その行動が「集患」に直結…患者が「通い続ける」/「離れる」クリニックの分岐点

患者が「通い続けたい」と感じるクリニックの共通点と、院長が今日から取り組める改善のヒントについて、一般社団法人日本医療介護人材育成支援機構で理事を務める、開業医の武井智昭ドクターが解説した記事を紹介します。

クリニックから患者が離れる“本当の理由”

「医療技術が高ければ患者は来る」
そう信じて開業したものの、なかなか患者数が伸びない……。こうした悩みを抱える開業医は少なくありません。しかし、実際の患者行動を見ると、クリニック選びの基準は私たち開業医の想像とは大きく異なることがわかります。

日本医療機能評価機構が実施した患者満足度調査によると、もう二度と行きたくないと感じた理由の上位に「受付スタッフの対応」「医師の説明不足や態度」「スタッフのコミュニケーション」が挙がっています。

また、Googleの口コミで「★1」評価を受けているクリニックを分析すると、その約6割が「受付の態度が悪かった」、「医師に話を聞いてもらえなかった、粗雑に扱われた」など、不満の多くが医師やスタッフの「対応」であることが明らかになりました。

筆者自身も診療を続けるなかで、「前のクリニックは先生が優秀だと評判だったけれど、いつも忙しそうで質問しづらかった」、「医師に自分の話を聞いてもらえず、スタッフにもぞんざいに扱われた」といった声を何度も耳にしてきました。

技術や知識が大切であることはいうまでもありません。しかし、患者が最初に、そしてもっとも頻繁に接するのはです。受付での第一声、診察室での視線の合わせ方、会計時の笑顔やジェスチャー……こうしたコミュニケーションの積み重ねが、「このクリニックに通い続けたい」という気持ちを生みます。

実際、ある調査では「かかりつけ医を選ぶ理由」として話をよく聞いてくれる」68%スタッフの感じがいい」54%と、医療技術と効果」32%)を大きく上回っています。
つまり、患者は大切にされていると感じるクリニックを信頼し、反対にないがしろにされたと感じた瞬間、どれほど高度な治療を受けていても心が離れてしまうのです。


患者が「二度と行きたくない」と感じるスタッフのNGマナーTOP5

では具体的に、どんな対応が患者の心を遠ざけてしまうのでしょうか。実際の患者の声とともにみていきましょう。

第5位:服装・清潔感の欠如

「髪がボサボサで、白衣にシミがついているスタッフがいて不安になった」(40代女性)
医療機関である以上、清潔感は信頼の基本です。メラビアンの法則(※)が示すように、第一印象は視覚情報で決まります。
(※)メラビアンの法則とは、感情や態度を伝えるコミュニケーションにおいて、視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%の割合で影響を与えるという心理学の法則

第4位:待合室での私語が多い

「受付で『昨日のドラマ見た?』と大きな声で雑談していて、呼んでも気づいてもらえなかった」(60代男性)
患者は体調不良や不安を抱えて来院しています。スタッフ同士の私語は、その不安を軽視しているように映ります

第3位:早口・専門用語だらけの説明

「『では次回はこれとこれの検査をオーダーしておきますね』と早口で言われ、なんの検査かわからないまま終わった」(50代女性)
医療者にとっての日常用語も、患者にとっては“呪文”のように聞こえることがあります。

第2位:目線を合わせない

「医師だけでなく、受付も看護師もずっとパソコン画面を見たまま。私は人間じゃなくて番号なのかと悲しくなった」(70代男性)
電子カルテの普及で増えた問題ですが、一瞬でも目を合わせるだけで、印象は大きく変わります。

第1位:電話・受付での冷たい言葉遣い

「『はい、なんですか?』と面倒そうに言われた」「症状を説明している途中で『で、いつ来られますか?』と遮られた」
電話や受付はクリニックとの最初の接点です。ここで冷たい対応をされると、その瞬間に「この病院は自分を大切にしてくれない」と判断されてしまいます。

これらに共通するのは、患者に「存在や気持ちが軽んじられている」と感じさせてしまっている点です。技術的なミスではなく、「1人の人として扱われなかった」というネガティブな感情が、「二度と行かない」という決断につながります。


「かかりつけ医にしたい」と思われる好感マナー実践例

一方、患者から絶大な信頼を得ているクリニックには、共通して次のような工夫がみられます。

名前を呼び、目を見て挨拶する

「〇〇さん、おはようございます。今日は調子いかがですか?」たったこれだけで、患者は「自分を認識してくれている」とうれしく感じるものです。
実際、筆者のクリニックでは、小児の患者の誕生日を覚えて声をかけるようにしています。「もうすぐ5歳だね、保育園ではなにして遊んでいるの?」と話しかけると、お子さんも親御さんも自然と笑顔になります。

人生のイベントに寄り添う

思春期の患者には「受験どう?」「部活は?」と声をかける。成人の患者には結婚や転職など生活の変化に触れる。高齢の患者には「お孫さんは元気?」「最近お友達と会っていますか?」と社会的なつながりを尋ねる……。
疾患だけでなく、その人の人生そのものに関心を持つことで、患者は「ただ病気を治すだけではなく、自分という人間を見てくれている」と感じます。

笑顔の練習を全員で行う

あるクリニックでは、朝礼で「笑顔の練習」を30秒行うそうです。「おはようございます!」と鏡を見ながら全員で笑顔を作ると、最初は照れくさそうだったスタッフも、続けるうちに自然な笑顔が身につき、患者満足度が目に見えて向上したといいます。

クレームを宝に変える

「待ち時間が長い」というクレームを受けたあるクリニックは、待合室に「現在の待ち時間」を表示するボードを設置し、さらに「お待たせして申し訳ございません」というメッセージカードを渡すようにしました。
すると、「待つのは仕方ないけど、気遣ってくれる姿勢が嬉しい」とむしろ評価が上がったそうです。


院長が今日からできる「スタッフマナー向上」3ステップ

では、院長としてどのようにスタッフのマナーを高めていけばよいのでしょうか。

 ステップ1.まず院長自身が手本となる

スタッフ教育に取り組む前に、まずは院長自身の振る舞いを見直しましょう。スタッフは院長の写し鏡です。院長が患者と目を合わせず、イライラした様子で診察していれば、スタッフも同じ態度を取るようになります
筆者自身、忙しい日ほど意識的に深呼吸をし、笑顔を作り、患者の目を見て「今日はありがとうございました」と伝えるようにしています。院長のメンタルコントロールが、クリニック全体の空気を作ります

 ステップ2.「見える化」チェックリストの導入

「挨拶は明るくできているか」「電話は3コール以内に取れているか」「患者の名前を呼んでいるか」など、具体的な行動をチェックリストにします。そして週に1度、スタッフ全員で振り返る時間を設けることで、改善点が明確になります。

 ステップ3.感謝と承認の文化を作る

患者から「あのスタッフの対応がよかった」という声があったら、必ず本人に伝えましょう。具体的には、朝礼の場などで「昨日〇〇さんが、受付の△△さんの笑顔に救われたと言ってくれました」と共有することで、スタッフのモチベーションは大きく高まります。認められる経験が、人を自発的な成長へと導くのです。

技術はもちろん重要です。しかし患者が最初に触れるのは「人」であり、その印象が集患の最前線を形づくります
高度な医療機器を揃えるよりも、まずは院長自身が患者1人ひとりと心を通わせ、その姿をスタッフが自然に真似していく。そんな温かい循環を生み出すことが、長く愛されるクリニックへの第一歩です。

著者:
武井 智昭 高座渋谷つばさクリニック 院長
一般社団法人 日本医療介護人材育成支援機構 理事

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