コラム
福祉施設でみられる人事労務Q&A
『退職代行業者から「職員が退職する」という申出の連絡』
Q:
退職代行業者※と名乗るところから、当施設の無断欠勤している職員について「〇月〇日付けで退職する」という郵便が届きました。その職員とは現在、連絡がとれない状況にあります。どのようにすればよいのでしょうか?
A:
退職代行業者は「使者」という位置づけになるため、その退職の意思表示が本人のものなのかを職員に確認する必要があります。電話やメールがつながらず職員と連絡がとれない状況にあれば、退職代行業者から届いた書面が本人のものか、自筆や捺印などで確認します。それでも本人の意思か確認がとれない場合には、退職代行業者を通じて本人の意思を確認しましょう。
詳細解説:
1.退職代行業者とは
職員が退職するにあたり、自ら申出をすることで、使用者から引き留めなどを受け、退職のトラブルに発展することを懸念する傾向が強まっています。
このような状況を受けて職員の代わりに退職の申出をする退職代行業者が出現し、更に使用者に報告せず気軽に辞めることができると考える人の間で利用が広まっています。
2.退職代行業者の法的な位置づけ
この退職代行業者の法的な位置づけとして「代理」と「使者」が考えられますが、弁護士法により弁護士でなければ職員の「代理」をすることができないことから、「使者」という立場となります。使者としての退職代行業者は、職員本人が行う退職の意思表示を、使用者に届けることになり、交渉などを行うことはできません。
3.退職代行業者から連絡がきた場合の対応
退職代行業者から連絡がきたときは、一般的にはその退職の意思表示が職員本人の意思によるものかを確認する必要があります。確認の方法としては、通常、直接本人に連絡をすることになります。退職代行業者から届いた文書の中に、本人への直接の連絡を禁止するような文言や、退職代行業者あてに連絡してほしい旨の文言が入っていることがありますが、この内容に強制力はありません。
本人と連絡がとれない場合は、退職代行業者から届いた書面が本人のものか、自筆や捺印などで確認します。そして、確認したものの、本人のものなのか確認できない場合は、本人からどのような依頼があったのか退職代行業者に確認したり、本人の意思を確認できる資料の送付を依頼したりなどするとよいでしょう。
退職代行業者からの連絡が、職員本人の意思である場合、退職の申出は認めざるをえません。ただし、何の対応もせずに認めてしまうことで、職員間で情報が共有され、今後も退職代行業者を通じた申出が行われる可能性があります。そのため、退職の申出のルールを労使で確認しておきましょう。
(次号に続く)
介護サービス事業所の増減
ここでは2021 年1 月に発表された調査結果※から、介護サービスごとの施設数や事業所数の増減をみていきます。
居宅介護支援事業所が最も多い
上記調査結果から、2019 年10 月1 日時点の介護サービス(以下、サービス)ごとの施設数や事業所数と、2018 年からの増減率をまとめると、下表のとおりです。
事業所数が最も多いのは、居宅介護支援事業所で40,118 事業所となりました。次いで、訪問介護が34,825 事業所、通所介護も24,035 事業所となっています。反対に最も少ないのは、夜間対応型訪問介護の228 事業所です。次いで、介護医療院が245 施設、地域密着型特定施設入居者生活介護も352 施設となりました。
増加したサービスが半数以上を占める
2018 年からの増減率をみると、36 サービス中、22 のサービスが2018 年から増加しました。増減率が最も高いのは、介護医療院の295.2%です。複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)も14.8%の増加で、この2 サービスが10%以上の増加となっています。その他、5%以上の増加となったのは、地域密着型特定施設入居者生活介護、訪問看護ステーション、介護予防訪問看護ステーションでした。
一方で、14 のサービスが2018 年から減少しています。最も減少幅が大きいのは、介護療養型医療施設のマイナス18.8%です。唯一の二けた減少となりました。次いで、介護予防訪問入浴介護がマイナス5.2%、訪問入浴介護もマイナス5.0%となりました。訪問入浴系サービスの減少が目立ちます。
全国の状況はこのようになりましたが、貴施設の周辺の状況はいかがでしょうか。
※厚生労働省「令和元年介護サービス施設・事業所調査」
2019 年10 月1 日現在で活動中の施設・事業所について集計したものです。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service19/index.html
(次号に続く)
どうなる? 令和3 年度介護報酬改定
感染症への不安が色濃く残る中、4 月に施行される介護報酬改定は0.70%のプラス改定に落ち着きました。今改定では、人材不足や自立支援強化等の従来の視点に加え、感染症や災害への対応力強化も重視されています。
9 月末までは0.05%の上乗せ
改定率の決定に併せ、新型コロナウイルス感染症への対応に配慮し、令和3 年4 月から令和3 年9 月末までの半年間、特例的な評価として0.05%が上乗せされることも合意されました。
令和3 年度改定で追加された新しい柱
今回の改定では、昨今の感染症や大規模災害等の経験から、緊急時でも必要なサービス提供が途切れることなく継続できる対応力の強化が、新たな柱として加わりました。
感染症対策と事業継続の取組を義務化
3 年間の経過措置が設けられた上で、次の2つが義務づけられます。
① 感染症対策の強化
委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シミュレーションの実施)等
② 業務継続に向けた取組の強化
感染症や災害発生時に必要な介護サービスが継続的に提供できる体制のための、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施
通所介護等の報酬の見直し
感染症等で利用者減となった場合の通所介護等の報酬について、次の見直しが行われます。
① 事業所規模別の報酬区分の決定にあたって、より小さい規模区分がある大規模型について、前年度の平均延べ利用者数ではなく、感染症や災害の影響により延べ利用者数の減が生じた月の実績を基礎とすることを可能に。
② 通所介護等について、感染症や災害の影響により延べ利用者数の減が生じた月の実績が前年度の平均延べ利用者数から一定割合以上減少している場合、一定期間、臨時的な利用者の減少による利用者一人あたりの経費の増加に対応するための評価を行う。
昨年6 月以来、新型コロナウイルス感染拡大の深刻な影響を受けた通所介護サービス事業者に対し、毎月一定回数まで2 区分上位の報酬を算定することを認めた特例が設けられ、半数以上の事業所の利用がありましたが、上記の改定に伴い、これが廃止される見込みです。今後の発表にも引き続きご注目ください。
参考:厚生労働省「令和3 年度介護報酬改定に関する審議報告」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000188370_00002.html
(次号に続く)
業務災害にもなりうる新型コロナへの感染と労働者死傷病報告の提出
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大が続く中、業務中に新型コロナに感染する事例が見受けられます。このようなときは、業務災害として労災保険の給付の対象となります。ここでは労災認定の事例を取り上げるとともに、業務災害として休業が発生したときに提出が必要な労働者死傷病報告について確認します。
1.労災請求件
厚生労働省が公表している新型コロナに関する労災請求件数は、2021年1月29日現在で3,836件となり、そのうち1,912件について支給決定が行われています。
これを業種別で確認すると、8割近くが医療従事者等の請求となっているものの、その他の業種でも請求が行われ、支給決定されています。
厚生労働省が挙げている労災認定事例では、飲食店店員について以下のような判断により支給決定がされています。
飲食店店員のAさんは、店内での業務に従事していたが、新型コロナウイルス感染者が店舗に来店していたことが確認されたことから、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
労働基準監督署における調査の結果、Aさん以外にも同時期に複数の同僚労働者の感染が確認され、クラスターが発生したと認められた。
以上の経過から、Aさんは新型コロナウイルスに感染しており、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断されたことから、支給決定された。
このように、状況によっては医療従事者等以外であっても、業務災害として認められることがあります。
2.労働者死傷病報告の提出
業務災害により休業した場合には、労働者死傷病報告の提出が必要です。業務中に新型コロナに感染・発症して休業した場合でも同様であり、遅滞なく、事業場を所轄する労働基準監督署に提出する必要があります。
この際、労働者死傷病報告(様式第23号)の傷病名には「新型コロナウイルス感染による肺炎」と記入し、「災害の発生状況及び原因」欄には、感染から発症までの経緯を簡潔に記入します。また、発生日時は陽性判定日ではなく、傷病の症状が現れた日付を記入します。
会社で感染対策を十分に行っていても、特に不特定多数の人と関わるような業務では、新型コロナに感染する可能性があります。新型コロナの感染者が発生した際には、会社としても感染原因、感染経路、発症日、症状等を明確に把握するとともに、必要に応じ業務災害としての申請を行う必要があります。
(次号に続く)
業務災害にもなりうる新型コロナへの感染と労働者死傷病報告の提出
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大が続く中、業務中に新型コロナに感染する事例が見受けられます。このようなときは、業務災害として労災保険の給付の対象となります。ここでは労災認定の事例を取り上げるとともに、業務災害として休業が発生したときに提出が必要な労働者死傷病報告について確認します。
1.労災請求件
厚生労働省が公表している新型コロナに関する労災請求件数は、2021年1月29日現在で3,836件となり、そのうち1,912件について支給決定が行われています。
これを業種別で確認すると、8割近くが医療従事者等の請求となっているものの、その他の業種でも請求が行われ、支給決定されています。
厚生労働省が挙げている労災認定事例では、飲食店店員について以下のような判断により支給決定がされています。
飲食店店員のAさんは、店内での業務に従事していたが、新型コロナウイルス感染者が店舗に来店していたことが確認されたことから、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
労働基準監督署における調査の結果、Aさん以外にも同時期に複数の同僚労働者の感染が確認され、クラスターが発生したと認められた。
以上の経過から、Aさんは新型コロナウイルスに感染しており、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断されたことから、支給決定された。
このように、状況によっては医療従事者等以外であっても、業務災害として認められることがあります。
2.労働者死傷病報告の提出
業務災害により休業した場合には、労働者死傷病報告の提出が必要です。業務中に新型コロナに感染・発症して休業した場合でも同様であり、遅滞なく、事業場を所轄する労働基準監督署に提出する必要があります。
この際、労働者死傷病報告(様式第23号)の傷病名には「新型コロナウイルス感染による肺炎」と記入し、「災害の発生状況及び原因」欄には、感染から発症までの経緯を簡潔に記入します。また、発生日時は陽性判定日ではなく、傷病の症状が現れた日付を記入します。
会社で感染対策を十分に行っていても、特に不特定多数の人と関わるような業務では、新型コロナに感染する可能性があります。新型コロナの感染者が発生した際には、会社としても感染原因、感染経路、発症日、症状等を明確に把握するとともに、必要に応じ業務災害としての申請を行う必要があります。
(次号に続く)
業務災害にもなりうる新型コロナへの感染と労働者死傷病報告の提出
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大が続く中、業務中に新型コロナに感染する事例が見受けられます。このようなときは、業務災害として労災保険の給付の対象となります。ここでは労災認定の事例を取り上げるとともに、業務災害として休業が発生したときに提出が必要な労働者死傷病報告について確認します。
1.労災請求件
厚生労働省が公表している新型コロナに関する労災請求件数は、2021年1月29日現在で3,836件となり、そのうち1,912件について支給決定が行われています。
これを業種別で確認すると、8割近くが医療従事者等の請求となっているものの、その他の業種でも請求が行われ、支給決定されています。
厚生労働省が挙げている労災認定事例では、飲食店店員について以下のような判断により支給決定がされています。
飲食店店員のAさんは、店内での業務に従事していたが、新型コロナウイルス感染者が店舗に来店していたことが確認されたことから、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
労働基準監督署における調査の結果、Aさん以外にも同時期に複数の同僚労働者の感染が確認され、クラスターが発生したと認められた。
以上の経過から、Aさんは新型コロナウイルスに感染しており、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断されたことから、支給決定された。
このように、状況によっては医療従事者等以外であっても、業務災害として認められることがあります。
2.労働者死傷病報告の提出
業務災害により休業した場合には、労働者死傷病報告の提出が必要です。業務中に新型コロナに感染・発症して休業した場合でも同様であり、遅滞なく、事業場を所轄する労働基準監督署に提出する必要があります。
この際、労働者死傷病報告(様式第23号)の傷病名には「新型コロナウイルス感染による肺炎」と記入し、「災害の発生状況及び原因」欄には、感染から発症までの経緯を簡潔に記入します。また、発生日時は陽性判定日ではなく、傷病の症状が現れた日付を記入します。
会社で感染対策を十分に行っていても、特に不特定多数の人と関わるような業務では、新型コロナに感染する可能性があります。新型コロナの感染者が発生した際には、会社としても感染原因、感染経路、発症日、症状等を明確に把握するとともに、必要に応じ業務災害としての申請を行う必要があります。
(次号に続く)
2021年4月より変わる36協定届の様式
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長
当社では36協定を4月1日からの1年間で締結しており、届出を3月中に行う予定です。4月より36協定届(時間外・休日労働に関する協定届)の様式が変更になると聞きましたが、新様式と旧様式のどちらで届け出ればよいのでしょうか?
社労士
3月中に届出を行うのであれば、原則として旧様式を使うことになります。今回、どちらの様式を使うのかは、届出日が改正後の労働基準法施行規則の施行日である2021年4月1日の前であるか、後であるかで判断します。
総務部長
なるほど。届出日がポイントですね。
社労士
ただし、新様式でも届け出ることを妨げるものではないとされています。ここで、今回の新様式で変更になった点をお伝えしましょう。変更点は2点あり、1点目が押印・署名が廃止されたことで、2点目が36協定の協定当事者に関するチェックボックスが新設されたことです。
総務部長
この押印・署名の廃止は、行政手続きにおいて押印廃止が進められていることの一つですね。
社労士
はい。押印・署名が廃止されますが、記名をする必要はあります。一方、36協定の協定当事者に関するチェックボックスについては、労働者の過半数代表者が適切に選任されていない状況が一部でみられることから、適切な選任となっているかを確認するために設けられました。具体的には過半数代表者が、事業場のすべての労働者の過半数を代表する者であること(※)と、管理監督者ではなく使用者の意向に基づき選任された者ではないことについて、2つのチェックボックスが設けられています。
※過半数労働組合の場合には事業場のすべての労働者の過半数で組織する労働組合であること
総務部長
なるほど。
社労士
これら2点の変更があるものの、3月中に新様式を使って届出をする場合は、このチェックボックスにチェックをする必要はありませんが、押印・署名は原則必要となります。よって今回については旧様式を使い、2022年4月からの36協定届では新様式を使う方がよさそうですね。
【ワンポイントアドバイス】
1. 2021年4月より36協定届の様式が変更され、押印・署名が廃止となり、36協定の協定当事者に関するチェックボックスが新設された。
2. 2021年4月1日以降の期間を対象とした36協定届は、原則として届出日が2021年3月31日までは旧様式、2021年4月1日以降は新様式を使う。
(次号に続く)
2021年4月より変わる36協定届の様式
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長
当社では36協定を4月1日からの1年間で締結しており、届出を3月中に行う予定です。4月より36協定届(時間外・休日労働に関する協定届)の様式が変更になると聞きましたが、新様式と旧様式のどちらで届け出ればよいのでしょうか?
社労士
3月中に届出を行うのであれば、原則として旧様式を使うことになります。今回、どちらの様式を使うのかは、届出日が改正後の労働基準法施行規則の施行日である2021年4月1日の前であるか、後であるかで判断します。
総務部長
なるほど。届出日がポイントですね。
社労士
ただし、新様式でも届け出ることを妨げるものではないとされています。ここで、今回の新様式で変更になった点をお伝えしましょう。変更点は2点あり、1点目が押印・署名が廃止されたことで、2点目が36協定の協定当事者に関するチェックボックスが新設されたことです。
総務部長
この押印・署名の廃止は、行政手続きにおいて押印廃止が進められていることの一つですね。
社労士
はい。押印・署名が廃止されますが、記名をする必要はあります。一方、36協定の協定当事者に関するチェックボックスについては、労働者の過半数代表者が適切に選任されていない状況が一部でみられることから、適切な選任となっているかを確認するために設けられました。具体的には過半数代表者が、事業場のすべての労働者の過半数を代表する者であること(※)と、管理監督者ではなく使用者の意向に基づき選任された者ではないことについて、2つのチェックボックスが設けられています。
※過半数労働組合の場合には事業場のすべての労働者の過半数で組織する労働組合であること
総務部長
なるほど。
社労士
これら2点の変更があるものの、3月中に新様式を使って届出をする場合は、このチェックボックスにチェックをする必要はありませんが、押印・署名は原則必要となります。よって今回については旧様式を使い、2022年4月からの36協定届では新様式を使う方がよさそうですね。
【ワンポイントアドバイス】
1. 2021年4月より36協定届の様式が変更され、押印・署名が廃止となり、36協定の協定当事者に関するチェックボックスが新設された。
2. 2021年4月1日以降の期間を対象とした36協定届は、原則として届出日が2021年3月31日までは旧様式、2021年4月1日以降は新様式を使う。
(次号に続く)
2021年4月より変わる36協定届の様式
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長
当社では36協定を4月1日からの1年間で締結しており、届出を3月中に行う予定です。4月より36協定届(時間外・休日労働に関する協定届)の様式が変更になると聞きましたが、新様式と旧様式のどちらで届け出ればよいのでしょうか?
社労士
3月中に届出を行うのであれば、原則として旧様式を使うことになります。今回、どちらの様式を使うのかは、届出日が改正後の労働基準法施行規則の施行日である2021年4月1日の前であるか、後であるかで判断します。
総務部長
なるほど。届出日がポイントですね。
社労士
ただし、新様式でも届け出ることを妨げるものではないとされています。ここで、今回の新様式で変更になった点をお伝えしましょう。変更点は2点あり、1点目が押印・署名が廃止されたことで、2点目が36協定の協定当事者に関するチェックボックスが新設されたことです。
総務部長
この押印・署名の廃止は、行政手続きにおいて押印廃止が進められていることの一つですね。
社労士
はい。押印・署名が廃止されますが、記名をする必要はあります。一方、36協定の協定当事者に関するチェックボックスについては、労働者の過半数代表者が適切に選任されていない状況が一部でみられることから、適切な選任となっているかを確認するために設けられました。具体的には過半数代表者が、事業場のすべての労働者の過半数を代表する者であること(※)と、管理監督者ではなく使用者の意向に基づき選任された者ではないことについて、2つのチェックボックスが設けられています。
※過半数労働組合の場合には事業場のすべての労働者の過半数で組織する労働組合であること
総務部長
なるほど。
社労士
これら2点の変更があるものの、3月中に新様式を使って届出をする場合は、このチェックボックスにチェックをする必要はありませんが、押印・署名は原則必要となります。よって今回については旧様式を使い、2022年4月からの36協定届では新様式を使う方がよさそうですね。
【ワンポイントアドバイス】
1. 2021年4月より36協定届の様式が変更され、押印・署名が廃止となり、36協定の協定当事者に関するチェックボックスが新設された。
2. 2021年4月1日以降の期間を対象とした36協定届は、原則として届出日が2021年3月31日までは旧様式、2021年4月1日以降は新様式を使う。
(次号に続く)
66歳以上まで働ける制度のある企業は全体の3分の1に
4月より改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会確保の努力義務がスタートします。この改正法への対応を検討するにあたり、現在の高年齢者の雇用制度の状況について、厚生労働省が公表した令和2年「高年齢者の雇用状況」集計結果(以下、「結果」という)の内容を確認しておきましょう。
1.66歳以上まで働ける制度のある企業
企業には、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況を厚生労働大臣に報告する義務があります。今回の結果は、この雇用状況を報告した従業員31人以上の企業164,151社についてまとめたものです。集計においては、従業員31人~300人規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としています。
まず、66歳以上まで働ける制度のある企業は54,802社で、前年より5,164社増加し、報告したすべての企業の33.4%を占めています。企業規模別にみると、中小企業は49,985社で前年より4,593社増加し、報告した中小企業の34.0%、大企業は4,817社で前年より571社増加し、報告した大企業の28.2%を占めています。実に3分の1の企業で、66歳以上まで働ける制度があるという状況になっています。
この66歳以上まで働ける制度のある企業の状況をより詳しくみると、基準該当者を66歳以上まで継続雇用する制度(基準該当者継続雇用制度)または希望者全員を66歳以上まで継続雇用する制度(希望者全員継続雇用制度)を導入している割合が高くなっています(下図参照)。
2.70歳以上まで働ける制度のある企業の状況
70歳以上まで働ける制度のある企業は51,633社で前年より4,975社増加し、報告したすべての企業の31.5%を占めています。これを企業規模別にみると、中小企業では47,172社で前年より4,427社増加し、報告した中小企業の32.1%、大企業では4,461社で前年より548社増加し、報告した大企業の26.1%を占めています。
このように66歳以降も働ける制度のある企業は増えており、年齢に関わらず人材を活用していこうという動きがみられます。
今回、70歳までの就業機会確保の努力義務がスタートすることに伴い、定年の引上げや65歳以降の雇用について検討される企業もあるでしょう。今後、検討をされる中でお困りごとがございましたら、当事務所までご連絡ください。
(次号に続く)