次期法改正で義務付けられる感染対策・災害対策ついて確認しておきましょう

介護保険法改正・報酬改定の全貌が明らかに

昨年の春から始まり、コロナ禍の中でもなんとか継続されてきた介護給付費分科会。20回以上に亘る議論が重ねられ、2021118日(月)にようやく全ての内容が固まってまいりました。大別すると「介護保険法・省令等の変更」と「介護報酬の改定」の2種類に分かれる本情報ですが、報酬改定についてはサービス種類が多岐に亘る中、あまりにも幅広な内容になってしまうため、本ニュースレターで採り上げるのは不適当である、というは判断のもと、本日は多く(内容によっては全て)の事業者にとって関係してくるであろうテーマ「感染症対策」「災害対策」について内容を4点ほど抜粋し、コメントや解説を加えてまいります(報酬改定内容については是非、皆様各自で追いかけていただければと思います。もしご質問等ございましたらいつでも気軽にご度相談下さい)。

「日頃からの備えと業務継続に向けた取り組みの推進」について(抜粋)

では、早速、中身を確認してまいりましょう。

まず1点目は、全てのサービスに関わる「感染症対策の強化」についてです(以下)。

感染症対策の強化【全サービス】

■ 介護サービス事業者に、感染症の発生及びまん延等に関する取組の徹底を求める観点から、以下の取組を義務づける。【省令改正】

・施設系サービスについて、現行の委員会の開催、指針の整備、研修の実施等に加え、訓練(シミュレーション)の実施

・その他のサービスについて、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等

(※3年の経過措置期間を設ける)

施設系サービスにおいては従来より設置が必須となっていた対策委員会ですが、こちらがサービスを問わず、全ての介護事業者にとって「義務」となりました(厚生労働省が敢えて「義務」という言葉を選択していることにも留意が必要です)。3年の猶予期間はあるものの、8期(20214月~20243月)中に本内容を実践しなければ「運営義務違反」に問われることになってしまいます。こちらについては早めに体制整備含め、然るべき準備をされることが求められてくるでしょう。

次に2点目、こちらも全サービスを対象とした内容「業務継続に向けた取組の強化」についてです(以下)。

業務継続に向けた取組の強化【全サービス】

■ 感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける。【省令改正】

(※3年の経過措置期間を設ける)

こちらも上記感染症対策と同様、「業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等」の内容が全ての事業者に「義務」付けられることになります。

「業務継続に向けた計画」とは、一般的にBCPBusiness Continuity Plan)と呼ばれるものです。甚だ私見ではありますが、大企業は別にして、全ての産業・業界を含め、中小企業でBCPを策定されている企業などは一般的に極めて少ない(と、言いますか、殆ど聞いたことがない)のではないかと思われます。そのような状況の中、規模の大小を問わず、全ての介護事業者にBCPの設置が「義務」付けられた、ということは、換言すれば、介護事業はそれだけ社会的な使命を背負っている、ということと同義であり、災害時においても特に、業務継続を担保しなければならない事業である、という位置づけがあらためて社会の中で明確になった、と理解すべきではないでしょうか(実際、コロナ禍の中で利用を控えられた高齢者のADLが一気に低下してしまったり、認知症状の進行が加速されたり、という事態に直面された方も相当数いらっしゃったのではないかと思います)。その意味では前述の感染対策同様、この「義務」という言葉に潜む意図をしっかり読み取り、BCPについては単に「形式上揃えました」という「借り物レベル」で終わらせるべきでないことは自明です(釈迦に説法であれば恐縮です)。また、上記で厚生労働省が提示している「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」も大いに参考にすべきかとは思いますが、災害対策の対象は「感染症」だけではなく、自然災害や火災等も対象に入ってきます。是非、専門家にも相談しながら、実効性が高く、職員の皆様の安心感につながるようなBCPの策定、並びに運用を行っていただきたいと思います(人材の確保・定着にも少なからず影響を及ぼすものと思われますので)。

次に3点目、「通所系サービス」「短期入所系サービス」「特定、施設系サービス」を対象とした「災害への地域と連携した対応の強化について」を確認してまいりましょう。

災害への地域と連携した対応の強化【通所系サービス、短期入所系サービス、特定、施設系サービス】

■ 災害への対応においては、地域との連携が不可欠であることを踏まえ、非常災害対策(計画策定、関係機関との連携体制の確保、避難等訓練の実施等)が求められる介護サービス事業者(通所系、短期入所系、特定、施設系)を対象に、小多機等の例を参考に、訓練の実施に当たって、地域住民の参加が得られるよう連携に努めなければならないこととする。【省令改正】

地域密着サービスなどではそもそも、地域の方々と協働する形での「運営推進会議」の設置が必須となっていること等含め、上記「地域と連携した対応の強化」は比較的実践しやすいのかな、とも思われますが、今まで地域との接点を有してこなかったサービス施設・事業所については実践するにあたり、頭を悩ませる内容かもしれません。そのような施設・事業所様は逆にこの機会をチャンスと捉え、ここより積極的に地域と関わっていく契機としていくことが求められるものと思われます。

最後に、通所介護等の事業所規模別の報酬等に関する対応を確認させていただきます(こちらは下記をお読みいただければ十分だと思われますので、コメント・解説等は割愛させていただきます。いずれかに該当する可能性が高い事業者様は速やかに確認の上、申請を行う段取りを問止めることをおススメする次第です)。

通所介護、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護

○ 通所介護等の報酬について、感染症や災害の影響により利用者数が減少した場合に、状況に即した安定的なサービス提供を可能とする観点から、以下の見直しを行う。

ア より小さい規模区分がある大規模型について、事業所規模別の報酬区分の決定にあたり、前年度の平均延べ利用

者数ではなく、延べ利用者数の減が生じた月の実績を基礎とすることができることとする。【通知改正】

イ 延べ利用者数の減が生じた月の実績が前年度の平均延べ利用者数から5%以上減少している場合、3か月間(※

2)、基本報酬の3%の加算を行う(※3)。【告示改正】

現下の新型コロナウイルス感染症の影響による前年度の平均延べ利用者数等から5%以上の利用者減に対する

適用にあたっては、年度当初から即時的に対応を行う。

※1 ア・イともに、利用者減の翌月に届出、翌々月から適用。利用者数の実績が前年度平均等に戻った場合はその翌月に届出、翌々月まで。

※2 利用者減に対応するための経営改善に時間を要するその他の特別の事情があると認められる場合は一回の延長を認める。

※3 加算分は区分支給限度基準額の算定に含めない。

 

実行に備え、更なる業務効率化の推進を

以上、簡易ながら、今回は各サービス毎の個別の改定内容ではなく、多くのサービスに共通する内容からピックアップし、概要やポイントについてお伝えさせていただきました。上記内容を踏まえる中、「昨今、声高に叫ばれている“業務効率化”と逆行するような改正内容ではないか?」との意見も多く、実際にそのような側面も確かに否めないものと思われます。他方、社会保険を活用する形で事業を行っている介護事業として、その社会的使命から逆算的に考えれば上記内容は何らおかしな話ではなく、むしろ「今まで無かったことの方がおかしい」、という意見も一定程度存在しています。事業者としてはそのような社会的要請を踏まえ、自社の事業継続の可能性向上は勿論、法人によっては災害時における地域のセーフティネットとしても機能することを踏まえ、災害対策について、あらためて価値高い仕組みを法人の中に落とし込んでいく必要があるでしょう(と同時に、職員の業務負荷を軽減させる意味においても、その他業務の効率化にも今まで以上に注力していく必要性もあることも付言させていただきます)。

私たちも今後、上記に関する有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。

※本ニュースレターの引用元資料はこちら

199回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16033.html

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