医療事業所様向け情報(労務)9月号④

企業に求められる従業員の精神障害発症を防ぐための対応

従業員が精神障害を発症した際、その原因が長時間労働や職場のパワーハラスメントによるものだと考え、労災請求をしたいと会社に相談する従業員が増加しています。実際、どのくらいの件数の請求があり、労災の認定がされているのか、厚生労働省が発表した平成30年度の労災補償状況に関する集計結果を見てみましょう。

1.精神障害の労災補償状況

平成30年度の精神障害に関する労災請求件数は1,820件となり、前年の1,732件から88件増加し、過去最多となりました(下図参照)。

支給決定件数は465件で、認定率は31.8%となっています。認定率は過去5年間の中で最低となっていますが、それでも申請の3件に1件の割合で労災として認定されていることが分かります。

2.精神障害発症の理由

精神障害の集計では、精神障害を発症した理由と考えられる支給決定事案における具体的な出来事別の分類がされていますが、上位項目は次のとおりとなっています(「特別な出来事」を除く)。

第1位に、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」と「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」があることを考えると、企業は、異動により仕事の内容が変わったり、同僚の退職等で業務量が増えたりする等、大きな変化があるときには過重な負担となっていないか面談を行ったり、管理職や一般職向けにパワーハラスメントに関する研修を定期的に実施する等、必要な措置をとることが重要となります。

パワーハラスメントについては、先に行われた国会で、パワーハラスメント防止対策が法制化され2019年6月5日に公布されました。施行は公布後1年以内の政令の定める日(中小企業は公布後3年以内の政令で定める日までは努力義務)とされています。施行はまだ先の予定ですが、日々の労務管理を行う上で、パワーハラスメントの防止に向けた取組みを進めていきましょう。

(来月に続く)

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