保育士 負担減らし働きやすく…補助者やアプリ活用 効率化(読売新聞より)
人材確保が課題となっている保育現場で、保育士の業務負担を軽減する取り組みが進んでいます。ゆとりのある保育士の配置、ICT(情報通信技術)の活用などで働きやすい環境を整え、人材を集めるのが狙いです。国も働き方の改善を後押ししています。
子どもたちと遊ぶ保育士の藤原さん(中央)(18日、大阪市の「たからこども園」で)
「電車動くよ。見ててね」。5月中旬、大阪市西淀川区の認定こども園「たからこども園」で、保育士の藤原衣美香さん(33)がおもちゃをレール上に走らせ、子どもの興味を引いていた。そばでは、ほかの保育士2人も子どもたちに目を配る。
1歳児クラスでは、9人を3人の保育士で見守る。6人につき1人という国が定める配置基準より手厚い。国や市の補助金を人件費に充てている。
藤原さんは「心と時間に余裕を持てる。私たちにゆとりがあると、子どもたちも落ち着いて過ごすことができる」と話す。
同園では、年齢ごとのクラスに担任を2人置く。休みが取りやすく、お互いに悩み事を相談しやすいという。体育や音楽の指導には外部講師を招く。清掃も、登園・降園時の交通安全の見守りも、アルバイトの保育支援者の協力を得て保育士の仕事を減らしている。
同園など、4か所の保育施設を運営する社会福祉法人「たから福祉会」では、完全週休2日制を取り入れているため、土曜日に働くと平日に休める。誕生日に取れる休暇を導入しており、3年目の保育士の浜田菜月さん(24)は「プライベートな時間を確保しやすいので、メリハリのある働き方ができている」と話す。同法人の待遇に魅力を感じ、大学卒業後、地元の神戸市から引っ越してきた。
藤原晋作園長(32)は「働く場所として選ばれるよう、保育士がやりがいを持って働ける職場作りに努めたい」と話している。
人材不足が深刻
ICTシステムで連絡帳を確認する保育士(20日、東京都世田谷区で) 保育現場が待遇改善に取り組むのは、保育士の不足が深刻なためだ。こども家庭庁によると、求職者1人あたりの求人件数を示す有効求人倍率は今年1月時点で3・88倍と、全職種平均(1・27倍)を大きく上回る。子どもの事故防止や、体調変化に常に気を使うという責任の重さに比べ、賃金が低いことなどが背景にある。国は賃上げを進めてきたが、全産業平均より月約5万円低い。
事務作業の負担も大きい。自治体に提出する書類や、保育の記録のほか、保護者への連絡を手書きすることが多く、手間と時間がかかる。こども家庭庁が2025年度に行った委託調査で、負担が大きいと感じる日常業務を保育士に尋ねたところ、週の予定表など書類の作成(50・8%)が最も多く、子ども一人ひとりの保育記録の作成(49・4%)が続いた。
デジタル化で、書類に関する業務負担を減らす動きも進む。東京都世田谷区の「おおわだ保育園世田谷豪徳寺」は、ICTを使ったシステムを導入している。保護者との連絡帳をアプリ化し、指導計画をデータで管理する。子どもの体温といった記録の転記や、手書きの手間を大幅に削減している。
保育士の森明日香さん(26)は「書き間違いを直しやすく、過去のデータも見ることができるので、とても便利だ」と言う。
馬場睦代園長(59)は「デジタルの活用で保育士が子どもと接し、保育に時間を費やせる環境を作りたい」と語る。
国も後押し
こども家庭庁は、保育現場の取り組みを後押しする。今年度から、ICTシステムを活用し、業務負担の軽減を進める施設に対し、保育サービスの費用を上乗せする。
保育施設が市区町村に保育サービスの費用を請求する際も、オンラインでスムーズに手続きできるよう、今年度中に全国統一のシステムを稼働させる予定だ。
また、保育士の資格がない人を保育補助者などとして採用した施設に、賃金の一部を補助する。掃除や、おもちゃの消毒などの業務を受け持ってもらうことで、保育士が保育に専念できるようにする狙いがある。
桜美林大の大下純准教授(保育実践学)は「保育士が働きやすい環境は子どもたちのためになり、保護者の安心につながる。待遇の改善を進め、仕事の魅力をさらに発信してほしい」と話している。
「潜在保育士」ら現場へ
自治体も、保育現場の人手不足対策に知恵を絞る。
神奈川県は昨年度から、シニアらが、保育補助者の仕事を体験できる「キッズサポーター派遣事業」を始めた。保育施設で4時間ほど業務に触れ、実際の就労を希望すれば、人材派遣会社がサポートする。昨年度は約150人が参加し、保育補助者として就労した人もいる。
大阪府豊中市は昨年7月から、市立こども園で有償ボランティアを募集している。資格があっても保育現場で働いていない「潜在保育士」や、保育を学ぶ大学生らが対象だ。工作の準備や製作、遊びの見守りなど、1回3時間ほどで4000円の謝礼がある。潜在保育士の復職や、学生の志望を高めるのが狙いだ。これまでに3人の潜在保育士が、ボランティア先で非常勤職員として採用された。市の担当者は「今の保育現場を知るきっかけにしてほしい」とする。








