医療
財務省としての意見を発信する「財政制度分科会」が開催
年度が変わり、いよいよ2027年度法改正に向けての各論議論が展開され始めようとしている2026年5月。そんな折、「持続可能な社会保障制度の構築」というテーマに基づき、財政制度分科会が4月28日に開催されました。“国の金庫番”とも呼べる財務省が介護業界に対し、どのような改革案を突き付けているのか?今回は同省が作成した資料の中で特に介護事業者に関連するであろう論点の中から抜粋し、特に注視・認識しておいた方が良いと思われる10個の内容を採り上げ、お届けしてまいります。
財政制度分科会で採り上げられた、財務省から見た介護業界に対する見立て(意見)とは
では、早速、中身に移ってまいりましょう。ここでは本分科会で示された資料から抜粋・紹介する形で進めてまいります。先ずは、利用者負担の2割負担の範囲拡大についてです。(財務省の意見として認識しておいた方が宜しい箇所を太字・下線で強調しておりますのでご確認下さい)。
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○介護保険制度が2000年に創設されてから四半世紀が経過した。高齢者を社会全体で支え合うという役割を果たしてきた一方で、高齢化の進展により介護費用・保険料は大幅に増加しており、制度の持続可能性が危ぶまれる状況にある。 ○今後、現役世代の保険料負担の増加を抑制しつつ、制度の持続可能性を確保するため、令和9年度介護報酬改定に当たり、高齢化・人口減少下での負担の公平化や、給付の効率化・適正化を実施すべき。特に、保険料が増加する一方で、利用者負担がほぼ横ばいで推移していることを踏まえると、負担能力に応じた負担の在り方について検討するべき。 |
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○介護保険の利用者負担については、2割・3割負担の導入を進めてきたが、今後も、高齢化による介護費用の増加が見込まれる中で、給付と負担のバランスを確保し、保険料の伸びの抑制を図る観点から、利用者負担の更なる見直しを進めていくことが必要。 ○具体的には、負担能力に応じて、増加する介護費用をより公平に支え合う観点から、2割負担の対象者の拡大を図るべき。 |
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○利用者負担の2割負担の範囲拡大については、年収基準を引き下げ、配慮措置について、案1:負担増を当分の間、最大月0.7万円に抑える、案2:預貯金が一定額以下の者は、申請により1割負担に戻す、という案で検討を進めてきた。令和8年度予算の大臣折衝において「令和9年度の前までに結論を得る」とされたことに基づき、早急に結論を得て実施すべき。 ○今回の範囲拡大の目安とされた年金収入230~260万円という層は、介護サービスの利用者に占める割合としては限定的であり、現役時代の給与収入が730~870万円だった、大企業の課長~部長級まで昇進した層に相当し、こうした層は相応の金融資産を保有していることが多く、(2号保険料を負担する現役世代と比べても)一定の負担能力があると考えられる。 |
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○新たに2割負担になる際の負担増に関して、介護保険には、高額介護サービス費という、利用者負担額が上限(4.4万円/月)を超えた場合、超えた分を払い戻しする制度があるため、相対的に利用者負担が大きい施設介護の利用者(利用者負担は平均3.2万円/月)については、負担額が上限に達し、負担増額が抑えられる(負担増額は平均1.2万円/月)ことに留意が必要。 ○医療保険と合わせた負担に関しては、高額医療介護合算サービス費という、医療・介護の利用者負担額が上限(56万円/年。月換算で4.7万円)を超えた場合、超えた分を払い戻しする制度があるため、負担額が高額介護サービス費の上限(4.4万円/月)に達しているような利用者については、追加で負担する医療保険の負担額は限定的であり、外来特例の見直し等の医療保険の給付と負担の見直しと合わせても、過度な負担増にはならないと考えられる。 ○利用控えに対する懸念に関しては、過去、2割負担・3割負担導入による介護サービス利用への影響は限定的であり、一定以上の所得・資産のある利用者に対して、2割負担の範囲を一定程度拡大したとしても、介護サービスの利用控えに与える影響は限定的と考えられる。 |
続いて、ケアマネジメントの利用者負担と給付の在り方についてです。
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○ケアマネジメントについては、利用者負担を求めてこなかったが、登録制の対象となる住宅型有料老人ホームの入居者に係る新たな相談支援の類型を設けた上で、利用者負担を導入することとしている(今国会に提出している「社会福祉法等の一部を改正する法律案」に規定)。住宅型有料老人ホームについては、ケアマネジメントの利用者負担の導入に関する、施設介護と在宅介護との不均衡や、ケアマネジメントの役割軽視が、特に問題となっており、確実に利用者負担を導入すべき。 ○介護報酬は、利用者の要介護度が進むにつれて報酬が高くなる構造(注)だが、利用者のwell-beingや給付費抑制の観点からは、本来、要介護状態からの自立や、要介護度の改善を促進する構造にすべき。ケアマネジメントの報酬における自立・要介護度改善へのインセンティブ付けを検討すべき。 (注)例えば、ケアマネジメントの労働投入時間は、要支援1に対して要介護5は1.4倍だが、基本報酬は3.0倍となっている。 |
続いて、補足給付の見直しについてです。
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○介護施設に入居する低所得者の食費・居住費を軽減する仕組みである「補足給付」については、2005年にそれまで介護給付とされてきた食費・居住費が給付の対象外となったところ、介護施設に低所得者が多くいることを踏まえ、経過的に設けられたもの。その後、預貯金要件の追加や、所得区分の設定の精緻化など、累次の見直しが実施されてきた。令和8・9年度においても、所得区分の設定の精緻化と負担限度額のバランスをとる措置を実施する。 ○在宅で暮らす介護サービス利用者は、食費・居住費を全額自己負担していることを踏まえると、補足給付は公平性を欠く制度といえる。また、介護給付の対象外となった食費・居住費を軽減するという、低所得者対策としての側面が強い施策を、介護保険財源で実施し続けることは合理性を欠いており、引き続き見直しを実施するべき。 |
続いて、老健施設等の多床室の室料負担の見直しについてです。
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○介護施設の費用については、2005年度に、食費と個室の居住費(室料+光熱水費)を介護保険給付の対象外とする見直しを実施(多床室は食費と光熱水費のみ給付対象外)。2015年度に、介護老人福祉施設(特養老人ホーム)の多床室の室料負担を基本サービス費から除く見直しを実施。 ○しかし、介護老人保健施設・介護医療院の多床室については、室料相当分が介護保険給付の基本サービス費に含まれたままだった。2024年度介護報酬改定において見直しが行われたが、新たに室料負担が導入された対象施設は一部に限定。 |
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○介護医療院は、介護老人福祉施設(特養老人ホーム)と同様、家庭への復帰は限定的であり、利用者の「生活の場」となっている。 ○介護老人保健施設は、施設の目的が「居宅における生活への復帰を目指すもの」とされ、少なくとも3か月毎に退所の可否を判断することとされているが、一般的な医療機関でも長期入院の基準が180日となっている中、介護老人保健施設の平均在所日数は400日を超えている状況。 ○さらに、入所当初の利用目的が「他施設への入所待機」等という利用者が3割となっており、長期入所者の退所困難理由でも「特養の入所待ちをしている」が38%、「家族の希望」が25%となっている。 ○こうした利用実態等を踏まえ、居宅と施設の公平性を確保する観点から、介護老人保健施設・介護医療院のうち、2024年度介護報酬改定において室料負担の導入が見送られた類型についても、多床室の室料相当額を基本サービス費等から除外する見直しを実施することが考えられる。 |
続いて、令和9年度介護報酬改定に向けてについてです。
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○令和9年度介護報酬改定において、賃金・物価動向の変化に的確に対応する必要がある。 ○賃金に関しては、令和9年度の定例改定を待たず、令和8年度に期中改定を行い、介護現場の生産性向上を促進しつつ、介護分野の職員の処遇改善を実施する措置を講じた。介護人材の確保と、保険料負担の抑制の両立に向けて、介護報酬による賃上げのみならず、介護現場が生産性向上に取り組み、対応可能な利用者が増え、収益が増加することで、職員の賃上げと、さらなる生産性向上投資につながる、という好循環を実現することが重要。 ○介護サービスの利益率については、足元で、物価上昇の影響がある中でも、過去や他産業と比較して高い水準にあり、かつ、サービス類型ごとに大きな差がある状況。令和9年度改定においては、サービス類型や、サービス提供の実態に応じて、介護報酬を適正化する必要。 |
続いて、介護現場の生産性向上(経営の協働化・大規模化)についてです。
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○介護現場の生産性向上に向けては、事業所ごとの介護テクノロジーの導入(前回の財審で詳述)に加えて、事業所間のデータ連携により、ケアプランのやりとりをオンラインで完結する仕組みである「ケアプランデータ連携システム」の導入や、複数の社会福祉法人が参画し、各法人の自主性を保ちながら経営を協働化する「社会福祉連携推進法人」の設立等による経営の協働化・大規模化を推進していくべき。 ○こうした観点から、R7補正・R8改定における介護職員の賃上げの上乗せ措置について、訪問・通所系サービスでは、「ケアプランデータ連携システム」の導入か、「社会福祉連携推進法人」への所属が要件とされたところ。(注) このことを受けて、「ケアプランデータ連携システム」の導入割合が足元で顕著に上昇しており、職員の賃金の部分で生産性向上の取組をインセンティブ付けすることが効果的であることが示唆される。R9改定では、こうした取組の効果を踏まえて、さらなる生産性向上につながるよう、例えば、訪問・通所系サービスについて、介護記録ソフトなどの介護テクノロジーの導入も要件に追加するなど、要件の在り方を検討すべき。 (注)施設系サービスについては、介護テクノロジーの導入等が要件となっている「生産性向上推進体制加算」の取得か、「社会福祉連携推進法人」への所属が要件とされた。 |
続いて、住宅型有料老人ホームにおける介護報酬の適正化についてです。
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○住宅型有料老人ホームにおいては、併設しているケアマネジメントや訪問介護の事業所によるサービス提供が行われるケースが多く、点在する利用者宅に個別に訪問する場合と比べて、一カ所で集中的にサービス提供ができるため、移動時間をはじめ、利用者1人当たりの労働投入時間が少ない。 ○事業所と同一敷地内に居住する利用者にサービス提供する場合、「同一建物減算」が適用されるが、減算率は限定的(注)であり、住宅型有料老人ホームでサービスを提供する事業者は、利用者宅に訪問する事業者に比して、対労働投入時間で多く介護報酬を得ており、収支差率も良い傾向にある。(注)同一建物減算の減算率は、ケアマネジメントは▲5%、訪問介護は▲10~15%。 ○令和9年度介護報酬改定において、住宅型有料老人ホームにおいて提供されるケアマネジメント(新たな相談類型)・訪問介護について、点在する利用者宅に個別に訪問する場合との、サービス提供の実態の違い等を踏まえて、介護報酬を適正化すべき。 |
続いて、インセンティブ交付金の在り方の見直しについてです。
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○インセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金・介護保険保険者努力支援交付金)は、市町村・都道府県の、平均要介護度の変化等のアウトカム指標等に応じて交付する、介護予防等の事業に活用できる交付金である。 ○平均要介護度の変化等は、地域ごとの人口構造等の変化による部分も大きく、自治体の取組により改善するかは不透明であり、改善するとしても一定の期間を要すると考えられる。したがって、自治体が、交付額を増やすために介護予防に取り組むというインセンティブ構造が機能していないのではないか。 ○また、インセンティブ交付金は、毎年交付額が異なるため、自治体にとって安定的な財源と見なすことができず、事業の拡充や新規事業にはほとんど活用されずに、その8割以上が第1号保険料の削減のために活用されており、交付金により介護予防に取り組むという好循環が生まれていない。 ○したがって、インセンティブ交付金は縮小の上、自治体独自の取組を促進する役割を果たしている保険者機能強化推進交付金の「成果指向型配分枠」に重点化するなど、効果的な介護予防の推進と、保険者機能の発揮に資する見直しを実施すべき。 |
続いて、軽度者に対する生活援助サービス等の地域支援事業への移行についてです。
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○要支援者に対する訪問介護・通所介護については、地域の実情に応じた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を行う観点から、地域支援事業へ移行(2018年3月末に移行完了)。 ○今後も介護サービスの需要の大幅な増加が見込まれる中、生活援助型サービスをはじめ、全国一律の基準ではなく、人員配置や運営基準の緩和等を通じて、地域の実情に合わせた多様な人材や資源の活用を図り、必要なサービスを効率的に提供するための枠組みを構築する必要。 ○介護の人材や財源に限りがある中で、要介護者の中でも専門的なサービスをより必要とする重度の方へ給付を重点化していくとともに、生活援助等は地域の実情に応じて効率的に提供していく必要。このため、軽度者(要介護1・2)に対する訪問介護・通所介護についても地域支援事業への移行を目指し、段階的に、生活援助型サービスをはじめ、地域の実情に合わせた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を可能にすることが考えられる。 |
最後は、保険外サービスの活用についてです。
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○今後も増大し続ける多様な介護需要に対して、介護保険事業と介護保険外の民間企業による関連サービスで対応していくことが有益と考えられる。 ○介護保険事業者が保険内と保険外のサービスを柔軟に組み合わせてサービス提供することは、高齢者の多様なニーズに応え、国民の利便性向上に資するだけでなく、事業者にとっても効率的なサービス提供や、収益の多様化、経営基盤の強化に資すると考えられ、職員の賃上げにも還元可能。 ○現在、利用者保護や保険給付の適正な担保の観点から、サービスの明確な区分や説明責任の徹底といったルールを順守することで、介護事業者は保険内外のサービスを組み合わせて提供可能。しかし、介護事業者による保険外サービスの活用に当たっては、自治体によってルールの解釈が異なり、保険外サービスが認められないところもある(いわゆるローカルルール)、といった声も聞こえる。 ○ 自治体のローカルルールの実態把握を行った上で、国民の利便性向上に資するよう、介護保険外サービスの柔軟な運用を認めるべき。 |
国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を
以上、財政制度分科会内の資料「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)」より、介護事業者に直接関係のある部分から抜粋してお伝えさせていただきました。本内容は国全体の方針ではなく、あくまで「財務省」という一省庁の意見である、ということはしっかり認識しておく必要はあろうかと思いますが、それでも財務省の挙げる声には一定の重みがあることも否めない事実だと思われます。
事業者としては上記内容を踏まえつつ、「もしこれらの施策が実行された場合にどう対応するか?」について事前に頭を働かせておくことが重要だと言えるでしょう。私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。
※上記内容の参照先URLはこちら
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介護施設、保育園、クリニックの経営者・管理者様に向けて、メンタル疾患を抱えるスタッフの休職・復職における正しい実務対応を専門社労士が分かりやすく解説します。
「休職期間が終わっても復職できそうにないスタッフがいるけれど、解雇してもいいの?」
このようなお悩みを抱えていませんか?
実は、安易な「解雇」は不当解雇として深刻な法的リスクを伴います。
トラブルを防ぎ、円満に解決するための鍵は「就業規則」を活用した「自然退職(自動退職)」の仕組みです。
本動画では、対人サービスを担う現場ならではの特殊性を踏まえ、復職可否を判断する4つのステップや、就業規則で見直すべき重要チェックポイントを徹底解説します!
📌 タイムスタンプ(目次)
0:00 オープニング
0:45 メンタル疾患スタッフへの対応で「解雇」がハイリスクな理由
2:10 トラブルを未然に防ぐ「自然退職(自動退職)」の仕組み
3:40 そもそも「休職制度」とは何か?(経営者の人事命令としての発令)
5:15 復職可能かどうかの判断基準:4つのステップ
7:30 介護・保育・医療現場における「安全配慮義務」の特殊性
9:15 今すぐ確認!就業規則の健全性チェックリスト
10:45 まとめ:スタッフと組織を守る「強い就業規則」の作り方
社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング
当事務所は、介護事業所・保育園・クリニックに特化した人事労務コンサルティングを提供しています。現場の負担や特有の課題に寄り添い、トラブルを未然に防ぐ就業規則の作成から、労務問題の具体的な解決までトータルでサポートいたします。 現場の労務管理でお困りの経営者様、院長・園長先生は、どうぞお気軽にご相談ください。
クリニックを経営する中で、院長先生を最も悩ませる問題の一つが「スタッフの健康問題」、特にメンタルヘルス不調による休職です。
「うつ病で休職していた看護師が復職したものの、数週間でまた体調を崩して欠勤し始めた」 「休職と復職を何度も繰り返していて、現場のシフトが回らない」 「本人は『働ける』と言い張るが、明らかに業務ができる状態ではない……」
少人数で運営しているクリニックにとって、1人のスタッフが断続的に休むことのダメージは非常に大きいものです。他のスタッフへの負担が増え、院内の雰囲気も悪化し、最悪の場合は連鎖退職を招くリスクすらあります。
今回は、クリニックの労務管理に精通した「医療社労士」の視点から、休職・復職を繰り返す職員への正しい法的な対応論と、トラブルを未然に防ぐための就業規則のカスタマイズ術を徹底解説します。
1. 意外と知らない「休職」の法的性質と「休職命令」の正しい使い方
そもそも「休職制度」とは何のためにあるのでしょうか? まずは、クリニックの経営者として知っておくべき基本的な法的性質を整理しておきましょう。
休職制度は「法律で義務付けられたもの」ではない
実は、休職制度は年次有給休暇や産前産後休業などとは異なり、労働基準法などの法令で義務付けられた制度ではありません。この事実は、医療業界でも意外と知られていないポイントです。
つまり、「そもそも休職制度を設けるか否か」「休職期間を何ヶ月にするか」「どういった要件で適用するか」は、クリニックが独自に(就業規則で)自由に定めることができるのです。
【休職制度の本来の趣旨】 病気やケガの療養のために一定期間、労働が不可能となった職員に対し、雇用関係は維持しながらも、労務への従事を免除(猶予)する制度です。すぐに退職や解雇とするのではなく、回復までの「猶予期間」を設けることで、職員の雇用の安定を図ることを目的としています。
休職は「本人からの申請」を待つ必要はない
多くの院長先生が「本人が休職届を出してこないから、対応ができない」と誤解されています。しかし、休職扱いにするか否かは、産業医や主治医の診断書を根拠に、雇用主(クリニック側)が客観的に判断して決めるべきことです。
スタッフ本人からの申請がなくても、客観的に見て「これ以上、継続して働くことは難しい」と院長先生が判断すれば、業務命令(人事命令)として「休職命令」を通知することができます。
「休職命令書」の書式できちんと通知する
休職は重大な人事命令です。口頭や曖昧なメールだけで済ませるのではなく、必ず「休職命令書」という書面を用意し、以下の必要事項を記載して本人に交付してください。
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休職を命じる理由(病気療養のため等)
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休職の期間(◯年◯月◯日 〜 ◯年◯月◯日)
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休職中の猶予期間が満了した際、治癒していなければ退職・解雇となる旨
このステップを正しく踏んでおくことが、のちのちの労務トラブルを防ぐ強固な防衛策となります。どういった書式を用意すべきか迷った場合は、医療現場の労務管理に強い「クリニック社労士」に相談し、ひな形を作成してもらうのが安全です。
2. なぜクリニックで「休職と復職の無限ループ」が起きるのか?
特にメンタルヘルス不調(うつ病や適応障害など)の場合、以下のような悪循環に陥るケースが多々あります。
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メンタル不調で休職(期間:6ヶ月)
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4ヶ月ほど療養し、本人が「治ったので復職したい」と主張(医師の診断書を持参)
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復職させるが、1ヶ月後に再発して再び欠勤
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「新しい傷病(または別理由)」として、再びゼロから6ヶ月の休職期間がスタートする
このように、復職直後に再発して休職を繰り返されると、クリニック側はいつまで経っても「退職(雇用契約の終了)」の判断ができず、幽霊部員のような形で籍だけが残り続けることになります。この「無限ループ」の原因は、就業規則の不備にあります。
3. 【就業規則での対応策】トラブルを防ぐ「休職期間の通算規定」とは?
休職と復職を繰り返すスタッフに苦慮する事態を避けるためには、就業規則に「休職期間の通算(さん)規定」をあらかじめ設けておくことが絶対に欠かせません。
具体的には、就業規則に以下のような一文(条文)を追加します。
【就業規則の規定例】 「職員が復職後一定期間内に、同一傷病及び類似の傷病により再び欠勤または休職する場合は、新たに取得する休職期間と、従前に取得済みの休職期間を通算する。」
💡 通算規定を作る際の2つの重要ポイント
一般企業向けの就業規則テンプレートをそのまま使っているクリニックでは、この通算規定が抜けているか、あるいは内容が不十分なケースが多いです。「クリニックに詳しい社労士」がアドバイスする、実戦的なポイントは以下の2点です。
①「類似の傷病・症状」も対象に含めること
特にメンタル不調の場合、同じ原因や状態であっても、病院や医師が変わることで「うつ状態」「自律神経失調症」「適応障害」など、しばしば別の疾患名や症状名が付くことがあります。 就業規則に「同一の傷病名の場合のみ通算する」と書いてしまうと、「今回は違う病名だから別カウントです」と主張された際に対抗できません。必ず「類似の傷病・症状」という文言を入れて網羅性を高めましょう。
② 通算対象とする期間は「6ヶ月〜1年」に設定する
一般的には、復職してから「6ヶ月以内」または「1年以内」に再発した場合は、前回の休職期間の「続き(残り時間)」としてカウントする、という設計が多くなっています。
通算規定があると、どう変わるのか?(具体例)
例えば、クリニックの就業規則で「休職期間は最大6ヶ月」と定めており、通算規定(復職後6ヶ月以内)がある場合を考えてみましょう。
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最初の休職: スタッフが5ヶ月間休職し、その後復職した。
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復職後: わずか1ヶ月後に、再び類似のメンタル不調で働けなくなった。
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再休職の扱い: 通算規定があるため、休職期間はゼロからスタートしません。残りの期間である「1ヶ月だけ」が再休職として認められます。
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猶予期間の満了: この1ヶ月を経過しても病気が治癒しておらず、復職の見込みが立たない状況であれば、職員には厳しいようですが、就業規則の定めに従って「自然退職(または解雇)」という扱いになります。
もちろん、その後完全に病気が治癒し、その時点でクリニック側に人員の受け入れ余裕があれば、改めて「再雇用」を検討することは可能です。
こうした厳格かつ合理的な仕組みを整えておくことで、「いつ終わるかわからない休職対応」に院長先生や現場スタッフが疲弊していくのを防ぐことができます。
4. 人事評価制度や日頃のマネジメントとの連動も重要
休職・復職の問題は、就業規則という「守りのルール」だけでなく、日頃の「クリニック人事評価」という「攻めの仕組み」とも連動しています。
例えば、メンタル不調の引き金が「特定のスタッフによるハラスメント」や「過度な業務負担の偏り」である場合、いくらルールを厳しくしても根本的な解決にはなりません。
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各スタッフの業務量や役割が適切に評価されているか
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職種間のコミュニケーションが円滑に行われているか
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「体調に不安がある」段階で相談しやすい1on1(面談)の機会があるか
これらを日頃から「クリニック人事評価」やマネジメントの仕組みに組み込んでおくことで、スタッフが休職に至る手前で変化に気づき、ケアすることが可能になります。
5. まとめ:医療現場の労務トラブルは「医療社労士」へ相談を
スタッフの休職・復職を巡る問題は、一歩間違えると「不当解雇だ」「安全配慮義務違反だ」として、労働基準監督署への駆け込みや民事トラブル(裁判)に発展しやすい極めてデリケートな問題です。
世の中には多くの社会保険労務士がいますが、医療業界は夜勤やシフト制の複雑さ、専門職種のこだわりなど、一般企業とは異なる特殊な環境です。そのため、一般的な社労士ではクリニックの実情に即したアドバイスが難しいケースも少なくありません。
だからこそ、医療現場ならではの空気感やリスクを熟知した「クリニックに詳しい社労士」や「医療社労士」のサポートを受けることが、結果として最も迅速かつ安全に問題を解決する近道となります。
就業規則の休職規定を見直したい、現在休職中のスタッフへの対応に困っているという院長先生は、トラブルが大きくなる前に、ぜひ一度専門家へご相談ください。
医療法人の労務管理・就業規則の改定は当事務所にお任せください
当事務所は、クリニック経営に特化した「クリニック社労士」として、数多くの院長先生の悩みを解決してきました。休職トラブルを防ぐ就業規則の整備から、スタッフが定着する人事評価制度の構築まで、トータルでサポートいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
⇒医院クリニックを経営される院長先生へ〜クリニックに最適な社労士の選び方〜 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング
「2日後に旅行に行くので、有給休暇(年次有給休暇)をください」
もし、現場の職員からこのように急に有給申請されたら、経営者や院長先生はどう対応すべきでしょうか。特に、ただでさえ人手不足な上に、その日が1年で一番忙しい繁忙期や、シフトがカツカツの日だったとしたら、「今回は拒否したい…」と思うのが本音かもしれません。
介護施設、保育園、クリニックといった「人が人をケアする現場」では、1人の欠員がダイレクトに現場の崩壊やサービスの低下につながるため、有給休暇の取得を巡るトラブルが後を絶ちません。
今回は、医療・福祉業界専門の社会保険労務士(社労士)が、「職員からの急な有給申請は拒否できるのか?」「会社が持つ『時季変更権』の正しい使い方」、そして「急な有給申請に振り回されないためのルール作り」までを徹底解説します。
1. 結論:有給休暇の「拒否」は原則不可!ただし「時季の変更」は可能
まず法律上の結論からお伝えすると、会社が職員の有給休暇の取得を「完全に拒否(消滅)」させることは、原則としてできません。
有給休暇は、労働基準法によって労働者に認められた強い権利です。たとえその理由が「プライベートな旅行」であっても、取得理由を理由に会社が拒否することは違法となります。
◆ 会社に認められた唯一の対抗策「時季変更権」とは?
しかし、会社側にも現場を守るための権利が認められています。それが「時季変更権(じきへんこうけん)」です。
労働基準法第39条第5項(要約)
労働者が請求した日に有給休暇を与えることが、**「事業の正常な運営を妨げる場合」**においては、会社は他の日に変更させることができる。
つまり、「有給をあげるな(拒否)」とは言えませんが、「その日はどうしても困るから、別の日にずらしてほしい(変更)」と主張することは法律上可能なのです。
2. 単に「忙しいから」はNG!時季変更権が認められる「4つの判断基準」
ここで最も重要になるのが、「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、具体的にどのような状態を指すのかという点です。
裁判例などを踏まえると、単に「今日は業務が忙しいから」「いつも人手が足りないから」という慢性的な理由だけでは、時季変更権の行使は認められません。会社側が「代替要員を確保するために最善の努力を尽くしたけれど、どうしても無理だった」という客観的な事実が必要です。
特にシフト制で動く介護施設、保育園、クリニックにおいて、時季変更権が認められやすいのは以下のような4つのシチュエーションです。
① シフト変更の調整を尽くしたが、代替要員が確保できないとき
急な申請に対して、管理者が他の職員に「代わりにシフトに入ってもらえないか」と打診したり、出勤日の変更を調整したりしたものの、どうしても代わりの人が見つからなかった場合です。
② 有給の取得希望者が同じ日に重複し、現場が回らなくなるとき
同じ日、同じシフトの時間帯に、複数の職員から同時に有給申請が出てしまったケースです。全員を休ませると配置基準(人員基準)を割り込んでしまう、あるいは著しく診療や保育に支障が出る場合は、時期の変更を打診する正当な理由になります。
③ その職員にしかできない「代替不可能な重要業務」があるとき
他の職員では対応できない、その人独自の専門的な業務や、その日に完了しなければならない重大なタスクがある場合です。ただし、日頃から「属人化(その人にしかできない状態)」を放置している場合は、会社の管理不足とみなされることもあるため注意が必要です。
④ その日に外せない研修・教育訓練、または出張があるとき
以前から予定されていた重要な研修、行政による監査対応、あるいはその職員がメインで参加すべき出張などが重なっている場合です。
3. 【管理者必見】トラブルを防ぐための実務上の留意点
上記の4つの条件に当てはまる場合、法律上は「強制的に有給の日程を変更させること」が可能です。しかし、ここで感情的に「法律で認められているから、2日後の有給はダメ!変更しなさい!」と突っぱねるのは、実務上おすすめできません。
相手は感情を持つ「人間」。まずは話し合いから
特に介護・保育・医療の現場は、職員同士のチームワークとモチベーションが命です。強制的な命令を下してしまうと、職員の不満が溜まり、最悪の場合は「突然の退職」や「SNSへの悪評の書き込み」「労働基準監督署への駆け込み」といった二次トラブルに発展しかねません。
まずは、管理者(院長や施設長)から以下のようにアプローチすることをお勧めします。
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現状の共有: 「その日は〇〇さんの予約が詰まっていて、代替のスタッフも見つからないんだ」と、困っている状況を具体的に伝える。
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妥協案の提示: 「2日後からの旅行を、来週の〇〇日~〇〇日に変更してもらうことは難しいかな?」と、代替案を一緒に考える姿勢を見せる。
法律を盾に戦うのではなく、「お互いの事情を理解し合うための話し合い」を挟むことが、職場環境を維持するための実務的なテクニックです。
4. 2日前の申請は遅すぎる?就業規則で定めるべき「有給のルールとマナー」
今回の事例のように「2日前に旅行の申請をしてくる」という事態が起こる背景には、「職場内での有給取得のルールやマナーが曖昧になっている」という根本的な原因があります。
職員に気持ちよく、かつ現場に穴をあけずに有休を取得してもらうためには、就業規則で明確なルールを定め、周知徹底することが不可欠です。
◆ 「〇日前までの申請」は有効か?
労働基準法には「有給は何日前までに申請しなければならない」という具体的な期限の定めはありません。しかし、判例では「会社が代替要員を確保するために必要な、合理的な範囲内の期間」であれば、就業規則で申請期限を設けることは有効であるとされています。
あまりに長い期間(例:1ヶ月前までに申請など)は不合理とされる可能性が高いですが、「原則として7日前までに書面(またはシステム)で申請すること」というルールは、実務上も非常に合理的であり、有効です。
まずは、就業規則に以下の項目が正しく記載されているか確認しましょう。
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有給休暇の申請方法(書面なのか、LINEなどの連絡は不可なのか)
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申請の締め切り(例:前月〇日までのシフト提出時、または取得日の7日前まで)
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緊急時の対応(突発的な体調不良などの場合の事後振替ルール)
5. 職員への「マナー指導」が、強い組織を作る
ルール(就業規則)を作るだけでなく、朝礼やミーティングを通じて、職員へ「有給取得におけるマナーと配慮」について定期的に指導することも、社労士として強くお勧めしています。
有給は権利ですが、介護、保育、クリニックは「チームプレイ」で動いています。同僚に極端な負担をかけないよう、以下の4つの意識を職員に持ってもらうようアプローチしましょう。
| 指導すべき4つのマナー | 具体的な内容 |
| ① 余裕を持った事前申請 | 旅行などの予定は、シフトが確定する前、あるいは少なくとも1〜2週間前には相談・申請する。 |
| ② 業務の引き継ぎ | 自分が休んでいる間に発生する可能性のある業務や、担当している患者様・利用者様・園児の特記事項を事前に周囲へ共有しておく。 |
| ③ 代替要員への配慮 | 「お互い様」の精神を持ち、自分が休む代わりに、他の人が休むときには快くシフトを代わる姿勢を持つ。 |
| ④ 周囲への感謝の言葉 | 休み前や休み明けに「お休みをいただきありがとうございました」「ご協力ありがとうございました」の一言を添える。 |
こうした「お互い様の文化」が根付いている職場では、急な有給取得による不満やギスギスしたトラブルは自然と減少していきます。
6. まとめ:介護・保育・クリニックの有給トラブルは専門の社労士へ
職員からの急な有給休暇の申請に対し、単に「忙しいから」という理由で拒否することはできません。しかし、事前の調整を尽くしても代替要員が確保できないなど、「事業の正常な運営を妨げる事由」があれば、時季変更権を使って日程をずらしてもらうことは法的に正当な対応です。
大切なのは、以下の3ステップです。
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就業規則で「7日前までの申請」などの合理的ルールを定める
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万が一のときは、感情的に拒否せず「話し合い」で時期の変更を打診する
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普段から「周囲への配慮と引き継ぎ」についてのマナー教育を行う
介護施設、保育園、クリニックは、一般的なオフィスワークとは異なり、現場の配置基準や独自のシフト体制があるため、労務管理が非常に複雑です。
「うちの現場の状況で、時季変更権は認められる?」
「トラブルにならない就業規則の書き方を知りたい」
とお悩みの経営者・院長先生は、ぜひ医療・福祉業界の労務管理に強い、専門の社会保険労務士(社労士)までお気軽にご相談ください。現場の実情に寄り添った、最適な解決策をご提案いたします。
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Q)当院には、まもなく産前産後休業(以下、産休)に入る職員がいます。年次有給休暇(以下、年休)が、数日残っているのですが、この年休を産休中に取れ
るのでしょうか?
A)産休中は、労務の提供義務が消滅しているため、年休を取得することはできません。ただし、産休前に年休の請求があった場合には、原則として産前休業
期間に限り、請求があった日に年休を取得することができます。
詳細解説:
1.産休と年休の関係
産休は、妊娠中・出産後の母体保護を目的とした労働基準法に基づく休業制度です。産前休業は出産予定日前6週間(多胎妊娠の場合には14週間)であり、
産後休業は出産日以後8週間です。産前休業は職員の請求に基づいて与える義務があり、産後休業は請求の有無にかかわらず与える義務があります。ただし、出産後6週間を経過
した職員については、一定の条件のもと、就業が認められています。
年休は、労働日について労務の提供義務を免除するものであることから、労務の提供義務が消滅している産休中に取得することはできません。そのため、産休中の職員から年休
の請求があった場合、医院は年休の取得を認める必要はありません。
一方で、産前休業を請求できる期間に、職員が産前休業を請求せずに年休を請求した場合には、労務の提供義務は消滅していないため、医院は年休の取得を認めることになりま
す。なお、産後休業は請求の有無にかかわらず、原則として就業が禁止されているため、職員から年休の請求があったとしても年休の取得を認める必要はありません。
2.年休付与日到来による消滅と付与
労働基準法では、年休の付与日から2年を経過したときに、時効により年休は消滅すると規定されています。よって、産休中に時効を迎えた年休は消滅します。
次に付与については、産休中に付与日が到来し、年休付与要件を満たしている場合、医院は年休を付与しなければなりません。なお、付与された年休は、産休から復帰した後に取
得することが可能です。
産休中には、一定の要件を満たすことで健康保険から出産手当金が支給されます。出産手当金は、出産のために働くことができず、給与が支払われない場合に支給されるもので
す。産前休業中に年休を取得すると、出産手当金が支給されないことがあるため、対象者には誤解のないように事前の説明が求められます。
医療・福祉の現場(クリニック、介護施設、保育園)は、人命や安全を預かる特性上、一歩間違えれば重大な事故に繋がりかねない緊張感があります 。そのため、経営者や管理職がスタッフに対して「時に厳しく指導せざるを得ない場面」があるのは当然のことです 。
しかし、現場のリーダーから「問題行動のある職員を厳しく指導したいが、パワハラと言われるのが怖くて強く言えない」という悩みの声を耳にすることが増えています 。また、職員から「これってハラスメントです」と訴えがあった際、法人としてどこまで対応すべきか苦慮しているケースも少なくありません 。
本記事では、厚労省の指針に基づき、「業務上の適正な指導」と「パワハラ」の境界線を、クリニック・介護・保育園の具体例を交えて解説します 。また、ハラスメントの訴えがあった際の法人の対応義務についても実務的な視点から紐解きます 。
1. そもそも「職場のパワーハラスメント(パワハラ)」の定義とは?
客観的な指導を行うための前提として、まずは法律および厚生労働省が定める「パワーハラスメント」の3つの定義を確認しておきましょう 。職場におけるパワハラとは、同じ職場で働く者に対して、以下の3つの要素をすべて満たす行為を指します 。
| パワハラの3要素 | 概要 |
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① 優越的な関係を背景とした言動 |
職務上の地位(上司から部下)だけでなく、専門知識や経験の差、人間関係のグループなど、抵抗や拒絶が難しい関係性を背景にしていること 。※部下から上司、同僚間も含みます 。 |
|
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの |
社会通念に照らし、明らかに業務上の必要性がない、または指導の手段・態度が不適当であること 。 |
|
③ 労働者の就業環境が害されること |
身体的・精神的な苦痛を与えられ、労働者が能力を十分に発揮できないなど、看過できない程度の悪影響が生じること 。 |
【重要】「適正な業務指示・指導」はパワハラではない
逆を言えば、「客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導」については、職場のパワハラには該当しません 。指導される側が主観的に「厳しくて不快だった」「傷ついた」と感じたとしても、それが業務上必要な内容であり、かつ社会通念上相当な方法であれば、法律上のパワハラとは認められないのです 。
2. 明らかな「問題職員」への厳しい指導もパワハラになるのか?
結論から申し上げると、「業務の性質や内容に照らして重大な問題行為を行った従業員に対して、一定程度注意をすること」はパワハラには該当しません 。
クリニック、介護施設、保育園など、患者様、利用者様、園児の命や安全に直結する職場では、業務の必要性や緊急性が高い場面が多く存在します 。そのため、重大なミスや問題行動に対して「厳しく注意・指導すること」は一定程度許容されます 。
厚生労働省のいわゆる「パワハラ指針」でも、精神的な攻撃(脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など)には該当しない例として、具体的に以下の2つを挙げています 。
### 【厚労省指針】パワハラに該当しないと考えられる例 1. 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること。 2. その業務の内容や性質に照らして重大な問題行為を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。
医療・福祉・保育の現場における「パワハラにならない」具体例
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クリニック:
処方箋の確認ミスや医療機器の誤操作など、患者の健康に直結する重大なミスを繰り返す看護師や医療事務に対し、「命に関わる現場なのだから、二度とこのような不注意を起こさないでください」と、強い口調でその場で注意を促す行為。
-
介護施設:
移乗介助時の手順を無視し、利用者様を転倒させるリスクのある危険な行動を取ったヘルパーに対し、事故を未然に防ぐためにその場で語気を強めて制止・注意する行為。
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保育園: 園児のアレルギー確認を怠って給食を提供しようとした保育士、あるいは遅刻や無断欠勤を繰り返し、シフトに多大な支障を出しているにもかかわらず改善の兆しがない職員に対し、面談室で一定程度強く叱責・指導する行為 。
これらはすべて「業務上必要かつ相当な範囲」であり、適正な労務指導といえます 。
3. 「指導」が「パワハラ(精神的な攻撃)」へ変わる境界線
いくら職員側に問題(遅刻、ミス、規律違反)があったとしても、指導の「やり方」が社会通念を逸脱してしまえば、それはパワハラ(精神的な攻撃)と判断されるリスクがあります 。経営者や管理職が特に注意すべき「境界線」は以下の3点です。
① 人格否定や業務に関係のない暴言(アウト)
「だからお前はダメなんだ」「育ちが悪い」「給料泥棒」「辞めてしまえ」など、問題行為の指摘を超えて、職員個人の人格や存在自体を否定する言動は、いかなる理由があってもパワハラになります 。指導すべきは「行為(ミスや遅刻)」であり、「人格」ではありません 。
② 他の職員の前で見せしめのように叱責する(原則アウト)
他のスタッフや、クリニックの患者様、保育園の保護者などの前で、大声で長時間にわたり怒鳴り散らす行為は、必要性の範囲を超え、相手に過度な精神的苦痛を与える(名誉毀損や侮辱にあたる)ためパワハラとみなされやすくなります 。強い注意を行う際は、個室(面談室など)に呼んで1対1で行うのが原則です。
③ 過去の終わったミスを執拗に責め立てる(アウト)
今回の問題行為とは直接関係のない、数ヶ月前・数年前のミスまで引っ張り出してきて、「あんたはあの時もそうだった」と長時間ネチネチと責め立てる行為は、業務上の必要性を欠くため不適切です。
4. スタッフからの「ハラスメントの訴え」に法人はすべて対応すべきか?
スタッフから「上司からパワハラを受けました」「同僚からセクハラ(セクシャルハラスメント)をされています」といった訴えがあった際、法人側は「原則としてすべてに対応しなければならない」というのが結論です 。
「あの職員は被害妄想が激しいから」「ただの好き嫌いの感情論だろう」と経営陣が主観的に判断し、放置することは絶対に避けてください。
厚労省指針における「広く相談に対応する義務」
この点については、厚生労働省の指針にも明確に記載されています 。 各種ハラスメントに該当するかどうか客観的に見て微妙なケースであっても、雇用側は広く相談に対応する義務があると指摘されています 。
すべての訴えに対応すべき2つの実務的理由
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相談者本人が気づいていない「別の重大な論点」が浮上するため 当初は「上司から厳しく当たられた(パワハラ)」という相談であっても、丁寧にヒアリングや事実調査を進める過程で、「実はその管理職がシフトを不正に操作していた」「業務上横領の疑惑がある」「他の職員にも隠れてセクハラを行っていた」といった、経営上の重大な不正・リスクが発覚することが実務上よくあります 。
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放置することでハラスメントが深刻化・泥沼化するため 「大したことではない」と初期対応を怠ると、被害を訴えた職員のメンタルヘルス不調(うつ病など)を招いたり、職場全体の士気が低下して連鎖退職に繋がったりします。さらに、労働基準監督署への駆け込みや、法人を相手取った損害賠償請求訴訟など、法的トラブルへと発展するリスクが跳ね上がります 。
5. 【経営者向け】ハラスメント訴えがあった初期対応の4ステップ
もし職員からハラスメントの相談があった場合、法人は以下のステップに沿って誠実かつ迅速に対応を進める必要があります。
【ステップ 1】相談窓口でのヒアリング(プライバシーの保護)
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【ステップ 2】事実関係の調査(加害者側・第三者への確認)
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【ステップ 3】ハラスメントの有無の判定(客観的・多角的な判断)
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【ステップ 4】適切な措置と再発防止(処分、配置転換、環境改善)
ステップ 1:相談者からのヒアリング(傾聴と秘密厳守)
まずは相談者の話を丁寧に聞きます。この際、「プライバシーの厳守」と「相談したことによって不利益な扱いを受けないこと」を明確に伝え、安心感を与えます。最初から「それはパワハラじゃないよ」と否定せず、事実関係(いつ、どこで、誰に、何を言われたか)をメモに記録します。
ステップ 2:行為者(加害者とされる側)や第三者への事実調査
相談者の同意を得た上で、相手方(上司や同僚)からも話を聴取します。また、言動の目撃者がいる場合は、周囲の職員からも客観的な状況を確認します。双方の意見が食い違うことが多いため、感情論に流されず事実関係を整理することが重要です。
ステップ 3:ハラスメントの有無の客観的判断
集まった証拠や双方の主張を元に、法人の就業規則や厚労省の指針(前述の3要素)に照らし合わせ、ハラスメントに該当するかを判断します。判断が難しい場合は、顧問弁護士や社会保険労務士などの専門家に意見を求めるのが賢明です。
ステップ 4:事後措置と再発防止策の実施
ハラスメントが認められた場合は、行為者に対して就業規則に基づく処分(譴責、減給、出勤停止など)や配置転換を行います。また、ハラスメントとまでは言えない「適正な指導」であった場合でも、相談者の誤解を解き、今後のコミュニケーションの改善を促すなどのフォローが必要です。
6. まとめ:健全な職場環境と適切な指導を守るために
クリニック、介護施設、保育園を安定して経営していくためには、「問題行為への毅然とした指導」と「ハラスメントのない安心安全な職場環境」のどちらも欠かすことはできません 。
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問題社員への一定の強い注意は、業務上必要であればパワハラにはなりません。 ただし、感情的な暴言や人格否定に走らないよう、指導する側のスキルアップ(管理職研修など)が必要です 。
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職員からのハラスメントの訴えは、いかなる場合も放置せず、広く相談に対応する義務があります。
当労務管理事務所では、クリニック・介護・保育園に特化した就業規則の整備や、管理職向けのハラスメント防止研修、ハラスメント外部相談窓口の受託を行っております。「これはパワハラになる?」「問題職員への対応に困っている」という経営者・人事担当者様は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
1. はじめに:人手不足の裏に潜む「採用リスク」
医療、介護、保育の現場において、人手不足は深刻な経営課題です。「一人でも多くの職員を確保したい」という切実な思いから、採用基準が緩やかになってしまったり、選考時の確認が不十分になったりするケースは少なくありません。
しかし、こうした状況を背景に、近年増えているのが「経歴詐称」を巡るトラブルです。 「以前の職場をトラブルで辞めたことを隠していた」「持っていると言っていた資格が実は嘘だった」……。発覚した時、経営者や事務局長が抱く憤りは計り知れません。
「嘘をついて入職したのだから、即刻解雇だ!」 そう考えるのは自然な反応ですが、労働法という枠組みの中では、たとえ嘘があったとしても「直ちに解雇」が認められるとは限りません。一歩間違えれば、法人側が「不当解雇」として訴えられるリスクすら孕んでいます。
本記事では、医療・介護・保育専門の社労士の視点から、経歴詐称があった場合の解雇の妥当性と、組織を守るための具体的な実務対応について詳しく解説します。
2. 経歴詐称と解雇の法的判断基準
職員の採否を判断する際、応募者の経歴は極めて重要な判断材料です。法人は「誰を雇うか」を決める「採用の自由」を持っており、その判断のために真実を申告させる権利があります。
履歴書の記載や面談での回答に虚偽があり、「もし真実を知っていたら採用しなかった」と言えるほど重大なものであれば、解雇の理由は「客観的に合理的な理由」があるとみなされやすくなります。
しかし、裁判例では「全ての詐称が解雇有効になるわけではない」という厳しい現実があります。解雇が有効になるためには、その詐称が「採用の判断にどれほど決定的な影響を与えたか」という重要性と、それによって「職場秩序がどれほど乱されたか」という程度が厳格に問われます。
主に対象となる4つのパターンから、具体的なリスクを見ていきましょう。
3. 経歴詐称の4つの類型と解雇の有効性
① 資格・免許の詐称(重要度:高)
医療・福祉業界において最も深刻なのがこれです。 医師、看護師、薬剤師、介護福祉士、保育士などの国家資格が必要な職種において、無資格であるにもかかわらず資格を偽った場合、これは単なる「嘘」に留まりません。
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リスク: 無資格者による業務提供は法律違反であり、診療報酬や介護報酬の不正受請求、さらには行政処分や実地指導での全額返還へと直結します。
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判断: この場合の解雇は、有効とされる可能性が極めて高いといえます。業務遂行の前提条件を欠いているため、雇用の継続は不可能と判断されるからです。
② 職歴の詐称(重要度:中〜高)
「転職回数が多いと不利になるから隠す」「前職を能力不足や素行不良(ハラスメント等)で懲戒解雇されたことを隠す」といったケースです。
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リスク: 医療・介護現場はチームケアが基本です。前職でのトラブル隠しは、現場の人間関係を崩壊させる火種となります。
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判断: 単なる数ヶ月の期間のズレなどは「軽微」とみなされがちですが、懲戒解雇歴の隠匿や、重要な役職経験の捏造(例:施設長経験があると偽る)などは、重大な詐称として解雇が認められる可能性があります。
③ 学歴の詐称(重要度:低〜中)
かつては「高卒を大卒と偽る」ことが重い詐称とされましたが、実務能力重視の昨今では、学歴だけで解雇を有効にするのは難しくなっています。
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リスク: 学歴によって初任給や手当が細かく規定されている法人の場合、不当に高い賃金を支払わされることになります。
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判断: 給与計算の根拠が学歴に依存しており、それによって大きな賃金格差が生じていた場合、秩序を乱したとして懲戒対象になる可能性はありますが、解雇まで認められるかは慎重な判断が必要です。
④ 犯罪歴の隠匿(重要度:ケースバイケース)
意外かもしれませんが、犯罪歴があることだけをもって直ちに解雇できるわけではありません。
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判断: 裁判例では、刑の執行から10年以上経過している場合や、業務と無関係な軽微な罰金刑などは、告知義務がない、あるいは解雇理由として不十分とされる傾向があります。
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特例: ただし、保育現場での児童性犯罪歴や、高齢者施設での虐待・窃盗歴など、「対象となる利用者への安全確保に直結する職歴・犯罪歴」については、より厳しく判断される傾向にあります。
4. 医療・介護・保育現場だからこそ問われる「管理責任」
一般企業と異なり、私たちの業界には「公費」が投入されています。 もし経歴詐称(特に資格や職歴)を見逃したまま雇用を続け、現場で事故が起きた場合、法人が受けるダメージは「解雇の有効性」というレベルでは済みません。
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利用者・家族からの訴訟: 「資格のない人間にケアをさせていたのか」という追及。
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行政処分: 指定取り消しや加算の返還。
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社会的信用の失墜: 地域での評判が悪化し、採用難に拍車がかかる。
だからこそ、経歴詐称への対応は単なる「不誠実な職員の排除」ではなく、「法人のガバナンス(統治)と利用者の安全を守るための必須業務」なのです。
5. トラブルを未然に防ぐ「3つの防衛策」
発覚してから解雇を争うのは、多大な時間と労力、そして弁護士費用を要します。最初から「嘘をつかせない」「嘘を見抜く」体制を作ることが最善の策です。
防衛策1:エビデンス(証拠)確認の徹底
「原本」の確認を徹底してください。
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資格証の確認: コピーではなく原本を持参させ、裏書き(更新履歴)まで確認します。必要に応じて、厚労省のデータベース等で登録番号を照合します。
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離職票・年金手帳の確認: 入社手続き時に提出される書類の履歴と、履歴書の職歴が合致しているか、事務担当者が必ずクロスチェックを行います。
防衛策2:採用選考の精度向上
面接だけでは嘘を見抜くのは困難です。
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リファレンスチェックの検討: 本人の同意を得た上で、前職に勤務状況を確認する。
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実技試験の導入: 介護現場なら移動介助、保育現場ならピアノや読み聞かせなど、短時間の「実技」を取り入れるだけで、職歴詐称(未経験なのに経験者と偽る等)は一目で見抜けます。
防衛策3:入職時のリーガル・セットアップ
万が一の時に「解雇の正当性」を主張できるよう、仕組みを整えます。
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誓約書の提出: 「提出書類の内容に相違ないこと」「虚偽があった場合は解雇を含む懲戒処分に異議を唱えないこと」を明記した誓約書を入職時に取ります。
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就業規則の整備: 懲戒規定の中に「重要な経歴を詐称して採用されたとき」を明確に盛り込み、具体的な懲戒の種類を定めておきます。
6. まとめ:専門家の視点をバックオフィスに
経歴詐称が発覚した際、感情的に「明日から来なくていい」と伝えてしまうのが、最も危険な初動です。たとえ相手に非があっても、手続きを誤れば「解雇権の濫用」となり、多額の解決金を支払う羽目になりかねません。
まずは、その詐称が業務にどのような影響を及ぼすのかを冷静に分析し、就業規則に基づいた正しいステップ(事情聴取、弁明の機会の付与など)を踏むことが重要です。
私たち「社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング」は、医療・介護・保育業界に特化した人事労務のプロフェッショナルとして、数多くの現場トラブルを解決してきました。
私たちのBPOサービスでは、給与計算などの事務代行だけでなく、こうした「入職時のリスク管理」や「就業規則の運用サポート」をセットで提供しています。事務局の負担を減らしつつ、法人のガバナンスを強化したい経営者の皆様、ぜひ一度ご相談ください。
「正しい採用」が「質の高いケア」を生み、それが「健全な経営」へと繋がります。あなたの法人のバックオフィスを、リスクに強い、創造的な組織へと変えていきましょう。
執筆者:社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング 代表 林 正人 (医療・介護・保育専門社会保険労務士)
ベースアップ評価料が、大きく変わります
ベース評価料の対象が拡大
ベースアップ評価料の対象となる職員に、事務職員、40 歳未満の医師・歯科医師・薬局薬剤師が加わります( 経営者、役員等は除く)。
また、歯科技工所や薬局等にも対象が拡大され、「歯科技工所ベースアップ支援料」と「調剤ベースアップ評価料」が新設されます。
新しいベースアップ評価料の仕組みは?
すべてのベースアップ評価料が、2026 年6 月と2027 年6 月の2 段階で引き上げられます。
外来・在宅ベースアップ評価料、歯科外来・在宅ベースアップ評価料、訪問看護ベースアップ評価料は、2025 年度以前から継続的に賃上げ
を行っているかどうかで、評価が異なります。継続して行っている医療機関等には追加の評価が加えられる仕組みです。
入院ベースアップ評価料には、異なる評価方法は設けられていません。代わりに、次のいずれかを満たさない医療機関には、入院基本料など入院基本料等に減算規定が適用されます。
・2026年3月31日時点で入院ベースアップ評価料の届出をおこなっている
・2024年3月と比較して、継続的な賃上げを行っている
・2026年6月1日以降に新規開設した
さらに、届出や実績報告等の簡素化も行われます。詳しくは下記サイトでご確認ください。
参考: 厚生労働省 令和8 年度診療報酬改定について
ht t ps: //www. mhl w. go. j p/s t f /newpage_ 67729. ht m
人事評価制度の構築サポートをしていると、必ずといってよいほど出てくるご質問があります。
「役職と等級って、分けた方がいいんですか?」
これ、本当によくいただきます。ちょっとモヤモヤしている経営者さまや人事担当の方も多いのではないでしょうか。
■まず「役職」と「等級」って何が違うの?
「役職」というのは、課長・部長・マネージャーなど、組織上の「ポスト(席)」のことです。
一方「等級」とは、その人の習熟度や役割の大きさを段階的に表したものです。
「部長」「課長」という役職と、「M1」「L2」といった等級が混在している会社はとても多いのですが、これが混在したままだと、どちらかが形骸化しやすくなってしまいます。
■なぜ分けた方がよいのか
例えば、役職(ポスト)に等級が連動してしまっていると、こんなことが起きやすくなります。
・ポストが空かないと昇進できない(=優秀な人が昇格できない)
・役職がないと評価や給与が上がりにくい(=専門職の人が報われない)
・役職を外すと給与も一気に下がって本人が傷つく(=必要な人事異動ができない)
これは、役職と等級が「くっついてしまっている」状態から起きることです。
役職はあくまでも「今その会社でどのポストに就いているか」であって、「その人のスキルや役割の大きさ」とは必ずしも一致しないのです。
■役割等級制度では「等級」が主役
A4一枚評価制度でおすすめしている役割等級制度では、まず「等級」を中心に設計します。
管理職(M)・指導監督職(L)・一般職(S)といった大きなくくりと、その中の段階(M1・M2・M3など)が「等級」です。
そして「役職」(課長・部長・チームリーダーなど)は、あくまでも「今の組織上のポスト名」として分けて考えていきます。
こうすることで、
・ポストがなくても等級は上がれる
・役職を外れても等級が下がるわけではないので本人のプライドも守れる
・専門職コースなど、管理職にならなくても処遇を上げていける
という柔軟な運用ができるようになります。
■ただし「分けない方がよいケース」もある
一方で、社員が5~10名程度の小さな会社では、等級と役職を分けることで「なんだか複雑になりすぎてわかりにくい」という声も出てきます。
そういった場合は、等級と役職をほぼ同義で運用してしまうシンプルな設計の方が現実的に機能することも多いです。
大事なのは「正解の形」を求めることではなく、
「今の自社の規模・組織・課題に合った形にする」こと。
役職と等級を分けることで、複雑さと引き換えに柔軟さが手に入ります。どちらをより重視するか、自社の状況で判断していきましょう。
人事評価制度は、精緻に作ることが目的ではありません。
社員が「自分はどこに向かって成長すればよいか」を理解でき、会社が「誰をどう育て、どう処遇するか」を整理できる。
そのための「道具」として機能してこそ、はじめて意味を持ちます。
役職と等級の設計も、そんな視点で一度ご自身の会社の現状を確認してみてはいかがでしょうか。






