パワハラ防止義務付け法制化へ
職場のハラスメント対策が、新たな段階に入る。
パワーハラスメントの防止措置を義務付ける法律ができ、早ければ大企業には2020年4月から、
中小企業では22年4月から適用となる。
ハラスメントのうち、性的な嫌がらせのセクハラや妊娠・出産した女性へのマタニティーハラスメント対策は、すでに義務付けられている。だが、パワハラは企業の自主性に委ねられてきた。法制化は大きな一歩だ。
パワハラは働く人の人格、尊厳を傷つける。心身の不調を招き、休職や退職、自殺にまで至ってしまうこともある。
全国の労働相談のうち、パワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」の件数は18年度、8万3千件だった。7年連続でトップを占める。
政府は年内をめどに、企業がどう取り組むべきかの指針をつくる。どこまでが適切な指導で、どこからがパワハラなのか。
線引きに迷って、職場が萎縮してしまってはいけない。分かりやすく、具体的な指針にしてほしい。
中小企業を中心に、ノウハウが乏しく、とまどう声もある。セミナーの実施など手厚い支援が必要だろう。
パワハラのない職場は、社員が安心して働くことができる職場だ。生産性の向上や人材確保にもプラスに働くだろう。
パワハラの温床になりそうな風通しの悪さ、過度の長時間労働やノルマはないだろうか。企業は攻めの姿勢で、点検と対策を急いでほしい。
国際労働機関(ILO)は6月の総会で、仕事上の暴力やハラスメントを禁止する条約を採択した。一方、日本の新制度は、禁止にまではいっていない。
国際基準に近づくうえでも、まずは防止措置の実効性を高めていかなければならない。セクハラ、パワハラ、
といった縦割りではなく、総合的な視点で対策を考えることも課題となる。なにより「ハラスメントは許さない」
という意識を、社会全体で共有することが大切になる。
2019年9月2日 日経電子版より