コラム

医療事業所様向け情報(経営)2月号①

オンライン資格確認、スタートまで残り1 年

令和3 年3 月から、オンラインによる健康保険証の資格確認が始まります。特定健診情報や薬剤情報も閲覧できるようになり、医療機関の受付、診療・服薬指導が大きく変わっていきます。今回は、同システムの概要をご案内します。

オンライン資格確認とは

マイナンバーカードや健康保険証により、オンラインで資格情報を確認する仕組みです。導入は義務ではありませんが、受付や診療・調剤・服薬指導、診療報酬請求の効率化が見込まれています。

※マイナンバーカードのIC チップ内の利用者証明用電子証明書を利用するため、医療機関が患者のマイナンバー(12 桁の番号)を取り扱うことはありません。

※支払基金・国保中央会から医療機関に資格情報等が提供されますが、支払基金・国保中央会が医療機関のレセプトコンピュータ等の診療情報等を閲覧・取得することはできません。

診療や服薬指導はどう変わる?

患者本人の同意のもと、薬剤情報や特定健診情報の閲覧ができるようになります。患者と医師・薬剤師の間で正確な情報が共有でき、業務の効率化、より適切な診療・投薬につながると期待されています。

今後のスケジュール

オンライン資格確認と特定健診情報の閲覧は令和3 年3 月から、薬剤情報の閲覧は令和3年10 月から始まる予定です。

マイナンバーカードを取扱うためには、顔認証付きカードリーダー等を窓口に設置する等、システム改修が必要となります。導入には、補助金制度「医療情報化支援基金」もぜひご活用ください。

参考資料・図の出典元:厚生労働省「オンライン資格確認導入の手引き」

https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000585403.pdf

(次号に続く)

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

医療事業所様向け情報(労務)2月号④

自社の労働時間制度・休日日数を見直す際に参考となる統計データ

働き方改革として、所定労働時間数や休日日数などを変更することにより、従業員の働き方を見直す企業も少なくないでしょう。その際、他社の状況と比較する場合に活用できるのが、厚生労働省の「就労条件総合調査の概況」です。平成31年の統計データをみてみましょう。

1.所定労働時間

労働基準法で定める1日あたりの労働時間は原則8時間までとされていますが、今回の調査結果における1日の所定労働時間は1企業平均7時間46分、週所定労働時間は1企業平均39時間26分となっています。この週所定労働時間について、主な業種でみてみると以下のとおりです。

製造業:39時間26分
卸売業、小売業:39時間34分
金融業、保険業:38時間18分
宿泊業、飲食サービス業:39時間57分
医療、福祉:39時間20分

業種によって若干開きがあり、それぞれの業務形態等が影響していると考えられます。

2.所定休日

労働基準法では、1週に少なくとも1日の休日を与えることとなっており、調査結果における週休制の形態は、「何らかの週休2日制」を採用している企業の割合が82.1%を占めています。そのうち、「完全週休2日制」を採用している企業の割合は44.3%となっています。この内訳は図表1のとおりです。
次に、年間休日総数は、1企業平均で108.9日、企業規模別では1,000人以上が115.5日、

300~999人が113.7日、100~299人が111.1日、30~99人が107.5日となっており、従業員数が多くなるに従って、年間休日総数が増えていることがわかります。企業規模別に詳細な内訳をみると、図表2のとおりです。

求人募集の場面では、給与の額も重要ですが、応募者が年間休日総数などの勤務条件を重視した上で応募することが増えています。自社と同規模の他社の状況を比較し、必要に応じ年間休日総数の見直しを行いたいものです。

所定労働時間や休日日数を見直した際には、就業規則や賃金規程等の変更が必要になります。見直しに伴いお困りのことがございましたら、当事務所までお気軽にご連絡ください。

(来月に続く)

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ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

保育事業所様向け情報(労務)2月号④

自社の労働時間制度・休日日数を見直す際に参考となる統計データ

働き方改革として、所定労働時間数や休日日数などを変更することにより、従業員の働き方を見直す企業も少なくないでしょう。その際、他社の状況と比較する場合に活用できるのが、厚生労働省の「就労条件総合調査の概況」です。平成31年の統計データをみてみましょう。

1.所定労働時間

労働基準法で定める1日あたりの労働時間は原則8時間までとされていますが、今回の調査結果における1日の所定労働時間は1企業平均7時間46分、週所定労働時間は1企業平均39時間26分となっています。この週所定労働時間について、主な業種でみてみると以下のとおりです。

製造業:39時間26分
卸売業、小売業:39時間34分
金融業、保険業:38時間18分
宿泊業、飲食サービス業:39時間57分
医療、福祉:39時間20分

業種によって若干開きがあり、それぞれの業務形態等が影響していると考えられます。

2.所定休日

労働基準法では、1週に少なくとも1日の休日を与えることとなっており、調査結果における週休制の形態は、「何らかの週休2日制」を採用している企業の割合が82.1%を占めています。そのうち、「完全週休2日制」を採用している企業の割合は44.3%となっています。この内訳は図表1のとおりです。
次に、年間休日総数は、1企業平均で108.9日、企業規模別では1,000人以上が115.5日、

300~999人が113.7日、100~299人が111.1日、30~99人が107.5日となっており、従業員数が多くなるに従って、年間休日総数が増えていることがわかります。企業規模別に詳細な内訳をみると、図表2のとおりです。

求人募集の場面では、給与の額も重要ですが、応募者が年間休日総数などの勤務条件を重視した上で応募することが増えています。自社と同規模の他社の状況を比較し、必要に応じ年間休日総数の見直しを行いたいものです。

所定労働時間や休日日数を見直した際には、就業規則や賃金規程等の変更が必要になります。見直しに伴いお困りのことがございましたら、当事務所までお気軽にご連絡ください。

(来月に続く)

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介護事業所様向け情報(労務)2月号④

自社の労働時間制度・休日日数を見直す際に参考となる統計データ

働き方改革として、所定労働時間数や休日日数などを変更することにより、従業員の働き方を見直す企業も少なくないでしょう。その際、他社の状況と比較する場合に活用できるのが、厚生労働省の「就労条件総合調査の概況」です。平成31年の統計データをみてみましょう。

1.所定労働時間

労働基準法で定める1日あたりの労働時間は原則8時間までとされていますが、今回の調査結果における1日の所定労働時間は1企業平均7時間46分、週所定労働時間は1企業平均39時間26分となっています。この週所定労働時間について、主な業種でみてみると以下のとおりです。

製造業:39時間26分
卸売業、小売業:39時間34分
金融業、保険業:38時間18分
宿泊業、飲食サービス業:39時間57分
医療、福祉:39時間20分

業種によって若干開きがあり、それぞれの業務形態等が影響していると考えられます。

2.所定休日

労働基準法では、1週に少なくとも1日の休日を与えることとなっており、調査結果における週休制の形態は、「何らかの週休2日制」を採用している企業の割合が82.1%を占めています。そのうち、「完全週休2日制」を採用している企業の割合は44.3%となっています。この内訳は図表1のとおりです。
次に、年間休日総数は、1企業平均で108.9日、企業規模別では1,000人以上が115.5日、

300~999人が113.7日、100~299人が111.1日、30~99人が107.5日となっており、従業員数が多くなるに従って、年間休日総数が増えていることがわかります。企業規模別に詳細な内訳をみると、図表2のとおりです。

求人募集の場面では、給与の額も重要ですが、応募者が年間休日総数などの勤務条件を重視した上で応募することが増えています。自社と同規模の他社の状況を比較し、必要に応じ年間休日総数の見直しを行いたいものです。

所定労働時間や休日日数を見直した際には、就業規則や賃金規程等の変更が必要になります。見直しに伴いお困りのことがございましたら、当事務所までお気軽にご連絡ください。

(来月に続く)

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

医療事業所様向け情報(労務)2月号③

懲戒処分の種類と減給処分を行うときの留意点

従業員が労働契約の内容に違反したり、就業規則の服務規律を守らない場合に、会社は懲戒処分を下すことがあります。懲戒処分を下すためには、就業規則に事前にその内容を定め、定められた就業規則の規定に基づいて対応する必要があります。そこで、以下では一般的な懲戒処分の種類と、その中でも減給処分を行う際の留意点を確認します。

1.懲戒処分の種類

懲戒処分は、いくつかの段階を設けて、懲戒すべき事案が発生するたびに、どの懲戒処分を下すかを決定します。厚生労働省が公開する「モデル就業規則(平成31年3月)」では、以下の4種類の懲戒処分を設けています。

①けん責
始末書を提出させて将来を戒める。
②減給
始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく、また、総額が1賃金支払期における賃金総額の1割を超えることはない。
③出勤停止
始末書を提出させるほか、〇日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない。
④懲戒解雇
予告期間を設けることなく即時に解雇する。この場合において、所轄の労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支給しない。

なお、降格や降職、諭旨解雇(諭旨退職)等、これら以外の懲戒処分を定めることも認められています。

2.減給の上限

1.にある「②減給」は、よく見かける懲戒処分の一つですが、処分内容として記載されているとおり、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えることはできず、同一月において懲戒の事案が複数となり、その複数の事案について減給を行うときであっても、減給の総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えることはできないと、労働基準法に定められています。

3.賞与で減給を行う際の留意点

減給は賃金で行いますが、賞与で行うことも認められています。この場合、賞与から減給を行う旨を就業規則に定めておくことが必要です。そして、賞与で減給を行うときであっても、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えることはできません。
なお、賞与の支給額を会社の業績や、賞与の算定期間中の人事評価に基づき決定することがあります。この際、懲戒の事案がこの人事評価のマイナスの要素となり、結果として減給の上限を超える額が賞与支給額から減額されたとしても、問題はありません。

減給の上限は、従業員の生活を過度に脅かすことのないように、設けられたものです。そもそもの事案に対する処分として、減給が妥当なのかを十分に検討するとともに、誤った取扱いをしないようにしましょう。

(次号に続く)

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ヒューマンスキルコンサルティング
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保育事業所様向け情報(労務)2月号③

懲戒処分の種類と減給処分を行うときの留意点

従業員が労働契約の内容に違反したり、就業規則の服務規律を守らない場合に、会社は懲戒処分を下すことがあります。懲戒処分を下すためには、就業規則に事前にその内容を定め、定められた就業規則の規定に基づいて対応する必要があります。そこで、以下では一般的な懲戒処分の種類と、その中でも減給処分を行う際の留意点を確認します。

1.懲戒処分の種類

懲戒処分は、いくつかの段階を設けて、懲戒すべき事案が発生するたびに、どの懲戒処分を下すかを決定します。厚生労働省が公開する「モデル就業規則(平成31年3月)」では、以下の4種類の懲戒処分を設けています。

①けん責
始末書を提出させて将来を戒める。
②減給
始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく、また、総額が1賃金支払期における賃金総額の1割を超えることはない。
③出勤停止
始末書を提出させるほか、〇日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない。
④懲戒解雇
予告期間を設けることなく即時に解雇する。この場合において、所轄の労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支給しない。

なお、降格や降職、諭旨解雇(諭旨退職)等、これら以外の懲戒処分を定めることも認められています。

2.減給の上限

1.にある「②減給」は、よく見かける懲戒処分の一つですが、処分内容として記載されているとおり、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えることはできず、同一月において懲戒の事案が複数となり、その複数の事案について減給を行うときであっても、減給の総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えることはできないと、労働基準法に定められています。

3.賞与で減給を行う際の留意点

減給は賃金で行いますが、賞与で行うことも認められています。この場合、賞与から減給を行う旨を就業規則に定めておくことが必要です。そして、賞与で減給を行うときであっても、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えることはできません。
なお、賞与の支給額を会社の業績や、賞与の算定期間中の人事評価に基づき決定することがあります。この際、懲戒の事案がこの人事評価のマイナスの要素となり、結果として減給の上限を超える額が賞与支給額から減額されたとしても、問題はありません。

減給の上限は、従業員の生活を過度に脅かすことのないように、設けられたものです。そもそもの事案に対する処分として、減給が妥当なのかを十分に検討するとともに、誤った取扱いをしないようにしましょう。

(次号に続く)

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介護事業所様向け情報(労務)2月号③

懲戒処分の種類と減給処分を行うときの留意点

従業員が労働契約の内容に違反したり、就業規則の服務規律を守らない場合に、会社は懲戒処分を下すことがあります。懲戒処分を下すためには、就業規則に事前にその内容を定め、定められた就業規則の規定に基づいて対応する必要があります。そこで、以下では一般的な懲戒処分の種類と、その中でも減給処分を行う際の留意点を確認します。

1.懲戒処分の種類

懲戒処分は、いくつかの段階を設けて、懲戒すべき事案が発生するたびに、どの懲戒処分を下すかを決定します。厚生労働省が公開する「モデル就業規則(平成31年3月)」では、以下の4種類の懲戒処分を設けています。

①けん責
始末書を提出させて将来を戒める。
②減給
始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく、また、総額が1賃金支払期における賃金総額の1割を超えることはない。
③出勤停止
始末書を提出させるほか、〇日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない。
④懲戒解雇
予告期間を設けることなく即時に解雇する。この場合において、所轄の労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支給しない。

なお、降格や降職、諭旨解雇(諭旨退職)等、これら以外の懲戒処分を定めることも認められています。

2.減給の上限

1.にある「②減給」は、よく見かける懲戒処分の一つですが、処分内容として記載されているとおり、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えることはできず、同一月において懲戒の事案が複数となり、その複数の事案について減給を行うときであっても、減給の総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えることはできないと、労働基準法に定められています。

3.賞与で減給を行う際の留意点

減給は賃金で行いますが、賞与で行うことも認められています。この場合、賞与から減給を行う旨を就業規則に定めておくことが必要です。そして、賞与で減給を行うときであっても、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えることはできません。
なお、賞与の支給額を会社の業績や、賞与の算定期間中の人事評価に基づき決定することがあります。この際、懲戒の事案がこの人事評価のマイナスの要素となり、結果として減給の上限を超える額が賞与支給額から減額されたとしても、問題はありません。

減給の上限は、従業員の生活を過度に脅かすことのないように、設けられたものです。そもそもの事案に対する処分として、減給が妥当なのかを十分に検討するとともに、誤った取扱いをしないようにしましょう。

(次号に続く)

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ヒューマンスキルコンサルティング
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保育事業所様向け情報(労務)2月号②

パートタイマーに対する待遇等の説明義務

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長

先日入社したパートさんに「私の時給はどのようにしたら上がるのですか?」と尋ねられました。当社では、正社員の昇給時期に、勤務成績が優秀なパートさんについて個別に時給を引上げているのですが、このような説明をする必要があるのでしょうか。

社労士

はい、パートタイマーを雇ったときには賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用など 総務部長について、説明する義務があります。例えば「給与はどのように決まるのか」ということや「どのような教育訓練を実施しているのか」等です。

総務部長

そうなのですか。どのような方法で説明するのでしょうか。

社労士

口頭で行うことが原則ですが、説明すべき事項が漏れなく記載されていて、容易に理解できる内容となっていれば、文書を交付すること等も認められています。

総務部長

なるほど、わかりました。一度まとめて、パートさんに渡せるようなものを作ってみます。

社労士

これ以外にも、「正社員への転換制度にはどのようなものがあるか」といった質問が寄せられたときにも、説明をする義務があります。

総務部長

当社では、勤続3年以上の者で、本人が希望し、上司からの推薦があるときに正社員登用試験を受けることができるので、この内容を説明することになりますね。

社労士

はい、そうですね。また、大企業では今年4月から、中小企業では来年4月から、正社員と非正規社員の不合理な待遇差の禁止(いわゆる同一労働同一賃金)が始まります。これとともに、非正規社員に対する待遇に関する説明義務が強化され、非正規社員から求めがあった場合には、待遇差の内容や理由を説明することが義務となります。

総務部長

パートさんから「正社員には通勤手当が支給されるのに、私には支給されないのはなぜか?」という質問に答える必要があるということですね。

社労士

そうですね。正社員と非正規社員の不合理な待遇差の是正はもちろん、これに加え非正規社員から説明を求められたときに対応できるよう、いまから待遇差の整理と必要に応じて是正をし、説明できるように準備しておきましょう。

【ワンポイントアドバイス】

  1.  非正規社員の雇入れ時には、賃金、教育・訓練、福利厚生施設の利用など雇用管理上の措置の内容を説明する義務がある(※)。
  2.  非正規社員から求めがあったときには、待遇差の内容や理由を説明する義務が今後課せられる。
  3. 説明は口頭で行う他、文書を交付することも考えられる。

※フルタイムの有期労働者についても同一労働同一賃金の施行時期に義務化される。

(次号に続く)

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

介護事業所様向け情報(労務)2月号②

パートタイマーに対する待遇等の説明義務

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長

先日入社したパートさんに「私の時給はどのようにしたら上がるのですか?」と尋ねられました。当社では、正社員の昇給時期に、勤務成績が優秀なパートさんについて個別に時給を引上げているのですが、このような説明をする必要があるのでしょうか。

社労士

はい、パートタイマーを雇ったときには賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用など 総務部長について、説明する義務があります。例えば「給与はどのように決まるのか」ということや「どのような教育訓練を実施しているのか」等です。

総務部長

そうなのですか。どのような方法で説明するのでしょうか。

社労士

口頭で行うことが原則ですが、説明すべき事項が漏れなく記載されていて、容易に理解できる内容となっていれば、文書を交付すること等も認められています。

総務部長

なるほど、わかりました。一度まとめて、パートさんに渡せるようなものを作ってみます。

社労士

これ以外にも、「正社員への転換制度にはどのようなものがあるか」といった質問が寄せられたときにも、説明をする義務があります。

総務部長

当社では、勤続3年以上の者で、本人が希望し、上司からの推薦があるときに正社員登用試験を受けることができるので、この内容を説明することになりますね。

社労士

はい、そうですね。また、大企業では今年4月から、中小企業では来年4月から、正社員と非正規社員の不合理な待遇差の禁止(いわゆる同一労働同一賃金)が始まります。これとともに、非正規社員に対する待遇に関する説明義務が強化され、非正規社員から求めがあった場合には、待遇差の内容や理由を説明することが義務となります。

総務部長

パートさんから「正社員には通勤手当が支給されるのに、私には支給されないのはなぜか?」という質問に答える必要があるということですね。

社労士

そうですね。正社員と非正規社員の不合理な待遇差の是正はもちろん、これに加え非正規社員から説明を求められたときに対応できるよう、いまから待遇差の整理と必要に応じて是正をし、説明できるように準備しておきましょう。

【ワンポイントアドバイス】

  1.  非正規社員の雇入れ時には、賃金、教育・訓練、福利厚生施設の利用など雇用管理上の措置の内容を説明する義務がある(※)。
  2.  非正規社員から求めがあったときには、待遇差の内容や理由を説明する義務が今後課せられる。
  3. 説明は口頭で行う他、文書を交付することも考えられる。

※フルタイムの有期労働者についても同一労働同一賃金の施行時期に義務化される。

(次号に続く)

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ヒューマンスキルコンサルティング
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医療事業所様向け情報(労務)2月号①

高年齢者の雇用状況と来春にも努力義務化が予定される70歳までの就業機会確保

通常国会において、改正高年齢者雇用安定法案が審議され、2021年4月にも70歳までの就業機会確保が努力義務化される方向となっています。そこで今回は厚生労働省の令和元年「高齢者の雇用状況」の集計結果から現在の高齢者雇用の状況を見た上で、改正法案の概要についてとり上げます。

1.65歳定年の状況と66歳以上働ける制度のある企業の状況

①65歳定年の企業

今回の集計結果をみると、定年を65歳にする企業は27,713社(対前年2,496社増加)で、報告した企業全体の17.2%となっています。企業規模別にみると、以下のようになっており、企業規模に関わらず、65歳定年としている企業がこの1年間で概ね1割増加していることが分かります。

  • 中小企業:25,938社(対前年2,253社増加)報告した中小企業全体の17.9%
  • 大企業:1,775社(対前年243社増加)報告した大企業全体の10.6%

②66歳以上働ける企業

66歳以上働ける制度のある企業は49,638社(対前年6,379社増加)で、報告した企業全体の30.8%を占めています。企業規模別にみると、以下のようになっています。

  • 中小企業:45,392社(対前年5,693社増加)報告した中小企業全体の31.4%
  • 大企業:4,246社(対前年686社増加)報告した大企業全体の25.3%

また、66歳以上働ける制度のある企業の状況をみると、報告した全企業の上位3つの制度は「基準該当者を66歳以上まで継続雇用する」が10.3%、「その他の制度で66歳以上まで雇用する(※)」8.8%、「希望者全員を66歳以上まで継続雇用する」6.8%となっています。※「その他の制度で66歳以上まで雇用する」とは、希望者全員や基準該当者を66歳以上まで継続雇用する制
度は導入していないが、企業の実情に応じて何らかの仕組みで66歳以上まで働くことができる制度を導入している場合を指しています。

2.70歳までの就業機会確保の方向性

現在の継続雇用年齢は65歳までとなっていますが、企業に対して70歳までの就業機会の確保措置を努力義務とする改正法案が今春の通常国会で審議される予定となっています。この就業機会確保措置の選択肢としては、以下のものが挙げられています。

  1. 定年廃止
  2. 70歳までの定年延長
  3. 継続雇用制度導入(現行65歳までの制度と同様、子会社・関連会社での継続雇用を含む)
  4. 他の企業(子会社・関連会社以外の企業)への再就職の実現
  5. 個人とのフリーランス契約への資金提供
  6. 個人の起業支援
  7. 個人の社会貢献活動参加への資金提供

各種報道によれば、この法案は通常国会で成立し、早ければ2021年4月に施行される見込みとなっています。影響の大きい改正法案だけに、継続して国会審議を注目しておきたいものです。

高齢者の雇用を進めるにあたっては、職場の安全と健康管理の取組みが不可欠となります。働くことができる制度の整備とともに、従業員に長期間、職場で活躍してもらうためのしくみの検討も必要になります。

(次号に続く)

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