問題社員への対応はどうすべきか ― 介護・保育・クリニック経営者のための実務的労務対策 ―

介護事業所、保育園、クリニックの経営者から、近年特に増えている労務相談があります。それが「問題社員への対応」です。

例えば次のようなケースです。

  • 何度注意しても遅刻や欠勤を繰り返す

  • 職場の人間関係を悪化させる

  • 利用者や患者への対応が不適切

  • 指導しても態度が改善しない

人手不足の業界では「辞められると困る」という理由で、問題社員を放置してしまうケースも少なくありません。しかし実務経験上、問題社員を放置すると職場環境が悪化し、優秀な職員から先に辞めていくという現象が起こります。

労働政策を所管する厚生労働省も、職場環境改善やハラスメント対策を重要な政策課題として掲げています。つまり、問題社員への適切な対応は、これからの組織運営において避けて通れないテーマなのです。

本稿では、介護・保育・クリニックなど医療福祉分野の現場を支援してきた社労士の視点から、問題社員への適切な対応方法を解説します。


問題社員とはどのような職員か

まず整理しておきたいのは、「問題社員」とは必ずしも能力が低い職員だけではないということです。実務上、問題社員と呼ばれるケースにはいくつかのタイプがあります。

第一に、勤務態度に問題があるケースです。遅刻や欠勤を繰り返す、指示に従わないなど、基本的な勤務姿勢に問題がある職員です。

第二に、職場の人間関係を悪化させるケースです。陰口や対立を生み、チームワークを乱すタイプです。介護・保育・医療の現場はチームワークが重要なため、この問題は非常に深刻です。

第三に、業務遂行能力に課題があるケースです。ミスが多い、指導しても改善しないなどのケースです。

このような職員がいる場合、経営者や管理職は早期に対応を検討する必要があります。


問題社員を放置するリスク

問題社員を放置すると、次のようなリスクが発生します。

まず職場のモラルが低下します。「あの人は注意されないのに、なぜ自分だけ」という不公平感が生まれるためです。

次に、優秀な職員の離職につながります。真面目に働いている職員ほど、職場環境の悪化に敏感です。

さらに、利用者・患者・保護者へのサービス品質が低下する可能性があります。介護・保育・医療の分野では、サービス品質の低下はそのまま経営リスクにつながります。

つまり、問題社員への対応は単なる人事問題ではなく、経営問題なのです。


問題社員への対応で重要な3つの原則

問題社員への対応には、感情的な判断ではなく、法的リスクを踏まえた手順が必要です。

① 事実を記録する

最も重要なのは、問題行動を客観的に記録することです。

例えば

  • 遅刻の回数

  • 業務ミスの内容

  • 指導内容

  • 面談の記録

などを文書として残しておく必要があります。

記録がない場合、後にトラブルになった際に会社側が不利になる可能性があります。


② 指導と改善機会を与える

いきなり解雇などの厳しい処分を行うことは、労務リスクが高くなります。

まずは

  1. 口頭指導

  2. 文書指導

  3. 改善計画

という段階的対応が重要です。

このプロセスを踏むことで、職員本人にも改善の機会を与えることができます。


③ 就業規則に基づく対応

懲戒処分や退職勧奨などを行う場合は、就業規則の規定に基づく必要があります。

例えば

  • 懲戒規定

  • 指導規定

  • ハラスメント規定

などです。

就業規則が整備されていない場合、適切な対応が難しくなるため注意が必要です。


【事例】問題社員対応で職場環境が改善したケース

ある介護事業所では、遅刻や勤務態度に問題がある職員がいました。

当初は人手不足のため、注意のみで対応していました。しかし、次第に職場の雰囲気が悪化し、複数の職員が退職を検討する状況になりました。

そこで管理者と社労士が連携し、

  • 指導記録の作成

  • 改善面談

  • 文書による指導

を行いました。

結果として、その職員は改善が見られなかったため退職となりましたが、その後職場環境は大きく改善しました。


小規模事業所ほどルールが重要

介護事業所やクリニック、保育園は比較的小規模な組織であることが多く、経営者と職員の距離が近いという特徴があります。

そのため、感情的な判断や個別対応が増えやすい傾向があります。

しかし、小規模組織ほど

  • ルール

  • 記録

  • 手続き

が重要になります。

これらが整備されていれば、トラブルを未然に防ぐことができます。


社労士としての実務的アドバイス

問題社員への対応で最も多い失敗は、次の2つです。

一つは「我慢しすぎる」ことです。問題を先送りすると、状況は悪化します。

もう一つは「感情的に対応する」ことです。怒りに任せて発言してしまうと、後で労務トラブルになる可能性があります。

重要なのは、

冷静に、段階的に、記録を残しながら対応すること

です。


まとめ

介護、保育、クリニックなどの医療福祉分野では、人材不足の影響もあり、問題社員への対応に悩む経営者が増えています。

しかし、問題社員を放置すると

  • 職場環境の悪化

  • 優秀な職員の離職

  • サービス品質の低下

につながる可能性があります。

そのため、

  • 問題行動の記録

  • 段階的指導

  • 就業規則に基づく対応

という基本的な対応を行うことが重要です。

もし問題社員への対応で悩んでいる場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。適切な対応を行うことで、職場環境を守り、組織の安定につなげることができます。

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