介護の現場Q&A

Q、遅刻を繰りかえす職員に対して、法人が注意指導する際に、どのような点に気をつければいいでしょうか。また注意指導しても改善しない場合の対応はどうすればよいでしょうか。

A,法人が遅刻を繰り返す職員を放置すれば、業務に支障をきたす可能性があることはもちろんのこと、周りの職員にも悪影響を及ぼす可能性があるので、法人はそのような職員を放置せず、その都度、注意指導を行うことが大切です。

注意指導を行う場合には、最初は口頭で注意を行うことで構いません。もっとも口頭による注意指導で遅刻が改善されない場合には、書面の形でしっかり厳重に注意喚起を行うことが肝要です。文章で行うことがむずいかしい場合にはメールでも構いません。書面など注意喚起を行うことで、遅刻が看過できないことを強調するとともに、遅刻に対する事実や注意指導を客観的な証拠として残しておく効果があります。

 書面の具体的な内容としては、当該遅刻の件に対する注意指導に加え、以前から繰り返し遅刻を行っており、口頭で注意指導を行ってきたことが改善されていないといったこれまでの経緯や、今後も繰り返される場合には、就業規則の懲戒事由に基づいて懲戒事由となる可能性があることを記載することが肝要です。

 また、注意指導を行っても改善が見られない場合には、会社として懲戒処分を検討します。一般的な就業規則には、懲戒事由として「正当な理由なく無断でしばしば遅刻早退をまたは欠勤を繰り返したとき」といった規定があると思いますので、この条文に基づき懲戒処分を検討します。そして、実際に懲戒処分を行う場合には、懲戒処分に必要な手続きが就業規則に記載してあれば、その手続きにしたがって懲戒を行うことになります。また、懲戒手続き

の記載がなかった場合であっても、最低当該職員に対して弁明、聴取の機会を設けることは必要不可欠です。具体的には、なぜ遅刻をしたのか、当該職員からよく事情を聴取して、正当な事由が認められないかどうかよく分析する必要があります。

 その結果、正当な事由がない場合には、懲戒処分を行うことになります。懲戒処分の程度としては、原則として一番軽い処分(戒告など)を適用することが妥当です。それでも改善が見られない場合には一段ずつ重い処分を課してことが相当と思われます。ただし、遅刻を原因として法人にとって大きな損害が出た場合には、その損害の程度を考慮して、懲戒処分が初めてであっても、最初から重い処分を課すことが適切な場合もあります。

懲戒処分の段階を経てもなお改善の余地がない場合には、最終的には懲戒解雇も検討せざるを得ないでしょう。

Q,以前、役所から送られてきた資料に、採用面接で家族に関することを質問する ことは不適切です、と記載されていました。これまで面接の空気を和らげるため に、家族に関する質問などをしていましたが、なぜ問題があるのでしょうか?

A, たとえ面接の空気を和らげるためであっても、家族に関することなど、適性と
能力に関係がない事項を採用面接時に質問し把握することは、就職差別につなが
るおそれがあります。この機会にその他の項目についても、不適切な質問をして
いないか確認しましょう。

詳細解説: 2018 年度にハロー ワークが、不適切な 採用選考の実態につ いて把握した状況に よると、応募者から 「本人の適性・能力以外の事項を把握され た」との指摘があったもののうち、家族に関 することが 42.9%を占めました。面接者が悪 気なく、面接の空気を和らげるためにさまざ まな質問をするケースが多いようですが、適 性や能力に関係がない事項を採用面接時に質 問し把握することは、就職差別につながるお それがあります。不適切な質問の例としては 下表のようなものが示されています。 「いままでもそのように質問してきたか ら」「差別するつもりはないから」といった 判断で、質問内容を見直さないでおくと、不 適切な質問に該当している危険性がありま す。この機会に、自院の採用面接における質 問について問題がないか確認しましょう。 【家族に関すること】 × 「家族構成を教えてください」 × 「父親の勤務先を教えてください」 不適切な理由: 本人の責任でない事柄で採否を判断しようとしていると みなされます。 【住宅に関すること】 × 「家は持ち家ですか、借家ですか」 × 「家の周辺にどんな施設がありますか」 不適切な理由: 採用後、施設に損害を与えた場合の補償能力を判断した り、家柄や育ちの良否を推量し偏見をもって応募者の人 格を判定することにつながるおそれがあります。 【思想・信条にかかわること】 × 「尊敬する人物は誰ですか」 × 「愛読書は何ですか」 不適切な理由: 憲法で保障されている個人の自由に属することであり、 採用選考の場で持ち出すことは、基本的人権の侵害にあ たると判断されます。 【男女雇用機会均等法に抵触すること】 × 「結婚、出産しても働き続けられますか」 不適切な理由: このような質問を行うことは、男女雇用機会均等法等の 趣旨に違反する採用選考につながります。 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティン 

Q 上司Aが部下Bに対し、Bが作成した文書の誤字脱字が多くミスが多いとして、業務上の注意指導をしたが、それでも改まらなかったので、再度、前回よりきつく注意したところ、Bは「パワハラです」と言って注意指導を受け入れない、注意指導はどのような場合にパワハラになりますか?

A,パワハラに関し実際に何をすればパワハラになるのか、十分に理解できている方は以外と少ないのではないでしょうか。そのため本来、部下を指導監督する上司が、これはパワハラにあたるのか、などと判断に迷ってしまうこともあると思います。さらに本設問のようにちょっと厳しく注意すると部下から「パワハラだ」などと言われると上司は注意する出来ないのではないかと思ってしまうケースも散見されます。そこで、まずはパワハラに関する基本的な考え方について検討したいと思います。
パワハラにつては、法律上の定義があるわけではありませんが、厚生労働省は「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働くものに対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と定義しています。
つまり注意指導そのものがパワハラにあたるものではなく、注意指導の程度や態様が度を越している場合にはパワハラにあたる可能性があるということになります。裁判上も、注意指導の目的は正当なものであったとしても、感情的になって大きな声を出したり、部下の人間性を否定するかのような表現を用いて叱責した点などは「社会通念上、許容される範囲を超える」としています。
御質問のケースでは、上司は部下の誤字脱字が多いことを、業務を対象にして注意指導を行っていると言えます。しかしながら部下は注意されたにも関わらず改善されないだけでなく、反抗的な態度をとってきたとのことですから、その分厳しく注意するのは当然と言えます。もちろん、先に述べた人格否定を行う、大声で怒鳴るといった注意指導は行き過ぎですが、そうでない限り、上司の注意指導はパワハラとはいえないでしょう。注意指導を行うときには、くれぐれも冷静に行うことが大切です。

Q, 採用した職員が、入社当初から無断欠勤が目立ち、指示した業務も行わないことが多いため、このまま使用期間を終えて本採用することに不安を感じています。本人は、体調不良で仕方なかったといっていますが、どう対応したらよいでしょうか。

A, 試用期間中、勤務状況や勤務態度が不良であり、本採用することが不適格と認められるとき法人は、当該職員に対して、就業規則に基づいて本採用を拒否することができます。

またそのような状況下で、通常の試用期間では本採用すべきか否かの判断がつかない場合、就業規則に規定があれば、試用期間を延長することも可能です。このようか対処を行う場合のポイントは下記になります。

  • 試用期間の明示

試用期間は一般的の事業所が採否を決定する段階で、その方の資質、性格、能力そのほかの適格性を判断することができないため、採用の最終的な決定を留保したものであると考えられます。実務上は、3か月から6か月で定める例が多いです。

  • 本採用を拒否すべき具体的自事由の列挙

試用期間の途中または終了時に本採用を拒否する場合を想定して、就業規則にはその方には適格性がないと判断される事由をなるべく詳細に列挙しておくことが望ましいといえます。そこで施設としては、不適格であるという事由を検討したうえで、資質や性格上、適用性を有していないこと、職業能力が欠如していること、勤務態度が不良であること、といった項目を具体化しておく必要があります。

  • 事例のように、通常の試用期間中、直ちに適格性を判断しかねることを想定して、就業規則に期間延長に関する規定を設けておく必要があります。この場合、就業規則には「試用期間満了時に適格性判定のためにさらに必要がある場合には、〇か月単位で〇か月を限度として試用期間を延長することができる」といった規定を置くことをお勧めします。

先月退職した職員から内容証明の郵便が届きました。内容は、「在職時に受け 取っていない残業代があるため、追加で支払って欲しい」というものでした。タ イムカードで労働時間を管理し、その記録に従って残業代を支払っているため、 未払い残業代はないと認識していますが、どのように対応すればよいのでしょう か?

 A,  未払い残業代を主張する根拠を確認し、未払いのものがあれば、追加の支払い
が必要になります。今後、同じことが起こらないように、実際の手順を確認し、
問題があれば改善しましょう。

 

詳細解説:
1.残業代の請求根拠の確認まずは退職者に、未払い残業代があると主張している根拠を
示してもらいましょう。
例えばタイムカード以外で労働時間が記録されている資料があれば、その資料を送ってもらい、示された
資料をもとに、その時間について労働をしていたかを精査します。精査に時間がかかるようであれば、

時間の猶予をもらい、回答の日時を伝えます。なお、未払い残業代の時効は、2020 年 3 月
31 日までに支払うべきものは 2 年であり、2020 年 4 月 1 日以降に支払うものから 3 年に
延長されています。


2.問題が生じやすいケース
未払い残業代が請求される原因には、労働時間管理における説明不足や誤った運用があります。
例えば、始業前に職員が自主的に任意参加の勉強会を開催していたところ、時間の経過
とともに強制参加のような勉強会になっており、参加しなければ業務に支障が出てくるよ
うなケースです。勉強会や研修はその内容から、労働に該当するのかを事前に確認し、労
働ではないとする場合には、誤解のないように説明することが求められます。

また、36 協定で 1 ヶ月の上限時間を 30 時間として締結し、この内容を遵守するために残
業時間を 30 時間までしか付けられないと管理者から言われ、タイムカードを打刻し再び業務を

行っているということがあります。

36 協定の内容を遵守することは重要ですが、仮に36 協定で締結した時間数を超える残業を行っ
たときであっても、超えた時間数の残業代の払いが必要です。
そもそもこのような運用が行われていないかを確認し、運用に問題があれば、適正に労
働時間を申告するように職員と管理者に説明を行い、場合によっては 36 協定で締結してい
る時間数を変更する(長くする)などの対応が求められます。


退職者から未払い残業代の請求があった際、対応を放置しておくと、退職者との関係
がこじれ、解決に時間を要することがあります。誠実に対応するとともに、請求に至った
原因をみつけ、改善を進めましょう。

Q,当施設では、多くのパート職員が在籍しています。今後、パート職員の社会保 険の加入基準が段階的に拡がると聞きましたが、その内容と留意点を教えてくだ さい。

A,  2022 年 10 月から職員数 101 人以上、2024 年 10 月には職員数 51 人以上の事業所において、週の所定労働時間が 20 時間以上等の加入基準を満たしたパート職員(パートタイマー・アルバイト等)について、社会保険に加入することになり
ます。早めに加入となる対象者を把握し、扶養の範囲で勤務を希望する職員に対しては労働時間等の調整が必要か確認しましょう。

 

詳細解説:
1.社会保険の加入基準
現状のパート職員の社会保険
の加入基準(健康保険・厚生年
金保険)は以下のとおりです。


①職員数が 500 人以下の事業所
1 週間の所定労働時間および 1 ヶ月の所定労働日
数が正職員の 4 分の 3 以上であるパート職員
②職員数が 501 人以上の事業所
①に加え、以下の要件をすべて満たすパート職員
a.週の所定労働時間が 20 時間以上であること
b.月額賃金が 8.8 万円以上であること
c.1 年以上の雇用が見込まれること
d.学生ではないこと

2.適用拡大のスケジュール
社会保険の適用拡大により、2022 年 10 月よ
り職員数 101 人以上、2024 年 10 月より 51 人
以上の事業所について、職員数が上記 501 人
以上の事業所の加入基準が適用されることに
なります。また、2022 年 10 月には、②の c の
基準である「1 年以上の雇用が見込まれるこ
と」が、「2 ヶ月超の雇用が見込まれること」
に変わります。

 


3.適用拡大となる職員数の判断
社会保険の適用拡大の対象となる職員数
は、厚生年金保険の被保険者数(正職員数
と、週の所定労働時間および 1 ヶ月の所定労
働日数が正職員の 4 分の 3 以上であるパート
職員数の合計)で判断します。
例えば、厚生年金保険に加入している正職
員が 75 人、パート職員が 40 人(うち、厚生
年金保険に加入している人が 10 人)の場合、
全体の職員数は 115 人ですが、厚生年金保険
の被保険者数は 85 人となり、2024 年 10 月よ
り適用拡大の対象となります。
配偶者の社会保険の被扶養者(国民年金第 3
号被保険者)となるために、年収 130 万円未
満の範囲で働くパート職員も多くいますが、
年収 130 万円未満であっても、前述の加入基
準を満たした場合には、パート職員自身で社
会保険に加入し、被扶養者からは除外される
ことになります。
社会保険の被扶養者での勤務を望むパート
職員がいるときは、労働時間や賃金等につい
て、今のうちから話し合っておきましょう。

Q  先月退職した職員から内容証明の郵便が届きました。内容は、「在職時に受け 取っていない残業代があるため、追加で支払って欲しい」というものでした。タ イムカードで労働時間を管理し、その記録に従って残業代を支払っているため、 未払い残業代はないと認識していますが、どのように対応すればよいのでしょう か?

A 未払い残業代を主張する根拠を確認し、未払いのものがあれば、追加の支払い が必要になります。今後、同じことが起こらないように、実際の手順を確認し、 問題があれば改善しましょう。

 

詳細解説: 1.残業代の請求根拠の確認 まずは退職者に、未払い残 業代があると主張している根 拠を示してもらいましょう。 例えばタイムカード以外で労働時間が記録 されている資料があれば、その資料を送って もらい、示された資料をもとに、その時間に ついて労働をしていたかを精査します。精査 に時間がかかるようであれば、時間の猶予を もらい、回答の日時を伝えます。 なお、未払い残業代の時効は、2020 年 3 月 31 日までに支払うべきものは 2 年であり、 2020 年 4 月 1 日以降に支払うものから 3 年に 延長されています。 2.問題が生じやすいケース 未払い残業代が請求される原因には、労働 時間管理における説明不足や誤った運用があ ります。 例えば、始業前に職員が自主的に任意参加 の勉強会を開催していたところ、時間の経過 とともに強制参加のような勉強会になってお り、参加しなければ業務に支障が出てくるよ うなケースです。勉強会や研修はその内容か ら、労働に該当するのかを事前に確認し、労 働ではないとする場合には、誤解のないよう に説明することが求められます。 また、36 協定で 1 ヶ月の上限時間を 30 時 間として締結し、この内容を遵守するために 残業時間を 30 時間までしか付けられないと 管理者から言われ、タイムカードを打刻し再 び業務を行っているということがあります。 36 協定の内容を遵守することは重要ですが、 仮に 36 協定で締結した時間数を超える残業 を行ったときであっても、超えた時間数の残 業代の払いが必要です。 そもそもこのような運用が行われていない かを確認し、運用に問題があれば、適正に労 働時間を申告するように職員と管理者に説明 を行い、場合によっては 36 協定で締結して いる時間数を変更する(長くする)などの対 応が求められます。 退職者から未払い残業代の請求があった 際、対応を放置しておくと、退職者との関係 がこじれ、解決に時間を要することがありま す。誠実に対応するとともに、請求に至っった 原因をみつけ、改善を進めましょう。

上司に叱られたことがパワーハラスメント(以下、「パワハラ」という)に該 当するのではないかと申し出た職員がいます。パワハラとはどのようなもので、 どのような対応をしなければならないのでしょうか。

A  パワハラ防止措置の法制化によりパワハラの定義が明確になり、パワハラに該
当すると考えられる例と該当しないと考えられる例が示されました。パワハラ防
止措置として、パワハラを行ってはならないこと等に対する職員の関心と理解を
高めたり、他の職員に対する言動に注意を払うことができるように研修を行うこ
とが求められます。

 

詳細解説:
1.パワハラ防止措置の法制化
労働施策総合推進法の改正によりパワハラ防止措置が事業
主に義務づけられ、大企業区分に該当する医療機関は 2020 年 6 月 1 日より施行され
ています。中小企業区分に該当する医療機関は、2022 年 4 月 1 日より施行されます。


2.パワハラの定義と例示
パワハラの定義は「パワーハラスメント防止のための指針」(以下、「指針」という)の
中で明確にされ、次の①〜③までの要素をすべて満たすものとしています。


① 優越的な関係を背景とした言動であって
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③ 労働者の就業環境が害されるもの


また指針では、パワハラに該当すると考えられる例と該当しないと考えられる例が示さ
れ、例えば「精神的な攻撃」は次のように示されています。


[該当すると考えられる例]
業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳
しい叱責を繰り返し行うこと


[該当しないと考えられる例]
遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して
一定程度強く注意をすることこの事例からわかるように、業務の遂行に関することの注意は問題なくても、必要以上
に厳しく注意したり、長時間にわたって厳しく注意したりすることで、パワハラに該当する可能性が高まります。

反対に、当然守るべきルールを散々破ったときに、必要に応じた厳しい注意をしたとしても、パワハラには該
当しないということになります。この指針で示された例はあくまで事例であり、パワハラに該当するかどうかは個別に判断されます。
パワハラというと上司から部下に対するものをイメージしますが、職場内の仲間外れ、外部の関係者へのパワハラも考えられます。
そのため、上司(管理職)だけでなく一般の職員に対する研修の実施も効果的でしょう。

同業者から、突然、労働基準監督署(以下、「労基署」という)の労働基準監 督官が訪ねてきて調査が行われ、対応に苦慮したという話を聞きました。労働基 準監督官は、事前の連絡なく、訪問してくるものなのでしょうか? また、どの ような点を調査されるのでしょうか?

A ,労基署の調査には、定期的に行われるものと労働者等からの申告により行われ
るものとがあり、調査は原則として予告することなく実施されます。そのため、
突然、労働基準監督官が訪ねてくることもあります。調査では、労働基準法など
労働基準関係法令の遵守状況の確認が行われます。 

 

1.労基署の調査の内容
労基署の調査は、事業主が労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法等の労働基準関係
法令の遵守状況を確認することが目的であり、労働基準監督官が事業場を訪問するパ
ターン(臨検(りんけん)監督)と事業主が労基署に出向くパターンがあります。


その内容としては、対象となる事業主を無作為に抽出し、その年度の重点課題を対象と
する定期監督と、労働者やその家族等から法令違反等の申告を受けて行われる申告監督と
があります。調査の結果、労働基準関係法令に違反が見つかると、事業主に対して是正す
るように指導等が行われます。調査の流れとしては下図のようになります。


2.調査が行われる書類等
定期監督において、一般的に必要とされる資料は以下のものになります。
⚫ 労働者名簿
⚫ 就業規則
⚫ 出勤簿、タイムカード、時間外・休日労働の記録
⚫ 賃金台帳
⚫ 時間外・休日労働に関する協定届(36 協定届)
⚫ 年次有給休暇管理簿
⚫ 定期健康診断結果個人票
⚫ 衛生管理者の選任などの状況がわかる資料
(事業場の労働者数が 50 人以上の場合)
これらの資料に関して法律上の不備がないかどうかを確認するだけでなく、36 協定届で
届け出ている時間外労働の時間数を超える長時間労働が発生していないか、労働時間が適
正に把握されているか等の確認が行われます。


事業主は、業務を運営する上で、労働基準関係法令を遵守することが求められていま
す。そのため、労務管理上の問題点がないか定期的に確認して、問題があるときには早め
に改善しておく必要があります。

 

退職代行業者※と名乗るところから、当院の無断欠勤している職員について 「〇月〇日付けで退職する」という郵便が届きました。その職員とは現在、連絡 がとれない状況にあります。どのようにすればよいのでしょうか? (※)弁護士や労働組合ではない退職代行業者

A  退職代行業者は「使者」という位置づけになるため、その退職の意思表示が本
人のものなのかを職員に確認する必要があります。電話やメールがつながらず職
員と連絡がとれない状況にあれば、退職代行業者から届いた書面が本人のものか、
自筆や捺印などで確認します。それでも本人の意思か確認がとれない場合には、
退職代行業者を通じて本人の意思を確認しましょう。

 

詳細解説:
1.退職代行業者とは
職員が退職するにあたり、自ら申出をすることで、使用者から引き留めなどを受け、退職の
トラブルに発展することを懸念する傾向が強まっています。このような状況を受けて職員の代わりに退
職の申出をする退職代行業者が出現し、更に使用者に報告せず気軽に辞めることができると考える人の間で利用が広まっています。


2.退職代行業者の法的な位置づけ
この退職代行業者の法的な位置づけとして「代理」と「使者」が考えられますが、弁護
士法により弁護士でなければ職員の「代理」をすることができないことから、「使者」と
いう立場となります。使者としての退職代行業者は、職員本人が行う退職の意思表示を、
使用者に届けることになり、交渉などを行うことはできません。


3.退職代行業者から連絡がきた場合の対応
退職代行業者から連絡がきたときは、一般的にはその退職の意思表示が職員本人の意思
によるものかを確認する必要があります。確認の方法としては、通常、直接本人に連絡を
することになります。退職代行業者から届いた文書の中に、本人への直接の連絡を禁止す
るような文言や、退職代行業者あてに連絡してほしい旨の文言が入っていることがありま
すが、この内容に強制力はありません。本人と連絡がとれない場合は、退職代行業
者から届いた書面が本人のものか、自筆や捺印などで確認します。そして、確認したもの
の、本人のものなのか確認できない場合は、本人からどのような依頼があったのか退職代
行業者に確認したり、本人の意思を確認できる資料の送付を依頼したりなどするとよいで
しょう。

退職代行業者からの連絡が、職員本人の意思である場合、退職の申出は認めざるをえま
せん。ただし、何の対応もせずに認めてしまうことで、職員間で情報が共有され、今後も
退職代行業者を通じた申出が行われる可能性があります。そのため、退職の申出のルール
を労使で確認しておきましょう。

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