保育
傷病手当金の通算や育休中の社会保険料免除に関する法改正
2021年の通常国会では、育児・介護休業法の改正のほかに、健康保険法や厚生年金保険法の改正案が成立しました。対象となる従業員への影響が大きな内容を含みますので、以下で改正点を確認しておきます。(各項目の括弧内の日付は施行日)
1. 傷病手当金(2022 年1月)
健康保険の傷病手当金は、支給が開始された日から起算して、最長1年6 ヶ月まで支給されます。この1 年6 ヶ月の間に、⼀時的に就労した期間(傷病手当金が不支給となる期間)がある場合には、その就労した期間も含めることになっています。
近年はがん治療など、長期間にわたって療養のため休みながら働くケースが増えて来ています。こうした状況に対応し、治療と仕事の両立の実現するため、就労した期間は含めず、傷病手当金が支給された期間を通算して最長、1年6ヶ月間、支給されることとなります。
2. 育休中の社会保険料免除(2022 年10 月)
育児休業(以下、「育休」という)中は、申し出により社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)が免除されます。この免除となる基準が見直され、以下の通りとなります。
①育休を取得する月にかかる社会保険料
月末時点で育休を取得しているときは、その月の社会保険料が免除される。これに加え、育休の開始日の属する月は、月末時点で育休を取得していないときでも、その月中に 2 週間以上育休を取得していれば社会保険料が免除される。
②賞与にかかる社会保険料
月末時点で育休を取得しているときは、育休の取得日数に関わらず、その月に支給される賞与にかかる社会保険料が免除されていたものが、今後は育休を取得する期間が1ヶ月を超える場合に限り、免除される。
3. 任意継続被保険者制度(2022 年1月)
従業員は、退職した後でも⼀定の要件を満たせば、任意継続被保険者として退職前に加入していた健康保険の被保険者となることができます。
任意継続被保険者が負担する健康保険料は、会社が負担していたものを含めてその金額を負担します。この保険料の算出根拠について、「従前の標準報酬月額または全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額」となっていたものが、健康保険組合は規約で、従前の標準報酬月額とすることができるようになります。
また、任意継続被保険者の資格の喪失について、任意継続被保険者からの申請によりできることとなります。
育休中の社会保険料免除は、これまで以上に期間の管理が重要になります。また改正点について、従業員からの問い合わせも想定されます。詳細な情報を今後確認していきましょう。
男性の育休取得促進等を目的に成立した改正育児・介護休業法
2019 年度の男性の育児休業取得率は7.48%に留まっており、男女ともに仕事と育児等を両立できる仕組みが求められています。そこで2021年の通常国会では、男性の育児休業の取得促進等を目的とした育児・介護休業法の改正案が成立しました。ここでは改正点の概要を確認しておきましょう。
1.有期雇用労働者の取得要件緩和
現在、有期雇用労働者は、①引き続き雇用された期間が1 年以上あること、②1 歳6 ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでないこと、という要件のいずれも満たしたときに育児休業を取得できることとなっています。この要件のうち、①が廃止されます。
但し、現行制度でも労使協定を締結することで、入社1年未満の従業員からの育児休業の申し出を断ることができますが、有期雇用労働者もこの労使協定の対象にすることができます。
なお、介護休業についても同様の改正が行われます。
2. 雇用環境整備、個別周知・意向確認
育児休業の取得促進には、取得しやすい雇用環境を作る必要があることから、従業員に対し、育児休業に関する研修の実施や相談窓口の設置といった雇用環境の整備を行うことが会社に義務付けられます。
また、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした従業員に対し、育児休業について個別の周知や意向確認をすることも会社に義務付けられます。
3. 出生時育児休業
男性の育児休業の取得促進として新たに「出生時育児休業」が設けられます。これは、子どもが1 歳まで取得できる現行の育児休業とは別の制度であり、子どもの出生後8 週間以内に4週間まで、2 回に分割して取得できるものです。労使協定を締結し、事前に調整した上で育児休業中に就業することができます。
4. 育休の分割取得
現在の育児休業は、原則として1回のみ取得できますが、今後は2 回に分割して取得できるようになります。
さらに1 歳から1 歳6 ヶ月までの育児休業の延長、1 歳6 ヶ月から2 歳までの育児休業の再延長についても、開始日が1 歳または1 歳6 ヶ月に限られているものが柔軟化され、夫婦交代で取得できるようになります。
5. 育休の取得状況の公表義務化
従業員数が1,000 人超の企業は、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。
施行は、1および 2 について 2022 年 4 月1日、3 および 4 について公布(2021年 6 月 9 日)後 1年 6 ヶ月以内の日、5 について 2023 年 4 月1日となっています。就業規則(育児・介護休業規程等)の変更が必要な改正もあるので、今後の詳細な情報を確認して対応を進めましょう。
A 「採用での失敗は、育成でカバーすることは難しい」とも言われます。
どのような人を採用するか、これは言うまでもなく、事業運営の中で最も重要な事項といっても過言ではないでしょう。社員の定着のためには「定着するような人材を採用する」といった方が現実的かもしれません。しかし、実際には人手不足の際には、「応募してくれた方は、多少気になる点があってもほとんど採用する」という状況は、決してめずらしいことではありません。このようなことを繰り替えしていると「すぐに辞めるような人」を採用していることになりかねません。
それでは「辞めない人材」とはいったいどんな人材なのでしょうか。それは法人理念に共感できる職員を選ぶことです。理念に共感できるとは、法人として「大切にしたい価値観」の共有ができる方と言ってもいいかもしれません。
現場が人手不足の状況なので、ついつい早く人を「補充」したいという考えから、候補者の過去の経験、職務のスキル、資格などを重視した基準で採用を決定する場合も多いと思います。ただ、結果として、このような情報は、意外とあてにならないという経験をされた経営者も多いのではないかと思います。そこで、重要なのは「その方の価値感が法人の価値観や考え方に合うかどうか」ということになるのですが、問題はそれをどのように見極めるか、ということになります。もちろん、価値観が垣間見れるような質問内容を、事前にしっかり準備しておく必要がありますし、その結果を面接官複数の目で見て、客観的な指標にまで落とし込んでいくことをお勧めしています。
一方、候補者もそれなりに準備をして面接に臨みますので、なかなかホンネの部分までは見極めるのは難しいものです。ある法人の理事長は、法人創設の経緯や経営理念をできる限りわかりやすく、そして何度も何度もしつこいぐらいに伝え(これが重要ということです)、それを聞いている表情や反応で、十分判断できるということをおっしゃいます。また、ある施設長は、事前に施設見学(かなり細部にわたる現場見学)を行っていただき、そこで感じた内容を、どれだけ自分の言葉で伝えられるかをみている、と言います。このような方法ですと、事前の準備ではなく、過去の経験が本人の言葉で出てくることが多く、その方の現在の感じ方や価値観が、よりリアルに伝わってくるといいます。
下記に面接のときの質問の留意点をお伝えいたしますのでご参考にしてください。
- 具体的な内容を質問する
漠然とした回答ではなく、具体的な回答を聞くことで本音を見出します。
・「なぜこの仕事を選んだのか、人の役に立つとはということは、どういうことなのか
具体的に言ってください」
・「採用された場合、あなたの能力をどういった仕事に活かしたいですか。具体的にこたえてください」
- 人間関係についてどう考えているか確認する。
人間関係の関する質問は、入職後のトラブル回避にためにも非常に重要です。
・「入職後、法人とあなたの方向性や想いが異なる時、あなたはどのようにしますか?」
・「同僚との意見が食い違う場合、あなたは意見を通しますか、黙りますか、また通すとしたらどんな方法で?」
- 求職者からの質問を引き出す
面接試験で一通り質問が終わったら、必ず求職者に対して質問がないか確認します。面接が終わったという安心感から本音が見え隠れすることがあり、人間性を確認できることもあるようです。求職者が質問する内容は、採用された場合のことを想定していることが多いため、「どの部分に興味を示しているか=本当の志望動機」がわかることも多いように思います。
新型コロナでシフトが減少した場合の雇用保険の給付の特例措置
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の影響により解雇等となった労働者(見込みも含む)は、2021 年5 月28 日現在、104,946 人となり、雇用への影響は相当大きなものとなっています。解雇等となった労働者で、雇用保険に加入していた人の中には、雇用保険の求職者給付を受給する人が多いかと思いますが、シフト制の労働者の求職者給付が支給される時期や給付日数にかかる取扱いについて特例措置が設けられました。
1. 雇用保険の加入要件
雇用保険は、原則として1週間の所定労働時間が20 時間以上であり、かつ、31日以上の雇用見込みがある労働者が被保険者となります。雇用契約書等により1 週間の所定労働時間が定まっていない場合やシフト制などにより直前にならないと勤務時間が判明しない場合は、勤務実績に基づき平均の所定労働時間を算定して被保険者になるかが判断されます。
2. 設けられた特例措置
新型コロナの影響を受け、シフトが減ったことで、雇用保険の被保険者資格を喪失したり、有期雇用契約を更新しなかったりした場合、雇用保険の求職者給付については次の取扱いになります。
①就労日数等の定めがある場合
シフト制労働者で、例えば、以下に該当するときは特定理由離職者または特定受給資格者として認められる場合があります。
・具体的な就労日数が労働条件として明示されている一方で、シフトを減らされた場合
・契約更新時に従前の労働条件からシフトを減らした労働条件を提示されたため、更新を希望せずに離職した場合
②シフトの減少で週20 時間を下回る場合
2021 年3 月31日以降に、以下の理由により離職したときは特定理由離職者として、雇用保険求職者給付の給付制限は設けられていません。
・新型コロナの影響により、シフトが減少し(労働者が希望して減少した場合を除く)、概ね1ヶ月以上の期間、労働時間が週20時間を下回った、または下回ることが明らかになったことにより離職した場合
シフト制の労働者でも、前年同時期のシフトや直近月のシフト等に基づいて労働日の設定を行い、それに基づき休業日を決め、休業手当を支払うときは雇用調整助成金の対象になりますが、新型コロナの影響が長引く中、労働契約の内容を見直すことも増えているでしょう。雇用保険の資格喪失手続きを行う際には、離職した状況により喪失原因も異なることがあるため留意しましょう。
夫婦共働きの子どもを健康保険の扶養にする際の判断基準
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、
社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。
総務部長
今回、女性従業員を管理職に登用することになりました。夫婦共働きなのですが、この登用でご主人よりも年収が高くなるようです。現状、健康保険について、ご主人の扶養となっているお子さんを、当社の従業員の扶養に変更しなくてもよいのでしょうか。
社労士 健康保険では、いくつかの要件を満たした人について届け出ることで被扶養者として認定されます。その要件は、主として被保険者に生計を維持されていることです。夫婦共働きで子どもを扶養しているときには、夫婦の年間収入の多い方の被扶養者とすることになっています。
総務部長 やはりそうですか。そうなると当社の従業員の被扶養者とすることが正しいのですね。
社労士 基本的にはそうなりますが、夫婦で年間収入の差が大きくないときには、年によっていずれの年間収入が多いか変わることもあります。そうなると被扶養者の変更手続きを頻繁に行わなければならないこともあります。そのため、夫婦の年間収入が同程度の場合には、主として生計を維持する人の被扶養者とすることができます。
総務部長 確かに、毎年、夫婦双方の年間収入を確認して、健康保険証の発行手続きをしてると大変ですよね。同程度という表現はどの程度まで認められるのかあいまいですね。
社労士 そうですよね。実は、2021 年8 月1日からは「同程度」が「夫婦双方の年間収入の差が、年間収入の多い方の1割以内」に変更になります。また、被扶養者の届出をする「前年の年間収入」で判断することになっているものが、「過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの」で判断することになります。
総務部長 いろいろ変更になるのですね。
社労士 はい、これらの他にも配偶者が公務員の場合や、自営業の場合の考え方についても基準が明確に整理されています。内容について、確認しておくとよいでしょう。
ONE POINT ① 夫婦共働きの場合の健康保険の被扶養者の認定に関する考え方が整理され、2021年8月1日から適用される。
② 夫婦双方の年間収入の差が1割以内であれば主たる生計維持者の被扶養者とすることができる。
③ 基準は「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」(令和3年4月30日 保保発0430第2号保国発0430第1号)で確認することができる。
過重労働防止のために注意すべき労働時間管理
昨年11月に実施された「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果が公表されました。このキャンペーンは、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や若者の「使い捨て」が疑われる事業場等、労働基準関係法令の違反が疑われる事業場に対して監督指導が実施されたものです。この実施結果から、労働時間管理を行う上で注意すべき事項を確認します。
1. 主な違反内容
今回、重点監督の対象となった9,120 事業場のうち、6,553 事業場(全体の71.9%)で労働基準関係法令の違反がありました。主な法違反は、「違法な時間外労働があったもの」が2,807 事業場(全体の30.8%)「過重労働 による健康障害防止措置が未実施のもの」が1,829 事業場(全体の20.1%)「賃金不払残 業があったもの」が478 事業場(全体の5.2%)となりました。
この中で、一番違反の多かった労働時間について、典型的な違反内容は以下のようなものとなっています。
[労働基準法第 32 条 ]
・時間外労働を行う場合、事業場単位で時間外・休日労働に関する協定(36 協定)を締結していない。
・過半数代表者の選出が適正に行われていない等で、36 協定が無効である。
・時間外労働を行う場合、36 協定で定める限度時間の範囲を超えて時間外労働をさせている。
・協定に定められた手続きを行わずに、特別条項に基づく時間外労働をさせている。
[ 労働基準法第 36 条第 6 項 ]
・時間外労働の上限規制を守っていない。
2. 労働時間の適正な把握
今回の9,120 事業場のうち、1,528 事業場(全体の16.8%)に対して、労働時間の把握が不適正であるため、労働時間適正把握ガイドラインに適合するように指導が行われています。
指導事項で多かった上位2 つは、「始業・終業時刻の確認・記録」と自己申告制による場合の「実態調査の実施」となっています。
「始業・終業時刻の確認・記録」では、会社は、労働時間を適正に把握するため、従業員の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録することが求められています。
また、自己申告制による場合の「実態調査の実施」では、自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かを、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正を行う必要があります。また、自己申告した労働時間を超えて事業場内に残っている時間について、その理由等を従業員に報告させる場合、その報告が適正に行われているかを、会社は確認する必要があります。
以前は、賃金不払残業の指導が主となっていましたが、近年は時間外労働の協定内容や手続きに着眼点が置かれるようになり、労働時間の把握も指導事項として多くみられます。自社の実務運用に問題がないか確認を行い、問題点は早急に改善しましょう。
新様式となる母性健康管理指導事項連絡カード
妊娠中・出産後1年以内の女性従業員に対して、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)に関する母性健康管理措置が追加されていますが、この期間が2022 年1月31日まで
延長されると共に、「母性健康管理指導事項連絡カード」(母健連絡カード)の様式が変更されています。
1. 母性健康管理措置とは
母性健康管理措置とは、男女雇用機会均等法により、妊娠中・出産後1 年以内の女性従業員が保健指導・健康診査の際に、主治医や助産師(以下、「主治医等」という)から指導を受け、
会社に申し出た場合に、その指導事項を守るために必要な措置の実施が会社に求められるというものです。具体的には以下のような措置があります。
・妊娠中の通勤緩和
・妊娠中の休憩に関する措置
・妊娠中または出産後の症状等に関する措置
(作業の制限、勤務時間の短縮、休業等)
2. 新型コロナで追加された措置
この措置の中に、新型コロナに関する措置として、職場の作業内容等によって、新型コロナへの感染のおそれに関する心理的なストレスが母体または胎児の健康保持に影響があるとして、主治医等から指導を受けたものが追加されました。「感染のおそれが低い作業への転換または出勤の制限(在宅勤務・休業)」が指導の例としてあり、会社は指導に基づいて適切な措置を講じる必要があります。対象期間は現在のところ2022 年1月31日までとなっています。
3. 新様式となる母健連絡カード
主治医等から母性健康管理措置に関する指導があった場合、その指導事項を会社に的確に伝えるためのものとして、母健連絡カードが用意されています。
様式について従前のものより求められる措置の内容が分かりやすくなるよう変更され、2021 年7 月1日から新様式を利用することになります。母性健康管理措置を求める女性従業員には、7 月より新様式の母健連絡カードを利用するように案内しましょう。
母健連絡カードは、あくまでも主治医等の指導事項を会社に的確に伝えるためのものです。そのため、この母健連絡カードの提出がない場合でも、女性従業員の申し出からその内容等が明らかであれば、会社は必要な措置を講じる必要があります。また、その内容が不明確な場合、会社は女性従業員を介して主治医等と連絡をとり、判断を求める等の適切な対応が必要となります。
なぜ、不可能といわれたJAL再生は、わずか1年で可能になったのか?
大田嘉仁・著『JALの奇跡』(致知出版)の書籍で、とても印象に残っている部分が
ありますのでご紹介させていただきます。
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リーダーとマネージャーの違い
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企業経営をする上で最も大事なことは、
経営幹部に立派な人間性をもつ
すばらしいリーダーを据えることである。
どんな困難に直面しても逃げずに
真正面から取り組む勇気があって、
また部下や仲間を大切にする優しさをもっている。
さらに常に謙虚で努力を怠らない。
そういうリーダーでなければ
小さな部門さえまとめることはできない。
しかし、冒頭から説明している通り、
JALに着任し、会議に出席し、現場を訪問する中で、
JALには本当のリーダーと呼べる人間が
いないことを痛感していた。
それではいくら立派な再建計画を作っても、
達成できるはずはない。
また、上の立場の人間の意識が変わらないと、
部下の意識が変わるはずもない。
逆に、幹部の考え方が変われば、
自ずと部下の考え方も変わる。
だから、どうしてもリーダー教育を
早急に始めなければならないと思っていた。
そこで、当初より意識改革推進準備室のメンバーに、
「大西社長を含め役員や主要な幹部社員を
五十名ほど集めて、週五回、
一回三時間程度のリーダー教育を始めたい」
と伝えたのだが、そもそもリーダー教育という
コンセプトにも納得していなかったので、
最初は「絶対無理だ」と反対していた。
それでも私は、彼らに私の考えをまとめて
報告書を作ってほしいと頼んだ。
しかし、返ってくる報告書のタイトルは
マネジメント教育になっていた。
「そうじゃない。
私はリーダー教育のプログラムを
作ろうと思っているのだ」
と指摘しても、返ってきた報告書には
またマネジメント教育と書かれていた。
おそらく彼らは当初リーダーとマネージャーが
同じものだと理解していたのだろう。
これは無理もない。
普通の大企業でも管理職になったら
マネジメント教育を受ける。
そしてコンプライアンスの重要性、
人事評価の方法、目標数値の設定の仕方などを学ぶ。
それが一般的だから、リーダー教育というと
マネジメント教育のことだと考えてしまったのだ。
「部下を管理するマネジメントについては、
あなたたちはよくわかっているし、優秀かもしれない。
しかし、今JALに必要なのは部下をまとめて
同じ目標に向けて引っ張っていける
リーダーを育てることなんだ。
優秀なマネージャーであれば、
困難に遭遇すればその迂回策を考えるだろう。
うまくいかなかったら、その言い訳を探して、
責任逃れをするだろう。
そんなマネージャーばかりだから倒産したんだ。
再建を成功させるには、
どんな困難にぶち当たってもあきらめずに
やり遂げようとする、一つの目標に向かって
部下を鼓舞してなんとかまとめていこうと考える、
そんなリーダーが必要なんだ。
これからはそのようなリーダーを
育てなくてはいけない」
そのような話をしてリーダー教育の必要性を
どうにか理解してもらった。
以上が、大田嘉仁・著『JALの奇跡』(致知出版)から引用
させて頂きました。
以上 お読みいただいて、皆様はどのように感じられたでしょうか?
「リーダーとマネージャーの違い」。
結構、混同しがちかもしれません。
しかし、その違いをよく理解したうえで、社員教育を行っていくことは
とても重要なことと思います。
改定されたテレワークガイドライン
新型コロナウイルス感染症対策のため、テレワークを導入する企業が急増し、更なる感染拡大により、今後も導入を予定する企業は多いのではないかと思います。厚生労働省では、新たな日常・生活様式に対応する一層良質なテレワークの導入・運用を推進することを目的としてテレワークに関するガイドラインを改定し、2021年3月に公開しました。このテレワークガイドラインでとり上げられている労務管理上の留意点の中から、テレワークにおける人事評価制度とテレワークに要する費用負担の取扱いについて紹介します。
1.テレワークにおける人事評価制度
テレワークは非対面の働き方であるため、個々の従業員の業務遂行状況や、成果を生み出す過程で発揮される能力を把握しづらい側面があるとの指摘があります。そのため、企業が従業員に対してどのような働きを求め、どう処遇に反映するかといった観点から人事評価を実施することが基本となります。
具体的には、上司が部下に期待する役割やその達成水準等をあらかじめ具体的に示し、必要に応じてその達成状況について上司と部下が共通の認識を持つための機会を設けるなど、非対面の働き方において適正な評価を実施できるように、人事評価者訓練を実施する等の工夫が考えられます。
2.テレワークに要する費用負担の取扱い
テレワークを行うことによって、通信費や電気料金などの面で、従業員に過度の負担が生じることは望ましくありません。企業ごとの業務内容、物品の貸与状況等によって費用負担の取扱いは様々であり、労使のどちらがどのように負担するか等についてはあらかじめ労使で十分に話し合い、企業ごとの状況に応じたルールを定め、就業規則等で規定しておくことが望まれます。
また、従業員自身が契約した電話回線等を用いて業務を行わせ、通話料、インターネット利用料などの通信費が増加する場合や、従業員の自宅の電気料金等が増加する場合、実際の費用のうち業務に要した実費の金額を在宅勤務の実態を踏まえて合理的・客観的に計算し、支給することも考えられます。これに関連して、費用負担等に関する源泉所得税の課税関係については、国税庁から「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」が出ています。
日本年金機構の「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」が変更され、在宅勤務・テレワーク時の交通費や在宅勤務手当の社会保険の取扱いが示されました。この事例集によると、テレワークを実施するために必要となる費用を従業員に支払う場合には、社会保険の対象となる報酬等には含まないものの、在宅勤務手当として、例えば毎月5,000円を渡し切りで支給する場合には報酬等に含むとしています。支給方法によって取扱いが変わるなど複雑な内容となっていますので、不明点等は、弊所までお問い合わせください。
(次号に続く)
従業員から無期転換の申込があった場合の対応
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:
先日、パートさんの1人から期間の定めのない契約に変更して欲しいという希望がありました。変更しなければならないのでしょうか。
社労士:
そのパートタイマーの方との契約はどのようになっていますか。
総務部長:
1年ごとの契約にしており、確か10年位、働いてもらっています。
社労士:
なるほど。すでに長く雇用されており、今回、無期転換の申込をしてきたのですね。無期転換の概要を説明すると、①有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、②従業員が申込むことにより、③無期労働契約(期間の定めのない労働契約)に転換できるというものです。今回申込があったパートタイマーの方は、いずれの要件にも該当していると思いますので、労働契約を無期にする必要があります。
総務部長:
そうなのですね。契約更新の時期は毎年4月ですが、いますぐ無期契約に変更する必要があるのでしょうか。
社労士:
いいえ。いまの有期労働契約は有効ですので、その内容を変更する必要はありません。次の労働契約から無期労働契約に変更することになります。
総務部長:
それでは来年4月の契約時に無期契約に変更すればよいのですね。ちなみに、パートさんからの申込は口頭だったのですが、書面を提出してもらう必要がありますか。
社労士:
従業員からの申込や会社の通知を書面で行う義務はありません。ただし厚生労働省は、トラブル防止のためにも「無期労働契約転換申込書」や「無期労働契約転換申込み受理通知書」のひな型を公開し、書面でやり取りすることが望ましいとしています。
総務部長:
なるほど。今後、申込が増える可能性もあるので、書面を準備することにします。その他、何か注意点はありますか。
社労士:
無期転換した従業員に適用する就業規則の整備が必要になります。パートタイマー就業規則は有期労働契約のパートタイマーの方にのみ適用となっていることもあるので、そのようなときは無期転換したパートタイマーの方に適用する就業規則を定めるとともに、特に定年の定めの部分をしっかり確認する必要があります。
総務部長:
ありがとうございます。一度、確認してみます。
【ワンポイントアドバイス】
- 有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、従業員からの申込により、無期労働契約に転換する。
- 無期労働契約への変更は、申込時点の有期労働契約が満了した日の翌日から行われる。
- 無期転換の申込や受理の通知は書面で行うことが望ましい。
(次号に続く)






