医療

Q 自主的に始業時間前に出勤してくるスタッフに、その時間給の給料を支払う必要はありますか?

A、命令がなく、業務とは無関係な早めの出勤については、給料を支払う必要はありません。

 

労働時間とは

 労働時間とは原則として「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことを言います。つまり、院長の指示命令がないのもかかわらず勝手に出勤している時間というのは労働時間ではありません。

業務命令はなくとも業務上必要な時間は労働時間

しかし、始業時間830分からでも「815分に出勤して、これとこれをやっておかなければ、診察の受付時間である830分には開始できない」という場合があります。このことを院長がわかっていながらスタッフの善意に頼ったままで積極的な対策を講じない場合、

この15分は黙示の業務命令の下行った業務として業務時間として扱われます。命令がなくとも15分前出勤が常態化しているのであれば、業務上必要な時間であり、それは労働時間になる可能性が高いといえます。

 そもそもクリニックの始業時案は、診療受付までの準備を要する時間を見積もったうえで設定されますから830分の受付開始時間と同時に労働時間がスタートするといったところは聞いたことがありません。つまり、準備時間を15分と見積もるなら、815分が始業時間になるわけです。

掃除などをしてくれる場合には

質問のポイントは 例えば830分からの勤務時間開始でよいにも関わらず、8時からきて作業をしている場合にはどうするか」という点にあります。指示していないけれど、何かやっている、そしてタイムカードをおしている、するとこの時間に対価を支払うべきであるか、という疑問が出てくるであろうと思います。

 しかし冒頭に述べたように、あくまで労働時間は指揮命令下にある時間です。自主的に作業をしていることに対して原則、給与の支払いは必要ありません。

職場の人間関係にも配慮する

また「830分始業なのに、一番の先輩社員が8時に出勤しているため他のスタッフが全員8時に出勤している」といったケースもあります。そうすると新しく入ったスタッフから「事実上強制的に出社させられているのになぜ給料がでないの」といった文句が出てきます。そのような場合に、早く出勤するスタッフに「ほかのスタッフが影響を受けるので、あまり早く出勤しないように配慮してほしいこと」もしくは「早く出勤するのは構わないが、他のスタッフに同時の時間に出勤することを強制しないように」と伝える必要があります。

自主的に早く出勤するスタッフにも、それぞれの理由があるのでしょう。準備をしっかりとしてから仕事を始めたいというプロ意識から早く出勤するスタッフもいるでしょう。仕事の喜び、積極性、職場への貢献やチームワークといった仕事観を否定することのないよう、伝え方には十分配慮する必要があると思います。

 

タイムカードの管理

タイムカードの打刻時間は原則としてクリニックに入った時間と出た時間を示しており、必ずしもそのすべてが労働時間になるわけではありません。業務がおわりスタッフ間でおしゃべりをして帰る場合などその時間まで給料を支払う必要はないのです。

 ただし注意しなければならないのは、おしゃべりの時間わからないと、タイムカードの出勤時間から退勤時間までの時間がそのまま労働時間とみなされてしまう可能性があるということです。そのため「時間外労働は、院長の指示で行うものでおこなうものである」と周知しておくとともに、院長が承認しなかった時間がある場合にはその都度記載しておくなど、適切に把握しておくことが必要です。よくあるのは、タイムカードと時間外労働申請を並行して取り入れているケースです。例えば、17時間までの勤務の人が17時半にタイムカードが押されているような場合、時間外申請が「患者対応のため15分残業」となっていれば15分の残業代を支払えばよいということになります。このように時間外労働の管理があれば、タイムカードを押していたとしても、その分の給料をすべて支払う必要はないということになります。

 

診療科名に「睡眠障害」追加、来年3 月ごろ取りまとめ 医道審部会

厚生労働省は4 日、「睡眠障害」を追加することを検討

 

医療機関が看板などで標榜できる診療科名について、厚生労働省は4 日、「睡眠障害」を追加
することを検討し、2026 年3 月ごろ取りまとめを行う方針を医道審議会の部会に示した。睡眠
障害単独ではなく、内科や精神科などと組み合わせた新たな診療科名を想定。基本的な考え方
として、▽独立した診療分野を形成▽国民からの要望が強い診療分野▽診療科名が分かりやす
く国民が適切に受診可能▽診療分野に関する知識・技術が医師に普及・定着-という4 つの基
準に従い、学術団体の意見などを踏まえて決める。

睡眠障害を標榜可能な診療科名に追加する方向で検討を始めた。26 年3 月ごろ取りまとめを行う。

医療機関が標榜(広告)を行うことができる診療科名は、08 年4 月に見直しが行われた。内
科や外科、精神科、アレルギー科などは単独での標榜が可能で、それら単独で標榜可能な診療
科名と組み合わせた診療科名も標榜できるようになった。そうした中、日本睡眠学会が25 年4
月、単独で標榜可能な診療科名と組み合わせて標榜できるものとして睡眠障害を追加するよう
厚労省に要望書を提出。その際、「睡眠障害内科」「睡眠障害精神科」「内科(睡眠障害)」「精神
科(睡眠障害)」などを提案していた。
この要望を踏まえ、医道審議会(厚労相の諮問機関)の診療科名標榜部会が4 日に会合を開
き、睡眠障害を標榜可能な診療科名に追加する方向で検討を始めた。今後、同学会から説明を
受け、26 年3 月ごろ取りまとめを行う。

職員に問題行動を起こさせない採用とマネジメントのポイント

理念や方針に従わない。他の職員に悪影響を及ぼす。院内の雰囲気を悪くする    。問題職員に頭を悩ませる医療機関は多いのではないでしょうか。職員の問題行動を防ぐにはどんな取り組みを行うべきなのか。医療法人社団SEC新宿駅前クリニックの蓮池林太郎院長に問題職員対策について解説してもらいました。

問題職員の入職を防ぐ4つの基本的対策

問題職員対策としてはまず「問題職員を採用しない」ことです。「人事の8割は採用」と言われるほど採用は重要で、どれだけ優秀な経営者や管理職でも、問題職員を教育で変えることは非常に困難です。

とはいえ、優秀な採用担当者でも書類選考や面接だけで本質を見抜くことは難しいというのが実情。ただ、問題職員を採用する確率を下げる方法はあります。最低限、次の4つは行うべきです。

■トライアル勤務

トライアル勤務で能力や人柄がある程度わかります。主な職種の確認すべきチェックポイントは次の通りです。

医師=能力(判断力、説明力、患者さんからのフィードバック、診療スピード)、人柄(患者対応、看護師や医療事務への対応)

看護師=能力(点滴、注射などの手技、臨床知識など)、人柄(患者対応、同僚との相性、医師や医療事務への対応、業者への対応)

医療事務能力(受付対応、入力速度と正確性、レセプト、電話対応など)、人柄(患者対応、同僚との相性、医師や看護師への対応、業者への対応など)

トライアル勤務には応募者にもメリットがあります。どのような人がいるのか、どんな仕事内容なのかなどを体験しながら確認することができるからです。トライアル勤務を挟むと本人から辞退の申し出があるなど入職率は下がりますが、ミスマッチを防ぐという意味では互いにメリットがあります。

もちろん、トライアル勤務ですべてはわかりませんが、予防策としては優れています。

■同職種を含めた複数人面接

1人での面接の場合、どうしても見落としがでてしまう可能性が高くなります。人柄や能力、性格や相性などは複数人で確認すべきです。看護師や医療事務職は面接については素人ですが、業務スキルや経験、相性の確認などは現場職員のほうが長けていると言えます。また、「自分も一緒に選んだ」という責任感から、入職後の面倒をみたり問題行動を指摘したりしてくれるようにもなります。

■相場より高い給与での募集

当たり前のことですが、給与が高いと優秀な人材の応募確率は上がりますが、注意が必要なのが事務職です。医師や看護師などの専門職は地域の医療機関の求人情報などを確認すれば相場は把握できますが、事務職の場合、一般企業の相場も確認したうえで設定すべきです。たとえば事務長などの場合、500万円以上にしないと優秀な人は応募してこないと思います。また、新しく募集する職員の給与を上げた場合、既存職員の給与も上げる必要があります。

■「長く働いてほしい」を強調

求人広告やホームページ、面接時やトライアル勤務時にも「長く働いてほしいので合わないと思うなら辞退してほしい」と強調するのも大切。人手不足の現在、他にも職場はあるため「合わない」という人は応募してこなくなる可能性が上がります。大切なのは応募者を増やすことではなく、自院に合う人材に応募してもらうことです。

面接時に注意したい問題化しやすい人の傾向

経験則になりますが、問題化しやすい人の特徴も挙げておきます。

■攻撃性が強い

面接の質問に対してはっきりとものを言う「攻撃性が強い」人は、積極的な言動もあり頼りになりそうな印象を受けます。仕事ができる人も多いのですが、同僚にも攻撃的な姿勢をとる傾向があります。攻撃性が強い人が入ってきたことで離職者が増え、ひどい場合は組織が崩壊してしまうこともあります。攻撃性が強い人は、チームワークが重要な医療機関には向いていないと思います。

■転職を繰り返す

転職を繰り返している人は採用後、すぐに辞めてしまう傾向があります。また、仕事を辞めることに抵抗がなく、職場の輪を乱すなど問題化の確率も上がります。仕事をしていない期間が長い人も要注意です。子育てなどきちんとした理由がある場合は問題ありませんが、試用期間途中に退職を繰り返していたことなどを隠している可能性もあるからです。履歴書を見て、きちんとチェックすべきです。

■副業をしている

副業自体は非難されることではありませんが、採用する際には確認する必要があります。なかには副業が主業で、医療機関での勤務を「副業」とみなしている人もいます。こうした場合は副業優先となり、嫌なことがあると辞めてしまいやすい傾向があります。医師や看護師などは資格があり給与が良いのでやっているだけで、本当はやりたくないという場合もあります。

■持病がある(精神疾患)

当たり前かもしれませんが、精神疾患に罹患している人は、仕事を休んだり、辞めたりしやすい傾向にあります。

問題行動の予防には緊張案とルール順守が必要

問題職員を入職させないことが最も重要ですが、職員に問題行動を起こさせないための仕組みづくりも必要です。これに関しては次のような方法があります。

■誓約書の提出

誓約書にルールや禁止事項を記載しサインしてもらいます。そうすれば「きちんとルールで運営されている」「変なことはできない」という印象を与えることができます。

■身元保証書の提出

誓約書と同時に身元保証書も提出してもらいます。身元保証人は親が良いでしょう。連絡先として電話番号も記載してもらうと抑止力にもなります。なお、身元保証人の損害額の上限記載がない身元保証書は無効ですので注意が必要です。

■マニュアル化する

業務内容や患者対応などをマニュアル化しておきます。ルールを決めるといちいち指摘する回数が減り、無駄な軋轢が減らせます。また、マニュアルからずれた対応をした場合も指導しやすくなります。

■定期的なコミュニケーション

定期面談や食事などのコミュニケーションも有効です。悩みごとやトラブルをいち早く察知でき、モチベーションを上げるために感謝の気持ちを伝えられます。「勤務時間外は・・・」という人もいるので、勤務時間中に場を設けるなど本人の希望を優先させます。

■人事評価を行う

いくら仕事ができて価値観が合致していても、信頼して任せっきりにするとさぼったりやる気をなくしたりすることもあります。常に緊張感が必要で、定期昇給以外に働きを評価し、賞与や特別手当等を支給する人事評価も効果があります。緊張感により「常に評価されている」という意識が芽生えます。

 

問題職員が発生した場合は速やかに辞めてもらうことが重要ですが、職員に落ち度があっても正職員を解雇するのは難しいのが現状です。仕事を突然何日か欠勤しても、勤務時間中にスマホゲームをしても、院長の悪口を言っていても、すぐに解雇することはできません。退職勧奨も間違えると労働争議につながる恐れがあるので、必ず、弁護士や社会保険労務士の指導の下で行ってください。

労務トラブルをネットで検索すると、多くの情報が出てきます。無料でメール相談を行っている弁護士事務所もあるので、医療機関側としては注意する必要があります。

労務トラブル回避の一番の予防策はきちんと法令順守すること。当たり前のことですが、きちんとできていないところは少なくないと思いますので気をつけてください。

令和6年度介護労働実態調査結果 離職率に関するデータを確認しましょう

「介護労働実態調査」の調査結果が発表

2025年7月28日、2005年度から続く「介護労働実態調査」が公益財団法人介護労働安定センターより発表されました。本実態調査は「事業所における介護労働実態調査」と「介護労働者の就業実態と就業意識調査」の2種類に分かれておりますが、今回のニュースレターでは「介護労働者の就業実態と就業意識調査」の中から、「離職(⇔定着)」というテーマに沿って、事業者として特に認識・確認しておいた方が宜しいかもしれない情報・データを大きくピックアップし、皆様にお届けいたします。「この視点において、自社の実情はどうなっているのだろうか?」是非、そのような視点を持ちつつ、目を通していただければ幸いです。

 

【厚生労働省「雇用動向調査」における離職率】

介護職員の離職率は12.8%、訪問介護職員の離職率は11.4%、と、今回の調査結果では過去の実績と比較して最も低い数値を更新しています。また、「厚生労働省「雇用動向調査」における離職率」に目を移してみると、令和6年度の数値はまだ出ていないものの、傾向から推測する限り、恐らく全産業平均よりも低い数値で収まっている可能性が高く、その意味でも注目すべきデータではないかと思われます。

では、次のデータを確認してまいりましょう。「2職種計の採用率と離職率の分布」についてです。

【2職種計の採用率と離職率の分布】

離職率に関しては「10%未満」と回答している事業所が53.6%に上っています。その他の数値も含めて見る限り、また、筆者の現場感覚を踏まえても、「低い離職率で収まっている事業所」と「そうでない事業所」の2極化が現実として進んでいるのではないか、と推測できるところです(この傾向は以前からありましたが、離職率10%未満が53.6%にまで上昇しているのも注目すべきところかと思います)。

次のデータは「訪問介護員、介護職員の年齢階層別採用率と離職率」についてです。

【訪問介護員、介護職員の年齢階層別採用率と離職率】

2職種各々で見ても29歳以下、即ち若手世代の離職が多いことがわかります。転職先が業界内であれば、「流出していない」という意味でまだ安心(?)できるところではありますが、他業界へ流出している可能性もあるかもしれないことを考えると、やはりこの「若手」の離職についてはより一層、様々分析を行うことが必要ではないかな、と感じる次第です。

次のデータは「現在の職場を辞めずに働き続けることに役立っている職場の取り組み(複数回答)」についてです。

【現在の職場を辞めずに働き続けることに役立っている職場の取り組み(複数回答)】

「人間関係が良好な職場づくり(47.2)」「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり(43.2)」が突出して高いことはあらためて注目かもしれません。一方、これらを実現するとなると、「ギリギリの人員で現場を維持する」という考えではなかなか難しいかもしれず、逆に申し上げるなら、「多少の人員余裕を許容できる程度の経営基盤をどうつくっていくか」が大きなポイントになるかもしれない、と感じる次第です。

それでは最後に「直前の介護の仕事を辞めた理由」についてのデータを2つ続けて見てまいりましょう。こちらは毎年、「職場の人間関係」及び「事業理念や運営のあり方への不満」が最上位に上がってくるわけですが、それらをもう一段階掘り下げたデータを確認してまいりたいと思います。下記のデータは「辞めた理由が職場の人間関係の問題の場合の具体的な内容(複数回答)(直前の仕事が介護関係)」についてです。

【辞めた理由が職場の人間関係の問題の場合の具体的な内容(複数回答)
(直前の仕事が介護関係)】

大きな要因の多くに「上司」「先輩」という言葉がみられるところは要注目かもしれません。「リーダー陣の言動や振る舞いが人間関係に大きな影響を及ぼす傾向が高い」とするならば、リーダーの選抜は勿論のこと、スキル面やメンタル面においても、法人としてリーダーへのサポートをより充実させる必要があるかもしれないな、と感じた次第です。
最後のデータは「辞めた理由が事業理念や運営のあり方への不満の場合の具体的な内容(複数回答)(直前の仕事が介護関係)」についてです。

【辞めた理由が事業理念や運営のあり方への不満の場合の具体的な内容(複数回答)
(直前の仕事が介護関係)】


人間関係に関するデータと異なり、突出した要因がない(とはいえ多くの要因が30%以上)ところが大きな特徴のように見えますが、総じて経営陣が考える「理想」と現場の「現実」のギャップに依るところが大きいかもしれず、その意味においてはこの点におけるコミュニケーションの充実がより一層求められるのかもしれないな、と感じた次第です。

自社の現状を把握し調査結果と比較することで対応を検討


以上、概要・ポイントをお届けいたしました。まだまだ様々な視点のデータが公表されておりますので、詳細は下記URLを参照いただければと思います。
介護経営に携わる方や人事・組織づくりに携わる皆様は、自社の現状を把握し、調査結果と比較することにより、様々な気付きや学び、或いは改善のヒント等を得ることが出来るものと思われます。そのような視点で是非、本情報を有効に活用していただければ幸いです。私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。

※引用元資料はこちら
事業所における介護労働実態調査結果報告書(令和6年度)
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/

Q、弊社では各事業所の責任者(所長)である管理者は、労基法上の管理監督者としての扱いで、残業代や休日労働の手当を支給していません。ただ、遅刻、早退、欠勤があった場合には、一般社員と同様に給与を減額しています。管理監督者の扱いに関してこの方法で問題ないでしょうか?

A 労働基準法41条の除外規定として、労基法上の管理監督者は深夜業務を除く、労働時間に関する規定は適用されないと定めています。

まずは、労基法上の管理監督者とはどのよう方を指すのかを確認しておきたいと思います。ここでいう、「管理監督者」とは下記の要件を全て満たす方を指します。

1,人事権を持ち、事業経営にも参加している(ここでいう人事権とは、いわゆる異動を含む人事権で、人事評価しているだけでは不十分)

2,自分自身の勤務時間について自由裁量が認められている

3、一般社員と比べて、十分な報酬を得ている

これらの3点を、勤務の実態として適用されている必要があります。単に役職名では判断できません。つまり休日、時間外労働の規制をうけない「管理監督者」に該当するかどうかは、具体的な権限や給与、勤務実態で判断が必要ということになります。

例えば、多くの介護事業所ではシフト勤務で勤怠管理を行っていますが、常態として勤務シフトに入っている働き方をしているような管理者がいた場合、勤務時間の自由裁量がないと判断され、管理監督者ではなく、一般社員とみなされる可能性もあります。

先ほど、管理監督者に該当するか否かを判断するときに、単に役職名での判断ではなく、勤務の実態で判断しなければならないとしましたが、多くの介護事業では職責(役職)で、それを判断している場合が多い上に、介護保険制度における「管理者」と労基法における管理監督者を混同してしまうケースもあるので注意が必要です。一般的には、理事長、社長、施設長、事業所長、事務長くらいまでの立場の方がそれに該当するケースが多いと考えられます。もし、それ以下の役職の方(例えば、主任、副主任やリーダー等)を管理監督者の扱いにして残業代などを支給していない場合は、一度、その方の業務や給与の実態を確認してみる必要があると思います。その結果、管理監督職に該当しない方に、残業手当等を支給していない場合には、労基署からは残業代未払いの扱いとして、「3年間分を遡及して」支払うといった是正勧告を受けるリスクがあります。

 

 2,また、管理監督者には残業代は支給されませんが、勤務時間管理自体は必要となります。

これは、給与計算上の必要性ではなく、管理監督者の健康管理の問題によるものです。管理監督者はその責任の重さから、過重労働になってしまうケースは相変わらず多く、それが深刻化するとメンタル疾患につながる場合も見られます。従って、経営者や人事担当者は管理監督者の労働時間には常に注意を払い、管理監督者の健康管理に十分注意することが重要です。

 

 3,今回ご質問のあった管理監督者における遅刻・早退・欠勤に関する給与の扱いについて

その方が管理監督者に該当することを前提とした場合に、先述の要件の「勤務時間の自由裁量」の点が問題になります。つまり、管理監督者は勤務時間に裁量が認められていることから、始業時刻から遅れて出社(遅刻)しても給与減額扱いにはなりませんし、また終業時刻より遅くなっても残業手当はつかないことになります。

ただ、欠勤の扱いにつきましては、管理監督者であっても「就業義務」自体はありますので、その義務が果たされない場合に該当すると判断され、給与も欠勤控除として減額することになります。

 

スマホ保険証を9 月19 日から運用開始 厚労省

スマートフォンに搭載したマイナ保険証でのオンライン資格確認開始すると発表した

厚生労働省は8 月27 日、スマートフォンに搭載したマイナ保険証(スマホ保険証)でのオン
ライン資格確認について9 月19 日から運用を開始すると発表した。これに先立ち、スマホを読
み取るのに必要な汎用カードリーダーを購入できるEC サイトの専用ページを8 月29 日に開設。
汎用カードリーダーはマイナカードを読み取る顔認証付きカードリーダーに接続する。

厚労省は汎用カードリーダーの設置費用を補助


29 日に開設される「Amazon ビジネス」の専用ページから購入が可能。厚労省は汎用カードリ
ーダーの設置費用を補助するとしており、病院や診療所、薬局向けに発行されたクーポンの利
用で1 台につき補助率2 分の1 で購入できる。補助上限は7,000 円。病院は3 台、診療所と薬
局は1 台まで補助の対象となる。

厚労省、介護の「デジタル中核人材」研修を開催 テクノロジー活用の牽引役を養成

 

国の今年度の「デジタル中核人材養成研修」が開催される。厚生労働省が1日に介護保険最新情報のVol.1416で周知し、現場の関係者に広く参加を呼びかけた。

どの業界も人手不足が顕在化するなか、介護現場でも生産性向上が喫緊の課題。厚労省は通知で、「いま求められているのは、限られた人員でも質の高いケアを継続的に提供できる体制を構築すること」と改めて説明した。

今回の研修は、現場で課題を見つけて改善策を立案・推進できる中核人材、職場の実践力を高めるリーダーシップのある人材を養成することが目的。

導入が進むテクノロジーをより有効に活用することで、介護の質の向上や職員の負担軽減、働きやすい職場環境の整備につなげる狙いがある。


厚労省は7月にまとめた「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ」でも、「デジタル中核人材」を養成・配置することの必要性を強調していた経緯がある。

 

研修の開催期間は今年10月から来年2月まで。Zoomなどを活用したオンライン形式で行われる。参加費は無料。


研修は事前課題に加え、3日間のオンライン授業や自職場での実践、確認テストなどで構成される。修了者には修了証が発行され、介護サービス情報公表制度の報告事項として活用することもできる。

研修の対象者は、介護事業所・施設での勤務経験が3年以上あり、業務改善やテクノロジーの導入に関わっている、または今後取り組みたいと考えている人。定員は1500人で、申し込みは日本介護福祉士会の研修管理システム「ケアウェル」を通じて行う。


デジタル中核人材養成研修の詳細や参加申し込みはこちらから→

Q 時間外の計算は1分単位なのか、15分や30分単位でもいいのか

A 1分単位が原則です。ただし、端数を切り上げる場合には15分単位、30分単位でも

 構いません。

 

切り上げにしないと給料未払いに。 給与計算上、よくある質問ですが、基本は1分単位です。例えば、17時までの就業時間で1742分まで働いた場合、12分カットして30分の残業代を支払った場合、12分の就業に関する支払いは未払いになってしまいます。

 

給与計算上は楽だということで15分単位の取り入れている事業所はよくあります。もし15分単位とするなら切り上げでなければいけません。つまり17時までの就業時間で1742分まで働いた場合には45分間の残業代を支払うことになります。管理の手間と数分プラスになる賃金のどちらをとるかの判断になります。

 

例外として、1か月の時間外労働、休日労働、深夜労働の合計に1時間未満の端数が

ある場合には30分未満の端数の切り捨て、それ以上を1時間に切り上げるといった端数処理は認められます。つまり月のトータル残業時間が3時間20分であった場合には3時間として、3時間40分であった場合を4時間とすることは可能です。

未払い残業は行政指導の対象に

残業代を未払いのまま労基署の監査が行われると「是正勧告書」「指導票」により行政指導が行われます。例えば3か月分の未払い残業の「遡及支払い」を命じられた場合、未払いとなっている時間数及び給料の額を3か月間さかのぼって計算し、当該スタッフへの不足額を支払うなど、まずは行政書道に従い原則対応することになります。

 

適切な時間管理とは

厚労省から平成13年に出された「労働時間の適正な把握のため講ずべき措置」では以下のように定められています。

 

  • 労働日ごとに、何時から仕事を開始して、何時まで仕事をしたか、確認し記録すること。
  • 使用者が自ら確認し記録するか、タイムカード、ICカードなどの客観的な記録を、適性に申告するように十分に説明すること。必要に応じて実態調査をすること。
  • 労働時間の記録に関する書類は3年間保存すること。

 

労働時間の上限を設定して、上限を超える時間を切り捨てたり、そもそも労働時間の記録がないため「時間外労働がない」としたりしている場合には法律違反になります。

固定残業代として定額を支給する際には慎重に

 

固定残業代を設定すると仮に残業代が発生しない月があっても残業代を支払わなければなりません。しかも実際に行われた残業が想定された10時間を超えると、別途残業代の支払い義務が発生します。そのため実態を確認した上で「何時間分を固定で支払うか」を決めなければなりません。固定残業手当を適切に運用するためには次の三つが要件とされています。

  • 基本給と割り増し賃金部分が明確に区分されていること
  • 割増賃金部分には何時間分の残業が含まれているかが明確であること
  • 上記②を超過した場合には、別途割増残業が支給されること

 

この方法は、残業が大体同じ時間発生している場合には適している方法ですが、月によって残業時間が大きく変動したり、人によってばらばらであったりする場合には、かえって管理が煩雑になる場合があります。導入によりメリットとデメリットをよく検討して慎重に判断する必要があります。

 

ベースアップ評価料、病院の9割が届け出  中医協・分科会

全国の病院の約9割がベースアップ評価料を届出

厚生労働省は21日、全国の病院の約9割が7月7日の時点でベースアップ評価料を届け出て
いたとするデータを中央社会保険医療協議会の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」に示
した。診療所は約 4 割が届け出ていた。一方、ベースアップ評価料を届け出ていない病院の開
設主体は医療法人や公立病院の割合が高く、許可病床の規模別では100床未満が高かった。
分科会はこの日、2026 年度の診療報酬改定に向けて医療現場の賃上げ・処遇改善の議論を始
め、厚労省は、「医療・福祉」分野での賃上げが全産業の水準に追い付かず、23 年度以降は格
差が広がったとするデータを分科会に示した。それを受けて津留英智委員(全日本病院協会常
任理事)は意見交換で、他産業並みの賃上げに医療現場が対応できない状況が26年度以降も続
くと「大変な問題になる」と述べ、ほかのテーマとは別格での議論が必要だと強調した。

「外来・在宅ベースアップ評価料Ⅰ」の届け出は全国の8,045病院のうち7,207病院(89.6%)とほぼ9割が届け出


厚労省によると、病院や診療所に勤務する医療関係職種の賃上げを実現させるため、24 年度
の改定で新設された「外来・在宅ベースアップ評価料Ⅰ」の届け出は25年4月ごろからペース
が上がり、7月7日現在、全国の8,045病院のうち7,207病院(89.6%)とほぼ9割が届け出て
いた。これに対し、医科の無床診療所は8万4,035カ所のうち3万3,830カ所(40.3%)、有床
診療所は5,339 カ所のうち 2,703 カ所(50.6%)が届け出ていた。歯科を含む診療所全体での
届け出割合は38.8%、病院と診療所を合わせた医療機関全体では41.3%だった。
厚労省はまた、外来・在宅ベースアップ評価料Ⅰを届け出済みの7,247 病院のうち 7,059 病
院(97.4%)、有床診療所は2,712カ所のうち1,260カ所(46.5%)が「入院ベースアップ評価
料」を届け出ているとするデータも示した(6月3日現在)。
全部で 165 通りある入院ベースアップ評価料のうち、病院(7,516 カ所)は評価料 16(1 日
16 点)から評価料20(20 点)の届け出が、有床診療所(1,353カ所)は評価料161(161点)
から評価料165(165点)の届け出が多かった。

Q, パートから常勤に変わった場合の有給はどのように与えればよいのでしょうか?

 

A 付与日の雇用形態が常勤であれば、常勤の日数を付与してください。

解説

 付与日に常勤であれば、常勤の付与日数になります。

 例えば、202111日に週3日のパートとして入職して、翌年202241日に常勤になった人がいるとします。

 この人は202171日に初めて有給の権利が発生しますが、その時点では週3日のパートであるため、比例付与の規定から5日間の有給が付与されます。次の有給付与日は202271日ですが、この時点ではすでに常勤職員であるため、常勤の規定に従い11日間が付与されます。

 よく質問を受ける内容として、常勤の付与日数とパートの付与日数を期間に応じて案分すればいいのか、というご相談があります。この場合には上記の通りの付与の考え方であって、案分することはありません。

 したがって、極端な例ですが、この人が2022630日にパートから常勤に変わった場合でも、71日に常勤になっていたら、常勤の付与日数に基づいた日数が有休の日数になります。反対に、常勤からパートになった場合も同様に考えるということになります。

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