医療
Q 当院は始業8時30分・終業18時30分(休憩2時間)で、1日の所定労働時間が8時間です。先月、私用で1時間遅刻した職員がいます。その日に1時間30分の残業がありましたが、残業代はどのように計算すればよいでしょうか?
A、労働基準法では、法定労働時間を超えて実際に労働した時間(以下、実働時間)に対して、割増賃金の支払いを義務づけています。よって、実働時間が法定労働時間である8時間を超えた30分のみ、25%以上の率で計算した割増賃金の支払いが必要となります。ただし、就業規則等で終業時刻以降の労働に対し割増賃金を支払うと規定している場合には、その規定に従うこととなります。
解説
1.割増賃金の支払い義務労働基準法では、使用者は、原則、1日8時間(以下、法定労働時間)を超えて労働させてはならないと定めています。そして、法定労働時間を超えて労働させた場
合、医院は、法定労働時間を超えた労働に対し割増賃金を支払わなければなりません。この割増賃金の支払い義務は、実働時間で判断します。
今回のケースで考えると、下図のように1時間遅刻した場合、終業時刻である18時30分までの実働時間は7時間となり、19時30分までは実働時間が 8 時間を超えないので、割増賃金は発生しません(法定内残業)。8時間を超える19 時 30 分から 20 時までの労働に対し、割増賃金が発生します(法定外残業)。
2.法令を上回る場合の支払い義務
1.にかかわらず、就業規則等で「終業時刻を超えて労働した場合に割増賃金を支給する」といった労働基準法を上回る定めをしていることがあります。この場合には、実働時間が8時間を超えていなかったとしても、終業時刻以降の労働に対して割増賃金の支払いが必要です。今回のケースでは18時30分が終業時刻であるため、18時30分以降の労働に対し割増賃金を支払うことになります。労働基準法の考え方をおさえた上で、就業規則等の定めを確認し、適切な割増賃金の支払いが必要です。
人材確保が困難な医療現場の実態
開業医、そしてこれから開業を考える医師にとって「人材の定着」は永遠のテーマです。
近年、医療業界全体で働き方改革が進む一方、有資格者(特に看護師)の確保は、賃上げ・好条件を提示しても極めて困難な状況にあります。スタッフの入れ替わりは、業務の質や患者の満足度だけでなく、残ったスタッフへの負担増となり、さらなる離職を招く負のスパイラルに陥りかねません。
このような現況だからこそ、「どうすればスタッフが辞めないか」ではなく、「どうすればスタッフが『このクリニックで働き続けたい』と思ってくれるか」という視点が重要になります。
今回、人材定着のヒントを得るべく実際にクリニックで働く現役の看護師2名に匿名でヒアリングを実施しました。スタッフの視点から見た「ずっと働きたいクリニック」と「すぐに辞めたいクリニック」の差を紹介します。
業務の属人化はNG「ワークライフバランス」確保のコツ
「一番大きいのは、有給が取りやすい雰囲気があるかどうかです。医療機関での看護師は女性が圧倒的に多い職場です。そのため、子どもの急な発熱や運動会・卒業式など学校行事での休みに対して『お互い様だから』と助け合う文化が根付いているかどうかは大切だと思います。ここで嫌な顔をされると、正直働きにくさを感じます。いまは事前に休み希望を出す際のルールも明確なので、スタッフ同士での調整もしやすく助かっています」>
「以前のクリニックは、定時になっても院長先生が患者さんの話を長々としていて、結局2時間近く残業ということが常態化していました。今のクリニックは18時の定時になったら帰るというコンセプトのもと、翌日の準備や片付けを効率化する仕組みがしっかりしていて、基本的に残業はほとんどありません。もし残業があっても、院長が『すぐに上がって』と声をかけてくださるので、メリハリをつけて働けます。夜勤がないクリニックでは特に、『残業の少なさ=プライベートの充実=ワークライフバランスの充実』に直結します。」
【決定的な差】
働きたい: 業務の標準化が進み、特定の人が休んでも回る体制。院長が率先して定時退社を促す。
辞めたい: 業務がベテランスタッフに集中し、休みを取ると周りに負担がかかる。院長が時間にルーズで、ダラダラと残業が発生する。
院長に求められる役割
「私たちが助かっているのは、患者さんからのクレーム対応や、難しい対外的な意思決定を院長が率先して引き受け迅速に対応してくれることです。『スタッフは目の前の患者さんのケアに集中して、トラブルは私が対処する』というスタンスを明確にしてくれるので、安心して働けます」
「院長が現場の状況をよく理解してくれているのも大きいです。看護師が患者さんや業者の対応に追われているときも、先生が間に入って対応してくれたり、『対応ありがとう』と必ずねぎらいの言葉をかけてくれたりするのはモチベーションになります。また、心電図や自動会計機など新しい機器導入など、スタッフにとってストレスになりがちな対外的な決定を院長が行うことで、スタッフ間の軋轢が生まれるのを防いでくれています」
【決定的な差】
働きたい: 院長がスタッフと適切な距離感を保ちつつ、コミュニケーションを欠かさない。現場の状況を理解して「クレーム対応の防波堤」となる。
辞めたい: 院長がスタッフの意見を聞かず、すべて自分のやり方を押し付ける。患者さんからのクレームや難しい決定を、すべてスタッフ間の話し合いに丸投げする。
スタッフのモチベーションを左右する「評価制度」のポイント
「給与水準自体はもちろん大事です。でもそれ以上に『どうすれば評価されるか』が明確でないと『長く働きたい』とは思えません。勤続年数だけでなく、新しい業務マニュアルの作成や特定の手技の習得など、業務への貢献度やスキルアップが昇給や賞与、そしてさまざまなインセンティブにしっかり反映される評価制度があると、『次も頑張ろう』というモチベーションにつながります」
「以前のクリニックは、院長が感覚でボーナスを決めているようでした。そのためなにを頑張っても給料が変わらないことに不満でした。今のクリニックでは、経営状況の透明性があり自分の目標や成果を院長に直接伝える機会があるため、待遇に納得感があります」
【決定的な差】
働きたい: 評価基準が明確で、業務貢献度やスキルアップが昇給・賞与に反映される。定期的な面談で、評価に関するフィードバックを受けられ、インセンティブもある。
辞めたい: 評価・報酬体系が不透明で、頑張っても報われている実感が持てない。昇給がない契約社員扱い。
ずっと働きたいクリニックに共通する「3つの特徴」
今回ヒアリングを行った結果、「ずっと働きたいクリニック」の共通項として浮かび上がったのは、「ワークライフバランスの尊重」「院長の適切なリーダーシップと人間性」「公正で明確な評価制度」の3点です。
特に、人材確保が困難な現況では、スタッフが「このクリニックなら安心して働ける」と感じられる、院長が責任をもって守る姿勢(クレーム対応、対外決定)が、何よりも重要になっています。そして、それを可能にするのは、院長の「感謝」の姿勢と、誰が休んでも業務が滞らない「仕組み(マニュアル化・効率化)」の両立です。
「給与が高い」だけでなく、スタッフが「ここで働くことに誇りを持てる」「自分の人生を大切にできる」と思える環境づくりこそが、永続的な人材定着の鍵となるでしょう。提供:
- 参考 © Medical LIVES
厚生労働省,処遇改善加算を来年度に取得するために必要な計画書の提出期限は4月15日まで
介護保険最新情報Vol.1469で、全国の自治体や介護現場の関係者に広く周知した。
年度当初の4月、5月から取得する事業所・施設の提出期限は4月15日。ここでは、6月以降の計画書もあわせて提出する必要がある。6月から処遇改善加算が新設される居宅介護支援、訪問看護などの事業所を併設している場合も、まとめて4月15日までに提出することとされた。
一方、6月から処遇改善加算が新設される居宅介護支援、訪問看護などの事業所のみを運営しており、4月分、5月分を申請しない事業者について、厚労省は計画書を6月15日まで受け付けるとした。
政府は来年度、介護報酬の臨時改定を実施する。6月から処遇改善加算を拡充し、定期昇給分を含めて最大で月額1.9万円のさらなる賃上げを実現する方針だ。これまで対象外だった居宅介護支援、訪問看護などにも、新たに処遇改善加算を創設する。
厚労省は6月以降の変更点などを盛り込んだ新しい計画書の様式案について、2月下旬を目処に公表する意向を示した。
「注意しただけなのに、パワハラだと言われた」
「問題職員を指導できず、周囲のスタッフが辞めてしまった」
近年、クリニックの現場からこのような相談が急増しています。
人員規模が小さく、距離の近い職場であるクリニックほど、人間関係トラブルが一気に経営リスクへ発展しやすいのが実情です。
本コラムでは、クリニック専門社労士の視点から、
**いま院長が必ず押さえておくべき労務リスクと、特にトラブルになりやすい「パワハラ問題」**について、実務ベースで解説します。
なぜ今、クリニックの労務リスクが表面化しているのか
「小規模だから大丈夫」が通用しない時代
クリニックはスタッフ数が少なく、院長と職員の距離が近い職場です。
そのため、
-
指導が感情的になりやすい
-
業務範囲や役割が曖昧
-
暗黙のルールで運営されがち
といった特徴があります。
以前は「医療の現場だから」「忙しいから仕方ない」で済んでいた対応も、
現在はハラスメント・不当対応として問題視される時代になっています。
クリニックで特に起きやすいパワハラの典型例
① 業務指導のつもりがパワハラになるケース
院長や主任がよくやってしまいがちなのが、
-
皆の前で強い口調で注意する
-
同じミスを理由に繰り返し叱責する
-
「向いていない」「辞めたほうがいい」と発言する
これらは業務指導の目的を超えるとパワハラと判断される可能性があります。
特に小規模クリニックでは「皆の前=職場全体」になりやすく、
本人の受ける心理的負担が大きくなりがちです。
② 感情的な言動・態度によるパワハラ
-
忙しい時に無視する
-
ため息や舌打ちを繰り返す
-
特定の職員にだけ冷たい態度を取る
これらも**「精神的攻撃」や「人間関係からの切り離し」**として、
パワハラ認定される可能性があります。
院長自身に悪意がなくても、
受け手が継続的に苦痛を感じていればリスクになる点が重要です。
③ 院長ではなく「ベテラン職員」が加害者になるケース
意外に多いのが、
-
ベテラン看護師が新人を強く叱責
-
医療事務リーダーが特定の職員を排除
-
「昔はこうだった」という価値観の押し付け
この場合でも、使用者である院長の管理責任が問われます。
「本人同士の問題」「現場に任せている」では済まされません。
パワハラと適正な業務指導の違いとは
判断のポイントは次の3点です。
-
業務上の必要性があるか
-
言動が相当な範囲を超えていないか
-
人格否定や感情的表現が含まれていないか
例えば、
-
ミスの内容を具体的に伝え、改善を求める → 適正指導
-
「何度言えば分かるんだ」「使えない」 → パワハラリスク大
**内容よりも「伝え方」「継続性」「場面」**が重要になります。
パワハラ問題が引き起こすクリニック経営への影響
パワハラが放置されると、
-
優秀な職員ほど辞める
-
院内の雰囲気が悪化する
-
採用しても定着しない
-
労基署・労働局への相談、通報リスク
といった悪循環に陥ります。
さらに深刻なのは、
一度「問題のある職場」という評判が立つと、採用市場で敬遠される点です。
労務トラブルを防ぐために院長が今すぐやるべきこと
① 指導ルールを「属人化」させない
-
注意・指導は原則1対1で行う
-
記録を残す(日時・内容・改善点)
-
感情ではなく事実ベースで伝える
これだけでもトラブル発生率は大きく下がります。
② 就業規則・院内ルールの整備
パワハラ防止規定や相談窓口の明示は、
**「守るため」ではなく「守られるため」**の仕組みです。
規則があることで、
-
院長の対応が正当化されやすい
-
職員側も安心して相談できる
-
重大トラブルになる前に是正できる
という効果があります。
③ 早めに専門家へ相談する
多くの院長が、
「もう少し早く相談していれば、ここまでこじれなかった」
とおっしゃいます。
問題が表面化してからでは、
選択肢が限られ、コストも大きくなりがちです。
クリニック専門社労士が果たす役割
クリニックの労務問題は、
一般企業の理論をそのまま当てはめても上手くいきません。
-
医療現場特有の人間関係
-
院長の立場と責任
-
小規模組織ならではの難しさ
これらを理解したうえで、
「現場で実行できる対応」を一緒に設計できるのが、クリニック専門社労士です。
まとめ|「人の問題」は放置しないことが最大のリスク対策
クリニック経営において、
一番のリスクは「人の問題を後回しにすること」
です。
パワハラと言われない指導方法、
辞めさせず・揉めさせない労務設計は、
正しい知識と仕組みがあれば必ず実現できます。
「最近スタッフとの距離感が難しい」
「注意すると辞めそうで何も言えない」
そう感じた時こそ、対策のタイミングです。
はじめに|「ハローワークでは人が採れない」は本当か?
介護事業所の採用相談で、私が必ず耳にする言葉があります。
それが
「ハローワークに出しても、どうせ人は来ませんよね?」
というものです。
確かに、民間求人サイトや紹介会社と比べると、
「応募が少ない」「条件が合わない人が来る」といった声が多いのも事実です。
しかし、それはハローワークの問題ではなく、“使い方”の問題であるケースがほとんどです。
実際、私が支援している介護事業所の中には、
・年間採用の半数以上をハローワーク経由で確保
・採用コストを大幅に削減
・定着率の高い職員を採用
といった成果を出している事例も少なくありません。
本コラムでは、介護専門社労士の視点から
**「ハローワークを採用チャネルとして最大限に活かす具体策」**を、事例とともにわかりやすく解説します。
なぜ介護事業所はハローワーク採用で失敗しやすいのか
① 求人票を「事務的に」作っている
ハローワーク求人は、
「最低限の項目を埋めればよい」
という意識で作成されがちです。
その結果、
・仕事内容が抽象的
・職場の雰囲気が伝わらない
・他施設との差別化がない
という**“選ばれない求人票”**になってしまいます。
② 採用ターゲットが曖昧
「介護職員募集(正社員)」
この一文だけで、誰に来てほしいのかが見えない求人は非常に多いです。
・未経験者を育てたいのか
・経験者即戦力がほしいのか
・子育て世代なのか
ターゲットを定めないと、ミスマッチが起こりやすくなります。
③ ハローワーク職員との連携不足
意外と知られていませんが、
ハローワーク職員は“求人の営業担当”でもあるという点です。
相談せずに放置している事業所ほど、成果が出にくい傾向があります。
【ノウハウ①】介護職採用で成果が出る求人票の作り方
ポイントは「仕事内容」を具体的に書くこと
NG例
利用者様の介護業務全般
OK例
食事介助(刻み食・とろみ対応あり)、入浴介助(機械浴あり)、
排泄介助、レクリエーション補助、介護記録の入力(タブレット使用)
**「1日の仕事がイメージできるか」**が応募率を大きく左右します。
「大変なこと」もあえて書く
介護職は決して楽な仕事ではありません。
あえて
・夜勤がある
・身体介助がある
と正直に書くことで、覚悟のある応募者が集まり、定着率が上がります。
【ノウハウ②】ハローワーク求人で差がつく「プラスα情報」
福利厚生・職場環境は“生活目線”で書く
単に
「社会保険完備」
と書くよりも、
・子どもの急な発熱でのシフト調整実績
・夜勤明けは必ず休み
・介護記録は手書きなし
など、現場のリアルを書く方が反応は明らかに良くなります。
処遇改善加算の使い道を明示する
介護業界では
「処遇改善加算=よく分からない」
という不信感を持つ求職者も多いです。
そこで、
・毎月手当として支給
・賞与に反映
など、どう還元されるかを明記することが有効です。
【ノウハウ③】ハローワーク職員を“味方”につける
定期的な求人相談が成果を分ける
成果を出している事業所は、
・求人票提出後も定期的に相談
・応募状況を共有
・条件変更の相談
をこまめに行っています。
ハローワーク職員に
「この事業所は本気だ」
と認識してもらえると、
求職者紹介の質が明らかに変わります。
【ノウハウ④】ハローワーク×他チャネルの併用戦略
ハローワークは
「万能な採用ツール」
ではありません。
おすすめは、
・ハローワーク:安定志向・地元人材
・求人サイト:即戦力
・紹介会社:緊急対応
という役割分担です。
特に、ハローワークは
「時間はかかるが、定着しやすい人材」
を採るのに向いています。
介護専門社労士として伝えたいこと
採用がうまくいかない原因を
「人がいない」「業界が厳しい」
で片付けてしまうのは簡単です。
しかし、
採用は“設計”と“運用”で結果が変わる分野です。
ハローワークは、
・無料
・公的
・地域密着
という、介護事業所にとって非常に相性の良い採用チャネルです。
使い方を変えるだけで、
「採れない媒体」から
「安定採用の柱」
へと変わります。
まとめ|ハローワーク採用成功の5つのポイント
-
求人票は「具体性」と「正直さ」
-
採用ターゲットを明確にする
-
福利厚生・働き方を生活目線で書く
-
ハローワーク職員と連携する
-
他の採用手法と併用する
もし
「求人票をどう直せばいいかわからない」
「ハローワークを活かしきれていない」
と感じているなら、一度プロの視点で見直すだけでも結果は変わります。
介護専門社労士として、
現場実態を踏まえた“採れる採用設計”の重要性を、これからもお伝えしていきます。
はじめに
介護事業所、保育園、クリニックにおいて、「有給休暇の管理が煩雑で困っている」「職員ごとに付与日がバラバラで把握できない」といった相談は非常に多く寄せられます。
その解決策としてよく検討されるのが、有給休暇の付与日を全職員で統一する運用です。
確かに、付与日を統一すれば管理は楽になります。しかし、制度設計を誤ると労働基準法違反になるリスクもあるため注意が必要です。
本コラムでは、介護・保育・クリニックに特化した社労士の視点から、有給休暇の付与日統一のメリットと注意点を、できるだけわかりやすく解説します。
有給休暇の基本ルール(おさらい)
まず前提として、年次有給休暇は労働基準法第39条により、以下の要件を満たす労働者に付与する義務があります。
-
雇入れ日から 6か月継続勤務
-
その期間の 出勤率が8割以上
この要件を満たした時点で、最低10日の年次有給休暇を付与しなければなりません。
重要なのは、「この付与日は原則として個々の職員ごとに発生する」という点です。
有給休暇の付与日を統一するとは?
「付与日を統一する」とは、本来は入社日ごとに異なる有給休暇の付与日を、
例えば以下のように 特定の日にまとめて付与する運用を指します。
-
毎年4月1日に全職員へ一斉付与
-
毎年10月1日に統一付与
-
半期ごとに区切って付与 など
介護・保育・クリニックでは、人員入替が多いため、管理負担軽減を目的に導入されるケースが増えています。
付与日統一のメリット
① 有給管理が圧倒的に楽になる
シフト制が多い介護・保育、非常勤職員が多いクリニックでは、有給付与日がバラバラだと管理が煩雑です。
付与日を統一することで、残日数管理・5日取得義務の管理が一気に楽になります。
② 職員への説明がシンプル
「あなたの有給は〇年〇月〇日からです」という個別説明が不要になり、
職員側も制度を理解しやすいというメリットがあります。
ここが重要!付与日統一の5つの注意点
注意点① 法定基準を下回らないこと
最も重要なのは、法定基準を下回らないことです。
たとえば、
-
本来6か月経過で10日付与される職員に対し
-
統一付与の都合で「まだ付与しない」
これは 明確な労基法違反となります。
➡ 統一付与は「前倒し」はOK、後ろ倒しはNG
これが大原則です。
注意点② 中途入社職員への配慮が必須
介護・保育・クリニックでは中途採用が多いため、特に注意が必要です。
よくある誤りが、
「4月1日一斉付与だから、途中入社の人は次の4月まで有給なし」
これは完全アウトです。
実務では、
-
入社から6か月経過時点で比例付与(前倒し付与)
-
次回の統一付与日に本付与
という 二段階設計が安全です。
注意点③ パート・非常勤も対象になる
「パートだから有給は少しでいい」「付与日は別扱い」という運用も要注意です。
所定労働日数が少ない場合は、比例付与にはなりますが、
付与義務そのものは正社員と同じです。
特に保育園や介護事業所では、
-
短時間職員
-
曜日固定勤務
が多いため、比例付与日数の設計を誤らないよう注意が必要です。
注意点④ 就業規則への明記が必須
有給休暇の付与日を統一する場合、
就業規則に明確なルールとして記載することが必須です。
記載がないまま運用だけ変えてしまうと、
-
職員とのトラブル
-
労基署是正指導
につながるリスクがあります。
特にクリニックでは「昔からの慣習」で運用しているケースが多く、要注意ポイントです。
注意点⑤ 5日取得義務との関係
2019年から義務化された「年5日の有給取得義務」も忘れてはいけません。
付与日を統一すると、
-
付与日
-
取得管理期間
が明確になる一方、管理を怠ると一斉に未取得が発生します。
➡ 統一付与を行う場合は、
計画的付与や取得促進ルールとセットで設計することが重要です。
介護・保育・クリニック特有の実務ポイント
これらの業界では、
-
シフト制
-
人手不足
-
急な欠勤
が日常的に発生します。
有給付与日を統一するだけでなく、
-
時季変更権の適切な使い方
-
有給取得ルールの見える化
まで含めて設計しないと、**「制度はあるが使えない有給」**になってしまいます。
有給休暇の付与日を全職員で統一する場合のQ&A
Q1.有給休暇の付与日を全職員で同じ日にしても、法律上問題ありませんか?
A.一定の条件を満たせば問題ありません。
労働基準法では、有給休暇は「雇入れから6か月後」に発生するのが原則ですが、それより前に付与する(前倒し付与)ことは禁止されていません。
そのため、法定基準を下回らない形であれば、付与日を統一することは可能です。
Q2.「4月1日一斉付与」にしたいのですが、途中入社の職員はどうすればいいですか?
A.途中入社職員への配慮が不可欠です。
「次の4月1日まで有給なし」という運用は違法になります。
実務では、
-
入社6か月経過時点で先行付与
-
次の統一付与日に本付与へ切替
という二段階設計が安全です。
Q3.パート職員や非常勤職員も同じ付与日にしなければなりませんか?
A.はい、基本的には同様に考える必要があります。
所定労働日数が少ない場合は比例付与になりますが、
「パートだから対象外」「付与日は別」という扱いはできません。
特に保育園・介護事業所では短時間勤務者が多いため、注意が必要です。
Q4.付与日を統一すると、有給日数はどう計算すればいいですか?
A.勤続年数に応じた日数を基準にします。
たとえば4月1日一斉付与の場合、
-
勤続6か月以上1年6か月未満:10日
-
1年6か月以上:11日
といったように、勤続年数別に付与日数を整理します。
ここを曖昧にすると、トラブルの元になります。
Q5.有給付与日を統一すると、職員に不利になることはありませんか?
A.設計次第で不利にも有利にもなります。
前倒し付与を行えば、職員にとっては「早く有給がもらえる」メリットになります。
一方で、後ろ倒しになる設計は違法かつ職員不信につながるためNGです。
Q6.就業規則にはどこまで書く必要がありますか?
A.付与日・付与方法・日数は必ず明記してください。
最低限、
-
有給休暇の付与日
-
勤続年数別の付与日数
-
中途入社者の取扱い
は就業規則に記載が必要です。
「慣例でやっている」は通用しません。
Q7.口頭説明だけで運用しても大丈夫ですか?
A.おすすめできません。
労基署調査や職員トラブル時には、就業規則の記載内容が判断基準になります。
特にクリニックでは、院長が善意で運用していても、書面がないことで是正指導を受けるケースがあります。
Q8.有給の「年5日取得義務」との関係はどうなりますか?
A.統一付与とセットで管理が必要です。
付与日を統一すると、全職員の取得期限も同時に管理することになります。
そのため、
-
取得状況の定期確認
-
計画的付与の活用
をしないと、一斉未取得リスクが高まります。
Q9.忙しくて有給を取らせられない場合はどうすればいいですか?
A.「忙しい」は取得拒否の理由になりません。
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には時季変更権の行使が可能です。
介護・保育・医療現場では、
「取得時期を調整する」運用設計が重要になります。
Q10.有給を使わずに退職した職員にはどう対応すればいいですか?
A.原則として買い取り義務はありません。
ただし、退職時に残っている有給を消化させることは可能です。
「統一付与にした結果、有給が残りやすくなった」という相談も多いため、退職時の取扱いも事前にルール化しておきましょう。
Q11.派遣職員や契約社員も対象になりますか?
A.雇用主が誰かで判断します。
自法人と雇用契約がある職員であれば、雇用形態に関わらず有給付与義務があります。
派遣職員の場合は、派遣元が付与主体になります。
Q12.付与日を年度途中で変更しても問題ありませんか?
A.慎重な対応が必要です。
不利益変更にならないこと、職員への十分な説明、就業規則改定が必須です。
特に保育園・介護事業所では、監査時に説明できる状態が求められます。
Q13.労基署から指摘されやすいポイントは何ですか?
A.次の3点が特に多いです。
-
中途入社職員への付与漏れ
-
パート職員の比例付与ミス
-
就業規則と実態の不一致
付与日統一は「管理が楽」になる反面、ミスが一斉に発生する点に注意が必要です。
Q14.小規模なクリニックでも付与日統一はした方がいいですか?
A.人数が少ないほど、ルール明確化の効果は高いです。
院長の頭の中で管理できていた時代は終わっています。
トラブル予防の観点からも、制度として整理する価値は十分にあります。
Q15.専門家に相談するタイミングはいつがベストですか?
A.「問題が起きる前」がベストです。
有給休暇は、退職・労基署調査・職員不満の引き金になりやすいテーマです。
付与日統一を検討する段階で、介護・保育・医療に詳しい社労士に相談することが、結果的にコストとリスクを下げます。
まとめ(社労士コメント)
有給休暇の付与日統一は、
正しく設計すれば、管理効率・職員満足度の両方を高める制度です。
一方で、設計を誤ると一気に法令違反リスクを抱えることになります。
介護・保育・クリニックという人手不足業界だからこそ、
「楽にするための統一」ではなく、
**「安心して働けるための制度設計」**が重要です。
Q) 体調不良で欠勤を繰り返している職員がいます。ここ1ヶ月間に何日も欠勤しており、業務への支障も大きくなっています。施設としては、急な欠勤は人員配
置の面で問題が多く、また職員本人の健康のためにも療養に専念し、場合によっては退職してもらった方がよいのではないかと考えていますが、どのように対応
したらよいでしょうか?
A) 就業規則などで私傷病に係る休職制度を設けている場合は、すぐに退職してもらうことはできません。施設は職員に対して療養のための休職を命じることにな
ります。その後、休職期間を経過しても復職が難しいのであれば、退職となります。まずは体調不良が続くようであれば、医療機関への受診を促しましょう。
詳細解説:
1.欠勤とは
一般的に「欠勤」とは、職員が本来出勤しなければならない日に、個人的な事情で出勤しないことを指します。労働契約では、職員は所定労働日・所定労働時間に労務を提供する義務を負っており、一方で施設は、労務提供に対し職員に賃金を支払う義務を負っています。職員が私傷病によって一定期間、労務を提供できない場合には、労働契約に基づく労務提
供義務を果たせないことになり、施設は、労働契約の債務不履行として、契約解除を検討することになります。
2.私傷病による休職制度
多くの施設では、職員が病気やケガ、またはその他の事由により、労務提供が困難になった場合、すぐには解雇せず、職員との労働契約を維持したまま、一定期間の労務提供義務を
免除し、回復を待つための休職制度を設けています。休職制度は、解雇を留保とする「解雇の猶予措置」に位置付けられており、休職期間を経過しても復職できない場合には、就業規則の定めに則って退職となります。よって、休職制度は、職員の一定期間の雇用を保障しつつ、無用な退職トラブルを防ぐことにもつながります。
3.休職発令の重要性
休職制度は、職員が施設へ取得の申請をするものではなく、あらかじめ定められた一定の休職事由に該当したときに、施設が職員に命じるものです。休職期間が満了すると退職
となることから、休職期間満了時にトラブルが発生しがちです。このようなトラブルを防ぐために、休職を開始するときには、職員へ書面で通知を行うようにしましょう。
休職制度は、法律上義務付けられるものではなく、任意に制度の設計・運用を行うことができます。休職制度の有無の確認と、休職制度がある場合には、休職の期間や復職の取扱い
に問題ないかを見直すとよいでしょう。
はじめに|「人件費が限界」という院長の本音
ここ数年、院長先生方から最も多く聞く言葉があります。
それは――
**「もうこれ以上、人件費は上げられない」**という本音です。
最低賃金は毎年のように引き上げられ、看護師・医療事務の採用市場は売り手優位。
一方で、医療報酬は簡単には上がらず、収益構造は大きく変わらない。
「職員には辞めてほしくない」
「でも賃上げ原資はない」
このジレンマに、多くのクリニックが直面しています。
2026年を見据えたいま、院長が知っておくべきなのは、
**“賃上げ一択ではない人件費対策”**です。
1.なぜ今、クリニックの人件費はここまで重くなったのか
最低賃金の上昇は「点」ではなく「流れ」
最低賃金は一時的な政策ではありません。
政府は明確に「持続的な賃上げ」を掲げており、今後も上昇基調が続くことはほぼ確実です。
特に影響を受けやすいのが、
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医療事務
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看護助手
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パート職員
といった時間給中心の職種です。
「新しく入る人の時給が、長く勤めている職員を追い抜いてしまう」
そんな逆転現象が、すでに多くの現場で起きています。
採用コストも“見えない人件費”
さらに見落とされがちなのが、採用コストの高騰です。
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求人広告費
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紹介会社への手数料
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採用後の教育・引き継ぎ時間
これらはすべて、人件費の一部です。
「賃上げはできないから、辞めたらまた採用すればいい」
この考え方が、結果的に最もコストがかかる経営になっているケースは少なくありません。
2.「賃上げできない=ブラック」ではない時代の考え方
最近は、SNSや口コミサイトの影響もあり、
「賃上げしないクリニック=悪」という短絡的な見方が広がりがちです。
しかし、社労士の立場から断言できるのは、
賃上げをしないこと自体が問題なのではないという点です。
問題になるのは、次のような状態です。
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なぜ給与が上がらないのか説明がない
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評価の基準が不明確
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頑張っても報われるイメージが持てない
職員が不満を感じる本質は、
「金額」そのものよりも、納得感の欠如にあります。
3.人件費をコントロールしながら満足度を上げる3つの視点
視点① 給与を「固定費」から「設計できる費用」へ
多くのクリニックでは、給与が
「なんとなく決めた金額」のまま固定化されています。
しかし、今後は次のような設計が不可欠です。
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基本給は抑え、役割・責任で差をつける
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手当の意味を明確化する
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昇給ルールを“感覚”ではなく“仕組み”にする
これにより、人件費の総額をコントロールしながら、
頑張る人が報われる構造を作ることができます。
視点② 「評価制度がない」ことが最大のコストになる
評価制度がないクリニックでは、必ず次の問題が起きます。
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真面目な職員ほど不満を溜める
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声の大きい職員が得をする
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院長が毎回、判断に悩む
結果として、
優秀な人から辞めていくという最悪の循環が生まれます。
評価制度は、大企業のためのものではありません。
むしろ、少人数のクリニックほど効果が大きいのです。
視点③ 「お金以外の報酬」を本気で整える
実務の現場で感じるのは、
「給与以外で満足している職員」は想像以上に多いという事実です。
たとえば、
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シフトの融通
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院長との関係性
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役割を任されている実感
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成長している感覚
これらが整っているクリニックでは、
多少の賃金差があっても、離職率は低くなります。
4.社労士が見てきた「人件費で失敗するクリニック」の共通点
人件費で悩み続けるクリニックには、共通点があります。
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問題が起きてから制度を考える
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職員の不満を「わがまま」と捉える
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就業規則や給与規程が何年も更新されていない
これらはすべて、
経営判断の遅れによるものです。
人件費は、削るものではなく、
**“設計し直すもの”**なのです。
5.2026年に向けて、院長が今やるべきこと
今すぐ大幅な賃上げをする必要はありません。
しかし、次の3点は必ず着手すべきです。
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給与・手当・評価の「見える化」
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職員に説明できる昇給ルールの整理
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院長一人で抱え込まない体制づくり
これらを整えることで、
人件費の不安は「経営のコントロール下」に置くことができます。
おわりに|人件費対策は「守り」ではなく「攻め」
人件費対策というと、
「我慢」「節約」「抑制」というイメージを持たれがちです。
しかし本来は、
**クリニックを安定成長させるための“攻めの経営戦略”**です。
職員が安心して働ける環境は、
患者満足度にも、院長自身の働き方にも直結します。
もし今、
「人件費の話題が出ると気が重くなる」
そう感じているなら、それは仕組みを見直すサインかもしれません。
クリニックの規模や診療科に合った方法は、必ずあります。
一人で悩まず、専門家の視点を活用することも、立派な経営判断です。
2025年12月25日「介護保険制度の見直しに関する意見」が上梓
2025年12月25日の介護保険部会にて提示された、「介護保険制度の見直しに関する意見」(以下、「本資料」という)。本部会では2027年度介護保険法改正・報酬改定に向けた論点整理、及び視点の提示が行われています。今回の本資料の特徴は何と言っても「ページ数が多い」こと。3年前は42ページでしたが今回は何と、67ページと25ページも増えており、1回のニュースレターでは採り上げづらいボリュームになっています。そこで今回は、今年から新たに方針が示された地域3分類(中山間・人口減少地域、大都市部、一般市等)の内容に絞り、特に中山間・人口減少地域に対する論点を中心に採り上げてお伝えしてまいります。
「介護保険制度の見直しに関する意見」地域3分類に関する論点とは
それでは早速、中身に移ってまいりましょう。先ずは中山間・人口減少地域における柔軟な対応等に関し、「特例介護サービスの枠組みの拡張」についてです。
◯地域の実情に応じてサービス提供体制を維持・確保するため、人材確保、ICT機器の活用等の生産性向上の方策など、自治体が必要な施策を講じた上で、それでもなおやむを得ない場合、中山間・人口減少地域に限定した特例的なサービス提供を行う枠組みとして、特例介護サービスに新たな類型を設けることが適当である。
◯この新たな類型においては、
・職員の負担への配慮の観点から、職員の賃金の改善に向けた取組、ICT機器の活用、サービス・事業所間での連携等を前提に、管理者や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件の緩和等を行うこと
・サービスの質の確保の観点から、市町村の適切な関与・確認や、配置職員の専門性への配慮を行うことを前提とすること
が考えられ、今後、詳細な要件について、介護給付費分科会等で議論することが適当である。
なお、これらの要件が自治体で厳しく解釈されると、必要な配置基準の緩和が進まなくなるのではないかとの意見があった。
◯新たな類型の特例介護サービスについては、現行の基準該当サービス・離島等相当サービスの対象となっている居宅サービス等(訪問介護、訪問入浴介護、通所介護、短期入所生活介護、福祉用具貸与、居宅介護支援等)に加え、施設サービスや居宅サービスのうち特定施設入居者生活介護も対象とすることが適当である。また、市町村が指定権者となり実施している地域密着型サービスにおける同様のサービスについても、同様の対応を実施できるようにすることが適当である。
◯なお、新たな類型の特例介護サービスについては、
・サービスの質の担保について、事後の確認を行う仕組みについても検討が必要ではないか
・介護保険制度は全国どこでも必要なサービスを提供すべきものであり、配置基準の緩和は、慎重に対応するものとして、あくまでも緊急的な対応として行うものとすべきではないか
・ICT機器の活用などの業務効率化の取組は、必要人員を代替し得るものであるかどうか精査が必要ではないか
・まずは現行の居宅サービス等に限定し、施設サービス等を対象に含めるかどうかについては、ICT機器等の活用実績を踏まえ慎重に検討すべきではないか
・夜勤要件の緩和については、特に職員の負担感などへの配慮が必要ではないか
との意見があったことにも留意し、今後詳細な要件について、介護給付費分科会等で議論することが適当である。
続いて、「地域の実情に応じた包括的な評価の仕組み」についてです。
◯中山間・人口減少地域においては、利用者の事情による突然のキャンセルや利用者宅間の移動に係る負担が大きく、また、高齢者人口の減少に伴うサービス需要の縮小、季節による繁閑の激しさ等から、年間を通じた安定的な経営が難しく、サービス基盤の維持に当たっての課題となっている。
◯このため、特例介護サービスの新たな類型の枠組みにおいて、安定的な経営を行う仕組みとして、例えば訪問介護について、現行のサービス提供回数に応じた出来高報酬と別途、包括的な評価(月単位の定額払い)を選択可能とすることが適当である。
◯こうした包括的な評価の仕組みについては、
・利用者数に応じて収入の見込みが立つため、特に季節による繁閑が大きい地域や小規模な事業所において、経営の安定につながる
・移動時間など、地域の実情を考慮した報酬設定が可能となるほか、突然のキャンセル等による機会損失を抑制し、予見性のある経営が可能になる
・利用回数や時間の少ない利用者を受け入れた場合でも、収益が確保できる
・安定的かつ予見性のある経営が可能となることで、常勤化が促進されるなど、継続的かつ安定的な人材確保につながる
・利用者の状態変化により利用回数や時間が増えた場合でも、負担が変わらず、安心感がある
等のメリットが期待される。
◯その一方で、
・利用者ごとの利用回数・時間の差にも配慮しながら、利用者間の不公平感を抑制する必要がある
・利用者の費用負担が急激に増えることや、区分支給限度基準額との関係でサービス利用に過度な制約がかからないよう、適切に配慮を行う必要がある
・保険料水準の過度な上昇を抑制する観点や、対象地域の内外での報酬水準の均衡等も踏まえて、サービス提供量と比べて過大な報酬とならないようにする必要がある
・利用回数や時間にかかわらず一律の報酬となることにより、利用者が必要以上にサービスを利用する、事業者が必要なサービス提供を控える、といったモラルハザードを抑制する必要がある
といった点に十分な留意が必要である。
◯このため、具体的な報酬設計については、利用者像ごとに複数段階の報酬区分を設定することや、区分支給限度基準額との関係性にも配慮しつつ包括化の対象範囲を設定するなど、きめ細かな報酬体系とする方向で検討を進める必要がある。こうしたことも踏まえて、報酬水準の設定に当たっては、現状の十分なデータ分析の下、包括的な評価の仕組みを導入する事業者の経営状況や、サービス提供状況等に与える影響を考慮しつつ、今後、介護給付費分科会等で議論することが適当である。
◯また、ニーズを有する地域の事業者が迅速に対応できるよう、希望する自治体においては、第10期介護保険事業計画期間中の実施を可能とすることを目指し、第9期介護保険事業計画期間中に検討を進めることが適当である。
続いて、「介護サービスを事業として実施する仕組み」についてです。
◯今後、2040年を見据えると、サービスを提供する担い手だけでなく、更なる利用者の減少が進む地域も想定される中、上述のような給付における特例の仕組みを活用しても、なおサービス提供体制を維持することが困難なケースが想定される。
◯こうした地域においても、契約に基づき利用者本位でサービスを選択するという介護保険の制度理念を維持するとともに、利用者が住み慣れた地域を離れ、在宅での生活を継続することが困難となる状況を防ぐことが重要である。
◯このため、こうした場合に備えた中山間・人口減少地域における柔軟なサービス基盤の維持・確保の選択肢の一つとして、給付の仕組みに代えて、市町村が関与する事業により、給付と同様に介護保険財源を活用し、事業者がサービス提供を可能とする仕組みを設けることが適当である。
◯この仕組みにおいては、要介護者等に対して、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護等といった給付で実施するサービスを実施できるようにするとともに、こうしたサービスを組み合わせて提供することが考えられる。このようなサービス提供についても、利用者との契約に基づき、適切なケアマネジメントを経て、要介護者に対して介護サービスを提供するという点においては、給付サービスと変わりがない仕組みとすることが適当である。また、本事業は、人口減少社会の中で、被保険者(住民)のために介護サービスを維持・確保することが目的であり、その導入に当たっては、対象地域の特定と併せて、介護保険事業(支援)計画の策定プロセスの一部として、被保険者(住民)等の関係者の意見を聴きながら検討することが想定される。
◯今回の新たな事業の仕組みによる事業費については、例えば、圏域を超えて訪問する際の経費など、中山間・人口減少地域へのサービス提供に係る追加的な費用も勘案することも考えられる。なお、複数のサービスを組み合わせて弾力的に提供するケース等が想定されることを踏まえると、単独の事業所等におけるサービス提供時に要するコストと比べて、一定程度効率的に実施することも可能になることも想定される。
◯その上で、新たな事業は、地域支援事業の一類型として実施することが考えられ、その財源構成は、国、都道府県、市町村、1号保険料、2号保険料ごとに、現行の給付サービスと同様の負担割合とすることが考えられる。
◯中山間・人口減少地域における居宅サービスが継続的に提供されることにより、当該地域における在宅の要介護高齢者が引き続き在宅で生活することが可能となること等を踏まえると、この事業の実施が当該市町村の介護保険財政に与える影響は、施設サービス等の他の給付費を含めて総体的に見ればそれほど大きなものとはならないと考えられるものの、保険財政規律を確保する観点から、当該事業費の総額についても、他の地域支援事業と同様に、高齢者の伸び率等を勘案した上限額を設定することが考えられる。
◯包括的な評価の仕組みと同様、中山間・人口減少地域における事業者の経営やサービス提供の状況等を十分に検証の上、こうした地域において実際に活用可能なものとなるよう、都道府県や市町村の負担軽減の観点も含めて、関係者の意見を丁寧に伺いながら、検討を進めることが必要である。
◯なお、介護サービスを事業として実施する仕組みについては、制度の導入により、市町村に責任が集中することにならないよう、都道府県が一定の関与をする仕組みとするなど、丁寧な検討を行うべきとの意見があった。
最後に、「大都市部・一般市等における対応」に関し、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護の統合」についてです。
◯定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、要介護高齢者の在宅生活を24時間支えるサービスとして、日中・夜間を通じて訪問介護と訪問看護の両方を提供し、「定期巡回」と「通報による随時対応」を行っており、特に今後増加する都市部における居宅要介護者の介護ニーズに対して柔軟に対応することが期待されている。一方で、夜間対応型訪問介護は、夜間における「定期巡回」と「通報による随時対応」を行うもので、これまでの本部会等の議論においても、両サービスは機能が類似・重複しており、将来的な統合・整理に向けた検討の必要性について指摘があったところである。
◯両サービスの機能・役割や、将来的なサービスの統合を見据えて段階的に取り組んできた状況を踏まえ、また、
・夜間対応型訪問介護の多くの利用者は日中の訪問介護を併用しており、日中・夜間を通じて同一の事業所によって24時間の訪問介護(看護)サービスを一体的に受けられることは、夜間対応型訪問介護の利用者にとって効果的と考えられること
・8割以上の夜間対応型訪問介護事業者が定期巡回・随時対応型訪問介護事業所も運営しており、定期巡回・随時対応型訪問介護事業所にとっては、事業所の指定手続や報酬請求事務等が効率化されるなど、限られた地域資源の有効活用にも資すること
・令和6年度介護報酬改定で設けた定期巡回・随時対応型訪問介護看護の新区分について、利用者に不利益は生じていないと考えられることから、夜間対応型訪問介護を廃止し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と統合することが適当である。
◯なお、この際、必要な人員の確保やサービスの認知度向上など、利用者・事業者双方への影響にも十分配慮する必要があることから、一定の経過措置期間を設けた上で、人員配置基準や報酬に関して特例的な類型を設けることが適当である。
タイムリーにキャッチアップしつつも、過度に振り回されないように
以上、今月は「介護保険制度の見直しに関する意見」から一つのテーマに絞り、お伝えしました。今回の資料により、2027年の法改正・報酬改定へ向けての大きな方向性は概ね示されたと思われます。今後の手続きとしては、議論は介護給付費分科会へと引き継がれ、より細かな改正法案・改定報酬案に関する審議が展開されることになります。経営者・幹部の皆様は是非、ご自身でも情報を追いかけていただくと共に、制度の活用は重要である一方、そこにばかり心が奪われ、結果、制度に振り回される、ということがないよう気をつけていただく必要もあるかもしれません。
いずれにせよ2027年の改正・改定へ向け、2026年はさらに具体的な議論が始まります。
我々もしっかりと追いかけ、タイムリーな情報提供を心掛けてまいりますので、引き続きよろしくお願い致します。
※本ニュースレターの引用元資料はこちら
↓
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001622725.pdf
結論|「給与額」よりも「納得感」が職員定着を左右する
クリニック職員の離職理由で最も多いのは、実は「給与が低いから」ではありません。
評価基準が分からない・頑張っても給与が上がらないといった「不透明さ」が、定着率を下げる最大の要因です。
クリニック専門社労士として数多くの医療機関を支援してきた経験から言えるのは、
職員が定着する給与制度には“共通する設計思想”があるということです。
1. クリニック職員が離職する本当の理由
社労士コメント
「給与が不満」と言われても、詳しく聞くと“金額”ではなく“決め方”に不満があるケースがほとんどです。
よくある離職理由には次のようなものがあります。
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昇給基準が院長の感覚で決まっている
-
ベテランと新人の給与差がほとんどない
-
評価されているのか分からない
-
他院と比べて妥当なのか判断できない
これらはすべて、給与制度が仕組み化されていないことが原因です。
2. 定着するクリニック給与制度の3つの原則
原則①「評価基準が明文化されている」
職員が安心して働き続けるためには、
何を頑張れば評価されるのかが明確である必要があります。
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接遇
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チーム貢献
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業務習熟度
-
役割・責任
これらを言語化し、評価シートとして見える形にすることで、
「院長の気分で決まる給与」から脱却できます。
原則②「昇給の道筋が見える」
社労士として強くお伝えしたいのは、
昇給額の大小よりも“将来像”が重要という点です。
例:
-
入職3年でどの水準になるのか
-
役割が変わるとどう変化するのか
この道筋が見えるだけで、職員の離職率は大きく下がります。
原則③「院長の想いが制度に反映されている」
制度だけを他院からコピーしても、うまくいきません。
社労士コメント
「良い給与制度とは“院長の価値観を翻訳したもの”です」
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患者対応を重視したい
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チームワークを大切にしたい
-
長く働いてほしい
これらを評価項目に落とし込むことが、定着につながります。
3. 職種別に考える給与制度設計のポイント
医療事務
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接遇力
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業務正確性
-
後輩指導
→ 年功ではなくスキル評価を入れることでモチベーション維持
看護師
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診療補助スキル
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判断力
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リーダー性
→ 役割給を導入すると定着率が向上
歯科衛生士・技師
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専門性
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患者満足度
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売上貢献
→ 評価が曖昧だと転職リスクが非常に高い職種
4. よくあるNGな給与制度
社労士が実際に見てきた失敗例
-
毎年なんとなく一律昇給
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人事評価はあるが給与と連動していない
-
「頑張りは見ている」という口頭評価のみ
これでは、真面目な職員ほど先に辞めてしまう傾向があります。
5. 小規模クリニックでも導入できる現実的な制度とは
「うちは小さいから無理」と言われることがありますが、
実際はスタッフ5名規模でも導入可能です。
ポイントは、
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評価項目は10個以内
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昇給ルールはシンプル
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年1回、必ず面談を行う
完璧を目指さず、運用できる制度が成功の鍵です。
6. クリニック専門社労士としての実体験コメント
制度導入後、「ここで長く働けそうです」と言われた院長先生の表情が忘れられません。
給与制度は単なるコスト管理ではなく、
院長と職員の信頼関係を形にするツールです。
まとめ|給与制度は“採用対策”であり“定着対策”
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給与制度=職員へのメッセージ
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明確な評価と将来像が定着を生む
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専門家の伴走で失敗リスクを下げられる
「人が辞めないクリニック」は、制度で作れます。
職員が定着する給与制度を、貴院に合わせて設計しませんか?
クリニック専門社労士が、現状分析から制度構築・運用までサポートします。
まずは無料相談をご利用ください。
⇒
専門社労士が解説!クリニックの人事評価制度で実現する「定着」と「採用コスト削減」の好循環【完全ガイド】 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング





