保育
Q)当院には、まもなく産前産後休業(以下、産休)に入る職員がいます。年次有給休暇(以下、年休)が、数日残っているのですが、この年休を産休中に取れ
るのでしょうか?
A)産休中は、労務の提供義務が消滅しているため、年休を取得することはできません。ただし、産休前に年休の請求があった場合には、原則として産前休業
期間に限り、請求があった日に年休を取得することができます。
詳細解説:
1.産休と年休の関係
産休は、妊娠中・出産後の母体保護を目的とした労働基準法に基づく休業制度です。産前休業は出産予定日前6週間(多胎妊娠の場合には14週間)であり、
産後休業は出産日以後8週間です。産前休業は職員の請求に基づいて与える義務があり、産後休業は請求の有無にかかわらず与える義務があります。ただし、出産後6週間を経過
した職員については、一定の条件のもと、就業が認められています。
年休は、労働日について労務の提供義務を免除するものであることから、労務の提供義務が消滅している産休中に取得することはできません。そのため、産休中の職員から年休
の請求があった場合、医院は年休の取得を認める必要はありません。
一方で、産前休業を請求できる期間に、職員が産前休業を請求せずに年休を請求した場合には、労務の提供義務は消滅していないため、医院は年休の取得を認めることになりま
す。なお、産後休業は請求の有無にかかわらず、原則として就業が禁止されているため、職員から年休の請求があったとしても年休の取得を認める必要はありません。
2.年休付与日到来による消滅と付与
労働基準法では、年休の付与日から2年を経過したときに、時効により年休は消滅すると規定されています。よって、産休中に時効を迎えた年休は消滅します。
次に付与については、産休中に付与日が到来し、年休付与要件を満たしている場合、医院は年休を付与しなければなりません。なお、付与された年休は、産休から復帰した後に取
得することが可能です。
産休中には、一定の要件を満たすことで健康保険から出産手当金が支給されます。出産手当金は、出産のために働くことができず、給与が支払われない場合に支給されるもので
す。産前休業中に年休を取得すると、出産手当金が支給されないことがあるため、対象者には誤解のないように事前の説明が求められます。
保育士・保育関係者63名に聞いた仕事のリアル。残業や睡眠時間は?「働いていてよかった」と思える瞬間は、子どもの成長や親からの感謝【保育合同アンケート2026】
「遊びや学びの環境づくり」や「子どもの成長」は最優先事項

アンケートにお答えいただいた保育士さんが「最も大切にしていること」は「子どもたちの豊かな遊びや学びの環境づくり」「保護者との信頼関係構築」「子どもの成長を間近で見守ること」の3つが上位に。ご自身の人間関係や専門性にも回答は集まりましたが、やはり子どもに関わる項目が最優先であることが分かります。
また、「この仕事を続けていてよかった、と思えた瞬間」について、アンケートでは印象的なエピソードが数多く寄せられました。
「お友達の前で謝ることができなかった子どもが、友達と仲直りし、クラスの人間関係の核になりました」
「他園で紹介された子がその後来園し、クラスの人間関係に対して悩み相談を続けました。クラス内の友達との遊びがうまくできなかった子が、クラス全員で勝ちに行き2位になったとき、みんながほめ称えてくれた」
一人ひとりの変化を間近で見守れること——それが、この仕事の大きな醍醐味のひとつのようです。
長期的な関わりのなかでの成長を喜ぶ声も。
「安心できる関係の中では、子どもは自分から自由に遊び出し、考えを言葉にするようになります。遊びの力は、怒られることで起きるのではなく、関係が保証されることで自然に湧き上がるのに気づきました。こういう経験が積み重なることが、この仕事をしていてよかったと思える瞬間です」
「保護者から感謝の言葉をいただいたとき、子どもの育ちの一端を担えたと感じる」
という回答も。子どもだけでなく保護者との関わりや声かけがやりがいにつながっていることがうかがえます。
残業・給与・人員不足……現場が訴える「変わらない課題」

一方で、「困っていること」「課題だと感じていること」への回答からは、職場環境や待遇面に関する課題が浮き彫りに。回答は率直で切実なものが目立ちました。
残業や業務量に関しては、「課外活動、行事の準備など子ども以外の業務が多い」「シフト作成、保護者への連絡管理など比較の業務や精神的に大変な業務を担っている」といった回答が複数寄せられました。
給与・手当に関しては、「子どものための仕事なので労働時間については自分が納得できる指導のために仕方がないことだと思う。残業手当などではなく、国にとっても大切で、重要な任務を果たしている職業であることを評価・認識して処遇改善加算を増やしてほしい」という直接的な要望が挙がりました。
「多動や発達障害の子どもへの対応」「ICT化への対応・負担」といった専門性に関わるストレス要因も複数回答されていました。
育休・産休の取りやすさについては、「保育士なのに、自分の育休が取れない」「産休、育休、病休、時短勤務等の代わりがいないため、残っている職員の負担が増える。その負担に対しての手当はあっていいのでは」という深刻な声も。人員不足が育休取得の障壁となっている実態が、データからも浮かび上がります。
やりがいの源泉は「子どもの成長」や「保護者との信頼関係」

「保育、幼児教育の仕事でやりがいを感じるのはどのようなときですか」(Q10)という設問に対しては、多くの回答者が「子どもの成長を目の当たりにした瞬間」を真っ先に挙げました。言葉が出なかった子が初めて自分の気持ちを伝えられたとき、泣いてばかりだった子が笑顔で登園するようになったとき——日々の小さな変化の積み重ねが、この仕事を続ける大きな原動力になっていることが、回答全体を通じて強く伝わってきます。
次いで多かったのが「保護者との信頼関係が深まったとき」という回答です。「子育てに悩んでいた保護者が、少しずつ笑顔になっていくのを見たとき、この仕事をしていてよかったと思う」という声に代表されるように、子どもだけでなく家族全体を支えるという役割への誇りが、やりがいの源泉のひとつとなっています。
また、「チームで保育に取り組み、同僚と連携がうまくいったとき」「自分の専門知識や経験が後輩の指導に活かせたとき」といった、職場内での協働や成長実感をやりがいとして挙げる声も目立ちました。個人の達成感にとどまらず、チームとして子どもたちを支えるという集団的な充実感が、保育という仕事の魅力として広く共有されていることがうかがえます。
一方で、「やりがいは感じているが、それが待遇や評価に反映されていない」という複合的な声も少なくありませんでした。やりがいと報酬のギャップは、保育職における慢性的な課題として改めて浮き彫りになっており、現場の熱意を持続可能な形で支える仕組みづくりの必要性を示しています。
「休憩時間も休めない!」過酷な労働環境の実態

業務の過酷さは、休憩時間のあり方にも表れています。「1日の平均休憩時間」(Q13)を尋ねたところ、「規定通りに取れている」という回答は少数派で、「ほとんど取れない」「昼食をとりながら次の活動の準備をする」といった声が目立ちました。
さらに、「休憩時間の過ごし方」(Q14)については、「書類仕事の続き」「午後の保育準備」といった回答が多く、休憩時間が実質的に業務時間に侵食されている実態がうかがえます。心身を休めるべき時間が確保できないこの状況は、保育の質の維持だけでなく、保育士自身の健康にとっても深刻な問題と言えるでしょう。
子どもに関わる仕事への誇りと課題の間で——保育の現場が求めているもの
今回のアンケートで寄せられた保育士さんたちの声からは、「保育という仕事に対する誇り」が感じられました。
同時に、人員不足、給与の低さ、ICT対応の負担感、育休取得の難しさなど、解決されないまま積み重なっている課題も浮き彫りになりました。
子どもたちの笑顔や成長に日々向き合いながら、現場の保育者たちはどんな思いで働いているのか——。そして、その環境を整えていくために、社会はどのようなサポートができるのか、私たち保護者も一緒に考えていく必要があります。
【調査概要】
■調査期間:2026年2月1日〜28日
■調査機関:小学館『新幼児と保育』『ほいくる』と、こどもりびんぐ発行の『園ふぁん』合同で結成した「みんなの保育総研」での自社調査。
■有効回答数:63人
医療・福祉の現場(クリニック、介護施設、保育園)は、人命や安全を預かる特性上、一歩間違えれば重大な事故に繋がりかねない緊張感があります 。そのため、経営者や管理職がスタッフに対して「時に厳しく指導せざるを得ない場面」があるのは当然のことです 。
しかし、現場のリーダーから「問題行動のある職員を厳しく指導したいが、パワハラと言われるのが怖くて強く言えない」という悩みの声を耳にすることが増えています 。また、職員から「これってハラスメントです」と訴えがあった際、法人としてどこまで対応すべきか苦慮しているケースも少なくありません 。
本記事では、厚労省の指針に基づき、「業務上の適正な指導」と「パワハラ」の境界線を、クリニック・介護・保育園の具体例を交えて解説します 。また、ハラスメントの訴えがあった際の法人の対応義務についても実務的な視点から紐解きます 。
1. そもそも「職場のパワーハラスメント(パワハラ)」の定義とは?
客観的な指導を行うための前提として、まずは法律および厚生労働省が定める「パワーハラスメント」の3つの定義を確認しておきましょう 。職場におけるパワハラとは、同じ職場で働く者に対して、以下の3つの要素をすべて満たす行為を指します 。
| パワハラの3要素 | 概要 |
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① 優越的な関係を背景とした言動 |
職務上の地位(上司から部下)だけでなく、専門知識や経験の差、人間関係のグループなど、抵抗や拒絶が難しい関係性を背景にしていること 。※部下から上司、同僚間も含みます 。 |
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② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの |
社会通念に照らし、明らかに業務上の必要性がない、または指導の手段・態度が不適当であること 。 |
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③ 労働者の就業環境が害されること |
身体的・精神的な苦痛を与えられ、労働者が能力を十分に発揮できないなど、看過できない程度の悪影響が生じること 。 |
【重要】「適正な業務指示・指導」はパワハラではない
逆を言えば、「客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導」については、職場のパワハラには該当しません 。指導される側が主観的に「厳しくて不快だった」「傷ついた」と感じたとしても、それが業務上必要な内容であり、かつ社会通念上相当な方法であれば、法律上のパワハラとは認められないのです 。
2. 明らかな「問題職員」への厳しい指導もパワハラになるのか?
結論から申し上げると、「業務の性質や内容に照らして重大な問題行為を行った従業員に対して、一定程度注意をすること」はパワハラには該当しません 。
クリニック、介護施設、保育園など、患者様、利用者様、園児の命や安全に直結する職場では、業務の必要性や緊急性が高い場面が多く存在します 。そのため、重大なミスや問題行動に対して「厳しく注意・指導すること」は一定程度許容されます 。
厚生労働省のいわゆる「パワハラ指針」でも、精神的な攻撃(脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など)には該当しない例として、具体的に以下の2つを挙げています 。
### 【厚労省指針】パワハラに該当しないと考えられる例 1. 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること。 2. その業務の内容や性質に照らして重大な問題行為を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。
医療・福祉・保育の現場における「パワハラにならない」具体例
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クリニック:
処方箋の確認ミスや医療機器の誤操作など、患者の健康に直結する重大なミスを繰り返す看護師や医療事務に対し、「命に関わる現場なのだから、二度とこのような不注意を起こさないでください」と、強い口調でその場で注意を促す行為。
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介護施設:
移乗介助時の手順を無視し、利用者様を転倒させるリスクのある危険な行動を取ったヘルパーに対し、事故を未然に防ぐためにその場で語気を強めて制止・注意する行為。
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保育園: 園児のアレルギー確認を怠って給食を提供しようとした保育士、あるいは遅刻や無断欠勤を繰り返し、シフトに多大な支障を出しているにもかかわらず改善の兆しがない職員に対し、面談室で一定程度強く叱責・指導する行為 。
これらはすべて「業務上必要かつ相当な範囲」であり、適正な労務指導といえます 。
3. 「指導」が「パワハラ(精神的な攻撃)」へ変わる境界線
いくら職員側に問題(遅刻、ミス、規律違反)があったとしても、指導の「やり方」が社会通念を逸脱してしまえば、それはパワハラ(精神的な攻撃)と判断されるリスクがあります 。経営者や管理職が特に注意すべき「境界線」は以下の3点です。
① 人格否定や業務に関係のない暴言(アウト)
「だからお前はダメなんだ」「育ちが悪い」「給料泥棒」「辞めてしまえ」など、問題行為の指摘を超えて、職員個人の人格や存在自体を否定する言動は、いかなる理由があってもパワハラになります 。指導すべきは「行為(ミスや遅刻)」であり、「人格」ではありません 。
② 他の職員の前で見せしめのように叱責する(原則アウト)
他のスタッフや、クリニックの患者様、保育園の保護者などの前で、大声で長時間にわたり怒鳴り散らす行為は、必要性の範囲を超え、相手に過度な精神的苦痛を与える(名誉毀損や侮辱にあたる)ためパワハラとみなされやすくなります 。強い注意を行う際は、個室(面談室など)に呼んで1対1で行うのが原則です。
③ 過去の終わったミスを執拗に責め立てる(アウト)
今回の問題行為とは直接関係のない、数ヶ月前・数年前のミスまで引っ張り出してきて、「あんたはあの時もそうだった」と長時間ネチネチと責め立てる行為は、業務上の必要性を欠くため不適切です。
4. スタッフからの「ハラスメントの訴え」に法人はすべて対応すべきか?
スタッフから「上司からパワハラを受けました」「同僚からセクハラ(セクシャルハラスメント)をされています」といった訴えがあった際、法人側は「原則としてすべてに対応しなければならない」というのが結論です 。
「あの職員は被害妄想が激しいから」「ただの好き嫌いの感情論だろう」と経営陣が主観的に判断し、放置することは絶対に避けてください。
厚労省指針における「広く相談に対応する義務」
この点については、厚生労働省の指針にも明確に記載されています 。 各種ハラスメントに該当するかどうか客観的に見て微妙なケースであっても、雇用側は広く相談に対応する義務があると指摘されています 。
すべての訴えに対応すべき2つの実務的理由
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相談者本人が気づいていない「別の重大な論点」が浮上するため 当初は「上司から厳しく当たられた(パワハラ)」という相談であっても、丁寧にヒアリングや事実調査を進める過程で、「実はその管理職がシフトを不正に操作していた」「業務上横領の疑惑がある」「他の職員にも隠れてセクハラを行っていた」といった、経営上の重大な不正・リスクが発覚することが実務上よくあります 。
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放置することでハラスメントが深刻化・泥沼化するため 「大したことではない」と初期対応を怠ると、被害を訴えた職員のメンタルヘルス不調(うつ病など)を招いたり、職場全体の士気が低下して連鎖退職に繋がったりします。さらに、労働基準監督署への駆け込みや、法人を相手取った損害賠償請求訴訟など、法的トラブルへと発展するリスクが跳ね上がります 。
5. 【経営者向け】ハラスメント訴えがあった初期対応の4ステップ
もし職員からハラスメントの相談があった場合、法人は以下のステップに沿って誠実かつ迅速に対応を進める必要があります。
【ステップ 1】相談窓口でのヒアリング(プライバシーの保護)
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【ステップ 2】事実関係の調査(加害者側・第三者への確認)
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【ステップ 3】ハラスメントの有無の判定(客観的・多角的な判断)
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【ステップ 4】適切な措置と再発防止(処分、配置転換、環境改善)
ステップ 1:相談者からのヒアリング(傾聴と秘密厳守)
まずは相談者の話を丁寧に聞きます。この際、「プライバシーの厳守」と「相談したことによって不利益な扱いを受けないこと」を明確に伝え、安心感を与えます。最初から「それはパワハラじゃないよ」と否定せず、事実関係(いつ、どこで、誰に、何を言われたか)をメモに記録します。
ステップ 2:行為者(加害者とされる側)や第三者への事実調査
相談者の同意を得た上で、相手方(上司や同僚)からも話を聴取します。また、言動の目撃者がいる場合は、周囲の職員からも客観的な状況を確認します。双方の意見が食い違うことが多いため、感情論に流されず事実関係を整理することが重要です。
ステップ 3:ハラスメントの有無の客観的判断
集まった証拠や双方の主張を元に、法人の就業規則や厚労省の指針(前述の3要素)に照らし合わせ、ハラスメントに該当するかを判断します。判断が難しい場合は、顧問弁護士や社会保険労務士などの専門家に意見を求めるのが賢明です。
ステップ 4:事後措置と再発防止策の実施
ハラスメントが認められた場合は、行為者に対して就業規則に基づく処分(譴責、減給、出勤停止など)や配置転換を行います。また、ハラスメントとまでは言えない「適正な指導」であった場合でも、相談者の誤解を解き、今後のコミュニケーションの改善を促すなどのフォローが必要です。
6. まとめ:健全な職場環境と適切な指導を守るために
クリニック、介護施設、保育園を安定して経営していくためには、「問題行為への毅然とした指導」と「ハラスメントのない安心安全な職場環境」のどちらも欠かすことはできません 。
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問題社員への一定の強い注意は、業務上必要であればパワハラにはなりません。 ただし、感情的な暴言や人格否定に走らないよう、指導する側のスキルアップ(管理職研修など)が必要です 。
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職員からのハラスメントの訴えは、いかなる場合も放置せず、広く相談に対応する義務があります。
当労務管理事務所では、クリニック・介護・保育園に特化した就業規則の整備や、管理職向けのハラスメント防止研修、ハラスメント外部相談窓口の受託を行っております。「これはパワハラになる?」「問題職員への対応に困っている」という経営者・人事担当者様は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
記事の要約
モンテッソーリ教育と食育を掛け合わせた「モンテッソーリクッキング®」が、全国の教育現場で導入を進めています。この取り組みで特筆すべきは、講師として働く母親たちが「自分の子どもを連れて働ける」という新しい雇用モデルを創出している点です。子育て中のため働くことを諦めていた女性たちに、スキルを活かして社会参画できる場を提供しています。
人事担当者にとっての学び
保育業界の人手不足解消において、「潜在保育士(資格はあるが働いていない層)」の掘り起こしは急務です。このニュースは、その層が「なぜ働けないのか(子どもの預け先がない、時間が不規則など)」という課題に対し、「子連れ出勤の許容」という直接的な解決策を提示しています。働き方の柔軟性が、強力な採用の武器になることを実証する好事例です。
自分の事業所で検討できること
「子育て中のスタッフが、自分の子どもを自園に預けながら(または傍らで)働ける制度」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。同時に、ここで重要になるのが「周囲のサポート体制」です。例えば、採用したシニア層の職員に、子連れ出勤している若手・中堅スタッフのサポート役(補助業務や子守り)を任せるという配置が考えられます。これにより、世代間交流が生まれ、シニア層の「誰かの役に立ちたい」という意欲を満たしながら、子育て世代の定着率を劇的に高める組織づくりが可能になります。
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000240.000052391.html
1. はじめに:人手不足の裏に潜む「採用リスク」
医療、介護、保育の現場において、人手不足は深刻な経営課題です。「一人でも多くの職員を確保したい」という切実な思いから、採用基準が緩やかになってしまったり、選考時の確認が不十分になったりするケースは少なくありません。
しかし、こうした状況を背景に、近年増えているのが「経歴詐称」を巡るトラブルです。 「以前の職場をトラブルで辞めたことを隠していた」「持っていると言っていた資格が実は嘘だった」……。発覚した時、経営者や事務局長が抱く憤りは計り知れません。
「嘘をついて入職したのだから、即刻解雇だ!」 そう考えるのは自然な反応ですが、労働法という枠組みの中では、たとえ嘘があったとしても「直ちに解雇」が認められるとは限りません。一歩間違えれば、法人側が「不当解雇」として訴えられるリスクすら孕んでいます。
本記事では、医療・介護・保育専門の社労士の視点から、経歴詐称があった場合の解雇の妥当性と、組織を守るための具体的な実務対応について詳しく解説します。
2. 経歴詐称と解雇の法的判断基準
職員の採否を判断する際、応募者の経歴は極めて重要な判断材料です。法人は「誰を雇うか」を決める「採用の自由」を持っており、その判断のために真実を申告させる権利があります。
履歴書の記載や面談での回答に虚偽があり、「もし真実を知っていたら採用しなかった」と言えるほど重大なものであれば、解雇の理由は「客観的に合理的な理由」があるとみなされやすくなります。
しかし、裁判例では「全ての詐称が解雇有効になるわけではない」という厳しい現実があります。解雇が有効になるためには、その詐称が「採用の判断にどれほど決定的な影響を与えたか」という重要性と、それによって「職場秩序がどれほど乱されたか」という程度が厳格に問われます。
主に対象となる4つのパターンから、具体的なリスクを見ていきましょう。
3. 経歴詐称の4つの類型と解雇の有効性
① 資格・免許の詐称(重要度:高)
医療・福祉業界において最も深刻なのがこれです。 医師、看護師、薬剤師、介護福祉士、保育士などの国家資格が必要な職種において、無資格であるにもかかわらず資格を偽った場合、これは単なる「嘘」に留まりません。
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リスク: 無資格者による業務提供は法律違反であり、診療報酬や介護報酬の不正受請求、さらには行政処分や実地指導での全額返還へと直結します。
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判断: この場合の解雇は、有効とされる可能性が極めて高いといえます。業務遂行の前提条件を欠いているため、雇用の継続は不可能と判断されるからです。
② 職歴の詐称(重要度:中〜高)
「転職回数が多いと不利になるから隠す」「前職を能力不足や素行不良(ハラスメント等)で懲戒解雇されたことを隠す」といったケースです。
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リスク: 医療・介護現場はチームケアが基本です。前職でのトラブル隠しは、現場の人間関係を崩壊させる火種となります。
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判断: 単なる数ヶ月の期間のズレなどは「軽微」とみなされがちですが、懲戒解雇歴の隠匿や、重要な役職経験の捏造(例:施設長経験があると偽る)などは、重大な詐称として解雇が認められる可能性があります。
③ 学歴の詐称(重要度:低〜中)
かつては「高卒を大卒と偽る」ことが重い詐称とされましたが、実務能力重視の昨今では、学歴だけで解雇を有効にするのは難しくなっています。
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リスク: 学歴によって初任給や手当が細かく規定されている法人の場合、不当に高い賃金を支払わされることになります。
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判断: 給与計算の根拠が学歴に依存しており、それによって大きな賃金格差が生じていた場合、秩序を乱したとして懲戒対象になる可能性はありますが、解雇まで認められるかは慎重な判断が必要です。
④ 犯罪歴の隠匿(重要度:ケースバイケース)
意外かもしれませんが、犯罪歴があることだけをもって直ちに解雇できるわけではありません。
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判断: 裁判例では、刑の執行から10年以上経過している場合や、業務と無関係な軽微な罰金刑などは、告知義務がない、あるいは解雇理由として不十分とされる傾向があります。
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特例: ただし、保育現場での児童性犯罪歴や、高齢者施設での虐待・窃盗歴など、「対象となる利用者への安全確保に直結する職歴・犯罪歴」については、より厳しく判断される傾向にあります。
4. 医療・介護・保育現場だからこそ問われる「管理責任」
一般企業と異なり、私たちの業界には「公費」が投入されています。 もし経歴詐称(特に資格や職歴)を見逃したまま雇用を続け、現場で事故が起きた場合、法人が受けるダメージは「解雇の有効性」というレベルでは済みません。
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利用者・家族からの訴訟: 「資格のない人間にケアをさせていたのか」という追及。
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行政処分: 指定取り消しや加算の返還。
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社会的信用の失墜: 地域での評判が悪化し、採用難に拍車がかかる。
だからこそ、経歴詐称への対応は単なる「不誠実な職員の排除」ではなく、「法人のガバナンス(統治)と利用者の安全を守るための必須業務」なのです。
5. トラブルを未然に防ぐ「3つの防衛策」
発覚してから解雇を争うのは、多大な時間と労力、そして弁護士費用を要します。最初から「嘘をつかせない」「嘘を見抜く」体制を作ることが最善の策です。
防衛策1:エビデンス(証拠)確認の徹底
「原本」の確認を徹底してください。
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資格証の確認: コピーではなく原本を持参させ、裏書き(更新履歴)まで確認します。必要に応じて、厚労省のデータベース等で登録番号を照合します。
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離職票・年金手帳の確認: 入社手続き時に提出される書類の履歴と、履歴書の職歴が合致しているか、事務担当者が必ずクロスチェックを行います。
防衛策2:採用選考の精度向上
面接だけでは嘘を見抜くのは困難です。
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リファレンスチェックの検討: 本人の同意を得た上で、前職に勤務状況を確認する。
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実技試験の導入: 介護現場なら移動介助、保育現場ならピアノや読み聞かせなど、短時間の「実技」を取り入れるだけで、職歴詐称(未経験なのに経験者と偽る等)は一目で見抜けます。
防衛策3:入職時のリーガル・セットアップ
万が一の時に「解雇の正当性」を主張できるよう、仕組みを整えます。
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誓約書の提出: 「提出書類の内容に相違ないこと」「虚偽があった場合は解雇を含む懲戒処分に異議を唱えないこと」を明記した誓約書を入職時に取ります。
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就業規則の整備: 懲戒規定の中に「重要な経歴を詐称して採用されたとき」を明確に盛り込み、具体的な懲戒の種類を定めておきます。
6. まとめ:専門家の視点をバックオフィスに
経歴詐称が発覚した際、感情的に「明日から来なくていい」と伝えてしまうのが、最も危険な初動です。たとえ相手に非があっても、手続きを誤れば「解雇権の濫用」となり、多額の解決金を支払う羽目になりかねません。
まずは、その詐称が業務にどのような影響を及ぼすのかを冷静に分析し、就業規則に基づいた正しいステップ(事情聴取、弁明の機会の付与など)を踏むことが重要です。
私たち「社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング」は、医療・介護・保育業界に特化した人事労務のプロフェッショナルとして、数多くの現場トラブルを解決してきました。
私たちのBPOサービスでは、給与計算などの事務代行だけでなく、こうした「入職時のリスク管理」や「就業規則の運用サポート」をセットで提供しています。事務局の負担を減らしつつ、法人のガバナンスを強化したい経営者の皆様、ぜひ一度ご相談ください。
「正しい採用」が「質の高いケア」を生み、それが「健全な経営」へと繋がります。あなたの法人のバックオフィスを、リスクに強い、創造的な組織へと変えていきましょう。
執筆者:社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング 代表 林 正人 (医療・介護・保育専門社会保険労務士)
保育・教育施設向けICTサービスを提供する株式会社コドモン(本社:東京都品川区、代表取締役CEO:小池義則、以下 コドモン)は、豊中市と連携して推進する「保育ICTラボ事業」の成果報告の場として、オンラインセミナー「豊中市と学ぶ!保育AIによるデータ利活用と保育ICT化の加速のヒント」を開催しました。
本セミナーには全国各地から100名にお申込みいただき、業務省力化にとどまらない保育ICTの活用や、地域全体でのICT活用支援のあり方をテーマに、保育AIの導入や往還型研修などの取り組みを通じて得られた成果を紹介しました。
保育ICTに蓄積されたデータと保育AIを活用した「保育実践の向上」に取り組む先進的な事例として、聖ミカエル保育園による実証の内容と、現場におけるAI活用の可能性についても報告されました。
■こども家庭庁が推進する「保育ICTラボ事業」とは
保育ICTラボ事業とは、こども家庭庁の助成のもと、保育ICTの導入・利活用における効果的
なロールモデルを創出し、全国への魅力発信を図る事業です。コドモンでは、2025年度に茨城県つくば市と大阪府豊中市と連携していました。
■豊中市での「保育ICTラボ事業」の取り組みと背景
保育現場では、ICT導入が進みつつある一方で、以下の課題が全国的に共通して見られます。
●保育ICTの必要性を感じていない
●今、保育ICTに使えるお金や時間がない
●保育ICTの導入をどのように進めれば良いのかわからない
こうした課題を解決するため、本事業では「保育ICTの導入効果が分かる事例の創出」と「ICT導入や活用を後押しできる支援体制の構築」に重点を置いた検証を行いました。
具体的に、豊中市の「保育ICTラボ事業」の取り組みでは、①保育AIを活用した保育の質向上の検証、②保育ICTの活用に関する往還型研修の2つの取り組みを通じて、ICT活用が保育実践の向上および現場の意識変化に寄与することを確認しました。
■主な取り組みと成果
① 保育AIを活用した保育実践の向上
【取り組みの特徴】
保育現場で作成された連絡帳や指導計画、写真などのデータをもとに、保育知見に特化したAIを、保育者の振り返りや検討支援に活用し、以下のような分析・示唆が提供されました。
●園児の特性の可視化
●保育内容の整理・分析
●次の発達を促す「遊び」の提案
【成果】
現場では、主に次のような変化が見られ、保育AIの活用により、保育実践の向上に寄与することが確認されました。
●子ども理解の向上
●保育者の声かけの質の変化
●園全体での情報共有の促進
② 往還型研修
【取り組みの特徴】
豊中市内の9施設を対象に、学びと実践を繰り返す「往還型研修」を実施しました。
●年4回の集合研修
●各回ごとに実践課題を設定
●他施設との対話・共有
【成果】
●ICT未導入施設の導入決定・検討開始
●ICT導入施設における情報共有のデジタル化や、保育業務そのものの見直し等
成果報告会の参加者からは、「他園の取り組みを知ることで前向きになった」「業務改善のきっかけになった」といった声が寄せられました。
■本事業から得られたポイント
本実証により、以下の重要な知見が得られました。
●ICT活用の「成功事例の可視化」が導入意欲を高める
●施設同士の「横のつながり」が推進力になる
●ICT活用は「業務改善」と一体で進めることが重要
●データの蓄積が将来的な保育実践向上の基盤となる
人事評価制度の構築サポートをしていると、必ずといってよいほど出てくるご質問があります。
「役職と等級って、分けた方がいいんですか?」
これ、本当によくいただきます。ちょっとモヤモヤしている経営者さまや人事担当の方も多いのではないでしょうか。
■まず「役職」と「等級」って何が違うの?
「役職」というのは、課長・部長・マネージャーなど、組織上の「ポスト(席)」のことです。
一方「等級」とは、その人の習熟度や役割の大きさを段階的に表したものです。
「部長」「課長」という役職と、「M1」「L2」といった等級が混在している会社はとても多いのですが、これが混在したままだと、どちらかが形骸化しやすくなってしまいます。
■なぜ分けた方がよいのか
例えば、役職(ポスト)に等級が連動してしまっていると、こんなことが起きやすくなります。
・ポストが空かないと昇進できない(=優秀な人が昇格できない)
・役職がないと評価や給与が上がりにくい(=専門職の人が報われない)
・役職を外すと給与も一気に下がって本人が傷つく(=必要な人事異動ができない)
これは、役職と等級が「くっついてしまっている」状態から起きることです。
役職はあくまでも「今その会社でどのポストに就いているか」であって、「その人のスキルや役割の大きさ」とは必ずしも一致しないのです。
■役割等級制度では「等級」が主役
A4一枚評価制度でおすすめしている役割等級制度では、まず「等級」を中心に設計します。
管理職(M)・指導監督職(L)・一般職(S)といった大きなくくりと、その中の段階(M1・M2・M3など)が「等級」です。
そして「役職」(課長・部長・チームリーダーなど)は、あくまでも「今の組織上のポスト名」として分けて考えていきます。
こうすることで、
・ポストがなくても等級は上がれる
・役職を外れても等級が下がるわけではないので本人のプライドも守れる
・専門職コースなど、管理職にならなくても処遇を上げていける
という柔軟な運用ができるようになります。
■ただし「分けない方がよいケース」もある
一方で、社員が5~10名程度の小さな会社では、等級と役職を分けることで「なんだか複雑になりすぎてわかりにくい」という声も出てきます。
そういった場合は、等級と役職をほぼ同義で運用してしまうシンプルな設計の方が現実的に機能することも多いです。
大事なのは「正解の形」を求めることではなく、
「今の自社の規模・組織・課題に合った形にする」こと。
役職と等級を分けることで、複雑さと引き換えに柔軟さが手に入ります。どちらをより重視するか、自社の状況で判断していきましょう。
人事評価制度は、精緻に作ることが目的ではありません。
社員が「自分はどこに向かって成長すればよいか」を理解でき、会社が「誰をどう育て、どう処遇するか」を整理できる。
そのための「道具」として機能してこそ、はじめて意味を持ちます。
役職と等級の設計も、そんな視点で一度ご自身の会社の現状を確認してみてはいかがでしょうか。
■ 記事
求人サイト「ジョブメドレー」を通じて保育士として入職した5,830人のデータを分析した結果、応募から入職までにかかる日数は「平均54.3日」であることが分かりました。求職者の就業状況によって大きな差があり、離職中の場合は平均36.3日ですが、働きながら転職活動をしている(就業中)の場合は平均64.3日かかっています。一方で、20代から50代まで年代による入職期間の差はほとんどなく、どの年代でも入職までに平均50日以上を要していることが明らかになりました。
■ 採用担当者にとっての学び
労働力不足が深刻化する中、「いつまでに人材が欲しいか」という自社のニーズに対して、採用活動のスタート時期を逆算して設計することは人事の基本かつ最重要項目です。特に優秀な人材や経験豊富なベテラン層は、在職中から転職活動を行っているケースが多く、前職での引き継ぎやクラス担任の都合で入職までに2ヶ月以上の期間を要することを前提にする必要があります。焦って採用基準を下げることのないよう、データに基づいた余裕のある採用スケジュールの構築が求められます。
■ 自分の事業所で検討できること
自園の年間採用スケジュールを再点検し、「欠員が出てから慌てて募集する」のではなく、数ヶ月先を見据えた継続的な母集団形成を行う体制へシフトしましょう。
また、就業中の優秀な応募者(特に経験豊富な50代以上のシニア層を含む)を取りこぼさないよう、オンライン面接の導入や、土日・夜間の面接対応など、相手の状況に合わせた柔軟な選考プロセスを整備することが重要です。内定を出してから入職までの期間が空く場合は、定期的な連絡や事前見学会への招待など、入社意欲を維持するためのフォローアップ(内定者リテンション)の仕組みづくりも併せて検討してください。
「少し気に入らないことがあるとすぐに『辞める』と言い出す職員がいる」
介護施設、保育園、クリニックの現場で、このような相談は非常に多く寄せられます。
周囲の士気を下げ、業務にも支障をきたすため、「いっそ本当に辞めてもらえないか」と考える経営者・管理職も少なくありません。
では実務上、「辞める」と発言した事実だけで退職扱いにすることはできるのでしょうか。
結論から言うと、一定条件を満たせば可能ですが、慎重な判断が必要です。
本記事では、トラブルを防ぎながら適切に対応するためのポイントを、判例と実務の視点から解説します。
退職の成立は「誰に伝えたか」で大きく変わる
まず重要なのは、「辞める」という発言が誰に対して行われたかです。
権限者に伝えた場合
院長、施設長、理事長、事務長など、人事権を持つ者に対して退職の意思を伝えた場合は、口頭であっても退職の申し出と評価される可能性があります。
つまり、この時点で「退職の意思表示」が成立していると判断される余地があります。
同僚や先輩に話しただけの場合
一方で、同僚や先輩職員などに対して「もう辞める」と話しただけでは、
法的な退職意思表示とは認められません。
現場ではよくあるケースですが、この段階で会社側が「辞めると言っていたから退職扱いにした」という対応をすると、後にトラブルになるリスクが高いです。
判例から見る「退職の成立」と「撤回」
退職を巡るトラブルでは、過去の裁判例が重要な判断基準となります。
① 退職が成立し、撤回できないケース
最高裁判例(昭和62年9月18日)では、
人事部長が退職願を受理したことは、会社側の承諾にあたる
とされ、退職は合意解約として成立し、その後の撤回は認められないと判断されています。
つまり、
- 労働者が退職の意思を示す
- 使用者側がそれを承認する
この2つが揃えば、退職は確定します。
② 撤回が認められるケース
一方、岡山地裁(平成3年11月10日)では、
人事権のない職員が退職届を預かっただけでは承諾とはいえない
とされ、退職の撤回が認められました。
この判例から分かるのは、
👉「誰が受け取ったか(承認権限の有無)」が極めて重要
という点です。
「辞める発言」で退職扱いにするための実務ポイント
では、問題の職員が会議や面談で「辞めます」と発言した場合、どう対応すべきでしょうか。
結論として、適切な手続きを踏めば自己都合退職として扱うことは可能です。
ただし、以下の対応を怠ると、後で「言っていない」「本気ではなかった」と争われるリスクがあります。
① 退職意思の“念押し”を必ず行う
感情的な発言なのか、本気の意思なのかを明確にする必要があります。
具体的には、以下のように確認します。
- 「今の発言は退職の意思で間違いありませんか?」
- 「正式に退職するという理解でよろしいですか?」
この確認を曖昧にすると、後で撤回を認めざるを得ない可能性が高まります。
② 退職日をその場で確定させる
退職意思が確認できたら、退職日を具体的に決めることが極めて重要です。
- 「いつ付けで退職しますか?」
- 「最終出勤日はいつにしますか?」
退職日はトラブルの火種になりやすいため、その場で明確に合意しておく必要があります。
③ 必ず書面(退職届)を提出させる
口頭でも退職は成立する可能性がありますが、実務上は非常に危険です。
必ず以下を行いましょう。
- 退職届の提出
- 日付・署名の確認
- コピー保管
これにより、「言った言わない」の争いを防ぐことができます。
よくある誤解:「口頭だから無効」は間違い
現場では、
「書面がないから無効では?」
という誤解が多く見られます。
しかし実際には、口頭でも退職の意思表示は有効です。
重要なのは、
- 明確な意思表示があったか
- 会社側が承認したか
という点です。
注意点:安易な“退職扱い”は逆にリスク
「辞めると言ったから辞めさせた」と安易に処理すると、以下のリスクがあります。
- 不当解雇と主張される
- 損害賠償請求
- 労基署・労働局対応
特に、感情的発言をそのまま退職扱いにするのは危険です。
実務対応の結論(現場で使える判断基準)
問題職員への対応としては、次のように整理できます。
- 同僚への発言 → 無効(様子見)
- 管理職への発言 → 要確認
- 明確な意思+承認 → 退職成立
そして最も重要なのは、
👉「記録を残すこと」
です。
まとめ:感情的な「辞める」に振り回されないために
「辞める」と繰り返す職員への対応は、現場のストレス要因になりがちです。
しかし、法的にはシンプルで、
- 誰に言ったか
- 本気かどうか
- 承認されたか
この3点で判断されます。
適切に対応すれば、不要なトラブルを防ぎながら、組織運営を安定させることができます。
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