保育の現場Q&A

Q、当施設は職員の中途採用が多く、入職時期もバラバラです。有給休暇の付与に関しては、個人の入社日ごとに付与する方法を採用していますが、事務対応の煩雑さから付与日を統一することを検討しています。その場合、留意すべき点はどのようなことがありますか?

A,

有給休暇の基準日を一律に定めて付与することを「斉一的取り扱い」と言いますが、前提条件となるのが、「前倒しで付与する」ことです。例えば、4月1日を基準日と定める場合、9月1日入職した職員は、6か月継続勤務すれば翌年の3月1日に10日の有給取得の権利が発生します。この場合、基準日を統一し4月1日に繰り下げての付与(入職から7か月目の付与)は認められません。有給休暇の斉一的取り扱いについては、下記の要件を満たす必要があります(平成6.1.4基発1号、平成27.3.31基発0331第14)

  • 斉一的取り扱いや分割付与により、法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすこと。
  • 次年度以降の有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じまたはそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。

しかし、基準日を前倒しで繰り上げるため、入職時期によりどうしても不公平が生じてしまいます。ここをどのように考えるかがポイントになります。それでは、その代表的な対応とその留意点を下記致します。

①基準日を月初などに統一する

入社が月の途中であっても、基準日を月初などに統一します。例えば、同じ月に採用した方の基準日を月初に統一することにより、統一的な管理が可能となります。この場合、

5日取得させる期間も月ごとに統一できることになります。

② 基準日を「年2回」とする緩和策をとるケース

例えば、41日と101日の2回に統一する方法もあります。全職員同一の基準日に統一するよりは、入職時期による不公平感が軽減できます。41日から930日までに入職した職員の基準日は101日に10日付与し、101日から331日までに入職した職員は41日に10日付与します。以後、それぞれ41日と10月1日を基準日としていきます。この場合、71日入職者の8割出勤の考え方は以下のようになります。

6か月継続勤務後の本来の基準日である11日から短縮された3か月(10月~12月)

は全期間出勤したものとみなし、この期間を含めて71日から1231日までの6か月間で、8割以上出勤したかどうかを計算します。

基準日の統一は前倒し付与が原則の為、41日入職者は6か月後に10日付与され、91日入職者は1か月後に付与される不公平感は残りますが、年1回と比較すれば、不公平感は緩和されているのではないでしょうか。

 

③分割して前倒し付与したら次年度基準日も繰り上げる

施設によっては、入職と同時に10日付与するケースや、「入職3か月後(使用期間終了後)に3日付与、6か月後に7日付与」と分割して付与するケースがあります。分割して付与する場合も先の行政解釈(上述(2))にあるように、前倒し付与したら次年度の基準日も繰り上げます。

例えば41日入職者に、使用期間終了後の71日に3日付与し、101日に7日付与した場合、次年度に11日付与する基準日は本来の付与日(101日)から1年経過後ですが、初年度の3日分を3か月繰り上げて付与したため、次年度の基準日も同様に3か月繰り上げ、「7月1日から1年経過後」に11日付与することになるわけです。この点も注意をしながら前倒しのルールを検討していく必要があります。

 

 

Q 当園職員の不満第1位は、時間外労働が多いこととあり、とてもショックでした。これまで遅くまで熱心にやってくれているとばかり思っていました。現在の残業代は、全員に月3千円の調整手当を支払っています。また実際にどのくらいの残業時間があるのかを把握していません。どう対応したらいいのでしょうか?

A、まず、残業代として支払っている調整手当ですが、この方法は、残業をやってようが、いまいが、一律に支払われるもので、決して公平に支給されるものではありません。また、これを行うことで事務が簡素化されるかと言えば、支払っている手当を超過した分についてはやはり残業代の支払いが必要になることを考えれば、しっかりとした労働時間管理が必要になりますので、事務簡素化にもあまり効果はないと言えます。さらに最も重要な点は、このような制度を続けることで、管理者側、従業員側双方ともに、労働時間管理に関する認識が「甘く」なることが考えられます。これは、今求められる「働き方改革」を推進するうえでも大きな課題となります。

 そこで、時間外労働の実態を把握するため、時間外労働は事前に申請するというルールを取り入れ、さらに調整手当を廃止して、実態に沿って、適正に時間が労働手当を支払うことをまず行うべきかと思います。

 まず就業規則には、「職員が時間外労働を行う場合には、事前に申請し、園長の業務命令を受けなければならない」と定めます。そして、時間外労働届け出書を導入し、事前申請ルールを運用します。そして、調整手当を賃金規程から削除します。ただしこの場合、不利益変更に該当する場合がるので、その場合には慎重に対応してください(対応方法については

社労士などにご相談ください)。

 時間外申請書を受けた園長は、緊急性が高い業務か、園運営に必須の業務か、重複していないか、職員間で調整できないか等検討し、必要であれば時間外指示を行います。このようなルールの実施は、現在と比べ各職員の負荷が大きいように感じますが、仮に大変でも、労働時間と給与という非常に重要な管理なので、しっかりと行うことが必要です。

 また、このような管理を始めた園からは、残業として突出していたのは書類作成と教材準備といった日常業務ということがわかったということで、今後は、業務時間内にノーコンタクトタイムをどう確保するかを検討していこう、というこで、課題が明らかになったと

園長は仰っていました。

Q、現場での仕事が好きで、管理者にはなりたくない(なれない)職員には、 キャリアアップの仕組みを適用できない?

A、キャリアパスは個人の能力・適正に応じて、「指導・監督層」になるコースとは別に「専門職」コースを準備し、専門職のキャリアステップと昇給制度で運用しています。

現場では、「優秀な職員ほど役職にはつきたがらない」とか、「知識・技術面でわからないことについて、皆が教えてもらえる職員は決まっており、しかもその職員は役職者ではない」、といった話がよく聞かれます。そこで考えるべきなのが、キャリアパスにおける「複線化」です。つまり、キャリアパスに描かれた昇格ラインによらずに、役職にはつかずに専ら専門性を高め、組織に貢献するキャリアパスを作ることです。この階層を「専門職」として、上級介護職の水準を超える水準をもって処遇します。この場合、当該職員はマネジメント業務を行わず、専ら好きな介護の道を追い続けても、相応の処遇が保障されることになります。専門性の高さを認められてこその処遇なので、職員のプライドも充足することができます。

また、優秀な人材を滞留させては離職につながりかねません。中小企業の中には職員が自らポストの数を読んで、諦めムードが漂っているようなケースも散見されますが、「専任職」を設けて、「当法人は、管理上の役職だけがポストではない。専任職というスキル面のリーダーもあり、相応に処遇する」と周知すれば閉塞感が一気に変わるはずです。

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Q 1か月変形労働制と1年変形労働制の違いとは、制約が多い1年単位の変形労働制を理解する

1年単位の変形労働制とは

 

1年変形を採用するには、就業規則に定め、労使協定に年間カレンダー

を添付して、毎年、労基署に提出します。年間カレンダーでは、ひとりひとりの

職員について、一日ごとに労働日か休日かに加え、労働日における労働時間を決めます。

ただ、職員毎の次年度の労働日を3月末には決められなくなったといったご相談がある園長からいただきました。以前は労働日と休日が全職員同じだったので年間カレンダーは簡単に決められましたが、最近は、土曜日も夏、冬、春休みも開園しているので、以前のように「開園日=全職員の労働日」とはなりません。年間カレンダーを作成する際にも3月末の時点では職員毎に、〇月〇日が労働日か、休日かを決められまくなっています。

 

各月の労働日数と総労働時間を定めた一覧表を作成する

 

このようなケースでは、下記の方法で対応することが可能です。

①4月の勤務表と、5月以降の各月の労働日数と総労働時間を定めた一覧表を作成する

②5月以降の勤務表は、一覧表通りに作成する。

 まず、年間の労働時間の上限から年間で確保できる1日8時間労働の労働日数の上限を算出します。

年間の歴日数

労働時間上限

労働日数上限

平年365日

40時間×365日÷7日≒2085時間

2085時間÷8時間≒260日

うるう年

366日

40時間×366日÷7日≒2091時間

2091時間÷8時間≒261日

1年変形では、年間の労働日数の上限260日を各月に割り振ることが出来ます。そこで学期中にはできるだけ出勤してもらい、8月と1月にはお休みを多く・・・」と各月の労働日数を定め、一覧表を作成しまみました。

 

年間

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

労働日数

260

23

22

25

22

15

23

25

23

23

15

20

24

総労働時間

2080

184

176

200

176

120

184

200

184

184

120

160

192

但し、注意しなければならない法律があり、152時間まで、連続6日までという制約がります。加えて勤務表は各月の初日の30日前までには職員に提示しなければなりません。

運用をスタートした園長に伺いました。

 

職員は、夏休み、冬休みにはしっかり休み、リフレッシュできたようです。しかし、課題があります。年度の途中で採用や退職場あった場合の法律上の賃金計算をいざやってみると難しくて・・・。賃金精算を行う時期は年度途中の退職者の場合退職した時点になります。

年度途中の採用者の場合には対象期間が終了する3月末時点で清算します。

この清算方法や時期をうっかり忘れたりすることがあるので、1年変形を採用する場合には十分に留意する必要があります。

労働時間に関するご相談は

社会保険労務士顧問業務 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

マネジメントの観点を取り入れた1か月単位の変形労働制の事例紹介

 

ある園長先生からのご相談です。

この園の開園時間は9時から19時まででです。子供たちが順次登園し、9時半から午前中いっぱいまでがメイン活動です。年齢に応じて12時前後から昼食、12時30分以降は午睡クラス、クラス活動13時30以降は降園、または預かり保育・・・とさらに分かれていき19時の閉演に向けて子供の人数は段階的に減っていきます。園長先生の希望は、午前中は職員を手厚く配置し、メイン活動を充実させたいと思っていらっしゃいます。

 しかし、遅番職員は10時に出社するので、9時半からスタートするメイン活動にと途中方はいることになり、落ち着いて取り組むことが出来ない、これを何とかする方法はないですか、というご相談です。

 

職員の配置をコントロールする。

 

園の一日の流れに応じた子供の活動状況や人数によって、職員の人数を手厚くしたり、配置基準通りの人数にしたりすることを可能にする職員配置を検討することも可能です。

現在の働き方は1日8時間の固定で、1か月変形を採用し、各月の労働日数は決まっていました。園長先生が実現したいメイン活動の充実を念頭に置きながら就業規則の運用を考えてみました。例えば下記のような運用です。

①1日労働時間は、6時間、8時間、10時間。の3種類とする。

②各月の6時間の日と10時間の日を、同じ日数で設定する。

③就業規則に定めていた1か月変形の各月の労働日数は変えずに、各月の6時間、8時間、10時間の日数を決める。

就業規則は下記のように書き換えます。

 

 

従来の定め

今後の定め

早番

8時間労働 7:00~16:00(休憩60分)

6時間労働 7:00~13:00(休憩なし)

普通番

8時間労働 8:00~17:00(休憩60分)

8時間労働 8:00~17:00(休憩60分)

遅番

8時間労働 10:00~19:00(休憩60分)

10時間労働 8:00~19:00(休憩60分)

但し書き

 

月内において、早番と遅番の日は同じ日数とする

6月の労働日数と労働時間を示した下記表のように6時間、10時間の日を同じ日数で設定し、各月にの労働日数は変えていません。これであれば、各月の労働時間数はこれまで通りです。

 

以前

これから

所定労働日数

21日

21日(早番4日、普通13日、遅番4日)

所定労働時間

168時間

168時間

 

このようにした結果、9時半から午前中のメイン活動にはその日に出勤する6時間、8時間、10時間すべての職員の配置が可能になります。

毎月の勤務表は、前月末日までに職員に提示します。勤務表の作成に当たっては週(日曜から土曜)に1日の休日を確保しながら、各月で決めた6時間、8時間、10時間の日数を労働日とします。

 

この運用を始めた園長先生にお伺いしました。

 

午前中に職員の手厚い配置が可能になり、子供への配慮が行き届き、子供の意欲にこたえる保育ができるようになりました。「メイン活動の充実」を実感することが出来ています。また育成担当職員に余裕が出来、OJTによる育成に成果が出始めました。当初は10時間労働になる日の仕事ぶりが心配でしたが、時間が長いことをうまく利用して計画的に業務を進めたり、行事の準備に取組む姿が見られ、心配は杞憂に終わってくれました。13時で勤務終了となる早番の日は休憩時間が無い為、拘束時間が短いので、職員はワークライフバランスを活かし、趣味や習い事を始めた職員もいたり、概ね職員にも好評のようです。

Q、弊社では各事業所の責任者(所長)である管理者は、労基法上の管理監督者としての扱いで、残業代や休日労働の手当を支給していません。ただ、遅刻、早退、欠勤があった場合には、一般社員と同様に給与を減額しています。管理監督者の扱いに関してこの方法で問題ないでしょうか?

A 労働基準法41条の除外規定として、労基法上の管理監督者は深夜業務を除く、労働時間に関する規定は適用されないと定めています。まずは、労基法上の管理監督者とはどのよう方を指すのかを確認しておきたいと思います。ここでいう、「管理監督者」とは下記の要件を全て満たす方を指します。

 

 

 

 

 

 

 

これらの3点を、勤務の実態として適用されている必要があります。単に役職名では判断できません。つまり休日、時間外労働の規制をうけない「管理監督者」に該当するかどうかは、具体的な権限や給与、勤務実態で判断が必要ということになります。

例えば、多くの介護事業所ではシフト勤務で勤怠管理を行っていますが、常態として勤務シフトに入っている働き方をしているような管理者がいた場合、勤務時間の自由裁量がないと判断され、管理監督者ではなく、一般社員とみなされる可能性もあります。

先ほど、管理監督者に該当するか否かを判断するときに、単に役職名での判断ではなく、勤務の実態で判断しなければならないとしましたが、多くの介護事業では職責(役職)で、それを判断している場合が多い上に、介護保険制度における「管理者」と労基法における管理監督者を混同してしまうケースもあるので注意が必要です。一般的には、理事長、社長、施設長、事業所長、事務長くらいまでの立場の方がそれに該当するケースが多いと考えられます。もし、それ以下の役職の方(例えば、主任、副主任やリーダー等)を管理監督者の扱いにして残業代などを支給していない場合は、一度、その方の業務や給与の実態を確認してみる必要があると思います。その結果、管理監督職に該当しない方に、残業手当等を支給していない場合には、労基署からは残業代未払いの扱いとして、「3年間分を遡及して」支払うといった是正勧告を受けるリスクがあります。

 

 2,また、管理監督者には残業代は支給されませんが、勤務時間管理自体は必要となります。これは、給与計算上の必要性ではなく、管理監督者の健康管理の問題によるものです。管理監督者はその責任の重さから、過重労働になってしまうケースは相変わらず多く、それが深刻化するとメンタル疾患につながる場合も見られます。従って、経営者や人事担当者は

  管理監督者の労働時間には常に注意を払い、管理監督者の健康管理に十分注意することが重要です。

 

 3,さて、今回ご質問のあった管理監督者における遅刻・早退・欠勤に関する給与の扱い

についてですが、その方が管理監督者に該当することを前提とした場合に、先述の要件

の「勤務時間の自由裁量」の点が問題になります。

  つまり、管理監督者は勤務時間に裁量が認められていることから、始業時刻から遅れて

出社(遅刻)しても給与減額扱いにはなりませんし、また終業時刻より遅くなっても残

業手当はつかないことになります。

ただ、欠勤の扱いにつきましては、管理監督者であっても「就業義務」自体はありますので、その義務が果たされない場合に該当すると判断され、給与も欠勤控除として減額することになります。

 

Q 働き方改革で、労働時間の状況を把握しなければならないと聞き、大丈夫かなと気になっていることがあります。 勤務表の始業・終業時刻と、タイムカードの出勤・退勤の打刻には30分から40分のずれがあります。給与計算では勤務表通りに支払っいます。もちろん園が命じた職員会議や行事準備のための時間外労働をさせた場合には割増賃金を支払っていますが、この30分から40分については業務指示をしていませんので、割増の支払いがありませんが、このやり方で問題ないのでしょうか?

A、労働時間管理の方法として、現状では何時から何時まで働いたのかが明確になっていません。そこで、今までどおりタイムカードの打刻は続け、さらに職員自らが、業務開始・終了時刻を申告し、園長が承認し、労働時間を確定させる形への変更を提案しました。

就業規則の条文でも、まず、「業務開始・終了時刻を職員自らが申告しなければならない」と定めます。

勤務表により、労働日における始業・終業時刻を、職員に提示します。職員は勤務表で決められた時間通りに働くことが大前提になります。

 職員は出勤時に、タイムカードの打刻をします。退勤時も同様に打刻し、その横にその日の業務開始・終了時刻を記入することで申告とします。園長は、業務開始・終了時刻を承認し、1日毎の労働時間を確定させます(参考例下記表)

職員に就業規則を周知し、具体的にタイムカードと勤務表を示し、」労働時間確定までの流れを説明します。あわせて、業務開始・終了時刻を申告するにあたっては、実態通りに適性に申告することを伝えます。申告と勤務表にズレがあったときや、申告とタイムカードのずれが大きい時は、園長が実態を確認します。

この方法を導入後、園長に状況をお伺いしました。「1か月ごとのタイムカードは翌月3日までの提出してもらっています。運用としても無理が無く続けられそうです」また「職員たちは、勤務表の時間を意識して仕事に取り組むようになってきました。早すぎる出勤も、いつまで残っていることも減りました。メリハリのある働き方が、少しずつ浸透してきていることを感じます。

タイムカード参考例

 

氏名 

園長の承認

 

〇月分

 

日付

業務開始時刻(申告)

出勤時間

退勤時間

業務終了時刻(申告)

承認

1日

10:00

9:46

19:05

19:00

2日

8:30

8:26

17:44

17:30

 

 

 

 

 

 

 

Q「70 歳まで働くことができるようにすること」というニュースを少し前に見 ました。当院では60 歳を定年としており、希望者は65 歳まで働き続けることが できます。65 歳以降は、職員が働くことを希望し、当院が必要と認めたときに は70 歳まで働くことができます。この取扱いのままで問題ないのでしょうか?

A,

2021 4 1 日より70 歳までの就業機会確保が努力義務となりました。現状

は努力義務であるため、職員が65 歳以降も働くことを検討した上で、現状のよう

な基準を継続することで問題はありません。将来的には70 歳までの就業機会確保

が義務化されることも考えられますので、労使間で十分に継続協議をしていくこ

とが求められます。

以下に詳細を解説いたします。

160 歳以降の雇用や就業機会の確保現在、65 歳未満の定年を定めている事業所は、原則として希望者全員を65 歳まで働くことができるようにする必要があります。これに加え、20214 1 日より、65 歳から70 歳までの就業機会を確保することが努力義務となりました。具体的には、以下の選択肢の中から措置を講ずるように努めなければなりません。

70 歳までの定年引き上げ

② 定年制の廃止

70 歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

70 歳まで継続的に業務委託契約を締結できる制度の導入

70 歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

  1. 事業主が自ら実施する社会貢献事業
  2. 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

 

2.必要な対応として考えられること

高年齢者雇用安定法では、65 歳以降の雇用等について、希望者全員ではなく、希望者の

うち、一定の基準を満たす職員に限定することも可能とされていますが、「医院が必要と

認めたときには70 歳まで働くことができる」という基準では対象者を医院が恣意的に

決めることができ、高年齢者を排除しようとする等、高年齢者雇用安定法の趣旨や他の労

働関係法令、公序良俗に反する可能性もあります。基準を決めるのであれば、その基準を

労使協議の上、明確にする必要があるものと思います。

 

3.今後の労働局の指導について

厚生労働省は都道府県労働局に対し、70 歳までの就業機会確保は努力義務であることか

ら、制度の趣旨や内容の周知徹底を主眼とする啓発・指導を行うよう方針を示していま

す。今後、70 歳までの就業機会確保について、周知や指導が強化されることも想定さ

れ、また、いずれは努力義務から措置義務になることも考えられます。各事業所におかれましては、現状の取扱いについて、職員の希望を踏まえながら労使協議を進めていかれることをお勧めいたします。

4 65歳超雇用推進助成金

 70歳までの雇用継続制度を奨励するための助成金も創設されました。本助成金制度は、生涯現役社会の実現に向けて、65歳以上への定年引上げ等や高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換した事業主に対して助成し、高年齢者の雇用の推進を図ることを目的としています。

本助成金3コースのうちの代表的な「65歳超継続雇用促進コース」に関して、雇用継続に関する支給要件をご説明いたします。雇用継続方法としては4パターンあり、

. 65歳以上への定年引上げ、B. 定年の定めの廃止、C. 希望者全員を対象とする66歳以

上の継続雇用制度の導入、D. 他社による継続雇用制度の導入 のいずれかを導入した事業

主に対して助成を行うことになっています。また、助成金支給額も25万円から160万円まで施策内容によって支給額が決められています。ご興味ございましたら厚労省のリーフレットをご覧いただくか、またはお近くの社会保険労務士までお問い合わせください。

Q 就業規則では休憩60分とありますが、職員に任せっきりで、先日、主任に聞いたところ、あまりとれていませんでした。休憩場所を用意しているのに・・・。どうしたらいいのでしょうか?

A まずは、労働基準法で定める休憩時間の規定を下記致します。

労働時間の長さ

付与すべき休憩時間

6時間以下

不要

6時間超、8時間以下

少なくとも45分

8時間超

少なくとも60分

 

園児の在園時間が長時間におよび、職員がシフト勤務をするという園では運営のスタイルから就業規則通りに60分休憩をとることがなかなか難しいのが実情かもしれません。全員がきちんと休憩をとれるよう運用していくには、就業規則にも工夫が必要です。加えて

、職員の賛同を得られれば、意外と早く浸透していきます。

まず、実労働時間の8時間に合わせ、休憩時間は60分から法律通りの45分にします。園長先生も「45分にした方が現実的だと思う」と納得されました。もちろん、短縮した15分は、退勤をその分は早めることになります。

 そして、「休憩は交代制で分割が出来る」と就業規則に書き加えます。

次に、一日中の職員配置が手厚い時間帯を園長先生に挙げてもらいました。意外にも、開園してからの3時間、閉園までの3時間は、朝夕専門のパート職員がいて手厚い職員配置となっています。そこで、早番と遅番シフトの時は、早番はクラス活動が始まる前の朝15分、遅番は、クラス活動から延長保育に移行する前の夕方15分に休憩をとるようにします。

 さらに園長先生に伺うと、0・1・2歳児の職員は午睡時間に3・4・5歳児の職員は14時以降の園児が降園する時間帯を利用すれば、交代で休憩が取れるだろうとのことでした。早番や遅番シフトの残り30分と、その他の職員の45分の休憩については、学年リーダーたちに采配をお願いしました。園児の活動状況や業務の進捗から、学年リーダーたちは、何時に誰が休憩をとるかを決め、学年の中で職員に交代で休憩を取らせます。例えば、4歳児の2クラスには、担任2名とフリー1名がいます。4歳児の学年リーダーは、最大で3人分の休憩135分(45分×3人)を14:00~14:45、14:45~15:30、15:30~16:15の時間帯に分けて「〇〇先生、休憩してください」と順番に指示をだします。もし、休憩をとることで配置基準を下回る時間があれば、事前に主任に相談して、園全体から職員を回してもらうように要請します。それも難しい時は、主任や園長が代わりに保育にはいります。

学年リーダーや主任に役割を持たせ運用のための仕組みを職員に周知します。

この運用してみた園長さんに伺いました。「学年リーダーたちは、配置基準を意識して保育ができるようになりました。配置基準を下回るときには、主任に要請するという仕組みも浸透してきました。また職員にとっても、休憩時間が45分になったことで、1日の拘束時間が15分短くなり、うれしいようです」。

 

但し、1日の労働時間が8時間を超えて残業になった場合には60分休憩を与えなければなりません。つまりプラス15分の休憩が必要になります。例えば早番7:00~15:45の職員が残業するときには、15:45~16:00の15分は休憩、その後の16:00~17:00が残業時間になります。残業をするときにはプラス15分の休憩をお忘れなく。

Q 法人理念を職員一人一人に浸透させるためにはどのような方法がありますか?

法人理念を周知はしているものの、どこまで「浸透」しているかというと、なかなか難しいところです。ある園では、職員に理念を改めて尋ねたところ、ほとんどの職員が応えられなかったということをお聞きしています。「浸透」している状態とは、職員が理念の意味を理解しそれを日々の実践に活かせる状況を言います。そのような状態にもっていくために経営は、経営理念の周知に努力するだけでなく、それを行動に移せる職員をどれだけ育てることができるのかを日々の活動のかなで考えていく必要があります。

 

求める職員像を的確な言葉で表現する

 

保育現場では職員一人一人の自律的な判断、行動が求められます。しかし保育者不足から中途採用の職員やぱーと職員の増加により、法人理念の背景や創立者の思いが継承できていなかったり、これまでの暗黙の前提が成立しなくなっている園もあるでしょう。法人の、園の、保育実践において、拠り所となるものが必要になるのも自然な流れと言えるかもしれません。そこで、私は法人理念を具体的に実現できる「人財」を「求める職員像」として可視化することをご提案しています。法人理念に基づき、どのように行動してほしいのか、どのような人となりであってほしいのかを整理し、的確に表現する言葉で「可視化」し、職員に示すことが重要です。そのための方法はいろいろあると思いますが、当社では、法人理念をいくつかのキーワードに凝縮し、各キーワードの意味とそれを実現できる行動を職員の発想で具体的にしていきます。例えば、

キーワード:「思いやり」⇒出来ることに手を出すのではなく、見守って、助けが必要な時は、思いやりの気持ちをもち笑顔で、声をかけて手伝っている。

キーワード:「報告・連絡・相談」⇒何を相談したいのか整理し、自分なりの考え方をもって、先輩や同僚に積極的に相談し、アドバイスは素直に受け入れている。

 

求める職員像が育成指針として活用し、また人事評価に組み入れ定期的に振り返る機会をつくりました

 

法人理念から「求める職員像」を可視化し、周知と浸透を図っている園長先生にお伺いしました。

 先日の職員会議で、園児への声掛けやかかわり方が議題に上がったのですが、中途採用の新人職員の一人から「求める職員像」を根拠にその関わり方の提案が出ました。参加していた職員からは賛同と納得を得ただけでなく、この発言は刺激になったようです。

また、年2回の評価の中に、その実践度合いに関する評価項目を入れて、定期的自己を振返る機会を持っています。いい評価がもらえればモチベーションにもつながっているようです。また上司・部下の間で、現状と今後について話し合う良いコミュニケーションの機会にもなっています。

 園としては、引き続き「求める職員像」に基づく職員の働きぶりを承認し、育成に繋げていければと考えています。

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