BCP策定、介護事業者に求められる視座 

コロナ禍が介護業界を激しく揺さぶり、事業環境は劇的に変わった。多くの現場が厳しい状況に追い込まれたが、介護施設・事業所の存在意義、重要性に改めて光が当たるという驚きもあった。

介護事業者に社会が期待することも以前より増えた。およそ2年に及ぶ有事を通じ、この分野に更なる成長を求める動きが加速したのは間違いない。象徴的なのがBCP(業務継続計画)の策定。国は全サービスの事業所に義務付け、3年の経過期間を置いて2024年度から完全適用する決断を下した。

事業者にとって大きなルール変更となる。万が一の時でも必要なサービスを維持できるよう、それぞれが可能な範囲で備える努力をしていかなければならない。自然災害に激甚化の傾向が表れていることも背景要因の1つだ。

BCPを策定するうえで大事な視点はいくつもある。欠かせないものの1つが「食」。これが途絶える事態になれば、施設系や入所系は直ちに窮地に陥ってしまう。通所系や訪問系もやはり相応の準備が欠かせない。「行政の支援が始まるまで(*)自力で業務を続けられるよう、必要な備蓄をしておくこと」。厚生労働省の「BCPガイドライン」にはそう書かれている。

■「策定済み」の事業所はごく僅か

果たして現場の取り組みは進んでいるのか。まだまだ十分ではない、という業界の一般的な認識を裏付ける調査結果がある。民間シンクタンクのMS&ADインターリスク総研が昨夏に実施したものだ。

それによると、「BCPを策定済み」と回答した事業所は24.0%のみ。このうち、感染症と自然災害の両方を作り終えているところは41.3%に留まっている。未策定の事業所のうち、「策定中」と答えたのは47.3%と半数に満たない。まだまだこれから、というところが大半を占めているのが実情だ。サービスごとの違いもあり、施設系や居住系より通所系、訪問系が遅れていると報告されている。


 


「日々の業務に追われるなか大変なのはよく分かるが、事業所のためにも、職員のためにも、そして何より利用者のために対応を急がなければいけない」
 BCPの策定にあたりどんな視点が大切になるか。

全ての事業所が均一のものを作ればいい、という訳ではないことに留意して頂きたい。自分の事業所にとってどんな災害のリスクが高いか、どんな社会資源に頼ることができるか、どんな状態像の利用者がいるか − 。そうした個別性を十分に検討し、実際にワークするBCPを目指す必要があります。どこかでテンプレートを手に入れて済ますだけでは、有事での実効性を担保することはできません。個々の事業所が感染症や災害への危機感を持ち、自分の置かれた状況をしっかり反映したBCPを作ることが大事ではないでしょうか。

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