人事制度があることは大きな武器になる
■もはや「選ばれるための必須要件」になっている
「人数が増えてきて目が届かなくなってきたから、そろそろ人事評価制度を入れよう」
以前はこのように考えられることが多かったかもしれません。ところが、いまや状況は大きく変わってきています。
学校のキャリアセンター(昔は就職課といっていました)では、就職先の企業に人事評価制度があるかどうかが重要確認項目になっています。
ハローワークなどでも「地域」「給与」などというような条件とともに人事評価制度の有無も確認事項になってきているのです。
つまり、人事評価制度は「あったらいいもの」から「選ばれるための必須要件」になってきているということなのです。
■「採用」に有利――見えるスペックとしての人事制度
募集をしても人が来ない、採用ができない―――。
未曾有の人材不足の時代、どの企業でも抱えている重要な問題ではないでしょうか。
採用時、求職者はまだ会社の中身を詳しくは知りません。
ですから、給与額、休日日数、労働時間といった「見えるスペック」で判断せざるを得ないのです。
そして、その「見えるスペック」のひとつとして「人事評価制度があるかどうか」が大きな判断材料になってきているのです。
人事制度があるということは、「この会社は自分の成長やキャリアを考えてくれている」「頑張りをちゃんと認めてくれる仕組みがある」というメッセージになります。
■「定着」に効果――動機づけ要因として機能する
実は「採用」と「定着」に影響を与える取り組みは、同じような内容と思われがちですが、実はちょっと違ったりします。
ハーズバーグの2要因理論というものをご存じでしょうか。
人のモチベーションには「衛生要因」と「動機づけ要因」の二つがある、というものです。
「衛生要因」とは、給与、労働時間、休日といった条件面のこと。これらは欠けてしまうと一気に不満足になってしまいます。採用時には非常に重要な「見えるスペック」です。
しかし、どれだけ良い条件にしても、それは大きな満足にはならず、それがまた基準となって引き下がると不満になってしまう――――そういう性質のものなのです。
一方で「定着」には「動機づけ要因」が重要になります。
頑張ったら上司、会社から承認される。ここにいたら成長できる。目標の達成感がある。責任のある役割を与えられたり、頼りにされる――――。
これらの「動機づけ要因」は足りなくても不満の声は上がってきませんが、満足度は引きあがらないのです。
どんなに左の「衛生要因」を整備して人を採用しても、右の「動機づけ要因」がないと、人は辞めていってしまうかもしれません。特に前向きで成長意欲のある人から。
そして、この右の「動機づけ要因」は、ほとんどが「人事評価制度」を適切に運用することで大きな影響を与えることができるのです。
「人事評価制度」があることが、採用にも定着にも非常に重要なのですね。
■「将来を見せる」ことができる――不安を安心に変える
人事評価制度があるということは、社員に「将来を見せる」ことができるということでもあります。
「この会社で頑張っていったら、自分はどうなれるのか」「どういうキャリアを歩めるのか」――――。
等級制度があれば、どのような役割を担っていけば次のステップに進めるのかが明確になります。
評価制度があれば、何を頑張れば認められるのか、どんなスキルを身につければ成長できるのかが見えてきます。
賃金制度があれば、頑張った結果がどのように給与や賞与に反映されるのかがわかります。
この「見える化」が、社員の不安を安心に変えるのです。
逆に、人事制度がないとどうなるでしょうか。
「頑張っても認められるかどうかわからない」「この会社にいても将来が見えない」――――。
そう思われてしまったら、優秀な人ほど他の会社に目を向けてしまうかもしれません。
■データが証明する人事制度の効果
実は中小企業庁が興味深いデータを出してくれています。
2015年と2020年を比較した売上増加率を、人事評価制度の有無別に見たもの。
やはり人事評価制度のあるところの方が業績は上がっているという結果が出ているのです
考えてみれば当然でしょうか。
会社目標に向かって個人が目標を立て進んでいく、求める人材像を明確にして、それを伸ばして人材育成を行なっている――――。
当然差が出てくることでしょう。
■いまこそ、人事制度という武器を
人事評価制度は、もはや「あったらいい」ものではなく、企業規模にかかわらず必須のものになってきています。
採用においても、定着においても、人材育成においても。
そして業績向上においても。
人事制度があることは、大きな武器になるのです。
いま、この武器を手にしていますでしょうか。
それとも、これから手にしていくところでしょうか。






