつ、地域における賃金実態調査や参考人の意見等も踏まえた調査審議の上、答申を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定することとなります。
今後の動向に注目です。
取り急ぎのご一報でした。
はじめに:その「なんとなくの残業」、放置していませんか?
医療機関、介護事業所、保育園の経営者・管理者のみなさま、日々の運営お疲れ様です。
スタッフの労務管理を行うなかで、以下のようなお悩みを抱えてはいませんか?
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「終業時刻を過ぎているのに、なぜか帰らずに職場に残っている職員がいる」
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「注意したいけれど、どこからを残業(労働時間)と判断すべきか迷う」
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「タイムカードの打刻時間と実際の業務時間がズレていて不安だ」
医療・介護・保育の現場は、突発的な対応や業務の多層化、シフト制などにより残業が発生しやすい環境にあります。しかし、理由のない滞在や事前申請のない残業を放置していると、未払い残業代の過去遡及請求(過去3年分)や労務トラブル、さらには人件費や光熱費などのコスト増大という、事業所の存続に関わる大きな経営リスクへ直結しかねません。
本記事では、クリニック専門社労士、介護専門社労士、保育園専門社労士の視点から、実際のトラブル事例(訪問介護含む)を踏まえつつ、終業時刻を過ぎても退勤しない職員への適切な指導法とリスク防止策を徹底解説します。
1. 残っている職員の「理由」と「業務の緊急度」を確認する
職員が終業時刻を過ぎても職場に残っている場合、まずは「なぜ残っているのか」「その業務は今すぐ行うべきものか」という業務の緊急度・必要性を確認する必要があります。
(1)緊急度・必要性が高い場合
医療・介護・保育の現場では、突発的な対応が避けられない場面が多く存在します。
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クリニック: 診療終了間際の駆け込み患者への対応、患者様の急変対応、検査結果の即時整理など
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介護事業所(通所・入所・訪問): 利用者の急変・転倒対応、送迎トラブル、訪問先での緊急対応、サービス提供記録の緊急作成など
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保育園: 園児の突発的なケガ・発熱、保護者からの相談・対応、延長保育の予期せぬ延長など
このように緊急性が高い場合は、時間外労働(残業)として認めざるを得ません。ただし、残業の運用方法には以下の2通りがあります。
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管理者が残業命令を出す場合(指示型)
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職員から事前申請を受け、管理者が承認する場合(申請型)
多くの施設で「②事前申請型」を採用していますが、ルールが形骸化し「申請なしで勝手に残業している」ケースが後を絶ちません。適切な指導とルールの再徹底が必要です。
(2)緊急度・必要性が低い場合
「業務時間内だと集中できないから」「明日の準備を余裕を持ってやっておきたいから」といった個人的な理由で残っているケースも少なくありません。
こうした自己判断による残業を曖昧に許容してしまうと、「ダラダラ残業」が日常化・固定化してしまいます。必要性の低い業務についてはその場で残業を認めず、「決められた時間内で効率よく業務を終わらせる」意識を持たせる指導を行い、速やかな退勤を促しましょう。
2. 業務以外の理由で残っている場合は「すみやかに退勤」させる
業務を行っていないにもかかわらず職場にとどまっているケースもあります。
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退勤後のプライベートな予定(飲み会や習い事など)まで時間をつぶしている
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先輩や同僚が残っていて「お先に失礼します」と言いづらい雰囲気がある
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雑談や着替えをしたまま事務所やスタッフルームでダラダラと過ごしている
仕事をしていない様子であれば、「用事が終わっているなら速やかに退勤してください」とハッキリ指導することが重要です。
また、一見仕事をしているように見えても、事前に指示・承認を出していない残業であれば、「本日の業務はここまでにして、続きは明日に回して退勤してください」と業務を打ち切らせる指示を出しましょう。
管理者側が何も言わずに放置(不作為)していると、法的には「残業を黙認していた=残業を許可していた(黙示の指示)」とみなされ、後から残業代の支払いを求められる原因になります。
3. 「ダラダラ残業」が引き起こす経営リスクとトラブル事例
残業のルールがあいまいなまま放置されると、経営面・組織面で大きなリスクが発生します。ここで、実際の現場で起きたトラブル事例をご紹介します。
【事例1】クリニックにおける「慣習化したダラダラ残業」
事象: ある内科クリニックで、受付スタッフAさんが診療終了後も1時間以上スタッフルームで残業していました。院長は「今日の締め作業をやっているのだろう」と放置していましたが、実際は日中に終わる作業をゆっくり行ったり、雑談を交えたりしていただけでした。
リスク: Aさんの退職後、タイムカードの記録をもとに「未払い残業代」が請求されました。院長は「残業を命じていない」と主張しましたが、タイムカードの記録と放置していた事実から「黙示の指示があった」とみなされ、数十万円の残業代を追加支給することになりました。
【事例2】訪問介護事業所における「記録作成・移動時間の曖昧化による残業トラブル」
事象: 訪問介護事業所のヘルパーBさんは、すべての訪問サービスが終わった後、夕方に事業所に戻ってきてから「支援記録の作成」や「サ責への報告」をまとめて行っていました。事業所に残って他のヘルパーと話し込み、退勤打刻が毎晩1〜2時間遅れていましたが、サ責は「記録作成に時間がかかっているのだろう」と特に注意していませんでした。
リスク: Bさんが退職する際、事業所に戻ってからのすべての滞在時間について未払い残業代を請求されました。事業所側は「記録作成は15分程度で終わる内容であり、残りは雑談だった」と反論しましたが、事業所内にいた客観的な記録(タイムカード)があり、管理者も退出を促していなかったため、労働時間として認定されてしまいました。
【事例3】保育園における「持ち帰り・サービス残業の曖昧化」
事象: 保育園のC先生は、閉園後に園に残って日誌の記入や壁面装飾の作成を行っていました。園長は「残業申請を出していないから自主的な残業」と思っていましたが、業務量が多すぎて勤務時間内に終わらない構造になっていました。
リスク: C先生が体調不良で退職する際、労働基準監督署へ駆け込み。「残業を申請できる雰囲気ではなく、指示された業務量が勤務時間内に終わらない状況だった」として指導が入り、過去に遡って残業代の支払いを命じられました。
4. 最大の恐怖!過去に遡って残業代を請求されるリスク
「うちはアットホームだから」「今まで誰も残業代を請求してこなかったから大丈夫」と考えてはいませんか?
良好な人間関係が保たれている間や、給与に大きな不満がない時期は問題が表面化しないかもしれません。しかし、以下のような「きっかけ」ひとつで状況は一変します。
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人間関係の不調や、上司・園長・院長・サ責とのトラブル
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退職時のトラブルや感情的なこじれ
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人事評価や昇給・賞与に対する不満
労働基準法の改正に伴い、未払い残業代の請求時効は「3年」となっています。もし過去3年分にわたる時間外労働の請求を受けた場合、未払い額は1人あたり数百万円、組織全体では千万円単位の膨大な金額に膨れ上がるケースも珍しくありません。
タイムカードの記載時間=労働時間とみなされる?
労務トラブルにおいて最も焦点となるのが、「タイムカードの打刻時間と、実際の労働時間に相違がないか」です。
打刻時間と実際の勤務状態にズレがある場合、以下のような具体的実務対応を日常的に行うことが求められます。
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「残業事前申請・許可制」の書面・システム運用を徹底する
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実際の勤務開始・終了時刻と実労働時間を定期的に本人と確認・照合する
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照合した記録に対し、本人の確認印や承認記録を残す
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「労働時間とは何か」「承認のない残業は認めない」ことを院長・園長・施設長自身が正しく理解し、職員へ周知する
日頃から職員の健康管理に留意し、「不必要な残業はさせない」「事前承認のない残業は禁止する」という姿勢を厳格に指導・徹底することが、最大の防衛策となります。
5. 専門家とともに「残業トラブルに強い職場環境」を作りませんか?
クリニック、介護事業所(訪問介護含む)、保育園における労務管理は、一般的な企業とは異なる特有の難しさがあります。
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医療・看護・受付など多職種が入り交じるクリニック
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移動時間・記録作成・直行直帰やシフトが複雑な訪問介護・介護現場
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行事準備や持ち帰り仕事が発生しやすい保育園
これらの現場で「残業のルール」を浸透させ、未払い残業代リスクをゼロにするためには、業界の事情に精通した専門家による就業規則の見直しや残業許可制の導入・運用サポートが不可欠です。
当社にお任せください!
当社には、各業界の課題に特化した「クリニック専門社労士」「介護専門社労士」「保育園専門社労士」が多数在籍しております。
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「ダラダラ残業をなくすための『残業事前許可制』を導入・運用したい」
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「訪問介護ヘルパーの移動時間や事業所滞在時間の労務ルールを整理したい」
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「現在のタイムカード運用や就業規則にリスクがないか診断してほしい」
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「終業後になかなか帰らない職員への指導方法や面談について具体的に相談したい」
このようなお悩みをお持ちの管理者・経営者様は、ぜひ一度当社へご相談ください。現場の実情に合わせた最適な労務ソリューションをご提案いたします。
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厚生労働省は23日に介護保険最新情報Vol.1527を発出し、新たなLIFE(科学的介護情報システム)への移行について現場へ改めて注意を喚起した
7月31日の期限が目前に迫る中、23日時点でも移行作業を完了していない事業所・施設が一定数残っていると指摘。期間内に手続きを確実に終えるよう呼びかけている。
LIFEの運用主体は今年5月11日、厚労省から国民健康保険中央会へと移管された。
LIFEを活用している事業所・施設は、新たなLIFEへの移行作業が不可欠。これを済ませることが、LIFE関連加算を継続して算定するための必須要件となる。
介護事業所の施設長、保育園の園長、クリニックの事務長や主任看護師など、現場で「管理者」と呼ばれる役職者の方々の労働時間管理や給与計算で、次のようなお悩みを抱えていませんか?
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「管理者として残業代を支給していないが、遅刻してきた分を給与から減額(遅刻控除)してもいいのだろうか?」
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「介護保険法や児童福祉法上の『管理者』だから、労働基準法上の『管理監督者』として扱って問題ないはずだ」
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「主任やリーダーにも『役職手当』を出しているから、残業代は不要ではないか?」
結論から申し上げますと、労働基準法上の「管理監督者」であっても、遅刻・早退による給与減額は原則として認められません。 もし遅刻控除を行ってしまうと、その人物は管理監督者ではなく「一般社員」であるとみなされ、過去3年分に遡って多額の未払い残業代の支払いを命じられる(是正勧告を受ける)リスクが生じます。
本記事では、介護・保育・医療(クリニック)業界に特化した社会保険労務士の視点から、労働基準法第41条における「管理監督者」の正しい定義、介護・保育・クリニック特有の混同しやすいポイント、そして遅刻・早退・欠勤時の給与の取扱いについて分かりやすく解説します。
1. 労働基準法第41条における「管理監督者」とは?
労働基準法第41条第2号では、「事業の種類にかかわらず監督又は管理の地位にある者(以下、管理監督者)」について、労働時間、休憩、休日に関する規定を適用しないと定めています。
つまり、管理監督者に該当する場合、時間外労働(残業)手当や休日出勤手当を支払う必要がありません(※ただし、深夜労働手当の支払いは必要です)。
しかし、単に社内で「店長」「施設長」「リーダー」といった役職名をつけているだけでは、法的な管理監督者とは認められません。裁判例や厚生労働省の通達において、管理監督者と認められるためには以下の3つの要件を「勤務の実態として」すべて満たしている必要があります。
① 経営者と一体的な立場での「十分な職務権限」があるか
経営方針の決定に関与しているか、採用・解雇・人事評価・シフト作成などの重要な人事権限を持っているかどうかが問われます。現場のシフト調整程度しか権限がない場合は、これに該当しません。
② 労働時間について「自由な裁量」があるか
始業・終業時刻に縛られず、自分の判断で出退勤を決める自由があるかどうかが重要です。タイムカードで出退勤を厳密に管理され、遅刻や早退に対してペナルティがある働き方の場合は、「時間の自由裁量がない」と判断されます。
③ 職務の重要性にふさわしい「適切な待遇(給与・手当)」が支払われているか
基本給や役職手当が、一般社員に比べて十分に高額である必要があります。「残業手当を払わない代わりに、数万円程度の役職手当を支給しているだけ」という状態では、待遇要件を満たしているとは言えません。
これら3つの要件は、契約上の形式ではなく「具体的な勤務実態」で判断されます。
2. 介護・保育・クリニックで多発する「名ばかり管理職」の落とし穴
特に介護事業所、保育園、医療機関(クリニック)においては、業界特有の事情から「名ばかり管理職」が発生しやすい構造があります。代表的な注意点を3つ挙げます。
介護保険法・児童福祉法上の「管理者」と労基法上の「管理監督者」の混同
介護保険制度(指定基準)や保育所の設置基準、医療法では、事業所ごとに「管理者」や「施設長」「園長」の配置が義務付けられています。 ここで注意したいのは、行政上の「配置義務のある管理者」と、労働基準法上の「管理監督者」は全く別物であるということです。
行政上の要件を満たすために置かれた「施設長」や「サビカン(サービス管理責任者)」「園長」「事務長」であっても、経営上の権限がなく、日々の現場業務に追われている場合は、労基法上は「一般社員」と判定されます。
シフト勤務に入っている管理者は「管理監督者」になれない?
多くの介護施設や保育園、クリニックでは、1か月単位のシフト制で勤務を回しています。 もし、管理者が「常態として特定の勤務シフト(日勤・夜勤・早番など)に組み込まれ、欠勤すると現場が回らない状態」にある場合、出退勤の自由裁量がないとみなされ、管理監督者性が否定される可能性が極めて高くなります。
主任、副主任、リーダー階層への残業代不払いリスク
一般的な組織において、労基法上の管理監督者に該当する可能性があるのは、理事長、社長、施設長、事業所長、事務長といった経営トップ・幹部クラスに限られるケースがほとんどです。
もし、それ以下の役職である「主任」「副主任」「リーダー」「看護師長」などを管理監督者として扱い、残業手当を支給していない場合、労基署の調査(労働基準監督署の立ち入り調査)が入ると、ほぼ確実に「名ばかり管理職(未払い残業)」として指摘を受けることになります。
【是正勧告による企業リスク】 労基署から是正勧告を受けた場合、未払い残業代は**「過去3年分(法改正により延長)」に遡って支払う義務**が生じます。対象者が複数名いる場合、支払額は数百万円〜数千万円規模に膨れ上がり、法人の資金繰りに重大な打撃を与えることになります。
3. 管理監督者の「遅刻・早退・欠勤」に関する給与の取扱い
ここで、今回のメインテーマである「管理監督者に対する遅刻・早退・欠勤時の給与の取扱い」について整理します。
遅刻・早退:給与減額(遅刻控除)はNG
該当者が労基法上の管理監督者であることを前提とした場合、遅刻や早退による給与減額(控除)は認められません。
管理監督者は「労働時間について自由な裁量を持っている」ことが前提だからです。例えば、定刻より2時間遅れて出社した場合であっても、「遅刻したから2時間分の給与を引く」ということはできません。 もし遅刻控除をしてしまうと、「この職員には時間の自由裁量がない(=管理監督者ではない)」という自社に不利な証拠を自ら作ることになってしまいます。
欠勤:就業義務違反として「欠勤控除」はOK
一方で、丸1日休んだ場合の「欠勤控除」は認められます。
管理監督者であっても、雇用契約・委任契約に基づく「就業義務(働く義務)」自体は存在するためです。1日も労働を提供しなかった日については、ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、給与から1日分を減額(控除)しても労働基準法上問題ありません。
遅刻を繰り返す管理監督者への正しい対処法
「遅刻控除ができないなら、遅刻を繰り返す管理者をどう指導すればいいのか?」というご質問をよくいただきます。 給与の減額(遅刻控除)はできませんが、管理者としての「職責を果たしていない」として、人事評価を下げる、役職手当を減額する、あるいは懲戒処分の対象とすることは可能です。
4. 残業代が出ない管理監督者でも「労働時間管理」は必須!
「管理監督者には残業代を払わないから、タイムカードを打刻させなくていい」と誤解されている経営者様・園長様が今でも少なくありません。
結論として、管理監督者であっても労働時間の把握・管理は法律上の義務です。
給与計算のためではなく「健康確保措置」のため
2019年4月の労働安全衛生法改正により、「高度プロフェッショナル制度適用者を除くすべての労働者(管理監督者を含む)」の労働時間の状況を客観的な方法で把握することが事業主に義務付けられました。
管理監督者はその責任の重さから長時間労働・過重労働に陥りやすく、精神疾患(メンタルヘルス不調)や脳・心臓疾患を引き起こすリスクが高いためです。
経営者・人事担当者が取り組むべき安全配慮義務
経営者や人事担当者は、管理監督者のタイムカードやPCログなどを確認し、過重労働になっていないかを常にチェックしなければなりません。万が一、管理監督者が長時間労働によってうつ病などを発症した場合、法人側は「安全配慮義務違反」として多額の損害賠償責任を問われるリスクがあります。
5. 介護・保育・クリニックの労務管理なら専門社労士にご相談ください
介護事業所、保育園、クリニックなどの現場は、一般企業以上に労働時間管理やシフト編成、加算制度(処遇改善加算など)の運用が複雑です。
自社の管理者が労基法上の「管理監督者」に該当するかどうかは、単なる知識だけでなく、過去の裁判例や労基署の指導傾向を踏まえた専門的な法的判断が必要となります。
「自社の役職手当や管理者扱いが適切かどうか不安だ」 「未払い残業代のリスクを事前に回避したい」 「医療・介護・保育に特化した就業規則の見直しを行いたい」
このようにお考えの法人様・オーナー様は、ぜひ一度、介護・保育・クリニック専門の社会保険労務士法人(弊所)までお気軽にご相談ください。現場の実態に即した最適な労務管理体制の構築をサポートいたします。
本記事のまとめ
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労基法上の管理監督者は「職務権限」「時間の自由裁量」「相応の待遇」の3つの実態で判断される(役職名だけでは不可)。
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介護・保育・クリニックの「管理者」は行政上の要件であり、労基法上の管理監督者と混同すると残業代未払いリスクが生じる。
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管理監督者に対して遅刻・早退控除は原則不可(行うと管理監督者性を否定される)。ただし欠勤控除は可能。
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残業代の支給対象外であっても、健康管理のために労働時間の把握は義務である。
業界最大手のSOMPOケアは、勤続5年以上の介護職員らを対象とした「5連休制度」の導入・定着など、介護現場の働く環境の改善に力を入れている。
5連休の取得率はすでに8割弱。一連の施策が奏功し、離職率は11%台と低い水準を維持している。鷲見隆充代表取締役社長がインタビューで明らかにした。
国内の人手不足が深刻化の一途をたどり、業界の枠を超えた横断的な人材獲得競争が熾烈を極めるなか、介護現場の採用環境も厳しさを増している。鷲見社長は、「正直に言って採用は非常に厳しい。新卒も中途も確保が難しくなり、採用コストも上がった。給与が高い他のサービス産業へ人材が流れている面もある」との認識を示した。
SOMPOケアは今年度から、介護職員らに新たな人材を紹介・推薦してもらう「全員リクルーター制度」も強化した。
採用や定着といった成果に応じたインセンティブの付与などを推進するほか、「今すぐ働くかどうか分からない」「まずは職場の雰囲気を知りたい」という求職者のために、体験型のスポットワークを新たに導入。鷲見社長は、「全員で仲間を増やしていこうと声をかけている。地域に開かれた透明性の高い事業所・施設をつくり、一緒に働きたいと言ってくれる人を増やしたい」と意欲をみせた。
介護報酬の処遇改善加算の実績報告書について、厚生労働省は公式サイトなどで配布しているExcelの様式を差し替えた。
計算式などの改善・修正のためで、8日に発出した介護保険最新情報Vol.1522で現場の関係者へ広く周知した。
修正の対象となったのは、昨年度分と今年度分の実績報告書。それぞれ通常版と大規模版がアップデートされた。
厚労省は自治体や事業所・施設などに対し、今後は差し替え後の新たな様式を活用してほしいと呼びかけている。
※ 差し替え後の新たな様式はこちらから(介護保険最新情報Vol.1522)
一方の今年度分では、新たに処遇改善加算の対象となったサービスのみを運営する事業所に向けた修正が行われた。
ケアプランデータ連携システムの活用など特例要件を満たす場合の記入方法について、新しくメモが加えられている。
具体的な修正箇所は複数に及ぶ。昨年度分の実績報告書では、補正予算に基づく補助金を原資に賃上げを実施した場合の記入方法に関するメモが追記された。
(介護ニュースより)
介護施設、クリニック、保育園など、慢性的な人手不足に悩む現場において、スタッフの「採用」と「退職」は経営を大きく左右する重要課題です。
こうしたなか、経営者や人事担当者を悩ませるのが、「一度は退職願を出したスタッフから『やっぱり辞めるのを止めたい(撤回したい)』と言われた」というトラブルです。
すでに次のスタッフの採用活動を進めていたり、人員配置を決めていたりする場合、急に退職を撤回されると現場のシフトや経営に大きな支障が出ます。では、法律上、スタッフからの退職願の撤回を拒否することはできるのでしょうか?
今回は、福祉・医療業界の労務管理に精通する「介護専門社労士」「クリニック専門社労士」「保育園専門社労士」の視点から、退職願の撤回の可否や、口頭での意思表示の有効性、現場で実践すべきトラブル防止策を分かりやすく解説します。
1. 結論:退職願の撤回はできるのか?
結論から言うと、「人事権を持つ経営者や管理職が退職願を受理(承諾)した後は、原則としてスタッフ側から一方的に退職を撤回することはできない」というのが法律上のルールです。
しかし、まだ受理していない段階(会社が承諾する前)であれば、スタッフは退職の申し出を撤回することができます。
つまり、「すでに受理したかどうか」というタイミングと状況によって、撤回ができるかどうかが決まります。まずはこの仕組みを正しく理解するために、法的な背景を確認していきましょう。
「退職願」と「退職届」の違い
実務上、混同されやすいのが「退職願」と「退職届」の違いです。この2つは法的な性質が大きく異なります。
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退職願(合意解約の申し入れ): 「退職させてほしい」という会社への“お願い(労働契約の合意解約の申し込み)”です。会社が「分かりました」と承諾するまでは、原則として撤回が可能です。
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退職届(辞職の意思表示): 「〇月〇日をもって辞めます」という、労働者からの“一方的な通告(辞職)”です。原則として、提出した時点で会社の承諾なしに効力が発生するため、出した後は原則として撤回できません(民法第627条)。
ブログの相談にある「退職願」の場合は、会社側が「承諾(受理)」したかどうかが運命の分かれ道となります。
2. 退職願の撤回の可否を決める「受理」の基準(判例解説)
では、どのような状態になれば「受理(承諾)」したとみなされ、撤回ができなくなるのでしょうか。過去の重要な裁判例をもとに解説します。
① 人事権を持つ者が受理した後は「撤回不可」
最高裁判所の判例(昭和62年)では、「退職願を人事部長が受理した時点で、労働契約の合意解約が成立した(承諾された)とみなされるため、その後の撤回は認められない」とされています。
介護施設であれば施設長や理事長、クリニックであれば院長、保育園であれば園長や理事長など、「採用や退職を決定できる権限(人事権)を持つ人」が退職願を受け取り、承認した時点で契約解除が確定します。
この段階以降であれば、スタッフ側から「転職先のクリニックから内定を取り消された」「やっぱり今の保育園で働き続けたい」と言われても、経営者は拒否することができます。
② 人事権のないスタッフが預かっただけなら「撤回可能」
一方で、岡山地裁(平成3年)の判例では異なる判断が下されました。 院長(人事権を持つ人)以外の、人事権を持たない一般的な先輩スタッフや、単に書類の受取次ぎをするだけの事務員が退職願を預かった段階では、まだ退職の承認(承諾)はなされていないと判断されたのです。
この場合、退職願が人事権を持つ経営者の元へ届き、承認される前であれば、スタッフは「やっぱり辞めるのを止めます」と退職を撤回することができます。
福祉・医療現場で起こりがちな落とし穴
介護、クリニック、保育園の現場では、リーダーや主任、婦長、副園長などがスタッフから退職願を直接手渡されるケースが多々あります。 もし、人事権を持たない主任が「分かりました、預かっておきますね」と言っただけで、経営者(院長や理事長)が中身を確認していない状態であれば、まだ法律上は「受理」されていません。その間にスタッフの気が変われば、撤回を認めざるを得なくなるため注意が必要です。
3. 「辞めます」という口頭のみの意思表示は有効か?
スタッフのなかには、書面を出さずに「もう限界なので辞めます」「来月で退職します」と口頭だけで伝えてくるケースもあります。こうした口頭での意思表示には、どのような法的効力があるのでしょうか。
法的には「口頭」でも有効
法律上、退職の意思表示は書面でなければならないという決まりはありません。そのため、人事権を持つ経営者(院長や理事長など)に対して直接向けられた言葉であれば、口頭であっても直ちに退職の申し出としての効果が発生します。
経営者がその場で「分かりました、承諾します」と答えれば、その瞬間に退職の合意が成立することになります。
なぜ口頭だけでは危険なのか?(トラブルのリスク)
しかし、実務において口頭のみの退職処理を進めるのは非常に危険です。 スタッフが一時的な感情や、業務上の混乱、人間関係の誤解から突発的に「辞める!」と言ってしまったようなケースでは、後から大きな紛争に発展することがあります。
トラブルが発生した場合、スタッフ側から以下のような主張をされるリスクがあります。
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「あの時は頭に血が上っていただけで、本気で辞めるつもりはなかった」
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「口頭での軽いやり取りであり、退職という重大な決断を真に望んだものではなかった」
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「辞めると言った覚えはない。会社から『来なくていい』と言われた(=不当解雇だ)」
口頭での意思表示は「言った・言わない」の水掛け論になりやすく、法的な効力が曖昧になりがちです。特に「辞める」と言った翌日からも通常通りシフトに入って勤務を続けているような場合、周囲から見ても「本当に退職の合意があったのか」が不透明になります。 最悪の場合、「自主退職ではなく、会社から強制的に辞めさせられた(解雇された)」と主張され、不当解雇を理由に慰謝料や未払い賃金を請求される労務トラブルに発展しかねません。
そのため、どれだけ親しい間柄であっても、法律上で退職を確実なものにするためには、必ず「書面(退職願または退職届)」を提出してもらう必要があります。
4. 介護・クリニック・保育園で退職トラブルを防ぐための実務対策
介護施設、クリニック、保育園は、いずれも「人」が最大の経営資源であり、配置基準(人員基準)が厳格に定められているという共通点があります。スタッフの退職対応を曖昧にすると、経営へのダメージが直撃します。
トラブルを未然に防ぐため、経営者が実践すべき3つの実務対策をお伝えします。
対策①:就業規則に「退職手続き」を明記する
まずは、就業規則の退職規定を整備しましょう。 「退職を希望する者は、退職予定日の〇ヶ月前までに、所定の退職願(届)を人事権を持つ者(理事長・院長等)に提出しなければならない」といった具体的なルールを明記しておきます。これにより、スタッフも「まずは書面を出さなければならない」と認識し、突発的な口頭トラブルを減らすことができます。
対策②:退職願を受け取ったら速やかに「受領印」または「承諾通知」を出す
スタッフから退職願が提出され、それを受け入れる(引き留めをしない)と決めた場合は、人事権を持つ経営者が速やかに確認し、受理した旨を記録に残しましょう。 「〇月〇日に退職願を受領し、これを承諾した」という書面(承諾書)を交付するか、提出された退職願の控えに受領印と日付を押して本人に渡すことで、法的に「これ以降の撤回は不可」という状態を確定させることができます。
対策③:専門の社会保険労務士(社労士)に相談できる体制を整える
福祉や医療の現場は、労働基準法だけでなく、介護保険法や医療法、児童福祉法といった独自の業界特有のルール(人員配置基準など)が絡み合う複雑な環境です。
スタッフの退職に伴うトラブルや就業規則の変更、人間関係の改善など、日常的な労務問題が発生した際には、それぞれの業界に特化した専門家に相談するのが最も確実です。
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介護専門社労士: 訪問介護、通所介護、サ高住など、介護報酬改定や複雑なシフト管理、人員基準を理解した上で、スタッフの離職防止や労務管理をサポートします。
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クリニック専門社労士: 医師、看護師、医療事務など、少人数の職場だからこそ起こりやすい人間関係のトラブルや、院長の負担を減らすための労務手続き、採用・退職の実務をサポートします。
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保育園専門社労士: 保育士の配置基準やキャリアアップ研修、処遇改善等加算の仕組みを踏まえ、保育士が安心して長く働ける職場環境づくりと、退職時の円満な手続きをサポートします。
独自の雇用環境を持つ業界だからこそ、一般的な社労士ではなく、それぞれの専門知識を持った社労士をパートナーに選ぶことで、より実効性の高いトラブル対策が可能になります。
5. まとめ
今回の内容を重要なポイントとして3つにまとめます。
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退職願の提出後、人事権を持つ者(院長・理事長・園長など)が受理(承諾)した後は、原則としてスタッフ側から退職を撤回することはできない。
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人事権を持たないスタッフ(主任や事務員など)が退職願を預かっただけの状態では、まだ承認されたとは言えず、スタッフ側からの退職の撤回が認められる可能性が高い。
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「辞めます」という口頭のみの意思表示も法律上は有効だが、「言った・言わない」のトラブルや「不当解雇だ」と主張されるリスクを防ぐため、必ず書面(退職願)を提出してもらうべきである。
スタッフの退職は、残されたメンバーのモチベーションや日々の業務運営に大きな影響を与えます。だからこそ、手続きは感情論ではなく、法律に基づいた正確なステップで行うことが大切です。
「退職の撤回を求められて困っている」「スタッフとの間で退職を巡るトラブルが起きそう」とお悩みの経営者様は、ぜひ一度、介護専門社労士・クリニック専門社労士・保育園専門社労士などの専門家へご相談ください。適切なアドバイスにより、貴園・貴院の健全な経営を守るサポートをいたします。
全国のケアマネジャーが登録するウェブサイト「ケアマネジメント・オンライン」が、埼玉県川口市で発生した刺殺事件を踏まえた緊急意識調査の結果を公表した。
それによると、過去1年間に「身の危険を感じるほどの恫喝や暴言、精神的攻撃を受けた」との回答が28.9%にのぼることが判明した。何らかのハラスメントや暴力、暴言を経験した人は8割超に達する。
具体的な被害内容(複数回答)は、「暴言や精神的攻撃」が55.8%で半数を超え、「不当なクレーム」も50.0%を占めるなど、日常的なリスクの深刻さが改めて浮き彫りとなった。
この調査は今年6月に実施されたもの。同サイト会員のケアマネジャーが対象で、1793人から有効回答を得ている。
過去1年間に何らかのハラスメントや暴力、暴言を受けた人に加害者の属性(複数回答)を聞くと、「利用者の主介護者やキーパーソン」が78.2%で最多となり、利用者本人(61.5%)を上回った。全体の86.3%が「ケアマネジャーは被害者になりやすい」と考えており、現場の強い危機感が示されている。
はじめに:採用後の「こんなはずじゃなかった…」に悩む経営者・管理職の皆様へ
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「面接では『即戦力として動ける』と言っていたのに、指示待ちばかりで業務が回らない」
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「『前職でリーダー経験がある』という言葉を信じて採用したのに、現場の人間関係を引っかき回されている」
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「高度なスキルがある前提の給与設定にしたのに、実務レベルが低すぎる」
介護施設の施設長、保育園の園長、そしてクリニックの院長の皆様、このような「採用ミスマッチ」に頭を悩ませていませんか?
人手不足が深刻な福祉・医療業界において、優秀そうな人材の応募は喉から手が出るほど欲しいものです。しかし、いざ入社してみると、面接時に申告していたスキルや能力を全く持っていない職員だった……というトラブルは後を絶ちません。
経営者や管理職としては「騙された」「すぐにでも辞めてほしい」と思うのが本音かもしれませんが、感情に任せて「解雇」に踏み切るのには極めて高いリスクが伴います。
本記事では、医療・福祉業界の労務管理に精通する「介護社労士」「保育園社労士」「クリニック社労士」の視点から、スキル不足の職員を解雇できるのかという疑問にお答えし、リスクを最小限に抑える現実的な解決策を解説します。
1. 【結論】スキルや能力の不足を理由とした解雇は「極めて難しい」
結論から申し上げますと、「資格の有無」のように客観的に判断できるケースを除き、単なる「スキル不足」「能力不足」を理由に職員を解雇することは、日本の労働法において現実的には極めて困難と言わざるを得ません。
〇 資格や経歴の「詐称」は解雇事由になり得る
客観的な事実の有無は、白黒がはっきりしているため解雇の正当な理由になりやすいです。 例えば、クリニックにおいて「診療報酬の算定(専門看護師など)に必要な専門研修等の履修実績がある」と偽っていた場合や、介護施設・保育園で必須となる資格(介護福祉士、保育士など)を実は持っていなかったというケースです。これらは明らかな経歴詐称であり、業務に直接的な支障をきたすため、解雇事由に該当する可能性が非常に高くなります。
× 曖昧な「スキル不足」での解雇はリスク大
一方で、以下のようなケースは非常に厄介です。
【よくあるトラブル例】 「在宅医療の経験が3年以上あり、一通りのことはできる」と面接で言っていたのに、実際に勤務させてみると、3年も経験してきたとは到底思えないような低いスキルしか持ち合わせていなかった。
このような場合、「3年経験した」「一通りのことができる」という基準は主観的な要素を含みます。本人が「自分の中ではできている」と主張した場合、客観的にそれを否定して解雇の要件(客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であること)を満たすのは非常に難しいのが現実です。
仮に強引に解雇してしまうと、後から「不当解雇」として訴えられ、多額のバックペイ(解雇期間中の給与)を支払う羽目になるリスクがあります。
2. リスクを最小限に抑えるなら「試用期間中」のアプローチが鍵
どうしても能力不足の職員に辞めてもらう、あるいは改善を促すのであれば、試用期間(一般的には3ヶ月〜6ヶ月)が終了するまでのタイミングが勝負となります。
なぜなら、試用期間を経て一度「正職員」として本採用してしまうと、「貴院(貴施設)は試用期間を通して、本人のスキルを含めて正職員として適格だと認めた」ということになり、解雇のハードルがさらに跳ね上がるからです。
試用期間中であれば、正職員登用後よりも「留保解約権の行使」として、一定の合理的な理由があれば本採用を拒否(解雇)することが認められやすい傾向にあります。ただし、それでも一発退場(即解雇)はできません。以下のプロセスを必ず踏む必要があります。
試用期間中に踏むべきステップ
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定期的な面談と証拠の記録 「あなたには、今の時点で〇〇というスキルが不足しています」と具体的に指摘し、話し合いの場を設けます。口頭だけでなく、指導内容や面談記録を必ず書面(またはデータ)で残してください。
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試用期間の延長と教育の機会提供 必要に応じて、就業規則の規定に基づき「必要なスキルを身につけるまで」試用期間を延長します。会社として教育や改善の機会を与えたという事実が重要です。
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条件変更の提案(解雇回避努力) 延長期間内でも改善が見られない場合、いきなり解雇するのではなく、「業務上このまま正職員として継続するのは難しい。一度退職するか、あるいは給与(職位)を下げて契約社員などとして残りますか?」と本人に選択肢を提示します。
これらの一連の「解雇回避努力」を尽くした上で、それでも本人が退職にも条件変更にも応じず、かつ業務の遂行が著しく困難な場合に初めて、試用期間満了に伴う本採用拒否(解雇)という流れに進むことができます。
3. 実務上最も現実的な解決策は「退職勧奨(話し合い)」
解雇は会社側にも労働者側にも大きな傷が残ります。そこで、介護施設長、保育園長、クリニック院長が実務上で選択すべき最も現実的な手段は、解雇ではなく「退職勧奨(たいしょくかんしょう)」です。
退職勧奨とは、会社から労働者に対して「辞めてもらえないか」と打診し、お互いの合意のもとで退職してもらう手続きを指します。
退職勧奨を成功させるポイント
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本人のプライドに配慮しつつ客観的事実を伝える 「あなたの能力が低いからクビだ」ではなく、「当院(当施設)が現在求めているスピード感や業務レベルと、あなたの得意分野の間にミスマッチが生じている。ここにいても、あなたが力を発揮して活躍するのは難しいのではないか」と、お互いのためを思ってのアプローチであることを伝えます。
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解決金(退職金の上乗せ)を用意する 円満な合意を促すため、給与の1ヶ月〜2ヶ月分程度の「解決金」を準備することが一般的です。次の仕事が決まるまでの生活保障という名目で提示すると、本人も納得しやすくなります。
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必ず「退職合意書」を取り交わす ここが最も重要です。合意退職が成立した際には、必ず「退職合意書(合意書)」を作成してください。 書面には「今後、本件(退職の経緯や労働契約)に関して、労働審判や裁判などの法的な手段を含め、一切の請求や異議申し立てを行わない」という「清算条項」を必ず盛り込みます。この合意書があれば、仮に後から本人が「やっぱり納得いかない」と訴えてきたとしても、裁判で極めて強い抑止力・証拠能力を持ちます。
4. 今後のトラブルを未然に防ぐ!「入り口」での賢い契約テクニック
ここまで「入社してしまった後」の対策をお伝えしてきましたが、最も理想的なのは、このような労務トラブルを「未然に防ぐ仕組み」を作っておくことです。
そこでおすすめしたいのが、採用時の「ステップアップ型有期雇用」という手法です。
【トラブル回避の具体策】 正職員としての採用を前提とする場合であっても、最初の「入社後6ヶ月間」は正職員ではなく**「契約期間6ヶ月の有期雇用契約(契約社員)」**として採用します。
求人票や面接の段階から、「当院(当施設)では、最初の6ヶ月間は有期雇用契約となります。期間中の勤務態度やスキル、周囲との協調性を評価した上で、双方の合意があれば、7ヶ月目から正職員として登用(または契約更新)します」とはっきりと伝えておくのです。
この方法のメリット
このスキームをしっかりと構築できれば、もし面接時のアピールとは裏腹に全くスキルが足りない職員だった場合、「期間満了に伴う更新終了(雇止め)」という形で、契約を終了させることができます。
解雇や退職勧奨のように、激しい心理的摩擦や法的な解雇規制のリスクを背負う必要がなくなるため、経営者・管理職にとって非常に精神的負担の少ない、おすすめの防衛策です。 (※ただし、有期雇用であっても「更新を期待させるような言動」を日常的に行っていると、雇止めが認められないケースもあるため、事前の契約書作成と運用には注意が必要です)
まとめ:医療・福祉の労務トラブルは専門の社労士にご相談を
介護施設、保育園、クリニックは、いずれも「人」が最大の財産であり、同時に人間関係や労働環境のコントロールが難しい職場です。一人のスキル不足や協調性の欠如した職員によって、現場全体のモチベーションが低下し、既存の優秀なスタッフが離職してしまうことこそが最大の恐怖ではないでしょうか。
しかし、焦って無理な解雇を行えば、今度は法的リスクという別の火種を抱えることになります。
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現在の就業規則の「試用期間」や「解雇事由」の規定は万全か?
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退職勧奨を行う際の「退職合意書」の文面は法的に有効か?
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「最初の6ヶ月を有期雇用にする」ための契約書や求人票の文面はどう作ればいいか?
これらの判断や対策には、業界特有の働き方(シフト制、夜勤、資格要件、診療報酬・介護報酬への影響など)を深く理解している専門家のサポートが不可欠です。
採用ミスマッチや職員の処遇にお悩みの経営者様は、ぜひ一度、業界の特性を熟知した「介護社労士」「保育園社労士」「クリニック社労士」などの専門特化した社会保険労務士へご相談ください。貴院・貴施設の健全な運営と、大切なスタッフの職場環境を守るための最適なリスクマネジメントをご提案いたします。






