コラム
医療機関でみられる人事労務Q&A
『職員が麻しんに感染した場合、法令を根拠として就業を
制限することができるのか?』
Q:ある職員が麻しん(はしか)に感染してしまったそうです。本人は出勤するつもりで
いるようですが、他の人への感染を防ぐため、当該職員を休ませたいと思っています。
法的に可能なのでしょうか。また、休ませた場合の賃金の取扱いはどのようにしなければ
ならないのでしょうか。
A:感染の危険性が高い疾病については、患者や他の職員が感染してしまうおそれがあるため、
感染症法等の法令に就業制限に関する取扱い方法が定められています。
麻しんの場合においては、法令上、就業を制限できない感染症と考えられ、医院の判断で
休ませた場合は、休業手当の支払いが必要になります。
詳細解説:
1.法令に基づく就業制限等の措置
感染症法による就業制限は、末尾参考の1 類から3 類、または新型インフルエンザが該当し、
都道府県知事の通知により、保健所等からの指示に基づいて対応することとなります。
一方、労働安全衛生法による就業禁止は、あらかじめ産業医や専門の医師に聞いた上で
対応することが規定されています。
2.就業制限の際の給与の取扱い
感染症にかかり休む場合、本人が希望すれば年次有給休暇の取得も可能ですが、
今回のように職員が出勤するといった場合、就業制限の対象となる感染症か否かで
給与の取扱い方法が変わってきます。
具体的には、就業制限の対象である感染症にかかって当該職員を休ませた場合、
使用者の責に帰すべき事由にはあたらないため、労働基準法第26 条に基づく
休業手当の支払いは不要です。しかし、今回の麻しんのように就業制限とされていない
5類の感染症にかかり、医院の判断によって休ませた場合は、休業手当の支払いが必要と
なると考えられます。
職員が罹患した疾病によって、就業制限の取扱い方法が異なります。まずは当該職員の
治療に配慮しつつ、感染が拡大しないよう就業を認めるか否か、それにともなう給与の
取扱い方法について適切に対処したいものです。
[参考:感染症法に定められる感染症の分類]
・1類感染症:エボラ出血熱、痘そう、ペスト、ラッサ熱等
・2類感染症:急性灰白髄炎、結核、ジフテリア等
・3類感染症:コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症等
・4類感染症:E型肝炎、A型肝炎、マラリア等
・5類感染症:インフルエンザ(鳥インフルエンザ、新型インフルエンザ等は除く)、
ウイルス性肝炎(E型肝炎、A型肝炎を除く)、麻しん等
これらの他、類型とは分類されていないものの、新型インフルエンザ等感染症・
指定感染症・新感染症等も感染症と定義されています。
なお、4 類、5 類については、感染症法上、就業制限の対象とはなっていません。
(12月号に続く)
福祉施設でみられる人事労務Q&A
『職員が麻しんに感染した場合、法令を根拠として就業を
制限することができるのか?』
Q:ある職員が麻しん(はしか)に感染してしまったそうです。本人は出勤する
つもりでいるようですが、他の人への感染を防ぐため、当該職員を休ませたいと
思っています。法的に可能なのでしょうか。また、休ませた場合の賃金の取扱いは
どのようにしなければならないのでしょうか。
A:感染の危険性が高い疾病については、利用者や他の職員が感染してしまうおそれが
あるため、感染症法等の法令に就業制限に関する取扱い方法が定められています。
麻しんの場合においては、法令上、就業を制限できない感染症と考えられ、
施設の判断で休ませた場合は、休業手当の支払いが必要になります。
詳細解説:
1.法令に基づく就業制限等の措置
感染症法による就業制限は、末尾参考の1 類から3 類、または新型インフルエンザが該当し、
都道府県知事の通知により、保健所等からの指示に基づいて対応することとなります。
一方、労働安全衛生法による就業禁止は、あらかじめ産業医や専門の医師に聞いた上で
対応することが規定されています。
2.就業制限の際の給与の取扱い
感染症にかかり休む場合、本人が希望すれば年次有給休暇の取得も可能ですが、
今回のように職員が出勤するといった場合、就業制限の対象となる感染症か否かで
給与の取扱い方法が変わってきます。
具体的には、就業制限の対象である感染症にかかって当該職員を休ませた場合、
使用者の責に帰すべき事由にはあたらないため、労働基準法第26 条に基づく
休業手当の支払いは不要です。
しかし、今回の麻しんのように就業制限とされていない5類の感染症にかかり、
施設の判断によって休ませた場合は、休業手当の支払いが必要となると考えられます。
職員が罹患した疾病によって、就業制限の取扱い方法が異なります。
まずは当該職員の治療に配慮しつつ、感染が拡大しないよう就業を認めるか否か、
それにともなう給与の取扱い方法について適切に対処したいものです。
[参考:感染症法に定められる感染症の分類]
・1類感染症:エボラ出血熱、痘そう、ペスト、ラッサ熱等
・2類感染症:急性灰白髄炎、結核、ジフテリア等
・3類感染症:コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症等
・4類感染症:E型肝炎、A型肝炎、マラリア等
・5類感染症:インフルエンザ(鳥インフルエンザ、新型インフルエンザ等は除く)、
ウイルス性肝炎(E型肝炎、A型肝炎を除く)、麻しん等
これらの他、類型とは分類されていないものの、新型インフルエンザ等感染症・
指定感染症・新感染症等も感染症と定義されています。
なお、4 類、5 類については、感染症法上、就業制限の対象とはなっていません。
(12月号に続く)
都道府県別 介護保険第1 号被保険者1 人あたり給付費
今年8 月に発表された調査結果※によると、介護保険第1 号被保険者(65 歳以上)の数は、
平成28 年度末時点で3440 万人。最近10 年ほどの間でみても、700 万人ほど増加しています。
また、介護保険給付費も高齢化等によって増加しています。ここでは上記調査結果から、
都道府県別に介護保険第1 号被保険者1 人あたり給付費をみていきます。
全国平均は25.2 万円
平成28 年度の第1 号被保険者1 人あたり給付費を都道府県別にまとめると、
全国平均は25.2 万円で、居宅介護(介護予防)サービス(以下、居宅サービス)が
12.94万円、地域密着型介護(介護予防)サービス(以下、地域密着型サービス)が3.97 万円、
施設介護サービス(以下、施設サービス)が8.3 万円となりました。
最高額は島根県の30.99 万円
都道府県別では、1 人あたり給付費は島根県の30.99 万円が最も高く、唯一30 万円を超え
ました。最も低いのは埼玉県の19.92 万円で、両県の額には10 万円以上の開きがあります。
サービス別では、居宅サービスは沖縄県が、地域密着型サービスは鹿児島県が、
施設サービスは新潟県と鳥取県が最も高くなりました。
全国平均と比べると、居宅サービスは23 都府県、地域密着型サービスは31 道県、
施設サービスは34 府県が全国平均より高くなりました。
サービス別の給付費割合をみると、居宅サービスの給付費割合が高い地域がある一方、
施設サービスの割合が高い地域があるなど、地域によって違いがあることがわかります。
貴施設の所在地の状況はいかがでしょうか。
※厚生労働省「平成28 年度介護保険事業状況報告(年報)」
介護保険事業の実施状況について、保険者(市町村等)からの報告数値を全国集計したものです。
1 人あたり給付費には高額介護サービス費、高額医療合算介護サービス費、特定入所者介護
サービス費は含まず、数値は千円未満を四捨五入しているため、計に一致しない場合があります。
詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/16/index.html
都道府県別 介護保険第1 号被保険者1 人あたり給付費
今年8 月に発表された調査結果※によると、介護保険第1 号被保険者(65 歳以上)の数は、
平成28 年度末時点で3440 万人。最近10 年ほどの間でみても、700 万人ほど増加しています。
また、介護保険給付費も高齢化等によって増加しています。ここでは上記調査結果から、
都道府県別に介護保険第1 号被保険者1 人あたり給付費をみていきます。
全国平均は25.2 万円
平成28 年度の第1 号被保険者1 人あたり給付費を都道府県別にまとめると、以下の
リンク先のとおりです。
全国平均は25.2 万円で、居宅介護(介護予防)サービス(以下、居宅サービス)が
12.94万円、地域密着型介護(介護予防)サービス(以下、地域密着型サービス)が3.97 万円、
施設介護サービス(以下、施設サービス)が8.3 万円となりました。
最高額は島根県の30.99 万円
都道府県別では、1 人あたり給付費は島根県の30.99 万円が最も高く、唯一30 万円を
超えました。
最も低いのは埼玉県の19.92 万円で、両県の額には10 万円以上の開きがあります。
サービス別では、居宅サービスは沖縄県が、地域密着型サービスは鹿児島県が、
施設サービスは新潟県と鳥取県が最も高くなりました。全国平均と比べると、
居宅サービスは23 都府県、地域密着型サービスは31 道県、施設サービスは34 府県が
全国平均より高くなりました。
サービス別の給付費割合をみると、居宅サービスの給付費割合が高い地域がある一方、
施設サービスの割合が高い地域があるなど、地域によって違いがあることがわかります。
貴施設の所在地の状況はいかがでしょうか。
※厚生労働省「平成28 年度介護保険事業状況報告(年報)」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/16/index.html
来年10 月の介護報酬改定に向けた動き
消費税率の引上げが、いよいよ来年10 月に迫ってきました。
消費増税は福祉施設の負担増につながるため、その補てんとして行われる介護報酬改定にも
要注目です。次の改定では「介護人材の処遇改善」も実施されます。
まずは8%増税後の現状調査を実施
介護保険サービスの消費税は非課税ですが、物品等の仕入れは非課税にはなりません。
増税は福祉施設の負担増に直接的につながります。この負担増を補てんするために、
税率引上げの都度、介護報酬改定が行われています。
来年の増税に向け、次の改定の準備も始まりました。改定は、消費税率引上げに合わせ、
来年10 月に実施される予定です。
まず手始めに、事業団体に対しヒアリング調査が実施されています。8%引上げ時の対応の
評価と、10%引上げ時の対応についての意見を聴取した上で、今後の介護保険サービスに
関する消費税の取扱い等が検討される予定です。議論が本格化するのは年末以降となる
見込みです。
同時期に、来年度の税制改正大綱が発表され、消費増税に向けた動きが一気に加速します。
医療分野で講じられる消費税対応からも目が離せません。引き続き、ご注目ください。
全産業平均並みの賃金水準目指す
来年10 月実施予定の介護報酬改定では、介護人材の処遇改善も併せて実施されます。
このことは、昨年末に閣議決定された「新しい経済パッケージ」に以下のように
記載されています。
他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収⼊を充てることができるよう柔軟な
運⽤を認めることを前提に、介護サービス事業所における勤続年数10 年以上の
介護福祉⼠について⽉額平均8万円相当の処遇改善を⾏うことを算定根拠に、
公費1000 億円程度を投じ、処遇改善を⾏う。
8 月末に厚生労働省より提出された来年度の予算要望には、「介護の受け皿整備」として
483億円、「介護人材の確保・処遇改善」として60億円が計上されています。
なお、厚生労働省介護給付費分科会ではこの件に関し、「事業所に一定の裁量を認めるべき」
「職場環境改善も要件に盛り込む必要がある」等の意見が寄せられる一方で、
「勤続10 年月8万円」が独り歩きすることを危惧する指摘もありました。
こちらも進展にご注意ください。
(次号に続く)
来年10 月の介護報酬改定に向けた動き
消費税率の引上げが、いよいよ来年10 月に迫ってきました。消費増税は福祉施設の
負担増につながるため、その補てんとして行われる介護報酬改定にも要注目です。
次の改定では「介護人材の処遇改善」も実施されます。
まずは8%増税後の現状調査を実施
介護保険サービスの消費税は非課税ですが、物品等の仕入れは非課税にはなりません。
増税は福祉施設の負担増に直接的につながります。
この負担増を補てんするために、税率引上げの都度、介護報酬改定が行われています。
来年の増税に向け、次の改定の準備も始まりました。改定は、消費税率引上げに合わせ、
来年10 月に実施される予定です。
まず手始めに、事業団体に対しヒアリング調査が実施されています。
8%引上げ時の対応の評価と、10%引上げ時の対応についての意見を聴取した上で、
今後の介護保険サービスに関する消費税の取扱い等が検討される予定です。
議論が本格化するのは年末以降となる見込みです。
同時期に、来年度の税制改正大綱が発表され、消費増税に向けた動きが一気に加速します。
医療分野で講じられる消費税対応からも目が離せません。引き続き、ご注目ください。
全産業平均並みの賃金水準目指す
来年10 月実施予定の介護報酬改定では、介護人材の処遇改善も併せて実施されます。
このことは、昨年末に閣議決定された「新しい経済パッケージ」に以下のように
記載されています。
他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう
柔軟な運用を認めることを前提に、介護サービス事業所における勤続年数10 年以上の
介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、
公費1000 億円程度を投じ、処遇改善を行う。
8 月末に厚生労働省より提出された来年度の予算要望には、「介護の受け皿整備」
として483億円、「介護人材の確保・処遇改善」として60億円が計上されています。
なお、厚生労働省介護給付費分科会ではこの件に関し、「事業所に一定の裁量を
認めるべき」「職場環境改善も要件に盛り込む必要がある」等の意見が寄せられる一方で、
「勤続10 年月8万円」が独り歩きすることを危惧する指摘もありました。
こちらも進展にご注意ください。
(次号に続く)
2018年10月より厳格化された協会けんぽの被扶養者認定
健康保険では、一定の要件を満たした被保険者の家族も被扶養者として保険給付を
受けることができます。
被扶養者となるためには、協会けんぽに「健康保険被扶養者(異動)届」
(以下、「異動届」という)を届け出ることになりますが、2018年10月1日から、
被扶養者の認定事務が変更となり、異動届に添付する書類が変わりました。
1.被扶養者の範囲
健康保険の被扶養者となることのできる家族は、以下のとおりとなっています。
①被保険者の直系尊属、配偶者(内縁関係を含む)、子、孫、弟妹、兄姉で、
主として被保険者に生計を維持されている人
②被保険者と同居し、主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
a.①を除く被保険者の三親等以内の家族
b.被保険者と内縁関係の配偶者の父母および子
c.b.の配偶者が亡くなった後における父母および子
なお、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、これらに該当しても
被扶養者になることはできません。
2.変更となる被扶養者認定
今回は、日本国内に住む家族を被扶養者として認定する際に、身分関係と
生計維持関係の確認について、これまで行われていた申立てのみによる認定ではなく、
証明書類に基づく認定が行われることになりました。
具体的には、届出に際して下表に示す書類の添付が必要になります。
従業員が入社するときには、家族のものも含めマイナンバーの回収を行い、住民票の写しを
提出書類として求めている会社は多くあるかと思います。
また、健康保険の被扶養者は、所得税法上の控除対象の配偶者または扶養家族と
なっていることが多く、添付書類が必要な対象者は限られると考えますが、確実に確認を
するようにしましょう。
(12月号に続く)
2018年10月より厳格化された協会けんぽの被扶養者認定
健康保険では、一定の要件を満たした被保険者の家族も被扶養者として保険給付を
受けることができます。
被扶養者となるためには、協会けんぽに「健康保険被扶養者(異動)届」
(以下、「異動届」という)を届け出ることになりますが、2018年10月1日から、
被扶養者の認定事務が変更となり、異動届に添付する書類が変わりました。
1.被扶養者の範囲
健康保険の被扶養者となることのできる家族は、以下のとおりとなっています。
①被保険者の直系尊属、配偶者(内縁関係を含む)、子、孫、弟妹、兄姉で、
主として被保険者に生計を維持されている人
②被保険者と同居し、主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
a.①を除く被保険者の三親等以内の家族
b.被保険者と内縁関係の配偶者の父母および子
c.b.の配偶者が亡くなった後における父母および子
なお、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、これらに該当しても
被扶養者になることはできません。
2.変更となる被扶養者認定
今回は、日本国内に住む家族を被扶養者として認定する際に、身分関係と
生計維持関係の確認について、これまで行われていた申立てのみによる認定ではなく、
証明書類に基づく認定が行われることになりました。
具体的には、届出に際して下表に示す書類の添付が必要になります。
従業員が入社するときには、家族のものも含めマイナンバーの回収を行い、住民票の写しを
提出書類として求めている会社は多くあるかと思います。
また、健康保険の被扶養者は、所得税法上の控除対象の配偶者または扶養家族と
なっていることが多く、添付書類が必要な対象者は限られると考えますが、確実に確認を
するようにしましょう。
(12月号に続く)
2018年10月より厳格化された協会けんぽの被扶養者認定
健康保険では、一定の要件を満たした被保険者の家族も被扶養者として保険給付を
受けることができます。
被扶養者となるためには、協会けんぽに「健康保険被扶養者(異動)届」
(以下、「異動届」という)を届け出ることになりますが、2018年10月1日から、
被扶養者の認定事務が変更となり、異動届に添付する書類が変わりました。
1.被扶養者の範囲
健康保険の被扶養者となることのできる家族は、以下のとおりとなっています。
①被保険者の直系尊属、配偶者(内縁関係を含む)、子、孫、弟妹、兄姉で、
主として被保険者に生計を維持されている人
②被保険者と同居し、主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
a.①を除く被保険者の三親等以内の家族
b.被保険者と内縁関係の配偶者の父母および子
c.b.の配偶者が亡くなった後における父母および子
なお、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、これらに該当しても
被扶養者になることはできません。
2.変更となる被扶養者認定
今回は、日本国内に住む家族を被扶養者として認定する際に、身分関係と
生計維持関係の確認について、これまで行われていた申立てのみによる認定ではなく、
証明書類に基づく認定が行われることになりました。
具体的には、届出に際して下表に示す書類の添付が必要になります。
従業員が入社するときには、家族のものも含めマイナンバーの回収を行い、住民票の写しを
提出書類として求めている会社は多くあるかと思います。
また、健康保険の被扶養者は、所得税法上の控除対象の配偶者または扶養家族と
なっていることが多く、添付書類が必要な対象者は限られると考えますが、確実に確認を
するようにしましょう。
(12月号に続く)
確認しておきたい割増賃金率と就業規則への記載
2010年の労働基準法改正により、1ヶ月の時間外労働が60時間を超える場合の
割増賃金率が50%に引き上げられていますが、これまで中小企業において
猶予されていたこの措置が、いよいよ2023年4月より適用されることとなりました。
そこで、今回は、割増賃金率をまとめると共に、賃金規程への記載の必要性について
とり上げます。
1.確認しておきたい割増賃金率
支払いが義務付けられている割増賃金は大きく分けて3種類(時間外労働、
法定休日労働、深夜労働)ありますが、これらの割増賃金率をまとめると、下表のように
なります。
表 割増賃金率のまとめ
種類 | 支払う条件 | 割増賃金率 |
時間外労働 | 法定労働時間を超えて時間外労働をさせた場合 | 25%以上 |
時間外労働が限度時間(1ヶ月45時間、1年360時間等)を超えて労働させた場合 | 25%以上※1 | |
時間外労働が1ヶ月60時間を超えて労働させた場合※2 | 50%以上 | |
法定休日労働 | 1週1日あるいは4週4日の法定休日に休日労働させた場合 | 35%以上 |
深夜労働 | 午後10時から午前5時までの深夜時間帯に労働させた場合 | 25%以上 |
※1 25%を超える率とするよう努めることとされています。
※2 中小企業については、2023年4月より適用となります。
割増賃金率で計算した賃金の支払義務が生じるのは、あくまでも法定労働時間を超える
労働や法定休日に対する労働となるため、所定労働時間が法定労働時間よりも短くなって
いる場合、その所定労働時間から法定労働時間までの割増賃金を支払う必要はありません。
例えば、1日の所定労働時間が6時間のパートタイマーが1日8時間働いた場合、6時間を
超え8時間までの時間外労働については割増の必要はなく、時給相当額の支払いで足りる
ことになります。
2.割増賃金率の就業規則への記載
時間外・休日労働協定(36協定)に特別条項を設ける場合、限度時間を超える
時間外労働に係る割増賃金率を1ヶ月、1年のそれぞれについて定める必要があります。
そして、これらの割増賃金率については、就業規則に定める必要のある事項
「賃金の決定、計算及び支払いの方法」に該当することから、就業規則(賃金規程等を
含む)に定めておく必要があります。2019年4月(中小企業は2020年4月)より、
残業時間の上限規制が始まることに伴い、この取扱いが労働基準法施行規則に定められ、
企業規模に関わらず2019年4月より適用となります。そのため、特別条項を定める事業所では、
就業規則における割増賃金率の記載の有無を確認し、記載がない場合は整備を行いましょう。
深夜労働に対する割増については、その時間が所定労働時間内であっても深夜に労働した
場合、割増賃金の支払いが必要です。また、時間外労働の時間が深夜になっていれば、時間
外労働の割増賃金率と、深夜労働の割増賃金率を加えた率での支払いが必要になります。
(次号に続く)